(実施形態1)
本実施形態の微小電気機械スイッチは、例えば高周波信号の伝送に使用されるMEMSスイッチであり、図1および図2に示すように、ベース基板7の一表面側(図1における上面側)に形成された可動接点支持台1を備える。この可動接点支持台1は、厚み方向(図1における上下方向)の一面側(図1における上面側)に可動接点2が設けられた台部10と、当該台部10に一端が固定されるとともに他端がベース基板7に固定され台部10をその厚み方向に沿った方向に移動自在に支持する可撓性を有する複数本(本実施形態では3本)の支持アーム部11を備える。さらに、本実施形態の微小電気機械スイッチは、台部10の上記一面側において可動接点2に対向配置された一対の固定接点3と、台部10を一対の固定接点3側(図1における上側)に移動させる駆動部4とを備える。なお、ベース基板7は、例えば絶縁材料(例えばセラミックスやガラスなど)により形成され、上記一表面側に可動接点支持台1が形成される。またベース基板7の上記一表面は平坦な面としている。
可動接点支持台1は、弾性および絶縁性を有する材料(例えばノンドープのポリシリコン)により形成される。そのため、台部10および支持アーム部11それぞれは可撓性を有する。
台部10は、図2(b)に示すように、真円(正円)の円盤状に形成される。可動接点2は円形状のものであって、台部10の中央部に形成される。また可動接点2の外周形状と台部10の外周形状とは同心円としている。支持アーム部11は、ベース基板7の上記一表面に立設された立設片11aと、立設片11aの先端部(図1における上端部)と台部10の縁部とを一体に連結する腕片11bとを一体に備える。本実施形態の微小電気機械スイッチにおいては、腕片11bの長さ方向と立設片11aの長さ方向とは直交している。
ところで、腕片11bの長さ方向(長手方向)は、図2(b)に示すように、台部10の厚み方向に直交する面内(以下、「直交面内」と略す)において、すなわち平面視において可動接点2(可動接点2の中心)を中心とする円C(図2(a)参照)の径方向(台部10の径方向に等しい方向)に沿った方向と一致させている。また、上記直交面内において隣接する支持アーム部11間の角度(隣接する腕片11b間の角度)は、いずれも等しく120度である。
このような可動接点支持台1は、例えばベース基板7の上記一表面側に、犠牲層(図示せず)を形成し、その後に可動接点支持台1の基礎となる絶縁層(図示せず)を上記犠牲層を覆う形に形成し、さらにその後にフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して上記絶縁材料層を所望の形状にパターニングし、最後に上記犠牲層を除去することによって形成することができる。なお、上述した可動接点支持台1の形成方法はあくまでも一例であり、周知のマイクロマシニング技術などにより形成してもよい。また、可動接点支持台1の材料は上述したノンドープのポリシリコンに限定されず、弾性を有する金属材料を用いてもよい。この場合、表面には絶縁層を形成する必要がある。
ところで、可動接点支持台1におけるベース基板7側とは反対側(図1における上側)には、上述の一対の固定接点3が形成された固定接点形成基板8が配置される。固定接点形成基板8は、例えば、絶縁性基板(一例としてはガラス基板)により形成される。
固定接点形成基板8の厚み方向(図1における上下方向)における一面側(ベース基板7との対向面側)に、上述の一対の固定接点3が形成される。固定接点3は、図2(c)に示すように、帯状(長尺の矩形板状)に形成されており、長さ方向(長手方向)の一端部が台部10の厚み方向の一面側において可動接点2に対向配置される。また、各固定接点3の長さ方向は同方向であり、かつ上記円Cの径方向に沿った方向と一致している。本実施形態において、一対の固定接点3の一方は入力用の信号線、他方は出力用の信号線として用いられる。各固定接点3は、固定接点形成基板8に貫設された貫通孔8aの内側に形成された貫通孔配線8bによって、固定接点形成基板8の厚み方向の他面側(図1における上面側)に形成した導体パターン8cに接続される。
