JP5047409B2 - ポリアミドの固相重合方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、回分式加熱重合装置を用いてポリアミドの固相重合体を効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドの固相重合は回分式と連続式の両方法で工業的に実施されている。回分式加熱装置を用いて固相重合を行う場合、原料となるポリアミドの仕込み後は、昇温、重合、冷却の各工程が同一の回分式加熱装置で行われるのが一般的である。
通常、ポリアミドは加熱下に酸化劣化を起こしやすいため、これら一連の工程を同一の回分式加熱装置で行うことが品質上有利である。固相重合反応におけるアミド化反応速度は溶融重合反応速度よりかなり遅いため、重合工程の時間を比較的長くする必要がある。また固相重合温度域においてポリアミドは、熱分解を起こしやすいため、より低い温度域で固相重合反応を進行させることが望ましい。従って、例えば、160℃前後の一定温度で10時間以上の長時間をかけて固相重合を行う方法がある。しかし、この方法は生産効率が悪く、工業的に有利な方法とは言い難い。他の固相重合方法としては、室温から220℃付近の温度まで昇温しながら固相重合する方法がある。この方法は重合工程の時間がより短縮されるため、生産効率の点では比較的優れている。
【0003】
回分式加熱装置を用いてポリアミドの固相重合体を大量に生産する場合、重合温度までポリアミドを昇温させることや重合終了後に空気中でも酸化劣化しない温度まで比較的短時間で冷却させることは熱容量的な点から容易なことではなく、通常これらの工程は長時間に及ぶ。回分式加熱装置内の伝熱を向上させ、昇温および冷却の工程時間を短縮するには、減圧下ではなく常圧下で行う方が有利であるが、それ程の時間短縮の改良にはつながらない。また冷却工程は通常ジャケット内の熱媒を外部熱交換器で冷却して回分式加熱装置に循環することによってなされるが、ジャケットに冷媒を直接入れたとしてもそれほど時間は短縮されない。すなわち、実質的に重合に寄与しない昇温工程と冷却工程に相当の時間を必要とするため、回分式加熱装置のこれらの工程に要する占有時間が長くなり、大量生産をする上で時間的な効率が低下することになる。
【0004】
一方、連続式加熱装置を用いて固相重合を行う場合は、ポリアミドの昇温(及びポリアミドの結晶化)、重合、冷却の各工程はそれぞれ別装置で行われる。従って各装置は一定温度に維持・制御されるため、熱的に極めて効率的である。連続式反応装置は少品種を大量生産する上では回分式と比較して効率がよいが、粉の発生量が回分式加熱装置を用いた場合と比較して多いという問題点がある。また反応装置内に抜き出されないポリアミドが相当量残存するため、多品種、少量生産には不向きである。
【0005】
特開昭51−97698号公報には、ポリアミドの乾燥方法として、回分式加熱装置からポリアミドを効率的に抜き出すために、回分式加熱装置を用いて180℃以下の温度でポリアミドを真空乾燥し、回分式加熱装置内で冷却することなく別の冷却装置へ移送して冷却する方法が開示されている。この場合、冷却中の酸化劣化を抑制するため、式2を満足させるような条件で冷却装置内空間部の気体の酸素濃度を調整しながら不活性ガスを吹き込んで冷却する方法が提案されている。この方法によれば、冷却工程を回分式加熱装置を用いることなく別の冷却装置で行うため、回分式加熱装置の運転効率が向上するという利点がある。
【0006】
log R≦6366/T−1.571×log S−15.57 (式2)
式2において、Rは気体の酸素濃度(容積%)を表し、Sは冷却所要時間(hr)を表し、Tは回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温度(絶対温度)を表す。
【0007】
前記方法は乾燥目的で用いられる回分式加熱装置を効率的に利用する方法の提案である。ポリアミドを加熱処理する場合、酸化劣化の防止のみならず、分子量の管理が重要である。前記方法はモノカルボン酸などで末端基を封止して重合がそれ以上進まないようにしたポリアミドを用いる場合には問題なく、乾燥目的の熱処理が可能である。一方、末端基が封止されていないポリアミド、つまり固相重合されるポリアミドは含水率の低い不活性ガス中で重合反応が更に進む可能性があるため、前記方法では分子量の制御が困難である。すなわち、工業的規模で固相重合する場合、回分式加熱装置からの抜き出しに時間がかかり、さらに冷却装置内での冷却速度に大きな差が生じるため、速やかに冷却されるものと冷却までに時間がかかるものとが同一バッチ内に混在する。この熱履歴の差が同一バッチのポリアミド間に分子量の差を与え、品質的に大きな問題が生じる。また前記方法には回分式加熱装置を効率的に運転する上で昇温工程に対する改善は全く見られない。
【0008】
特開昭50−2197号公報には、固相重合の反応時間を短縮するため、固相重合に先だって、ポリアミド6のペレットに水を加えて、含水率1.0質量%以上にした後、加圧加熱する前処理工程を行い、乾燥した後固相重合するポリアミド6の製造方法が開示されている。しかしこの方法では、冷却工程に対する改善は全く提案されておらず、しかも加圧仕様の加熱装置が必要となる。
【0009】
