本発明のゴルフボールは、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーが、樹脂成分(A)として、ジカルボン酸、ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸を構成成分として有するものであって、ジカルボン酸、ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つが脱石油系材料である脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、およびこれらの金属塩から選択される少なくとも一種の石油系熱可塑性樹脂(a−2)と、相溶化剤(B)として、少なくとも、極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)と極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とを含むカバー用組成物から形成されていることを特徴とする。
まず、樹脂成分(A)として用いられる脱石油系材料を構成成分として有する脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)(以下、単に「脱石油系ポリエステル樹脂」と称する場合がある)について説明する。
前記脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)は、ジカルボン酸、ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸を構成成分として有するものであって、ジカルボン酸、ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つが、脱石油系材料であれば良く、例えば、ジカルボン酸とジオールとを構成成分とする共重合系ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸およびジオールのうち少なくとも一つを脱石油系材料とするポリエステル樹脂;ジカルボン酸と、ジオールと、ヒドロキシカルボン酸とを構成成分とする共重合系ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸、ジオールおよびヒドロキシカルボン酸のうち少なくとも一つを脱石油系材料とするポリエステル樹脂;ポリヒドロキシカルボン酸ブロックと、ジカルボン酸と、ジオールとを構成成分とする共重合系ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸、ジオール、ヒドロキシカルボン酸のうち少なくとも一つを脱石油系材料とするポリエステル樹脂を挙げることができる。
ここで、脱石油系材料とは、石油を精製、接触改質、接触分解することなどによって得られる材料ではなく、コーン、イモ類、ビート、サトウキビなどの植物に由来する材料である。例えば、コーン、イモ類、ビート、サトウキビなどをでんぷんや糖類(セルロースなど)に加工し、得られたでんぷんを微生物で醗酵させることによって得られる。また、植物性油脂や動物性油脂を用いて、公知の醗酵法および/または化学変換法により作ることもできる。
このような植物由来の脱石油系材料は、大気中の二酸化炭素を吸収し、固定化することができる。また、植物由来の脱石油系材料を焼却した際に発生する二酸化炭素は、もともと大気中に存在したものであるから、石油系材料を焼却した場合のように大気中の二酸化炭素量を増加させることはない。よって、カバー用組成物の樹脂成分として、脱石油系ポリエステル樹脂を用いることにより、大気中の二酸化炭素量の増加を抑制することができ、地球温暖化の防止に寄与することができる。
前記ジカルボン酸としては、分子内にカルボキシル基を2個有する有機化合物であれば特に限定されず、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、および、ビフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸が挙げられ、例示のものを単独あるいは2種以上の混合物として用いても良い。これらの中でも、脱石油系材料として、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸、および、ピルビン酸などを使用することが好ましい。
前記ジオールとしては、分子内にヒドロキシル基を2個有する有機化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロへキサンジオール、および、ビスフェノールAなどのジオールを挙げることができ、例示のものを単独あるいは2種以上の混合物として用いても良い。これらの中でも、脱石油系材料として、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、および、エチレングリコールなどを使用することが好ましい。
前記ヒドロキシカルボン酸とは、分子内にヒドロキシル基とカルボキシル基とをそれぞれ1個ずつ有する有機化合物であれば、特に限定されず、例えば、乳酸、ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、ヒドロアクリル酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸などを挙げることができ、例示のものを単独あるいは2種以上の混合物として用いても良い。
これらの中でも、特に好ましいのは、ジオール成分としてブタンジオールを用い、ジカルボン酸成分としてコハク酸を用いたポリブチレンサクシネート、ジオール成分としてブタンジオールを用い、ジカルボン酸成分としてコハク酸とアジピン酸とを用いたポリブチレンサクシネートアジペートを挙げることができる。一般に剛性が高い高分子材料は、硬度も高くなるため、カバーを構成する樹脂成分として用いた場合には、得られるカバーが脆くなって却って耐久性が低下する。しかしながら、前記ポリブチレンサクシネートおよびポリブチレンサクシネートアジペートは、剛性が高い割に硬度が低いので、カバーを構成する樹脂成分として用いた場合に、耐久性を高めることができる。前記脱石油系ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂を合成する公知の方法で合成することができる。
前記ポリブチレンサクシネートまたはポリブチレンサクシネートアジペートとしては、例えば、重量平均分子量が5万以上20万以下(好ましくは、7万〜8万)で、ガラス転移温度が−40℃以上−10℃以下(好ましくは−30℃〜−20℃)、メルトフローレート(MFR)(190℃、2.16kg荷重)が2g/10min〜30g/10min(好ましくは5g/10min〜20g/10min)のものを好適に使用することができる。
