JP5041885B2 - 内燃機関摩擦損失低減方法 - Google Patents

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本発明は、燃料油組成物と潤滑油組成物とを組み合わせることにより、従来と比較して内燃機関の摩擦損失を大幅に低減できる方法に関する。また、内燃機関の摩擦損失を低減できる、燃料油組成物と潤滑油組成物に関する。
省資源及び地球温暖化抑制の観点から世界的に化石燃料の使用を減らすことが求められており、ガソリンエンジン搭載車やディーゼルエンジン搭載車に対しては燃費の向上が最大の課題となっている。また、ディーゼルエンジン搭載車に対しては、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)などの汚染物質の排出量が厳しく規制されている地域もあり、さらなる汚染物質の低減が求められている。このような要求に対しては、自動車における排出ガス浄化装置の触媒能力を増強し、燃料の供給に際しては燃料噴射時期や燃料噴射量等をより精密に電子制御することが必要になる。そして、排出ガス浄化能力とともに燃費特性、運転性能を最高レベルまでバランスよく引き出すためには、その燃料や潤滑油についてもその品質が共に優れたバランスで最適化されていることが望ましい。しかしながら、未だ十分な検討が実施されているとは言い難く、これら各種性能を高いレベルで両立できる方法の開発が望まれている。
本発明は、このような状況を鑑み、主として精密な電子制御化によって燃料の供給を行うガソリンエンジン搭載車やディーゼルエンジン搭載車や二酸化炭素排出量の多い汎用内燃機関において、排出ガス浄化能力、燃費特性、運転性能を最高レベルまでバランス良く引き出しつつ、従来と比較して内燃機関の摩擦損失を大幅に低減できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、燃料油単独あるいは潤滑油単独での二酸化炭素排出の削減は困難であると判断し、燃料油および潤滑油を組み合わせることにより、相互に効果を発揮する本発明の内燃機関の摩擦損失低減方法を完成するに至った。
すなわち本発明は、内燃機関用の燃料油として、燃料油中の窒素含有量が燃料油全量基準で1質量ppm以上、かつ燃料油中の硫黄含有量が燃料油全量基準で10質量ppm以下である燃料油(A)を使用し、燃料油(A)中の窒素分のうち燃料油全量基準で0.5質量ppm以上が燃料油添加剤に起因し、前記燃料油添加剤が、アミノ基またはアミド基を有する化合物であり、その内燃機関に用いられる潤滑油として、潤滑油全量基準で硫黄含有量が0.5質量%以下で、リン酸エステルもしくはリン酸エステル金属塩からなるリン系摩耗防止剤を潤滑油全量基準でリン元素として0.001質量%以上0.5質量%以下含有する潤滑油(B)を組み合わせて使用することを特徴とする内燃機関の摩擦損失低減方法であって、燃料油(A)中の全窒素化合物基準で10質量%以上の窒素化合物が燃焼室を経てエンジン油中に混入することを特徴とする内燃機関の摩擦損失低減方法に関する。
また本発明は、前記記載の内燃機関の摩擦損失低減方法に使用する窒素含有量が燃料油全量基準で1質量ppm以上、かつ燃料油中の硫黄含有量が燃料油全量基準で10質量ppm以下である燃料油組成物に関する。
また本発明は、前記記載の内燃機関の摩擦損失低減方法に使用する潤滑油全量基準で硫黄含有量が0.5質量%以下である潤滑油組成物に関する。
本発明における燃料油(A)と潤滑油(B)の組み合わせは、特定の性状を有する燃料油組成物と特定の性状を有する潤滑油組成物を同一の内燃機関で使用することにより、従来の燃料油組成物単独、潤滑油組成物単独では実現が困難であった内燃機関の摩擦を低減し、燃費の向上および二酸化炭素の削減を向上させる優れた性能を有することができる。
先ず、本発明で用いる燃料油組成物(燃料油(A))を説明する。
本発明で用いる燃料油組成物は、エンジンに付属の排出ガス浄化装置の性能を発揮するため、かつ燃焼生成物および燃料油中の硫黄化合物がエンジン油に混入した際の悪影響を防ぐために、硫黄分は燃料油全量基準で10質量ppm以下であることが必要である。
硫黄分が10質量ppmを越える場合、排出ガス処理触媒の性能に悪影響を及ぼし、排
出ガス中のNOx、CO、HCの濃度が高くなる可能性があり、またベンゼンの排出量も
増加する可能性がある。ここで、硫黄分とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−
硫黄分試験方法」により測定される硫黄含有量を意味する。
燃料油中に含有される窒素化合物が、エンジンの運転に伴い分解、重合過程を経てエンジン油に混入し、エンジン油との組み合わせによりエンジン内部の摩擦を低減することから、燃料油中に窒素化合物が燃料油全量基準で1質量ppm以上含まれることが必要である。
燃料油中に含まれる窒素化合物は、原油の生成過程で残留する窒素化合物も含まれるが、窒素を含有した添加剤を燃料に添加することにより、燃料油中の窒素化合物の量を増加させ、燃料油全量基準での窒素含有量を増加させることができる。
燃料油中に含まれる窒素化合物は、窒素濃度として燃料油全量基準で50質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは30質量ppm以下である。燃料油中に含まれる窒素化合物は燃焼によりNO、NOなどの窒素酸化物になりNOxとして排出量が規制されている。自動車用燃料として考えた場合、現状のNOx排出レベルは燃料1kgあたり0.5〜4gとなっている。窒素含有量が100質量ppmよりも多くなると、特にNOx浄化後処理がついていないディーゼル機関において無視できないレベルまでNOxを増加させることになる。50質量ppmを下回る窒素濃度の増加であれば、内燃機関から排出されるNOx排出の影響を無視できるレベルまで低減することが可能である。
燃料油に添加する添加剤(燃料油添加剤)は、有効な化合物の混合量やその構造による窒素含有量は様々であるが、燃料への添加量が後述する様々な悪影響により燃料油1Lあたり50〜500mgであることを考慮すると、添加剤に起因する窒素の増加分は燃料油全量基準で0.3質量ppm以上となり、構造の違いによる燃費改善効果を考慮すると燃料油添加剤による窒素の増加分は燃料油全量基準で0.5質量ppm以上であることが望ましい。
上記に使用する燃料油添加剤はエンジン油に混入した際の摩擦低減性能の観点から、塩基性窒素を有するエステル系、アミン系、アミド系、またはこれらの誘導体等が挙げられるが、効果を十分に発揮するためには、少なくとも1個のアミノ基、イミノ基、アミド結合、イミド結合を有することが望ましい。その中でも特にアミノ基やアミド結合を有する化合物であることが好ましい。
アミノ基を有する化合物としては、例えば、ポリアルキルアミン系化合物、及びポリエーテルアミン系化合物等を挙げることができる。本発明では、ポリブテニルアミン系化合物及び/又はポリエーテルアミン系化合物を用いることが好ましい。
ポリブテニルアミン系化合物としては、具体的には例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005041885
一般式(1)において、Aは、n−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を示し、R、R、R、Rはそれぞれ別個に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Bは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、RおよびRはそれぞれ別個に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルカノール基を示し、mは1〜100の整数を示す。
ポリエーテルアミン系化合物としては、具体的には例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。一般式(2)で表される化合物は、エンジン油に混入した際に、エンジンの冷機時などの過酷な条件下において、エンジン油に優れた清浄効果を発揮し、しかもそれ自身はスラッジ化することがないという点で本発明に好ましく使用することができる。
Figure 0005041885
一般式(2)において、Rは水素または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、AOはアルキレンオキサイドを示し、nは1〜200の整数であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、RおよびR10はそれぞれ別個に炭素数1〜18の炭化水素基又はアルキレンオキサイドを含む基を示す。
一般式(1)、(2)で表される、ポリブテニルアミン系化合物やポリエーテルアミン系化合物はガソリンエンジンにおける吸気系を清浄に保持する能力にも優れており、そのことにより、エンジン本来の性能を発揮することも期待できる。
本発明に用いるアミド結合を有する化合物としては、具体的には例えば、下記一般式(3)で表されるカルボン酸アミドや、下記一般式(4)で表されるカルボン酸とジエタノールアミンのアミド化合物が挙げられる。
Figure 0005041885
[式中、R11、R12およびR13はそれぞれ別個に炭素数1〜18のアルキル基を示す。]
Figure 0005041885
[式中、R14、R15およびR16はそれぞれ別個に炭素数1〜18のアルキル基を示す。]
一般式(3)や一般式(4)で表されるアミド結合を有する化合物は、分子構造中に占める窒素の割合が高く、燃料油添加剤として添加する量あたりの燃料油全量基準の窒素増加量が大きく、高い燃費改善効果を発揮することが期待できる。
燃料油組成物中に含まれる窒素化合物、特に添加剤として燃料に添加される添加剤については、エンジン内部の燃焼で完全に燃焼するのでは、潤滑油との相互作用が働くことができない。そこで燃料油組成物中に配合される添加剤において、添加剤の配合量を燃料油全量基準でx質量ppm、配合する添加剤の示差熱天秤(TGA)による300℃の残分を添加剤全量基準でy質量%とした場合に、x×yの絶対値が500以上であることが望ましい。より好ましくは1500以上であることが望ましい。
燃料油組成物に含まれる窒素化合物のうち、全窒素化合物基準で10質量%以上の窒素化合物が燃焼室を経てエンジン油に混合することにより、すなわち一般的なエンジン油の量と燃料消費量のバランスから、摩擦損失低減に十分な窒素化合物がエンジン油に混入することにより、エンジン油による摩擦低減効果が改善し、燃費の改善、二酸化炭素の削減を達成することが可能となる。
本発明を自動車用ガソリンに適用する場合には、燃料油組成物の15℃における密度が0.700g/cm以上0.783g/cm以下であることが望ましい。密度の低下は容量発熱量の低下を招き、エンジンの噴射系において正常な燃料噴射を行うことができず、エンジン自体の熱効率の低下を招き、密度の上昇は以下に規定する蒸留性状とともに、燃料の揮発性に悪影響を与え、エンジンの熱効率の低下を招き、それぞれ二酸化炭素排出量の増加につながる。
本発明を自動車用ガソリンに適用する場合には、燃料油組成物の蒸留性状は下記の通りであることが好ましい。ここでいう蒸留性状とは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される蒸留性状を意味する。
・10容量%留出温度が70℃以下
・50容量%留出温度が75℃以上、105℃以下
・90容量%留出温度が220℃以下
10容量%留出温度の上限値は70℃以下であることが好ましく、70℃を超える場合には、低温始動性に不具合を生じる可能性がある。
50容量%留出温度の下限値は75℃であることが好ましく、75℃に満たない場合は燃費が悪化する可能性がある。一方、50容量%留出温度の上限値は105℃であることが好ましく、105℃を超える場合には、排出ガス中の炭化水素が増加する可能性がある。
90容量%留出温度の上限値は220℃であることが好ましく、220℃を超える場合には、燃費の悪化、排出ガス中の炭化水素の増加、吸気バルブデポジットの増加、燃焼室デポジットが増加する可能性がある。
本発明を自動車用ガソリンに適用する場合には、燃料油組成物のリード蒸気圧(RVP)は、使用される季節や地域によって調整することが好ましい。より具体的には、夏期(5月〜9月)には、好ましくは44〜65kPa、より好ましくは50〜65kPa、最も好ましくは55〜65kPaに調整することが望ましい。一方、冬期(10月〜4月)には、好ましくは65〜93kPa、より好ましくは70〜93kPa、最も好ましくは70〜90kPaに調整することが望ましい。
リード蒸気圧(RVP)が下限値44kPaを下回る場合には、燃料油組成物の揮発性を阻害し、燃費の悪化や運訂正の悪化を招く可能性がある。
リード蒸気圧(RVP)が上限値93kPaを上回る場合には、燃料油組成物中の揮発成分の蒸発により、炭化水素類の蒸発排出ガスの増加や、燃費の悪化を招く可能性がある。
本発明に用いる燃料油組成物は、自動車用ガソリンとして使用する場合には、JIS K 2261「石油製品−自動車ガソリン及び航空燃料油−実在ガム試験方法−噴射蒸発法」により測定した未洗実在ガム量が、20mg/100ml以下であることが好ましい。未洗実在ガムの含有量が上記の値を超えた場合は、燃料導入系統において析出物が生成したり、吸入弁が膠着する心配がある。
本発明に用いる燃料油組成物は、含酸素化合物を含んでいても良い。その含有量は、燃料油組成物全量基準で酸素元素換算で0〜2.7質量%であることが好ましく、更に好ましくは0〜2.0質量%である。2.7質量%を越える場合は、燃料油組成物の燃費が悪化し、また排出ガス中のNOxが増加する可能性がある。
ここで含酸素化合物には、自動車用ガソリンとして使用する場合には炭素数2〜4のアルコール類、炭素数4〜8のエーテル類などが含まれる。含酸素化合物としては、例えば、エタノール、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)、ターシャリーアミルメチルエーテル(TAME)、ターシャリーアミルエチルエーテルなどを挙げることができる。なかでもエタノール、ETBEが好ましく、最も好ましくはETBEである。なお、メタノールは排出ガス中のアルデヒド濃度が高くなる可能性があり、腐食性もあるので好ましくない。
ここで含酸素化合物には、自動車用軽油、汎用内燃機関用燃料として使用する場合には炭素数6〜8のアルコール類、脂肪酸アルキルエステル(FAME)混合物配合量などが含まれる。
本発明に用いる燃料油組成物の着火性に関してなんら制限はないが、ガソリンエンジンに代表される火花点火機関あるいはディーゼルエンジンなどの圧縮着火機関それぞれにおいて以下の範囲を満たしていることが好ましい。
