JP5047225B2 - 誘導加熱調理器 - Google Patents

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Description

本発明は、調理鍋の側面から発せられる赤外線量から調理鍋の内容物温度を推定して加熱制御する誘導加熱調理器に関するものである。
従来の誘導加熱調理器には、本体にトッププレートの上面を臨むように配置された赤外線センサーを設け、赤外線センサーの受光面の前方に汚れ防止フィルターを設け、赤外線センサーを調理鍋の側面下部から放射される赤外線を受光する方向に配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−92177号公報(第4頁、図1)
前述した従来の誘導加熱調理器では、トッププレートに載置された調理鍋が加熱コイルからはみ出している場合と、調理鍋が加熱コイルの内側にある場合とでは、調理鍋の鍋側面温度が異なるので、内容物温度との乖離が生じ、正確な内容物温度を検知できないことがある。
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、調理鍋が加熱コイルからはみ出していたり、加熱コイルの内側にあったとしても、鍋側面温度から正確な内容物温度を検出でき、ムラのない温度制御が可能な誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
本発明に係る誘導加熱調理器は、調理鍋が載置されるトッププレートと、トッププレートの下に設置され、トッププレートに載置された調理鍋を加熱する加熱コイルと、交流電圧を高周波電圧に変換して加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路と、加熱コイルに投入される電力を検知し電力が設定電力になるように駆動回路を制御する制御回路と、トッププレートより上側に設けられ、調理鍋の側面から放射される赤外線を受光する赤外線センサーと、赤外線センサーによって受光された赤外線量に基づいて鍋側面温度を算出する鍋温度算出部とを備え、制御回路は、加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の赤外線センサーからの赤外線量あるいは鍋温度算出部の算出による鍋側面温度を時間微分し、その微分値が所定値以下のときには調理鍋が赤外線センサー側にズレているとして、鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を調理鍋の内容物温度とし、微分値が所定値より大きいときには調理鍋が加熱コイルの内側あるいは赤外線センサーの反対側にズレているとして、鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を微分値に応じて設定された係数で補正して調理鍋の内容物温度とし、係数の値は、微分値が所定値より大きくなるに連れ小さくなるように設定されている。
本発明においては、加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の赤外線センサーからの赤外線量あるいは鍋温度算出部の算出による鍋側面温度を時間微分し、その微分値が所定値以下のときには調理鍋が赤外線センサー側にズレているとして、鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を調理鍋の内容物温度とし、微分値が所定値より大きいときには調理鍋が加熱コイルの内側あるいは赤外線センサーの反対側にズレているとして、鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を微分値に応じて設定された係数で補正して調理鍋の内容物温度としている。これにより、調理鍋が加熱コイルからはみ出していたり、加熱コイルの内側にあったとしても、調理鍋の内容物温度を正確に検出することができる。
本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。 調理鍋が加熱口内に載置されたときの調理鍋と加熱コイルの位置関係を示す断面図である。 調理鍋が赤外線センサー側にズレて加熱口に載置されたときの調理鍋と加熱コイルの位置関係を示す断面図である。 調理鍋と加熱コイルとの位置関係から変化する鍋側面温度と内容物温度の関係を示す図である。 鍋側面温度の微分値と鍋側面温度を補正する係数との相関を示す図である。 実施の形態2における鍋側面温度の微分値と鍋側面温度を補正する減算値との相関を示す図である。 実施の形態3における鍋側面温度の微分値と鍋側面温度を補正する赤外線放射率との相関を示す図である。 実施の形態4を説明するための電力休止時の鍋側面温度の変化を示す図である。 鍋側面温度の微分値と温度制御時のフィードバック量との相関を示す図である。 鍋側面温度の微分値と最大投入電力量との相関を示す図である。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。