前記脱石油系ポリエステル樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で70以下が好ましく、68以下がより好ましく、65以下がさらに好ましい。前記脱石油系ポリエステル樹脂のスラブ硬度が、ショアD硬度で70を超えると、得られるカバーが硬くなりすぎて、却って耐久性が低下する場合がある。また、前記脱石油系ポリエステル樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で30以上が好ましく、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。前記脱石油系ポリエステル樹脂のスラブ硬度が、30未満であると、粘着性が強くなって、反発性が低下するからである。前記脱石油系ポリエステル樹脂のスラブ硬度は、例えば、共重合成分の種類、含有比率、得られるポリエステル樹脂の分子量などを適宜選択することにより、上記範囲にすることができる。例えば、ポリ乳酸とブタンジオールとコハク酸との共重合ポリエステル樹脂は、ポリブチレンサクシネートにポリ乳酸を混合した場合に比べて、低硬度になるため耐久性が優れる。
次に、樹脂成分(A)として用いられるエチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、およびこれらの金属塩から選択される少なくとも一種の石油系熱可塑性樹脂(a−2)について説明する。
前記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体に使用されるα,β−不飽和カルボン酸とは、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有しており、少なくともα,β位の炭素がエチレン性不飽和二重結合を形成する化合物である。α,β−不飽和カルボン酸は、炭素数が3〜18個であることが好ましく、より好ましくは炭素数が3〜8個である。前記炭素数が3〜18個のα,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸(trans−2−ブテン酸)、イソクロトン酸(cis−2−ブテン酸)、ソルビン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。
また、前記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体に使用されるα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸(trans−2−ブテン酸)、イソクロトン酸(cis−2−ブテン酸)、ソルビン酸、シトラコン酸、メサコン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが挙げられる。
本発明で使用される前記二元共重合体として、特に好ましいのは、エチレンと(メタ)アクリル酸とを共重合してなる二元共重合体であり、また、前記三元共重合体として特に好ましいのは、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合してなる三元共重合体である。
エチレンと(メタ)アクリル酸とを共重合してなる二元共重合体の具体例を商品名でしめすと、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、ニュクレルAN4214C、ニュクレルAN4225C、ニュクレルAN42115C、ニュクレルN0903HC、ニュクレルN0908C、ニュクレルAN42012C、ニュクレルN410、ニュクレルN1035、ニュクレルN1050H、ニュクレルN1108C、ニュクレルN1110H、ニュクレルN1207C、ニュクレルN1214、ニュクレルAN4221C、ニュクレルN1525、ニュクレルN1560、ニュクレルN0200H、ニュクレルAN4228C、ニュクレルN4213C、ニュクレルN035Cなど)」が挙げられ、また、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合してなる三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、ニュクレルAN4311、ニュクレルAN4318などが挙げられる。
前記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属塩とは、前述したα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸が有するカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものであり、例えば、アイオノマー樹脂を挙げることができる。
前記アイオノマー樹脂中の酸成分(不飽和カルボン酸成分)の含有量は、5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であって、30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であることが望ましい。酸成分(不飽和カルボン酸成分)の含有量が5質量%未満では、流動性は良いが所望の硬さ、剛性が得られず、30質量%超では、硬さや剛性は高くなるものの、流動性が悪くなる場合があるからである。
前記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体または、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属(イオン)としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属(イオン);マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属(イオン);アルミニウムなどの3価の金属(イオン);錫、ジルコニウムなどのその他の金属(イオン)が挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウム(イオン)が反発性、耐久性などから好ましく用いられる。
前記アイオノマー樹脂が含有するカルボキシル基の中和度は、5モル%以上が好ましく、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上であって、100モル%以下が好ましく、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。なお、カルボキシル基の中和度は、下記式で定義される。
中和度=100×[アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂が有するカルボキシル基の総モル数]