火花点火機関においては、よりアンチノッキング性を高めるため、リサーチ法オクタン価(RON)が89以上であることが好ましく、更に好ましくは90以上である。また、より高速走行中のアンチノック性を高めるために、モーター法オクタン価(MON)が80以上であることが好ましく、更に好ましくは80.5以上である。ここで、リサーチ法オクタン価およびモーター法オクタン価とは、それぞれ、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定されるリサーチ法オクタン価およびモーター法オクタン価を意味する。
本発明を自動車用ガソリンとして適応する場合には、四エチル鉛等のアルキル鉛化合物を実質的に含有しないガソリンであり、たとえ極微量の鉛化合物を含有する場合であっても、その含有量はJIS K 2255「ガソリン中の鉛分試験方法」の適用区分下限値以下である。
圧縮着火機関において本発明を適応する場合には、燃料油組成物のセタン指数はJIS1号軽油規格である50以上を満たす必要がある。セタン指数が50に満たない場合には、排出ガス中のPM、アルデヒド類、あるいはさらにNOxの濃度が高くなる傾向にある。また、同様の理由により、セタン指数は51以上であることがより好ましく、52以上であることがさらに好ましい。なお、本発明でいうセタン指数とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出される価を意味する。
圧縮着火機関において本発明を適応する場合には、燃料油組成物におけるセタン価は、好ましくは52以上であり、より好ましくは54以上であり、さらに好ましくは55以上である。セタン価が52に満たない場合には、排出ガス中のNOx、PM及びアルデヒド類の濃度が高くなりやすい。また、排ガス中の黒煙低減の観点から、セタン価は70以下であることが好ましく、68以下であることがより好ましく、66以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいうセタン価とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
本発明に用いる燃料油組成物の、JIS K 2279「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」により測定した総発熱量は、40000J/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは45000J/g以上である。発熱量が40000J/g未満である場合、容量燃費の低下を招き、出力あたりの二酸化炭素排出量が増加する可能性がある
本発明に用いる燃料油組成物の安定性に関しては、自動車用ガソリンを想定した場合には、JIS K 2287「ガソリン酸化安定度試験方法(誘導期間法)」によって測定した酸化安定度は、480分以上であることが好ましく、更に好ましくは1440分以上である。酸化安定度が480分に満たない場合は、貯蔵中にガムが生成する可能性がある。
本発明に用いる燃料油組成物の銅板腐食性は低いことが好ましい。より具体的には、JIS K 2513「石油製品−銅板腐食試験方法」(試験温度50℃、試験時間3時間)に準拠して得られる銅板腐食の測定値が、1以下であるのが好ましく、1a以下であるのがより好ましい。当該測定値が1を越える場合は、燃料系統の配管が腐食する可能性がある。
本発明の燃料油組成物に添加することができるその他の添加剤としては、具体的には、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤、N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパンのようなアミンカルボニル縮合化合物等の金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、多価アルコールあるいはそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、高級アルコール硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アゾ染料などの着色剤、有機カルボン酸あるいはそれらの誘導体類、アルケニルコハク酸エステル等の防錆剤、ソルビタンエステル類等の水抜き剤、キリザニン、クマリンなどの識別剤、天然精油合成香料などの着臭剤などが挙げられる。
これらの添加剤は、1種または2種以上を添加することができ、その合計添加量は燃料油組成物全量基準で0.1質量%以下とすることが好ましい。
次に、本内燃機関摩擦損失低減方法に用いられる潤滑油組成物(潤滑油(B))について説明する。
本発明に用いられる潤滑油組成物は、硫黄を構成元素として含む添加剤を含有し得るが、潤滑油組成物の全硫黄含有量(潤滑油基油及び添加剤に起因する硫黄分の合計量)は、内燃機関の耐久性、耐摩耗性、清浄性および低摩擦性を両立させるため、潤滑油組成物全量基準で、0.5質量%以下であり、より好ましくは0.05〜0.2質量%、特に好ましくは0.1〜0.18質量%である。
本発明の内燃機関の摩擦損失低減方法に用いられる潤滑油組成物の基油としては、特に制限されないが、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油及びこれらの混合物を用いることができ、尿素アダクト値が4質量%以下且つ粘度指数が100以上のものであることが好ましい。
なお、本発明でいう尿素アダクト値は以下の方法により測定される。
まず、秤量した試料油(潤滑油基油)100gを丸底フラスコに入れ、尿素200mg、トルエン360ml及びメタノール40mlを加えて室温で6時間攪拌する。これにより、反応液中に尿素アダクト物として白色の粒状結晶が生成する。反応液を1ミクロンフィルターでろ過することにより、生成した白色粒状結晶を採取し、得られた結晶をトルエン50mlで6回洗浄する。回収した白色結晶をフラスコに入れ、純水300ml及びトルエン300mlを加えて80℃で1時間攪拌する。分液ロートで水相を分離除去し、トルエン相を純水300mlで3回洗浄する。トルエン相に乾燥剤(硫酸ナトリウム)を加えて脱水処理を行った後、トルエンを留去する。このようにして得られた尿素アダクト物の試料油に対する割合(質量百分率)を尿素アダクト値と定義する。
本発明においては、潤滑油基油の尿素アダクト値は、粘度−温度特性を損なわずに低温粘度特性を改善する観点から、上述の通り4質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下である。また、潤滑油基油の尿素アダクト値の下限値は、0質量%でも良い。しかし、十分な低温粘度特性と、より粘度指数の高い潤滑油基油を得ることができ、また脱ろう条件を緩和して経済性にも優れる点で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上である。
本発明においては、潤滑油基油の粘度指数は、粘度−温度特性の観点から、上述の通り100以上であることが好ましく、より好ましくは110以上、さらに好ましくは120以上、特に好ましくは130以上、最も好ましくは140以上である。
本発明に用いられる潤滑油組成物は、尿素アダクト値が4質量%以下であり、かつ粘度指数が100以上の潤滑油基油を20質量%以上含有するものであることが好ましく、より好ましくは該基油を40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、最も好ましくは80質量%以上含有するものが望ましい。
なお、本発明でいう粘度指数、並びに後述する40℃又は100℃における動粘度とは、それぞれJIS K 2283−1993に準拠して測定された粘度指数及び40℃又は100℃における動粘度を意味する。
鉱油系潤滑油基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は二つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系潤滑油基油や、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。なお、これらの基油は単独でも、2種以上任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
好ましい鉱油系潤滑油基油としては以下の基油を挙げることができる。
(1) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油;
(2) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO);
(3) 潤滑油脱ろう工程により得られるワックスおよび/またはGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス;
(4) (1)〜(3)の中から選ばれる1種または2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(5) (1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油;
(6) (1)、(2)、(3)、(4)または(5)の脱れき油(DAO);
(7) (6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(8) (1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油などを原料油とし、この原料油および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油。
ここでいう通常の精製方法とは特に制限されるものではなく、潤滑油基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、(ア)水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製、(イ)フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製、(ウ)溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう、(エ)酸性白土や活性白土などによる白土精製、(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)精製などが挙げられる。本発明ではこれらの1つまたは2つ以上を任意の組み合わせおよび任意の順序で採用することができる。
本発明で用いる鉱油系潤滑油基油としては、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をさらに以下の処理を行って得られる基油が特に好ましい。
すなわち、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をそのまま、またはこの基油から回収された潤滑油留分を、水素化分解あるいはワックス異性化し、当該生成物をそのまま、もしくはこれから潤滑油留分を回収し、次に溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、その後、溶剤精製処理するか、または、溶剤精製処理した後、溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行って製造される水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油が好ましく用いられる。この水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油は、基油全量基準で好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上使用することが望ましい。
また、合成系潤滑油基油を例示すれば、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
好ましい合成系潤滑油基油としてはポリα−オレフィンが挙げられる。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びその水素化物が挙げられる。
ポリα−オレフィンの製法については特に制限はないが、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、アルコール(例えば、エタノール、プロパノールまたはブタノール)、カルボン酸、またはエステル(例えば、酢酸エチルまたはプロピオン酸エチル)との錯体を含むフリーデル・クラフツ触媒のような重合触媒の存在下でのα−オレフィンの重合等が挙げられる。
本発明においては、潤滑油基油は、上記のような2種類以上の鉱油系基油同志あるいは合成油系基油同志の混合物であっても差し支えなく、鉱油系基油と合成油系基油との混合物であっても差し支えない。そして、上記混合物における2種類以上の基油の混合比は、任意に選ぶことができる。
本発明においては、潤滑油基油を製造するに際し、ノルマルパラフィンを含有する原料油を用いることが好ましい。原料油は、鉱物油又は合成油のいずれであってもよく、あるいはこれらの2種以上の混合物であってもよい。また、原料油中のノルマルパラフィンの含有量は、原料油全量を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、一層好ましくは90質量%、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは97質量%以上である。
また、本発明で用いられる原料油は、ASTM D86又はASTM D2887に規定する潤滑油範囲で沸騰するワックス含有原料であることが好ましい。原料油のワックス含有率は、原料油全量を基準として、好ましくは50質量%以上100質量%以下である。原料のワックス含有率は、核磁気共鳴分光法(ASTM D5292)、相関環分析(n−d−M)法(ASTM D3238)、溶剤法(ASTM D3235)などの分析手法によって測定することができる。
ワックス含有原料としては、例えば、ラフィネートのような溶剤精製法に由来するオイル、部分溶剤脱ロウ油、脱瀝油、留出物、減圧ガスオイル、コーカーガスオイル、スラックワックス、フーツ油、フィッシャー−トロプシュ・ワックスなどが挙げられ、これらの中でもスラックワックス及びフィッシャー−トロプシュ・ワックスが好ましい。
スラックワックスは、典型的には溶剤またはプロパン脱ロウによる炭化水素原料に由来する。スラックワックスは残留油を含有し得るが、この残留油は脱油により除去することができる。フーツ油は脱油されたスラックワックスに相当するものである。
また、フィッシャー−トロプシュ・ワックスは、いわゆるフィッシャー−トロプシュ合成法により製造される。
さらに、ノルマルパラフィンを含有する原料油として市販品を用いてもよい。具体的には、パラフィリント(Paraflint)80(水素化フィッシャー−トロプシュ・ワックス)およびシェルMDSワックス質ラフィネート(Shell MDS Waxy R
