JP2001270940A - ポリアミドの固相重合方法 - Google Patents

ポリアミドの固相重合方法

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JP2001270940A JP2000086426A JP2000086426A JP2001270940A JP 2001270940 A JP2001270940 A JP 2001270940A JP 2000086426 A JP2000086426 A JP 2000086426A JP 2000086426 A JP2000086426 A JP 2000086426A JP 2001270940 A JP2001270940 A JP 2001270940A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、回分式加熱装置を用いてポリアミ
ドを固相重合するに際し、同一バッチ内での固相重合さ
れたポリアミドの品質のばらつきを少なくし、かつ極め
て効率よくポリアミドの固相重合が可能な製造方法を提
供することを目的とする。 【解決手段】 メタキシリレンジアミンとアジピン酸と
を溶融重縮合して得たポリアミドを回分式加熱重合装置
を用いて固相重合反応を行い、更に窒素ガス雰囲気下で
他の冷却装置へ移送して引き続き特定の冷却速度条件下
で冷却することを特徴とするポリアミドの固相重合方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回分式加熱重合装置を
用いてポリアミドの固相重合体を効率よく製造する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリアミドの固相重合は回分式と連続式
の両方法で工業的に実施されている。回分式加熱装置を
用いて固相重合を行う場合、原料となるポリアミドの仕
込み後は、昇温、重合、冷却の各工程が同一の回分式加
熱装置で行われるのが一般的である。通常、ポリアミド
は加熱下に酸化劣化を起こしやすいため、これら一連の
工程を同一の回分式加熱装置で行うことが品質上有利で
ある。固相重合反応におけるアミド化反応速度は溶融重
合反応速度よりかなり遅いため、重合工程の時間を比較
的長くする必要がある。また固相重合温度域においてポ
リアミドは、熱分解を起こしやすいため、より低い温度
域で固相重合反応を進行させることが望ましい。従っ
て、例えば、160℃前後の一定温度で10時間以上の
長時間をかけて固相重合を行う方法がある。しかし、こ
の方法は生産効率が悪く、工業的に有利な方法とは言い
難い。他の固相重合方法としては、室温から220℃付
近の温度まで昇温しながら固相重合する方法がある。こ
の方法は重合工程の時間がより短縮されるため、生産効
率の点では比較的優れている。
【0003】回分式加熱装置を用いてポリアミドの固相
重合体を大量に生産する場合、重合温度までポリアミド
を昇温させることや重合終了後に空気中でも酸化劣化し
ない温度まで比較的短時間で冷却させることは熱容量的
な点から容易なことではなく、通常これらの工程は長時
間に及ぶ。回分式加熱装置内の伝熱を向上させ、昇温お
よび冷却の工程時間を短縮するには、減圧下ではなく常
圧下で行う方が有利であるが、それ程の時間短縮の改良
にはつながらない。また冷却工程は通常ジャケット内の
熱媒を外部熱交換器で冷却して回分式加熱装置に循環す
ることによってなされるが、ジャケットに冷媒を直接入
れたとしてもそれほど時間は短縮されない。すなわち、
実質的に重合に寄与しない昇温工程と冷却工程に相当の
時間を必要とするため、回分式加熱装置のこれらの工程
に要する占有時間が長くなり、大量生産をする上で時間
的な効率が低下することになる。
【0004】一方、連続式加熱装置を用いて固相重合を
行う場合は、ポリアミドの昇温(及びポリアミドの結晶
化)、重合、冷却の各工程はそれぞれ別装置で行われ
る。従って各装置は一定温度に維持・制御されるため、
熱的に極めて効率的である。連続式反応装置は少品種を
大量生産する上では回分式と比較して効率がよいが、粉
の発生量が回分式加熱装置を用いた場合と比較して多い
という問題点がある。また反応装置内に抜き出されない
