JP5041205B2 - 車両 - Google Patents
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Description
例えば、同軸上に配置された2つの駆動輪を有し、運転者の重心移動による駆動輪の姿勢を感知して駆動する技術が特許文献1で提案されている。
また、従来の円形状の駆動輪1つや、球体状の駆動輪1つの姿勢を制御しながら移動する車両や各種倒立振り子車両について提案されている。
そして、車輪を操舵したり、2つの駆動輪に差動トルクを与えたりすることで、車両の旋回を行うようになっている。
このように、旋回性能には限界があるため、その限界値に応じた制限値を設定し、その範囲内で旋回させるようにしている。
なお、搭乗物が全く無い場合や、任意の荷物を乗せて自動走行するような場合であっても同様の課題が存在する。
しかし、旋回半径を急に制限すると乗員の目標走行ルートを大きく外れてしまう可能性がある。
一方、旋回速度を急に制限すると、急ブレーキとなり後続車の急接近を招くと共に乗員が不快に感じることになる。
また、設定した制限値の範囲内でより走行目的や走行状態に適した、旋回速度と旋回半径の制限を行うことを第2の目的とする。
(2)請求項2に記載の発明では、前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の両方を制限する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、前記制限手段は、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の車両軌跡と、前記取得した目標曲率γ*での旋回が可能になるまで最低減速度bMinで減速しながら旋回をした場合の車両軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δMax以内である場合には、減速度bを前記最低減速度bMinとし、所定のズレ上限値δMaxより大きい場合にはズレ上限値δMaxと一致する減速度bとし、前記目標速度V*を前記減速度bにより制限し、前記目標曲率γ*を前記目標速度V*の制限値により目標曲率γ*を制限する、ことを特徴とする車両を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、搭乗部に配置された荷重センサと、搭乗物の高さを測定する高さセンサと、前記荷重センサ及び前記高さセンサの検出値から、搭乗物の重心位置を取得する搭乗物重心取得手段と、を備え、前記重心位置取得手段は、前記取得した搭乗物の重心位置と、予め規定されている車両の重心位置とから、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する、ことを特徴とする車両を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記制限手段は、前記目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alimとなるように、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*の少なくとも一方を制限することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、前記走行制御手段は、目標速度V*と目標曲率γ*を直接の制御対象としてフィードバック制御により走行を制御することを特徴とする請求項3、請求項4、又は請求項5に記載の車両を提供する。
(1)実施形態の概要
旋回走行時において、車両の接地荷重中心点が両駆動輪間の外側に移動すると、その車両は横転する。
ここで、接地荷重中心点は、車両に作用する遠心力と重力との合力ベクトルFに平行で重心を通る直線と、地面との交点を表す。このとき、合力ベクトルFの向きは、車両の横方向加速度によって決定され、さらに、横方向加速度は,車両の旋回速度と旋回曲率によって決定される。
したがって、旋回性能の限界、すなわち、接地荷重中心点の限界位置は、車両の重心位置と横方向加速度(旋回速度と旋回曲率)によって決定される。
搭乗物(乗員や荷物等)の重心位置を推定し、これと設計段階で既知である車両の設計重心位置とから、車両全体の重心位置を推定する。
そして、推定した車両全体の重心位置と車両の設計値(両駆動輪11a、11bの間隔等)から、限界横方向加速度alimの値を求める。この、限界横方向加速度alimは、車速等の走行状態とは関係なく、求めることができる。
