以下、図面を参照して、本発明の熱電発電装置に係る好適な実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置を備えた熱電発電システムを示す概略構成図である。同図において、熱電発電システム1は、自動車等の車両の排気系に配設されるものである。
熱電発電システム1は、エンジンのエキゾーストマニホールド2と接続された高温用の熱電発電装置3と、この熱電発電装置3に排気管4及び触媒5を介して接続された低温用の熱電発電装置6とを備えている。熱電発電装置6における触媒5の反対側には、マフラー7が接続されている。熱電発電装置3,6は、エンジンから排出される熱媒体である排気ガスの熱を利用して発電を行う装置である。熱電発電装置3は、熱回収流路8及びバイパス流路9を有している。熱電発電装置3よりも排気ガス流れ方向の上流側位置には、熱回収流路8とバイパス流路9とを切り換える排気ガス通路切換バルブ10が配置されている。
排気ガス通路切換バルブ10によってバイパス流路9が選択された場合には、エンジンからの排気ガスは、バイパス流路9を通り、更に触媒5を通過して熱電発電装置6に取り込まれる。そして、その排気ガスの熱が熱電発電装置6により熱回収され、発電が行われる。一方、排気ガス通路切換バルブ10によって熱回収流路8が選択された場合には、エンジンからの排気ガスが熱回収流路8を通り、排気ガスの熱が熱電発電装置3により熱回収され、発電が行われる。その後、残った排気ガスが触媒5を通って熱電発電装置6に取り込まれ、その排気ガスの熱が熱電発電装置6により熱回収される。熱電発電装置3,6により得られた電気は、図示はしないが、DC−DCコンバータで電圧変換された後、バッテリー等に蓄えられる。
なお、通常は排気ガス通路切換バルブ10によって熱回収流路8が選択され、熱電発電装置3により発電が行われる。但し、エンジンの低負荷運転時には排気ガス通路切換バルブ10によってバイパス流路9が選択され、触媒5の温度が活性温度まで上昇するまで保持される。また、排気ガスの温度が熱電発電素子の使用限界を超える場合には、排気ガス通路切換バルブ10によってバイパス流路9が選択される。また、熱電発電装置3における排気ガスの圧力損失が問題となる場合には、排気ガス通路切換バルブ10によってバイパス流路9が選択される。
図2は、第1実施形態に係る熱電発電装置3の外観を示す斜視図である。図2において手前側が熱電発電装置3の上流側の一端であり、エキゾーストマニホールド2に接続されている。熱電発電装置3の上流側の一端には開口3aが形成されており、この開口3aから熱電発電装置3の内部の熱回収流路8に排気ガスが流入する。また、熱電発電装置3の上流側の一端の中央には開口3bが形成されており、この開口3bから熱電発電装置3の内部のバイパス流路9に排気ガスが流入する。一方、図2において奥側が熱電発電装置3の下流側の一端であり、排気管4に接続されている。熱電発電装置3の下流側の一端の中央には開口3c(図5参照)が形成されており、この開口3cを通って熱電発電装置3の内部から排気ガスが流出する。
以下の説明では、熱電発電装置3の手前側から奥側へ進む方向を、排気ガスの流れ方向と呼ぶ。また、熱電発電装置3の中心線Cを中心として角度が変化する方向を周方向と呼び、その中心線Cから熱電発電装置3の外側に向かう方向を径方向と呼ぶ。より詳細な理解のために、図2において排気ガス流れ方向(III)から見た熱電発電装置3を図3に示し、図2の排気ガス流れ方向と直行する側方(IV)から見た熱電発電装置3を図4に示す。また、図3におけるV−V断面を図5に示し、VI−VI断面を図6に示し、図4におけるVII−VII断面を図7に示す。
図8は、熱電発電装置3から熱電モジュール40、冷却ケース50及びそれらを固定する部材60等を取り外して示した斜視図である。図8に示されるように、熱電発電装置本体20の外周には、平面状の取付け面22a,23a,24aが複数形成されており、それぞれの取付け面22a,23a,24aに熱電モジュール40が密着した状態で取り付けられるようになっている。取付け面22a,23a,24aは、排気ガスの流れ方向のある位置において周方向に60°間隔で6つ形成されており、さらにこのような6つの取付け面22a,23a,24aが排気ガスの流れ方向に3段連続して形成されている。
図9は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電部として構成された熱電モジュール40の内部構造を示す断面図である。図9に示されるように、熱電モジュール40のケース41の内部には、複数の熱電変換素子42が配置される空間が形成されている。ここで、ケース41の内部空間には、熱電変換素子42が高温時に酸化されないように不活性ガス(例えば窒素)が充填され、外気が遮断されている。熱電モジュール40のケース41は、取付け面22a,23a,24a側の高温側端面41aと、取付け面22a,23a,24a側とは反対側(冷却ケース50側)の低温側端面41bとを有し、内部空間には高温側端面41a及び低温側端面41bに密接して絶縁板43が配置されている。さらに、絶縁板43に密接して電極44が配置されており、それらの電極44の間に複数の熱電変換素子42(例えばBi2Te3等からなるp型半導体及びn型半導体)が配置されている。熱電変換素子42は、両端面41a,41b間に生じる温度差に応じて、ゼーベック効果により起電力を発生させる。
図10に示されるように、熱電モジュール40は、樹脂製のモジュールステー39に嵌められてから、取付け面22a,23a,24aに取り付けられる。モジュールステー39は、熱電モジュール40の外形に合わせて形成された略矩形形状の枠部材であり、互いに反対にある2辺の中央には位置決め用の貫通穴39a,39bが形成されている。一方、取付け面22a,23a,24aは、熱電モジュール40の外形に合わせて形成された略矩形形状の平面であり、取付け面22a,23a,24aの近傍には、モジュールステー39の貫通穴39a,39bに対応して位置決め部材であるピン32が圧入して固定されている。モジュールステー39の貫通穴39a,39bのそれぞれが取付け面22a,23a,24aの近傍に配置されたピン32に嵌め込まれることにより、熱電モジュール40が取付け面22a,23a,24a上で位置決めされる。なお、貫通穴の一方39aはピン32とほぼ同径であるが、貫通穴39aの他方39bは長穴となっている。これにより、各部材の熱膨張差により生じる寸法変化を許容している。
