JP5032721B2 - 導電性電極材料、電極部品、静電偏向器及び荷電粒子ビーム露光装置 - Google Patents

導電性電極材料、電極部品、静電偏向器及び荷電粒子ビーム露光装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性セラミックス材料とその利用に関する。さらに詳しく述べると、本発明は、導電性セラミックス材料、そのようなセラミックス材料から形成された電極部品、かかる電極部品から構成された静電偏向器、そしてかかる静電偏向器を備えた荷電粒子ビーム露光装置に関する。本発明は、半導体装置やその他のデバイスの製造に有利に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、例えばDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)等のデバイスにおいては、年ごとに高集積化が進み、最近では記憶容量が1ギガビット(1Gbit)のDRAMも出現している。また、この1Gbit、もしくは4GbitのDRAMの作製には、荷電ビーム露光技術が不可欠と考えられている。現在まで、配線寸法が小さくなるにつれて、リソグラフィの光源は、水銀ランプのg線, i線から、KrF、ArFレーザへと波長が短くなる方向へ移行しているが、より波長の短い荷電ビーム、典型的には電子ビームを光源として使用する電子ビーム(EB)露光技術では、0.05μm以下の微細なパターンを0.02μm以下の位置合わせ精度で容易に形成可能であるからである。
【0003】
EB露光装置は、図1を参照して以下に詳細に説明するように、LaB6等をビーム源として使用し、ビーム源から発生した熱電子を、種々のフィルタ、マスク、ディフレクタで電子の位置、形状等を変化させた後、被処理基板の表面に形成されたレジスト膜に直接的にパターン描画を行う構成を採用している。電子の位置を変化させるためには、磁場による偏向と、電場による偏向の、2種類の偏向方法が使用される。また、磁場偏向はミリ単位の主偏向領域で用いられ、磁場偏向は100ミクロン以内の副偏向領域で用いられる。
【0004】
ところで、従来のEB露光装置では、被処理基板上にレジスト膜が形成されているため、EB露光に伴いレジスト膜の一部が飛散することが避けられず、その結果露光作業を繰り返しているうちに、EB露光装置内に配置された静電偏向器を構成する偏向電極上に、飛散したレジスト膜に起因する有機膜が形成されることが避けられない。偏向電極上の有機膜は一般に絶縁膜であり、チャージアップを生じやすい。
【0005】
そこで、従来のEB露光装置では、所定の運転時間が経過した後、内部に装備された鏡筒内において酸素プラズマを発生させ、偏向電極上に堆積した有機絶縁膜を除去することが行われている。しかし、EB露光装置では、静電偏向器は電磁レンズや電磁偏向器が形成する磁界内において使われるため、静電偏向器の偏向電極を通常の、比抵抗(固有電気抵抗値)の低い金属により形成した場合には、偏向電極中に渦電流が発生し、かかる渦電流が形成する磁界が、静電偏向器により偏向される電子ビームの位置を狂わせてしまうという問題が発生する。このため、静電偏向器の偏向電極は、室温で1×10-1Ω・cm程度の固有電気抵抗値を有するのが好ましく、一般にAl23 ,TiC等の導電性セラミックス材料あるいはかかるセラミックス材料よりなる基体の上にAu,Pt等の薄い金属膜を被着させた複合材料より構成されている。
【0006】
しかし、例えばAl23 ,TiC等の導電性セラミックス材料を静電偏向器の偏向電極として使用した場合、先に説明した酸素プラズマによるクリーニング処理を行うと、偏向電極中に含まれるTiが酸化し、その結果偏向電極の固有電気抵抗値が変化してしまう。また、セラミックス材料よりなる基体を金属膜で覆った構成の偏向電極では、金属膜がスパッタリングを受けてエッチングされ、その結果やはり偏向電極の固有抵抗値が変化してしまう。したがって、偏向電極は、酸素プラズマ処理に耐え得る材料で構成され、酸素プラズマ処理後も固有抵抗値の変化が見られず、表面が酸化されたりエッチングされたりしないことが必要である。
【0007】
さらに、特開平9−293472号公報には、静電偏向器の偏向電極として炭素材料を使用した例が開示されている。炭素材料を偏向電極として使うことにより、酸素プラズマ中におけるクリーニング処理を行っても金属膜の消耗の問題は解決される。しかし、かかる従来の構成では炭素電極自体が酸素プラズマ中での処理により消耗してしまう。
【0008】