図1において、本体11の上部に取り付けられたトッププレート3は、耐熱強化ガラスとそのガラスの外周に取り付けられた金属の枠体(図示せず)とにより構成されている。トッププレート3の耐熱強化ガラスの表面には、調理鍋1の加熱位置を示す円形の加熱口(図示せず)が表示されている。また、トッププレート3の下には、前述の加熱口に対向して設けられた環状の加熱コイル4が設置されている。加熱コイル4は、後述する駆動回路6からの高周波電流に基づいてトッププレート3上の調理鍋1を誘導加熱する。
トッププレート3の上側に設けられた赤外線センサー5は、例えば、前述の枠体に調理鍋1の側面と対向するように取り付けられ、調理鍋1の側面から放射される赤外線を受光する。駆動回路6は、インバータ回路を備え、後述する制御回路7からの制御に基づいてインバータ回路を駆動し、交流電圧8を高周波電圧に変換させて高周波電流を加熱コイル4に供給する。制御回路7は、例えばカレント・トランスで構成された電流検出器9により検出された入力電流と電圧検出器10により検出された入力電圧とから入力電力を算出し、操作部により設定された加熱電力となるように駆動回路6を制御する。
また、制御回路7は、赤外線センサー5によって受光された赤外線量に基づいて鍋側面温度を算出する鍋温度算出部を備えている。加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の鍋側面温度を時間微分し、その微分値の大きさに基づいて、調理鍋1と加熱コイル4の位置関係を判定して調理鍋1の内容物温度を推定する。なお、鍋温度算出部により算出された鍋側面温度を時間微分するようにしたが、これに代えて、赤外線センサーによって受光された赤外線量を時間微分するようにしても良い。
ここで、調理鍋1と加熱コイル4の位置関係の判定について図2乃至図4を参照しながら説明する。図2は調理鍋が加熱口内に載置されたときの調理鍋と加熱コイルの位置関係を示す断面図、図3は調理鍋が赤外線センサー側にズレて加熱口に載置されたときの調理鍋と加熱コイルの位置関係を示す断面図、図4は調理鍋と加熱コイルとの位置関係から変化する鍋側面温度と内容物温度の関係を示す図である。
図2に示すように、調理鍋1が加熱コイル4の内側にある場合は、点線で囲まれた鍋底面aが加熱コイル4からの磁束により直接加熱されると共に、点線で囲まれた鍋側面bが矢印で示す磁束によって直接加熱される。一方、図3に示すように、調理鍋1が赤外線センサー5側にズレて置かれ、調理鍋1の側面が加熱コイル4からはみ出している場合は、赤外線センサー5側の鍋側面が加熱コイル4からの磁束で直接加熱されることはない。この状態においては、加熱コイル4からの磁束により、先ず鍋底面aと赤外線センサー5の反対側の鍋側面bが直接加熱されるので、その熱が調理鍋1の内容物2に伝わり、赤外線センサー5側の鍋側面温度を徐々に上昇させる。
この鍋側面温度は、図4のBに示すように、内容物温度(点線)に対して遅れて上昇し、その後、内容物温度と同じになる。一方、調理鍋1が加熱コイル4の内側にある場合は(図2参照)、前述したように赤外線センサー5側の鍋側面bが加熱コイル4からの磁束を直接受けて加熱するため、その鍋側面bの温度は、図4のAに示すように、内容物2の温度より早く上昇し、内容物温度より高くなりその状態が継続される。
調理鍋1と加熱コイル4の位置関係を判定するためには、加熱開始直後の温度の立ち上がりを検出すればよいが、投入電力により温度の立ち上がり特性が異なるため、位置関係を明確に判定することはできない。そこで、本実施の形態1においては、前述したように、加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の鍋側面温度を時間微分し、その微分値が所定値より大きいときに加熱コイル4内に調理鍋1が載置されていると判定する。また、調理鍋1が赤外線センサー5の反対側にズレていた場合は、鍋側面bが加熱コイルからの磁束を直接受けて加熱し、鍋側面温度の微分値が所定値より大きくなるので、加熱コイル4内に調理鍋1が載置されているものとして判定する。さらに、微分値が所定値以下のときは調理鍋1が赤外線センサー5側に載置されて加熱コイル4からズレていると判定する。