ポリアミドが相当量残存するため、多品種、少量生産に
は不向きである。
【0005】特開昭51−97698号公報には、ポリ
アミドの乾燥方法として、回分式加熱装置からポリアミ
ドを効率的に抜き出すために、回分式加熱装置を用いて
180℃以下の温度でポリアミドを真空乾燥し、回分式
加熱装置内で冷却することなく別の冷却装置へ移送して
冷却する方法が開示されている。この場合、冷却中の酸
化劣化を抑制するため、式2を満足させるような条件で
冷却装置内空間部の気体の酸素濃度を調整しながら不活
性ガスを吹き込んで冷却する方法が提案されている。こ
の方法によれば、冷却工程を回分式加熱装置を用いるこ
となく別の冷却装置で行うため、回分式加熱装置の運転
効率が向上するという利点がある。
【0006】 log R≦6366/T−1.571×log S−15.57 (式2) 式2において、Rは気体の酸素濃度(容積%)を表し、
Sは冷却所要時間(hr)を表し、Tは回分式加熱装置か
らのポリアミドの抜き出し温度(絶対温度)を表す。
【0007】前記方法は乾燥目的で用いられる回分式加
熱装置を効率的に利用する方法の提案である。ポリアミ
ドを加熱処理する場合、酸化劣化の防止のみならず、分
子量の管理が重要である。前記方法はモノカルボン酸な
どで末端基を封止して重合がそれ以上進まないようにし
たポリアミドを用いる場合には問題なく、乾燥目的の熱
処理が可能である。一方、末端基が封止されていないポ
リアミド、つまり固相重合されるポリアミドは含水率の
低い不活性ガス中で重合反応が更に進む可能性があるた
め、前記方法では分子量の制御が困難である。すなわ
ち、工業的規模で固相重合する場合、回分式加熱装置か
らの抜き出しに時間がかかり、さらに冷却装置内での冷
却速度に大きな差が生じるため、速やかに冷却されるも
のと冷却までに時間がかかるものとが同一バッチ内に混
在する。この熱履歴の差が同一バッチのポリアミド間に
分子量の差を与え、品質的に大きな問題が生じる。また
前記方法には回分式加熱装置を効率的に運転する上で昇
温工程に対する改善は全く見られない。
【0008】特開昭50−2197号公報には、固相重
合の反応時間を短縮するため、固相重合に先だって、ポ
リアミド6のペレットに水を加えて、含水率1.0質量
%以上にした後、加圧加熱する前処理工程を行い、乾燥
した後固相重合するポリアミド6の製造方法が開示され
ている。しかしこの方法では、冷却工程に対する改善は
全く提案されておらず、しかも加圧仕様の加熱装置が必
要となる。
【0009】特開昭56−149431号公報には、着
色防止を目的として水蒸気含有雰囲気中でポリテトラメ
チレンアジパミドを固相重合する方法が提案されてい
る。しかし、この方法は本発明と目的が異なる上、昇温
工程の時間短縮について何ら明らかにされていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、回分
式加熱装置を用いてポリアミドを固相重合するに際し、
同一バッチ内での固相重合されたポリアミドの品質のば
らつきを少なくし、かつ極めて効率よくポリアミドの固
相重合が可能な製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、回分式加熱装置
を用いてポリアミドを固相重合を行う場合、固相重合反
応終了後他の冷却装置で冷却する際に、回分式加熱装置
からの抜き出し温度と冷却所要時間を制御することによ
り、同一バッチで生産されたポリアミドの分子量の品質
の差を少なくすることが可能な固相重合方法を見い出
し、本発明を完成させた。
【0012】すなわち、本発明は、メタキシリレンジア
ミンを80モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を
80モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合して得た
ポリアミドの固相重合方法であって、回分式加熱重合装
置を用いて重合反応を行い、所定分子量に到達後の冷却
を、当該回分式加熱重合装置で行い、更に窒素ガス雰囲
気下で他の冷却装置へ移送して引き続き式3を満足する
冷却速度条件下で冷却することを特徴とするポリアミド
の固相重合方法に関する発明である。
