JP5044891B2 - 熱処理装置 - Google Patents
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Description
特許文献1は厚鋼板の熱処理方法および装置に関し、熱間圧延後の厚鋼板を圧延機出側に設けた冷却装置で加速冷却した後、誘導加熱装置で熱処理する製造ラインが記載され、誘導加熱装置としてソレノイド型誘導加熱装置やトランスバース型誘導加熱装置を用いることが示されている。
高周波誘導加熱(移動加熱)する加熱装置では、厚鋼板と搬送ローラの間でスパークが発生し、厚鋼板裏面の側縁部分が損傷し、搬送ローラ表面にスパーク痕を生じる場合があり、その防止のため種々の技術が提案されている。
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1 厚鋼板を移動させる搬送ラインと、前記搬送ライン上に高周波誘導加熱により、厚鋼板を熱処理する誘導加熱装置を備えた厚鋼板の熱処理装置であって、前記誘導加熱装置がソレノイド型誘導加熱装置であり、前記誘導加熱装置の出側の搬送ロールの少なくとも表層がステンレス鋼からなり、前記搬送ロールが、前記厚鋼板より電気抵抗が高く、誘導電流ループが前記厚鋼板の内部のみに形成されることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置(ただし、金属ロールのバレル面と鋼板との間に絶縁リングまたは絶縁層を存在させる場合を除く)。
2 1記載の厚鋼板の熱処理装置において、誘導加熱装置を、隣接する搬送ロール間に配置し、前記誘導加熱装置の出側には、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールが設けられ、前記押し付けロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に、前記搬送ロールに対向して配置されていることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
3 2記載の厚鋼板の熱処理装置における誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールを設けたことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
4 2または3記載の厚鋼板の熱処理装置における押し付けロールの電気抵抗を厚鋼板より高くすることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
5 1記載の厚鋼板の熱処理装置において、複数の誘導加熱装置を、隣接する搬送ロール間に配置し、更に、前記誘導加熱装置のうち少なくとも最上流にある誘導加熱装置の出側には、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールが設けられ、前記押し付けロールのうち少なくとも最上流にある押し付けロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に、前記搬送ロールに対向して配置されていることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
6 5記載の厚鋼板の熱処理装置における誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールを設けたことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
7 5記載の厚鋼板の熱処理装置における押し付けロールの電気抵抗を厚鋼板より高くすることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
図2は本発明の一実施形態に係る誘導加熱装置周辺の構成を説明する図で、図において3は誘導加熱装置本体、31は磁束の漏洩を防止するシールドプレート、6は厚鋼板5より電気抵抗が高い搬送ロールを示す。
その結果、厚鋼板5に生じた歪や、搬送時の振動により、厚鋼板5と搬送ロールとの間に空隙が生じても、スパークの発生が抑制される。
ステンレス鋼としては、非磁性で誘導起電力が小さいオーステナイト系ステンレス鋼が望ましく、特に切削加工が容易で保守性に優れるSUS309の使用が好適である。耐食性が要求される場合はSUS303、SUS304を使用する。ロール全体を上記材質の素材から加工してもよい。
図3は本発明の他の実施形態に係る熱処理装置を示し、誘導加熱装置3の出側と入側の搬送ロール6に対向して、所定の圧下力で厚鋼板5を圧下し、誘導加熱による歪を矯正する押し付けロール7を設けた場合を示す。