次に、鍋側面温度の微分値から推定する内容物温度の算出について図5を参照しながら説明する。
図5は鍋側面温度の微分値と鍋側面温度を補正する係数との相関を示す図である。
鍋側面温度の微分値が所定値T1以下の場合は、鍋側面温度が図4のBに示すように内容物温度と同じになるので、鍋側面温度を内容物温度とする。一方、微分値が所定値T1より大きいときは、その微分値に応じて設定された係数を選定し、鍋側面温度に乗算して内容物温度とする。図5に示す所定値T1及び微分値に応じて設定された係数は、予め制御回路7にデータとして保存されている。このデータは、微分値が大きくなるにつれ係数の値が小さくなっている。
前記のように構成された誘導加熱調理器においては、操作部により電源を「入」にし、調理に必要な加熱電力を設定すると、制御回路7は、先ず所定電力(例えば1W以上)を投入して加熱を開始する。この時、赤外線センサー5が受ける調理鍋1の側面からの赤外線量P、赤外線センサー5自体の温度TO を読み込んで、調理鍋1の赤外線放射率をε、ステファン・ボルツマン定数をσ、鍋側面温度をTa(調理鍋1の側面温度)とする下記の式(1)から鍋側面温度Taを算出する。
P=σ(εTa4 −εTo4 )…(1)
その後、所定電力の投入から所定時間(例えば30秒以内)を経過したときに、調理鍋1の側面から放射される赤外線量Pを赤外線センサー5を介して受光し、赤外線センサー5自体の温度TO を読み込んで、前述の式(1)から鍋側面温度Taを算出する。次いで、先に算出した鍋側面温度Taとで時間微分し、鍋側面温度Taの微分値を算出する。
さらに、制御回路7は、算出した微分値が予め設定された所定値T1より大きいかどうかを判定し、微分値が所定値T1以下のときは、調理鍋1が赤外線センサー5側にズレていると判定する。この場合は、1.0の係数を選定し、操作部によって設定された加熱電力で調理鍋1が誘導加熱されるように駆動回路6を制御する。そして、赤外線センサー5によって検出された赤外線量Pを読み込み、前述の式(1)から鍋側面温度Taを算出し、その鍋側面温度Taに係数1.0を乗算して内容物温度とし、例えばユーザーが選択した調理メニューのシーケンス温度と比較する。内容物温度がシーケンス温度と異なるときは、内容物温度がシーケンス温度になるように駆動回路6を制御する。なお、微分値が所定値T1以下のとき、1.0の係数を選定するようにしたが、その場合、1.0の係数を選定することなく、鍋側面温度Taを内容物温度としても良い。
また、制御回路7は、前述の微分値が所定値T1より大きいとき調理鍋1が加熱コイル4の内側あるいは赤外線センサー5の反対側にズレて載置されていると判定して、算出した微分値に応じて設定された係数(1.0より小さい値)を選定する。その後は、前述したように、設定された加熱電力で誘導加熱されるように駆動回路6を制御する。そして、赤外線センサー5によって検出された赤外線量Pを読み込み、前述の式(1)から鍋側面温度Taを算出する。次いで、選定した係数を鍋側面温度Taに乗算して内容物温度とし、シーケンス温度と比較する。内容物温度がシーケンス温度と異なるときは、内容物温度がシーケンス温度になるように駆動回路6を制御する。
以上のように実施の形態1によれば、加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の鍋側面温度Taを時間微分し、その微分値が所定値T1以下のとき調理鍋1が赤外線センサー5側にズレていると判定し、微分値が所定値T1より大きいときは調理鍋1が加熱コイル4の内側あるいは赤外線センサー5の反対側にズレて載置されていると判定するようにしたので、調理鍋1と加熱コイル4の位置関係を明確に識別することができる。
また、微分値が所定値T1以下のとき鍋側面温度Taを調理鍋1の内容物温度とし、微分値が所定値T1より大きいときは、その微分値に応じて設定された1.0より小さい係数で鍋側面温度Taを補正して内容物温度とするようにしたので、調理鍋1の側面が赤外線センサー側にズレて加熱コイル4からはみ出していたり、加熱コイル4の内側にあったとしても、調理鍋1の内容物温度を正確に検出することができる。
さらに、鍋側面温度Taの微分値を算出する際、1W以上の所定電力を投入するようにしているので、赤外線センサー5の出力が大きく変化し、微分値に含まれるノイズを少なくできる。さらに、加熱開始の際、熱伝達係数の大きい調理鍋1が加熱され、その後、内容物2に熱が伝わる。また、所定電力を投入する所定時間を30秒以内としているので、調理鍋1のみが加熱される初期での傾きで検出でき、内容部2の影響を受けずに正確に位置を把握することができる。
実施の形態2.
