JP5037054B2 - 反応装置 - Google Patents

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Description

本発明は、化学物質の生産,新物質の合成,新規合成方法の発見等で用いられる流体の反応装置に関し、特にマイクロリアクタを用いて高温高圧、特に超臨界流体条件に至るまで使用可能なものに好適である。
従来、マイクロリアクタを超臨界流体への適用を可能とし、高温高圧プロセスに適用するため、高圧細管を複数本配設し、両端で1本に集合させたマイクロリアクタをモジュールとして組み合わせることが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
また、特段の圧縮装置を用いることなく、超臨界流体などの高圧流体利用プロセスの処理システムとするため、熱膨張による圧力を利用することが知られ、例えば特許文献2に記載されている。
特開2006−061903号公報 特開2003−126673号公報
上記従来技術は、いずれも流入側で高圧に昇圧し、流入側で冷却後に減圧弁で減圧することを必須としている。したがって、詰まりが発生して信頼性を損なうばかりでなく、微少流量であっても圧力を保持すること、反応温度を高くすること、メンテナンスフリとすること、が困難であり、幅広い高温高圧に適用するには十分でなかった。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、反応器内の圧力を高精度で一定に保つことが可能で、適用範囲の広いものとすることにある。
上記の目的を達成するために、原料を保存する原料タンクと、該原料タンクと流路接続され前記原料を送液する高圧ポンプと、該高圧ポンプの下流に設置され前記原料が加圧されて供給される反応器と、該反応器を加熱して反応を促進する加熱槽と、前記生成物を流入させ回収する生成物タンクと、を備える反応装置において、前記加熱槽と前記生成物タンクとの間に設けられた注入口と、注入液を前記注入口から注入する注入ポンプと、を備え、前記注入液の流量により前記生成物タンクへ流出する圧力を減圧するものである。
本発明によれば、減圧弁を必要としないので、反応時の内部圧力を流量によらず、正確に制御できる。したがって、信頼性を損なうことなく、微少流量であっても圧力を保持すること、反応温度を高くすること、メンテナンスフリとすること、が可能となり、幅広い高温高圧に適用することができる。
化学プラントにおいては、加熱器,反応器,蒸発器,アキュムレータなど、高温高圧下で物質を取り扱う第一種圧力容器が多数使用されている。第一種圧力容器は、その内部に莫大なエネルギーを保有することになり、爆発や破裂などの事故が生じると著しい被害を被る。そのため、さまざまな法令によって規制され、安全設備面のコストが増大している。
近年、流路の幅と高さが数μmから数百μmの微細流路を有する構造体に、お互いに反応する2種類以上の流体を導入し、微細流路内で接触させて化学反応を生じさせるマイクロリアクタと呼ばれる反応装置が注目され、体積あたりの表面積が大きい、流路幅(高さ)が小さい、容積が小さいという特徴から、混合時間が短くなる、熱交換が早くなる、反応が高効率になるといった効果が期待できる。また、容積が小さいことから、高温高圧下の反応を第一種圧力容器の規制範囲外で行うことが可能になり、高温高圧条件での化学反応装置、例えば超臨界流体,溶存気体,難溶物質,反応速度の低い物質等を用いる化学反応に適用範囲を拡大することができる。
図1は、実施の形態を示す反応装置の概略図であり、反応器1,原料タンク2,高圧ポンプ3,冷却器4,注入液タンク5,注入ポンプ6,生成物タンク7,返送ポンプ8,加熱槽11,冷却槽12,流路21,22,23,24,25,26,27,28で構成されている。
注入液が注入ポンプ6によって注入液タンク5から流路27,25,26をとおって生成物タンク7に送液される。このとき、流路26の始点つまり流路24,25の終点からなる合流部の圧力は、流路26を流れる液体の圧力損失によって決定する。
流路26の断面形状を円形とし、断面の代表長さが流路の長さ方向に沿って変化しない場合を考える。微細流路に流体を流すと、一般に流れは層流になる。詳しくは、次式で表される無次元数であるレイノルズ数が2100よりも小さい場合に層流となる。
Re=Duρ/μ 式(1)
