JP5041205B2 - 車両 - Google Patents

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本発明は、車両に係り、例えば、互いに対抗配置された2つの駆動輪を有する横置き二輪車両の旋回走行の制御に関する。
倒立振り子の姿勢制御を利用した車両(以下、単に倒立振り子車両という)が注目され、現在実用化されつつある。
例えば、同軸上に配置された2つの駆動輪を有し、運転者の重心移動による駆動輪の姿勢を感知して駆動する技術が特許文献1で提案されている。
また、従来の円形状の駆動輪1つや、球体状の駆動輪1つの姿勢を制御しながら移動する車両や各種倒立振り子車両について提案されている。
特開2004−276727公報 特開2004−129435公報
このような、車両では、運転者による体重移動量、リモコンや操縦装置からの操作量、予め入力された走行指令データ等に基づいて、姿勢制御を行いながら停車状態を維持したり走行したりするようになっている。
そして、車輪を操舵したり、2つの駆動輪に差動トルクを与えたりすることで、車両の旋回を行うようになっている。
しかし、一般的な乗用車と比べて、このような1人用車両は小型であり、左右輪の間隔は狭い。また、車両全体の重量に対する乗員の重量の割合は大きく、その乗員の着座姿勢を確保すると、車両全体の重心位置は高くなる。
したがって、このような車両が旋回走行するとき、その旋回速度が高すぎると、あるいは、旋回半径が小さすぎると、遠心力によって車両が倒立制御を維持できなくなる可能性がある。また、内輪側の接地荷重が小さくなるために、内輪がスリップする可能性がある。
このように、旋回性能には限界があるため、その限界値に応じた制限値を設定し、その範囲内で旋回させるようにしている。
ところが、乗員が着座位置や着座姿勢を変えたり、異なる体型の人が乗ったりすると、旋回速度や旋回曲率(旋回半径の逆数)の限界値も変化する。このため、安全を考慮すると、想定される条件変化の範囲内で最も厳しい条件に対応した制限値を設定する必要があり、各条件に適した高い制限値を設定することができなかった。
なお、搭乗物が全く無い場合や、任意の荷物を乗せて自動走行するような場合であっても同様の課題が存在する。
そして、旋回性能の限界を超える旋回要求が搭乗者の操作で入力された場合、設定した制限値の範囲内で旋回するためには、要求値に対して旋回半径を制限して大きくするか、旋回速度を制限して小さくする必要がある。
しかし、旋回半径を急に制限すると乗員の目標走行ルートを大きく外れてしまう可能性がある。
一方、旋回速度を急に制限すると、急ブレーキとなり後続車の急接近を招くと共に乗員が不快に感じることになる。
そこで本発明は、要求された旋回目標と実際の旋回限界を把握し、該旋回限界に対応した、より少ない制限量(旋回目標にできるだけ近い状態)で旋回することを第1の目的とする。
また、設定した制限値の範囲内でより走行目的や走行状態に適した、旋回速度と旋回半径の制限を行うことを第2の目的とする。
(1)請求項1記載の発明では、互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、目標速度V*と目標曲率γ*を取得する目標走行状態得手段と、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*による走行を制御する走行制御手段と、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度alimを決定する限界横方向加速度決定手段と、取得した目標速度V*と目標曲率γ*に対応する目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alimを超える場合、前記目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alim以下で、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δMax以内となるように、前記取得し目標曲率γ* 制限する制限手段と、を具備したことを特徴とする車両を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の両方を制限する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両を提供する。
(3)請求項に記載の発明では、互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、前記制限手段は、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の車両軌跡と、前記取得した目標曲率γ*での旋回が可能になるまで最低減速度bMinで減速しながら旋回をした場合の車両軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δMax以内である場合には、減速度bを前記最低減速度bMinとし、所定のズレ上限値δMaxより大きい場合にはズレ上限δMaxと一致する減速度bとし、前記目標速度V*を前記減速度bにより制限し、前記目標曲率γ*を前記目標速度V*の制限値により目標曲率γ*を制限する、ことを特徴とする車両を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、搭乗部に配置された荷重センサと、搭乗物の高さを測定する高さセンサと、前記荷重センサ及び前記高さセンサの検出値から、搭乗物の重心位置を取得する搭乗物重心取得手段と、を備え、前記重心位置取得手段は、前記取得した搭乗物の重心位置と、予め規定されている車両の重心位置とから、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する、ことを特徴とする車両を提供する。
(5)請求項に記載の発明では、前記制限手段は、前記目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alimとなるように、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*の少なくとも一方を制限することを特徴とする請求項又は請求項に記載の車両を提供する。
(6)請求項に記載の発明では、前記走行制御手段は、目標速度V*と目標曲率γ*を直接の制御対象としてフィードバック制御により走行を制御することを特徴とする請求項、請求項、又は請求項に記載の車両を提供する。
請求項1の発明では、目標横方向加速度a*が限界横方向加速度alimを超える場合、目標横方向加速度a*が限界横方向加速度alim以下で、取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δMax以内となるように、取得し目標曲率γ* 制限する構成としたので、必要最低限の制限量で旋回することが可能になり、また、より走行目的や走行状態に適した制限を行うことができる。
以下、本発明の車両における好適な実施の形態について、図1から図15を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
旋回走行時において、車両の接地荷重中心点が両駆動輪間の外側に移動すると、その車両は横転する。
ここで、接地荷重中心点は、車両に作用する遠心力と重力との合力ベクトルFに平行で重心を通る直線と、地面との交点を表す。このとき、合力ベクトルFの向きは、車両の横方向加速度によって決定され、さらに、横方向加速度は,車両の旋回速度と旋回曲率によって決定される。