なお、固定接点形成基板8には、固定接点形成基板8をベース基板7の上記一表面より所定距離だけ離間した位置に配置するための脚部(図示せず)が備えられており、当該脚部の先端面がベース基板7に接合される。上記脚部とベース基板7との接合は、共晶接合やフリット接合により行うことができる。この他、固定接点形成基板8とベース基板7との材料選択により、陽極接合や、表面活性化接合なども利用可能である。なお、固定接点形成基板8の代わりに、ベース基板7との間で可動接点支持台1および駆動部4を収納する収納凹所を有するカバー(図示せず)を採用してもよい。このようなカバーを用いれば、可動接点2と固定接点3との間に異物が挟まってしまうことなどを防止できる。このようなカバーを用いる場合、固定接点3は上記カバーの収納凹所の内底面(可動接点支持台1との対向面)に形成すればよい。また、固定接点形成基板8を採用した場合でも、微小電気機械スイッチをパッケージ(図示せず)内に封入すれば同様の効果を得ることが可能である。
駆動部4は、図1および図2に示すように、一端側が台部10の厚み方向の他面側(図1における下面側)において台部10に対向配置され、他端側がベース基板7の上記一表面側においてベース基板7に固定された可撓性を有する同形状の3本の押圧アーム部50を有した押圧部5を備える。また、駆動部4は、給電されると3本の押圧アーム部50を変形させて押圧アーム部5に台部10の厚み方向の上記他面を押圧させるアクチュエータ6を備える。すなわちアクチュエータ6は、給電されると押圧部5を変形させて押圧部5に台部10の上記他面を押圧させる。
押圧アーム部50は、弾性および絶縁性を有する材料(例えばノンドープのポリシリコン)により、ベース基板7の上記一表面に立設された立設片50aと、立設片50aの先端部より台部10の厚み方向に直交する方向に延出された帯状(長尺の矩形板状)の押圧片50bとを一体に備えた断面L字状に形成される。本実施形態の微小電気機械スイッチにおいては、押圧片50bの長さ方向と立設片50aの長さ方向とは直交している。
3本の押圧アーム部50それぞれの上記一端側(押圧片50bにおける立設片50a側とは反対側)には、台部10押圧用の柱状(ここでは円柱状)の突起51が1つずつ形成されている(すなわち押圧部5において台部10の上記他面と対向する部位には、3つの突起51が形成される)。このような突起51は絶縁性を有する材料により形成することが好ましく、例えばポリイミドやノンドープのポリシリコンなどを利用することができる。また、3つの突起51は同形状であり、3本の各押圧アーム部50の上記一端側の同じ位置に形成される。
ところで、押圧アーム部50の押圧片50bの長さ方向(長手方向)は、図2(a)に示すように、上記円Cの径方向に沿った方向と一致させている。また、上記直交面内において隣接する押圧アーム部50の中心線間の角度(隣接する押圧片50bの中心線間の角度)θは、いずれも等しくしている。そのため、上記直交面内において隣接する押圧アーム部50間の角度も全て等しい。なお、本実施形態の微小電気機械スイッチは3本の押圧アーム部50を有するため、角度θは120度である。つまり、押圧部5の形状は、上記直交面内においては3回転対称である。
このように本実施形態の微小電気機械スイッチにおいては、3本の押圧アーム部50は、いずれも同じ形状を有し、上記円Cの径方向に沿う形に配置され、かつ上記直交面内において隣接する押圧アーム部50間の角度θはいずれも120度であって等しい。また、3つの突起51は、それぞれ3本の押圧アーム部50の上記一端側の同じ位置に形成されているから、3つの突起51は、上記直交面内において可動接点2を中心とする同一円周上に位置し、当該円周上における突起51間の距離はいずれも等しい。
上述した押圧アーム部50および突起51は、例えば、ベース基板7の上記一表面側に、犠牲層(図示せず)を形成し、その後に押圧アーム部50の基礎となる第1絶縁層(図示せず)を形成し、さらにその後に突起51の基礎となる第2絶縁層(図示せず)を形成してから、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して上記第1および第2絶縁層それぞれを所望の形状にパターニングし、最後に上記犠牲層を除去することによって形成することができる。なお、第1絶縁層と第2絶縁層とは同一の絶縁層としてもよい。また、押圧アーム部50および突起51の形成方法はあくまでも一例であり、周知のマイクロマシニング技術などにより形成してもよい。