なお、重心位置の推定については、荷重計と座高計の測定値から、搭乗物(乗員や荷物等)の着座位置、重量、体型を測定し、その測定値から車両の重心位置(車体対称面からのズレ、高さ)を推定する。
例えば、搭乗者から入力された目標走行状態に基づく目標横方向加速度a*が0.5Gで、求めた限界横方向加速度alim=0.3Gを超えている場合、搭乗者の要求通りの制御を行うことはできないので、横方向加速度a=alim=0.3Gとなるように目標走行状態を制限する必要がある。
本実施形態では、目標走行状態の制限として、車速と旋回曲率を次のいずれかの方法により制限した値で旋回走行を行う。
なお、入力された目標走行状態が限界横方向加速度alim以下であれば、入力値に従って旋回走行を行う。
第1の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)に対する最適化を行うもので、理想目標状態(搭乗者が入力した又は外部から指示された目標走行状態)と、現実目標状態(横方向加速度が限界値を超えないよう制限された目標走行状態)の差を最小にする。
(b)目標変化を考慮した最適化(第2の最適化)
第2の最適化では、理想目標R(V*、γ*)の時間変化(時間変化率)を考慮して、現実目標Gを決定する。
(c)乗員の操縦意志を考慮した目標に対する最適化(第3の最適化)
第3の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)と、その変化を考慮した最適化を行う。搭乗者によるジョイスティック(コントローラ31)の操作は、その動きの速さによって、乗員意志の強さ(例えば、その要求の緊急性)を判断できる。そこで、入力目標(V*、γ*)の時間変化率を求め、その大きさが所定の閾値Th(ThV、Thγ)以下であれば、緊急性無しと判断して第1の最適化を、閾値Thより大きければ、緊急性有りと判断して第2の最適化を行う。
(d)走行位置の最適化(第4の最適化)
第4の最適化では、一定時間t後の理想目標位置P1と現実目標位置P2との距離が最短となるように最適化を行う。
(e)走行起動ズレの制約(第5の最適化)
第5の最適化では、走行軌道ズレの観点から最適化を行う。
すなわち、理想目標軌道と現実目標軌道のズレが設定制限値以内に収まるように減速させる減速度bを求め、その値に基づいて最適化を行う。
図1は、本実施形態における車両の外観構成を例示したものである。
図1に示されるように、車両は、同軸上に配置された2つの駆動輪11a、11bを備えている。
両駆動輪11a、11bは、それぞれ駆動モータ12で駆動されるようになっている。
搭乗部13は、運転者が座る座面部131、背もたれ部132、及びヘッドレスト133で構成されている。
また、搭乗部の背面(背もたれ部の表側)には、図示しないが後述する座高計52が配置されている。
本実施形態において制御ユニット16は、搭乗部13の座面部131の下面に取り付けられているが、支持部材14に取り付けるようにしてもよい。
制御ユニット16は、車両の走行、姿勢制御、及び本実施形態における旋回時の走行制御等の各種制御を行う制御ECU(電子制御装置)20を備えており、この制御ECU20には、操縦装置30、走行制御用センサ40、重心位置測定用センサ50、アクチュエータ60、及びバッテリ等のその他の装置が電気的に接続されている。
車体走行制御システム21は、車両の前後方向の加減速を制御する前後加減速機能と、車両を旋回させる旋回機能を実現するように構成され、旋回機能を実現するため旋回走行目標制限システム22を備えている。
車体走行制御システム21は、コントローラ31から入力される走行目標、走行制御用センサ44から供給される両駆動輪11a、11bの車輪回転角及び/又は並進加速度から姿勢制御を行うようになっている。
本実施形態では、両駆動輪11a、11bの回転数を制御することで旋回するようになっている。
重心位置推定システム25は、供給された横方向加速度と荷重分布、座高の測定値から搭乗物の種別(人、荷物、無し)を判定し、その種別に応じて搭乗物の重心ズレと高さを推定する。
また重心位置推定システム25は、推定した重心位置ズレと高さから、車両の重心位置を決定する。
コントローラ31は、ジョイスティックを備えている。ジョイスティックは直立した状態をニュートラル位置とし、前後方向に傾斜させることで前後進を指示し、左右に傾斜させることで左右方向の旋回を指示するようになっている。傾斜角度に応じて、要求速度、旋回曲率が大きくなる。