したがって、旋回性能の限界、すなわち、接地荷重中心点の限界位置は、車両の重心位置と横方向加速度(旋回速度と旋回曲率)によって決定される。
本実施形態では、横置き二輪車両の旋回制御として、(a)車両重心位置に対応した旋回限界値として限界横方向加速度を決定し、(b)搭乗者の旋回要求から求まる目標横方向加速度が、設定した限界横方向加速度を超えている場合に、旋回走行目標を制限する。
(a)限界横方向加速度(横方向加速度の限界値)の決定
搭乗物(乗員や荷物等)の重心位置を推定し、これと設計段階で既知である車両の設計重心位置とから、車両全体の重心位置を推定する。
そして、推定した車両全体の重心位置と車両の設計値(両駆動輪11a、11bの間隔等)から、限界横方向加速度alimの値を求める。この、限界横方向加速度alimは、車速等の走行状態とは関係なく、求めることができる。
なお、重心位置の推定については、荷重計と座高計の測定値から、搭乗物(乗員や荷物等)の着座位置、重量、体型を測定し、その測定値から車両の重心位置(車体対称面からのズレ、高さ)を推定する。
(b)旋回走行目標の制限
例えば、搭乗者から入力された目標走行状態に基づく目標横方向加速度a*が0.5Gで、求めた限界横方向加速度alim=0.3Gを超えている場合、搭乗者の要求通りの制御を行うことはできないので、横方向加速度a=alim=0.3Gとなるように目標走行状態を制限する必要がある。
本実施形態では、目標走行状態の制限として、車速と旋回曲率を次のいずれかの方法により制限した値で旋回走行を行う。
なお、入力された目標走行状態が限界横方向加速度alim以下であれば、入力値に従って旋回走行を行う。
(a)目標に対する最適化(第1の最適化)
第1の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)に対する最適化を行うもので、理想目標状態(搭乗者が入力した又は外部から指示された目標走行状態)と、現実目標状態(横方向加速度が限界値を超えないよう制限された目標走行状態)の差を最小にする。
(b)目標変化を考慮した最適化(第2の最適化)
第2の最適化では、理想目標R(V*、γ*)の時間変化(時間変化率)を考慮して、現実目標Gを決定する。
(c)乗員の操縦意志を考慮した目標に対する最適化(第3の最適化)
第3の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)と、その変化を考慮した最適化を行う。搭乗者によるジョイスティック(コントローラ31)の操作は、その動きの速さによって、乗員意志の強さ(例えば、その要求の緊急性)を判断できる。そこで、入力目標(V*、γ*)の時間変化率を求め、その大きさが所定の閾値Th(ThV、Thγ)以下であれば、緊急性無しと判断して第1の最適化を、閾値Thより大きければ、緊急性有りと判断して第2の最適化を行う。
(d)走行位置の最適化(第4の最適化)
第4の最適化では、一定時間t後の理想目標位置P1と現実目標位置P2との距離が最短となるように最適化を行う。
(e)走行起動ズレの制約(第5の最適化)
第5の最適化では、走行軌道ズレの観点から最適化を行う。
すなわち、理想目標軌道と現実目標軌道のズレが設定制限値以内に収まるように減速させる減速度bを求め、その値に基づいて最適化を行う。
(2)実施形態の詳細
図1は、本実施形態における車両の外観構成を例示したものである。
図1に示されるように、車両は、同軸上に配置された2つの駆動輪11a、11bを備えている。
両駆動輪11a、11bは、それぞれ駆動モータ12で駆動されるようになっている。
駆動輪11a、11b(以下、両駆動輪11aと11bを指す場合には駆動輪11という)及び駆動モータ12の上部には、重量体である荷物や乗員等が搭乗する搭乗する搭乗部13(シート)が配置されている。
搭乗部13は、運転者が座る座面部131、背もたれ部132、及びヘッドレスト133で構成されている。
搭乗部13は、駆動モータ12が収納されている駆動モータ筐体121に固定された支持部材14により支持されている。
搭乗部13の左脇には操縦装置30が配置されている。この操縦装置30は、運転者の操作により、車両の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の指示を行う為のものである。
本実施形態における操縦装置30は、座面部131に固定されているが、有線又は無線で接続されたリモコンにより構成するようにしてもよい。また、肘掛けを設けその上部に操縦装置30を配置するようにしてもよい。
また、本実施形態の車両には、操縦装置30が配置されているが、予め決められた走行指令データに従って自動走行する車両の場合には、操縦装置30に代えて走行指令データ取得部が配設される。走行指令データ取得部は、例えば、半導体メモリ等の各種記憶媒体から走行指令データを読み取る読み取り手段で構成し、または/及び、無線通信により外部から走行指令データを取得する通信制御手段で構成するようにしてもよい。
なお、図1において、搭乗部13には人が搭乗している場合について表示しているが、必ずしも人が運転する車両には限定されず、荷物だけを乗せて外部からのリモコン操作等により走行や停止をさせる場合、荷物だけを乗せて走行指令データに従って走行や停止をさせる場合、更には何も搭乗していない状態で走行や停止をする場合であってもよい。
本実施形態において、操縦装置30の操作により出力される操作信号によって加減速等の制御が行われるが、例えば、特許文献1に示されるように、運転者が車両に対する前傾きモーメントや前後の傾斜角を変更することで、その傾斜角に応じた車両の姿勢制御及び走行制御を行うようにしてもよい。また、両方式を切り替え可能にしてもよい。
搭乗部13の下側(座面部131裏面側)には、図示しないが後述する荷重計51が配置されている。
また、搭乗部の背面(背もたれ部の表側)には、図示しないが後述する座高計52が配置されている。
搭乗部13と駆動輪11との間には制御ユニット16が配置されている。
本実施形態において制御ユニット16は、搭乗部13の座面部131の下面に取り付けられているが、支持部材14に取り付けるようにしてもよい。
図2は、制御ユニット16の構成を表したものである。
制御ユニット16は、車両の走行、姿勢制御、及び本実施形態における旋回時の走行制御等の各種制御を行う制御ECU(電子制御装置)20を備えており、この制御ECU20には、操縦装置30、走行制御用センサ40、重心位置測定用センサ50、アクチュエータ60、及びバッテリ等のその他の装置が電気的に接続されている。
バッテリは、駆動モータ12、アクチュエータ60、制御ECU20等に電力を供給するようになっている。
制御ECU20は、走行制御プログラム、姿勢制御プログラム、本実施形態における旋回制御処理プログラム等の各種プログラムやデータが格納されたROM、作業領域として使用されるRAM、外部記憶装置、インターフェイス部等を備えたコンピュータシステムで構成されている。
制御ECU20は、車体走行制御システム21と旋回限界決定システム23を備えている。
車体走行制御システム21は、車両の前後方向の加減速を制御する前後加減速機能と、車両を旋回させる旋回機能を実現するように構成され、旋回機能を実現するため旋回走行目標制限システム22を備えている。
車体走行制御システム21は、コントローラ31から入力される走行目標、走行制御用センサ44から供給される両駆動輪11a、11bの車輪回転角及び/又は並進加速度から姿勢制御を行うようになっている。
また、操縦装置30から供給される前後方向加減速、及び旋回の指示に応じて、それを実現する出力指令値を車輪駆動アクチュエータ61に供給する。
本実施形態では、両駆動輪11a、11bの回転数を制御することで旋回するようになっている。