特開昭56−149431号公報には、着色防止を目的として水蒸気含有雰囲気中でポリテトラメチレンアジパミドを固相重合する方法が提案されている。しかし、この方法は本発明と目的が異なる上、昇温工程の時間短縮について何ら明らかにされていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、回分式加熱装置を用いてポリアミドを固相重合するに際し、同一バッチ内での固相重合されたポリアミドの品質のばらつきを少なくし、かつ極めて効率よくポリアミドの固相重合が可能な製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、回分式加熱装置を用いてポリアミドを固相重合を行う場合、固相重合反応終了後他の冷却装置で冷却する際に、回分式加熱装置からの抜き出し温度と冷却所要時間を制御することにより、同一バッチで生産されたポリアミドの分子量の品質の差を少なくすることが可能な固相重合方法を見い出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、メタキシリレンジアミンを80モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を80モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合して得たポリアミドの固相重合方法であって、回分式加熱重合装置を用いて重合反応を行い、所定分子量に到達後の冷却を、当該回分式加熱重合装置で行い、更に窒素ガス雰囲気下で他の冷却装置へ移送して引き続き式3を満足する冷却速度条件下で冷却することを特徴とするポリアミドの固相重合方法に関する発明である。
【0013】
tc ≦ 8.52×1012× exp(−0.0566×T) (式3)
上式で、tc は冷却所要時間(回分式加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間(回分式加熱装置と冷却装置との間に貯槽を使用する場合は貯槽での滞留時間を含む)の合計(分))を表し、Tは回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温度(絶対温度)を表す。
【0014】
以下に本発明を詳しく説明する。本発明で固相重合の原料として使用するポリアミドは、メタキシリレンジアミンを80モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を80モル%以上含むジカルボン酸成分から溶融重合法により作られるポリアミドである。メタキシリレンジアミンとアジピン酸以外のポリアミド形成化合物としては、特に限定されないが、カプロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタムなどのラクタム、1,1−アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、パラキシリレンジアミンなどのジアミン、およびコハク酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸を例示することができる。
【0015】
一般的にポリアミドは酸化劣化により着色し易い。すなわち、冷却工程の一部を別装置にて行う場合、同一バッチ内で熱履歴に差が生ずるため、同一バッチ内でのポリアミドの黄色度にもぱらつきが生ずる。従って、本発明は、比較的このような影響を受けにくい特定のポリアミド、すなわちメタキシリレンジアミンを80モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を80モル%以上含むジカルボン成分を重縮合して得たポリアミドに好適に実施可能である。
【0016】
酸化劣化の抑制と固相重合中における重合反応の促進のため、固相重合に使用する原料ポリアミドを溶融重合して製造する際、ポリアミドにリン化合物を添加することも出来る。リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの塩またはエステル化合物を使用できる。
リン酸塩としては、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸マンガン、リン酸ニッケル、リン酸コバルトなどを例示でき、リン酸エステルとしては、リン酸メチルエステル、リン酸エチルエステル、リン酸イソプロピルエステル、リン酸ブチルエステル、リン酸ヘキシルエステル、リン酸イソデシルエステル、リン酸デシルエステル、リン酸ステアリルエステル、リン酸フェニルエステルなどが例示できる。亜リン酸塩としては、亜リン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン、亜リン酸ニッケル、亜リン酸コバルトなどを例示でき、亜リン酸エステルとしては、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸エチルエステル、亜リン酸イソプロピルエステル、亜リン酸ブチルエステル、亜リン酸ヘキシルエステル、亜リン酸イソデシルエステル、亜リン酸デシルエステル、亜リン酸ステアリルエステル、亜リン酸フェニルエステルなどが例示できる。