図11には、図8の一部が拡大して示されている。図11に示されるように、熱電モジュール40の端には、リード端子45が接続され、その接続部位は絶縁体でなるカバー46で覆われる。熱電モジュール40の低温側端面41bに密接して冷却ケース50A,50B,50Cが配置される。冷却ケース50A〜50Cは熱電モジュール40を冷却するための冷却部材であり、冷却ケース50A〜50Cの内部には冷却水が通る冷却水通路が形成されている。最上流側に位置する冷却ケース50Aの冷却水通路及び最下流側に位置する冷却ケース50Cの冷却水通路は、冷却水管51,54を介してラジエータ(図示せず)に繋がっており、隣接する冷却ケース50A〜50Cの冷却水通路どうしが冷却水管52,53を介して互いに繋がっている。これにより、冷却ケース50A〜50Cの内部には、冷却水管51〜54及びラジエータを介して冷却水が循環するようになる。なお、隣接する冷却ケース50A〜50Cを接続する冷却水管52,53は、例えばなまし銅やアルミニウムなどの軟質な材料で形成することで、隣接する冷却ケース50A〜Cの位置が相対的に変化することを可能とし、各冷却ケース50の動きを自由にしている。これにより、各部材の熱膨張差により生じる寸法変化を許容している。また、隣接する冷却ケース50を接続する冷却水管は、ゴムホースや蛇腹管などを用いてもよい。
また、図11に示されるように、冷却ケース50A〜50Cの外側面には円形に窪んだ凹部50aが形成されており、この凹部50aに熱電モジュール40及び冷却ケース50A〜50Cを固定するための部材60が配置される。熱電モジュール40及び冷却ケース50A〜50Cを固定するための部材60は、内側から順に、円板状のキャップ61、バネサポータ62、4枚の皿バネ63A,63B,63C,63D、バネサポータ64、円筒状のキャップ65である。円板状のキャップ61を凹部50aに配置してから、その上にバネサポータ62、4枚の皿バネ63A〜63D、バネサポータ64を載せて、それらの部材に円筒状のキャップ65を被せることで、各部材62〜64が2つのキャップ61,65の間に収納される。円筒状のキャップ65の外側にバンド部材66(図8参照)を配置して、バンド部材66に形成されたネジ穴66aにスクリューネジ67を締め付けて、さらに緩み防止用のナット68をスクリューネジ67に螺着すると、図7に示される状態となる。なお、ナット68はスクリューネジ67に螺着されてからさらにかしめられて、緩み防止が施される。
図7に示されるように、スクリューネジ67が締め付けられると、4枚の皿バネ63A〜63D及びその両側のバネサポータ62,64を介して冷却ケース50が押圧され、さらに冷却ケース50により熱電モジュール40が押圧される。ここで、熱電モジュール40は皿バネ63A〜63Dを介して押圧されているため、熱電発電装置3が径方向に膨張しても熱変形が皿バネ63A〜63Dの変形により吸収されるため、熱電発電装置3の各部に生じる熱変形の影響により熱電モジュール40と冷却部材との密着状態が損なわれることが防止されている。なお、熱電発電装置3が径方向に膨張しても、バンド部材66の湾曲部66bと皿バネ63A〜63Dが弾性変形するため、熱電モジュール40に作用する押圧荷重は過大にならないように設定されている。
図12は、熱電発電装置本体20を分解して示した斜視図である。熱電発電装置本体20は、排気ガスの流れ方向に並べて配置された3個の熱交換部材22,23,24と、その上流側に配置された第1固定部材21と、その下流側に配置された第2固定部材25とを備えている。また、熱電発電装置本体20は、3つの熱交換部材22〜24、第1固定部材21及び第2固定部材25を積層された状態で固定するための手段として、それぞれの部材の中心に形成された空洞に挿通されるボルト部材27と、ボルト部材27に螺着されてボルト部材27と係合するナット部材30とを備えており、ボルト部材27にナット部材30が締め付けられることにより、両固定部材21,25により熱交換部材22〜24が挟まれて固定される。なお、第1固定部材21、熱交換部材22〜24及び第2固定部材25の間には、排気ガスの外部への漏れを防止するためのリング状のガスケット26が挿入されている。
熱交換部材22〜24のそれぞれは、内側の空間が排気ガスの通路となる管状のケース部22b,23b,24bと、そのケース部22b〜24bの内側面から中心線に向けて延びる多数の吸熱フィン22c,23c,24cと、ケース部22b〜24bの上流側端部及び下流側端部のそれぞれに設けられた六角形形状のフランジ部22d,23d,24dと、熱電モジュール40が取り付けられる取付け面22a,23a,24aとを有しており、これらの部分が同一材料で一体的に構成されている。吸熱フィン22c〜24cは薄い板状の部材であり、その板面は排気ガスの流れ方向に平行にケース部22b〜24bから中心に向けて延びている。吸熱フィン22c〜24cは、ケース部22b〜24bの内面に周方向に隙間を空けて一定間隔ごとに設けられている。フランジ部22d〜24dのガスケット26と当接する位置には、面粗度が小さくされた当接面22e,23e,24eが形成されている。また、フランジ部22d〜24dには、六角形状の角部のそれぞれの近傍に、断面円形の棒状の部材である位置決め部材31を挿通するための貫通穴22f,23f,24fが形成されている。
上述した熱交換部材22〜24によれば、熱交換部材22〜24のケース部22b〜24bにおいて吸熱フィン22c〜24cと反対側の位置に、熱電モジュール40が取り付けられる取付け面22a〜24aが形成されている。ここで、図7が簡略化された図13に示されるように、1つの取付け面22a〜24aには60°の範囲の吸熱フィン22c〜24cが対応しており、熱電モジュール40の幅に対して、対応関係にある吸熱フィン22c〜24cの幅が大きい。また、図5が簡略化された図14に示されるように、熱電モジュール40の長さに対して、対応関係にある吸熱フィン22c〜24cの長さが大きい。よって、熱電モジュール40がケース部22b〜24bに接触する面積に対して、吸熱フィン22c〜24cがケース部22b〜24bに設けられる面積が大きい。この構成によれば、熱電モジュール40がケース部22b〜24bに接触する面積よりも吸熱フィン22c〜24cがケース部22b〜24bに設けられる面積の方が大きいため、吸熱フィン22c〜24cにより回収された熱を熱電モジュール40に十分に供給することができ、熱電モジュール40の発電効率を向上することができる。