走行制御用センサ40による検出値は、車体走行制御システム21に供給される。
図3は、荷重計51と座高計52の配置について表したものである。
図3に示されるように、荷重計51は搭乗部13の下側、具体的には座面部131の下面部に配置されている。
荷重計51は、シート上の荷重分布(偏心)を測定し、測定値を重心位置推定システム25に供給するようになっている。
なお、車体の重量(以下車体重量という)と、その重心位置(以下車体重心位置という)は固定されており、設計時に予め決定してあるので、荷重計51の計測対象外である。
荷重計51は、荷重分布と同時に重量を測定し、それを搭乗物の判別や重心位置調整システムの目標位置(角度)設定に使用する。
また、3軸成分測定可能な荷重計を使用し、さらに、横方向加速度と横方向車体傾斜角のデータを利用することにより、旋回時や車体傾斜時での重心ズレの推定も可能にしてもよい。
座高計52は、移動型(走査型)の光センサを鉛直方向(高さ方向)に走査することで搭乗物の高さ(上位の座高)を測定するようになっている。これにより高精度な測定が可能になる。測定値は、重心位置推定システム25に供給される
なお、複数の固定型センサを鉛直方向に配置し、搭乗物の高さを離散的に測定するようにしてもよい。
例えば、図3(d)に示されるように、ねじりトルク測定器で重心ズレを測定することができる。ただし、この場合には、搭乗物の質量を測定するために、荷重計を1つだけ設置する必要がある。
車体駆動アクチュエータ61は、指令値に従って、両駆動輪11a、11bを各々独立して駆動制御するようになっている。
図4は、旋回走行制御処理の内容を表したフローチャートである。
制御ECU20の旋回限界決定システム23は、搭乗物(乗員等)の搭乗(着座)位置、荷重(体重)、形状(体型)を、重心位置測定用センサ50等の計測器を使って測定する(ステップ11)。
まず重心位置推定システム25は、荷重計51から得られた搭乗部13上の荷重に基づき、搭乗物の質量を求める。
図5は、旋回走行時の乗員(搭乗物)およびシート(搭乗部13)の力学的状態を表したものである。
図5において、搭乗物質量をmH、シート質量をmS、搭乗部全質量をmc=mH+mS、重力加速度をgとするとき、搭乗部に作用する力の垂直方向成分(車体中心軸に平行な方向成分)の釣り合いは、次の数式1で表される。
Fn=ΣFn (k)=−mcg
mH=(Fn/g)−mS
図6に示されるように、座高ζH、質量mH、比質量mH/ζHに対して、ある閾値を設定し、それに基づいて搭乗物の種類を判別する。なお、図6及び以下の判別式で用いる各閾値は一例であり、想定される使用環境に応じて修正する。
(a)mH<0.2kg、かつ、ζH<0.01mの場合、搭乗物は「無し」と判別する。
(b)mH>8kg、かつ、ζH>0.3m、かつ、mH/ζH>30kg/mの場合、搭乗物は「人」と判別する。
(c)その他の場合(上記(a)、(b)以外の場合)、搭乗物は「荷物」であると判別する。
なお、小さくて重い荷物(例えば、鉄塊)を乗せた場合も人と判定しないために、上限としてmH/ζH<p(例えば、80kg/m)を人の判別条件に加えてもよい。
また、各判別条件及び判別値は、一例であり、想定される使用条件に応じて適宜変更され、判別される。
hH=0
(数式3)
hH=((1−γ)/2)ζH
数式4において、ζH,0、hH,0は座高と重心高さの標準値であり、本実施形態では、ζH,0=0.902m、hH,0=0.264mとする。
(数式4)
hH=(ζH/ζH,0)hH,0
図5において、搭乗部に作用する力の水平方向成分(車体対称面に垂直な方向成分)、および、基準軸(車体対称面と荷重計51の設置面との交線)まわりのモーメントの釣り合いは、次の数式5で表される。但し、車体傾斜運動(あるいは、搭乗部13の傾斜運動)の角速度による遠心力や角加速度による慣性力は無視している。
この数式5において、mc、λc、hc、ηc=hc+δSは、それぞれ、搭乗部全体の質量、重心ズレ(車体軸から重心までの距離)、重心高さ(座面部131の座面から重心までの距離)、荷重計基準重心高さ(荷重計51の設置面から重心までの距離)であり、数式6で表される。
また、数式5および数式6において、mH、λH、hH、ηH=hH+δSは、搭乗物の質量、重心ズレ、重心高さ、荷重計基準重心高さ、mS、λS、hS、ηS=hS+δSは、シートの質量、重心ズレ、重心高さ、荷重計基準重心高さ、δSは座面部131の厚さ(荷重計51の設置面から座面部131の座面までの距離)、gは重力加速度をそれぞれ表す。