次亜リン酸塩としては、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸マンガン、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸コバルトなどを例示できる。これらのリン化合物は単独、または組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の固相重合に使用される回分式加熱装置には、タンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤーなどと称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐形の加熱装置などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
回分式加熱装置内の水蒸気の供給源となる水分量の総和は、仕込んだ固相重合原料のポリアミドに対して0.2質量%以上が望ましい。上記0.2質量%未満の水分量では昇温速度の向上がそれ程期待できないため昇温工程での時間短縮が達成されない。また、重合工程での脱水操作を考えれば、水分量の上限は原料のポリアミドの5質量%以下が好ましい。
【0019】
水分量の調整方法は、固相重合原料のポリアミドを予め吸水させ、目的とする水分量となるように調整した後、回分式加熱装置に供給する方法が挙げられる。また、回分式加熱装置に固相原料ポリアミドと共に氷、水あるいはスチームを仕込んで水分量を調整する方法などが挙げられる。このときポリアミドに吸収されない過剰の水分が回分式加熱装置内に存在してもかまわない。本発明はこれら水分量の調整方法に限定されるものではない。
【0020】
回分式加熱装置の減圧を開始する温度は100℃以上が望ましい。100℃以下の温度で減圧を開始すると昇温工程の時間短縮があまり達成されない。
固相重合温度はポリアミドの重合反応が容易に進行する温度が望ましく、150℃以上220℃以下の温度域から選択される。また、固相重合圧力は重合反応により生成する縮合水を素早く除去できるような圧力が望ましく、34.7kPa以下の減圧条件から選択される。重合反応時間は、ポリアミドが目的とする分子量に到達するように設定されるが、上記のような温度域、減圧条件においては少なくとも30分以上が望ましい。
【0021】
回分式加熱装置からの抜き出し温度および冷却装置での冷却速度は式3によって規定される。冷却工程の一部を別の冷却装置で実施することにより、回分式加熱装置から最初に抜き出されたポリアミドは比較的速やかに冷却され分子量は増加しないが、それ以降に抜き出されたポリアミドは回分式加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での滞留時間に伴う熱履歴により分子量が増加する傾向にある。このため、式3を満足する条件を選択することによりこの傾向が抑えられ、その結果、同一バッチ内の分子量のばらつきを抑制する。
【0022】
例えば、回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温度Tが443度K(約170℃)に固定された場合、式3により冷却所有時間tc (回分式加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間の合計)が110分以下となり、回分式加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間が規定される。更に、回分式加熱装置からの抜き出し時間が60分と固定される場合には、冷却装置内での120℃以上における滞留時間は50分以下と規定され、使用する冷却装置はこの規定値を満足できる冷却速度を有するものでなくてはならない。回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温度Tと冷却時間tc が式3を満足するような条件を選択して冷却工程の一部を別の冷却装置で実施すれば、回分式加熱装置の運転効率が向上し、かつ同一バッチ内の分子量のバラツキが抑制される。
【0023】
本発明の冷却に使用される冷却装置は縦型、横型のいずれでもよく、攪拌機能を持たないホッパータイプ、攪拌機能を持つタンブラータイプ、さらに内部に攪拌機能をもつ溝型タイプなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また各装置での冷却は、窒素ガスを装置内部に通気させて冷却する方法、各装置に設けられたジャケット、攪拌器のシャフト、攪拌翼等の少なくとも1箇所以上に水やブラインなどの冷媒を通して冷却する方法、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。
【0024】
ポリアミドの移送、冷却に使用される窒素は、その間における酸化劣化および吸湿を抑制するため、含有酸素濃度0.2容積%以下でかつ露点+5℃以下の循環窒素が望ましい。含有酸素濃度0.2容積%を越えると移送、冷却中における酸化劣化が抑制できず着色の原因となる。また露点が+5℃を越えると移送、冷却中における吸湿が多くなり、品質上好ましくない。また窒素はブローなどで循環させた方が経済的に有利である。
【0025】