再び図12を参照すると、第1固定部材21及び第2固定部材25はほぼ同形状であるため、第1固定部材21の形状は、図12に示される第1固定部材21の形状を参照することに加え、第2固定部材25の形状を参照することで、より詳しく理解することができる。また同様に、第2固定部材25の形状は、図12に示される第2固定部材25の形状を参照することに加え、第1固定部材21の形状を参照することで、より詳しく理解することができる。また、第1固定部材21及び第2固定部材25の形状は、図2〜図7を参照することで、より詳しく理解することができる。
図12に示されるように、第1固定部材21において上流側にある環状の部分は、4つの貫通穴21aが形成されたフランジ部21bである。熱電発電装置3が組み上げられた後に、第1固定部材21は貫通穴21aを利用してエキゾーストマニホールド2にボルト止め固定される。第1固定部材21において下流側にある環状の部分は、熱交換部材22を押圧する押圧部21cである。なお、フランジ部21bと押圧部21cとの間は、フランジ部21bから拡径しつつ押圧部21cまで延びる管状の接続部21dにより接続されている。
押圧部21cの外形は六角形形状である。押圧部21cにおいて熱交換部材22側の面は、熱交換部材22を押圧する当接面21e(図5参照)である。当接面21eにおいて六角形形状の角部の近傍には、位置決め部材31を嵌入するための有底穴21f(図6参照)が形成されている。有底穴21fの内径は位置決め部材31の外径より若干大きい程度であり、位置決め部材31は殆ど隙間のない状態で有底穴21fに嵌合する。なお、熱電発電装置本体20が組み上げられた後に、押圧部21cの六角形形状の角部のそれぞれには補強板33(図2参照)がネジ止め固定され、熱電発電装置本体20が補強される。
押圧部21cの内側には押圧部21cよりも直径が小さい環状の係合部21gが形成されている。押圧部21cと係合部21gとの間は、6本の梁部21hが架設されて接続されている。ボルト部材27にナット部材30が締め付けられると、ボルト部材27の頭部27bが第1固定部材21の係合部21gに係合する。
一方、第2固定部材25は、第1固定部材21とほぼ同じ形状であるが、上流側と下流側とが逆になっている。第2固定部材25において下流側にある環状の部分は、4つの貫通穴25aが形成されたフランジ部25bである。熱電発電装置3が組み上げられた後に、第2固定部材25は貫通穴25aを利用して排気管4にボルト止め固定される。第2固定部材25において上流側にある環状の部分は、熱交換部材24を押圧する押圧部25cである。なお、フランジ部25bと押圧部25cとの間は、フランジ部25bから拡径しつつ押圧部25cまで延びる管状の接続部25dにより接続されている。
押圧部25cの外形は六角形形状である。押圧部25cにおいて熱交換部材22側の面は、熱交換部材24を押圧する当接面25eである。当接面25eにおいて六角形形状の角部の近傍には、位置決め部材31を嵌入するための有底穴25f(図6参照)が形成されている。有底穴25fの内径は位置決め部材31の外径より若干大きい程度であり、位置決め部材31は殆ど隙間のない状態で有底穴25fに嵌合する。なお、熱電発電装置本体20が組み上げられた後に、押圧部25cの六角形形状の角部のそれぞれには補強板33(図2参照)がネジ止め固定され、熱電発電装置本体20が補強される。
押圧部25cの内側には押圧部25cよりも直径が小さい環状の係合部25gが形成されている。押圧部25cと係合部25gとの間には、6本の梁部25hが架設されている。ボルト部材27にナット部材30が締め付けられると、皿バネ28が第2固定部材25の係合部25gに係合する。
ボルト部材27は、排気ガスの流れ方向に延びる略円筒形状の部材であり、その内部には上流側から下流側まで貫通する貫通穴27aが形成されている。このボルト部材27の貫通穴27aが、排気ガスをバイパスさせるためのバイパス流路9として利用されている。このようにボルト部材27の内部にバイパス流路9を設けることで、熱電発電装置3を全体として小型化することができる。なお、バイパス流路9には、コールドスタート用の触媒を内蔵してもよい。
ボルト部材27の上流側の端部は、直径が大きな頭部27bとなっている。ボルト部材27にナット部材30が締め付けられると、ボルト部材27の頭部27bが第1固定部材21の係合部21gに係合する。一方、ボルト部材27の下流側の端部は、直径が小さな雄ネジ部27cとなっている。2枚の皿バネ28,29は、一般的に用いられている皿バネであり、ボルト部材27の直径に適合するものが選択されている。ナット部材30は、略円板形状の部材であり、皿バネ29と当接する平面状の当接部30aと、中央の貫通穴に形成された雌ネジ部30bと、当接部30aとは反対側に形成された六角柱状の突出部30cとを有している。六角柱状の突出部30cは、ボルト部材27にナット部材30を締め付けるときに締付け工具により把持されて、ナット部材30を回転させるために利用される。
リング状のガスケット26は、第1固定部材21、第2固定部材25及び熱交換部材22〜24に形成された当接面21e〜25eの形状に合わせて作られており、その板面には漏れ防止のためのビードが形成されている。なお、ガスケット26は、ビード付きの薄いステンレス鋼を材料とするガスケットでもよいし、銅などの軟質の金属を材料とする金属ガスケットでもよいし、カーボン材を主な材料とするガスケットでもよい。位置決め部材31は断面円形の棒状部材であり、位置決め部材31の両端部のそれぞれは第1固定部材21及び第2固定部材25の有底穴21f,25fに嵌め込まれると共に、位置決め部材31の中央部は熱交換部材22〜24の貫通穴22f〜24fに挿通されて嵌合する。位置決め部材31が第1固定部材21,第2固定部材25及び熱交換部材22〜24に嵌合することにより、第1固定部材21及び第2固定部材25に対して熱交換部材22〜24を所望の位置に配置することができる。
図15は、熱交換部材22〜24に形成された貫通穴22f〜24fの配置を示す配置図であり、図7に示される断面が簡略化して示されている。図15に示されるように、熱交換部材22〜24に形成された貫通穴22f〜24fは、周方向に短く、径方向に長い6つの長穴であり、略六角形状の角部の近傍に60°間隔で配置されている。貫通穴22f〜24fを長穴とすることにより、熱交換部材22から24を周方向に位置決めすると共に、熱交換部材22〜24と第1固定部材21及び第2固定部材25との径方向の熱膨張差を許容することができる。なお、熱交換部材22〜24に形成される貫通穴22f〜24fの位置及び個数は、上述した実施形態に限らない。即ち、熱交換部材22〜24に形成される貫通穴22f〜24fは2つ以上の個数であればよく、熱交換部材22〜24の任意の位置に設けられればよい。例えば、図16に示されるように、熱交換部材22〜24に3つの長穴22f,23f、24fを120°間隔で設けてもよい。