旋回走行目標制限システム22は、旋回限界決定システム23で決定した横方向加速度限界に基づいて、コントローラ31から入力される、旋回走行目標(車速と旋回曲率の目標値)を制限するようになっている。
旋回限界決定システム23は、重心位置推定システム25を備えている。
重心位置推定システム25は、供給された横方向加速度と荷重分布、座高の測定値から搭乗物の種別(人、荷物、無し)を判定し、その種別に応じて搭乗物の重心ズレと高さを推定する。
また重心位置推定システム25は、推定した重心位置ズレと高さから、車両の重心位置を決定する。
旋回限界決定システム23は、推定した車両の重心位置から限界横方向加速度を求め、旋回走行目標制限システム22に供給するようになっている。
操縦装置30はコントローラ31を備えており、運転者の操作に基づいて車両走行の目標値を制御ECU20に供給するようになっている。
コントローラ31は、ジョイスティックを備えている。ジョイスティックは直立した状態をニュートラル位置とし、前後方向に傾斜させることで前後進を指示し、左右に傾斜させることで左右方向の旋回を指示するようになっている。傾斜角度に応じて、要求速度、旋回曲率が大きくなる。
走行制御用センサ40は、車輪回転角を検出する車輪回転計41と、車両の並進加速度を検出する加速度計42を備えている。
走行制御用センサ40による検出値は、車体走行制御システム21に供給される。
重心位置測定用センサ50は、乗員(搭乗物)の重心位置を推定(直接推定)するのに使用する、荷重計(又は荷重分布計)と座高計(又は形状測定器)を備えている。
図3は、荷重計51と座高計52の配置について表したものである。
図3に示されるように、荷重計51は搭乗部13の下側、具体的には座面部131の下面部に配置されている。
荷重計51は、シート上の荷重分布(偏心)を測定し、測定値を重心位置推定システム25に供給するようになっている。
荷重計51は、搭乗部13の下側(シート構造よりも下側)に配置することで、搭乗部に配置された搭乗物だけでなく、背もたれ部132やヘッドレスト133に掛けられた荷物の荷重や、その他の箇所に配置された全ての搭乗物の荷重を測定可能に構成されている。
なお、車体の重量(以下車体重量という)と、その重心位置(以下車体重心位置という)は固定されており、設計時に予め決定してあるので、荷重計51の計測対象外である。
本実施形態では、荷重計51として、3軸の成分を測定可能な荷重計を3つ以上配置している。
荷重計51は、荷重分布と同時に重量を測定し、それを搭乗物の判別や重心位置調整システムの目標位置(角度)設定に使用する。
搭乗物の重心位置を推定するためには、荷重計を横方向に2つ設置すればよいが、3つ以上の荷重計を設置することで、フェイルセーフを実現している(荷重計が1つ壊れても計測可能)。
また、3軸成分測定可能な荷重計を使用し、さらに、横方向加速度と横方向車体傾斜角のデータを利用することにより、旋回時や車体傾斜時での重心ズレの推定も可能にしてもよい。
図3に示されるように、座高計52は、背もたれ部132及びヘッドレスト133に配設されている。
座高計52は、移動型(走査型)の光センサを鉛直方向(高さ方向)に走査することで搭乗物の高さ(上位の座高)を測定するようになっている。これにより高精度な測定が可能になる。測定値は、重心位置推定システム25に供給される
なお、複数の固定型センサを鉛直方向に配置し、搭乗物の高さを離散的に測定するようにしてもよい。
なお、本実施形態の座高計52では、複数の光センサを水平方向に配設することで搭乗物が大きく横にずれたときでも高さの測定を可能にするのと共に、1つが故障しても他の光センサの測定値を使用することでフェイルセーフを実現している。
また、本実施形態の座高計52によって、搭乗物の形状を推定し、その種類の判別(人、荷物、無し)に利用することも可能である。
なお、重心位置に関する情報が得られるのであれば、他の測定器で代用するようにしてもよい。
例えば、図3(d)に示されるように、ねじりトルク測定器で重心ズレを測定することができる。ただし、この場合には、搭乗物の質量を測定するために、荷重計を1つだけ設置する必要がある。
図2において、アクチュエータ60は、車体走行制御システム21から供給される指令値に従って駆動輪11を駆動する車体駆動アクチュエータ61を備えている。
車体駆動アクチュエータ61は、指令値に従って、両駆動輪11a、11bを各々独立して駆動制御するようになっている。
以上のように構成された実施形態としての車両における旋回走行制御処理について、次に説明する。
図4は、旋回走行制御処理の内容を表したフローチャートである。
制御ECU20の旋回限界決定システム23は、搭乗物(乗員等)の搭乗(着座)位置、荷重(体重)、形状(体型)を、重心位置測定用センサ50等の計測器を使って測定する(ステップ11)。
ついで旋回限界決定システム23の重心位置推定システム25は、得られたデータから搭乗物の重心ズレ、高さを推定する(ステップ12)。
まず重心位置推定システム25は、荷重計51から得られた搭乗部13上の荷重に基づき、搭乗物の質量を求める。
図5は、旋回走行時の乗員(搭乗物)およびシート(搭乗部13)の力学的状態を表したものである。
図5において、搭乗物質量をmH、シート質量をmS、搭乗部全質量をmc=mH+mS、重力加速度をgとするとき、搭乗部に作用する力の垂直方向成分(車体中心軸に平行な方向成分)の釣り合いは、次の数式1で表される。
(数式1)
n=ΣFn (k)=−mc
数式1において、Fn (k)はN個の中のk番目の荷重計で計測された引張荷重を表し、全荷重計N個の計測値の総和をとることで、搭乗部に作用する垂直力Fnを求める。
本実施形態では、重心位置推定システム25は、数式1を変形して得られる次の数式2から、搭乗物質量mHを求める。
(数式2)
H=(Fn/g)−mS
この搭乗物質量mHの値は、全体の重心位置評価、搭乗物の種類判別に利用する。
次に、重心位置推定システム25は、座高計から得られた搭乗物の高さ(座高、荷物の高さ)と、数式2で算出した搭乗物質量mHに基づき、搭乗物の種類(人、荷物、無し)を判別し、その種類に適した方法で搭乗物重心高さhHを推定する。
図6は、搭乗物の種類の判別、及び、その種類に基づく重心高さhHの決定について説明したものである。
図6に示されるように、座高ζH、質量mH、比質量mH/ζHに対して、ある閾値を設定し、それに基づいて搭乗物の種類を判別する。なお、図6及び以下の判別式で用いる各閾値は一例であり、想定される使用環境に応じて修正する。
(a)mH<0.2kg、かつ、ζH<0.01mの場合、搭乗物は「無し」と判別する。
(b)mH>8kg、かつ、ζH>0.3m、かつ、mH/ζH>30kg/mの場合、搭乗物は「人」と判別する。
(c)その他の場合(上記(a)、(b)以外の場合)、搭乗物は「荷物」であると判別する。
以上の判別条件において、人の判別条件(b)で体重に対する閾値が8kgと小さいのは、子供の乗車も想定しているためである。また、比質量(単位座高当たりの重さ;mH/ζH)を人の判別条件に加えることで、その判別の正確性を高めることができる。
なお、小さくて重い荷物(例えば、鉄塊)を乗せた場合も人と判定しないために、上限としてmH/ζH<p(例えば、80kg/m)を人の判別条件に加えてもよい。
また、各判別条件及び判別値は、一例であり、想定される使用条件に応じて適宜変更され、判別される。
以下、重心位置推定システム25は、判別した搭乗物の種類に応じて、搭乗物の重心高さ(座面部131からの高さ)hHを推定する。このように、搭乗物を判別し、その種類に応じて重心高さhHの推定方法(評価式)を変えることで、より正確な値を推定することができる。
