JP5049070B2 - 田植機における苗植付け装置 - Google Patents

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本発明は、田植機において、圃場面に対する苗の植付けを、回転によって行うようにした苗植付け装置に関するものである。
従来、この種の苗植付け装置は、例えば、特許文献1等に記載されているように、田植機の走行機体にて支持される伝動ケースに、エンジン等から動力伝達される駆動軸を横向きにて軸支して、この駆動軸に固着した回転ケースには、前記駆動軸を中心とする円周上の少なくとも等分二箇所に、前記駆動軸と平行の植付け軸を回転自在に設け、この各植付け軸に、苗植付け体を、先端に設けた分割爪を苗載台の方向に向けた姿勢にして装着する一方、前記回転ケースに、当該回転ケースにおける前記駆動軸による一回の公転中に前記各植付け軸が逆方向に一回だけ自転するようにした連動機構を設けて、前記各苗植付け体を、その分割爪が苗載台の方向を向いた姿勢のままで前記駆動軸を中心にして上下方向に旋回することにより、この苗植付け体における分割爪を、苗載台より上方の部位と圃場面との間を上下方向の閉ループの運動軌跡を描きながら往復動するように構成し、この分割爪にて、その下降動の途中において前記苗載台から一株の苗を分割して取り出したのち、この一株の苗を下降動の下限において圃場面に植付けるというものであった。
しかし、この従来における構成の場合、
(1).前記各苗植付け体は、その先端における分割爪を苗載台の方向に向けた姿勢で、前記回転ケースにおける公転の中心である駆動軸を通る鉛直線を挟んで苗載台側の部分と、苗載台と反対側の部分との間に重量のアンバランスが存在すること。
(2).前記各苗植付け体における重心点は、常時、当該苗植付け体における自転の中心である植付け軸よりも苗載台側に偏芯した位置にあり、前記各苗植付け体は、その重心が偏芯した状態で、前記植付け軸を中心として自転すること。
(3).回転ケースを公転する駆動軸には、前記各苗植付け体における分割爪にて苗載台から一株の苗を分割して取り出すときの反力(抵抗)を、大きいトルク負荷として受けること。
の三つに起因して、前記駆動軸には大きなトルク変動を受けることになるから、このトルク変動のために全体に振動が発生し、円滑な植付けを行うことができないのであった。
また、別の先行技術としての特許文献2及び3は、前記構成の苗植付け装置を前提とし、前記回転ケースにおける二本の植付け軸のうち一方の植付け軸には、苗植付け体を、分割爪を苗載台の方向に向けた姿勢にして装着するものの、他方の植付け軸には、前記苗植付け体に代えて、バランスウエイトを、前記苗載台とは逆方向に突出するように設けることにより、前記駆動軸のトルク変動、ひいては、振動を抑制することを提案している。
特開昭60−244215号公報 実開昭63−48422号公報 特開平3−198708号公報
この先行技術による構成の場合には、振動発生の第1の起因であるところの駆動軸を通る鉛直線を挟む両側における重量のアンバランスを、前記バランスウエイトにて改善できることに加えて、振動発生の第3の起因であるところの前記分割爪が苗を分割するときに受ける反力(抵抗)を、前記バランスウエイトが駆動軸を中心として公転するときの回転慣性力によって支えることができるから駆動軸に及ぶ負荷を低減できる。
しかし、その反面、前記バランスウエイトは、重心点が植付け軸よりも苗載台側にある苗植付け体が前記植付け軸を中心にして自転することに起因するトルク変動、ひいては振動を改善することには殆ど作用しないのであり、換言すると、前記先行技術におけるバランスウエイトは、振動発生の起因である第1及び第3の点については、効果的ではあるものの、振動発生の起因である第2の点について殆ど作用しないから、振動低減を十分に達成することができないという問題がある。
しかも、前記先行技術は、回転ケースにおける一つの植付け軸には、苗植付け体を装着することに代えて、バランスウエイトを装着する構成であることにより、前記回転ケースに設けることができる苗植付け体の個数が少なくなり、前記回転ケースの一回転当たりに植付けできる苗株数が減少するから、高速植付けを達成することができないという問題もある。