なお、上述した熱電発電装置3を構成する各部材は、鍛造、鋳造、引き抜き、焼結、プレス成形などの公知の手法により製造することができる。
上述した第1固定部材21、第2固定部材25、熱交換部材22〜24等が組み上げられて熱電発電装置3が完成した後の状態を、図5及び図6を参照して説明する。熱電発電装置3の完成後には、ボルト部材27の頭部27bは第1固定部材21の係合部21gと当接して係合し、ボルト部材27の頭部27bにより第1固定部材21の係合部21gが押圧される。一方、ナット部材30の当接部30aは皿バネ29と当接し、ナット部材30の当接部30aにより皿バネ29が押圧される。これにより、互いに当接する2枚の皿バネ28,29は、ナット部材30の当接部30aと第2固定部材25の係合部25gとの間で圧縮されて弾性変形する。さらに、皿バネ28は第2固定部材25の係合部25gと当接し、皿バネ28により第2固定部材25の係合部25gが押圧される。
ボルト部材27の頭部27bから第1固定部材21の係合部21gに付与された押圧力は、第1固定部材21の係合部21gと押圧部21cとの間に架設された梁部21hを介して第1固定部材21の押圧部21cに伝達されるため、第1固定部材21の押圧部21cによりガスケット26を介して熱交換部材22が押圧される。一方、ナット部材30から第2固定部材25の係合部25gに付与された押圧力は、第2固定部材25の係合部25gと押圧部25cとの間に架設された梁部25hを介して第2固定部材25の押圧部25cに伝達されるため、第2固定部材25の押圧部25cにより熱交換部材24が押圧される。このようにして3つの熱交換部材22〜24は、第1固定部材21及び第2固定部材25により挟まれて固定される。
上述した熱電発電装置3の構成によれば、排気ガスの流れる方向に並べて配置された複数の熱交換部材22〜24は、第1固定部材21及び第2固定部材25から押圧力を受けて、その位置が固定される。ここで、排気ガスから回収する熱により熱交換部材22〜24のそれぞれは熱変形するが、上記の固定方法が採用されたことにより、熱交換部材22〜24において熱電モジュール40の取付け面22a〜24aに生じる熱変形が小さいため、熱交換部材22〜24の熱変形に起因して熱電モジュールの発電効率が低下することを防止することができる。また、熱交換部材22〜24は材料強度の観点から有利な押圧力により固定されるため、熱交換部材22〜24は破損しづらく、熱電発電装置3の耐久信頼性を向上することができる。
また、上述した熱電発電装置3によれば、複数の熱交換部材22〜24は排気ガスの流れる方向に並べて配置された構造であるため、熱交換部材22〜24に互いに熱膨張差がある場合でも、熱交換部材22〜24の取付け面22a〜24aと熱電モジュール40の密着状態を維持して、発電効率の低下を防止することができる。例えば、一つの熱交換部材23とこれに隣接する熱交換部材22,24に熱膨張差がある場合でも、熱交換部材22〜24は互いの境界に配置されたガスケット26の表面で滑るため、一つの熱交換部材23からこれに隣接する熱交換部材22,24に熱膨張による変形が伝達されない。よって、隣接する熱交換部材22,24の取付け面22a,24aは変形しないため、熱交換部材22,24の取付け面22a,24aと熱電モジュール40との密着状態が維持されて、発電効率の低下を防止することができる。
また、上述した熱電発電装置3の構成によれば、ボルト部材27は熱交換部材22〜24の中心線に沿って延びてナット部材30と係合することで、第1固定部材21及び第2固定部材25に熱交換部材22〜24を押圧させている。この構成によれば、熱交換部材22〜24の中央を通過するボルト部材27にナット部材30が締め付けられることにより、第1固定部材21及び第2固定部材25は熱交換部材22〜24をより均一な力で押圧するため、熱交換部材22〜24を好適に固定することができる。
仮に、従来技術(特開2002−199762号公報)のように、熱回収用の管部材どうしを複数箇所でボルト止め固定した場合には、これらの管部材には局部的に大きな応力が作用するため、管部材に低強度の材料を用いることができなかった。これに対して、上述した構成によれば、熱交換部材22〜24の中央を通過するボルト部材27にナット部材30が締め付けられることにより、第1固定部材21及び第2固定部材25は熱交換部材22〜24を広い当接面積でより均一な力で押圧するため、熱交換部材22〜24には過大な応力が作用しないため、熱交換部材22〜24に銅やニッケルなどの低強度の材料を用いることができるようになった。
また、上述した熱電発電装置3の構成によれば、ナット部材30と第2固定部材25との間に皿バネ28,29が配置されているため、ボルト部材27と熱交換部材22〜24との間に熱膨張差があっても、その熱膨張差は皿バネ28,29の弾性変形により吸収されるため、熱交換部材22〜24の熱変形に起因して、熱交換部材22〜24の取付け面22a〜24aと熱電モジュール40との間に隙間ができることが防止され、熱電モジュール40の発電効率が低下することを防止することができる。
特に、皿バネ28,29として最適なバネ定数を有するものを選択することで、排気ガスの漏れを防止するために最低限必要なガスケット26の面圧を確保するとともに、熱交換部材22〜24に作用する押圧力を出来るだけ小さくして熱交換部材22〜24が変形することを防止することができる。なお、上述した実施形態では、ナット部材30と第2固定部材25との間に皿バネ28,29が配置されたが、他の実施形態では、ボルト部材27の頭部27bと第1固定部材21との間に皿バネ28,29が配置されてもよい。また、上述した実施形態では、皿バネ28,29を用いたが、他の形状のバネ部材であってもよい。
上述した実施形態における第1固定部材21、第2固定部材25及び熱交換部材22〜24の材料の選択について説明する。第1固定部材21、第2固定部材25及び熱交換部材22〜24には、様々な材料が用いられる。例えば、第1固定部材21及び第2固定部材25を高温環境下でもクリープが極めて小さく強度的に優れるステンレス鋼を用いて構成し、熱交換部材22〜24のそれぞれを熱伝導率の高いステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属材料やカーボンなどのセラミック材を用いて構成することができる。これらの中でも特に熱伝導率の高い銅、アルミニウム、ニッケルなどの材料は高温強度が比較的に小さいため破損を招きやすいが、上述した実施形態における熱交換部材22〜24の固定方法によれば、熱交換部材22〜24は広い面積で均一に押圧されるため、高温強度が比較的に小さい銅、アルミニウムなどの材料を使用することができる。