【0013】 tc ≦ 8.52×1012× exp(−0.0566×T) (式3) 上式で、tc は冷却所要時間(回分式加熱装置からの抜
き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留
時間(回分式加熱装置と冷却装置との間に貯槽を使用す
る場合は貯槽での滞留時間を含む)の合計(分))を表
し、Tは回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温
度(絶対温度)を表す。
【0014】以下に本発明を詳しく説明する。本発明で
固相重合の原料として使用するポリアミドは、メタキシ
リレンジアミンを80モル%以上含むジアミン成分とア
ジピン酸を80モル%以上含むジカルボン酸成分から溶
融重合法により作られるポリアミドである。メタキシリ
レンジアミンとアジピン酸以外のポリアミド形成化合物
としては、特に限定されないが、カプロラクタム、ラウ
ロラクタム、ウンデカラクタムなどのラクタム、1,1
−アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸など
のアミノカルボン酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサ
メチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘ
キサン、パラキシリレンジアミンなどのジアミン、およ
びコハク酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル
酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン
酸を例示することができる。
【0015】一般的にポリアミドは酸化劣化により着色
し易い。すなわち、冷却工程の一部を別装置にて行う場
合、同一バッチ内で熱履歴に差が生ずるため、同一バッ
チ内でのポリアミドの黄色度にもぱらつきが生ずる。従
って、本発明は、比較的このような影響を受けにくい特
定のポリアミド、すなわちメタキシリレンジアミンを8
0モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を80モル
%以上含むジカルボン成分を重縮合して得たポリアミド
に好適に実施可能である。
【0016】酸化劣化の抑制と固相重合中における重合
反応の促進のため、固相重合に使用する原料ポリアミド
を溶融重合して製造する際、ポリアミドにリン化合物を
添加することも出来る。リン化合物としては、リン酸、
亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの塩またはエステル
化合物を使用できる。リン酸塩としては、リン酸カリウ
ム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグ
ネシウム、リン酸マンガン、リン酸ニッケル、リン酸コ
バルトなどを例示でき、リン酸エステルとしては、リン
酸メチルエステル、リン酸エチルエステル、リン酸イソ
プロピルエステル、リン酸ブチルエステル、リン酸ヘキ
シルエステル、リン酸イソデシルエステル、リン酸デシ
ルエステル、リン酸ステアリルエステル、リン酸フェニ
ルエステルなどが例示できる。亜リン酸塩としては、亜
リン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシ
ウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン、亜リ
ン酸ニッケル、亜リン酸コバルトなどを例示でき、亜リ
ン酸エステルとしては、亜リン酸メチルエステル、亜リ
ン酸エチルエステル、亜リン酸イソプロピルエステル、
亜リン酸ブチルエステル、亜リン酸ヘキシルエステル、
亜リン酸イソデシルエステル、亜リン酸デシルエステ
ル、亜リン酸ステアリルエステル、亜リン酸フェニルエ
ステルなどが例示できる。次亜リン酸塩としては、次亜
リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カ
ルシウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸マンガ
ン、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸コバルトなどを例
示できる。これらのリン化合物は単独、または組み合わ
せて用いてもよい。
【0017】本発明の固相重合に使用される回分式加熱
装置には、タンブルドライヤー、コニカルドライヤー、
ロータリードライヤーなどと称される回転ドラム式の加
熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を
備えた円錐形の加熱装置などが挙げられるが、これらに
限定されるものではない。
【0018】回分式加熱装置内の水蒸気の供給源となる
水分量の総和は、仕込んだ固相重合原料のポリアミドに
対して0.2質量%以上が望ましい。上記0.2質量%
未満の水分量では昇温速度の向上がそれ程期待できない
ため昇温工程での時間短縮が達成されない。また、重合
工程での脱水操作を考えれば、水分量の上限は原料のポ
リアミドの5質量%以下が好ましい。
【0019】水分量の調整方法は、固相重合原料のポリ
アミドを予め吸水させ、目的とする水分量となるように
調整した後、回分式加熱装置に供給する方法が挙げられ
る。また、回分式加熱装置に固相原料ポリアミドと共に
氷、水あるいはスチームを仕込んで水分量を調整する方
法などが挙げられる。このときポリアミドに吸収されな
い過剰の水分が回分式加熱装置内に存在してもかまわな
い。本発明はこれら水分量の調整方法に限定されるもの
ではない。
【0020】回分式加熱装置の減圧を開始する温度は1
00℃以上が望ましい。100℃以下の温度で減圧を開
始すると昇温工程の時間短縮があまり達成されない。固
相重合温度はポリアミドの重合反応が容易に進行する温
度が望ましく、150℃以上220℃以下の温度域から
選択される。また、固相重合圧力は重合反応により生成
する縮合水を素早く除去できるような圧力が望ましく、
34.7kPa以下の減圧条件から選択される。重合反
応時間は、ポリアミドが目的とする分子量に到達するよ
うに設定されるが、上記のような温度域、減圧条件にお
いては少なくとも30分以上が望ましい。
【0021】回分式加熱装置からの抜き出し温度および
冷却装置での冷却速度は式3によって規定される。冷却
工程の一部を別の冷却装置で実施することにより、回分
式加熱装置から最初に抜き出されたポリアミドは比較的
速やかに冷却され分子量は増加しないが、それ以降に抜
き出されたポリアミドは回分式加熱装置からの抜き出し
時間と冷却装置内での滞留時間に伴う熱履歴により分子
量が増加する傾向にある。このため、式3を満足する条
件を選択することによりこの傾向が抑えられ、その結
果、同一バッチ内の分子量のばらつきを抑制する。
【0022】例えば、回分式加熱装置からのポリアミド
の抜き出し温度Tが443度K(約170℃)に固定さ
れた場合、式3により冷却所有時間tc (回分式加熱装
置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上に
おける滞留時間の合計)が110分以下となり、回分式
加熱装置からの抜き出し時間と冷却装置内での120℃
以上における滞留時間が規定される。更に、回分式加熱
装置からの抜き出し時間が60分と固定される場合に
は、冷却装置内での120℃以上における滞留時間は5
0分以下と規定され、使用する冷却装置はこの規定値を
満足できる冷却速度を有するものでなくてはならない。
回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温度Tと冷
却時間tc が式3を満足するような条件を選択して冷却
工程の一部を別の冷却装置で実施すれば、回分式加熱装
置の運転効率が向上し、かつ同一バッチ内の分子量のバ
ラツキが抑制される。
【0023】本発明の冷却に使用される冷却装置は縦
型、横型のいずれでもよく、攪拌機能を持たないホッパ
ータイプ、攪拌機能を持つタンブラータイプ、さらに内
部に攪拌機能をもつ溝型タイプなどが挙げられるが、こ
れらに限定されるものではない。また各装置での冷却
は、窒素ガスを装置内部に通気させて冷却する方法、各
装置に設けられたジャケット、攪拌器のシャフト、攪拌