アクチュエータ6は、図1および図3に示すように、押圧アーム部50における固定接点3側、すなわち押圧アーム部50の押圧片50bの厚み方向一面側(図1における上面側)に形成された下部電極60aと、当該下部電極60aにおける押圧アーム部50側とは反対側(図1における上側)に形成された圧電材料部61と、圧電材料部61における下部電極60a側とは反対側(図1における上側)に形成された上部電極62aとを備える。本実施形態では、アクチュエータ6は、3本の押圧アーム部50それぞれに設けられる。
下部電極60aは、押圧片50bにおける立設片50a側の端部に形成される。ここでベース基板7において、各立設片50aが形成される部位の近傍には、第1の絶縁薄膜63が形成されており、この第1の絶縁薄膜63におけるベース基板7側とは反対側(図1における上面側)に、下部電極60aに電位を与えるための導体パターン60bと上部電極62aに電位を与えるための導体パターン62bとが形成される。下部電極60aおよび上部電極62aそれぞれは、立設片50aに形成された接続部60c,62cにより導体パターン60b,62bにそれぞれ接続される。なお、導体パターン62bおよび接続部62cは、下部電極60a等との絶縁性を確保するために第2の絶縁薄膜64上に形成される。
ところで、圧電材料部61は、圧電セラミックス(一例としてはPZT)などの圧電材料(圧電体)により形成された矩形状の薄膜である。この圧電材料部61は、厚み方向に沿った方向が分極軸方向となるように分極処理される。アクチュエータ6は、主として圧電体の横効果を利用したものであり、下部電極60aと上部電極62aとの間に駆動電圧を印加するにあたっては、圧電材料部61の自発分極が増加するように、駆動電圧を印加する。これによって、圧電材料部61は、厚み方向において伸び、厚み方向に直交する方向において縮むことになる。したがって、アクチュエータ6を駆動(すなわち、下部電極60aと上部電極62aとの間に所定の駆動電圧を印加)した際には、押圧アーム部50の上記一端側が固定接点3側に移動するように、押圧片50bが変形(湾曲)することになる。なお、本実施形態では、アクチュエータ6として、いわゆるユニモルフ型の圧電アクチュエータを例示しているが、これに限定する趣旨ではない。例えばアクチュエータ6としては、バイモルフ型の圧電アクチュエータを採用することができ、この場合、ユニモルフ型よりも押圧片50bの変形量を大きくすることが可能である。また、上記の例では、圧電材料部61の材料として鉛系圧電材料の一種であるPZTを例示しているが、鉛系圧電材料であれば、PZTに限らず、例えば、PZTに不純物を添加したものや、PMN−PZTなどを採用してもよい、また、圧電材料部61の材料は、鉛系圧電材料に限らず、例えば、KNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)や、KN(カリウムナトリウム)、NN(ニオブナトリウム)、KNNに不純物(例えば、Li、Nb、Ta、Sb、Cuなど)を添加したものなどの鉛フリーの圧電材料(無鉛圧電セラミックス)を採用することができる。ここで、上述の鉛系圧電材料や、KNN、KN、NNなどは、AlNやZnOなどに比べて圧電定数が大きい。そのため、圧電材料部61の材料として、上述の鉛系圧電材料や、KNN、KN、NNなどを用いれば、駆動電圧の値が同じであっても、AlNやZnOなどを用いた場合に比べれば、押圧片50bの変形量を大きくすることができる。また、圧電材料部61の材料としてKNNなどの鉛フリーの圧電材料を用いれば、環境負荷を低減することができる。
このようなアクチュエータ6の製造方法について簡単に説明する。まず、ベース基板7に第1の絶縁薄膜63および可動接点支持台1を形成した後に、ベース基板7の上記一表面側にスパッタ法や化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;CVD)法などを用いて下部電極60aの基礎となる金属層を形成する。その後に、当該金属層をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して所望の平面形状にパターニングすることで、下部電極60a、導体パターン60b、および接続部60cを形成する。なお、下部電極60aの基礎となる金属層としては、例えば、Pt層や、Au層などを採用することができる。また、当該金属層としては、Pt/Ti層などの複層構造のものを採用することができる。