また、熱交換部材22〜24のそれぞれを異なる材料で構成してもよい。例えば、上流側の熱交換部材22を吸熱性能が比較的に低い材料(例えば、ステンレス鋼)で構成し、中央の熱交換部材23を吸熱性能がより高い材料(例えば、ニッケル)で構成し、下流側の熱交換部材24を吸熱性能がさらに高い材料(例えば、銅、アルミニウム)で構成してもよい。このように熱交換部材22〜24の材料を選択した場合には、上流側の熱交換部材22は吸熱性能が比較的に低い材料で構成されているものの、排気ガスは極めて高温であることから十分な排熱が熱電モジュール40に供給されるため、熱電モジュール40に良好に発電させることができる。また、上流側の熱交換部材22により排熱が回収されるため、排気ガスが中央の熱交換部材23に到達したときには排気ガスの温度は若干低下しているが、中央の熱交換部材23は吸熱性能がより高い材料で構成されており、十分な排熱が熱電モジュール40に供給されるため、熱電モジュール40に良好に発電させることができる。また、上流側の熱交換部材22及び中央の熱交換部材23により排熱が回収されるため、排気ガスが下流側の熱交換部材24に到達したときには排気ガスの温度はさらに低下しているが、下流側の熱交換部材24は吸熱性能がさらに高い材料で構成されており、十分な排熱が熱電モジュール40に供給されるため、熱電モジュール40に良好に発電させることができる。
次に、上述した実施形態の変形例に係る熱電発電装置80について説明する。図17は、変形例に係る熱電発電装置80の側面図であり、図18は、図17の熱電発電装置80を断面化して示した図である。この変形例に係る熱電発電装置80では、6つの熱交換部材81〜86が積層して配置されている。このように積層される熱交換部材81〜86の個数は2つ以上の任意の個数とすることができる。このように熱交換部材81〜86の個数を変更することにより熱電発電装置80の寸法を調節可能とすれば、共通の部品を利用して異なる車種用の熱電発電装置80を構成できる。よって、熱電発電装置80の部品を共通化したり、製造ラインの自動化が容易であることなどから、熱電発電装置80の製造に要するコストを低減することができる。
なお、熱交換部材81〜86の個数を増やした場合でも、上述した実施形態と同様に、熱交換部材81〜86に様々な材料を用いることができる。例えば、最も上流側の熱交換部材81〜86を高温環境下でもクリープが極めて小さい材料(例えば、ステンレス鋼)で構成し、上流側から二番目の熱交換部材81〜86を吸熱性能がより高い材料(例えば、ニッケル)で構成し、上流側から三番目の熱交換部材81〜86を吸熱性能がより高い材料(例えば、銅)で構成し、下流側の3つの熱交換部材81〜86を吸熱性能がさらに高い材料(例えば、アルミニウム)で構成してもよい。このように熱交換部材81〜86の材料を最適に選択した場合には、熱交換部材81〜86の吸熱性能を向上させるとともに耐久性を向上することができる。
[第2実施形態]
次に、図面を参照して、本発明の熱電発電装置に係る第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分について重点的に説明する。
第1実施形態の熱電発電装置3では、熱交換部材22,23,24のそれぞれは単一の部材として構成されたが、第2実施形態の熱電発電装置では、熱交換部材101のそれぞれは多数枚の薄い板状の部材102を積層して構成されている。図19には、熱交換部材101を構成する板状部材102が示されている。図19では、説明の便宜のため、板状部材102及びガスケット103を2枚ずつ示しているが、実際には熱交換部材101は数十枚から数百枚の板状部材102及びガスケット103を交互に積層して構成されている。
板状部材102のそれぞれは、厚さの薄い金属板をプレス加工により円環部102a及び吸熱フィンエレメント102bを有する形状に打ち抜いて製造される。円環部102aの外周は略六角形形状であり、その角部の近傍には位置決め用の貫通穴102cが形成されている。また、円環部102aの略六角形形状の外周において、角部と角部の間の辺の部分(縁部)102dが熱電モジュール40を取り付けるための取付け面となっている。ここで、金属板の厚さは、吸熱フィンエレメント102bの延出長さや吸熱フィンエレメント102bどうしの隙間の大きさなどを考慮して打ち抜き加工が実施可能なものが選択される。打ち抜き加工により板状部材102は比較的に容易に加工できるため、熱電発電装置を容易に製造することができ、熱電発電装置の製造に要するコストを低減することができる。
板状部材102の円環部102aに形成された貫通穴102cは、位置決め部材31の外径よりも若干小さな内径を有している。製造時には、板状部材102の貫通穴102cを位置決め部材31に圧入して、板状部材102を位置決め部材に固定する。そして、多数の板状部材102の縁部102dで形成されるため表面が粗くなっている取付け面を機械加工で削って整えることで、取付け面の平面度を向上させる。ガスケット103は、およそ0.1mm〜0.2mmのステンレス鋼の薄板をプレス加工することでより製造される。ガスケット103は、板状部材との接触圧を上昇させるため湾曲形状のビードを設けた構造とすることが好ましい。なお、ガスケット103は、銅などの軟質の金属を材料とする金属ガスケットでもよい。この場合、銅の表面にニッケルメッキを施せば、銅を材料とするガスケット103とステンレス鋼を材料とする板状部材102をロー付けにより接合できるため好ましい。また、上述した実施形態では、ガスケット103により板状部材102の間のシールを行っているが、ガスケット103を用いることなく板状部材102どうしをロー付けにより接合してもよい。
上述した実施形態の効果を従来技術と対比しつつ説明する。仮に、従来技術のように板金加工することで熱交換部材101を製作する場合には、円環部用の部材と吸熱フィン用の部材を別部材として形成し、これらの部材をロー付け、かしめ等の方法で接合させて一体化させることになる。このような熱交換部材101の製作方法は、部材どうしの接合部において伝熱抵抗が大きくなるため、吸熱フィンで吸熱した熱を熱電モジュールへ十分に伝えにくくなるという問題がある。