前記中和は、例えば、高圧ラジカル共重合によりエチレン系二元共重合体あるいは三元共重合体などを溶融させ、溶融した前記共重合体に、所定量の無機金属化合物を添加し、混練することにより行うことができ、具体的には、前記共重合体などと前記無機金属化合物とを押出成形機を用いて、150〜300℃で溶融混練することによって行うことができる。無機金属化合物としては、上述した金属の水酸化物、酸化物、炭酸化物(炭酸塩)、炭酸水素化物(炭酸水素塩)、リン酸化物(リン酸塩)、硫酸化物(硫酸塩)、酢酸塩などを使用すれば良く、好ましくは、水酸化物または酸化物である。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)など)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。前記アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
前記樹脂成分(A)中の、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と前記石油系熱可塑性樹脂(a−2)との含有量比率(合計100質量部)は、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)/石油系熱可塑性樹脂(a−2)=50質量部〜95質量部/5質量部〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは50質量部〜60質量部/40質量部〜50質量部である。脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と前記石油系熱可塑性樹脂(a−2)との含有量比率が上記範囲外の場合には、カバー用組成物の成形性が悪くなったり、カバー用組成物の曲げ剛性が低下し、ドライバーでのショットにおけるゴルフボールのスピン量が増えて飛距離が低下するおそれがある。
また、樹脂成分(A)は、前述した脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)および石油系熱可塑性樹脂(a−2)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で他の石油系熱可塑性樹脂を含ませてもよい。他の石油系熱可塑性樹脂の具体例としては、例えばアルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミド樹脂、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステル樹脂、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレン系樹脂、BASFポリウレタンエラストマーズ社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランET880」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。
前記樹脂成分(A)中の前記脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。前記脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)の合計含有率を80質量%以上とすることによって、耐久性の向上効果が顕著になる。なお、樹脂成分(A)は、前述した脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)および石油系熱可塑性樹脂(a−2)のみからなることが好ましい態様である。
次に、少なくとも、極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)と極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とを含む相溶化剤(B)について説明する。相溶化剤(B)は、前述した脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)とを相溶させるために用いられるものである。単に、前記脱石油系ポリエステル樹脂と石油系熱可塑性樹脂とを混合するのみでは、石油系熱可塑性樹脂の種類によっては相分離してしまい、得られるゴルフボールの外観が低下する場合があるからである。
本発明においては、相溶化剤(B)として、少なくとも極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)と極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とを使用する。極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)は、(メタ)アクリル骨格の極性が高いので脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)との相溶性は良いが、石油系熱可塑性樹脂(a−2)との相溶性が悪い。一方、極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)は、オレフィン骨格の極性が低いので石油系熱可塑性樹脂(a−2)との相溶性は良いが、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)との相溶性が悪い。そのため、これら極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)または極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)を単独で使用しても脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)との相溶性を十分に高めることができない。しかし、これらの極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)と極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とを併用することにより、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)との相溶性を一層高めることができる。これにより、カバー組成物中の脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)との相互分散性が向上し、さらに、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)との界面強度が向上して、ゴルフボールの耐久性が改善される。
本発明において、極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)とは、(メタ)アクリル酸および/またはその誘導体を構成成分とする重合体であって、極性官能基が導入されたものである。ここで、極性官能基とは、極性を有する官能基であって、樹脂が極性を発生する要因となる官能基であり、例えば、エポキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、ニトリル基、スルホン酸基などを挙げることができる。