下部電極60aを形成した後には、ベース基板7の上記一表面側に、スパッタ法や、CVD法などを利用して圧電材料部61の基礎となる圧電体層を形成する。その後に当該圧電薄膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して所望の平面形状にパターニングすることによって圧電材料部61を形成する。
圧電材料部61を形成した後には、ベース基板7の上記一表面側に、第2の絶縁薄膜64を形成し、この後に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して第2の絶縁薄膜64の不要部分を除去して、図1,2に示す構造の第2の絶縁薄膜64を得る。なお、第1の絶縁薄膜63は第2の絶縁薄膜64と同様の方法により形成することができる。また、第1の絶縁薄膜63や第2の絶縁薄膜64の材料としては、SiO2などを採用することができる。
第2の絶縁薄膜64を形成した後には、ベース基板7の上記一表面側にスパッタ法やCVD法などを用いて上部電極62aの基礎となる金属層(例えば下部電極60aの基礎となる金属層と同様の材料が用いられる)を形成する。その後に、当該金属層をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して所望の平面形状にパターニングすることで、上部電極62a、導体パターン62b、および接続部62cを形成し、これによって、図1,2に示すアクチュエータ6が得られる。
以上述べたように本実施形態の微小電気機械スイッチは、厚み方向の一面側に可動接点2が設けられた台部10および当該台部10に一端が固定されるとともに他端がベース基板7に固定され台部10を厚み方向に沿った方向に移動自在に支持する可撓性を有する支持アーム部11を備えた可動接点支持台1と、台部10の上記一面側において可動接点2に対向配置された一対の固定接点3と、台部10を一対の固定接点3側に移動させる駆動部4とを備える。そして、駆動部4は、台部10の厚み方向の他面側において台部10に対向する形でベース基板7に固定された可撓性を有する押圧部5と、給電されると押圧部5を変形させて押圧部5に台部10の上記他面を押圧させるアクチュエータ6とを有しており、押圧部5において台部10の上記他面と対向する部位には、台部押圧用の複数の突起51が形成されている。
上述した本実施形態の微小電気機械スイッチは、アクチュエータ6を駆動していない常時は、可動接点2と各固定接点3とがそれぞれ離間しており、一対の固定接点3間は遮断される。そして、アクチュエータ6を駆動すると、上述したように押圧アーム部50の押圧片50bが変形して、突起51が台部10の上記他面を押圧する(アクチュエータ6は、突起51により台部10の上記他面を押圧させる形に各押圧アーム部50を変形させる)。これによって、台部10は一対の固定接点3側に近付くように移動させられて、台部10の可動接点2が一対の固定接点3に接触して一対の固定接点3間が導通する。この後に、アクチュエータ6の駆動を停止すると、押圧アーム部50が変形前の形状に復帰する。この場合、台部10の上記他面は突起51により押圧されなくなるので、台部10はベース基板7側に移動する。その結果、可動接点2が一対の固定接点3より離間して、一対の固定接点3間が遮断される。
このように本実施形態の微小電気機械スイッチによれば、駆動部4は、押圧部5により台部10を押圧することによって、台部10の可動接点2を一対の固定接点3に接近する方向に移動させるので、アクチュエータ6と可動接点2との間の寄生容量を低減できるから、アイソレーション特性を向上することができ、ノイズの低減が図れる。しかも、押圧部5は複数の突起51により台部10を押圧するので、台部10と押圧部51との接触状態が安定し、その結果、台部10を安定して所望の位置まで移動させることができるから、可動接点2と固定接点3とを安定して接触させることができるようになって、高周波特性などの悪化を防止できる。
