JP5034777B2 - 針状体の作製方法ならびに製造方法及び針状体 - Google Patents

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Description

本発明は、微細な針状体の作製方法ならびに製造方法及びそれによる針状体に関するものである。
皮膚上から薬剤を浸透させ体内に薬剤を投与する方法である経皮吸収法は、人体に痛みを与えることなく簡便に薬剤を投与することが出来る方法として用いられているが、薬剤の種類によっては経皮吸収法で投与が困難な薬剤が存在する。これらの薬剤を効率よく体内に吸収させる方法として、ミクロンオーダーの微細な針状体(マイクロニードル)を用いて皮膚を穿孔し、皮膚内に直接薬剤を投与する方法が注目されている。この方法によれば、投薬用の特別な機器を用いることなく、簡便に薬剤を皮下投薬することが可能となる(特許文献1参照)。
この際に用いるマイクロニードルの形状は、皮膚を穿孔するための十分な細さと先端角、および皮下に薬液を浸透させるための十分な長さを有していることが必要とされ、マイクロニードルの直径は数μmから数百μm、マイクロニードル長さは皮膚の最外層である角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ、具体的には数十μmから数百μm程度のものであることが望ましいとされている。また、マイクロニードルを構成する材料としては、仮に破損したニードルが体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさない材料であることが必要であり、この材料としては医療用シリコン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等の生体適合樹脂が有望視されている(特許文献2参照)。
このような微細構造を低コストかつ大量に製造するためには、射出成型法、インプリント法、キャスティング法等に代表される転写成型法が有効であるが、いずれの方法においても成型を行うためには所望の形状を凹凸反転させた原型が必要であり、マイクロニードルのようなアスペクト比(構造体の幅に対する高さ、もしくは深さの比率)が高く、先端部の先鋭化が必要である構造体を形成するためには、その製造工程が非常に複雑となる。
上述した構造体を形成する方法として、特許文献3および4では、シリコンの単結晶材料の結晶面方位ごとのエッチングレート差を利用した製造方法が提案されている。
また、直接生体適合材料を用いた作製方法として、特許文献5では、熱溶融を用い材料を引き伸ばす操作を2回行う事で、括れ部を設けた2種類の材質で構成された針状体の作製方法が提案されている。
米国特許第6,183,434号明細書 特開2005−21677号公報 特開2002−79499号公報 特開2005−199392号公報 特開2006−346127号公報
しかしながら、前記特許文献3および4で提案される従来の方法は、結晶面方位ごとのエッチングレート差を利用するものであり、針状体を製造するには高度に精製された単結晶材料を必要とし、針状体のテーパー角度、先端角度は単結晶材料の物性により規定される。また、高アスペクト比のニードル形状を得るために、高精度のアライメントを有するダイシング、マイクロニードル側壁保護膜の形成、多種の薬液処理等の多数の工程が必要となる。また、先端部の先鋭化には、異方性ウエットエッチングの厳密な時間制御が必要となり、各工程に高度な加工技術が必要となる。また、エッチングが進むことにより脱落したマスクが周辺を汚染するという問題が発生する。
また、前記特許文献5で開示されている技術では、針状体を構成する材料を溶融させ、引き伸ばす事で針状体を作製でき、溶融材料を二種類使用することで、括れ部を持った、穿刺後に先端部が選択的に皮膚内に残留する構造を持った針状体を作製することができる。しかしながら、この方法では作製する材料は溶融可能なことが必須であり、針の高さ・形状等を変更するために、該当する材料の性質を変化させる必要がある。また、括れ部を設ける位置にも制限が存在する。
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、簡便な工程で、所望の長さを有し、先端が先鋭であり、側壁状態を制御可能な針状体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る発明は、皮膚を穿孔するための微細な針状体の製造方法において、(1)少なくとも二種類以上のエッチング特性の異なる材質の材料で構成された加工基板を作成する工程と(2)前記加工基板を、前記異なる材質の材料に対して、均等に針状に加工して針状準備体を作成する工程と(3)前記針状準備体を、前記異なる材質の材料の一方に対して、選択的にエッチング加工して、側壁の一部が内側に括れた構造および/または側壁の一部が外側に凸な構造を備える針状体を作成する工程と
を備えたことを特徴とする針状体の作製方法である。
また本発明の請求項2に係る発明は、前記エッチング特性の異なる材質の材料が、層状に構成された加工基板を用いて加工することを特徴とする、請求項1に記載の針状体の作製方法である。
また本発明の請求項3に係る発明は、前記エッチング特性の異なる材質の材料が、3種以上の材質で層状に構成された加工基板を用いて加工することを特徴とする、請求項2に記載の針状体の作製方法である。
また本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の針状体の作製方法で作製した針状体を母型とし、前記母型から複製版を作製し、前記複製版を用いて転写加工成形を行うことを特徴とする針状体の製造方法である。