一方、押出し、鋳造、機械加工等の方法で熱交換部材101を一体的に製作すれば、円環部と吸熱フィンとの間の接合部はなくなるため、その分伝熱抵抗を小さくすることができ、吸熱フィンで吸熱した熱を熱電モジュール40へ伝えやすくなる。しかし、鋳造、機械加工等の方法で熱交換部材を製作した場合には、コストが上昇してしまうため好ましくない。押出し成形で熱交換部材101を製作した場合には、唯一コストを抑えることができるが、ステンレス鋼等の硬質の金属を材料とすることができず、素材がアルミニウム、銅等の軟質の金属に限定される。
これに対して、本実施形態では、多数枚の板状部材102が積層されることで熱交換部材を構成しているため、上述した問題点を解消している。即ち、本実施形態では、熱交換部材101を構成する各板状部材102は薄いため、プレス成形である打ち抜き加工によって、円環部102aから吸熱フィンエレメント102bが延びる複雑な形状の板状部材102を製作することが可能となった。この製作方法によれば、複雑な形状の板状部材102を製作するに際して、比較的容易に製作できるためコストを抑えることができ、吸熱フィンエレメント102bで吸熱した熱を熱電モジュール40へ伝えやすく、アルミニウム、銅等の軟質の金属だけでなく、ステンレス鋼等の硬質の金属を材料とすることができる。
図20は、複数の板状部材102が積層された様子が示されている。図20では、図示を簡略化して6枚の板状部材102のみを示し、さらに周方向の一定範囲を切り出して示している。図20において板状部材102の積層体を矢視方向に見た図が、図21である。
図20及び図21に示されるように、最も手前側の板状部材102Aの吸熱フィンエレメント102bに対して、二番目に手前側の板状部材102Bの吸熱フィンエレメント102bは、周方向に若干位置がずれている。二番目に手前側の板状部材102Bの吸熱フィンエレメント102bに対して、三番目に手前側の板状部材102Cの吸熱フィンエレメント102bは、周方向に若干位置がずれている。三番目に手前側の板状部材102Cの吸熱フィンエレメント102bに対して、四番目に手前側の板状部材102Dの吸熱フィンエレメント102bは、周方向に若干位置がずれている。四番目に手前側の板状部材102Dの吸熱フィンエレメント102bに対して、五番目に手前側の板状部材102Eの吸熱フィンエレメント102bは、周方向に若干位置がずれている。五番目に手前側の板状部材102Eの吸熱フィンエレメント102bに対して、六番目に手前側の板状部材102Fの吸熱フィンエレメント102bは、周方向に若干位置がずれている。さらに、奥側に積層される板状部材(図示せず)の吸熱フィンエレメントも同様に、その一つ手前側の板状部材の吸熱フィンエレメントに対して周方向に若干位置がずれている。このように、板状部材102の吸熱フィンエレメント102bは周方向に徐々にずらされており、吸熱フィンの板面には段差が形成されている。
上述したように、吸熱フィンの板面には段差が形成されているため、吸熱フィンの板面が退避するように形成された段差104では、排気ガスの乱流化が促進され、排気ガスから吸熱フィンへの熱伝達率を向上することができる。一方、吸熱フィンの板面が突出するように形成された段差105では、段差がない場合に比べて温度境界層が薄くなり、排気ガスから吸熱フィンへの熱伝達率を向上することができる。このように排気ガスから吸熱フィンへの熱伝達率を向上することにより、吸熱フィンの吸熱性能を向上することができる。吸熱フィンの吸熱量が増大することは、次の数式(1)からも理解できる。即ち、排気ガスが乱流化したり温度境界層が薄くなると、排気ガスと吸熱フィン表面の境界層温度差ΔTが大きくなるため、吸熱フィンの吸熱量を増大させることができる。
Q = K × S × E × ΔT ・・・(1)
ここで、
Q : 吸熱量(W)
K : 排気ガスと吸熱フィン表面の熱伝達率(W/m2/K)
S : 吸熱フィン表面積(m2)
E : 吸熱フィン効率
ΔT: 排気ガスと吸熱フィン表面の境界層温度差(K)
図22は、上述した熱交換部材101の変形例を示す図である。図22に示されるように、変形例に係る熱交換部材111において、板状部材112のそれぞれは、厚さの薄い金属板をプレス加工により円環部112a及び吸熱フィンエレメント112bを有する形状に打ち抜いて製造される。ここで、吸熱フィンエレメント112bは、円環部112aから中心に向けて延出するとともに湾曲した形状となっている。このように吸熱フィンエレメント112bを湾曲した形状とすることで、吸熱フィンの表面積を増加して、吸熱フィンの吸熱性能をさらに向上することができる。なお、このような複雑な形状の吸熱フィンエレメント112bをプレス加工で製造するためには、素材となる金属板の板厚をさらに薄くすればよい。
図23は、上述した熱交換部材101の別の変形例を示す図である。図23に示されるように、この変形例に係る熱交換部材121では、ステンレス鋼を材料とする板状部材122Aと、銅を材料とする板状部材122Bとが交互に積層されている。ここで、銅は比較的に強度に劣る材料であるため、ステンレス鋼でなる板状部材122Aよりも銅でなる板状部材122Bは薄いものが用いられている。このように異なる種類の材料でなる板状部材122A,122Bを積層することで、それぞれの材料の優れた特性を利用することができる。
特に、上述したようにステンレス鋼でなる板状部材122Aと銅でなる板状部材122Bとを積層することで、ステンレス鋼の高温強度に優れた特性と、銅の熱伝導率が優れた特性を利用して、熱交換部材121の耐久性を確保しつつ吸熱性能を向上することができる。上述した構成では、熱電モジュール40を取り付けるための取付け面が、両板状部材122A,122Bが積層されて形成されるため、熱電モジュール40の押付け荷重が大きい場合には、ステンレス鋼でなる板状部材122Aの厚さを大きくし、銅でなる板状部材122Bの厚さを薄くすればよい。このように板状部材122A,122Bの厚さを調節することで、熱電モジュール40から受ける荷重による取付け面の変形を抑えることができる。
なお、図23に示される変形例では、両板状部材122A,122Bは交互に積層されているが、一方の板状部材122A又は122Bの間に他方の板状部材122B又は122Aが複数枚配置されてもよい。また、一方の板状部材122Aの材料をステンレス鋼とし、他方の板状部材122Bの材料を銅としているが、他の種類の材料でなる板状部材を積層してもよい。例えば、上述した変形例であれば、一方の板状部材122Bの材料である銅に代えて、同じく熱伝導率が優れたニッケルを用いることもできる。また、板状部材の材料の種類は3種類以上であってもよい。