また、台部10を押圧する押圧アーム部50は同じ形状であり、上記円Cの径方向に沿う形に配置されるとともに上記直交面内において隣接する押圧アーム部50間の角度がいずれも等しく、しかも押圧アーム部50の数が3本であるので、押圧アーム部50の押圧によって台部10に作用するモーメントを、1本ではなく2本の押圧アーム部50で相殺することができるから、押圧アーム部50の数が2本や4本である場合に比べれば、台部10の移動時に台部10が傾き難くなって(換言すれば可動接点2が傾き難くなって)、固定接点3と可動接点2とを均等な接圧で接触させることができる。その結果、高周波特性の悪化や、スティッキングの発生などを抑制することができる。
さらに、本実施形態におけるアクチュエータ6は圧電効果を利用したものであり、駆動時に圧電材料部61には電流が流れないから、上記特許文献1に示すような電熱アクチュエータを使用する場合に比べれば、微小電気機械スイッチの駆動に必要な電力を低減することができる。
ところで、この種の微小電気機械スイッチとしては、静電引力を利用して接点の開閉を行うものが普及している。このような微小電気機械スイッチは高周波信号の伝送に比較的良く使用されるが、高周波信号の伝送に用いる場合には接点開放時の信号線間の信号の漏れが問題となる。このような信号の漏れを抑制して、アイソレーション特性を向上する方法としては、接点開放時における可動接点部(可動接点に相当)と信号線(固定接点に相当)との距離を遠く(可動接点と固定接点との間隔を大きく)することが提案されている。しかしながら、良好なアイソレーション特性が得られる程度に可動接点と固定接点との間隔を大きくした場合、上述したような静電引力を利用する微小電気機械スイッチでは、駆動時に、可動電極と固定電極との間に比較的大きな電圧(一例としては30V)を印加しなければならない。そのため、上述したような静電引力を利用する微小電気機械スイッチでは、アイソレーション特性の向上を図れば消費電力が増大し、低消費化を図ろうとすればアイソレーション特性の十分な向上が図れない。つまり、アイソレーション特性の向上と消費電力の低減とを両立することが難しかった。
これに対して、本実施形態の微小電気機械スイッチでは、アクチュエータ6として、静電引力を利用するものではなく、圧電効果を利用するものを採用している。圧電効果を利用するアクチュエータ6は、静電引力を利用するものに比べて、消費電力を低く抑えながらも台部10の変位量を大きくすることができる。例えば、静電引力を利用するものでは30V程度の電圧が必要である場合でも、圧電効果を利用するものでは、5〜10V程度の電圧で接点を閉じることが可能になる。
したがって、本実施形態の微小電気機械スイッチによれば、従来例のように静電引力を利用して接点の開閉動作を行うものに比べれば、消費電力を低く抑えながらも、可動接点2と固定接点3との間隔を大きくして信号の漏れを低減することができ、アイソレーション特性の向上が図れ、ノイズの低減を図ることができる。
ところで、図1および図2に示す押圧部5は、3本の押圧アーム部50が別体となったものであるが、図4(a)に示すように、3本の押圧アーム部50が一体に形成されていてもよい。図4(a)に示す押圧部5は、3本の押圧アーム部50と、3本の押圧アーム部50を一体に連結する可撓性を有する連結部52とを備える。連結部52は、長さ方向の一端が押圧アーム部50の立設片50a側とは反対側の端部に連結された複数本の連結腕片52aを備える。複数本の連結腕片52aの長さ方向の他端同士は上記円Cの中心位置で一対に連結される。また連結腕片52aの長さ方向は、自身が連結された押圧アーム部50の長さ方向に一致している。このような連結部52は、上述したように押圧アーム部50を形成する際に、押圧アーム部50と同時に形成することができる。
本実施形態における押圧部5は、例えば、ベース基板7の上記一表面側に、犠牲層(図示せず)を形成し、その後に押圧アーム部50および連結部52の基礎となる第1絶縁材料層(図示せず)を形成し、さらにその後に突起51の基礎となる第2絶縁材料層(図示せず)を形成してから、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して上記第1および第2絶縁材料層それぞれを所望の形状にパターニングし、最後に上記犠牲層を除去することによって形成することができる。
