JP5042934B2 - 溶接用風防 - Google Patents

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本発明は、屋外、暴露部、風が強い場所での溶接、特にシールドガスを使用するアーク溶接等の溶接時に、風等の影響を受けないで溶接作業できるようにするための溶接用風防に関するものである。
シールドガスにイナートガスを使用する所謂イナートガスアーク溶接においては、強風等の外的要因により不活性ガスが流出することで、溶接欠陥が生じ易く、溶接作業が困難になる。そのため、屋外、暴露部等でのイナートガスアーク溶接では、多くの場合、風を防ぐための風防を用いることが行われている(例えば、特許文献1)。
従来の風防は、鋼材を用いて製作され、四角形の枠状や箱形等に形成されてなるものであって、形状を変更できないものであり、そのため、一般的な平板の板継溶接にしか対応できず、被溶接材の曲がり部や折れ部の溶接、あるいは上向き姿勢での溶接には対応できないものである。
そのため、曲がり部や折れ部等の板継溶接や、直立・上向き姿勢での板継溶接等の変則的な溶接作業においては、大掛かりなオーニング設備により風防することが行われており、このオーニング設備のために、工数・工期が増し、溶接作業がコスト高になるものであった。
特開平8−90241号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになしたものであり、従来の風防では対応できなかった曲がり部や折れ部等の変則的な板継溶接、或いは直立・上向き姿勢での板継溶接に容易に対応でき、風防対策を大掛かりな設備を要さずになし得る溶接用風防を提供することを目的とする。
上記の課題を解決する本発明は、溶接時に溶接個所の周囲を囲う溶接用風防であって、本体部の基本形状が実質的に長方形で、ハンドルを備える短辺側の両風防板と、該両風防板間に介設された長辺側の両風防板とよりなり、長辺側の両風防板は、短冊状をなす多数枚の型板片が一部を重ねた状態で並列して、かつ隣接する型板片同士が前記重ね部において枢着手段により互いに回動可能に順次連結されており、該枢着手段による連結部を中心とする型板片の回動により変形可能に構成されてなることを特徴とする。
この溶接用風防によれば、イナートガス溶接等の溶接の際、前記短辺側の両風防板に備えるハンドルを持って、平板状の被溶接材に対して溶接個所を囲むように本体部全体を当接させることができるばかりか、曲がり部や折れ部等の溶接の際には、前記長辺側の両風防板を屈曲させることで、前記曲がり部や折れ部等の形態に容易に対応させることができる。例えば、長辺側の風防板を構成する型板片を枢着手段による連結部を中心に回動させて該長辺側の風防板の全体を屈曲変形させることにより、本体部を前記曲がり部や折れ部に対応させることができ、被溶接材に対し溶接個所の周囲を囲むように確実に当接させることができる。直立あるいは上向き姿勢での溶接においても、前記同様に本発明の溶接用風防を被溶接材に対し溶接個所を囲むように容易にかつ確実に当接させることができる。
前記の溶接用風防において、前記長辺側の両風防板における各型板片が、被溶接材への当接側とは反対側の端部近傍において順次枢着手段により回動可能に連結されてなるものが好ましい。これにより、前記型板片を前記枢着手段による連結部を中心に回動させることで、前記被溶接材に対する当接側を内周にして屈曲した場合に、各型板片間に隙間を生じることがなく、曲がり部や折れ部における溶接個所を確実に囲むことができる。
前記の溶接用風防において、前記短辺側の両風防板は、それぞれ主板部の両端にそれぞれ長辺側の風防板との連接用側板が突設され、該連結用側板に前記長辺側の枠板部の長手方向両端部の型板片が一部を重ねてかつ該重ね部で枢着手段により回動可能に連結されてなるものが好ましい。これにより長辺側の風防板の全体を屈曲させることが可能になる。
また、前記溶接用風防において、前記短辺側の両風防板に、それぞれ被溶接材への装着用の磁石が取り付けられてなるものが好ましい。これにより、鋼材よりなる被溶接材に対し、前記の磁石を利用して装着し支持しておくことができ、一人の作業者が風防を使用して溶接作業できることになる。