数式5において、λH (・・)の記号「(・・)」は、は2回微分を表す。
Ft=ΣFt (k)=−mca−mHλH(・・)+Fet
Ttn=Σ(Fn (k)Y(k))
=Fnλc−Ftηc+mHλH(・・)(ηH−ηc)−Fet(ηet−ηc)
mc=mH+mS
λc=(mHλH+mSλS)/mc
ηc=(mHηH+mSηS)/mc
この数式5で使用する横方向加速度aは、走行制御用センサ40の計測値から求める。
従って、外力Fetとその作用点高さηetの両者を正確に求めることはできないが、その一方の値を仮定すれば、もう一方の値を求めることができる。例えば、空力中心(空気抵抗の作用点)の想定位置を作用点高さηetとして仮定すれば、その空気抵抗の大きさFetを評価でき、その値を走行、姿勢制御に利用することもできる。
すなわち、重心位置推定システム25は、これまでに求めた搭乗物の重量mHと重心高さhHを用いて、数式7(および数式6)に基づき、搭乗物の重心ズレλHを求める。
λH=(mcλc−mSλS)/mH
λc={Ftηc+FHa(ηH−ηc)+Ttn}/Fn
FHa=Ft+mca
図7は、車両、搭乗者、及び全体の重心位置を表したものである。
旋回限界決定システム23は、車両全体の質量m、重心ズレλ、重心距離lを、次の数式8から求める
数式8において、mH、λH、hH、lH=hH+l0は、搭乗物の質量、重心ズレ、重心高さ、重心距離をそれぞれ表す。l0は、車体の前後方向の回転中心(車軸)から座面部131の座面までの距離である。また、mCB、lCBは車体の質量、重心距離をそれぞれ表す。なお、車体の重心ズレはλCB=0とする。
m=mH+mCB
λ=mHλH/m
l=(mHlH+mCBlCB)/m
ここで、横方向加速度は、右折時の方向(車両から見て左方向)を正、左折時の方向(車両から見て右方向)を負としており、一般にaMinは左折時の限界横方向加速度を表し、aMaxは右折時の限界横方向加速度に相当する。
図8に示されるように、接地荷重中心点Sは、遠心力と重力の合力ベクトルFと平行で重心を通る直線と地面との交点であり、車体中心軸に対する点Sの相対位置(ズレ)を接地荷重中心位置λGFとする。
また、λGFを半トレッドD/2で無次元化した値が、接地荷重偏心度βであり、−1<β<1ならば、接地荷重中心点は両駆動輪11の間に存在する。
数式9において、RWはタイヤ接地半径、Dはトレッド(両駆動輪11a、11b間の距離)、λは車両全体重心ズレ、lは車両全体重心距離、aは現在の横方向加速度、gは重力加速度である。
β=λGF/(D/2)
λGF=λ−(a/g)(l+RW)
(a)β=0…中立状態;最も安定な状態
(b)|β|>1…車体横転;接地荷重点のずれている方向に車体が横転する
(c)|β|>βslip…片輪スリップ;接地荷重点から遠い側の駆動輪がスリップする(結果的に車両がスピンし、横転する可能性が高い)
数式10において、aBCは重心位置での横方向加速度、gは重力加速度、Rwはタイヤ接地半径、mは車両の質量である。また、τw*は接地荷重中心点から遠い側の駆動輪の駆動トルクを表す。
βslip=1−{1/√(1−(a/μg)2)}|τw*|/{(1/2)μmgRw}
ただし、数式9、数式10による連立方程式は陽的に解くことができないため、ニュートン法などの陰的な繰り返し計算法、もしくは,あらかじめ数値計算で求めておいた数値解のテーブルによって、限界横方向加速度を決定する。
そして、目標横方向加速度a*が、ステップ14で決定した限界横方向加速度aMin、aMaxを超えてないか(aMin<a*<aMax?)を判断する(ステップ17)。
なお、この場合の走行目標(現実目標)は、V*〜=V*、γ*〜=γ*となる。
(a)〜(c)による最適化は、要求された目標走行状態(V*、γ*)に対する最適化を行うもので、搭乗者の操作(意志)に沿った最適化となる。
(c)、(e)による最適化は、要求された目標走行状態で走行した場合の走行状態及びその履歴に対する最適化を行うものである。
これにより、旋回速度と旋回曲率を必要以上に制限しないので、車両の旋回性能を限界まで最大限利用することができる。
また、現実目標は、目標横方向加速度a*が限界横方向加速度alimとなるように理想目標を制限した値(V*〜、γ*〜)を意味し、現実目標状態は、現実目標に従って走行した後の位置、速度等を意味するものとする。