図4(a)に示す押圧部5では、3本の押圧アーム部50が連結部52により一体に連結されているから、アクチュエータ6の駆動力の違いや押圧片50bの寸法誤差などによって、押圧片50bの変形量の差が大きい場合でも、連結部52の伸長により変形量の差を吸収することができる。そのため、台部10が傾いた状態で移動してしまうことを抑制することができる。ただし、連結部52を伸長させる必要が生じるため、アクチュエータ6で発生させる必要がある駆動力が増加する(アクチュエータ6で消費される電力が増加する)。
かかる点を考慮すれば、図4(b)に示すように、連結部52の各連結腕片52aの幅を狭めて連結部52全体の剛性を低くし、これによって連結部52を伸長し易くするようにしてもよい。このような図4(b)に示す押圧部5によれば、図4(a)に示すものに比べて、連結部52を変形させ易くすることができるから、駆動時にアクチュエータ6で消費される電力を低減することができる。
また、固定接点形成基板8には、一対の固定接点3とともに可動接点2に接触されるダミー接点(図示せず)を形成するようにしてもよい。
このようなダミー接点を形成すれば、可動接点2が一対の固定接点3だけではなくダミー接点とも接触するので、一対の固定接点3のみと接触する場合に比べれば、可動接点2と固定接点3との接触状態が安定するから、固定接点2と可動接点3との接圧をより均等にすることができる。その結果、高周波特性の悪化や、スティッキングの発生などをさらに抑制することができる。
特に、ダミー接点を形成するにあたっては、ダミー接点を固定接点3と同形状とし、その長さ方向を、上記円Cの径方向に沿った方向と一致させることが好ましい。また、上記直交面内において隣接する固定接点3間の角度、および固定接点3と上記ダミー接点との間の角度を、いずれも等しくする(つまり120度にする)ことが好ましく、さらに、上記直交面内においては、一対の固定接点3および上記ダミー接点における可動接点2の中心からの距離をいずれも等しくすることが好ましい。このようにすれば、さらに可動接点2と固定接点3との接触状態を安定にすることができる。
また、一対の固定接点3およびダミー接点は、上記直交面内における押圧アーム部50との角度が60度となるように配置し、台部10の厚み方向において3本の押圧アーム部50のいずれとも対向しないようにすることが好ましい。このようにすれば、固定接点3またはダミー接点と押圧アーム部50との容量結合を防止することができる。
なお、上述した構成の微小電気機械スイッチは、あくまでも本発明の一実施形態に過ぎないものであって、本発明の技術的範囲を上記構成のものに限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更は当然に行える。例えば、押圧アーム部50の数は3本に限定されず、3の整数倍(3n;ただしnは1以上の整数)の数であればよい。このようにした場合においても、本実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態においては、アクチュエータ6の下部電極60aは、押圧アーム部50における固定接点3側(押圧片50bの厚み方向の一面側)に形成してあるが、押圧アーム部50における固定接点3側とは反対側(押圧片50bの厚み方向の他面側)に形成してもよい。また、押圧アーム部50における固定接点3側とその反対側との両方に下部電極60aを形成する(押圧片50bの厚み方向の両側にアクチュエータ6を形成する)ようにしてもよい。
また、固定接点3は必ずしも固定接点形成基板8に形成する必要はない。例えば、固定接点3は、ベース基板7の上記一表面側に形成した固定接点支持台(図示せず)上に形成するようにしてもよい。なお、固定接点支持台は、可動接点支持台1の形成と同時に形成することが可能である。また、固定接点3をベース基板7の上記一表面に直接的に形成することもできる。このような固定接点3は、例えばベース基板7の上記一表面側に犠牲層(図示せず)を形成し、その後に固定接点3の基礎となる金属層(図示せず)を上記犠牲層を覆う形に形成し、さらにその後にフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを利用して当該金属層を所望の形状にパターニングし、最後に上記犠牲層を除去することなどにより形成することができる。