また、前記短辺側の両風防板の被溶接材との当接側端部に、余盛ビード形の溶接部に対応する切欠部が設けられてなるものが好ましい。これにより、風防により囲む溶接個所において、前記余盛ビード形の溶接部が長く延びている場合においても、本発明の風防における本体部の略全周を被溶接材に当接させて、殆ど隙間を生じさせないように囲むことができ、溶接作業を良好に行うことができる。
上記したように、本発明の溶接用風防によれば、シールドガスにイナートガスを使用する所謂イナートガスアーク溶接等の溶接作業において、本体部の基本形状が長方形をなすように形成された四周の風防板のうちの長辺側の両風防板を屈曲変形させることにより、従来の風防では対応できなかった曲がり部や折れ部等の形態に容易に対応させることができ、曲がり部や折れ部等の変則的な板継溶接を容易に行うことができる。また、直立あるいは上向き姿勢での溶接においても、前記同様に本発明の溶接用風防を容易に対応させることができる。
そのため、屋外、暴露部、風が強い場所での各種の板継溶接時における風防対策が容易になり、曲がり部や折れ部等の変則的な板継溶接、或いは直立・上向き姿勢での板継溶接においても、大掛かりなオーニング設備等の風防対策を必要とせず、溶接作業の工数低減、工期短縮、コスト低下に寄与できる。
次に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明の1実施例を示す溶接用風防の斜視図、図2は同上の平面図、図3は同上の長辺側からの側面図、図4は長辺側の風防板の一部の拡大斜視図、図5は前図のV−V線の断面図、図6は短辺側の風防板の風防内方側からの正面図、図7は本発明の風防を曲り部に使用した状態の側面図、図8は折れ部での使用状態の側面図である。
図において、符号Aは本発明の溶接用風防、1は基本形状が平面において実質的に長方形をなす本体部、2,2は操作用のハンドルである。前記本体部1は、図のように、それぞれ外面に前記操作用のハンドル2,2を備えて相対向する短辺側の風防板3,3と、該両風防板3,3間に介設されて相対向する長辺側の両風防板4,4とから、実質的に長方形をなして上下に開口するように連結構成されている。なお、実質的に長方形をなすものとしては、長辺側の風防板4と短辺側の風防板3とが直角をなすもののほか、図2のように長辺側の風防板4が、後述する多節構造のために短辺側の風防板3に対して直角に近い角度をなすように僅かに傾斜している四辺形をなすものも含むものとする。
前記長辺側の両風防板4,4は、本体部1の高さ方向(開口方向)に長い四辺形の短冊状をなす多数枚の型板片41が、図のように幅方向の一部つまり幅方向の側端部を片面側に順次重ねた状態で並列して、かつ隣接する型板片41,41同士が前記重ね部42においてハトメやピン連結部材等の枢着手段43により互いに回動可能に順次連結されて多節構造をなしており、該枢着手段43による連結部を中心とする型板片41の回動により全体として屈曲変形可能に構成されている。
例えば、前記型板片41として、高さ100mm、幅50mm、厚み3mmのアルミニウム製板を用い、重ね部42を幅10mmにして、該重ね部42の幅内で前記のように枢着手段43により回動可能に順次連結する。連結する型板片41の枚数は、風防板4の長さに応じて決定すればよい。もちろん、風防Aを構成する本体部1の大きさ、つまり縦横の寸法や高さに応じて、前記以外の寸法の型板片41を用いて構成することもできる。
前記隣接する型板片41,41同士の連結は、前記重ね部42の高さ方向の中間部などのどの位置にあってもよいが、実施上は、図のように被溶接材10への当接側とは反対側の端部、つまり上端部の近傍において、前記枢着手段43により回動可能に連結しておくのが望ましい。すなわち、前記型板片41を前記枢着手段43による連結部を中心に回動させて前記被溶接材10に対する当接側を内周にして屈曲させた場合に、各型板片41,41間に隙間を生じることがない。