(a)搭乗物を「無し」と判別した場合
H=0
(b)搭乗物を「荷物」と判別した場合、重心が幾何中心よりも下にずれていると仮定し、その下方向へのズレの程度を表す偏心度γを用いて、次の数式3から重心高さhHを求める。この偏心度γはあらかじめ設定した仮定値であり、本実施形態ではγ=0.4としている。
(数式3)
H=((1−γ)/2)ζH
(c)搭乗物を「人」と判別した場合、標準的な人の体型を基準として、数式4から重心高さhHを求める。
数式4において、ζH,0、hH,0は座高と重心高さの標準値であり、本実施形態では、ζH,0=0.902m、hH,0=0.264mとする。
(数式4)
H=(ζH/ζH,0)hH,0
なお、ここでは、図6に従って搭乗物の種類や重心高さを求める場合について説明したが、より複雑な条件や評価式(マップ)を用いて、搭乗物の種類や重心高さを求めるようにしてもよい。
次に、重心位置推定システム25は、荷重計51から得られた搭乗部13上の荷重分布、及び、これまでに取得した搭乗物情報である搭乗物質量mHと搭乗物重心高さhHに基づいて、搭乗物の横方向の重心ズレλHを求める。
図5において、搭乗部に作用する力の水平方向成分(車体対称面に垂直な方向成分)、および、基準軸(車体対称面と荷重計51の設置面との交線)まわりのモーメントの釣り合いは、次の数式5で表される。但し、車体傾斜運動(あるいは、搭乗部13の傾斜運動)の角速度による遠心力や角加速度による慣性力は無視している。
この数式5において、mc、λc、hc、ηc=hc+δSは、それぞれ、搭乗部全体の質量、重心ズレ(車体軸から重心までの距離)、重心高さ(座面部131の座面から重心までの距離)、荷重計基準重心高さ(荷重計51の設置面から重心までの距離)であり、数式6で表される。
また、数式5および数式6において、mH、λH、hH、ηH=hH+δSは、搭乗物の質量、重心ズレ、重心高さ、荷重計基準重心高さ、mS、λS、hS、ηS=hS+δSは、シートの質量、重心ズレ、重心高さ、荷重計基準重心高さ、δSは座面部131の厚さ(荷重計51の設置面から座面部131の座面までの距離)、gは重力加速度をそれぞれ表す。
数式5において、λH (・・)の記号「(・・)」は、は2回微分を表す。
(数式5)
t=ΣFt (k)=−mca−mHλH(・・)+Fet
tn=Σ(Fn (k)(k)
=Fnλc−Ftηc+mHλH(・・)(ηH−ηc)−Fet(ηet−ηc
(数式6)
c=mH+mS
λc=(mHλH+mSλS)/mc
ηc=(mHηH+mSηS)/mc
数式5において、Fn (k)、Ft (k)はN個の中のk番目の荷重計で計測された引張荷重、横方向荷重(車体対称面に垂直な方向成分)であり、全荷重計N個で総和をとることで、搭乗部に作用する垂直力Fn、横力Ftを求める。また、Y(k)はk番目の荷重計の取り付け位置(車体対称面からの距離)であり、これとFn (k)との積の総和をとることで、搭乗部に作用するモーメントTtnを求める。
同数式5において、aは搭乗物が実際に受けている横方向加速度であり、これらの値を使用することにより、旋回走行時にも搭乗物の重心ズレや重心高さを求めることができる。
この数式5で使用する横方向加速度aは、走行制御用センサ40の計測値から求める。
同数式5において、Fetは外力を表し、人が外から押す力や風による力に相当する。また、ηetは外力の作用点高さ(荷重計51の設置面からの高さ)である。これらの値は未知であり、搭乗物の重心ズレλHを合わせて、数式5の2つの式は3つの未知数を含む。
従って、外力Fetとその作用点高さηetの両者を正確に求めることはできないが、その一方の値を仮定すれば、もう一方の値を求めることができる。例えば、空力中心(空気抵抗の作用点)の想定位置を作用点高さηetとして仮定すれば、その空気抵抗の大きさFetを評価でき、その値を走行、姿勢制御に利用することもできる。
本実施形態では、外力の影響は小さいと仮定し、Fet=0とする。これにより、数式5の2つの式を、以下の数式7の形に変えることができる。この数式7は代数式であり、簡易で安定した搭乗物重心ズレλHの評価が可能である。
すなわち、重心位置推定システム25は、これまでに求めた搭乗物の重量mHと重心高さhHを用いて、数式7(および数式6)に基づき、搭乗物の重心ズレλHを求める。
(数式7)
λH=(mcλc−mSλS)/mH
λc={Ftηc+FHa(ηH−ηc)+Ttn}/Fn
Ha=Ft+mc
搭乗物の力学的パラメータである質量mH、重心ズレλH、重心高さhHを推定した後、旋回限界決定システム23は、車体と搭乗物(乗員等)を合わせた車両の全体の重心位置を求める(ステップ14)。
図7は、車両、搭乗者、及び全体の重心位置を表したものである。
旋回限界決定システム23は、車両全体の質量m、重心ズレλ、重心距離lを、次の数式8から求める
数式8において、mH、λH、hH、lH=hH+l0は、搭乗物の質量、重心ズレ、重心高さ、重心距離をそれぞれ表す。l0は、車体の前後方向の回転中心(車軸)から座面部131の座面までの距離である。また、mCB、lCBは車体の質量、重心距離をそれぞれ表す。なお、車体の重心ズレはλCB=0とする。
(数式8)
m=mH+mCB
λ=mHλH/m
l=(mHH+mCBCB)/m
次に、旋回限界決定システム23は、求めた車両全体の重心位置(質量m、重心ズレλ、本重心距離l)から、限界横方向加速度alim=aMin、aMaxを算出する(ステップ14)。
ここで、横方向加速度は、右折時の方向(車両から見て左方向)を正、左折時の方向(車両から見て右方向)を負としており、一般にaMinは左折時の限界横方向加速度を表し、aMaxは右折時の限界横方向加速度に相当する。
図8は、横方向加速度aと車両全体重心位置から決まる接地荷重中心点S、接地荷重中心位置λGF、及び接地荷重偏心度βについて表したものである。
図8に示されるように、接地荷重中心点Sは、遠心力と重力の合力ベクトルFと平行で重心を通る直線と地面との交点であり、車体中心軸に対する点Sの相対位置(ズレ)を接地荷重中心位置λGFとする。
また、λGFを半トレッドD/2で無次元化した値が、接地荷重偏心度βであり、−1<β<1ならば、接地荷重中心点は両駆動輪11の間に存在する。
接地荷重偏心度β、および、接地荷重中心位置λGFは、次の数式9で表される。
数式9において、RWはタイヤ接地半径、Dはトレッド(両駆動輪11a、11b間の距離)、λは車両全体重心ズレ、lは車両全体重心距離、aは現在の横方向加速度、gは重力加速度である。
(数式9)
β=λGF/(D/2)
λGF=λ−(a/g)(l+RW
この数式9から得られる接地荷重偏心度βの値により、車両の安定度を次のように判定することができる。
(a)β=0…中立状態;最も安定な状態
(b)|β|>1…車体横転;接地荷重点のずれている方向に車体が横転する
(c)|β|>βslip…片輪スリップ;接地荷重点から遠い側の駆動輪がスリップする(結果的に車両がスピンし、横転する可能性が高い)
片輪スリップの条件(c)における閾値である、スリップ開始荷重偏心度βslipは、次の数式10で表される。
数式10において、aBCは重心位置での横方向加速度、gは重力加速度、Rwはタイヤ接地半径、mは車両の質量である。また、τw*は接地荷重中心点から遠い側の駆動輪の駆動トルクを表す。
(数式10)
βslip=1−{1/√(1−(a/μg)2)}|τw*|/{(1/2)μmgRw
数式10において、μはタイヤ路面間の摩擦係数である。本実施形態では、予め設定した想定値を与えるが、計測器による測定値やオブザーバなどによる推定値を用いてもよい。