また本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の針状体の作製方法、または、請求項4に記載の針状体の製造方法によって製造された針状体である。
本発明の針状体の製造方法は、まず、エッチング特性の異なる少なくとも二種類の材質の材料で構成された加工基板を作成する。次に、この加工基板に対して、切削、エッチング等で均等に加工して針状準備体を作成する。その後、一方の材料を選択的にエッチング加工することで、針状体を作製することを特徴とする。すなわち、少なくとも二種類の材質の材料を含む加工基板を、例えば切削などで区別無く加工する。その後、一方の材料のみに働く、例えばウエットエッチングを行うことで、一方の材料のみが加工され、側壁の
一部が内側に凹み括れたような構造や、外側に凸な構造を持つ針状体を作製することが可能となる。
またこの時、エッチング時間を調整することで、形状の制御が可能となる。例えば長時間エッチングを行うことで、括れの程度が大きくなりより折れやすい形状にするといったことが簡便に行える。
またこの時、他方の材料を選択的にエッチングすることで、例えば一方のプロセスで凸型を作製でき、他方のプロセスでは凹型を作製するといったようなことが簡便に行える。
また本発明の針状体の他の作製方法は、3種以上の材質を層状に配置した基板を用いて、まず均等に針状に加工した後、それぞれの材質に選択的な加工を施すことで、返しと括れ両方を設けた、針の抜け落ちを防ぎかつ、所望の場所で折れるような針状体を作製することが可能となる。
また、針状体の先端部を構成している材料が、例えばドライエッチングに対応した材質であれば、等方的なドライエッチングを行う事で、複雑な側壁形状を持ち、かつ先端形状が鋭利な針状体を作製することが可能となる。
本発明の針状体の製造方法は、作製した針状体を母型とし、この母型から作製した複製型を用いて転写加工成形を行うことを特徴とする。これにより、様々な材料に製造された針状体の形状を転写することが出来る。このため、例えば、生体適合樹脂(医療用シリコン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等)に転写することで、生体に低負荷の材料を用いた針状体を製造することが可能となる。
以下、本発明の針状体の作製方法及び製造方法の一実施形態について、図面を用いて説明を行う。
まず、図1(a)に示すように、最終的に得るべき針状体を形成すべき箇所に対応した、複数の材質の材料11,12からなる加工基板101を作成する。
このとき、加工基板の材料としては、加工性の異なる二種類以上の材質で構成され、切削、プラズマエッチングなどの広い意味でのエッチング法で加工可能なものであれば良く、加工法に適する材料を適宜選択することが出来る。例えば具体的には、シリコンを母材として酸化物層を挟んだもの、あるいはSiGeを挟んだものを用いても良い。
また、3種以上の材質の材料を用いても良い。図2(a)に示すように、3種の材質の材料21,22,23を層状に組み合わせた加工基板201を使用しても良い。
次に、複数種の材質の材料から構成される加工基板を、図1(b)に示すように、均等に針状準備体に加工する。
加工する手段としては、複数種の材質の材料から構成される加工基板を均等に針状準備体に加工できればよく、テーパーブレードを用いた切削、ワイヤー加工、エッチングマスクを厚み方向に変化させたエッチング、サンドブラスト等を用いても良い。
次に、選択的な加工手段としては、特定の物質に選択的に働く方法であればよく、等方的なドライエッチング、ウエットエッチング等を用いても良い。
このとき、図1(c)のように根元付近に括れを設けることで、穿刺時に折れやすい針状体104を作製することができる。
また、選択的に加工するターゲットを変えることで凹凸を反転させる事が可能となる。このとき、図1(d)に示すように、根元近傍に凸部を設けることで、穿刺後に針が抜け落ちることを防止する、針の返しのような構造を持つ針状体105を作製することができる。
さらにまた、図2に示すように、3種以上の材質を組み合わせ、それぞれに選択的な加工を施す事で、例えば返しとくぼみを設けた、針の抜け落ちを防ぎかつ、所望の場所で折れるような針状体206を作製する事ができる。
次に、図4を用いて針状体の転写加工成形について説明を行う。上述した作製方法により得られた針状体401を母型とし、鋳型層402を形成し、複製版403を形成する。
まず、針状体401が形成された面に、複製版403を形成するための鋳型層402を形成する(図4(a))。鋳型層402の材質については、特に制限されず、複製版として機能するだけの形状追従性、後述する転写加工成形における転写性、耐久性および離型性を考慮した材質を選択することが出来る。例えば、鋳型層402の材質としてニッケルを用いても良い。この場合、ニッケル膜の形成方法としては、メッキ法、PVD法、CVD法などが挙げられる。
次に、図4(b)に示すように、針状体401と鋳型層402を分離し、複製版403を得る。
針状体401と鋳型層402を分離する方法としては、物理的な剥離力による分離または選択性エッチング法を用いることが出来る。
次に、図4(c)に示すように、複製版403に針状体材料を充填する。針状体材料は特に制限されないが、生体適合性材料である医療用シリコン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等を用いることで、生体に適用可能な針状体を形成出来る。針状体材料の充填方法についての制限は無いが、生産性の観点から、インプリント法、ホットエンボス法、射出成形法、押し出し成形法およびキャスティング法を好適に用いることが出来る。