本発明を工業的規模のプロセスで実施するに際し、回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温度Tは190℃以下から選択される。回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温度Tが190℃の場合、式3によって冷却所要時間tc (回分式加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間の合計)は35分以下と規定される。回分式加熱装置から工業的生産量のポリアミドを抜き出すのに必要な時間や工業的に利用可能な冷却装置の冷却速度を考慮すると、冷却所要時間tc が35分より短い規定値となる抜き出し温度、すなわち190℃より高い抜き出し温度では本発明を実施することが非常に困難である。
【0026】
冷却装置ではポリアミドが空気中で酸化劣化に伴う黄色度の増加が無い温度まで冷却されることが望ましく、120℃以下、さらに好ましくは80℃以下の温度まで冷却されることが望ましい。
【0027】
【実施態様】
本発明は図1、図2、図3、及び図4に示すようなプロセスで好適に実施可能である。
図1、2の場合では、以下のような工程が例示できる。すなわち、固相重合しようとするポリアミドを回分式加熱装置1に充填し、水蒸気を含む窒素雰囲気下で室温から昇温する。ポリアミドの温度が100℃以上の温度域に到達したら減圧操作を開始し、さらに昇温して重合を進める。所定分子量に到達後、窒素で回分式加熱装置内を常圧にして冷却を開始する。その後、ポリアミドの温度Tにて回分式加熱装置1からポリアミドを抜き出し、冷却装置2へ移送する。ポリアミドの移送は外気の流入を防ぐため窒素を用いた圧送が望ましい。圧送に用いた窒素は熱交換器3、ブロワー4を含むループにて循環させる。尚、このループにフィルター5を設けることもできる。ポリアミドの抜き出しが全て終了したら、回分式加熱装置1に次のポリアミドを仕込み、再び固相重合を開始できる。
【0028】
一方、移送されたポリアミドは、冷却装置2で引続き冷却される。この時、式3と抜き出し温度Tから冷却所要時間tc (回分式加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間の合計)が規定され、規定値を満足するような条件にて冷却される。冷却後、ポリアミドは冷却装置2から抜き出される。尚、冷却装置内に窒素を通気させてポリアミドを冷却する場合、図2の様に窒素は熱交換器3' 、ブロワー4' を含むループにて循環させる。尚、このループにフィルター5' を設けることもできる。
【0029】
図3、4の場合では以下のような工程が例示できる。すなわち、前記と同様の方法により回分式加熱装置1で固相重合を進め、所定分子量に到達後、窒素で回分式加熱装置1内を常圧にして冷却を開始する。その後、ポリアミドの温度Tにて回分式加熱装置1からポリアミドを抜き出し、貯層6へ移送して一時滞留させる。ポリアミドの移送は外気の流入を防ぐため窒素を用いた圧送が望ましい。圧送に用いた窒素は熱交換器3、ブロワー4を含むループにて循環させる。尚、このループにフィルター6を設けることもできる。ポリアミドの抜き出しが全て終了したら、回分式加熱装置1に次のポリアミドを仕込み、再び固相重合を開始できる。
【0030】
一方、貯槽へ移送されたポリアミドは冷却装置2へ回分的又は連続的に供給される。このとき、式3と抜き出し温度Tから冷却所要時間tc (回分式加熱装置からの抜き出し時間と貯槽及び冷却装置内での120℃以上における滞留時間の合計)が規定され、規定値を満足するうな条件にて冷却される。冷却後、ポリアミドは冷却装置2から抜き出される。尚、冷却装置2内に窒素を循環させてポリアミドを冷却する場合、図4のように窒素は熱交換器3' 、ブロワー4' を含むループにて循環させる。尚、このループにフィルター5' を設けることも可能である。
【0031】
【発明の効果】
本発明に係わるポリアミドの固相重合方法によって以下の効果が得られる。昇温工程を水蒸気存在下で行うことにより、昇温速度が向上し、工程時間の短縮が達成されるため、生産効率が向上する。
冷却工程を回分式加熱装置1とは別の冷却装置2で行うことにより、ポリアミドの回分式加熱装置1の占有時間が短縮されるため、生産効率が向上する。
式3を満足するような条件でポリアミドを回分式加熱装置1から抜き出し、別の冷却装置2へ移送して冷却することにより、同一バッチ内で品質にばらつきのないポリアミドを製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例、参考例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明における評価のための測定は以下の方法で行った。
(イ)アミノ基濃度
ポリアミド0.3〜0.5gを精秤し、フェノール−エタノール混合溶液(混合容積比:フェノール/エタノール=4/1)30mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、攪拌しつつ0.01モル%塩酸溶液で中和滴定して求めた。
(ロ)カルボキシル基濃度