Reはレイノルズ数、Dは流路26の内径[m]、uは流体の断面平均流速[m/s]、ρは流体の密度[kg/m3]、μは流体の粘度[Pa・s]である。
層流の場合、円管の流路に流体を流すと、次式のようなハーゲン−ポアズイユの式で表される圧力損失が生じる。
ΔP=32μLu/D2 式(2)
ΔPは圧力損失[Pa]、Lは流路26の長さ[m]である。流路26での流量をQ
[m3/s ]とすると流体の断面平均流速uと流路26の内径Dとの間に次式が成り立つ。
Q=πD2u/4 式(3)
したがって、圧力損失を示す式(2)は次式のようになり、流量一定の条件下では圧力損失は円管の長さLに比例し円管の内径Dの4乗に反比例する。
ΔP=128μQL/D4 式(4)
合流部の圧力は、流路25を流れる流量、つまり注入液の流量で下限値を決定する。そして、高圧ポンプ3が逆流しなければ、流路22,23,24,反応器1,冷却器4の圧力は式(4)で求めた値を下回ることはない。
原料は高圧ポンプ3によって原料タンク2から流路21を通って反応器1へ供給される。加熱槽11で加熱されて反応した生成物は、流路23を通って冷却器4に送られ、冷却槽12で冷却される。つぎに、流路24を通り、流路25と合流して流路26から生成物タンク7で回収される。
反応器1内の圧力がほぼ大気圧であったとした場合、反応器1の温度を沸点以上に設定してしまうと、送液した液体が沸騰してしまい、流量等の反応条件の制御が困難になる。しかし、高温になっている反応器1を含む流路23から流路24までの内圧は、式(4)で求めた流路26の圧力損失を上回っており、条件さえ合えば沸点以上でも原料を液体のまま反応,送液することができる。沸騰させないための反応器の温度と圧力の関係は、反応器1に流入する物質の蒸気圧の全てが式(4)で求めた圧力よりも低くなるように温度を設定すればよい。
例えば、反応器に送液する溶媒をトルエンとし、反応温度150℃に設定すると、トルエンの蒸気圧は約0.26MPa になる。したがって、注入液が水の場合は、流路26の仕様をΦ500×1.5mとし流速1.4m/s(流量275μL/s)で送液すると、圧力損失が0.27MPa となりトルエンの150℃における蒸気圧を上回り、沸騰させずにトルエンを送液できることとなる。また、トルエンの大気圧における沸点は約111℃であるため、冷却器4もしくは注入液である水でこの温度以下まで冷却してから大気圧まで減圧すれば沸騰することはない。
また、原料の送液が開始されたら、圧力発生用の注入液の流量を低減する。つまり、原料が流路26に流入すれば圧力損失も増加するので、目的圧力以上の不要な圧力損失分で注入液の流量を減少できる。したがって、高圧ポンプ3の送液量を監視しながら注入ポンプ6の送液量を減少させることで、駆動エネルギーや注入液の使用量を節約でき、場合によっては、注入液を完全に停止しても良い。
さらに、冷却器4および冷却槽12を省いて、反応器1を出た液体が、合流部までの流路23もしくは流路24を流れる最中に沸点以下まで自然冷却してもよい。また、注入液により冷却しても良い。つまり、合流部における温度は必ずしも沸点以下である必要はなく、流路のある一点における圧力が、その点における液体の蒸気圧を上回るように設計,制御すれば良い。
注入液は再利用することができるので、生成物タンク7と注入液タンク5を流路28で接続し、送液量を返送ポンプ8もしくは落差やバルブ等を利用してコントロールする。
生成物が1相であれば注入量の制御は容易であるが、水と油のような液液の2相流、もしくは固液の2相流で有れば、より制御が困難になる。したがって、液液の場合は、注入液に使用する液相を1種類に限った方が良い。例えば、使用したい注入液の比重が重い場合は生成物タンクの下部から抜き取ればよいし、比重が軽い場合は生成物タンクの上部から抜き取ればよい。この場合、注入液タンク5を省き、流路27の始点を生成物タンク7内に設置しても良い。また、生成物タンク7から注入液タンク5への間にオイルセパレータを設置して、任意の液相を取り出すことで生成物が1相でない場合にも注入量の制御、つまり減圧の制御を正確にできる。
また、流路26内で流入する物質の沸点以下で新たな単位操作を行っても良い。この場合、流路26に新たな反応器を追加することでさらに精度の良い操作ができる。例えば反応器1で生成した物質に対して新たな試薬を流路25から注入し、流路26内で化学反応をおこなう。さらに、原料と注入液がそれぞれ油相と水相、もしくはその逆に設定することで、抽出操作を行うことができる。具体的には、有機物の化学反応により、水への溶解度が高い物質を生成する場合、注入液を水もしくは水溶液とすることで、流路26内で生成物を水相に抽出することができる。