図6は実施の形態2における鍋側面温度の微分値と鍋側面温度を補正する減算値との相関を示す図である。なお、実施の形態2の誘導加熱調理器は、実施の形態1と同様であるため、図1を用いて説明する。
実施の形態2における制御回路7は、図6に示すように、鍋側面温度Taの微分値が所定値T1以下のとき鍋側面温度Taを内容物温度とし、微分値が所定値T1より大きいときは、その微分値に応じて設定された減算値を選定し、鍋側面温度Taを減算値で補正して内容物温度とする。図6に示す所定値T1及び微分値に応じて設定された減算値は、予め制御回路7にデータとして保存されている。このデータは、微分値が大きくなるにつれ減算値が大きくなっている。
次に、実施の形態2の動作を説明する。なお、実施の形態1と異なる部分だけを説明する。
制御回路7は、鍋側面温度Taを時間微分して得られた微分値が予め設定された所定値T1より大きいかどうかを判定し、微分値が所定値T1以下のときは、調理鍋1が赤外線センサー5側にズレていると判定する。この場合は、減算値がゼロであるため、その減算値を選定することなく、操作部によって設定された加熱電力で調理鍋1が誘導加熱されるように駆動回路6を制御する。そして、赤外線センサー5によって検出された赤外線量Pを読み込み、前述の式(1)から鍋側面温度Taを算出し、その鍋側面温度Taを補正することなく内容物温度とし、例えばユーザーが設定した温度と比較する。内容物温度が設定温度と異なるときは、内容物温度が設定温度になるように駆動回路6を制御する。
また、制御回路7は、前述の微分値が所定値T1より大きいとき調理鍋1が加熱コイル4の内側あるいは赤外線センサー5の反対側にズレて載置されていると判定して、算出した微分値に応じて設定された減算値を選定する。その後は、前述したように、設定された加熱電力で誘導加熱されるように駆動回路6を制御する。そして、赤外線センサー5によって検出された赤外線量Pを読み込み、前述の式(1)から鍋側面温度Taを算出する。次いで、先に選定した減算値で鍋側面温度Taを補正して内容物温度とし、ユーザーが設定した温度と比較する。内容物温度が設定温度と異なるときは、内容物温度が設定温度になるように駆動回路6を制御する。
以上のように実施の形態2によれば、加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の鍋側面温度Taを時間微分し、その微分値が所定値T1以下のとき調理鍋1が赤外線センサー5側にズレていると判定し、微分値が所定値T1より大きいときは調理鍋1が加熱コイル4内あるいは赤外線センサー5の反対側にズレて載置されていると判定するようにしたので、調理鍋1と加熱コイル4の位置関係を明確に識別することができる。
また、微分値が所定値T1以下のとき鍋側面温度Taを調理鍋1の内容物温度とし、微分値が所定値T1より大きいときは、その微分値に応じて設定された減算値で鍋側面温度Taを補正して内容物温度とするようにしたので、調理鍋1の側面が赤外線センサー側にズレて加熱コイル4からはみ出していたり、加熱コイル4の内側にあったとしても、調理鍋1の内容物温度を正確に検出することができる。
実施の形態3.