翼等の少なくとも1箇所以上に水やブラインなどの冷媒
を通して冷却する方法、これらを組み合わせた方法等が
挙げられる。
【0024】ポリアミドの移送、冷却に使用される窒素
は、その間における酸化劣化および吸湿を抑制するた
め、含有酸素濃度0.2容積%以下でかつ露点+5℃以
下の循環窒素が望ましい。含有酸素濃度0.2容積%を
越えると移送、冷却中における酸化劣化が抑制できず着
色の原因となる。また露点が+5℃を越えると移送、冷
却中における吸湿が多くなり、品質上好ましくない。ま
た窒素はブローなどで循環させた方が経済的に有利であ
る。
【0025】本発明を工業的規模のプロセスで実施する
に際し、回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温
度Tは190℃以下から選択される。回分式加熱装置か
らのポリアミドの抜き出し温度Tが190℃の場合、式
3によって冷却所要時間tc(回分式加熱装置からの抜
き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留
時間の合計)は35分以下と規定される。回分式加熱装
置から工業的生産量のポリアミドを抜き出すのに必要な
時間や工業的に利用可能な冷却装置の冷却速度を考慮す
ると、冷却所要時間tc が35分より短い規定値となる
抜き出し温度、すなわち190℃より高い抜き出し温度
では本発明を実施することが非常に困難である。
【0026】冷却装置ではポリアミドが空気中で酸化劣
化に伴う黄色度の増加が無い温度まで冷却されることが
望ましく、120℃以下、さらに好ましくは80℃以下
の温度まで冷却されることが望ましい。
【0027】
【実施態様】本発明は図1、図2、図3、及び図4に示
すようなプロセスで好適に実施可能である。図1、2の
場合では、以下のような工程が例示できる。すなわち、
固相重合しようとするポリアミドを回分式加熱装置1に
充填し、水蒸気を含む窒素雰囲気下で室温から昇温す
る。ポリアミドの温度が100℃以上の温度域に到達し
たら減圧操作を開始し、さらに昇温して重合を進める。
所定分子量に到達後、窒素で回分式加熱装置内を常圧に
して冷却を開始する。その後、ポリアミドの温度Tにて
回分式加熱装置1からポリアミドを抜き出し、冷却装置
2へ移送する。ポリアミドの移送は外気の流入を防ぐた
め窒素を用いた圧送が望ましい。圧送に用いた窒素は熱
交換器3、ブロワー4を含むループにて循環させる。
尚、このループにフィルター5を設けることもできる。
ポリアミドの抜き出しが全て終了したら、回分式加熱装
置1に次のポリアミドを仕込み、再び固相重合を開始で
きる。
【0028】一方、移送されたポリアミドは、冷却装置
2で引続き冷却される。この時、式3と抜き出し温度T
から冷却所要時間tc (回分式加熱装置からの抜き出し
時間と冷却装置内での120℃以上における滞留時間の
合計)が規定され、規定値を満足するような条件にて冷
却される。冷却後、ポリアミドは冷却装置2から抜き出
される。尚、冷却装置内に窒素を通気させてポリアミド
を冷却する場合、図2の様に窒素は熱交換器3' 、ブロ
ワー4' を含むループにて循環させる。尚、このループ
にフィルター5' を設けることもできる。
【0029】図3、4の場合では以下のような工程が例
示できる。すなわち、前記と同様の方法により回分式加
熱装置1で固相重合を進め、所定分子量に到達後、窒素
で回分式加熱装置1内を常圧にして冷却を開始する。そ
の後、ポリアミドの温度Tにて回分式加熱装置1からポ
リアミドを抜き出し、貯層6へ移送して一時滞留させ
る。ポリアミドの移送は外気の流入を防ぐため窒素を用
いた圧送が望ましい。圧送に用いた窒素は熱交換器3、
ブロワー4を含むループにて循環させる。尚、このルー
プにフィルター6を設けることもできる。ポリアミドの
抜き出しが全て終了したら、回分式加熱装置1に次のポ
リアミドを仕込み、再び固相重合を開始できる。
【0030】一方、貯槽へ移送されたポリアミドは冷却
装置2へ回分的又は連続的に供給される。このとき、式
3と抜き出し温度Tから冷却所要時間tc (回分式加熱
装置からの抜き出し時間と貯槽及び冷却装置内での12
0℃以上における滞留時間の合計)が規定され、規定値
を満足するうな条件にて冷却される。冷却後、ポリアミ