さらに、加熱槽11や冷却槽12は、反応器1や冷却器4に対して熱の授受ができればよいだけなので、ヒーターやクーラーをリアクタに巻き付けても良いし、反応器1や冷却器4内に流路を形成し、温水や冷水等を流しても良く、ペルチェ素子等を利用することが温度制御を制度良くすることでは望ましい。
高圧反応装置では、起動時、および停止時の運転方法に注意が必要であり、起動時は、高圧ポンプ3の起動よりも先に注入ポンプ6を起動する必要がある。例えば、反応器1の温度が所定の温度に達している場合、合流部の圧力が上昇する前に原料の送液を開始すると、加温された反応器1内で原料が沸騰してしまい、流路26から蒸気が吐出される恐れがある。したがって、高圧ポンプ3の送液後に加温する場合、もしくは反応器1の加温後に高圧ポンプ3による送液を開始する場合、注入ポンプが送液することが必須であるため、条件が揃わない時はインターロック(誤った操作や、機械の誤動作でおこる事故を防止するため、例えば、運転操作を行っている人が誤った操作をしても、正しい手順を踏まないと次に進まないようにして、誤った操作によるトラブルを防止する。)により操作が行えない構造をとることが好ましい。
停止時は、高圧ポンプ3の停止前、もしくは停止と同時に注入ポンプ6を停止してしまうと、反応器1内が減圧されるため、加温された反応器1内で原料が沸騰してしまい、流路26から蒸気が吐出される恐れがある。したがって、反応器1の温度が沸点以下に低下するまで注入ポンプを駆動し続ける必要があり、この条件を満たすように、インターロックにより、注入ポンプを停止できないようにする。
さらに、起動,停止時の圧力を維持するため、狭小流路を持たないストップバルブ、例えば、流路径の減少の無いボールバルブ、を流路24もしくは26に付加すれば、流路がつまることは発生しにくい。
反応器1の温度を目的温度まで変化させるときは、基本的に原料を送液する必要がないため、反応器1内の圧力を保持できれば良く、付加したストップバルブと高圧ポンプ3の間で圧力を保持する。
また、本装置の運転中は、停電や、非常時の緊急停止時は、沸騰を抑止して運転することが必要になる。したがって、停電時は、ストップバルブはノーマリークローズ(通常、電源なしで閉状態となるもの)のタイプを使用すれば良く、ポンプによる注入の場合は、無停電電源を用いればよい。また、緊急停止時も同様に、ストップバルブを閉じ、全ての電源を遮断する、もしくは注入ポンプだけを稼働したまま他の機器の電源を遮断すればよい。
図2は、他の実施形態を示す。つまり、図1の高圧反応装置と図2の高圧反応装置は対象とする化学反応が異なり、図1に示した装置では、原料タンク内には1種類の物質しか存在しない、もしくは複数の物質が存在したとしても、加熱しない限り反応が進行しない原料が使用されるのに対し図2に示した装置では、2種類以上の液体を使用し、接触しただけで反応が開始される原料が対象となる。このような反応系では、反応する温度に応じて生成する物質の種類や割合が異なるため、所定の温度まで加温してから混合する。
図2の高圧反応装置は、反応器1,原料タンク2a,2b,高圧ポンプ3a,3b,予熱器9a,9b,加熱槽11,流路21a,21b,22a,22b,29a,29b、および、反応器1から下流では図1に示した高圧反応装置と同等の構成になっている。化学反応を目的とする原料は、原料タンク2a,2bから高圧ポンプ3a,3bにより、流路21a,21b,22a,22bを通って予熱器9a,9bに送液される。原料はそれぞれ所定の温度まで昇温され、流路29a,29bを通って反応器1に供給されて混合され、化学反応が開始される。生成物が反応器1から排出された後の高圧反応装置及びその機能は、図1のものと同様である。また、使用する原料の種類が3種類以上の場合でも同様に、原料タンクから予熱器までの装置を並列に原料の種類の数分を設置させればよい。