affinate)(水素化および部分異性化中間留出物合成ワックス質ラフィネート)などが挙げられる。
また、溶剤抽出に由来する原料油は、常圧蒸留からの高沸点石油留分を減圧蒸留装置に送り、この装置からの蒸留留分を溶剤抽出することによって得られるものである。減圧蒸留からの残渣は、脱瀝されてもよい。溶剤抽出法においては、よりパラフィニックな成分をラフィネート相に残したまま抽出相に芳香族成分を溶解する。ナフテンは、抽出相とラフィネート相とに分配される。溶剤抽出用の溶剤としては、フェノール、フルフラールおよびN−メチルピロリドンなどが好ましく使用される。溶剤/油比、抽出温度、抽出されるべき留出物と溶剤との接触方法などを制御することによって、抽出相とラフィネート相との分離の程度を制御することができる。さらに原料として、より高い水素化分解能を有する燃料油水素化分解装置を使用し、燃料油水素化分解装置から得られるボトム留分を用いてもよい。
本発明においては、潤滑油基油の製造工程については、特に制限されないが、好ましい水素化分解/水素化異性化工程は、ノルマルパラフィンを含有する原料油について、水素化処理触媒を用いて水素化処理する第1工程と、第1工程により得られる被処理物について、水素化脱ロウ触媒を用いて水素化脱ロウする第2工程と、第2工程により得られる被処理物について、水素化精製触媒を用いて水素化精製する第3工程とを備える。
なお、従来の水素化分解/水素化異性化においても、水素化脱ロウ触媒の被毒防止のための脱硫・脱窒素を目的として、水素化脱ロウ工程の前段に水素化処理工程が設けられることはある。これに対して、第1工程(水素化処理工程)は、第2工程(水素化脱ロウ工程)の前段で原料油中のノルマルパラフィンの一部(例えば10質量%程度、好ましくは1〜10質量%)を分解するために設けられたものであり、当該第1工程においても脱硫・脱窒素は可能であるが、従来の水素化処理とは目的を異にする。かかる第1工程を設けることは、第3工程後に得られる被処理物(潤滑油基油)の尿素アダクト値を確実に4質量%以下とできるため好ましい。
上記第1工程で用いられる水素化処理触媒としては、周期律表第6族金属、第8−10族金属、およびそれらの混合物を含有する触媒などが挙げられる。好ましい金属としては、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルトおよびそれらの混合物が挙げられる。水素化処理触媒は、これらの金属を耐熱性金属酸化物担体上に担持した態様で用いることができ、通常、金属は担体上で酸化物または硫化物として存在する。また、金属の混合物を用いる場合は、金属の量が触媒全量を基準として30質量%以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。金属酸化物担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたはチタニアなどの酸化物が挙げられ、中でもアルミナが好ましい。好ましいアルミナは、γ型またはβ型の多孔質アルミナである。金属の担持量は、触媒全量を基準として、0.5〜35質量%の範囲であることが好ましい。また、9−10族金属と6族金属との混合物を用いる場合には、9族または10族金属のいずれかが、触媒全量を基準として、0.5〜5質量%の量で存在し、6族金属は5〜30質量%の量で存在することが好ましい。金属の担持量は、原子吸収分光法、誘導結合プラズマ発光分光分析法または個々の金属について、ASTMで指定された他の方法によって測定されてもよい。
金属酸化物担体の酸性は、添加物の添加、金属酸化物担体の性質の制御(例えば、シリカ−アルミナ担体中へ組み入れられるシリカの量の制御)などによって制御することができる。添加物の例には、ハロゲン、特にフッ素、リン、ホウ素、イットリア、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類酸化物、およびマグネシアが挙げられる。ハロゲンのような助触媒は、一般に金属酸化物担体の酸性を高めるが、イットリアまたはマグネシアのような弱塩基性添加物はかかる担体の酸性を弱くする傾向がある。
水素化処理条件に関し、処理温度は、好ましくは150〜450℃、より好ましくは200〜400℃であり、水素分圧は、好ましくは1.4〜20MPa、より好ましくは2.8〜14MPaであり、液空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜10hr−1、より好ましく0.1〜5hr−1であり、水素/油比は、好ましくは50〜1700NL/L、より好ましくは80〜900NL/Lである。なお、上記の条件は一例であり、第1工程における水素化処理条件は、原料、触媒、装置等の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
第1工程において水素化処理された後の被処理物は、そのまま第2工程に供してもよいが、当該被処理物についてストリッピングまたは蒸留を行い、被処理物(液状生成物)からガス生成物を分離除去する工程を、第1工程と第2工程との間に設けることが好ましい。これにより、被処理物に含まれる窒素分及び硫黄分を、第2工程における水素化脱ロウ触媒の長期使用に影響を及ぼさないレベルにまで減らすことができる。ストリッピング等による分離除去の対象は主として硫化水素およびアンモニアのようなガス異物であり、ストリッピングはフラッシュドラム、分留器などの通常の手段によって行うことができる。
また、第1工程における水素化処理の条件がマイルドである場合には、使用する原料によって残存する多環芳香族分が通過する可能性があるが、これらの異物は、第3工程における水素化精製により除去されてもよい。
また、第2工程で用いられる水素化脱ロウ触媒は、結晶質又は非晶質のいずれの材料を含んでもよい。結晶質材料としては、例えば、アルミノシリケート(ゼオライト)またはゼオライト類縁化合物であるアルミノホスフェート(ALPO)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)を主成分とする、10員環または12員環通路を有するゼオライト型化合物(以下、ゼオライトおよびゼオライト類縁化合物を合わせ、ゼオライト型化合物と称する)が挙げられる。10員環ゼオライト型化合物の具体例としては、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、ITQ−13、MCM−71などが挙げられる。また、アルミノホスフェートの例としては、ECR−42が挙げられる。12員環ゼオライト型化合物の例としては、ゼオライトベータ、およびMCM−68が挙げられる。これらの中でも、ZSM−48、ZSM−22およびZSM−23から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、ZSM−48が特に好ましい。ゼオライト型化合物は好ましくは水素形にある。水素化脱ロウ触媒の還元は、水素化脱ロウの際にその場で起こり得るが、予め還元処理が施された水素化脱ロウ触媒を水素化脱ロウに供してもよい。
また、水素化脱ロウ触媒の非晶質材料としては、3族金属でドープされたアルミナ、フッ化物化アルミナ、シリカ−アルミナ、フッ化物化シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナなどが挙げられる。
脱ロウ触媒の好ましい態様としては、二官能性、すなわち、少なくとも1つの6族金属、少なくとも1つの8−10族金属、またはそれらの混合物である金属水素添加成分が装着されたものが挙げられる。好ましい金属は、Pt、Pdまたはそれらの混合物などの9−10族貴金属である。これらの金属の担持量は、触媒全量を基準として好ましくは0.1〜30質量%である。触媒調製および金属担持方法としては、例えば分解性金属塩を用いるイオン交換法および含浸法が挙げられる。
なお、モレキュラーシーブを用いる場合、水素化脱ロウ条件下での耐熱性を有するバインダー材料と複合化してもよく、またはバインダーなし(自己結合)であってもよい。バインダー材料としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカとチタニア、マグネシア、セリア、ジルコニアなどのような他の金属酸化物との二成分の組合せ、シリカ−アルミナ−セリア、シリカ−アルミナ−マグネシアなどのような酸化物の三成分の組合せなどの無機酸化物が挙げられる。水素化脱ロウ触媒中のモレキュラーシーブの量は、触媒全量を基準として、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは35〜100質量%である。水素化脱ロウ触媒は、噴霧乾燥、押出などの方法によって形成される。水素化脱ロウ触媒は、硫化物化または非硫化物化した態様で使用することができ、硫化物化した態様が好ましい。
水素化脱ロウ条件に関し、温度は好ましくは250〜400℃、より好ましくは275〜350℃であり、水素分圧は好ましくは791〜20786kPa(100〜3000psig)、より好ましくは1.4〜18MPaであり、液空間速度は好ましくは0.1〜10hr−1、より好ましくは0.1〜5hr−1であり、水素/油比は好ましくは40〜1700NL/L、より好ましくは80〜900NL/Lである。なお、上記の条件は一例であり、第2工程における水素化脱ロウ条件は、原料、触媒、装置等の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
第2工程で水素化脱ロウされた被処理物は、第3工程における水素化精製に供される。水素化精製は、残留ヘテロ原子および色相体の除去に加えて、オレフィンおよび残留芳香族化合物を水素化により飽和することを目的とするマイルドな水素化処理の一形態である。第3工程における水素化精製は、脱ロウ工程とカスケード式で実施することができる。
第3工程で用いられる水素化精製触媒は、6族金属、8−10族金属又はそれらの混合物を金属酸化物担体に担持させたものであることが好ましい。好ましい金属としては、貴金属、特に白金、パラジウムおよびそれらの混合物が挙げられる。金属の混合物を用いる場合、金属の量が触媒を基準にして30質量%もしくはそれ以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。触媒の金属含有率は、非貴金属については20質量%以下、貴金属については1質量%以下が好ましい。また、金属酸化物担体としては、非晶質または結晶質酸化物のいずれであってもよい。具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたはチタニアのような低酸性酸化物が挙げられ、アルミナが好ましい。芳香族化合物の飽和の観点からは、多孔質担体上に比較的強い水素添加機能を有する金属が担持された水素化精製触媒を用いることが好ましい。
好ましい水素化精製触媒として、M41Sクラスまたは系統の触媒に属するメソ細孔性材料を挙げることができる。M41S系統の触媒は、高いシリカ含有率を有するメソ細孔性材料であり、具体的には、MCM−41、MCM−48およびMCM−50が挙げられる。かかる水素化精製触媒は15〜100Åの細孔径を有するものであり、MCM−41が特に好ましい。MCM−41は、一様なサイズの細孔の六方晶系配列を有する無機の多孔質非層化相である。MCM−41の物理構造は、ストローの開口部(細孔のセル径)が15〜100オングストロームの範囲であるストローの束のようなものである。MCM−48は、立方体対称を有し、MCM−50は、層状構造を有する。MCM−41は、メソ細孔性範囲の異なるサイズの細孔開口部で製造することができる。メソ細孔性材料は、8族、9族または10族金属の少なくとも1つである金属水素添加成分を有してもよく、金属水素添加成分としては、貴金属、特に10族貴金属が好ましく、Pt、Pdまたはそれらの混合物が最も好ましい。
水素化精製の条件に関し、温度は好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜250℃であり、全圧は好ましくは2.8〜21MPaであり、液空間速度は好ましくは0.1〜5hr−1、より好ましくは0.5〜3hr−1であり、水素/油比は好ましくは40〜1700NL/Lである。なお、上記の条件は一例であり、第3工程における水素化生成条件は、原料や処理装置の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
また、第3工程後に得られる被処理物については、必要に応じて、蒸留等により所定の成分を分離除去してもよい。
上記の製造方法により得られる本発明に用いられる潤滑油基油においては、以下の条件を更に満たすものであることが好ましい。
潤滑油基油における飽和分の含有量は、潤滑油基油全量を基準として、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。また、当該飽和分に占める環状飽和分の割合は、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%、さらにより好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは0.8〜3質量%である。飽和分の含有量及び当該飽和分に占める環状飽和分の割合がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性を達成することができ、また、当該潤滑油基油に添加剤が配合された場合には、当該添加剤を潤滑油基油中に十分に安定的に溶解保持しつつ、当該添加剤の機能をより高水準で発現させることができる。更に、飽和分の含有量及び当該飽和分に占める環状飽和分の割合がそれぞれ上記条件を満たすことにより、潤滑油基油自体の摩擦特性を改善することができ、その結果、摩擦低減効果の向上、ひいては省エネルギー性の向上を達成することができる。
なお、飽和分の含有量が90質量%未満であると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が不十分となる傾向にある。また、飽和分に占める環状飽和分の割合が0.1質量%未満であると、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に、当該添加剤の溶解性が不十分となり、潤滑油基油中に溶解保持される当該添加剤の有効量が低下するため、当該添加剤の機能を有効に得ることができなくなる傾向にある。更に、飽和分に占める環状飽和分の割合が10質量%を超えると、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