また、前記短辺側の風防板3,3は、それぞれ主板部31の幅方向両端に長辺側の前記風防板4,4との連接用側板32,32が直角に突設されて、図のように平面がコ字形をなしており、該連結用側板32,32に前記長辺側の風防板4の両端部つまり両端の型板片41,41が、それぞれ前記同様のハトメやピン連結部材等の枢着手段43により回動可能に連結されている。
前記短辺側の両風防板3,3の外面には、それぞれ被溶接材10との当接側端(下端)に対し平行に延びる断面L形の型材33,33が、ボルト、ナット等の締結手段34により固定されて取り付けられており、パイプ材よりなる前記ハンドル2が前記型材33に対し溶接手段により固定されている。これにより、前記ハンドル2を前記型材33と共に短辺側の風防板3に取り付け固定できるようになつている。また、前記ハンドル2,2を持って前記風防板4,4を屈曲操作することができるようになっている。
前記ハンドル2,2は、短辺側の両風防板3,3に対し直角をなして本体部1の長手方向に突出した形態をなしているが、これには限らず、本体部1を屈曲操作可能な任意の形態のハンドルを設けて実施することができ、また、前記型材33とは別に短辺側の風防板3,3の一部にハンドルを取設して実施することもできる。
前記短辺側の両風防板3,3には、被溶接材10への装着用の磁石(永久磁石)5が取り付けられており、前記本体部1を鋼材等の被溶接材10に対して磁力により装着し支持できるようになっている。
図示する実施例の場合は、前記風防板3,3の外面に取り付けられた前記型材33,33の両端部が前記風防板3,3より側方に突出して、該両端部の下面に前記磁石5がそれぞれボルト等の締結手段51により脱着可能に取り付けられている。こうして、本体部1の四隅部の近傍に磁石5が設けられており、本体部1の全体を被溶接材10に対し安定性よく装着できるようになっている。前記磁石5を他の取り付け構造により風防板3,3に取り付けて実施することもできる。
いずれにしても、前記磁石5は、前記本体部1を構成する風防板3,3及び4,4の当接側端と略同一平面にあって、前記磁石5による被溶接材10への装着状態においては、各風防板3,3及び4,4が被溶接材10に対し殆ど隙間を生じないで当接するように設けられる。
前記の磁石5としては、被溶接材10の表面が比較的膜厚の大きい塗装部でも、本体部1を装着し支持しておける磁力を有するものが使用され、例えば、フェライト磁石のほか、強力な磁力を有するネオジム磁石等が用いられる。
さらに、前記短辺側の両風防板3,3の被溶接材10との当接側端部には、被溶接材102形成される余盛ビード形の溶接部11に対応する切欠部35が設けられており、風防Aの使用時に、前記余盛ビード形の溶接部11が前記本体部1の長手方向に長く延びている場合に、前記切欠部35を該溶接部11に対応させるようにすることで、本体部1の略全周を被溶接材10に対し殆ど隙間を生じさせないように当接させることができるように形成されている。
なお、前記磁石5以外の本体部1及びハンドル2等の構成材としては、種々の金属材料を用いることができるが、締結手段として用いるボルト、ナット等を除いて非磁性金属で軽量なアルミニウムが好適に用いられる。これにより、本体部1が軽量で、作業性や運搬性を向上でき、かつ耐火及び耐熱性、遮光性を同時に得ることができる。
上記した本発明の溶接用風防Aは、屋外、暴露部、風が強い場所でのアーク溶接、特にシールドガスにイナートガスを使用する所謂イナートガスアーク溶接において使用し、前記短辺側の両風防板3,3に備えるハンドル2,2を持って、平板状の被溶接材10に対して溶接個所を囲むように本体部1の全体を当接させる。この際、被溶接材10が鋼材等のばあいは、磁石5の磁力により装置し支持しておくことができ、風の影響を受けることなく溶接を行うことができる。