ドは冷却装置2から抜き出される。尚、冷却装置2内に
窒素を循環させてポリアミドを冷却する場合、図4のよ
うに窒素は熱交換器3' 、ブロワー4' を含むループに
て循環させる。尚、このループにフィルター5' を設け
ることも可能である。
【0031】
【発明の効果】本発明に係わるポリアミドの固相重合方
法によって以下の効果が得られる。昇温工程を水蒸気存
在下で行うことにより、昇温速度が向上し、工程時間の
短縮が達成されるため、生産効率が向上する。冷却工程
を回分式加熱装置1とは別の冷却装置2で行うことによ
り、ポリアミドの回分式加熱装置1の占有時間が短縮さ
れるため、生産効率が向上する。式3を満足するような
条件でポリアミドを回分式加熱装置1から抜き出し、別
の冷却装置2へ移送して冷却することにより、同一バッ
チ内で品質にばらつきのないポリアミドを製造すること
ができる。
【0032】
【実施例】以下に実施例、参考例および比較例を示し、
本発明を具体的に説明する。なお、本発明における評価
のための測定は以下の方法で行った。 (イ)アミノ基濃度 ポリアミド0.3〜0.5gを精秤し、フェノール−エ
タノール混合溶液(混合容積比:フェノール/エタノー
ル=4/1)30mlに20〜30℃で攪拌溶解した。
完全に溶解した後、攪拌しつつ0.01モル%塩酸溶液
で中和滴定して求めた。 (ロ)カルボキシル基濃度 ポリアミド0.3〜0.5gを精秤し、ベンジルアルコ
ール30mlに窒素気流下、160〜180℃で攪拌溶
解した。完全に溶解した後、窒素気流下、80℃まで冷
却し、攪拌しつつメタノールを10ml加え,0.01
モル%水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して求めた。
【0033】(ハ)数平均分子量 アミノ基およびカルボキシル基の定量値から次式により
求めた。 数平均分子量=2/(〔NH2 〕+〔COOH〕) 〔NH2 〕:アミノ基濃度(モル/g) 〔COOH〕:カルボキシル基濃度(モル/g) (ニ)黄色度 色差計(日本電色工業(株)製、Σ80型)を用い、ペレ
ットの黄色度(YI値)を測定した。
【0034】実施例1 溶融重合法により合成したポリメタキシリレンアジパミ
ド(以下「ナイロンMXD6」という)のペレット40
0gを1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの
蒸留水を添加してからオイルバスに浸漬しつつ、エバポ
レータの駆動部を利用して80rpmで回転させた。
1.33kPa以下まで減圧して窒素で常圧に戻す操作
を3回行い、フラスコ内の空気を窒素で置換した。その
後、60℃/hrの昇温速度で室温から135℃まで水
蒸気中昇温した。ペレット温度が135℃に到達した
後、減圧操作を開始し、1.33kPa以下まで減圧し
た。ペレット温度が200℃に到達後、その状態で1時
間保持して重合を進めた。その後、オイルバスによる加
熱を中止し、フラスコ内を窒素常圧にして冷却を開始し
た。ペレット温度が160℃まで冷却したところで、窒
素通気下、フラスコからペレットを抜き出し、別容器に
て80℃まで速やかに冷却した。昇温から抜き出しまで
の合計時間および数平均分子量を測定した。測定結果を
表1に示す。
【0035】比較例1 実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを
1リットルのナス型フラスコに入れ、蒸留水を添加せず
実施例1と同様の方法で固相重合を行った。オイルバス
による加熱を中止し、フラスコ内を窒素常圧にして冷却
を開始した後、ペレット温度が80℃まで下ったところ
で、フラスコからペレットを抜き出し、昇温から抜き出
しまでの合計時間および数平均分子量を測定した。測定
結果を表1に示す。
【0036】実施例1は水蒸気にて昇温速度を向上さ
せ、かつ冷却工程の一部を別装置で行った場合であり、
比較例1はこれらの手段を全く行わず、昇温から冷却ま
で同一の装置で行った場合である。表1から、ポリアミ
ドを回分式加熱装置にて固相重合する場合、水蒸気存在
下で昇温し、かつ冷却工程を別装置で行うと極めて回分
式加熱装置の占有時間が短く効率的であることがわか
る。