本発明において、飽和分に占める環状飽和分の割合が0.1〜10質量%であることは、飽和分に占める非環状飽和分が99.9〜90質量%であることと等価である。ここで、非環状飽和分にはノルマルパラフィン及びイソパラフィンの双方が包含される。本発明においては、潤滑油基油に占めるノルマルパラフィン及びイソパラフィンの割合は、特に制限されないが、イソパラフィンの割合は、潤滑油基油全量基準で、好ましくは90〜99.9質量%、より好ましくは95〜99.5質量%、更に好ましくは97〜99質量%である。潤滑油基油に占めるイソパラフィンの割合が前記条件を満たすことにより、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性をより向上させることができ、また、当該潤滑油基油に添加剤が配合された場合には、当該添加剤を十分に安定的に溶解保持しつつ、当該添加剤の機能を一層高水準で発現させることができる。
なお、本発明でいう飽和分の含有量とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定される値(単位:質量%)を意味する。
また、本発明でいう飽和分に占める環状飽和分及び非環状飽和分の割合とは、それぞれASTM D 2786−91に準拠して測定されるナフテン分(測定対象:1環〜6環ナフテン、単位:質量%)及びアルカン分(単位:質量%)を意味する。
また、本発明でいう潤滑油基油中のノルマルパラフィンの割合とは、前記ASTM D
2007−93に記載された方法により分離・分取された飽和分について、以下の条件でガスクロマトグラフィー分析を行い、当該飽和分に占めるノルマルパラフィンの割合を同定・定量したときの測定値を、潤滑油基油全量を基準として換算した値を意味する。なお、同定・定量の際には、標準試料として炭素数5〜50のノルマルパラフィンの混合試料が用いられ、飽和分に占めるノルマルパラフィンは、クロマトグラムの全ピーク面積値(希釈剤に由来するピークの面積値を除く)に対する各ノルマルパラフィンに相当に相当するピーク面積値の合計の割合として求められる。
(ガスクロマトグラフィー条件)
カラム:液相無極性カラム(長さ25mm、内径0.3mmφ、液相膜厚さ0.1μm)
昇温条件:50℃〜400℃(昇温速度:10℃/分)
キャリアガス:ヘリウム(線速度:40cm/分)
スプリット比:90/1
試料注入量:0.5μL(二硫化炭素で20倍に希釈した試料の注入量)
また、潤滑油基油中のイソパラフィンの割合とは、前記飽和分に占める非環状飽和分と前記飽和分に占めるノルマルパラフィンとの差を、潤滑油基油全量を基準として換算した値を意味する。
なお、飽和分の分離方法、あるいは環状飽和分、非環状飽和分等の組成分析の際には、同様の結果が得られる類似の方法を使用することができる。例えば、上記の他、ASTM
D 2425−93に記載の方法、ASTM D 2549−91に記載の方法、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による方法、あるいはこれらの方法を改良した方法等を挙げることができる。
また、本発明においては、潤滑油基油における芳香族分は、潤滑油基油全量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.1〜3質量%、更に好ましくは0.3〜1質量%である。芳香族分の含有量が上記上限値を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性、更には揮発防止性及び低温粘度特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、本発明においては、潤滑油基油は芳香族分を含有しないものであってもよいが、芳香族分の含有量を0.1質量%以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
なお、ここでいう芳香族分の含有量とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定された値を意味する。芳香族分には、通常、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン及びこれらのアルキル化物、更にはベンゼン環が四環以上縮合した化合物、ピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ原子を有する芳香族化合物などが含まれる。
また、本発明においては、潤滑油基油のヨウ素価は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.15以下であり、また、0.01未満であってもよいが、それに見合うだけの効果が小さい点及び経済性との関係から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.05以上である。潤滑油基油のヨウ素価を0.5以下とすることで、熱・酸化安定性を飛躍的に向上させることができる。なお、本発明でいうヨウ素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価及び不ケン化価」の指示薬滴定法により測定したヨウ素価を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油における硫黄分の含有量は、特に制限されないが、熱・酸化安定性の更なる向上及び低硫黄化の点から、50質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましく、3質量ppm以下であることが更に好ましい。なお、本発明でいう硫黄分とは、JIS K 2541−1996に準拠して測定される硫黄分を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油における窒素分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは3質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下である。窒素分の含有量が5質量ppmを超えると、熱・酸化安定性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう窒素分とは、JIS K 2609−1990に準拠して測定される窒素分を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油の動粘度は、その100℃における動粘度は、好ましくは1.5〜20mm/s、より好ましくは2.0〜11mm/sである。潤滑油基油の100℃における動粘度が1.5mm/s未満の場合、蒸発損失の点で好ましくない。また、100℃における動粘度が20mm/sを超える潤滑油基油を得ようとする場合、その収率が低くなり、原料として重質ワックスを用いる場合であっても分解率を高めることが困難となるため好ましくない。
本発明においては、100℃における動粘度が下記の範囲にある潤滑油基油を蒸留等により分取し、使用することが好ましい。
(I)100℃における動粘度が1.5mm/s以上3.5mm/s未満、より好ましくは2.0〜3.0mm/sの潤滑油基油
(II)100℃における動粘度が3.5mm/s以上4.5mm/s未満、より好ましくは3.7〜4.1mm/sの潤滑油基油
(III)100℃における動粘度が4.5〜20mm/s、より好ましくは4.8〜11mm/s、特に好ましくは5.5〜8.0mm/sの潤滑油基油。
また、本発明においては、潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは6.0〜80mm/s、より好ましくは8.0〜50mm/sである。本発明においては、40℃における動粘度が下記の範囲にある潤滑油留分を蒸留等により分取し、使用することが好ましい。
(IV)40℃における動粘度が6.0mm/s〜12mm/s、より好ましくは8.0〜12mm/sの潤滑油基油
(V)40℃における動粘度が12mm/s〜28mm/s、より好ましくは13〜19mm/sの潤滑油基油
(VI)40℃における動粘度が28〜50mm/s、より好ましくは29〜45mm/s、特に好ましくは30〜40mm/sの潤滑油基油。
上記潤滑油基油(I)及び(IV)は、尿素アダクト値4質量%以下及び粘度指数100以上を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の潤滑油基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、摩擦係数を著しく低減することにより省燃費化できる。また、流動点降下剤を配合することにより、−40℃におけるBF粘度を2000mPa・s以下とすることができる。なお、−40℃におけるBF粘度とは、JPI−5S−26−99に準拠して測定された粘度を意味する。
また、上記潤滑油基油(II)及び(V)は、尿素アダクト値4質量%以下及び粘度指数100以上を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の潤滑油基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、更には揮発防止性及び潤滑性に優れる。例えば、潤滑油基油(II)及び(V)においては、−35℃におけるCCS粘度を3000mPa・s以下とすることができる。
また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)は、尿素アダクト値4質量%以下及び粘度指数100以上を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の潤滑油基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、更には揮発防止性、熱・酸化安定性及び潤滑性に優れる。
また、本発明においては、潤滑油基油の流動点は、潤滑油基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−15℃以下、更に好ましくは−17.5℃以下である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。流動点が前記上限値を超えると、その潤滑油基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう流動点とは、JIS K 2269−1987に準拠して測定された流動点を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油の−35℃におけるCCS粘度は、潤滑油基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは1000mPa・s以下である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは3000mPa・s以下、より好ましくは2400mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは15000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下である。−35℃におけるCCS粘度が前記上限値を超えると、その潤滑油基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう−35℃におけるCCS粘度とは、JIS K 2010−1993に準拠して測定された粘度を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油の15℃における密度(ρ15)は、潤滑油基油の粘度グレードによるが、下記式(5)で表されるρの値以下であること、すなわちρ15≦ρであることが好ましい。
ρ=0.0025×kv100+0.816 (5)
[式中、kv100は潤滑油基油の100℃における動粘度(mm/s)を示す。]
なお、ρ15>ρとなる場合、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性、更には揮発防止性及び低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)のρ15は、好ましくは0.825以下、より好ましくは0.820以下である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)のρ15は、好ましくは0.835以下、より好ましくは0.830以下である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)のρ15は、好ましくは0.840以下、より好ましくは0.835以下である。
なお、本発明でいう15℃における密度とは、JIS K 2249−1995に準拠して15℃において測定された密度を意味する。
また、本発明おいては、潤滑油基油のアニリン点(AP(℃))は、潤滑油基油の粘度グレードによるが、下記式(6)で表されるAの値以上であること、すなわちAP≧Aであることが好ましい。
A=4.3×kv100+100 (6)
[式中、kv100は潤滑油基油の100℃における動粘度(mm/s)を示す。]
なお、AP<Aとなる場合、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性、更には揮発防止性及び低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)のAPは、好ましくは108℃以上、より好ましくは110℃以上である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)のAPは、好ましくは113℃以上、より好ましくは119℃以上である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)のAPは、好ましくは125℃以上、より好ましくは128℃以上である。なお、本発明でいうアニリン点とは、JIS K 2256−1985に準拠して測定されたアニリン点を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油の蒸留性状は、ガスクロマトグラフィー蒸留で、初留点(IBP)が290〜440℃、終点(FBP)が430〜580℃であることが好ましく、かかる蒸留範囲にある留分から選ばれる1種又は2種以上の留分を精留することにより、上述した好ましい粘度範囲を有する潤滑油基油(I)〜(III)及び(IV)〜(VI)を得ることができる。