ポリアミド0.3〜0.5gを精秤し、ベンジルアルコール30mlに窒素気流下、160〜180℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、窒素気流下、80℃まで冷却し、攪拌しつつメタノールを10ml加え,0.01モル%水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して求めた。
【0033】
(ハ)数平均分子量
アミノ基およびカルボキシル基の定量値から次式により求めた。
数平均分子量=2/(〔NH2 〕+〔COOH〕)
〔NH2 〕:アミノ基濃度(モル/g)
〔COOH〕:カルボキシル基濃度(モル/g)
(ニ)黄色度
色差計(日本電色工業(株)製、Σ80型)を用い、ペレットの黄色度(YI値)を測定した。
【0034】
実施例1
溶融重合法により合成したポリメタキシリレンアジパミド(以下「ナイロンMXD6」という)のペレット400gを1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの蒸留水を添加してからオイルバスに浸漬しつつ、エバポレータの駆動部を利用して80rpmで回転させた。1.33kPa以下まで減圧して窒素で常圧に戻す操作を3回行い、フラスコ内の空気を窒素で置換した。その後、60℃/hrの昇温速度で室温から135℃まで水蒸気中昇温した。ペレット温度が135℃に到達した後、減圧操作を開始し、1.33kPa以下まで減圧した。ペレット温度が200℃に到達後、その状態で1時間保持して重合を進めた。その後、オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素常圧にして冷却を開始した。ペレット温度が160℃まで冷却したところで、窒素通気下、フラスコからペレットを抜き出し、別容器にて80℃まで速やかに冷却した。昇温から抜き出しまでの合計時間および数平均分子量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを1リットルのナス型フラスコに入れ、蒸留水を添加せず実施例1と同様の方法で固相重合を行った。オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素常圧にして冷却を開始した後、ペレット温度が80℃まで下ったところで、フラスコからペレットを抜き出し、昇温から抜き出しまでの合計時間および数平均分子量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0036】
実施例1は水蒸気にて昇温速度を向上させ、かつ冷却工程の一部を別装置で行った場合であり、比較例1はこれらの手段を全く行わず、昇温から冷却まで同一の装置で行った場合である。表1から、ポリアミドを回分式加熱装置にて固相重合する場合、水蒸気存在下で昇温し、かつ冷却工程を別装置で行うと極めて回分式加熱装置の占有時間が短く効率的であることがわかる。
【0037】
参考例1
実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの蒸留水を添加してから実施例1と同様の方法で固相重合を行った。オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素常圧にして冷却を開始した後、ペレット温度が80℃まで下がったところで、フラスコからペレットを抜き出し、数平均分子量と黄色度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0038】
参考例2
実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの蒸留水を添加してから実施例1と同様の方法で固相重合を行った。オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素常圧にして冷却を開始した後、ペレット温度が参考例1と同じ冷却速度にて160℃まで下がったところでオイルバスによる加熱を再開し、窒素常圧下160℃の状態を3時間保持した。その後、再びオイルバスによる加熱を中止し、ペレット温度が参考例1と同じ冷却速度にて80℃まで下がったところでフラスコからペレットを抜き出した。このとき、温度160℃と160℃から120℃までの保持時間を含む冷却所要時間は式3を満足していた。数平均分子量と黄色度を表2に示す。
【0039】
比較例2
実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの蒸留水を添加してから実施例1と同様の方法で固相重合を行った。オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素で常圧にして冷却を開始した後、ペレット温度が参考例1と同じ冷却速度にて170℃まで下がったところでオイルバスによる加熱を再開し、窒素常圧下170℃の状態を3時間保持した。
その後、再びオイルバスによる加熱を中止し、ペレット温度が参考例1と同じ冷却速度にて80℃まで下がったところでフラスコからペレットを抜き出した。このとき、温度170℃と170℃から120℃までの保持時間を含む冷却所要時間は式1を満足していなかった。数平均分子量と黄色度を表2に示す。
【0040】