【0037】参考例1 実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを
1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの蒸留水
を添加してから実施例1と同様の方法で固相重合を行っ
た。オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素
常圧にして冷却を開始した後、ペレット温度が80℃ま
で下がったところで、フラスコからペレットを抜き出
し、数平均分子量と黄色度を測定した。測定結果を表2
に示す。
【0038】実施例2 実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを
1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの蒸留水
を添加してから実施例1と同様の方法で固相重合を行っ
た。オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素
常圧にして冷却を開始した後、ペレット温度が参考例1
と同じ冷却速度にて160℃まで下がったところでオイ
ルバスによる加熱を再開し、窒素常圧下160℃の状態
を3時間保持した。その後、再びオイルバスによる加熱
を中止し、ペレット温度が参考例1と同じ冷却速度にて
80℃まで下がったところでフラスコからペレットを抜
き出した。このとき、温度160℃と160℃から12
0℃までの保持時間を含む冷却所要時間は式3を満足し
ていた。数平均分子量と黄色度を表2に示す。
【0039】比較例2 実施例1と同じナイロンMXD6のペレット400gを
1リットルのナス型フラスコに入れ、2.0gの蒸留水
を添加してから実施例1と同様の方法で固相重合を行っ
た。オイルバスによる加熱を中止し、フラスコ内を窒素
で常圧にして冷却を開始した後、ペレット温度が参考例
1と同じ冷却速度にて170℃まで下がったところでオ
イルバスによる加熱を再開し、窒素常圧下170℃の状
態を3時間保持した。その後、再びオイルバスによる加
熱を中止し、ペレット温度が参考例1と同じ冷却速度に
て80℃まで下がったところでフラスコからペレットを抜
き出した。このとき、温度170℃と170℃から12
0℃までの保持時間を含む冷却所要時間は式1を満足し
ていなかった。数平均分子量と黄色度を表2に示す。
【0040】参考例1は、回分式加熱装置から最初に抜
き出されて冷却装置へ移送され、さらに同一バッチ内で
最も速やかに冷却されたポリアミドを想定した例であ
る。実施例2と比較例2は、同一バッチ内で最も熱履歴
を受けたポリアミドを想定した例である。このとき、実
施例2は回分式加熱装置からの抜き出し温度が160℃
であり、抜き出し時間と冷却装置内での120℃以上に
おける滞留時間の合計、つまり冷却所要時間が式3を満
足する場合である。
【0041】また比較例2は回分式加熱装置からの抜き
出し温度が170℃であり、冷却所要時間が式3を満足
しない場合である。表2から、回分式加熱装置からの抜
き出し温度と冷却所要時間が式3を満足する場合は、最
初に抜き出されたものと最も熱履歴を受けたもので分子
量と黄色度に大きな差はできないが、式3を満足しない
場合は分子量と黄色度に大きな差ができることが分か
る。従って、式3を満足するような条件にて回分式加熱
装置からポリアミドを抜き出し、さらに冷却を行えば、
同一バッチ内で品質にばらつきのないポリアミドを効率
よく製造できる。
【0042】 表1 実施例1 比較例1 原料ペレットの分子量 16500 16500 経過時間(分) 20℃→200℃ 257 286 200℃ 60 60 200℃→160℃ 44 44 160℃→80℃ − 96 合計時間 361 486 冷却後の平均分子量 25600 25300
【0043】 表2 参考例1 実施例2 実施例2 原料ペレットの数平均分子量 16500 16500 16500 冷却工程での 保持時間(時間) − 3 3 保持温度(℃) − 160 170 冷却後の数平均分子量 25300 25900 26800 冷却後の黄色度 13.6 14.6 18.1 式3の範囲内/外 − 範囲内 範囲外
【図面の簡単な説明】