例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)の蒸留性状に関し、その初留点(IBP)は、好ましくは260〜340℃、より好ましくは270〜330℃、更に好ましくは280〜320℃である。また、10容量%留出温度(T10)は、好ましくは310〜390℃、より好ましくは320〜380℃、更に好ましくは330〜370℃である。また、50容量%留出温度(T50)は、好ましくは340〜440℃、より好ましくは360〜430℃、更に好ましくは370〜420℃である。また、90容量%留出温度(T90)は、好ましくは405〜465℃、より好ましくは415〜455℃、更に好ましくは425〜445℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは430〜490℃、より好ましくは440〜480℃、更に好ましくは450〜490℃である。また、T90−T10は、好ましくは60〜140℃、より好ましくは70〜130℃、更に好ましくは80〜120℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは140〜200℃、より好ましくは150〜190℃、更に好ましくは160〜180℃である。また、T10−IBPは、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、更に好ましくは60〜80℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは15〜50℃である。
また、上記潤滑油基油(II)及び(V)の蒸留性状に関し、その初留点(IBP)は、好ましくは310〜400℃、より好ましくは320〜390℃、更に好ましくは330〜380℃である。また、10容量%留出温度(T10)は、好ましくは350〜430℃、より好ましくは360〜420℃、更に好ましくは370〜410℃である。また、50容量%留出温度(T50)は、好ましくは390〜470℃、より好ましくは400〜460℃、更に好ましくは410〜450℃である。また、90容量%留出温度(T90)は、好ましくは420〜490℃、より好ましくは430〜480℃、更に好ましくは440〜470℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは450〜530℃、より好ましくは460〜520℃、更に好ましくは470〜510℃である。また、T90−T10は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは45〜90℃、更に好ましくは50〜80℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは110〜170℃、より好ましくは120〜160℃、更に好ましくは130〜150℃である。また、T10−IBPは、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは15〜50℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは15〜50℃である。
また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)の蒸留性状に関し、その初留点(IBP)は、好ましくは440〜480℃、より好ましくは430〜470℃、更に好ましくは420〜460℃である。また、10容量%留出温度(T10)は、好ましくは450〜510℃、より好ましくは460〜500℃、更に好ましくは460〜480℃である。また、50容量%留出温度(T50)は、好ましくは470〜540℃、より好ましくは480〜530℃、更に好ましくは490〜520℃である。また、90容量%留出温度(T90)は、好ましくは470〜560℃、より好ましくは480〜550℃、更に好ましくは490〜540℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは505〜565℃、より好ましくは515〜555℃、更に好ましくは525〜565℃である。また、T90−T10は、好ましくは35〜80℃、より好ましくは45〜70℃、更に好ましくは55〜80℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは50〜130℃、より好ましくは60〜120℃、更に好ましくは70〜110℃である。また、T10−IBPは、好ましくは5〜65℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは10〜45℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜60℃、より好ましくは5〜50℃、更に好ましくは5〜40℃である。
潤滑油基油(I)〜(VI)のそれぞれにおいて、IBP、T10、T50、T90、FBP、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP、FBP−T90を上記の好ましい範囲に設定することで、低温粘度の更なる改善と、蒸発損失の更なる低減とが可能となる。なお、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP及びFBP−T90のそれぞれについては、それらの蒸留範囲を狭くしすぎると、潤滑油基油の収率が悪化し、経済性の点で好ましくない。
なお、本発明でいう、IBP、T10、T50、T90及びFBPとは、それぞれASTM D 2887−97に準拠して測定される留出温度を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油における残存金属分は、製造プロセス上余儀なく混入する触媒や原料に含まれる金属分に由来するものであるが、かかる残存金属分は十分除去されることが好ましい。例えば、Al、Mo、Niの含有量は、それぞれ1質量ppm以下であることが好ましい。これらの金属分の含有量が上記上限値を超えると、潤滑油基油に配合される添加剤の機能が阻害される傾向にある。
なお、本発明でいう残存金属分とは、JPI−5S−38−2003に準拠して測定される金属分を意味する。
また、本発明においては、潤滑油基油は、その動粘度に応じて以下に示すRBOT寿命を示すことが好ましい。例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)のRBOT寿命は、好ましくは290分以上、より好ましくは300分以上、更に好ましくは310分以上である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)のRBOT寿命は、好ましくは350分以上、より好ましくは360分以上、更に好ましくは370分以上である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)のRBOT寿命は、好ましくは400分以上、より好ましくは410分以上、更に好ましくは420分以上である。RBOT寿命がそれぞれ前記下限値未満の場合、潤滑油基油の粘度−温度特性及び熱・酸化安定性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合には当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
なお、本発明でいうRBOT寿命とは、潤滑油基油にフェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール;DBPC)を0.2質量%添加した組成物について、JIS K 2514−1996に準拠して測定されたRBOT値を意味する。
また、本発明の内燃機関摩擦損失低減方法に用いられる潤滑油組成物においては、リン系摩耗防止剤を含有することが好ましい。リン系摩耗防止剤としては、構成元素として硫黄を含まないリン系摩耗防止剤、リン及び硫黄の双方を含む摩耗防止剤(リン−硫黄系摩耗防止剤)などが挙げられる。
構成元素として硫黄を含まないリン系摩耗防止剤としては、リン酸、亜リン酸、リン酸エステル類(リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類及びリン酸トリエステル類を含む)、亜リン酸エステル類(亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類及び亜リン酸トリエステル類を含む)、及びこれらの塩(アミン塩又は金属塩)、もしくは炭化水素基に窒素、酸素などの誘導体を導入した誘導体およびそれらの塩が挙げられる。リン酸エステル類及び亜リン酸エステル類としては、通常炭素数2〜30、好ましくは炭素数3〜20の炭化水素基を有するものが用いられる。
また、リン−硫黄系摩耗防止剤としては、チオリン酸、チオ亜リン酸、チオリン酸エステル類(チオリン酸モノエステル類、チオリン酸ジエステル類、チオリン酸トリエステル類を含む)、チオ亜リン酸エステル類(チオ亜リン酸モノエステル類、チオ亜リン酸ジエステル類、チオ亜リン酸トリエステル類を含む)、及びこれらの塩、並びにジチオリン酸亜鉛、リン酸、亜リン酸、リン酸エステル類の炭化水素基に硫黄元素を導入した誘導体およびそれらの塩等が挙げられる。チオリン酸エステル類及びチオ亜リン酸エステル類としては、通常炭素数2〜30、好ましくは炭素数3〜20の炭化水素基を有するものが用いられる。
リン系摩耗防止剤としては、下記一般式(7−a)で表されるリン化合物、下記一般式(7−b)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩(但し、タングステン塩は除く)又はアミン塩から選ばれる少なくとも1種のリン系摩耗防止剤が好ましい。
Figure 0005041885
[式中、R19は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R20及びR21はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、X、X及びXはそれぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を示し、pは0又は1を示す。]
Figure 0005041885
[式中、R22は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、X、X、X及びXはそれぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を示し、qは0又は1を示す。]
上記一般式(7−a)、(7−b)中、R19〜R24で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
上記R19〜R24で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
一般式(7−a)で表されるリン化合物としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル、ジチオ亜リン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸、(ヒドロカルビル)モノチオ亜ホスホン酸、(ヒドロカルビル)ジチオホスホン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、ジチオ亜リン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)モノチオ亜ホスホン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)ジチオ亜ホスホン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル、ジチオ亜リン酸トリエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)モノチオ亜ホスホン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)ジチオ亜ホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物などが挙げられる。
本発明において、一般式(7−a)で表される化合物としては、X〜Xの少なくとも1つが酸素原子である化合物が好ましく、X〜Xの全てが酸素原子である化合物、すなわち下記一般式(7−c)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0005041885
[式中、R25は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R26及びR27は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、pは0又は1を示す。]
一般式(7−b)で表されるリン化合物としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル、ジチオリン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸、(ヒドロカルビル)モノチオホスホン酸、(ヒドロカルビル)ジチオホスホン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル、ジチオリン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)モノチオホスホン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)ジチオホスホン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル、ジチオリン酸トリエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)モノチオホスホン酸ジエステル(ヒドロカルビル)ジチオホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物などが挙げられる。
本発明において、一般式(7−b)で表される化合物としては、X〜Xの少なくとも2つが酸素原子である化合物が好ましく、X〜Xの全てが酸素原子である化合物、すなわち下記一般式(7−d)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0005041885
[式中、R28は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R29及びR30は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、qは0又は1を示す。]
また、一般式(7−a)又は(7−b)で表されるリン化合物の金属塩又はアミン塩は、一般式(7−a)又は(7−b)で表されるリン化合物に、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基、アンモニア、炭素数1〜30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物などを作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和することにより得ることができる。