数式10から明らかなように、βslipは1よりも小さい。すなわち、駆動トルクを与えている場合には、車両が横転する前に片輪がスリップする。そこで、本実施形態では、このスリップ限界βslipを安定限界とする。
そして、旋回限界決定システム23は、数式9及び数式10の3式を解くことによって、限界横方向加速度alim=aMin、aMaxを求める。
ただし、数式9、数式10による連立方程式は陽的に解くことができないため、ニュートン法などの陰的な繰り返し計算法、もしくは,あらかじめ数値計算で求めておいた数値解のテーブルによって、限界横方向加速度を決定する。
旋回限界決定システム23は、以上により求めた限界横方向加速度alim=aMin、aMaxを旋回走行目標制限システム22に供給する。
車両全体の重心位置の推定値から限界横方向加速度alimが求まると、旋回走行目標制御システム22では、旋回目標値の制限を含めた目標走行状態を決定する(ステップ15〜ステップ18)。
まず旋回走行目標制御システム22は、乗員の入力操作に基づいて、目標走行状態を設定する(ステップ15)。すなわち、コントローラ31から入力される走行目標の入力値に対応する目標車速V*と目標曲率γ*を目標走行状態として設定する。
ついで旋回走行目標制御システム22は、設定した目標車速V*と目標曲率γ*から目標横方向加速度a*=γ**2を求める(ステップ16)。
そして、目標横方向加速度a*が、ステップ14で決定した限界横方向加速度aMin、aMaxを超えてないか(aMin<a*<aMax?)を判断する(ステップ17)。
目標横方向加速度a*が限界横方向加速度alim(=aMin、aMax)の範囲内にある場合(ステップ17;Y)、搭乗者の操作による目標車速V*と目標曲率γ*を制限することなく、ステップ19に移行する。
なお、この場合の走行目標(現実目標)は、V*〜=V*、γ*〜=γ*となる。
一方、目標横方向加速度a*が限界横方向加速度alim(=aMin、aMax)を超えてる場合(ステップ17;N)、旋回走行目標制御システム22は、目標走行状態(V*、γ*)を制限して修正する(ステップ18)。すなわち、横方向加速度a*≒限界横方向加速度alim(=aMin、aMax)となるように目標走行状態(V*、γ*)を、(a)〜(e)のいずれかの方法により最適化する。
(a)〜(c)による最適化は、要求された目標走行状態(V*、γ*)に対する最適化を行うもので、搭乗者の操作(意志)に沿った最適化となる。
(c)、(e)による最適化は、要求された目標走行状態で走行した場合の走行状態及びその履歴に対する最適化を行うものである。
(a)〜(c)による最適化では、横方向加速度a*≒限界横方向加速度alim(=aMin、aMax)となるように、理想目標走行状態(V*、γ*)を現実目標走行状態(V*〜、γ*〜)に制限している。
これにより、旋回速度と旋回曲率を必要以上に制限しないので、車両の旋回性能を限界まで最大限利用することができる。
以下の説明において、理想目標は搭乗者の入力目標(V*、γ*)を意味し、理想目標状態は、理想目標に従って走行した後の位置、速度等を意味するものとする。
また、現実目標は、目標横方向加速度a*が限界横方向加速度alimとなるように理想目標を制限した値(V*〜、γ*〜)を意味し、現実目標状態は、現実目標に従って走行した後の位置、速度等を意味するものとする。
(a)第1の最適化
この第1の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)に対する最適化を行うもので、理想目標状態と、現実目標状態の差を最小にする。
図9は、第1の最適化の状態を表したものである。
この図9において、旋回限界曲線Aは、ステップ14で決定した限界横方向加速度alimによって決まる曲線である。この旋回限界曲線の原点側(左下側)の領域が安定状態であり、原点から離れる側(右上側)の領域が不安定な領域(制限が必要な領域)である。
図9に示すように、入力された理想目標R0が安定領域に存在する場合(ステップ17;Y)、最適化を行わず、入力された理想目標での旋回制御を行う。
一方、理想目標R1、R2が不安定領域に存在する場合、これを旋回走行の安定限界である旋回限界曲線A上の現実目標G1、G2に最適化する。
この最適化では、例えば、理想目標R1にできるだけ近い状態のG1を旋回限界曲線A上で選択する。
すなわち、旋回走行目標制御システム22は、理想目標R(V*、γ*)と旋回限界alimを取得し、次の連立方程式(数式11)に基づいて、現実目標G(V*〜、γ*〜)を求める。
(数式11)
xy2=c
2x(x−x1)=y(y−y1
x=γ*〜/γ0、x1=γ*/γ0、c=alim/(γ00 2
y=V*〜/V0、y1=V*/V0
数式11中のV0、γ0は、それぞれ旋回速度、曲率の基準値であり、例えば、操縦系における各々の設定最大値を与える。なお、これらの値を変更して、速度と曲率の重みを変えることもできる。
数式11の数値解法としては、例えばニュートン法(繰り返し計算法)を用いる。なお、一つ前の時間ステップでの解を初期値として与えることにより、その収束安定性および収束速度を高めることができる。
本実施例において旋回走行目標制御システム22は、数値計算による決定法を用いるが、上記の連立方程式の解を、パラメータx1、y1、cの関数としてテーブルで予め与えておき、それを用いて現実目標状態を決定してもよい。
このように、搭乗者が入力した理想目標(V*、γ*)に対する第1の最適化は、搭乗者の操縦による通常走行時に適しており、搭乗者の意思に応じた走行状態を実現することができる。
また、操縦者の責任において、走行目標の妥当性、安全性が保障される。
さらに、アルゴリズムがシンプルであり、応答性やロバスト性が高い。
(b)第2の最適化
この第2の最適化では、理想目標R(V*、γ*)の時間変化(時間変化率)を考慮して、現実目標Gを決定する。
図10は第2の最適化の状態を表したものである。
図10に示されるように、第2の最適化では、例えば、ある時間内に安定領域にあった理想目標R11から不安定領域の理想目標R12に移動したものとする。この場合、理想目標車速の変化量ΔV*よりも、理想旋回曲率の変化量Δγ*の方が大きく、この変化は、車速よりも曲率を大きくしたいという搭乗者の走行意志の現れと判断することができる。
そこで、旋回走行目標制御システム22は、変化後の理想目標の両要素V*、γ*のうち、変化量の大きい要素は制限せず、変化量の小さい要素を優先的に制限することで、旋回限界曲線A上の現実目標Gを決定する。
例えば、上記例のように理想目標が所定時間内にR11からR12に変化した場合には、搭乗者は旋回曲率の増加を強く希望していると判断して、旋回曲率は入力された値γ*を維持(γ*〜=γ*)しながら、車速V*を制限(V*〜=V*´<V*)する。
また、理想目標がR21からR22に変化した場合、搭乗者は車速の増加を強く希望しえいると判断して、車速は入力された値V*を維持(V*〜=V*)しながら、旋回曲率γ*を制限(γ*〜=γ*´<γ*)する。
以上を纏めると、図10(b)に示されるように、入力操作による理想目標状態(V*、γ*)の時間変化の方向に従って、以下の通り最適化が行われる。
旋回走行目標制御システム22は、まず、理想目標V*、γ*と、旋回限界alimを取得し、理想目標の時間変化ΔV*、Δγ*を次の数式12から求める。
(数式12)
ΔV*(k)=V*(k)−V*(k-n)
Δγ*(k)=γ*(k)−γ*(k-n)
数式12において、時間変化は、現在の理想目標V*(k)、γ*(k)と、参照時間T=nΔtだけ前の理想目標V*(k-n)、γ*(k-n)の差によって評価する。
参照時間Tの中で、理想目標の変化量が小さい場合、それ以前の値を考慮して、変化の向きを決定する。