押し付けロール7は厚鋼板の変形等を弾性変形内で防止するために厚鋼板を押し付ける所定の圧下力を有する。
押し付けロールは、押し付ける厚鋼板と密接することになるので厚鋼板と同等の電気抵抗としてもよいが、厚鋼板5との間に誘導電流ループを形成しないように厚鋼板5より電気抵抗を高くすることが望ましい。
押し付けロール7と搬送ロール6は、鋼板の表裏面におけるスパーク発生抑制効果を同じとするために同一の電気抵抗値とすることが望ましい。
図4は搬送ロール6や押し付けロール7のロール長さ方向の一部を電気抵抗が高い高電気抵抗部8にした例を示し、図5はロールの垂直断面における表層部9を電気抵抗が高い材質とし、中心部10は炭素鋼程度の電気抵抗の材質とした例を示す。
ロール長さ方向の一部を電気抵抗が高い材質とする場合は、ロール長さ方向における当該材質の部分を、ロール上に配置される、厚鋼板の幅方向の両端部より内側にくるように配置する。
このように配置すると、厚鋼板の幅方向の一方の端部からロールを経由して他の端部に流れる誘導電流が、ロール長さ方向に電気抵抗が高い部分があるため、ロール内を流れにくくなり、ロールと厚鋼板の両端部に空隙が生じた場合でもスパークの発生が抑制される。
尚、本発明では、誘導加熱装置より下流側となる最初の搬送ロールの電気抵抗を高くすれば良く、更に下流側の搬送ロールの電気抵抗を高くする必要はない。誘導加熱装置に厚鋼板が搬入される場合も、漏洩磁束が引き出される場合があるので、誘導加熱装置の入口に最も近い搬送ロールの電気抵抗を高くすることが望ましい。
クラッド鋼板を誘導加熱する場合は、炭素鋼からなる母材を搬送ロールと接触させるとスパークの発生を防止することが可能となる。
本発明は、1台の誘導加熱装置の場合だけでなく複数台の誘導加熱装置を備えた厚鋼板の熱処理装置に適用することが可能である。
図8は、複数台の誘導加熱装置を備えた厚鋼板の熱処理装置に本発明を適用した場合を説明する模式図で、図8(A)〜(G)に示すように、誘導加熱装置3の入側や出側にある搬送ロールの上方に、搬送ロール6に対向して厚鋼板5を上面から押し付けるための押し付けロール7を配置する。
図10に、押し付けロール7の配置と反り高さhの関係を示す。押し付けロール7は
図8(A)〜(G)に示すように、誘導加熱装置3の入側や出側にある搬送ロールの上方に
搬送ロール6に対向して厚鋼板5を上面から押し付けるように配置した。
板厚40mm、板幅2000mmの厚鋼板を用い、搬送ロール間に設けられたソレノイ
ド型誘導加熱装置で、厚鋼板表面温度が60 ℃上昇するように加熱後、誘導加熱装置3の出側における厚鋼板先端部の反り高さhを求めた。押し付けロール7は厚鋼板5に80000Nの押し付け力で押し付けた。
図9に、反り高さhの定義を示す。反りの生じた厚鋼板の最高点を反りが生じないとし
たときの厚鋼板の表面から計った高さとする。図8(C)、(D)、(D)、(E)、(F)及び(G)のように、押し付けロール7を誘導加熱装置3の出側にある搬送ロールの上方に、搬送ロールに対向して設けた場合は、反り高さを20mm以下に抑えることができ、厚鋼板が搬送ロールや誘導加熱装置と衝突するのを防止できる。
一方、押し付けロール7が誘導加熱装置3の出側にある搬送ロールの上方にない(A)や(B)の場合は、反り高さが40mmを超え、鋼板が搬送ロールや誘導加熱装置と衝突する危険性が非常に高い。
押し付けロール7は、図8(C)や(E)のように誘導加熱装置3から1番目の搬送ロール6の上方に配置しても、図9(D)のように誘導加熱装置3から2番目の搬送ロール6の上方に配置しても、同様な効果が得られる。
2番目や3番目の搬送ロールの上方に配置する場合、厚鋼板の先端が加熱装置を通過した後、押し付けロールに衝突したり押し付けロールを乗り上げるようであれば、厚鋼板の先端を押し付けロールに導くようにガイドロールなどを設置してもよい。
尚、図8(F)のように、押し付けロール7は必ずしも搬送ロール6の直上に配置される必要はなく、押し付けロール7と搬送ロール6で厚鋼板4に押し付け力が加えられるように配置されていればよい。
図8(E)のように、誘導加熱装置3の入り側にも押し付けロール7を設けると、誘導加熱装置の入り側で厚鋼板5が図9に示すように幅方向で上側に反っているような場合により効果的である。
最上流の誘導加熱装置3以外の誘導加熱装置3においても大きな温度上昇量で加熱する場合は、該誘導加熱装置3の出側にも押し付けロールを設ける。
板幅が1000mm程度以上になると、反りは幅方向及び長手方向に生じるので、板幅が小さくなるほど大きな押し付け力が必要となり、例えば、板幅が1500mm以下では100000N以上の押し付け力が必要である。一方、板幅が3000mm以上だと、20000N程度の押し付け力で十分である。