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、モリブデン、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、モリブデン及び亜鉛が好ましく、亜鉛が特に好ましい。
なお、上記リン化合物の金属塩は、金属の価数あるいはリン化合物のOH基又はSH基の数に応じてその構造が異なり、したがって、リン化合物の金属塩の構造については何ら限定されない。例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つの化合物)2molを反応させた場合、下記式(7−e)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 0005041885
[式中、R31、R32はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。]
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つの化合物)1molとを反応させた場合、下記式(7−f)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 0005041885
[式中、R33は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。]
また、上記窒素化合物としては、具体的には、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。また、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物、アミン化合物へのアミンアルキレンオキシド付加物等を用いることもできる。
これら窒素化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)が好ましい例として挙げることができる。
本発明において、上記リン系摩耗防止剤はリン酸エステルもしくはリン酸エステル金属塩であることが好ましい、また、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明にかかるリン系摩耗防止剤としては、上記一般式(7−c)又は(7−d)で表されるリン化合物又はその金属塩が好ましく、中でも、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する亜リン酸ジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有する亜リン酸トリエステル、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を1個有するリン酸のモノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するリン酸のジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、あるいは炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有するリン酸トリエステル、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を1個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸と亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を3個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を1個有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸と亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を3つ有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸ジエステルが好ましい。
上記の(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸、その金属塩、(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸モノエステル、その金属塩、並びに(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸ジエステルとしては、油溶性及び極圧性の点から、炭化水素基の合計炭素数が12〜30であることが好ましく、14〜24であることがより好ましく、16〜20であることが更に好ましい。
本発明に用いられる潤滑油組成物において、リン系摩耗防止剤の含有量は、組成物全量を基準として、リン元素換算で、0.001〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.06質量%、特に好ましくは0.04〜0.05質量%である。リン系摩耗防止剤の含有量が、リン元素換算で0.001質量%未満の場合は、摩耗防止性が不十分となる傾向にある。他方、リン系摩耗防止剤の含有量がリン元素換算で0.5質量%を超えると、排気ガス後処理装置の性能を長期間維持することが困難となる。
また、本発明の内燃機関摩擦損失低減方法に用いられる潤滑油組成物においては、無灰酸化防止剤を含有することが好ましい。無灰酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の潤滑油に一般的に使用されている連鎖停止型の無灰酸化防止剤が使用可能である。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等を好ましい例として挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
更に、上記フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤は組み合せて使用してもよい。
本発明に用いられる潤滑油組成物における無灰酸化防止剤の含有量は、組成物全量を基準として、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.2〜3質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜2.5質量%であり、特に好ましくは0.8〜2質量%である。無灰酸化防止剤の含有量が0.01質量%未満であると、酸化寿命が不十分となる。また、無灰酸化防止剤の含有量が5質量%を超えても、含有量に見合う酸化寿命の向上効果が得られない。
また、本発明の内燃機関摩擦損失低減方法に用いられる潤滑油組成物においては、無灰分散剤を含有することが好ましい。かかる無灰分散剤としては、ポリオレフィンから誘導されるアルケニルコハク酸イミド、アルキルコハク酸イミド及びそれらの誘導体が挙げられる。代表的なコハク酸イミドは、高分子量のアルケニル基もしくはアルキル基で置換されたコハク酸無水物と、1分子当り平均4〜10個(好ましくは5〜7個)の窒素原子を含むポリアルキレンポリアミンとの反応により得ることができる。高分子量のアルケニル基もしくはアルキル基は、数平均分子量が700〜5000のポリブテン(ポリイソブテン)であることが好ましく、数平均分子量が900〜3000のポリブテン(ポリイソブテン)であることがより好ましい。
本発明において好ましく用いられるポリブテニルコハク酸イミドとしては、例えば、下記一般式(8−a)又は(8−b)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005041885
Figure 0005041885
一般式(8−a)又は(8−b)におけるPIBはポリブテニル基を示し、高純度イソブテンあるいは1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒あるいは塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られるポリブテンから得られるものであり、ポリブテン混合物中において末端にビニリデン構造を有するものが通常5〜100mol%含有される。また、スラッジ抑制効果に優れる点からnは2〜5の整数、好ましくは3〜4の整数であることが望ましい。
一般式(8−a)又は(8−b)で表されるコハク酸イミドの製造法としては特に制限はないが、例えば、上記ポリブテンを塩素化したもの、好ましくは上記高純度イソブテンをフッ化ホウ素系触媒で重合させた高反応性ポリブテン(ポリイソブテン)、より好ましくは塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンを無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。なお、ビスコハク酸イミドを製造する場合は、該ポリブテニルコハク酸をポリアミンの2倍量(モル比)反応させれば良く、モノコハク酸イミドを製造する場合は、該ポリブテニルコハク酸とポリアミンを等量(モル比)で反応させれば良い。これらの中では、スラッジ分散性に優れる点から、ポリブテニルビスコハク酸イミドであることが好ましい。
なお、上記製造法において用いられるポリブテンには、製造過程の触媒に起因する微量のフッ素分や塩素分が残留し得るので、吸着法や十分な水洗等の適切な方法によりフッ素分や塩素分が十分除去されたポリブテンを用いることが好ましい。フッ素や塩素の含有量としては、好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは5質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以下である。
また、ポリブテンと無水マレインとの反応によりポリブテニルコハク酸無水物を得る工程では、従来、塩素を用いる塩素化法が適用されることが多い。しかし、この方法では、コハク酸イミド最終製品中に多量の塩素(例えば約2000〜3000質量ppm)が残留する結果となる。一方、塩素を用いない方法、例えば上記高反応性ポリブテンを用いた場合及び/又は熱反応法では、最終製品中に残る塩素を極めて低いレベル(例えば0〜30質量ppm)に抑えることができる。従って、潤滑油組成物中の塩素含有量を0〜30質量ppmの範囲の量に抑えるためには、上記塩素化法を用いず、上記高反応性ポリブテンを用いる方法及び/又は熱反応法によって得られたポリブテニルコハク酸無水物を用いることが好ましい。
また、ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記一般式(8−a)又は(8−b)で表される化合物に、ホウ酸等のホウ素化合物や、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、有機酸等の含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和又はアミド化した、いわゆる変性コハク酸イミドとして用いることができる。特に、ホウ酸等のホウ素化合物との反応で得られるホウ素含有アルケニル(もしくはアルキル)コハク酸イミドは、熱・酸化安定性の面で有利である。
一般式(8−a)又は(8−b)で表される化合物に作用させるホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル類等が挙げられる。ホウ酸としては、具体的には例えばオルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸等が挙げられる。ホウ酸塩としては、ホウ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩等が挙げられ、より具体的には、例えばメタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム、過ホウ酸リチウム等のホウ酸リチウム;メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等のホウ酸ナトリウム;メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等のホウ酸カリウム;メタホウ酸カルシウム、二ホウ酸カルシウム、四ホウ酸三カルシウム、四ホウ酸五カルシウム、六ホウ酸カルシウム等のホウ酸カルシウム;メタホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム、六ホウ酸マグネシウム等のホウ酸マグネシウム;及びメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウム等が挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル等が挙げられ、より具体的には例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が挙げられる。上記ホウ素化合物を作用させたコハク酸イミド誘導体は、耐熱性、酸化安定性に優れることから好ましく用いられる。
また、一般式(8−a)又は(8−b)で表される化合物に作用させる含酸素有機化合物としては、具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸若しくはこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる。このような含酸素有機化合物を作用させることで、例えば、一般式(8−a)又は(8−b)で表される化合物におけるアミノ基又はイミノ基の一部又は全部が次の一般式(8−c)で示す構造になると推定される。
Figure 0005041885
上記一般式(8−c)中のR34は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルケニル基、炭素数1〜24アルコキシ基、又は−O−(R35O)Hで表されるヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレン基を示し、R35は炭素数1〜4のアルキレン基、mは1〜5の整数を示す。これらの中ではアミノ基又はイミノ基の全てにこれら含酸素有機化合物を作用させたものを主成分とするポリブテニルビスコハク酸イミドがスラッジ分散性に優れるため好ましく用いられる。そのような化合物は、例えば一般式(8−a)で表される化合物1モルに対し(n−1)モルの含酸素有機化合物を作用させることで得られる。このような含酸素有機化合物を作用させたコハク酸イミド誘導体は、スラッジ分散性に優れ、特にヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネートを作用させたものが好ましい。