次に、針状体材料を複製版403から離型し、図4(d)に示すように、転写成形された針状体404を得る。
このとき、複製版403の剥離性を向上させるために、針状体材料の充填前に、複製版403の表面上に離型効果を増すための離型層を形成してもよい(図示せず)。離型層としては、例えば広く知られているフッ素系の樹脂を用いることが出来る。また、離型層の形成方法としては、PVD法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法等の薄膜形成手法を好適に用いることができる。
以上より、針状体の転写加工成形を実施することが出来る。一体成形された機械的強度の高い複製版を作成することにより、同一の複製版で多量の針状体を製造することが出来るため、生産コストを低くし、生産性を高めることが可能となる。
以下に、本発明の具体的実施例を説明する。
<実施例1>
基底部近傍に括れを設けた、針状体の製造方法についての実施例を説明する。まず、基板として上部Si厚さ100μm、埋め込みSiO2層(Buried Oxide)厚さ10μmのSOI(Silicon on Insulator)ウエハ(厚み:525μm)を用意した。
まず、先端を加工した研削刃による切削加工で、SOI基材の表面に溝を形成した。その後、基板を平行移動させ前記溝のテーパー面に重なるように研削刃で溝を形成した。(図3(b)、(c))ここで先端を加工した研削刃による切削加工とは、厚みが1mmの研削刃を用い、先端面が幅200μmとなり、研削刃側壁面と傾斜面とのなす角が170°となるような研削刃を使用した。傾斜面の傾斜角度は、最終的に形成される針状体の基底部の形状を決定する。図示しないが、最終的に形成される角錐形状の針状体先端角度を20°とするために、本実施例における研削刃先端部の傾斜面の傾きは170°を選択した。
上記操作を複数回行う事で、三角断面形状を有する凸部を5本持つ基材を得た。(図3(d))
次に、前記基材を90°回転させ、同様の研削加工を行い、アレイ上に並んだ正四角錐、高さ200μm、根元幅71μmの針状準備体を得た。(図示せず)
次に、針状準備体を含む前記加工基板を、バッファードフッ酸(4%HF/20%NH4F)に15分浸漬し、基板SiO2層をエッチングしたところ、高さ200μm、根元幅71μm、基底部より100μm上方に幅10μm、内側に10μm括れた部位を持つ、図1(c)に示すような形状を得た。
<実施例2>
転写加工成形による針状体の製造法の実施例について説明する。上述した実施例1で作製された針状体に、蒸着法により膜厚300nmのニッケル層を形成し、このニッケル層をシード層としてメッキ法によりニッケルを1mm形成した。次に、濃度25wt%、液温90℃の水酸化カリウム水溶液を用いてシリコン基板を溶解させ、ニッケルからなる複製版を作製した。
この複製版を用いマルトース、デキストラン、ポリ乳酸を材料としてインプリント法により転写成型したところ、それぞれ原版と同形状の針状体が形成されていることを確認した。
本発明の針状体の製造方法は、医療のみならず、微細な針状体を必要とする様々な分野に適用可能であり、例えばMEMSデバイス、創薬、化粧品などに用いる微細な針状体の製造方法としても有用である。
本発明の針状体の作製方法の一実施形態を断面でしめす概略図である。 本発明における針状体の作製方法の他の実施形態を断面でしめす概略図である。 実施例1での溝加工を説明する概略図である。 本発明における転写加工成形を用いた針状体の製造方法を説明する概略断面図である。
符号の説明
11,12・・・(材質の異なる)材料
21、22、23・・・(材質の異なる)材料
31,32・・・(材質の異なる)材料
101、201、301・・・・・加工基板
103、204、304・・・針状準備体
104・・・凹部を設けた針状体 105、205・・・・・凸部を設けた針状体
206・・・・・凹部と凸部を設けた針状体
303・・・・・ダイシングソー
401・・・針状体(母型) 402・・・鋳型層 403・・・複製版 404・・・針状体

Claims (5)

  1. 皮膚を穿孔するための微細な針状体の製造方法において、
    (1)少なくとも二種類以上のエッチング特性の異なる材質の材料で構成された加工基板を作成する工程と
    (2)前記加工基板を、前記異なる材質の材料に対して、均等に針状に加工して針状準備体を作成する工程と
    (3)前記針状準備体を、前記異なる材質の材料の一方に対して、選択的にエッチング加工して、側壁の一部が内側に括れた構造および/または側壁の一部が外側に凸な構造を備える針状体を作成する工程と
    を備えたことを特徴とする針状体の作製方法。
  2. 前記エッチング特性の異なる材質の材料が、層状に構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の針状体の作製方法。
  3. 前記エッチング特性の異なる材質の材料が、3種以上の材質で層状に構成された加工基板を用いて加工することを特徴とする、請求項2に記載の針状体の作製方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の針状体の作製方法で作製した針状体を母型とし、前記母型から複製版を作製し、前記複製版を用いて転写加工成形を行うことを特徴とする針状体の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の針状体の作製方法、または、請求項4に記載の針状体の製造方法によって製造された針状体。
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