(メタ)アクリル系重合体に極性官能基を導入する態様としては、例えば、極性官能基含有(メタ)アクリル系単量体のみを重合する態様;極性官能基含有(メタ)アクリル系単量体と、極性官能基を有さない(メタ)アクリル系単量体および/または(メタ)アクリル系単量体以外の単量体とを共重合する態様;極性官能基を有さない(メタ)アクリル系単量体と(メタ)アクリル系単量体以外の極性官能基含有単量体とを共重合する態様が挙げられる。本発明においては、極性官能基含有(メタ)アクリル系単量体と、極性官能基を有さない(メタ)アクリル系単量体および/または(メタ)アクリル系単量体以外の単量体とを共重合する態様が好ましく、特に、極性官能基含有(メタ)アクリル系単量体として、(メタ)アクリル酸エステルに極性官能基を導入したものを用いた態様が好適である。
前記極性官能基を有さない(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中でもメチル(メタ)アクリレートが好適である。
前記極性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体が有する極性官能基としては、好ましくは、グリシジル基に代表されるエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基などであり、これらの中でもグリシジル基がより好ましい。
前記極性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有アクリル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有アクリル系単量体などを挙げることができる。これらの中でも、グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有アクリル系単量体が好適である。
そして、極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)としては、例えば、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、エポキシ基含有アクリル系ポリマーなどを挙げることができる。これらの極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体がより好適に用いられる。
また、本発明において、極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とは、オレフィンと極性官能基を有する単量体との共重合体であって、共重合体中のオレフィン含有量が50質量%以上のものをいうものとする。
前記オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテンなどを挙げることができ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エチレン、プロピレンが好適に用いられる。
前記極性官能基を有する単量体が有する極性官能基としては、好ましくは、グリシジル基に代表されるエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基などを挙げることができ、これらの中でもグリシジル基がより好ましい。
前記極性官能基を有する単量体としては、上述したグリシジル(メタ)アクリレートなどの極性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の他に、例えば、2−ビニルオキシラン、(アリルオキシ)オキシランなどのエポキシ基含有単量体;ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどの水酸基含有単量体;ビニルスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体などを挙げることができる。これらの極性官能基を有する単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、極性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有アクリル系単量体がより好適である。
極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)としては、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックポリマー(SEBS)、マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−オレフィン結晶ブロックポリマー(SEBC)、マレイン酸変性ポリエチレン(PE)、マレイン酸変性ポリプロピレン(PP)、マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、およびマレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エポキシ基含有スチレン系ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が好適である。
前記極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)は、共重合体中のオレフィン含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
なお、前記相溶化剤(B)として使用可能なものの中には、例えば、エチレン−メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体などのように、分子中にオレフィンと(メタ)アクリレートとを併せ持つものもあるが、本発明では、このような共重合体については、共重合体中のオレフィン含有率が50質量%以上のものはオレフィン系樹脂(b−2)として扱い、共重合体中のオレフィン含有率が50質量%未満のものは(メタ)アクリル系樹脂(b−1)として扱うものとする。
前記カバー用組成物中の前記相溶化剤(B)の含有量は、樹脂成分(A)100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、また、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。前記相溶化剤(B)の含有率が1質量部未満では、前述した脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と石油系熱可塑性樹脂(a−2)との相溶性を十分に高めることができず、得られるゴルフボールの耐久性が低下するおそれがある。また、30質量部を超えると、カバー用組成物の流動性が低下して成形が困難になったり、得られるカバーが軟質化したりするおそれがある。