本発明は、前記苗植付け装置における振動を、前記先行技術のような問題を招来することなく確実に抑制できるようにすることを技術的課題とするものである。
この技術的課題を達成するため本発明の請求項1は、
「 田植機(1)における伝動ケース(10)に横向きに軸支した駆動軸(14)に回転ケース(15)を装着し、この回転ケース(15)には前記駆動軸(14)を中心とする円周上の少なくとも等分二箇所に、前記駆動軸(15)と平行の植付け軸(19)を回転自在に設け、この各植付け軸(19)に、苗植付け体(20)を、先端に設けた分割爪(22)を側面視で苗載台(12)の方向に向けた姿勢にして装着する一方、前記回転ケース(15)に、当該回転ケース(15)における前記駆動軸(14)による一回の公転中に前記各植付け軸(19)が逆方向に一回だけ自転するようにした連動機構を設けて、前記各苗植付け体(20)を、その分割爪(22)が苗載台(12)の方向を向いた姿勢のままで前記駆動軸(14)を中心にして上下方向に旋回するように構成して成る苗植付け装置において、
前記各苗植付け体(20)自体に、バランスウエイト(26)を、当該苗植付け体(20)における自転の中心である植付け軸(19)を挟んで苗載台(12)と反対側に突出するように設け、前記植付け軸(19)の自転によって、前記バランスウエイト(26)が前記分割爪(22)と共に回転するように構成している、
ことを特徴としている。
請求項1に記載したように、各苗植付け体の各々に、バランスウエイトを、当該苗植付け体における自転の中心である植付け軸よりも苗載台と反対側に突出するように設けることにより、前記各苗植付け体における重心点は、当該各苗植付け体の各々にバランスウエイトを設けた分だけ、苗載台より遠ざかって、植付け軸に近づくことになる。
これにより、前記回転ケースにおける公転の中心である駆動軸を通る鉛直線を挟んで苗載台側の部分と苗載台と反対側の部分との間における重量のアンバランスを、前記先行技術のように前記各苗植付け体の一部をバランスウエイトに取り付け代えるという構成にすることなく、確実に低減することができる。
これに加えて、前記各苗植付け体における重心点が植付け軸に近づくことにより、前記各苗植付け体が自転するときにおける回転中心からの重心点までの偏芯を小さく又は無くすることができる。
しかも、前記各苗植付け体における分割爪が苗載台を通過するとき、この分割爪には、当該苗植付け体に設けたバランスウエイトが植付け軸を中心として自転するときにおける回転慣性力、及び前記バランスウエイトが前記駆動軸を中心にして公転するときにおける回転慣性力の両方が、苗の分割を行うときの反力(抵抗)を支えるように作用することになるから、苗の分割時に駆動軸に及ぶ負荷を確実に低減することができる。
このように、本発明によると、駆動軸におけるトルク変動、ひいては振動発生の起因である前記三つの点を全てを解消ないし低減することができるから、振動を大幅に抑制でき、円滑な植付けを確実に達成でき、その一方で、一つの回転ケースに設ける苗植付け体の数を減少することがないから、高速植付けを達成できる。
以下、本発明の実施の形態を、乗用型の多条植え田植機に適用した場合の図面について説明する。
図1及び図2において、符号1は、多条植えの乗用型田植機を示し、この田植機1は、左右一対の前輪3及び後輪4にて支持された走行機体2と、この走行機体2の後部に昇降可能に装着されて圃場面5に対して苗植付けを複数条(6条)について行う苗植部6とを備え、前記走行機体2には、エンジン7が搭載されるとともに、操縦座席8が設けられ、更に、前記エンジン7からの動力を適宜変速して前記各車輪3,4に伝達するための走行ミッション9が搭載され、矢印Aで示す方向に適宜速度で前進走行するように構成されている。
前記苗植部6は、走行機体2の走行方向に対して横方向に複数個(三つ)並べて配設した伝動ケース10と、この各伝動ケース10の左右両側に設けたロータリ式の苗植付け装置11と、前記各伝動ケース10の上方に、左右往復移動するように後方下向きに傾斜して配設された苗載台12と、前記各苗植付け装置11の間において前記圃場面5の表面を滑走するように配設した複数個のフロート13とによって構成されている。
前記各伝動ケース10の後端には、図3、図4及び図6等に示すように、前記エンジン7から動力伝達される駆動軸14が、水平横向きにして軸支されており、この駆動軸14の両端に、前記苗植付け装置11が装着されている。