また、本実施形態では、台部10におけるベース基板7側とは反対の面側(図1における上面側)を、可動接点2を形成する台部10の厚み方向の一面側としたが、台部10においてベース基板7と対向する面側(図1における下面側)を台部10の厚み方向の一面側としてもよい(すなわち、可動接点2は、図1における台部10の下面に形成してもよい)。このように可動接点2を図1における台部10の下面に形成した場合、一対の固定接点3は、台部10におけるベース基板7の対向面側において可動接点2に対向配置される。また、駆動部4の押圧部5は、台部10の厚み方向の他面側(台部10におけるベース基板7側とは反対側であり、図1における上面側)において台部10に対向する形でベース基板7に固定され、アクチュエータ6は、押圧部5の突起51が台部10の上記他面を押圧するように構成される(すなわち、押圧片50bの先部がベース基板7に接近するように押圧片50bを変形させる)。このように構成を変更した場合であっても、上記と同様の効果を得ることができる。以上述べた点は後述する実施形態2,3においても同様である。
(実施形態2)
本実施形態の微小電気機械スイッチは、押圧部5およびアクチュエータ6の構成(すなわち駆動部4の構成)が実施形態1と異なっており、その他の構成は実施形態1と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における押圧部5では、図5(a)に示すように、3本の押圧アーム部50それぞれの押圧片50bが、立設片50a側の端部に向かうにつれて幅広となる扇状(図示例では中心角が120度の扇状)に形成されている。また、本実施形態における押圧部5は、上記円Cの周方向に沿った方向で、隣接する押圧アーム部50同士を一体に連結する連結片53を備える。この連結片53は、押圧片50bにおける立設片50a側の端部において押圧アーム部50同士を一体に連結する。
本実施形態におけるアクチュエータ6の下部電極60a(図5(a)参照)は、押圧片50bだけではなく、連結片53における固定接点3(図1(a)参照)側にも形成され、押圧片50b上に形成された下部電極60aと連結片53上に形成された下部電極60aとは上記円Cの周方向に沿った方向において一体に連結される。すなわち、下部電極60aは上記円Cの周方向に沿って押圧部5を一周する形の円環状に形成される。下部電極60aに積層された圧電材料部61(図5(a)参照)、および圧電材料部61に積層された上部電極62a(図5(a)参照)も、下部電極60aと同様に円環状に形成される。そのため、本実施形態におけるアクチュエータ6では、各押圧アーム部50に形成された導体パターン60b同士は電気的に接続され、導体パターン62b同士も電気的に接続される。
このような本実施形態の微小電気機械スイッチによれば、実施形態1と同様の効果を奏する上に、実施形態1のように押圧アーム部50毎にアクチュエータ6が形成されている場合に比べれば、圧電材料部61の総面積を増えて、アクチュエータ6の駆動力が大きくなるから、押圧アーム部50の変形量(押圧片50bの変形量)を増すことができる。なお、本実施形態における押圧部5にも図5(b)に示すように連結部52を設けてもよい。連結部52については実施形態1で述べたとおりであるから説明を省略する。
(実施形態3)
図6および図7に示す本実施形態の微小電気機械スイッチは、主として駆動部4のアクチュエータ6の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成は実施形態1と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態におけるアクチュエータ6は、実施形態1とは異なり、圧電効果を利用した主駆動手段6Aと、静電引力を利用した副駆動手段6Bとを有するハイブリッド型のものである。なお、主駆動手段6Aは、図6に示すように、下部電極60aと、圧電材料部61と、上部電極62aとを備えるものであり、これは実施形態1で述べたアクチュエータ6に相当するから説明を省略する。
副駆動手段6Bは、押圧アーム部50における固定接点3側、すなわち押圧アーム部50の押圧片50bの厚み方向一面側(図6における上面側)に形成された可動電極60dと、台部10の厚み方向(図6における上下方向)において可動電極60dと重なる形に配置された固定電極65とを備える。