図3は、さらに他の実施形態を示し、図1と比較して流路22よりも下流が異なる。マイクロリアクタと呼ばれる微少な流路を持つ反応器では、処理量を増大させるときに反応器の寸法の拡大によるスケールアップは行わず、同等品の並列化によって対処する。このとき、各反応器1に高圧ポンプ3を設置すると反応条件の制御が容易になるが、部品点数が増大するため、装置が大型になり装置の制作費も増大する。したがって低価格化及び信頼性向上を図るため、ポンプは1台とし、昇圧後に流路を分岐して各反応器に送液する。
図3においては、反応器1を5個使用した場合を仮定している。原料は原料タンク2から流路21を通って高圧ポンプ3によって流路22を通り、流路22a,22b,22c,22d,22eに分岐し、それぞれが反応器1へ供給される。加熱槽11で加熱されて反応した生成物は、それぞれ流路23を通って流路25と合流し、それぞれ流路26から生成物タンク7で回収される。
注入液は、注入液タンク5から流路27を通って、注入ポンプ6によって流路25を通り、流路25a,25b,25c,25d,25eに分岐し、それぞれが流路23の終端と合流する。したがって、合流した液体がそれぞれの流路26を通過するときの圧力損失によって、それぞれの反応器1の圧力が保持される。
分岐後の流路25a,25b,25c,25d,25eが流路26に対して十分に太い場合、合流部の圧力が一定になる。したがって、各反応器1の流量は流路22の分岐後から合流部までの圧力損失によって決定される。
それぞれ部品には製造誤差による寸法の差異があり、これに伴う圧力損失の差が発生し、各反応器間で流量差が発生する。しかし、流路25に流量調節バルブ10a,10b,10c,10d,10eを設置することにより、それぞれの流路25を通過する注入液の流量を可変に調節できる。したがって、各合流部に流入する注入液の流量を調節するので、各反応器間で発生する流量差を削減できる。
流量調節バルブは接続する前後の流路よりも狭い流路構造となるため、詰まる確率が増大するが、注入液の流量を調節することにより、生成物が流れる流路の流量を調節し、詰まる恐れを少なくすることができる。
注入液が生成物の再利用の場合は、フィルタリング後に注入すれば良く、また生成物が水相と油相の2相からなる場合は、より不純物の少ない相を選択すればよい。
また、図3では冷却器を図示していないが、図1のように冷却器を設置すればマイクロリアクタによるそれぞれの反応を安定にすることができる。さらに、原料をあらかじめ混合できない場合は、図2のように、原料タンク2から予熱器9までを並列に設置しても良い。
以上のように、連続送液式の化学反応装置となるので、反応時の内部圧力を流量によらず正確に制御できる。また、内部の圧力を送液する液体の蒸気圧以上に設定でき、反応温度を沸点以上に設定できる。
したがって、固体の溶解度があがり生産性が向上したり、反応速度の低い化学反応を大幅に促進させたり、することができる。さらに、高圧にすると、溶存する気体の量も増加するため溶存気体を用いる反応でも効率が向上する。
さらに、高温高圧という条件と混合時間の縮小という条件の相乗効果や、超臨界流体の利用で、新たな化学反応が起こる可能性も増大することから、新物質の合成や新規合成方法の発見に貢献することができる。
本発明による一実施形態を示すブロック図。 本発明による他の実施形態を示すブロック図。 本発明によるさらに他の実施形態を示すブロック図。
符号の説明
1…反応器、2…原料タンク、3…高圧ポンプ、4…冷却器、5…注入液タンク、6…注入ポンプ、7…生成物タンク、8…返送ポンプ、11…加熱槽、12…冷却槽、21,22,23,24,25,26,27,28…流路。

Claims (1)

  1. 原料を保存する原料タンクと、該原料タンクと流路接続され前記原料を送液する高圧ポンプと、該高圧ポンプの下流に設置され前記原料が加圧されて供給される反応器と、該反応器を加熱して反応を促進する加熱槽と、前記生成物を流入させ回収する生成物タンクと、を備える反応装置において、
    前記加熱槽と前記生成物タンクとの間に設けられた注入口と、
    注入液を前記注入口から注入する注入ポンプと、
    を備え、かつ、
    前記反応器から前記注入口を経て前記生成物タンクに至る流路を管のみから構成し
    前記注入液の流量により前記生成物タンクへ流出する圧力を減圧すると共に、前記高圧ポンプから前記注入口までの圧力を流路内物質の飽和蒸気圧以上とし、前記生成物タンクへ流出する圧力を大気圧とすることを特徴とする反応装置。
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