前記各苗植付け装置11は、図3〜図6に示すように構成されている。
すなわち、前記駆動軸14のうち前記伝動ケース10の左右両側面から突出する両端には、側面視小判型の回転ケース15を着脱可能に固着して、この回転ケース15を、前記駆動軸14によって田植機1の側面視において矢印Bで示すように、反時計方向に回転(公転)するもので、この回転ケース15内における前記駆動軸14上には、太陽歯車16が回転自在に被嵌され、この太陽歯車16は、前記伝動ケース10に対して連結部材17を介して回転不能に係止されている。
前記回転ケース15の外周部、つまり、左右両端部には、前記駆動軸14からの距離が等しい位置に、押し出し具用の作動軸18が駆動軸14と平行に軸支されている。また、前記回転ケース15内における両作動軸18上には、中空状の植付け軸19が回転自在に被嵌されている。
この植付け軸19の一端部を回転ケース15の外側面から外に突出して、この各植付け軸19の突出端の各々に、アルミ合金等の軽合金にて上面に開放するように中空状にした苗植付け体20を複数本のボルト21にて取付け、この各苗植付け体20の先端におけるボス部20aには、分割爪22が前記苗載台12に向かう姿勢位置にして固着されている。
そして、前記各植付け軸19のうち前記回転ケース15内の部分には、前記太陽歯車16と同歯数の遊星歯車23が嵌着されている一方、前記回転ケース15内には、前記太陽歯車16と前記遊星歯車23とに同時に噛合する中間歯車24を設けて、歯車列式の連動機構を構成して、この歯車列式連動機構にて、前記回転ケース15が駆動軸14にて反時計方向の一回だけ公転するとき、前記各植付け軸19を、前記回転ケース15とは逆方向つまり時計方向に一回だけ自転して、前記各苗植付け体20を、その分割爪22が苗載台12に向かう姿勢を保持した状態のままで前記駆動軸14を中心にして上下方向に旋回することにより、この各苗植付け体20における分割爪22を、図3に示すように、前記苗載台12より上方の部位と圃場面5との間を上下方向の閉ループの運動軌跡25を描きながら往復動するように構成しており、前記各苗植付け体20における分割爪22は、その運動軌跡25に沿って下降動する途中において前記苗載台12を通過するとき、この苗載台12から一株の苗を分割して取り出したのち、この一株の苗を下降動の下限において圃場面5に対して植付けるのである。
この場合、本実施の形態においては、前記歯車列式の連動機構を構成する前記太陽歯車16、前記遊星歯車23及び前記中間歯車24を、例えば特公昭63−20486号公報及び特開昭63−74413号公報等に記載されているように、偏芯歯車等の非円形歯車に構成して、前記回転ケース15における公転に伴う前記苗植付け体20における逆方向への自転を、前記運動軌跡25における上死点の前後付近において進ませる一方、前記運動軌跡25における下死点の前後付近において遅らせるというように、前記各苗植付け体20の自転を揺動することにより、前記運動軌跡25が上下方向に長い楕円状閉ループになるように構成した場合を示している。
そして、前記各苗植付け装置11における両苗植付け体20のうち前記植付け軸19に対する取付け部20bにおける外側面には、前記植付け軸19から前記苗載台12とは反対側に突出するように構成したバランスウエイト26を着脱可能に取付ける。
この各バランスウエイト26を、図4及び図6に示すように、前記駆動軸14の軸線と直角の方向から見て、前記分割爪22よりも内側(回転ケース15側)に位置するというように、前記各バランスウエイト26と分割爪22とを、前記駆動軸14の軸線方向に互いにずらせた構成にしている。
更に、前記各バランスウエイト26における植付け軸19から前記苗載台12とは反対側への突出長さを長くすることにより、図3及び図5に示すように、前記駆動軸14の軸線方向から見て、当該バランスウエイト26が、前記分割爪22における運動軌跡25に対してオーバーラップするように構成している。
なお、前記バランスウエイト26の苗植付け装置11に対する着脱可能な取付けは、図示したように、前記苗植付け装置11を植付け軸19に対して取付けるための複数本のボルト21の一部を利用して行うように構成しても良いが、別のボルト等にて行うように構成することもできる。