この第1の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)に対する最適化を行うもので、理想目標状態と、現実目標状態の差を最小にする。
図9は、第1の最適化の状態を表したものである。
この図9において、旋回限界曲線Aは、ステップ14で決定した限界横方向加速度alimによって決まる曲線である。この旋回限界曲線の原点側(左下側)の領域が安定状態であり、原点から離れる側(右上側)の領域が不安定な領域(制限が必要な領域)である。
この最適化では、例えば、理想目標R1にできるだけ近い状態のG1を旋回限界曲線A上で選択する。
xy2=c
2x(x−x1)=y(y−y1)
x=γ*〜/γ0、x1=γ*/γ0、c=alim/(γ0V0 2)
y=V*〜/V0、y1=V*/V0
数式11の数値解法としては、例えばニュートン法(繰り返し計算法)を用いる。なお、一つ前の時間ステップでの解を初期値として与えることにより、その収束安定性および収束速度を高めることができる。
また、操縦者の責任において、走行目標の妥当性、安全性が保障される。
さらに、アルゴリズムがシンプルであり、応答性やロバスト性が高い。
この第2の最適化では、理想目標R(V*、γ*)の時間変化(時間変化率)を考慮して、現実目標Gを決定する。
図10は第2の最適化の状態を表したものである。
図10に示されるように、第2の最適化では、例えば、ある時間内に安定領域にあった理想目標R11から不安定領域の理想目標R12に移動したものとする。この場合、理想目標車速の変化量ΔV*よりも、理想旋回曲率の変化量Δγ*の方が大きく、この変化は、車速よりも曲率を大きくしたいという搭乗者の走行意志の現れと判断することができる。
そこで、旋回走行目標制御システム22は、変化後の理想目標の両要素V*、γ*のうち、変化量の大きい要素は制限せず、変化量の小さい要素を優先的に制限することで、旋回限界曲線A上の現実目標Gを決定する。
また、理想目標がR21からR22に変化した場合、搭乗者は車速の増加を強く希望しえいると判断して、車速は入力された値V*を維持(V*〜=V*)しながら、旋回曲率γ*を制限(γ*〜=γ*´<γ*)する。
旋回走行目標制御システム22は、まず、理想目標V*、γ*と、旋回限界alimを取得し、理想目標の時間変化ΔV*、Δγ*を次の数式12から求める。
ΔV*(k)=V*(k)−V*(k-n)
Δγ*(k)=γ*(k)−γ*(k-n)
参照時間Tの中で、理想目標の変化量が小さい場合、それ以前の値を考慮して、変化の向きを決定する。
(イ)右下への変化(ΔV*≦0、且つ、Δγ*≧0)の場合
例えば、カーブ入口での操縦等が想定され、この場合、「曲がりたい」という搭乗者の要求であると判断し、目標曲率を優先し、目標速度のみを制限する。
すなわち、旋回走行目標制御システム22は、現実目標曲率をγ*〜=γ*とする。
また、現実目標速度を、V*〜=√(alim/γ*)、により求める。
例えば、カーブ出口での操縦等が想定され、「加速したい」という搭乗者の要求であると判断し、目標速度を優先し、目標曲率のみを制限する。
すなわち、旋回走行目標制御システム22は、現実目標速度をV*〜=V*とする。
また、現実目標曲率を、γ*〜=alim/V*2、により求める。
この場合、変化の向き(角度)に応じて目標速度と目標曲率を制限し、次の数式13から現実目標速度V*〜(=x)と現実目標曲率γ*〜(=y)を求める。
但し、数式13において、Δx=Δγ*/γ0、Δy=ΔV*/V0、である。
xy2=c
Δx(x−x1)=Δy(y−y1)
このため特に搭乗者の緊急操作時(例えば、衝突回避時の急な旋回指令)に適切な走行状態を実現できる。
すなわち、理想目標R(V*、γ*)のうち、時間変化率ΔV*、Δγ*が小さい方を制限して旋回限界曲線A上の値とする。
この第3の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)と、その変化を考慮した最適化を行うものである。
搭乗者による入力目標(V*、γ*)はジョイスティック(コントローラ31)の操作によるが、その動きが速い場合には緊急意志の表れであると判断することができる。
そこで、入力目標(V*、γ*)の変化率を求め、所定の閾値Th(ThV、Thγ)以下であれば、緊急性無しと判断して第1の最適化(目標値に対する最適化)を行う。
一方、変化率が閾値Thより大きければ、緊急性有りと判断して第2の最適化(入力目標の変化を考慮した最適化)を行う。