本発明で用いられる無灰分散剤としてのポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の重量平均分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは7000以上、特に好ましくは8000以上である。重量平均分子量が2000未満では、非極性基のポリブテニル基の分子量が小さくスラッジの分散性に劣り、また、酸化劣化の活性点となる恐れのある極性基のアミン部分が相対的に多くなって酸化安定性に劣るため、本願発明のような長寿命化効果は得られないと考えられる。一方、低温粘度特性の悪化を防止する観点から、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の重量平均分子量は、20000以下であることが好ましく、15000以下であることが特に好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ウォーターズ製の150−C ALC/GPC装置に東ソー製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
なお、本発明では、無灰分散剤として、上記のコハク酸イミド及び/又はその誘導体の他、アルキル又はアルケニルポリアミン、アルキル又はアルケニルベンジルアミン、アルキル又はアルケニルコハク酸エステル、マンニッヒ塩基及びこれらの誘導体等を使用することができる。
本発明に用いられる潤滑油組成物における無灰分散剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは1〜15質量%であり、3〜12質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは4〜10質量%である。無灰分散剤の含有量が3質量%未満であると燃焼生成物の分散性が不十分となり、また、12質量%を超えると粘度−温度特性が不十分となる。
本発明に用いられる潤滑油組成物は、上記の潤滑油基油、リン系摩耗防止剤、無灰酸化防止剤及び無灰分散剤のみからなるものであってもよいが、その性能を更に向上させるために、必要に応じて以下に示す各種添加剤を更に含有してもよい。
また、本発明に用いられる潤滑油組成物は、その摩擦特性を更に改善できる点から、摩擦調整剤を含有することが好ましい。摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ヒドラジド(オレイルヒドラジド等)、セミカルバジド、ウレア、ウレイド、ビウレット等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。
本発明においては、摩擦調整剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。摩擦調整剤の含有量が前記下限値未満であると、その添加による摩擦低減効果が不十分となる傾向にあり、また、前記上限値を超えると、リン系摩耗防止剤などの効果が阻害されやすく、あるいは添加剤の溶解性が悪化する傾向にある。
また、本発明に用いられる潤滑油組成物は、清浄性の点から、金属系清浄剤を更に含有することが好ましい。かかる金属系清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属系清浄剤を用いることが好ましい。
アルカリ土類金属スルホネートとしては、分子量300〜1,500、好ましくは400〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩であり、カルシウム塩が好ましく用いられる。上記アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。ここでいう石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルホン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常、発煙硫酸や無水硫酸が用いられる。
アルカリ土類金属フェネートとしては、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が挙げられ、例えば下記の一般式(9−a)、(9−b)、(9−c)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0005041885
Figure 0005041885
Figure 0005041885
上記一般式(9−a)〜(9−c)中、R36、R37、R38、R39、R40及びR41はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖又は分枝のアルキル基を示し、M、M及びMはそれぞれアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示し、xは1又は2を示す。上式中、R36、R37、R38、R39、R40及びR41としては、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられ、これらは直鎖でも分枝でもよい。これらはまた1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよい。
アルカリ土類金属サリシレートとしては、アリキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が挙げられ、例えば下記の一般式(9−d)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0005041885
上記一般式(9−d)中、R42は炭素数1〜30、好ましくは6〜18の直鎖又は分枝のアルキル基を示し、nは1〜4の整数、好ましくは1又は2を示し、Mはアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示す。R42としては、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられ、これらは直鎖でも分枝でもよい。これらはまた1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよい。
また、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートとしては、上記のアルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物、アリキルサリチル酸等を直接、マグネシウム及び/又はカルシウムのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性(正塩)アルカリ土類金属スルホネート、中性(正塩)アルカリ土類金属フェネート及び中性(正塩)アルカリ土類金属サリシレートだけでなく、中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリシレートと過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性アルカリ土類金属スルホネート、塩基性アルカリ土類金属フェネート及び塩基性アルカリ土類金属サリシレートや、中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリシレートの存在下で、アルカリ土類金属の水酸化物と炭酸ガス又はホウ酸とを反応させることにより得られる過塩基性(超塩基性)アルカリ土類金属スルホネート、過塩基性(超塩基性)アルカリ土類金属フェネート及び過塩基性(超塩基性)アルカリ土類金属サリシレートも含まれる。
本発明においては、上記の中性アルカリ土類金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩、過塩基性(超塩基性)アルカリ土類金属塩及びこれらの混合物等を用いることができる。これらの中でも、長期間に渡る清浄性を維持する観点から、過塩基性カルシウムスルホネートと過塩基性カルシウムフェネートとを組み合わせたもの、あるいは過塩基性カルシウムサリシレートを使用することが好ましく、過塩基性カルシウムサリシレートを使用することが特に好ましい。金属系清浄剤は、通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。本発明で用いるアルカリ土類金属系清浄剤の全塩基価は任意であるが、通常、全塩基価が500mgKOH/g以下、好ましくは150〜450mgKOH/gのものを用いるのが望ましい。なおここでいう全塩基価は、JIS K2501(1992)の「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味している。
本発明に用いられる潤滑油組成物における金属系清浄剤の含有量は任意であるが、組成物全量基準で、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%含有するのが望ましい。この含有量が10質量%を超える場合は、その含有量に見合うだけの効果が得られないため好ましくない。
また、本発明に用いられる潤滑油組成物は、粘度−温度特性を更に改善できる点から、粘度指数向上剤を含有することが好ましい。かかる粘度指数向上剤としては、非分散型又は分散型ポリメタクリレート類、分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられ、中でも重量平均分子量が10,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000、より好ましくは150,000〜500,000、さらに好ましくは180,000〜400,000の非分散型粘度指数向上剤及び/または分散型粘度指数向上剤が好ましく用いられる。
非分散型粘度指数向上剤としては、具体的には、下記一般式(10−a)、(10−b)及び(10−c)で表される化合物の中から選ばれるモノマー(以下、「モノマー(M−1)」という)の単独重合体又はモノマー(M−1)の2種以上の共重合体あるいはその水素化物等が例示できる。一方、分散型粘度指数向上剤としては、具体的には、一般式(10−d)及び(10−e)で表される化合物の中から選ばれるモノマー(以下、「モノマー(M−2)」という)の2種以上の共重合体又はその水素化物に酸素含有基を導入したものや、一般式(10−a)〜(10−c)で表される化合物の中から選ばれるモノマー(M−1)の1種又は2種以上と一般式(10−d)及び(10−e)で表される化合物の中から選ばれるモノマー(M−2)の1種又は2種以上との共重合体、あるいはその水素化物等が例示できる。
Figure 0005041885
上記一般式(10−a)中、R43は水素原子又はメチル基を示し、R44は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を示す。R44で表される炭素数1〜18のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基等(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)等が例示できる。
Figure 0005041885
上記一般式(10−b)中、R45は水素原子又はメチル基を示し、R46は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。R46で表される炭素数1〜12の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(これらアルキル基のシクロアルキル基への置換位置は任意である);
ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、二重結合の位置も任意である);
フェニル基、ナフチル基等のアリール基:トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基等の炭素数7〜12のアルキルアリール基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である);ベンシル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);等が例示できる。
Figure 0005041885
上記一般式(10−c)中、X及びXは、それぞれ個別に、水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基(−OR47:R47は炭素数1〜18のアルキル基)又は炭素数1〜18のモノアルキルアミノ基(−NHR48:R48は炭素数1〜18のアルキル基)を示す。
Figure 0005041885
上記一般式(10−d)中、R49は水素原子又はメチル基を示し、R50は炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Yは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、mは0又は1である。R50で表される炭素数1〜18のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、及びオクタデシレン基等(これらアルキレン基は直鎖状でも分枝状でもよい)等が例示できる。また、Yで表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジノ基等が例示できる。
Figure 0005041885
上記一般式(10−e)中、R51は水素原子又はメチル基を示し、Yは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。Yで表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジノ基等が例示できる。
モノマー(M−1)の好ましい例としては、具体的には、炭素数1〜18のアルキルアクリレート、炭素数1〜18のアルキルメタクリレート、炭素数2〜20のオレフィン、スチレン、メチルスチレン、無水マレイン酸エステル、無水マレイン酸アミド及びこれらの混合物等が例示できる。
モノマー(M−2)の好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