図7は実施の形態3における鍋側面温度の微分値と鍋側面温度を補正する赤外線放射率との相関を示す図である。なお、実施の形態3の誘導加熱調理器は、実施の形態1と同様であるため、図1を用いて説明する。
実施の形態3における制御回路7は、前述した式(1)により鍋側面温度Taを算出する際、赤外線放射率εに約0.2を用いて演算する。これは、例えばステンレス製の鏡面鍋における赤外線放射率εである。また、制御回路7は、図7に示すように、鍋側面温度Taの微分値が所定値T2以下のとき鍋側面温度Taを内容物温度とし、微分値が所定値T2より大きいときは、その微分値に応じて設定された前記0.2より高い赤外線放射率εを選定する。そして、赤外線センサー5の赤外線量Pを基に鍋側面温度Taを算出する際、先に選定した赤外線放射率εを用いて鍋側面温度Taを算出し、それを内容物温度とする。図7に示す所定値T2及び微分値に応じて設定された赤外線放射率εは、予め制御回路7にデータとして保存されている。このデータは、微分値が大きくなるにつれ赤外線放射率εの値が高くなる。
次に、実施の形態3の動作を説明する。なお、実施の形態1と異なる部分だけを説明する。
制御回路7は、鍋側面温度Taを時間微分して得られた微分値が予め設定された所定値T1より大きいかどうかを判定し、その微分値が所定値T以下のときは、調理鍋1が赤外線センサー5側にズレていると判定する。この場合は、赤外線放射率εに0.2を用いているため、その赤外線放射率εを選定することなく、操作部によって設定された加熱電力で調理鍋1が誘導加熱されるように駆動回路6を制御する。そして、赤外線センサー5によって検出された赤外線量Pを読み込み、前述の式(1)から鍋側面温度Taを算出して、その鍋側面温度Taを内容物温度とし、例えばユーザーが設定した温度と比較する。内容物温度が設定温度と異なるときは、内容物温度が設定温度になるように駆動回路6を制御する。
また、制御回路7は、前述の微分値が所定値Tより大きいとき調理鍋1が加熱コイル4内あるいは赤外線センサー5の反対側にズレて載置されていると判定して、その微分値に応じて設定された赤外線放射率εを選定する。その後は、前述したように、設定された加熱電力で誘導加熱されるように駆動回路6を制御する。そして、赤外線センサー5によって検出された赤外線量Pを読み込んで、前述の式(1)に先に選定した赤外線放射率ε(選定した赤外線放射率ε)を取り入れて鍋側面温度Taを算出し、内容物温度としてユーザーが設定した温度と比較する。内容物温度が設定温度と異なるときは、内容物温度が設定温度になるように駆動回路6を制御する。
以上のように実施の形態3によれば、加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の鍋側面温度Taを時間微分し、その微分値が所定値T以下のとき調理鍋1が赤外線センサー5側にズレていると判定し、微分値が所定値Tより大きいときは調理鍋1が加熱コイル4内あるいは赤外線センサー5の反対側にズレて載置されていると判定するようにしたので、調理鍋1と加熱コイル4の位置関係を明確に識別することができる。
また、微分値が所定値T以下のとき鍋側面温度Taを調理鍋1の内容物温度とし、微分値が所定値Tより大きいときは、その微分値に応じて設定された0.2より高い赤外線放射率εで鍋側面温度Taを算出し、内容物温度とするようにしたので、調理鍋1の側面が赤外線センサー側にズレて加熱コイル4からはみ出していたり、加熱コイル4の内側にあったとしても、調理鍋1の内容物温度を正確に検出することができる。
実施の形態4.