可動電極60dは、押圧片50bの中腹部に形成される。また、可動電極60dは、下部電極60aに電気的に接続される。そのため、本実施形態におけるアクチュエータ6では、可動電極60dと下部電極60aとで導体パターン60bを共用している。この場合、可動電極60dは、実施形態1で述べたようにして下部電極60aを形成する際に、下部電極60a、導体パターン60b、接続部60cと同時に形成することができる。また、可動電極60dにおける押圧アーム部50側とは反対側の面(図6における上面)は、第3の絶縁薄膜66により被覆される。これによって、可動電極60dと固定電極65との接触が防止される。
固定電極65は、可動接点支持台1とは別体となる形でベース基板7に形成された固定電極支持台9に設けられている。固定電極支持台9は、ベース基板7の上記一表面側において可動電極60dと台部10の厚み方向において重なる形に配置された矩形状の支持板90と、支持板90の長手方向両側より延出され支持板90をベース基板7の上記一表面と所定距離を隔てた位置に支持する脚部91とを一体に備える。このような固定電極支持台9は弾性および絶縁性を有する材料(例えばノンドープのポリシリコン)により形成される。固定電極65は、支持板90におけるベース基板7側の面(図6における下面)に形成される。一方、支持板90におけるベース基板7側とは反対側の面(図6における上面)には、固定電極65に電位を与えるための導体パターン92が形成される。この導体パターン92は、支持板90に貫設した貫通孔90aの内側に形成された貫通孔配線93により固定電極65に電気的に接続される。
上述した第2の駆動手段6Bを駆動するにあたっては、導体パターン60bと導体パターン92との間に所定の駆動電圧を印加すればよく、これによって可動電極60dと固定電極65との間に静電引力が発生して、可動電極60dが固定電極65に引き寄せられる。その結果、押圧アーム部50の押圧片50bは、突起51が台部10に接近するように変形させられる。
上述した本実施形態の微小電気機械スイッチは、アクチュエータ6を駆動していない常時は、可動接点2と各固定接点3とがそれぞれ離間しており、一対の固定接点3間は遮断される。そして、接点を閉じる際には、まずアクチュエータ6の主駆動手段6Aを駆動して、台部10を一対の固定接点3側に移動させて、可動接点2を一対の固定接点3に接触させる。その後に、副駆動手段6Bを駆動し、可動接点2と一対の固定接点3との接圧を高める。このように本実施形態の微小電気機械スイッチにおいては、静電引力を利用する副駆動手段6Bは、可動接点2と固定接点3との間の接圧を調整するために使用され、可動接点2の固定接点3側への移動には、圧電効果を利用する主駆動手段6Aが使用される。なお、接点を開く際には、アクチュエータ6の主駆動手段6Aおよび副駆動手段6Bの両方の駆動を停止すればよい。
以上述べた本実施形態の微小電気機械スイッチによれば、実施形態1と同様の効果を奏する上に、アクチュエータ6が、圧電材料部61の変形を利用してアーム部11を変形させる主駆動手段6Aと、静電引力を利用してアーム部11を変形させる副駆動手段6Bとを有しているので、主駆動装置6Aにより台部10を移動させることで、静電引力を利用する場合に比べてアクチュエータ6の消費電力を低く抑えながらも台部10の変位量を大きくすることができるから、可動接点2と固定接点3との間隔を大きくできて信号の漏れを低減することができ、アイソレーション特性の向上が図れる一方、副駆動装置6Bにより可動接点2と固定接点3との接圧を所望の値に設定することができる。
また、固定電極65は、可動接点支持台1とは別体となる形でベース基板7に形成された固定電極支持台9に設けられているので、副駆動手段6Bの可動電極60dと固定電極65との間に駆動電圧を印加する際に流れる電流が可動接点2に漏れることを抑制できるから、ノイズの発生を抑制することができる。固定電極65は、可動接点支持台1とは別体の固定電極支持台9に設けることが好ましいが、アイソレーション特性が問題ない場合には、台部10に固定電極65を形成するようにしてもよく、この場合は、固定電極支持台9を形成しなくて済むから、微小電気機械スイッチの小型化および低コスト化を図ることができる。