参考例1は、回分式加熱装置から最初に抜き出されて冷却装置へ移送され、さらに同一バッチ内で最も速やかに冷却されたポリアミドを想定した例である。参考例2と比較例2は、同一バッチ内で最も熱履歴を受けたポリアミドを想定した例である。このとき、実施例2は回分式加熱装置からの抜き出し温度が160℃であり、抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間の合計、つまり冷却所要時間が式3を満足する場合である。
【0041】
また比較例2は回分式加熱装置からの抜き出し温度が170℃であり、冷却所要時間が式3を満足しない場合である。表2から、回分式加熱装置からの抜き出し温度と冷却所要時間が式3を満足する場合は、最初に抜き出されたものと最も熱履歴を受けたもので分子量と黄色度に大きな差はできないが、式3を満足しない場合は分子量と黄色度に大きな差ができることが分かる。
従って、式3を満足するような条件にて回分式加熱装置からポリアミドを抜き出し、さらに冷却を行えば、同一バッチ内で品質にばらつきのないポリアミドを効率よく製造できる。
【0042】
【0043】
表2
参考例1 参考例2 比較例2
原料ペレットの数平均分子量 16500 16500 16500
冷却工程での
保持時間(時間) − 3 3
保持温度(℃) − 160 170
冷却後の数平均分子量 25300 25900 26800
冷却後の黄色度 13.6 14.6 18.1
式3の範囲内/外 − 範囲内 範囲外
【図面の簡単な説明】
【図1】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置から冷却装置へ移送して冷却するための工程を示す。
【図2】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置から冷却装置へ移送して冷却する際の工程、及び窒素の循環フローを示す。
【図3】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置から貯槽へ移送して一時滞留させた後、冷却装置へ移送して冷却するための工程を示す。
【図4】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置から貯槽へ移送して一時滞留させた後、冷却装置へ移送して冷却するための工程、及び窒素の循環フローを示す。
【符号の説明】
1:回分式加熱装置
2:冷却装置
3:熱交換器
3' :熱交換器
4:ブロワー
4' :ブロワー
5:フィルター
5' :フィルター
6:貯槽
7:サイクロン
Claims (8)
- メタキシリレンジアミンを80モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を80モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合して得たポリアミドの固相重合方法であって、回分式加熱重合装置を用いて重合反応を行い、所定分子量に到達後の冷却を、160℃以下になるまで当該回分式加熱重合装置で行い、更に窒素ガス雰囲気下で他の冷却装置へ移送して引き続き冷却し、冷却所要時間t c が192分以下であることを特徴とするポリアミドの固相重合方法。
(ここで、冷却所要時間t c は、回分式加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間(回分式加熱装置と冷却装置との間に貯槽を使用する場合は貯槽での滞留時間を含む)の合計(分)を表す。) - 重合反応が、水蒸気を含む窒素雰囲気下で室温から昇温して、ポリアミドの温度が100℃以上の温度域で、減圧操作を開始して150以上で220℃以下の温度まで昇温して重合を進め、所定分子量の固相重合ポリアミドを得ることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの固相重合方法。
- 冷却装置が回分式又は連続式の冷却装置である請求項1又は2に記載のポリアミドの固相重合方法。
- 冷却装置に於ける冷却方法が冷却装置内に窒素ガスを通気させる方法である請求項3に記載のポリアミドの固相重合方法。
- 冷却装置における冷却方法が冷却装置のジャケット、攪拌機シャフト又は攪拌翼のいずれかの1箇所以上に冷媒を通す方法である請求項3又は4に記載のポリアミドの固相重合方法。
- ポリアミドの冷却装置への移送および該装置での冷却に用いる窒素ガスが含有酸素濃度0.2容積%以下、露点+5℃以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミドの固相重合方法。
- 冷却装置内でポリアミドを120℃以下の温度まで冷却することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミドの固相重合方法。
- 固相重合の原料ポリアミドが、重合促進剤としてリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの塩、またはこれらのエステル化合物を少なくとも1種以上使用して溶融重合して得たポリアミドである請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミドの固相重合方法。
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