次いで旋回走行目標制御システム22は、時間変化の方向から次の通り理想目標V*、γ*を制限する。
(イ)右下への変化(ΔV*≦0、且つ、Δγ*≧0)の場合
例えば、カーブ入口での操縦等が想定され、この場合、「曲がりたい」という搭乗者の要求であると判断し、目標曲率を優先し、目標速度のみを制限する。
すなわち、旋回走行目標制御システム22は、現実目標曲率をγ*〜=γ*とする。
また、現実目標速度を、V*〜=√(alim/γ*)、により求める。
(ロ)左上への変化の場合(ΔV*≧0、且つ、Δγ*≦0)
例えば、カーブ出口での操縦等が想定され、「加速したい」という搭乗者の要求であると判断し、目標速度を優先し、目標曲率のみを制限する。
すなわち、旋回走行目標制御システム22は、現実目標速度をV*〜=V*とする。
また、現実目標曲率を、γ*〜=alim/V*2、により求める。
(ハ)その他の場合、(理想目標速度、曲率ともに増加または減少)
この場合、変化の向き(角度)に応じて目標速度と目標曲率を制限し、次の数式13から現実目標速度V*〜(=x)と現実目標曲率γ*〜(=y)を求める。
但し、数式13において、Δx=Δγ*/γ0、Δy=ΔV*/V0、である。
(数式13)
xy2=c
Δx(x−x1)=Δy(y−y1
このように、搭乗者が入力した理想目標(V*、γ*)に対する第2の最適化は、入力操作の変化を搭乗者の強い走行意思として判断している。
このため特に搭乗者の緊急操作時(例えば、衝突回避時の急な旋回指令)に適切な走行状態を実現できる。
なお、説明した実施形態では、理想目標(V*、γ*)の時間変化から、上記(イ)〜(ハ)の3つの時間変化状態に応じて現実目標Gを決定する場合について説明したが、変化率が小さい方の理想目標(V*、γ*)を制限することで2つの時間変化状態に応じて現実目標Gを決定するようにしてもよい。
すなわち、理想目標R(V*、γ*)のうち、時間変化率ΔV*、Δγ*が小さい方を制限して旋回限界曲線A上の値とする。
(c)第3の最適化
この第3の最適化では、搭乗者の入力目標(V*、γ*)と、その変化を考慮した最適化を行うものである。
搭乗者による入力目標(V*、γ*)はジョイスティック(コントローラ31)の操作によるが、その動きが速い場合には緊急意志の表れであると判断することができる。
そこで、入力目標(V*、γ*)の変化率を求め、所定の閾値Th(ThV、Thγ)以下であれば、緊急性無しと判断して第1の最適化(目標値に対する最適化)を行う。
一方、変化率が閾値Thより大きければ、緊急性有りと判断して第2の最適化(入力目標の変化を考慮した最適化)を行う。
閾値Thとの比較は、車速の閾値ThV、曲率の閾値Thγともに行い、いずれか一方が大きい場合には緊急性有りと判断する。
なお、一旦第2の最適化の制御に入ったら、入力目標値が制限値以内に収まるまで、継続して第2の最適化によるの制限方法を適用する。
これは、ジョイスティックを素早く動かした場合には、緊急性があるため暫くはそのままの位置を維持すると推定され、この場合、変化率が0となり第1の最適化に戻ってしまうことを防止するためである。
(d)第4の最適化
この第4の最適化では、所定時間後の走行位置の観点から最適化を行う。
図11は、理想目標状態で走行した場合の車両位置と第4の最適化による車両位置について表したものである。
この図4に示されるように、ある時点における車両位置P0から、搭乗者の入力目標((V*、γ*)に従って所定の一定時間tだけ旋回走行したと仮定した場合の車両位置を理想目標位置P1とする。また、入力目標(V*、γ*)を制限した現実目標(V*〜、γ*〜)で同じ一定時間tだけ旋回走行したと仮定した場合の車両位置を現実目標位置P2とする。
第4の最適化において、旋回走行目標制御システム22は、理想目標(V*、γ*)と、旋回限界alimを取得し、一定時間t後の理想目標位置P1と現実目標位置P2との距離が最短となるように現実目標(V*〜、γ*〜)を決定する。
両位置P1とP2の距離が最短となる条件(近似式)は、次の数式14で表される。
(数式14)
*〜=(α/(1−β))V*、γ*〜=alim/(V*〜)2
α=alim/a*
β={2(8−π)/(π2−2(1+3α)π+32)}(1−α)
本実施形態において一定時間tは、理想目標(V*、γ*)状態で車両が所定角度Θ=90度だけ旋回するのに要する時間としている。
なお、所定角度Θを小さく(例えば、30度、45度)設定することも可能で、その場合、より細かな制御を行うことが可能になる。
また、本実施例において、数式14では、両者P1、P2のズレに対して1次近似で最短条件を求めているが、方程式を陰的に解くことによって、その厳密解を求めるようにしてもよい。
この第4の最適化によれば、理想目標に基づいて計算される時々刻々の目標位置に対して実際の車両の位置ができるだけ近づくように制限するので、例えば、周りに同様の走行をする車がある場合、集団走行する場合に適している(軌道だけではなく、時刻も考慮しているため、追突されない)。
(e)第5の最適化
この第5の最適化では、走行軌道ズレの観点から最適化を行う。第5の最適化は、例えば、決められた軌道上を単独で走行する場合に適している。
図12は、第5の最適化について表したものである。
図12に示されるように、第5の最適化では、理想目標軌道と現実目標軌道のズレが設定制限値以内に収まるように減速させる。
理想目標曲率γ*での旋回が可能になるまで、最低減速度bMin(設定値)で減速しながら旋回するとき、両軌道のズレが軌道ズレ上限δMax以内であれば、あらかじめ設定した最低減速度bMinで減速させる。
一方、両軌道のズレが軌道ズレ上限δMaxより大きければ、軌道ズレ上限δMaxと一致するように減速度を設定する。
すなわち、旋回走行目標制御システム22は、まず、あらかじめ設定されている軌道ズレ上限δMaxと、最低減速度bMInを取得すると共に、理想目標V*、γ*と、旋回限界limを取得する。
ここで、軌道ズレ上限δMaxの値として、本実施形態では車体幅分の距離が設定されている。また、最低減速度bMInは、例えば、0.05Gが設定されているが、変更可能に構成してもよい。
そして旋回走行目標制御システム22は、最低減速度bMinで旋回した時の軌道ズレδを数式15に従って求める。
(数式15)
δ=(1/γ){(1−α)/α2}(1−cosθ)
α=alim、θ=alim/bMin(1−√α)
次いで、旋回走行目標制御システム22は、数式15で求めた軌道ズレδが軌道ズレ上限δMax以下か判断し、以下であれば(δ≦δMax)減速度bを最低減速度bMinとする。
一方、軌道ズレδがδMaxより大きければ(δ>δMax)、軌道ズレδがδMaxとなる減速度bを次の数式16から算出する。
(数式16)
b={(1−√α)/cos-1{1−(α2/(1−α))γ*δ}}alim
次に旋回走行目標制御システム22は、求めた減速度bに応じた現実目標速度V*〜を数式17から算出し、また、現実目標曲率γ*〜を数式18から算出する。
なお、数式17、18において、Δtは時間刻みを表し、一つ前の時間ステップにおける現実目標速度V*(k-1)から現在の現実目標速度V*(k)を決定する。
(数式17)
*(k)=V*(k-1)−Δt・b
(数式18)
γ*(k)=alim/V*(k)2
以上説明した第5の最適化では、走行軌道のある程度のズレを許容することにより、不必要な急減速を無くすことができる。
また、乗員が不快に感じない程度の減速度として最低減速度bMinを設定することで、必要以上の軌道ズレを防ぐことができる。
なお、説明した第5の最適化では、一定の減速度を設定しているが、ジャーク(加速度の時間変化率)を考慮し、乗員が不快に感じる加速度変化の周波数成分を除去するようにしてもよい。