前記相溶化剤(B)中の(メタ)アクリル系樹脂(b−1)に対するオレフィン系樹脂(b−2)の含有量比(アクリル系樹脂(b−1)/オレフィン系樹脂(b−2))は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(b−1)に対するオレフィン系樹脂(b−2)の含有量比が、0.1未満では、前記樹脂成分(A)中の、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と前記石油系熱可塑性樹脂(a−2)との相互分散性が悪くなり、ゴルフボールの反発が低下するおそれがある。また、含有量比が8を超えると、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)と前記石油系熱可塑性樹脂(a−2)との界面強度が弱くなり、ゴルフボールの耐久性が低下するおそれがある。
本発明のゴルフボールのカバー用組成物は、上述した樹脂成分(A)、相溶化剤(B)のほか、白色顔料(酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分(A)100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
本発明のカバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で40以上であり、より好ましくは45以上であり、さらに好ましくは50以上であって、70以下であって、より好ましくは68以下であり、さらに好ましくは65以下であることが望ましい。カバー用組成物のスラブ硬度を40以上とすることによって、得られるカバーの剛性が高まり、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。一方、スラブ硬度を70以下とすることによって、耐久性が一層向上する。
本発明のカバー用組成物の曲げ剛性率は、好ましくは200MPa以上であり、より好ましくは210MPa以上であり、さらに好ましくは230MPa以上であって、好ましくは600MPa以下であり、より好ましくは550MPa以下であり、さらに好ましくは500MPa以下であることが望ましい。カバー用組成物の曲げ剛性が200MPa未満では、ドライバーでのショットにおいて、スピン量が増加するため飛距離が低下するおそれがある。一方、曲げ剛性が600MPaを超えると、カバーが硬くなりすぎて、耐久性が低下するおそれがある。
本発明のカバー用組成物の反発弾性率は、好ましくは55%以上であり、より好ましくは56%以上であり、さらに好ましくは57%以上であることが望ましい。カバー用組成物の反発弾性率が55%未満では、期待するボール反発が得られないおそれがある。
本発明のカバー用組成物のMFR(190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは1g/10min以上であり、より好ましくは2g/10min以上であり、さらに好ましくは3g/10min以上であって、好ましくは10g/10min以下であり、より好ましくは9g/10min以下であり、さらに好ましくは8g/10min以下であることが望ましい。カバー用組成物の曲げ剛性が上記範囲外では、カバーの成形性が悪くなるおそれがある。
本発明のゴルフボールのカバーは、上述した樹脂成分(A)、相溶化剤(B)および各種添加剤を混練して得られるカバー用組成物を用いて成形することにより作製される。カバー用組成物の混練には、公知の混練方法を採用することができるが、例えば、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機を用いて混練する場合には、押出温度を180℃以上、フィード量を3kg/h以上、スクリュー回転数を200rpm以上、スクリューL/Dを30以上とすることが好ましい。
カバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。カバー用組成物をコア上に直接射出成形してカバーを成形する場合、カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
カバーを成形したゴルフボールは、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、ペイント層やマークを形成することもできる。
本発明において、ゴルフボールのカバーの厚みは、3.0mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。3.0mm以下とすることによって、反発性や打球感が良好になるからである。カバーの厚みの下限は、特に限定されるものではないが、例えば、0.3mmが好ましく、0.5mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。0.3mm未満では、カバーの成形が困難になる虞があるからである。また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
また、カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。図1はゴルフボール2の一部が示された拡大断面図である。この図には、ディンプル10の最深箇所Pおよびゴルフボール2の中心を通過する断面が示されている。図1における上下方向は、ディンプル10の深さ方向である。深さ方向は、ディンプル10の面積重心からゴルフボール2の中心へ向かう方向である。図1において二点鎖線14は、仮想球を示している。仮想球14の表面は、ディンプル10が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。ディンプル10は、仮想球14から凹陥している。ランド12は、仮想球14と一致している。
図1において両矢印Diは、ディンプル10の直径を示している。この直径Diは、ディンプル10の両側に共通の接線Tが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル10のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル10の輪郭を画定する。直径Diは、2.0mm以上6.0mm以下が好ましい。直径Diが2.0mm未満であると、ディンプル効果が得られにくく、また、直径Diが6.0mmを超えると、実質的に球であるというゴルフボール2の本来的特徴が損なわれる。
ディンプル10の面積sは、無限遠からゴルフボール2の中心を見た場合の、エッジラインに囲まれた領域の面積(すなわち平面形状の面積)である。面積sは、s=(Di/2)2×πによって算出される。全てのディンプル10の面積sの合計が仮想球14の表面積に占める比率は、占有率と称される。十分なディンプル効果が得られるとの観点から、占有率は75%以上が好ましい。
ディンプルの容積は、ディンプル10の輪郭を含む平面と仮想球14とに囲まれた部分の容積を意味する。ディンプル10の総容積は、250mm3以上400mm3以下が好ましい。総容積が250mm3未満であると、ホップする弾道となることがある。また、総容積が400mm3を超えると、ドロップする弾道となるおそれがある。