【図1】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置か
ら冷却装置へ移送して冷却するための工程を示す。
【図2】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置か
ら冷却装置へ移送して冷却する際の工程、及び窒素の循
環フローを示す。
【図3】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置か
ら貯槽へ移送して一時滞留させた後、冷却装置へ移送し
て冷却するための工程を示す。
【図4】 固相重合したポリアミドを回分式加熱装置か
ら貯槽へ移送して一時滞留させた後、冷却装置へ移送し
て冷却するための工程、及び窒素の循環フローを示す。
【符号の説明】
1:回分式加熱装置 2:冷却装置 3:熱交換器 3' :熱交換器 4:ブロワー 4' :ブロワー 5:フィルター 5' :フィルター 6:貯槽 7:サイクロン(登録商標)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタキシリレンジアミンを80モル%以
    上含むジアミン成分とアジピン酸を80モル%以上含む
    ジカルボン酸成分を重縮合して得たポリアミドの固相重
    合方法であって、回分式加熱重合装置を用いて重合反応
    を行い、所定分子量に到達後の冷却を、当該回分式加熱
    重合装置で行い、更に窒素ガス雰囲気下で他の冷却装置
    へ移送して引き続き下記式1を満足する冷却速度条件下
    で冷却することを特徴とするポリアミドの固相重合方
    法。 tc ≦ 8.52×1012× exp(−0.0566×T) (式1) 上式で、tc は冷却所要時間(回分式加熱装置からの抜
    き出し時間と冷却装置内での120℃以上における滞留
    時間(回分式加熱装置と冷却装置との間に貯槽を使用す
    る場合は貯槽での滞留時間を含む)の合計(分))を表
    し、Tは回分式加熱装置からのポリアミドの抜き出し温
    度(絶対温度)を表す。
  2. 【請求項2】 重合反応が、水蒸気を含む窒素雰囲気下
    で室温から昇温して、ポリアミドの温度が100℃以上
    の温度域で、減圧操作を開始して150以上で220℃
    以下の温度まで昇温して重合を進め、所定分子量の固相
    重合ポリアミドを得ることを特徴とする請求項1に記載
    のポリアミドの固相重合方法。
  3. 【請求項3】 冷却装置が回分式又は連続式の冷却装置
    である請求項1および2記載のポリアミドの固相重合方
    法。
  4. 【請求項4】 冷却装置に於ける冷却方法が冷却装置内
    に窒素ガスを通気させる方法である請求項3記載のポリ
    アミドの固相重合方法。
  5. 【請求項5】 冷却装置における冷却方法が冷却装置の
    ジャケット、攪拌機シャフト又は攪拌翼のいずれかの1
    箇所以上に冷媒を通す方法である請求項3及び請求項4
    に記載のポリアミドの固相重合方法。
  6. 【請求項6】 ポリアミドの冷却装置への移送および該
    装置での冷却に用いる窒素ガスが含有酸素濃度0.2容
    積%以下、露点+5℃以下であることを特徴とする請求
    項1ないし3記載のポリアミドの固相重合方法。
  7. 【請求項7】 ポリアミドを冷却装置へ移送する際のポ
    リアミド温度が190℃以下である請求項1ないし3記
    載のポリアミドの固相重合方法。
  8. 【請求項8】 冷却装置内でポリアミドを120℃以下
    の温度まで冷却することを特徴とする請求項1ないし3
    記載のポリアミドの固相重合方法。
  9. 【請求項9】 固相重合の原料ポリアミドが、重合促進
    剤としてリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの
    塩、またはこれらのエステル化合物を少なくとも1種以
    上使用して溶融重合して得たポリアミドである請求項1
    に記載のポリアミドの固相重合方法。
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