閾値Thとの比較は、車速の閾値ThV、曲率の閾値Thγともに行い、いずれか一方が大きい場合には緊急性有りと判断する。
これは、ジョイスティックを素早く動かした場合には、緊急性があるため暫くはそのままの位置を維持すると推定され、この場合、変化率が0となり第1の最適化に戻ってしまうことを防止するためである。
この第4の最適化では、所定時間後の走行位置の観点から最適化を行う。
図11は、理想目標状態で走行した場合の車両位置と第4の最適化による車両位置について表したものである。
この図4に示されるように、ある時点における車両位置P0から、搭乗者の入力目標((V*、γ*)に従って所定の一定時間tだけ旋回走行したと仮定した場合の車両位置を理想目標位置P1とする。また、入力目標(V*、γ*)を制限した現実目標(V*〜、γ*〜)で同じ一定時間tだけ旋回走行したと仮定した場合の車両位置を現実目標位置P2とする。
両位置P1とP2の距離が最短となる条件(近似式)は、次の数式14で表される。
V*〜=(α/(1−β))V*、γ*〜=alim/(V*〜)2
α=alim/a*、
β={2(8−π)/(π2−2(1+3α)π+32)}(1−α)
なお、所定角度Θを小さく(例えば、30度、45度)設定することも可能で、その場合、より細かな制御を行うことが可能になる。
また、本実施例において、数式14では、両者P1、P2のズレに対して1次近似で最短条件を求めているが、方程式を陰的に解くことによって、その厳密解を求めるようにしてもよい。
この第5の最適化では、走行軌道ズレの観点から最適化を行う。第5の最適化は、例えば、決められた軌道上を単独で走行する場合に適している。
図12は、第5の最適化について表したものである。
図12に示されるように、第5の最適化では、理想目標軌道と現実目標軌道のズレが設定制限値以内に収まるように減速させる。
理想目標曲率γ*での旋回が可能になるまで、最低減速度bMin(設定値)で減速しながら旋回するとき、両軌道のズレが軌道ズレ上限δMax以内であれば、あらかじめ設定した最低減速度bMinで減速させる。
一方、両軌道のズレが軌道ズレ上限δMaxより大きければ、軌道ズレ上限δMaxと一致するように減速度を設定する。
ここで、軌道ズレ上限δMaxの値として、本実施形態では車体幅分の距離が設定されている。また、最低減速度bMInは、例えば、0.05Gが設定されているが、変更可能に構成してもよい。
そして旋回走行目標制御システム22は、最低減速度bMinで旋回した時の軌道ズレδを数式15に従って求める。
δ=(1/γ){(1−α)/α2}(1−cosθ)
α=alim、θ=alim/bMin(1−√α)
一方、軌道ズレδがδMaxより大きければ(δ>δMax)、軌道ズレδがδMaxとなる減速度bを次の数式16から算出する。
b={(1−√α)/cos-1{1−(α2/(1−α))γ*δ}}alim
なお、数式17、18において、Δtは時間刻みを表し、一つ前の時間ステップにおける現実目標速度V*〜(k-1)から現在の現実目標速度V*〜(k)を決定する。
V*〜(k)=V*〜(k-1)−Δt・b
γ*〜(k)=alim/V*〜(k)2
また、乗員が不快に感じない程度の減速度として最低減速度bMinを設定することで、必要以上の軌道ズレを防ぐことができる。
イ)走行平均速度による変更
平均速度が大きい程、走行している道路幅が広いと推定できるので、軌道ズレ上限δMaxを大きくする(ズレ許容量を大きくする)。
ロ)センサによる周囲の物体検知に基づく変更
車両周囲の物体を検知し、所定距離L1内に物体を検知できない場合には、軌道ズレ上限δMax=L2(<L1、例えば、L2=L1/2)とする。
車両がナビゲーション装置を備えている場合、道路幅や交通量といったナビ情報を使用し、走行中の道路幅が広い程、又は/及び、交通量が少ない程、軌道ズレ上限δMaxを大きくする。
ニ)搭乗者の入力操作による設定値の変更
操縦措置30等の入力装置からの入力操作によって、搭乗者の希望する軌道ズレ上限δMaxに変更できるようにする。
まず、車体走行制御システム21は、車輪回転計41や加速度計42を使って、実際の走行状態を測定する(ステップ19)。
横方向加速度aの測定は、(1)各輪(駆動輪11a、11b)の車輪回転計41(角度計)の測定値を使用する方法と、(2)加速度計42の測定値を使用する方法がある。
この方法は、左右駆動輪11a、11bの回転速度から、横方向加速度a(1)を算出する。