図24及び図25は、上述した熱交換部材101のさらに別の変形例を示す図である。図24に示されるように、この変形例に係る熱交換部材131では、一方の板状部材132Aが、他方のシェル状の板状部材132Bに嵌めこまれて一体化される。一体化された板状部材132A,132Bの吸熱フィンエレメント133A,133Bが積層された様子が、図25に示される。ここで、一方の板状部材132Aの材料は銅であり、他方の板状部材132Bの材料はステンレス鋼である。このように異なる種類の材料でなる板状部材132A,132Bを積層することで、それぞれの材料の優れた特性を利用することができる。
特に、上述したように銅でなる板状部材132Aとステンレス鋼でなる板状部材132Bとを積層することで、ステンレス鋼の高温強度に優れた特性と、銅の熱伝導率が優れた特性を利用して、熱交換部材131の耐久性を確保しつつ吸熱性能を向上することができる。また、一方の板状部材132Aの材料を銅とし、他方の板状部材132Bの材料をステンレス鋼としているが、他の種類の材料でなる板状部材を積層してもよい。例えば、上述した変形例であれば、一方の板状部材132Aの材料である銅に代えて、同じく熱伝導率が優れたニッケルを用いることもできる。また、カーボンなどの非金属の材料を用いることもできる。
[第3実施形態]
次に、図面を参照して、本発明の熱電発電装置に係る第3実施形態について説明する。上述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分について重点的に説明する。
上述した第1実施形態の熱電発電装置3では、熱電発電装置3の内部で排気ガスが上流側から下流側へと流れるに伴って、熱交換部材22〜24の吸熱フィン22c〜24cにより排気ガスの熱が奪われるため、排気ガスの温度は低下していく。ここで、吸熱フィン22c〜24cが排気ガスから奪う熱量は、吸熱フィン22c〜24cの位置によって異なる。具体的には、熱交換部材22〜24において取付け面22a〜24aの反対側に設けられた吸熱フィン22c〜24cは、排気ガスから奪った熱を取付け面22a〜24aから熱電モジュール40に逃がしやすいため、隣り合う2つの取付け面22a〜24aの中間位置の内側に設けられた吸熱フィン22c〜24cよりも、排気ガスから多くの熱を奪う傾向にある。また、吸熱フィン22c〜24cの根元側部位は、排気ガスから奪った熱を取付け面22a〜24aから熱電モジュール40に逃がしやすいため、吸熱フィン22c〜24cの先端側部位よりも、排気ガスから多くの熱を奪う傾向にある。
このように、吸熱フィン22c〜24cにより排気ガスから奪われる熱量が吸熱フィン22c〜24cの位置によって異なるため、排気ガスが下流側へ流れて行くほど排気ガスには温度差が生じる。よって、排気ガスが下流側へ流れて行くほど、排気ガスから多くの熱を奪うことが可能な位置にある吸熱フィン22c〜24cの近傍には、その上流側で既に吸熱されて温度が比較的に低くなった排気ガスが流れる一方で、排気ガスからあまり熱を奪わない位置にある吸熱フィン22c〜24cの近傍には、上流側であまり吸熱されないで温度が比較的に高い排気ガスが流れる。このため、下流側の吸熱フィン22c〜24cでは、排気ガスの熱が有効に回収されず、全体として排気ガスからの吸熱量が小さく、発電量の低下を招いてしまう。このような問題に対処した第3実施形態の熱電発電装置を、以下に説明する。
図26には、第3実施形態に係る熱電発電装置200が示されている。図26では、説明の便宜のため、中央の熱交換部材23を省略している。図26に示されるように、中央の熱交換部材23と下流側の熱交換部材24との間には、複数のプレート201が配置されている。図27には、複数のプレート201を排気ガスの流れ方向から見た様子が示されており、図28には、1つのプレート201を径方向から見た様子が示されている。
図27に示されるように、ボルト部材27の外周にはリング状の基部202が固定されており、このリング状の基部202の周囲には6つのプレート201が周方向に60°間隔で設けられている。各プレート201は、基部202から径方向外側に延びている。ここで、各プレート201は、基部202から六角形状の角部に向かって延びており、言い換えれば、各プレート201は、基部202から隣り合う2つの取付け面24aの中間位置に向かって延びている。なお、図28に示されるように、各プレート201は、排気ガスの流れ方向に対して傾斜が付けられている。
図29に示されるように、上流側から流れてきた排気ガスがプレート201に至ると、排気ガスの流れの向きはプレート201により変えられる。これにより、上流側の吸熱フィン23cにおいて隣り合う2つの取付け面の中間位置の内側を流れてきた排気ガスが、下流側の吸熱フィン24cでは取付け面の内側を流れることとなる。よって、上流側の吸熱フィン23cによってあまり吸熱されず温度が高いままの排気ガスが、下流側の吸熱フィン24cでは効率良く吸熱されるため、排気ガスの熱が有効に回収されて、全体として排気ガスからの吸熱量が大きくし、熱電モジュール40の発電量を向上することができる。なお、上流側から2番目の熱交換部材23と上流側から3番目の熱交換部材24との間に配置されたプレート201について説明したが、上流側から1番目の熱交換部材22と上流側から2番目の熱交換部材23との間にも同様にプレートが配置されている。
[第4実施形態]
次に、図面を参照して、本発明の熱電発電装置に係る第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱電発電装置300では、第3実施形態と同様に排気ガスの温度差に起因して発電効率が低下する問題に対処している。上述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分について重点的に説明する。
図30には、第4実施形態に係る熱電発電装置300が示されている。図30に示されるように、第4実施形態に係る熱電発電装置300では、4つの熱交換部材301,302,303,304が積層されて配置されている。ここで、熱交換部材301〜304は、互いに周方向にずらされている。熱電発電装置300を側方から見た様子が図31に示されており、さらに図31のR−R断面が図32に示され、T−T断面が図33に示されている。
図30〜図33を参照すると理解できるように、最も上流側の熱交換部材301の取付け面301aに対して、上流側から2番目の熱交換部材302の取付け面302aは周方向に30°ずらされている。上流側から2番目の熱交換部材302の取付け面302aに対して、上流側から3番目の熱交換部材303の取付け面303aは周方向に30°ずらされている。上流側から3番目の熱交換部材303の取付け面303aに対して、上流側から4番目の熱交換部材304の取付け面304aは周方向に30°ずらされている。