また、図1において、接線Tと最深箇所Pとの距離は、ディンプル10の深さである。深さは、0.05mm以上0.60mm以下が好ましい。深さが0.05mm未満であると、ホップする弾道となることがある。また、深さが0.60mmを超えると、ドロップする弾道となることがある。そして、ディンプル10の総数は、200個以上500個以下が好ましい。総数が200個未満であると、ディンプル効果が得られにくい。また、総数が500個を超えると、個々のディンプル10のサイズが小さいことに起因してディンプル効果が得られにくい。
本発明のゴルフボールは、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーが、樹脂成分(A)として、ジカルボン酸、ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸を構成成分として有するものであって、ジカルボン酸、ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つが脱石油系材料である脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、およびこれらの金属塩から選択される少なくとも一種の石油系熱可塑性樹脂(a−2)と、相溶化剤(B)として、少なくとも、極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)と極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とを含むカバー用組成物から形成されているものであれば特に限定されないが、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボールに好適に適用できる。
次に、本発明のゴルフボールにおけるコアの好ましい態様について説明する。
本発明のゴルフボールのコアの構造としては、例えば、単層のコア、センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコア、センターと前記センターを被覆する複数もしくは複層の中間層とからなるコアなどを挙げることができる。また、コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になる。その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるからである。一方、センターの形状としては、球状が一般的であるが、球状センターの表面を分割するように突条が設けられていても良く、例えば、球状センターの表面を均等に分割するように突条が設けられていても良い。前記突条を設ける態様としては、例えば、球状センターの表面にセンターと一体的に突条を設ける態様、あるいは、球状センターの表面に突条の中間層を設ける態様などを挙げることができる。
前記突条は、例えば、球状センターを地球とみなした場合に、赤道と球状センター表面を均等に分割する任意の子午線とに沿って設けられることが好ましい。例えば、球状センター表面を8分割する場合には、赤道と、任意の子午線(経度0度)、および、斯かる経度0度の子午線を基準として、東経90度、西経90度、東経(西経)180度の子午線に沿って設けるようにすれば良い。突条を設ける場合には、突条によって仕切られる凹部を、複数の中間層、あるいは、それぞれの凹部を被覆するような単層の中間層によって充填するようにして、コアの形状を球形とするようにすることが好ましい。前記突条の断面形状は、特に限定されることなく、例えば、円弧状、あるいは、略円弧状(例えば、互いに交差あるいは直交する部分において切欠部を設けた形状)などを挙げることができる。
本発明のゴルフボールのコアまたはセンターには、従来より公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を採用することができ、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
前記架橋開始剤としては、有機過酸化物を好適に使用できる。前記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下、より好ましくは3質量部以下であることが望ましい。0.3質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、硬くなりすぎて、打球感が低下するからである。
前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用できる。前記金属塩を構成する金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。前記α,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩として好ましいのは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛である。
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であって、55質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下であることが望ましい。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の使用量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下する虞がある。
前記充填剤は、ゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、無機塩(具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)、高比重金属粉末(例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末など)およびそれらの混合物が挙げられる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下、好ましくは20質量部以下であることが望ましい。0.5質量部未満では、比重調整が困難になり適正な重量が得られなくなり、30質量部を超えるとコア全体に占めるゴム分率が小さくなって反発性が低下するからである。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。ジフェニルジスルフィド類の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃〜200℃で10分〜60分間加熱するか、あるいは130℃〜150℃で20分〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分〜15分間と2段階加熱することが好ましい。