図8は実施の形態4を説明するための電力休止時の鍋側面温度の変化を示す図、図9は鍋側面温度の微分値と温度制御時のフィードバック量との相関を示す図である。なお、実施の形態3の誘導加熱調理器は、実施の形態1と同様であるため、図1を用いて説明する。
先ず、調理鍋の内容物量に応じて変化する電力休止時の鍋側面温度について図8を参照しながら説明する。
図8に示すように、所定時間t1での加熱では、調理鍋1の内容物2の熱伝達係数よりも調理鍋1自体の熱伝達係数が大きいため、内容物2より先に調理鍋1が加熱される。休止時間t2では、調理鍋1と加熱コイル4との位置関係で変わるが、調理鍋1の熱が内容物2に奪われて温度が低下する。調理鍋1の内容物2が多い場合は、鍋側面温度Taの低下速度が図8のDに示すように早くなり、内容物2が少ない場合は、同図のCに示すように遅くなる。調理鍋1と加熱コイル4との位置関係で所定時間t1での上昇値が異なるため、C、Dの始まりポイントは変わるが、鍋側面温度Taの低下速度は、調理鍋1と加熱コイル4との位置関係よりも内容物量の影響が大きい。
そこで、実施の形態4は、休止時間t2の間の鍋側面温度Taの微分値を算出し、内容物温度Tbがユーザー設定の温度Tobj となるように制御する際のフィードバック量Kを前述の微分値の大きさから決定して、フィードバック制御(K(Tobj −Tb))を行うようにしたものである。微分値は、調理鍋1の内容物量が多いほど負方向の値(微分値)が大きくなり、内容物量が少ないほど負方向の値(微分値)が小さくなるので、フィードバック量Kは、図9に示すように、微分値が大きくなるほど大きくなり、微分値が小さくなるほど小さくなる。フィードバック量Kが大きくなるほど加熱電力は高くなり、フィードバック量Kが小さくなるほど加熱電力は低くなる。前述の微分値とフィードバック量Kは、予め制御回路7にデータとして保存されている。なお、加熱電力をフィードバック量Kの大きさに応じて変えるようしたことを述べたが、フィードバック量Kが大きくなるほど加熱時間を長く、フィードバック量Kが小さくなるほど加熱時間を短くするようにしても良い。
次に、実施の形態4の動作を説明する。なお、実施の形態1と異なる部分だけを説明する。
制御回路7は、所定電力を所定時間t1投入すると休止時間t2に入る。この時、赤外線センサー5が受ける調理鍋1の側面からの赤外線量P、赤外線センサー5自体の温度TO を読み込んで、前述した式(1)から鍋側面温度Taを算出する。そして、前述の休止時間t2経過したときに、前記と同様に、調理鍋1の側面から放射される赤外線量Pを赤外線センサー5を介して受光し、赤外線センサー5自体の温度TO を読み込んで、前述の式(1)から鍋側面温度Taを算出する。次いで、先に算出した鍋側面温度Taとで時間微分し、鍋側面温度Taの微分値を算出し、その微分値に応じて設定されたフィードバック量Kを選定する。
その後、制御回路7は、操作部によって設定された加熱電力で調理鍋1が誘導加熱されるように駆動回路6を制御する。そして、実施の形態1、2、3で述べたように、鍋側面温度Taから推定した内容物温度Tbとユーザー設定の温度Tobj とを比較する。内容物温度Tbが設定温度Tobj と異なるときは、その温度差(Tobj −Tb)及び先に選定したフィードバック量Kをフィードバックし加熱電力を制御する。前述したように、フィードバック量Kが大きいときは、それに応じて加熱電力が高くなり、フィードバック量Kが小さいときは加熱電力が低くなる。
以上のように実施の形態4によれば、調理鍋1の内容物量が少ないときフィードバック量Kを小さくし、内容物2量が多いときはフィードバック量Kを大きくすることで、内容物量に応じた加熱電力で加熱することができ、そのため、オーバーシュートやアンダーシュートの殆ど無い正確な温度制御を行うことができる。
また、休止時間t2を10秒以上としているので、鍋側面温度Taが大きく変化し、ノイズの少ない微分値を得ることができる。さらに、休止時間t2を2分以内としているので、ユーザーの使い勝手への影響を少なくできる。
なお、実施の形態4では、休止時間t2の間で算出した鍋側面温度Taの微分値でフィードバック量Kを選定するようにしたが、その微分値の大きさに応じて最大投入電力量を選定して、その最大投入電力量に達したときに、調理鍋1の内容物量に応じた加熱終了と推定して加熱コイル4の誘導加熱を停止させるようにしても良い。例えば図10に示すように、微分値が小さいほど最大投入電力量を少なくし、微分値が大きいほど最大投入電力量を多くする。即ち、調理鍋1の内容物量が少ないほど最大投入電力量を少なくし、調理鍋1の内容物量が多いほど最大投入電力量を多くする。
これにより、特に調理鍋1の内容物2が少ないときには最大投入電力量が少なくなるので、調理鍋1の内容物2を焦がしたり、空焚きを防止できる。
1 調理鍋、2 内容物、3 トッププレート、4 加熱コイル、5 赤外線センサー、6 駆動回路、7 制御回路、9 電流検出器、10 電圧検出器。