図13(a)に示されるように、乗員からみて右側の駆動輪11aの回転周速度をVR、左側の駆動輪11bの回転周速度をVLとすると、乗員(搭乗物)の重心位置Pにおける横方向加速度a(1)は次の数式19及び数式20から算出される。
a(1)=V・ΔV/D
V=VM−(YG/D)ΔV
VM=(1/2)(VR+VL)
ΔV=VR−VL
VR=RWωWR
VL=RWωWL
ωWR:右輪回転角速度
ωWL:左輪回転角速度
RW:タイヤ接地半径
D:トレッド
YG:実質重心位置のズレ(1つ前の時間ステップでの値を利用)
この方法は、加速度計42で測定される並進加速度の値から、横方向加速度a〜(2)を算出する。
図13(b)に示されるように、車体中心軸をn軸、車体対称面に垂直な軸をt軸とし、an,atをセンサ加速度(各軸方向成分)とするとき、センサ取り付け位置における横方向加速度a〜(2)は、a〜(2)=atとなる。
車体走行制御システム21は、駆動輪がスリップしているか否かを判断し、スリップしていないと判断した場合には、車輪回転計41の測定値に基づく値a(1)を横方向加速度aとし、スリップしていると判断した場合には、加速度計42の測定値に基づく値a〜(2)を横方向加速度aとする。
初めに、車体走行制御システム21は、次の数式22によって、車輪回転計41の測定値に基づく乗員重心位置での横方向加速度a(1)から、センサ取り付け位置での横方向加速度a〜(1)を算出する。
a〜(1)=a(1)+(ΔV/D)2YG
なお、右駆動輪11aと左駆動輪11bのどちらがスリップしているかについては、次の数式23により判断できる。
a〜(1)−a〜(2)≧ε …右側の駆動輪11aがスリップ
a〜(1)−a〜(2)≦−ε …左側の駆動輪11bがスリップ
図14は、旋回走行安定化処理(ステップ20)のフローチャートである。
車体走行制御システム21は、ステップ19で測定したタイヤの回転速度vと横方向加速度aを取得し(ステップ21)、車両の実際の旋回曲率γ(=a/V2)と、旋回速度Vを計算する(ステップ22)。
なお、aMin<a*<aMaxである場合(ステップ17;Y)の現実目標はV*〜=V*、γ*〜=γ*である。
数式24において、τRが右輪トルク指令値を、τLが左輪トルク指令値を表す。
また、τ〜は並進、姿勢制御トルクを表し、τdifは回転制御トルクを表し、数式25で表される。数式25において、(・)は一回微分を意味する。
図15は、旋回走行時における並進制御、姿勢制御の状態を表したものであり、数式24、25における各記号は図15で示す通りである。
τR=(1/2)(τ-+τdif)
τL=(1/2)(τ-−τdif)
τ-=−KV(V−V*)−Kθθ−Kθ(・)θ(・)
τdif=−Kγ(γ−γ*)
すなわち、限界横方向加速度alimを超えない目標走行状態(V*、γ*)が搭乗者によって入力(要求)された場合には、その目標走行状態で旋回走行する。
一方、限界横方向加速度alimを超える目標走行状態(V*、γ*)が入力された場合には、(a)〜(e)の最適化によって、横方向加速度a=限界横方向加速度alim(=aMin、aMax)となるように、目標走行状態(V*、γ*)を現実走行状態(V*〜、γ*〜)に制限している。
これにより、旋回速度と旋回曲率を必要以上に制限しないので、車両の旋回性能を限界まで最大限利用することができる。
ただし、車両の旋回性能の利用範囲を従来よりも大きくするために、制限後の横方向加速度を所定の閾値ak(例えば、ak=alim−0.05G)以上とする。
12 駆動モータ
13 搭乗部
131 座面部
14 支持部材
16 制御ユニット
20 制御ECU
21 車体走行制御システム
22 旋回走行目標制限システム
23 旋回限界決定システム
25 重心位置推定システム
30 操縦装置
31 コントローラ
40 走行、姿勢制御用センサ
41 走行速度計
42 加速度計
50 重心位置測定用センサ
51 荷重計
52 座高計
60 アクチュエータ
61 駆動輪アクチュエータ
Claims (6)
- 互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、
目標速度V*と目標曲率γ*を取得する目標走行状態取得手段と、
前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*による走行を制御する走行制御手段と、
搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、