また、説明した第5の最適化では、軌道ズレ上限値δMaxとして予め設定した値を用いるが、以下のように、走行環境や走行状況に応じて逐次変えるようにしてもよい。
イ)走行平均速度による変更
平均速度が大きい程、走行している道路幅が広いと推定できるので、軌道ズレ上限δMaxを大きくする(ズレ許容量を大きくする)。
ロ)センサによる周囲の物体検知に基づく変更
車両周囲の物体を検知し、所定距離L1内に物体を検知できない場合には、軌道ズレ上限δMax=L2(<L1、例えば、L2=L1/2)とする。
ハ)ナビ情報(道路幅、交通量など)の利用
車両がナビゲーション装置を備えている場合、道路幅や交通量といったナビ情報を使用し、走行中の道路幅が広い程、又は/及び、交通量が少ない程、軌道ズレ上限δMaxを大きくする。
ニ)搭乗者の入力操作による設定値の変更
操縦措置30等の入力装置からの入力操作によって、搭乗者の希望する軌道ズレ上限δMaxに変更できるようにする。
以上説明したように旋回走行目標制御システム22で目標走行状態が決定すると、車体走行制御システム21は、旋回走行の制御を行う(ステップ19、20)。
まず、車体走行制御システム21は、車輪回転計41や加速度計42を使って、実際の走行状態を測定する(ステップ19)。
図13は、車両が旋回するときの車両の力学的状態を表したものである。
横方向加速度aの測定は、(1)各輪(駆動輪11a、11b)の車輪回転計41(角度計)の測定値を使用する方法と、(2)加速度計42の測定値を使用する方法がある。
(1)車輪回転計41の測定値を使用する方法
この方法は、左右駆動輪11a、11bの回転速度から、横方向加速度a(1)を算出する。
図13(a)に示されるように、乗員からみて右側の駆動輪11aの回転周速度をVR、左側の駆動輪11bの回転周速度をVLとすると、乗員(搭乗物)の重心位置Pにおける横方向加速度a(1)は次の数式19及び数式20から算出される。
(数式19)
(1)=V・ΔV/D
(数式20)
V=VM−(YG/D)ΔV
M=(1/2)(VR+VL
ΔV=VR−VL
R=RWωWR
L=RWωWL
なお、数式20における各記号は次の通りである。
ωWR:右輪回転角速度
ωWL:左輪回転角速度
W:タイヤ接地半径
D:トレッド
G:実質重心位置のズレ(1つ前の時間ステップでの値を利用)
(2)加速度計42の測定値を使用する方法
この方法は、加速度計42で測定される並進加速度の値から、横方向加速度a〜(2)を算出する。
図13(b)に示されるように、車体中心軸をn軸、車体対称面に垂直な軸をt軸とし、an,atをセンサ加速度(各軸方向成分)とするとき、センサ取り付け位置における横方向加速度a〜(2)は、a〜(2)=atとなる。
本実施形態では、車輪回転計41の測定値に基づく横方向加速度a(1)と、加速度計42の測定値に基づく横方向加速度a〜(2)から、横方向加速度aを決定する。
車体走行制御システム21は、駆動輪がスリップしているか否かを判断し、スリップしていないと判断した場合には、車輪回転計41の測定値に基づく値a(1)を横方向加速度aとし、スリップしていると判断した場合には、加速度計42の測定値に基づく値a〜(2)を横方向加速度aとする。
以下に、本実施形態における駆動輪のスリップ判断について説明する。
初めに、車体走行制御システム21は、次の数式22によって、車輪回転計41の測定値に基づく乗員重心位置での横方向加速度a(1)から、センサ取り付け位置での横方向加速度a〜(1)を算出する。
(数式22)
a〜(1)=a(1)+(ΔV/D)2G
そして、車体走行制御システム21は、Δa=a〜(1)−a〜(2)を求め、Δaの絶対値が所定の閾値ε以上である場合には、スリップが生じていると判断する。
なお、右駆動輪11aと左駆動輪11bのどちらがスリップしているかについては、次の数式23により判断できる。
(数式23)
a〜(1)−a〜(2)≧ε …右側の駆動輪11aがスリップ
a〜(1)−a〜(2)≦−ε …左側の駆動輪11bがスリップ
ついで、車体走行制御システム21は、状態フィードバック制御により、目標走行状態に近づけることで、安定した旋回走行を実現させる(ステップ20)。
図14は、旋回走行安定化処理(ステップ20)のフローチャートである。
車体走行制御システム21は、ステップ19で測定したタイヤの回転速度vと横方向加速度aを取得し(ステップ21)、車両の実際の旋回曲率γ(=a/V2)と、旋回速度Vを計算する(ステップ22)。
一方、車体走行制御システム21は、限界横方向加速度alimに応じて搭乗者の入力目標(V*、γ*)に基づいて決定した現実目標速度V*〜と現実目標曲率γ*〜を、目標旋回速度、目標旋回曲率に設定する(ステップ23)。
なお、aMin<a*<aMaxである場合(ステップ17;Y)の現実目標はV*〜=V*、γ*〜=γ*である。
このように、本実施形態では、走行目標である現実目標速度V*〜と現実目標曲率γ*〜を直接の制御対象としてフィードバック制御しているので、差動トルク指令によるフィードフォワード制御(トルクを直接の制御対象とし、速度と曲率を間接的に制御)に比べ、走行が安定、制限が容易で確実になる。
ついで、車体走行制御システム21は、目標と実際の旋回曲率、旋回速度の差を評価し(ステップ24)、その差が小さくなるように、各駆動輪11a、11bの駆動トルクをフィードバック制御により補正し(ステップ25)、リターンする。
車体走行制御システム21では、操縦者の入力操作量から決定した(限界に対する修正済の値)速度目標V*〜、曲率目標γ*〜と、走行制御用センサ40の計測値から決定した速度V、曲率γとから、各駆動輪11a、11bのトルク指令値を次の数式24により算出する。
数式24において、τRが右輪トルク指令値を、τLが左輪トルク指令値を表す。
また、τ〜は並進、姿勢制御トルクを表し、τdifは回転制御トルクを表し、数式25で表される。数式25において、(・)は一回微分を意味する。
図15は、旋回走行時における並進制御、姿勢制御の状態を表したものであり、数式24、25における各記号は図15で示す通りである。
(数式24)
τR=(1/2)(τ-+τdif
τL=(1/2)(τ-−τdif
(数式25)
τ-=−KV(V−V*)−Kθθ−Kθ(・)θ(・)
τdif=−Kγ(γ−γ*
数式25において、右辺第1項の−KV(V−V*)が速度(並進)のフィードバック制御を、第2項の−Kθθ−Kθ(・)θ(・)が姿勢のフィードバック制御を表す。
数式24、25において、各フィードバックゲインKV、Kθ、Kθ(・)、Kγは、例えば極配置法によって設定しておく。場合によっては、微分ゲイン(姿勢角以外にも)や積分ゲインを導入してもよい。
以上説明した実施形態では、1軸の二輪車における旋回走行制御を例に説明したが、本発明では、三輪以上の車両に対しても、横方向限界加速度を超える入力(要求)に対する最適化を含め、本実施形態における旋回走行制御の方法を適用することが可能である。
以上説明した実施形態の車両では、車両全体の重心位置を推定し、その重心位置に応じた限界横方向加速度alim(=aMin、aMax)を求め、搭乗者が要求する目標走行状態(V*、γ*)から求めた横方向加速度a*が、限界横方向加速度alimを超えない範囲で旋回走行を行う。
すなわち、限界横方向加速度alimを超えない目標走行状態(V*、γ*)が搭乗者によって入力(要求)された場合には、その目標走行状態で旋回走行する。
一方、限界横方向加速度alimを超える目標走行状態(V*、γ*)が入力された場合には、(a)〜(e)の最適化によって、横方向加速度a=限界横方向加速度alim(=aMin、aMax)となるように、目標走行状態(V*、γ*)を現実走行状態(V*〜、γ*〜)に制限している。