Claims (7)

  1. 調理鍋が載置されるトッププレートと、
    前記トッププレートの下に設置され、当該トッププレートに載置された調理鍋を加熱する加熱コイルと、
    交流電圧を高周波電圧に変換して前記加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路と、 前記加熱コイルに投入される電力を検知し当該電力が設定電力になるように前記駆動回路を制御する制御回路と、
    前記トッププレートより上側に設けられ、調理鍋の側面から放射される赤外線を受光する赤外線センサーと、
    前記赤外線センサーによって受光された赤外線量に基づいて鍋側面温度を算出する鍋温度算出部とを備え、
    前記制御回路は、加熱開始の際に所定電力を所定時間投入し、その間の前記赤外線センサーからの赤外線量あるいは前記鍋温度算出部の算出による鍋側面温度を時間微分し、その微分値が所定値以下のときには調理鍋が前記赤外線センサー側にズレているとして、前記鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を調理鍋の内容物温度とし、
    前記微分値が所定値より大きいときには調理鍋が前記加熱コイルの内側あるいは前記赤外線センサーの反対側にズレているとして、前記鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を前記微分値に応じて設定された係数で補正して調理鍋の内容物温度とし、
    前記係数の値は、前記微分値が所定値より大きくなるに連れ小さくなるように設定されていることを特徴とする誘導加熱調理器。
  2. 前記制御回路は、前記係数に代えて、前記微分値が所定値より大きくなるに連れ値が大きくなる減算値をデータとして有し、前記微分値が所定値以下のときには調理鍋が前記赤外線センサー側にズレているとして、前記鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を調理鍋の内容物温度とし、
    前記微分値が所定値より大きいときには調理鍋が前記加熱コイルの内側あるいは前記赤外線センサーの反対側にズレているとして、前記鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を前記微分値に応じて設定された減算値で補正し、調理鍋の内容物温度とすることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
  3. 前記鍋温度算出部は、前記赤外線センサーによって受光された赤外線量にステンレス製の鏡面鍋における赤外線放射率を用いて鍋側面温度を算出し、
    前記制御回路は、前記係数に代えて、前記微分値が所定値より大きくなるに連れ前記赤外線放射率より大きくなる赤外線放射率をデータとして有し、前記微分値が所定値以下のときには調理鍋が前記赤外線センサー側にズレているとして、前記鍋温度算出部により算出される鍋側面温度を調理鍋の内容物温度とし、
    前記微分値が所定値より大きいときには調理鍋が前記加熱コイルの内側あるいは前記赤外線センサーの反対側にズレているとして、前記微分値に応じて設定された赤外線放射率を前記鍋温度算出部に設定して鍋側面温度を算出させ、算出された鍋側面温度を調理鍋の内容物温度とすることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
  4. 前記制御回路は、所定電力を所定時間投入した後、その加熱を所定の休止時間のあいだ停止し、その間の前記赤外線センサーの赤外線量あるいは前記鍋温度算出部の算出による鍋側面温度を時間微分し、その微分値に基づいて温度フィードバック制御時の加熱電力あるいは加熱時間を決定し、
    前記微分値は、調理鍋の内容物量が少なくなるほど小さくなり、
    前記微分値が小さいほど、温度フィードバック制御時の加熱電力が小さくあるいは加熱時間が短くなることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の誘導加熱調理器。
  5. 前記制御回路は、前記微分値が大きくなるに連れ値が大きくなる最大投入電力量をデータとして有し、前記微分値に応じて設定された最大投入電力量を選定し、この最大投入電力量に達したときに、調理鍋の内容物量に応じた加熱終了と推定して前記加熱コイルの加熱を停止させることを特徴とする請求項4記載の誘導加熱調理器。
  6. 前記休止時間を10秒以上2分以内としたことを特徴とする請求項4又は5記載の誘導加熱調理器。
  7. 前記所定電力を1W以上、前記所定時間を30秒以内としたことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の誘導加熱調理器。
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