前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度alimを決定する限界横方向加速度決定手段と、
取得した目標速度V*と目標曲率γ*に対応する目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alimを超える場合、前記目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alim以下で、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δMax以内となるように、前記取得した目標曲率γ* を制限する制限手段と、
を具備したことを特徴とする車両。 - 前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の両方を制限する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
- 互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、
目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、
前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、
搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、
前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、
取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、
前記制限手段は、
前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の車両軌跡と、前記取得した目標曲率γ*での旋回が可能になるまで最低減速度bMinで減速しながら旋回をした場合の車両軌跡とのズレ量が、
所定のズレ上限値δMax以内である場合には、減速度bを前記最低減速度bMinとし、
所定のズレ上限値δMaxより大きい場合にはズレ上限値δMaxと一致する減速度bとし、
前記目標速度V*を前記減速度bにより制限し、前記目標曲率γ*を前記目標速度V*の制限値により目標曲率γ*を制限する、
ことを特徴とする車両。 - 互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、
目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、
前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、
搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、
前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、
取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、
搭乗部に配置された荷重センサと、
搭乗物の高さを測定する高さセンサと、
前記荷重センサ及び前記高さセンサの検出値から、搭乗物の重心位置を取得する搭乗物重心取得手段と、を備え、
前記重心位置取得手段は、前記取得した搭乗物の重心位置と、予め規定されている車両の重心位置とから、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する、ことを特徴とする車両。 - 前記制限手段は、前記目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alimとなるように、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*の少なくとも一方を制限することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両。
- 前記走行制御手段は、目標速度V*と目標曲率γ*を直接の制御対象としてフィードバック制御により走行を制御することを特徴とする請求項3、請求項4、又は請求項5に記載の車両。
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