誘導加熱装置としては、トランスバース型のものを用いても同様な結果が得られる。
図11または図12の製造ラインを用い、厚鋼板と搬送ロールや誘導加熱装置との衝突の有無および厚鋼板の搬送ロール側となる面のスパーク痕の発生状況を観察した。
圧延機1により板厚12−40mm、板幅1500−4000mmの厚鋼板を製造後、冷却装置2でほぼ室温まで急冷し、熱処理装置11の最上流の誘導加熱装置3により300 ℃まで加熱し、最上流の誘導加熱装置3の出側にある搬送ロール6上方に配置した押し付けロールの押し付け力を種々変えて、厚鋼板と搬送ロールや誘導加熱装置との衝突の有無および厚鋼板の搬送ロール側となる面のスパーク痕の発生状況を観察した。
搬送ロールは、SUS303製のロールとした。なお、図12の製造ラインを用い、厚鋼板を3パスで熱処理装置11を通過させた場合も観察したが、この場合は1パス目で押し付けロールを使用した。
押し付けロールと搬送ロールをSUS303製の肉盛ロールとし、押し付けロールによる圧下の有無の場合についてスパーク痕と歪を観察した。電力投入量は5MWとした。表3に観察結果を示す。押し付けロールを設けた本発明例では、スパーク痕の発生はなく、また反り量も2mmと良好であった。
2 冷却装置
3 誘導加熱装置
31 シールドプレート
4 ホットレベラー
5 厚鋼板(被加熱材)
6 搬送ロール
7 押し付けロール
8 高電気抵抗部
9 表層部
10 中心部
11 熱処理装置
h 反り高さ
Claims (7)
- 厚鋼板を移動させる搬送ラインと、前記搬送ライン上に高周波誘導加熱により、厚鋼板を熱処理する誘導加熱装置を備えた厚鋼板の熱処理装置であって、前記誘導加熱装置がソレノイド型誘導加熱装置であり、前記誘導加熱装置の出側の搬送ロールの少なくとも表層がステンレス鋼からなり、前記搬送ロールが、前記厚鋼板より電気抵抗が高く、誘導電流ループが前記厚鋼板の内部のみに形成されることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置(ただし、金属ロールのバレル面と鋼板との間に絶縁リングまたは絶縁層を存在させる場合を除く)。
- 請求項1記載の厚鋼板の熱処理装置において、誘導加熱装置を、隣接する搬送ロール間に配置し、前記誘導加熱装置の出側には、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールが設けられ、前記押し付けロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に、前記搬送ロールに対向して配置されていることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
- 請求項2記載の厚鋼板の熱処理装置における誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールを設けたことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
- 請求項2または3記載の厚鋼板の熱処理装置における押し付けロールの電気抵抗を厚鋼板より高くすることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
- 請求項1記載の厚鋼板の熱処理装置において、複数の誘導加熱装置を、隣接する搬送ロール間に配置し、更に、前記誘導加熱装置のうち少なくとも最上流にある誘導加熱装置の出側には、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールが設けられ、前記押し付けロールのうち少なくとも最上流にある押し付けロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に、前記搬送ロールに対向して配置されていることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
- 請求項5記載の厚鋼板の熱処理装置における誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押し付けるための押し付けロールを設けたことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
- 請求項5記載の厚鋼板の熱処理装置における押し付けロールの電気抵抗を厚鋼板より高くすることを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
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