前記したように、苗植付け装置11における回転ケース15に設けた各苗植付け体20の各々に、バランスウエイト26を、当該苗植付け体20における自転の中心である植付け軸19よりも苗載台12と反対側に突出するように設けることにより、前記各苗植付け体20における重心点は、当該各苗植付け体20の各々にバランスウエイト26を設けた分だけ、苗載台12より遠ざかって、植付け軸19に近づくことになる。
これにより、前記回転ケース15における公転の中心である駆動軸14を通る鉛直線を挟んで苗載台12側の部分と苗載台12と反対側の部分との間における重量のアンバランスを、前記先行技術のように、複数個の苗植付け体20の一部をバランスウエイトに取り付け代えるという構成にすることなく、確実に低減できる。
これに加えて、前記各苗植付け体20における重心点が、当該苗植付け体20における自転の中心である植付け軸19に近づくことにより、前記各苗植付け体20が自転するときにおける回転中心からの重心点までの偏芯を小さく又は無くすることができる。
しかも、前記各苗植付け体20における分割爪22が苗載台12を通過するとき、この分割爪22には、当該苗植付け体20に設けたバランスウエイト26が植付け軸19を中心として自転するときにおける回転慣性力、及び、前記バランスウエイト26が駆動軸14を中心に公転するときにおける回転慣性力の両方が、苗の分割を行うときの反力(抵抗)を支えるように作用することになるから、苗の分割時に駆動軸14に及ぶ負荷を確実に低減できる。
また、前記各バランスウエイト26は、図4及び図6に示すように、前記駆動軸14の軸線と直角の方向から見て、前記分割爪22よりも内側に位置するように、分割爪22と互いに軸線方向にずらせた構成であることにより、前記回転ケース15において、その駆動軸14から各植付け軸19までの軸間距離を、分割爪とバランスウエイトと互いに干渉することがない状態のもとで縮めることができる。
更にまた、前記各バランスウエイト26を、図3及び図5に示すように、前記駆動軸14の軸線方向から見て、前記分割爪22における運動軌跡25に対してオーバーラップするように構成したことにより、前記バランスウエイト26における苗載台12とは反対方向への突出寸法を長くできるから、前記バランスウエイト26を軽量化できる。
乗用型多条植え田植機の側面図である。 図1の平面図である。 前記乗用型田植機における苗植部の要部を示す側面図である。 図3の平面図である。 苗植付け装置の側面図である。 図5のVI−VI視断面図である。
1 乗用型多条植え田植機
2 走行機体
6 苗植部
10 伝動ケース
11 苗植付け装置
12 苗載台
14 駆動軸
15 回転ケース
16 太陽歯車
19 植付け軸
20 苗植付け体
21 取付けボルト
22 分割爪
23 遊星歯車
24 中間歯車
25 運動軌跡
26 バランスウエイト

Claims (1)

  1. 田植機(1)における伝動ケース(10)に横向きに軸支した駆動軸(14)に回転ケース(15)を装着し、この回転ケース(15)には前記駆動軸(14)を中心とする円周上の少なくとも等分二箇所に、前記駆動軸(15)と平行の植付け軸(19)を回転自在に設け、この各植付け軸(19)に、苗植付け体(20)を、先端に設けた分割爪(22)を側面視で苗載台(12)の方向に向けた姿勢にして装着する一方、前記回転ケース(15)に、当該回転ケース(15)における前記駆動軸(14)による一回の公転中に前記各植付け軸(19)が逆方向に一回だけ自転するようにした連動機構を設けて、前記各苗植付け体(20)を、その分割爪(22)が苗載台(12)の方向を向いた姿勢のままで前記駆動軸(14)を中心にして上下方向に旋回するように構成して成る苗植付け装置において、
    前記各苗植付け体(20)自体に、バランスウエイト(26)を、当該苗植付け体(20)における自転の中心である植付け軸(19)を挟んで苗載台(12)と反対側に突出するように設け、前記植付け軸(19)の自転によって、前記バランスウエイト(26)が前記分割爪(22)と共に回転するように構成している、
    田植機における苗植付け装置。
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