また、被溶接材10の曲がり部や折れ部等の溶接の際には、前記ハンドル2.2を持って、例えば図7あるいは図8に示すように、本体部1における長辺側の両風防板4,4を屈曲させることで、前記曲がり部や折れ部等の種々の曲率の屈曲形態に容易に対応させることができる。すなわち、長辺側の風防板4,4は、多数の型板片41を枢着手段43によ回動可能に連結して多節構造をなしているので、各型板辺41を前記連結部を中心に回動させることにより、該長辺側の風防板4,4の全体を任意に屈曲変形させることができ、本体部1を前記曲がり部や折れ部に対応させて被溶接材10に対し溶接個所の周囲を囲むように確実に当接させることができる。また、磁石5により前記の当接状態に装着し支持することができ、溶接作業を風の影響を受けることなく行うことができる。特に、前記のように磁石を利用して装着し支持することで、直立あるいは上向き等のどのような姿勢での溶接においても、前記同様に風防Aを被溶接材に対し溶接個所を囲むように容易にかつ確実に当接させることができ、溶接作業を容易に行うことができる。
さらに、前記のように、風防Aの本体部1の全体を被溶接材10に対し当接差せて溶接個所の周囲を囲むことができるので、溶接時のアーク光による進退的影響も軽減することができる。特に、図示する実施例のように、短辺側の両風防板3,3の被溶接材10との当接側端部に余盛ビード形の溶接部11に対応する切欠部35が設けられている場合は、余盛ビード形の溶接部11が長く延びていても、前記切欠部35を該溶接部11に対応させることで、殆ど隙間を生じさせずに被溶接材10に当接させることができ、アーク光が殆ど漏れることがない。
したがって、本発明の溶接用風防Aを使用することにより、屋外、暴露部、風が強い場所での各種の板継溶接時における風防対策が容易になり、大掛かりなオーニング設備などの風防対策を必要とせず、溶接作業の工数低減、工期短縮、コスト低下に寄与できる。
本発明は、屋外、暴露部、風が強い場所での溶接、特にシールドガスを使用するアーク溶接等の溶接に好適に使用できる。
本発明の1実施例を示す溶接用風防の斜視図である。 同上の平面図である。 同上の長辺側からの側面図である。 長辺側の風防板の一部の拡大斜視図である。 前図のV−V線の断面図である。 短辺側の風防板の風防内方側からの正面図である。 本発明の風防を曲り部に使用した状態の側面図である。 折れ部での使用状態の側面図である。
符号の説明
A…溶接用風防、1…本体部、2…ハンドル、3…短辺側の風防板、4…長辺側の風防板、5…磁石、10…被溶接材、11…余盛ビード形の溶接部、31…主板部、32…連接用側板、33…型材、34…締結手段、35…切欠部、41…型板片、42…重ね部、43…枢着手段、51…締結手段。

Claims (5)

  1. 溶接時に溶接個所の周囲を囲う溶接用風防であって、本体部の基本形状が実質的に長方形で、ハンドルを備える短辺側の両風防板と、該両風防板間に介設された長辺側の両風防板とよりなり、長辺側の両風防板は、短冊状をなす多数枚の型板片が一部を重ねた状態で並列して、かつ隣接する型板片同士が前記重ね部において枢着手段により互いに回動可能に順次連結されており、該枢着手段による連結部を中心とする型板片の回動により変形可能に構成されてなることを特徴とする溶接用風防。
  2. 前記長辺側の両風防板における各型板片が、被溶接材への当接側とは反対側の端部近傍において枢着手段により回動可能に順次連結されてなる請求項1に記載の溶接用風防。
  3. 前記短辺側の両風防板は、それぞれ主板部の両端にそれぞれ長辺側の風防板との連接用側板が突設され、該連結用側板に前記長辺側の枠板部の長手方向両端部の型板片が一部を重ねてかつ該重ね部で枢着手段により回動可能に連結されてなる請求項1または2に記載の溶接用風防。
  4. 前記短辺側の両風防板に、それぞれ被溶接材への装着用の磁石が取り付けられてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接用風防。
  5. 前記短辺側の両風防板の被溶接材との当接側端部に、余盛ビード形の溶接部に対応する切欠部が設けられてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接用風防。
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