また、本発明のゴルフボールが、スリーピースゴルフボールやマルチピースゴルフボールの場合、中間層としては、例えば、ゴム組成物の硬化物、従来公知のアイオノマー樹脂の外、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマー等が挙げられる。前記アイオノマー樹脂としては、特にエチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはこれらの混合物を挙げることができる。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)など)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステン等の比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
本発明のゴルフボールに使用するコアは、直径36.8mm以上、好ましくは37.2mm以上、より好ましくは37.6mm以上で、42.2mm以下、好ましくは41.2mm以下、より好ましくは40.8mm以下とするのが好ましい。コアの直径が上記下限に満たない場合には、カバーが厚くなり過ぎて反発性が低下し、一方コアの直径が上記上限を超える場合には、カバーの厚さが薄くなりすぎるため、カバーの成形が困難になるからである。
前記コアは、直径36.8mm〜42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.0mm以上、より好ましくは2.1mm以上であって、更に好ましくは2.3mm以上であって、5.0mm以下、より好ましくは4.7mm以下、更に好ましくは4.5mm以下であることが望ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm未満では打球感が硬くて悪くなり、5.0mmを超えると、反発性が低下する場合がある。
前記コアとしては、表面硬度が中心硬度より大きいものを使用することも好ましい態様である。コアの表面硬度を中心硬度より大きくすることで、打出角が高くなり、スピン量が低くなって飛距離が向上する。この観点から本発明のゴルフボールに使用するコアの表面と中心との硬度差は、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。硬度差が前記下限に満たない場合は、高打出角化および低スピン量を達成し難いため飛距離が低下する傾向にある。また、打撃時の衝撃力が大きくなるためソフトで良好な打球感が得られ難い。一方、硬度差が上記上限を超える場合には耐久性が低下する傾向にある。
前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で30以上、好ましくは32以上、より好ましくは35以上であり、50以下、好ましくは48以下、より好ましくは45以下であることが望ましい。中心硬度が上記下限より小さいと、柔らかくなり過ぎて反発性が低下する傾向があり、上記上限を超えると、硬くなりすぎて打球感の低下や、打出角の低下が発生し、またスピン量も大きくなって飛行性能が低下する。なお、本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で45以上、好ましくは50以上、より好ましくは55以上であり、65以下、好ましくは62以下、より好ましくは60以下である。表面硬度が上記下限より小さいと、柔らかくなり過ぎて反発性の低下や打出角の低下が生じたり、スピン量が大きくなって飛行性能が低下する場合がある。表面硬度が上記上限より大きいと、硬くなりすぎて打球感が低下する場合がある。なお、本発明においてコアの表面硬度とは、得られた球状コアの表面においてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。また、コアが多層構造である場合は、コアの表面硬度とは、コアの最外層の表面の硬度を意味する。
本発明のゴルフボールが、糸巻きゴルフボールの場合、コアとして糸巻きコアを用いれば良い。斯かる場合、糸巻きコアとしては、例えば、上述したコア用ゴム組成物を硬化させてなるセンターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成るものを使用すればよい。また、前記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを使用することができ、例えば、天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤などを配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻きつけて糸巻きコアを作製する。
本発明のゴルフボールは、直径42.67mm〜43mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.1mm以上であって、さらに好ましくは2.3mm以上であって、3.5mm以下が好ましく、より好ましくは3.3mm以下であって、さらに好ましくは3.2mm以下であることが望ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm未満では打球感が硬くて悪くなり、3.5mmを超えると、反発性が低下する場合がある。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
[評価方法]
(1)コア硬度(JIS−C、ショアD)
JIS K6301に規定するスプリング式硬度計C型またはショアD型を用いて、ゴルフボールまたはコアの表面部において測定したJIS−C硬度をゴルフボールまたはコアの表面硬度とし、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したJIS−C硬度をコアの中心硬度とした。
(2)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールまたはコアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールまたはコアが縮む量)を測定した。
(3)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の上記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とした。なお、反発係数は、ゴルフボールNo.10の反発係数を100として、指数化した値で示した。
(4)割れ耐久性
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製#W1ドライバーを取り付け、各ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃して衝突板に衝突させた。これを繰り返して、ゴルフボールが壊れるまでの打撃回数を測定した。測定は各ゴルフボールについて6個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの割れ耐久性とした。
(5)打出し角(°)、スピン量(rpm)および飛距離(m)