これにより、旋回速度と旋回曲率を必要以上に制限しないので、車両の旋回性能を限界まで最大限利用することができる。
なお、説明した実施形態では、横方向加速度a=限界横方向加速度alimとなるように、目標走行状態(V*、γ*)を現実走行状態(V*〜、γ*〜)に制限する場合について説明したが、限界横方向加速度alimの範囲内であればよい。
ただし、車両の旋回性能の利用範囲を従来よりも大きくするために、制限後の横方向加速度を所定の閾値ak(例えば、ak=alim−0.05G)以上とする。
また、以上説明した実施形態では、コントローラ31としてジョイスティックを備え、その前後傾斜量を目標速度に、左右傾斜量を目標曲率に対応させているが、他の状態量を対応させてもよい。例えば、前後傾斜量を目標前後加速度に、左右傾斜量を目標旋回角速度に対応させてもよい。この場合には、目標走行状態設定時(図4のステップ15)で、目標とする前後加速度と角速度を速度と曲率に変換すればよい。あるいは、加速度と角速度を目標走行状態とすることにより、以上で説明した実施形態と同様の処理を行ってもよい。
本実施形態における車両の外観構成図である。 制御ユニットの構成図である。 荷重計と座高計の配置説明図である。 旋回走行制御処理の内容を表したフローチャートである。 旋回時の乗員(搭乗物)の状態を表した説明図である。 搭乗物の種類判別と、それに基づく重心高さの推定についての説明図である。 車両、搭乗者、及び全体の重心位置を表したものである。 接地荷重中心点Sと接地荷重中心位置λGF、及び接地荷重偏心度βについての説明図である。 第1の最適化の状態を表した説明図である。 第2の最適化の状態を表した説明図である。 第4の最適化の状態を表した説明図である。 第5の最適化の状態を表した説明図である。 車両旋回時の車両の力学的状態を表した説明図である。 旋回走行安定化処理のフローチャートである。 旋回走行時における並進制御、姿勢制御の状態を表した説明図である。
符号の説明
11 駆動輪
12 駆動モータ
13 搭乗部
131 座面部
14 支持部材
16 制御ユニット
20 制御ECU
21 車体走行制御システム
22 旋回走行目標制限システム
23 旋回限界決定システム
25 重心位置推定システム
30 操縦装置
31 コントローラ
40 走行、姿勢制御用センサ
41 走行速度計
42 加速度計
50 重心位置測定用センサ
51 荷重計
52 座高計
60 アクチュエータ
61 駆動輪アクチュエータ

Claims (6)

  1. 互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、
    目標速度V*と目標曲率γ*を取得する目標走行状態得手段と、
    前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*による走行を制御する走行制御手段と、
    搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、
    前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度alimを決定する限界横方向加速度決定手段と、
    取得した目標速度V*と目標曲率γ*に対応する目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alimを超える場合、前記目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alim以下で、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δMax以内となるように、前記取得し目標曲率γ* 制限する制限手段と、
    を具備したことを特徴とする車両。
  2. 前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の両方を制限する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
  3. 互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、
    目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、
    前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、
    搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、
    前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、
    取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、
    前記制限手段は、
    前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*で旋回した場合の車両軌跡と、前記取得した目標曲率γ*での旋回が可能になるまで最低減速度bMinで減速しながら旋回をした場合の車両軌跡とのズレ量が、
    所定のズレ上限値δMax以内である場合には、減速度bを前記最低減速度bMinとし、
    所定のズレ上限値δMaxより大きい場合にはズレ上限δMaxと一致する減速度bとし、
    前記目標速度V*を前記減速度bにより制限し、前記目標曲率γ*を前記目標速度V*の制限値により目標曲率γ*を制限する、
    ことを特徴とする車両。
  4. 互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、
    目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、
    前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、
    搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、
    前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、
    取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下で、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を具備し、
    搭乗部に配置された荷重センサと、
    搭乗物の高さを測定する高さセンサと、
    前記荷重センサ及び前記高さセンサの検出値から、搭乗物の重心位置を取得する搭乗物重心取得手段と、を備え、
    前記重心位置取得手段は、前記取得した搭乗物の重心位置と、予め規定されている車両の重心位置とから、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する、ことを特徴とする車両。
  5. 前記制限手段は、前記目標横方向加速度a*が前記限界横方向加速度alimとなるように、前記取得した目標速度V*と目標曲率γ*の少なくとも一方を制限することを特徴とする請求項又は請求項に記載の車両。
  6. 前記走行制御手段は、目標速度V*と目標曲率γ*を直接の制御対象としてフィードバック制御により走行を制御することを特徴とする請求項、請求項、又は請求項に記載の車両。
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