上述した熱交換部材301〜304によれば、最も上流側の熱交換部材301において隣り合う2つの取付け面301aの中間位置の内側を流れてきた排気ガスは、上流側から2番目の熱交換部材302において取付け面302aの内側を流れることとなる。同様に、上流側から2番目の熱交換部材302において隣り合う2つの取付け面302aの中間位置の内側を流れてきた排気ガスは、上流側から3番目の熱交換部材303において取付け面303aの内側を流れることとなる。同様に、上流側から3番目の熱交換部材303において隣り合う2つの取付け面303aの中間位置の内側を流れてきた排気ガスは、上流側から4番目の熱交換部材304において取付け面304aの内側を流れることとなる。
上述したように、上流側の熱交換部材301,302又は303において、隣り合う2つの取付け面301a,302a又は303aの中間位置の内側を流れてきた排気ガスは、次段の下流側の熱交換部材302,303又は304において、取付け面302a,303a又は304aの内側を流れることとなる。よって、上流側の吸熱フィン301b,302b又は303bによりあまり吸熱されず温度が高いままの排気ガスが、次段の下流側の吸熱フィン302b,303b又は304bの効率良く吸熱されるため、排気ガスの熱が有効に回収されて、全体として排気ガスからの吸熱量が大きくし、熱電モジュール40の発電量を向上することができる。
[第5実施形態]
次に、図面を参照して、本発明の熱電発電装置に係る第5実施形態について説明する。第5実施形態の熱電発電装置400では、第3実施形態と同様に排気ガスの温度差に起因して発電効率が低下する問題に対処している。上述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分について重点的に説明する。
図34には、第5実施形態に係る熱電発電装置400が示されている。図34では、説明の便宜のため、中央の熱交換部材23を省略している。図34に示されるように、第5実施形態に係る熱電発電装置400では、中央の熱交換部材23と下流側の熱交換部材24との間には、多数の扁平形状の管状部材402が積層されて一体化された積層体401が配置されている。吸熱フィン24cと同数の管状部材402が積層されており、積層した状態で互いにロー付けされて接合されることで一体化され、全体としてリング状となっている。多数の管状部材402が一体化された積層体401は、下流側の熱交換部材24の吸熱フィン24cにロー付けされて固定されている。
熱電発電装置400から取り外された熱交換部材24が図35に示されている。さらに、熱交換部材24を排気ガスの流れ方向に見た様子が図36に示されており、熱交換部材24を側方から見た様子が図37に示されている。なお、図36に示されるように、多数の管状部材402は中央側の位置で互いに接合されて固定されており、外側の位置では2つの隣接する管状部材402の間に隙間403が存在している。
図38には、管状部材402の一つが拡大して示されている。排気ガスの流路内において、管状部材402は、上流側の位置から下流側の位置まで延設されている。管状部材402の上流側の位置には、排気ガスの入口となる開口402aが形成されており、管状部材402の下流側の位置には排気ガスの出口となる開口402bが形成されている。管状部材402の上流側の開口402aと管状部材402の下流側の開口402bとは、径方向及に異なる位置に設けられている。即ち、管状部材402の上流側の開口402aは、熱交換部材24の中央でボルト部材27が配置される位置の近傍にあり、管状部材402の下流側の開口402bは、熱交換部材24の外側で熱交換部材24のケース部24bの近傍にある。また、管状部材402の上流側の開口402aと管状部材402の下流側の開口402bとは、周方向に若干異なる位置に設けられている。
上流側から流れてきた排気ガスは、管状部材402の上流側の開口402aから流入すると、管状部材402の内部を通過して、管状部材402の下流側の開口402bから流出する。これにより、排気ガスの流路内において内側を流れていた排気ガスは、管状部材402を通過した後には外側を流れるようになる。一方、既述のとおり隣接する2つの管状部材402の間には隙間403があるため、排気ガスの流路内において外側を流れていた排気ガスは、管状部材402を通過した後には内側を流れるようになる。
既述のとおり、吸熱フィン22c〜24cの根元側部位は、排気ガスから奪った熱を取付け面22a〜24aから熱電モジュール40に逃がしやすい。このため、吸熱フィン22c〜24cの根元側部位は、吸熱フィン22c〜24cの先端側部位よりも、排気ガスから多くの熱を奪う傾向にある。よって、排気ガスが下流側へ流れて行くほど排気ガスには温度差が生じる。これに対して、上述したように熱交換部材23と熱交換部材24との間に管状部材402を配置することで、上流側の熱交換部材23では吸熱フィン23cの先端側部位を流れてきた排気ガスが、下流側の熱交換部材24では吸熱フィン24cの根元側部位を流れることとなり、上流側の熱交換部材23では吸熱フィン23cの根元側部位を流れてきた排気ガスが、下流側の熱交換部材24では吸熱フィン24cの先端側部位を流れることとなる。よって、上流側の吸熱フィン23cによりあまり吸熱されず温度が高いままの排気ガスが、下流側の吸熱フィン24cでは効率良く吸熱されるため、排気ガスの熱が有効に回収して、全体として排気ガスからの吸熱量が大きくし、熱電モジュール40の発電量を向上することができる。
上述した実施形態では、上流側から2番目の熱交換部材23と上流側から3番目の熱交換部材24との間に配置された管状部材402について説明したが、上流側から1番目の熱交換部材22と上流側から2番目の熱交換部材23との間にも同様に管状部材が配置されている。また、上述した実施形態では、管状部材402は周方向の全ての位置に設けられたが、管状部材402は周方向の一部の位置にのみ設けられてもよい。また、上述した実施形態では、管状部材402は吸熱フィンと同数であったが、管状部材402は吸熱フィンよりも多くてもよいし少なくてもよい。
1…熱電発電システム、2…エキゾーストマニホールド、3…熱電発電装置、4…排気管、8…熱回収流路、9…バイパス流路、10…排気ガス通路切換バルブ、20…熱電発電装置本体、21…第1固定部材、25…第2固定部材、22,23,24…熱交換部材、22b,23b,24b…ケース部、22c,23c,24c…吸熱フィン、26…ガスケット、27…ボルト部材(固定手段)、28,29…皿バネ、30…ナット部材(固定手段)、31…位置決め部材、40…熱電モジュール(熱電変換部)。