なお、上記(M−1)化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のモノマーと(M−2)化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のモノマーとの共重合体の共重合モル比は、一般に、モノマー(M−1):モノマー(M−2)=80:20〜95:5程度である。またその製法も任意であるが、通常、ベンゾイルパーオキシド等の重合開始剤の存在下でモノマー(M−1)とモノマー(M−2)をラジカル溶液重合させることにより容易に共重合体が得られる。
上述した粘度指数向上剤の中でも、低温流動性により優れる点から、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤が好ましい。
本発明に用いられる潤滑油組成物における粘度指数向上剤の配合量は、組成物全量基準で、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。粘度指数向上剤の含有量が0.1質量%未満の場合、その添加による粘度−温度特性の改善効果が不十分となる傾向にあり、また、15質量%を超える場合、初期の極圧性を長期間維持しにくくなる傾向にある。
本発明に用いられる潤滑油組成物においては、その性能をさらに向上させる目的で、必要に応じて、上記添加剤の他にさらに、リン系以外の摩耗防止剤、無灰系以外の酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
リン系以外の摩耗防止剤としては、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等の硫黄系摩耗防止剤が挙げられる。
無灰系以外の酸化防止剤としては、例えば、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
流動点降下剤としては、潤滑油基油の性状に応じて公知の流動点降下剤を任意に選択することができるが、重量平均分子量が50,000を超え150,000以下、好ましくは、80,000〜120,000のポリメタクリレートが好ましい。
消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができる。
着色剤としては、通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、また任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1.0質量%である。
これらの添加剤を本発明に用いられる潤滑油組成物に含有させる場合、その含有量は組成物全量基準で、リン系以外の摩耗防止剤では0.01〜2質量%、無灰系以外の酸化防止剤では0.01〜2質量%、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、流動点降下剤では、0.05〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%、着色剤では0.001〜1.0質量%の範囲で通常選ばれる。
本発明に用いられる潤滑油組成物の100℃における動粘度については特に制限はないが、好ましくは4.0〜27.0mm/sであり、より好ましくは5.6〜16.3mm/sであり、さらに好ましくは9.3〜12.5mm/sであり、特に好ましくは9.3〜11.0mm/sである。
また40℃における動粘度についても特に制限はないが、好ましくは14.0〜200mm/sであり、より好ましくは20〜110mm/sであり、さらに好ましくは40〜60mm/sであり、特に好ましくは45〜55mm/sである。
また本発明の潤滑油組成物は、せん断後の100℃における動粘度が9.3mm/s以上であることが好ましい。
本発明に用いられる潤滑油組成物の粘度グレードは、好ましくはSAE20、30、40、50の範囲であり、より好ましくはSAE20、30の範囲であり、特にSAE30、0W−30、5W−30、10W−30であることが好ましい。
本発明に用いられる潤滑油組成物のNOACK蒸発量は、特に制限はないが、通常20質量%以下、好ましくは16質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。NOACK蒸発量が20質量%を超えると潤滑油の蒸発損失量が多くなるため好ましくない。
本発明の潤滑油組成物の150℃におけるTBS粘度は、3.7mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは3.2mPa・s以下、さらに好ましくは2.9mPa・s以下、特に好ましくは2.6mPa・s以下、最も好ましくは2.5mPa・s以下である。また、150℃におけるTBS粘度は、1.0Pa・s以上であることが好ましく、さらに好ましくは1.5Pa・s以上、特に好ましくは2.0Pa・s以上である。
本発明の潤滑油組成物の150℃におけるTBS粘度は、例えばSAE(xW−)30グレードでは、十分な油膜保持性と流体潤滑領域における摩擦低減効果とのバランスで、2.9mPa・s以上、3.7mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは3.2mPa・s以下、さらに好ましくは3mPa・s以下である。
本発明の潤滑油組成物の150℃におけるTBS粘度は、例えばSAE(xW−)20グレードでは、十分な油膜保持性と流体潤滑領域における摩擦低減効果とのバランスで、2.6mPa・s以上、2.9mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは2.8mPa・s以下、さらに好ましくは2.7mPa・s以下である。
本発明の潤滑油組成物の100℃におけるTBS粘度は、例えばSAE(xW−)30グレードでは、十分な油膜保持性と流体潤滑領域における摩擦低減効果とのバランスで、7mPa・s以下であることが好ましく、6.6mPa・s以下がより好ましく、6.3mPa・s以下がさらに好ましく、また5mPa・s以上であることが好ましく、6mPa・s以上がより好ましい。
なお、ここでいうTBS(Taperd bearing simulator)粘度とは、高温高せん断下における実効粘度を示し、ASTM D4683(Standard Test Method for Measuring Viscosity at High Shear Rate and High Temperature by Tapered Bearing Simulator)に準拠した方法により測定される、せん断速度10/sにおける粘度(但し、温度条件は150℃又は100℃とした。)のことである。
また、本発明においては潤滑油組成物の硫酸灰分は、排気ガス後処理装置の性能の維持の点から、好ましくは1.2質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.9質量%以下であり、エンジン清浄性や酸化安定性を高いレベルで維持するために、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上である。なお、本発明でいう硫酸灰分とは、JIS K2272−1985の「原油及び請求製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」の「5.硫酸灰分の試験方法」に準拠して測定される硫酸灰分量を意味している。
本発明の内燃機関摩擦損失低減方法は、二輪車、四輪車、発電用、舶用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関の摩擦損失低減方法として好ましく使用することができ、特に自動車用、特にガソリンエンジン用もしくはディーゼルエンジン用として好ましく使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
耐久走行用シャーシダイナモにおいて、以下の車両を用い、アミド結合を有する燃料油添加剤を140mg/L添加(窒素増加量で3質量ppm)したガソリンを用い、図1に示す耐久走行パターンを繰り返し走行することにより8000kmの走行を実施した。
耐久後のエンジン油フリクションおよび窒素化合物の含有量を測定した結果、燃料中からエンジン油中へ約0.9質量%の含窒素化合物(窒素増加量で100質量ppm)が劣化した状態で溶出していることが判明した。
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1に示す基油を用い、表2に示す各種潤滑油を調製した。200℃、20分の条件で劣化させた含窒素化合物を添加したもしくは未添加の潤滑油組成物についてHFRR試験機を用いて摩擦係数を測定した。その結果を表1に示す。
HFRR試験条件
油温:100℃
荷重:200g
振動数:50Hz、振幅:1mm
なお、表2中の燃料油添加剤および潤滑油添加剤は以下のとおりである。
A−1:オレイルアミド(N量:1.3質量%)
A−2:ジエタノールアミン(N量:3.5質量%)
A−3:ポリブテニルアミン(N量:0.4質量%)
A−4:ポリエーテルアミン(N量:0.5質量%)
A−5:オレイルアミド
A−6:オレイルウレア
B−1:ジブチルリン酸亜鉛
(P量:13.2質量%、S量:0質量%、Zn量:13質量%)
B−2:secC4/C6−ジチオリン酸亜鉛
(P量:6.2質量%、S量:14.9質量%、Zn量:7.2質量%)
C−1:カルシウムスルホネート
(Ca量2.4質量%、S量2.9質量%、塩基価20mgKOH/g)
C−2:過塩基性カルシウムスルホネート
(Ca量12.0質量%、S量2.0質量%、塩基価300mgKOH/g)
C−3:過塩基性カルシウムフェネート
(Ca量9.3質量%、S量3.5質量%、塩基価250mgKOH/g)
D−1:ビス型ポリブテニルコハク酸イミド(N:0.6質量%、Mw10000)
D−2:ビス型ポリブテニルコハク酸イミドのホウ酸変性物
(N:1.5質量%、B:0.5質量%、Mw5000)
E−1:ジフェニルアミン
E−2:モリブデンアミン錯体
F−1:ポリメタクリレート(SSI30)
F−2:ポリメタクリレート
F−3:ジメチルシリコン
Figure 0005041885
Figure 0005041885
実施例で用いた耐久走行用シャーシダイナモにおける耐久走行パターンを示す。

Claims (16)

  1. 内燃機関用の燃料油として、燃料油中の窒素含有量が燃料油全量基準で1質量ppm以上、かつ燃料油中の硫黄含有量が燃料油全量基準で10質量ppm以下である燃料油(A)を使用し、燃料油(A)中の窒素分のうち燃料油全量基準で0.5質量ppm以上が燃料油添加剤に起因し、前記燃料油添加剤が、アミノ基またはアミド基を有する化合物であり、その内燃機関に用いられる潤滑油として、潤滑油全量基準で硫黄含有量が0.5質量%以下で、リン酸エステルもしくはリン酸エステル金属塩からなるリン系摩耗防止剤を潤滑油全量基準でリン元素として0.001質量%以上0.5質量%以下含有する潤滑油(B)を組み合わせて使用することを特徴とする内燃機関の摩擦損失低減方法であって、燃料油(A)中の全窒素化合物基準で10質量%以上の窒素化合物が燃焼室を経てエンジン油中に混入することを特徴とする内燃機関の摩擦損失低減方法
  2. 燃料油(A)中に配合される添加剤において、添加剤の配合量を燃料油全量基準でx質量ppm、添加剤の示差熱天秤(TGA)による300℃の残分を添加剤全量基準でy質量%とした場合にx×yが500以上であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の摩擦損失低減方法。
  3. 燃料油(A)の15℃における密度が0.700g/cm以上0.783g/cm以下、蒸留性状10容量%留出温度が70℃以下、50容量%留出温度が75℃以上105℃以下、90容量%留出温度が220℃以下、リード蒸気圧が44kPa以上93kPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の摩擦損失低減方法。
  4. 潤滑油(B)が、尿素アダクト値が4質量%以下であり、かつ粘度指数が100以上の潤滑油基油を20質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関の摩擦損失低減方法。
  5. 潤滑油(B)の150℃におけるTBS粘度が2.9mm/s以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関の摩擦損失低減方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関の摩擦損失低減方法に使用する窒素含有量が燃料油全量基準で1質量ppm以上、かつ燃料油中の硫黄含有量が燃料油全量基準で10質量ppm以下である燃料油組成物。
  7. 燃料油中の窒素分のうち燃料油全量基準で0.5質量ppm以上が燃料油添加剤に起因することを特徴とする請求項に記載の燃料油組成物。
  8. 前記燃料油添加剤が、アミノ基またはアミド基を有する化合物であること特徴とする請求項に記載の燃料油組成物。
  9. 燃料油中に配合される添加剤において、添加剤の配合量を燃料油全量基準でx質量ppm、添加剤の示差熱天秤(TGA)による300℃の残分を添加剤全量基準でy質量%とした場合にx×yが500以上であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の燃料油組成物。
  10. 燃料油中の全窒素化合物基準で10質量%以上の窒素化合物が燃焼室を経てエンジン油中に混入することを特徴とする請求項いずれかに記載の燃料油組成物。
  11. 15℃における密度が0.700g/cm以上0.783g/cm以下、蒸留性状10容量%留出温度が70℃以下、50容量%留出温度が75℃以上105℃以下、90容量%留出温度が220℃以下、リード蒸気圧が44kPa以上93kPa以下であることを特徴とする請求項10のいずれかに記載の燃料油組成物。
  12. 請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関の摩擦損失低減方法に使用する潤滑油全量基準で硫黄含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
  13. 尿素アダクト値が4質量%以下且つ粘度指数が100以上の潤滑油基油を20質量%以上含有することを特徴とする請求項12に記載の潤滑油組成物。
  14. 150℃におけるTBS粘度が2.9mm/s以下であることを特徴とする請求項12または13に記載の潤滑油組成物。
  15. 潤滑油全量基準でリン元素として0.001質量%以上0.5質量%以下のリン系摩耗防止剤を含有することを特徴とする請求項1214のいずれかに記載の潤滑油組成物。
  16. 前記リン系摩耗防止剤が、リン酸エステルもしくはリン酸エステル金属塩であることを特徴とする請求項15に記載の潤滑油組成物。
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