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(SRIスポーツ社製、XXIO 4 Rシャフト ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード40m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後の打出し角(°)、スピン速度(rpm)および飛距離(発射始点から静止地点までの距離(m))を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの飛距離とした。なお、打撃直後のゴルフボールの速度およびスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン速度およびボール初速度を測定した。
(6)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(7)曲げ剛性率
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートの曲げ剛性率を、JIS K7106に準じて測定した。
(8)反発弾性率
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製および試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
(9)メルトフローレート(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃、荷重2.16kgの条件で行った。
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のセンター用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃で15分間加熱プレスすることにより球状のセンターを得た。
BR730:JSR(株)製のハイシスポリブタジエン(シス含有率96%以上)
アクリル酸亜鉛:日本蒸留製のZNDA−90S
酸化亜鉛:東邦亜鉛製の銀嶺R
ジクミルパーオキサイド:日本油脂製のパークミルD
(2)カバー用組成物の調製およびゴルフボール本体の作製
次に、表3に示した配合のカバー材料を、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。なお、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機は、2種類の練り条件を採用し、ゴルフボールNo.1〜3,9はスクリュー径φ44mm、スクリュー回転速度300rpm、押出温度190℃の練り条件1で行い、ゴルフボールNo.4〜8,10はスクリュー径φ44mm、スクリュー回転速度300rpm、押出温度180℃の練り条件2で行った。
続いて、得られたカバー用組成物をコア上に直接射出成形することにより、前記コアを被覆するカバーを作製した。カバー成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱した樹脂を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.8mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。
なお、ゴルフボールの表面には、表2および図2〜図4に示したディンプルパターンを形成した。
得られたゴルフボールの表面硬度、圧縮変形量、反発係数、耐久性、打出し角、スピン量および飛距離について評価した結果を併せて表3に示した。
ポリブチレンサクシネートアジペート:1,4−ブタンジオール/コハク酸(脱石油系材料)/アジピン酸の三元共重合体
ポリブチレンサクシネート:1,4−ブタンジオール/コハク酸(脱石油系材料)の二元共重合体
ハイミラン1555:三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン1557:三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体:(日本油脂社製、ブレンマーCP−15)
エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体:(住友化学社製、ボンドファスト2C、オレフィン含有率94質量%)
ゴルフボールNo.1〜8は、相溶化剤(B)として極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)と極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とを用いた場合である。いずれも反発係数が高く、また、高打出角、低スピンであり飛距離にも優れるものであった。ゴルフボールNo.9は、相溶化剤(B)として極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)のみを用いた場合である。このゴルフボールNo.9は、カバーは非常に脆く実用レベルの耐久性を得ることができず、また、反発係数については、測定時にカバーが割れてしまったため測定することができなかった。ゴルフボールNo.10は、樹脂成分(A)として脱石油系ポリエステル樹脂のみを使用した場合である。このゴルフボールNo.10は、低打出角、高スピンであり、飛距離に劣るものであった。
また、相溶化剤(B)として極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)と極性官能基を有するオレフィン系樹脂(b−2)とを用いたゴルフボールNo.1と、相溶化剤(B)として極性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(b−1)のみを用いたゴルフボールNo.9のカバーについて、カバー組成物中の各材料の分散状態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行った。結果を図5〜8に示した。図5は、ゴルフボールNo.1のカバー組成物中の各材料の分散状態を示しており、図6は図5の拡大図である。図7は、ゴルフボールNo.9のカバー組成物中の各材料の分散状態を示しており、図8は図7の拡大図である。
図5と図7とを比較すると、2種の相溶化剤を併用したゴルフボールNo.1のほうが、1種の相溶化剤を使用したゴルフボールNo.9よりも、カバー用組成物中の脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)、石油系熱可塑性樹脂(a−2)の分散性がよく、各材料が細かく分散していることが分かる。そして、図6および図8に示すように、ゴルフボールNo.1および9のどちらのカバー用組成物においても、脱石油系ポリエステル樹脂(a−1)中に石油系熱可塑性樹脂(a−2)が粒子状に分散しているが、ゴルフボールNo.9では、これらの界面に剥がれ(図中の黒い部分)があり、ゴルフボールNo.1では、これらの界面に剥がれはなかった。これにより、2種の相溶化剤を併用したゴルフボールNo.1は、ゴルフボールNo.9に比べて界面強度が向上していることがわかる。
2:ゴルフボール、10:ディンプル、12:ランド、14:仮想球、A,B,C,D,E,F,G:ディンプル、Di:ディンプルの直径、Ed:エッジ、P:ディンプルの最深箇所、T:接線