上述のような理由で、従来のEB露光装置では、使われている静電偏向器を頻繁に交換する必要があった。EB露光装置は、このように寿命が短いばかりでなく、静電偏向器の交換は、面倒な電子光学系のアラインメント等の調整工程を伴うものであり、その結果かかるEB露光装置を使って行う半導体装置の製造工程において、スループットの実質的な低下を避けることができない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来の技術の問題点を解決して、室温で1×10-1Ω・cm程度の固有電気抵抗値を有し、酸素プラズマ処理によってその固有抵抗値が低下せしめられず、また、その表面が酸素プラズマ処理によって悪影響を被ることがない導電性セラミックス材料を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、また、荷電粒子ビーム露光装置に電極材料として使用した時に、スループットの向上と装置の長寿命化を同時に達成し得る導電性セラミックス材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、室温で1×10-1Ω・cm程度の固有電気抵抗値を有し、酸素プラズマ処理によってその固有抵抗値が低下せしめられず、また、その表面が酸素プラズマ処理によって悪影響を被ることがない電極部品を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の目的は、荷電粒子ビーム露光装置に搭載した時に、ビームのスポット位置を正確に、かつ迅速に動かすことができるばかりでなく、スループットの向上と装置の長寿命化を同時に達成し得る静電偏向器を提供することにある。
さらにまた、本発明の目的は、高集積化が進んだ半導体装置等の製造において微細なレジストパターンの形成に有利に使用することができるとともに、スループットを向上させ、長時間にわたって静電偏向器を交換しないで済む荷電粒子ビーム露光装置を提供することにある。
【0012】
本発明の上記した目的や、その他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その1つの面において、酸化物セラミックスを主成分とした導電性セラミックス材料であって、
酸化ルテニウム(RuO2 ),酸化レニウム(ReO2 ),酸化イリジウム(IrO2 ),そして各種のペロブスカイト酸化物、SrVO3 ,CaVO3 ,LaTiO3 ,SrMoO3 ,CaMoO3 ,SrCrO3 ,CaCrO3 ,LaVO3 ,GdVO3 ,SrMnO3 ,CaMnO3 ,NiCrO3 ,BiCrO3 ,LaCrO3 ,LnCrO3 ,SrRuO3 ,CaRuO3 ,SrFeO3 ,BaRuO3 ,LaMnO3 ,LnMnO3 ,LaFeO3 ,LnFeO3 ,LaCoO3 ,LaRhO3 ,LaNiO3 ,PbRuO3 ,Bi2 Ru27 ,LaTaO3 ,SrRuO3 ,PbRuO3 及びBiRuO3からなる群から選ばれた少なくとも1種類の酸化物粒子と、
LiF,Li3 PO4 ,Li2 CO3 ,Li2 SO4 ,Bi23 ,Biを含む複合酸化物,PbO及びPbを含む複合酸化物からなる群から選ばれた少なくとも1種類の助剤粒子とから形成されたものであることを特徴とする導電性セラミックス材料にある。
【0014】
また、本発明は、そのもう1つの面において、酸化に対して耐性を有する少なくとも1種類の金属の粒子と、少なくとも1種類の無機ガラスの粒子とから形成されたものであることを特徴とする導電性セラミックス材料にある。
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、本発明の導電性セラミックス材料からなることを特徴とする電極部品にある。
【0015】
さらにまた、本発明は、そのもう1つの面において、本発明の導電性セラミックス材料から構成された偏向電極を含んでなることを特徴とする、荷電粒子ビーム露光装置で用いられる静電偏向器にある。
さらにまた、本発明は、そのもう1つの面において、真空室と、
前記真空室内に配設された荷電粒子ビーム源と、
前記真空室内に配設され、被処理基板を担持するように適合されたステージ部材と、
前記真空室内で、前記荷電粒子ビーム源と前記ステージ部材との間に配設された電磁レンズと、
前記真空室内で、前記荷電粒子ビーム源と前記ステージ部材との間に配設された静電偏向器とを備えた荷電粒子ビーム露光装置において、
前記静電偏向器が、本発明の導電性セラミックス材料から構成される偏向電極を含んでなることを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置にある。
【0016】
本発明の導電性セラミックス材料は、酸素プラズマ処理に対して安定であり、このため荷電粒子ビーム露光装置において、クリーニングのために鏡筒内に酸素プラズマを発生させた場合にも、偏向電極の固有電気抵抗値が変化することはない。また、例えば偏向電極の固有電気抵抗値は、導電性セラミックス材料の出発物質の混合比を適当に設定することにより、渦電流を効果的に抑制できる1×10-1Ω・cm程度の値に設定することができる。
【0017】
また、本発明のセラミックス材料を用いて偏向電極を作製することにより、磁場中(40Gauss内)で0.01μm以下の位置精度を50μsec以内の短時間に得ることができる。換言すると、本発明の偏向電極を搭載した荷電粒子ビーム露光装置では、ビームの整定時間を50μsec以内に抑えることができる。
さらに、本発明の荷電粒子ビーム露光装置では、3μA/50KVの荷電粒子ビームを被処理基板に照射した時、10秒後のドリフト量を10nm以下にすることができ、さらには、その基板に30W、1Torrの酸素プラズマを20秒間にわたって照射した時、そのドリフト量を再び10nm以下におさめることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明による導電性セラミックス材料は、第1の成分と第2の成分の複合体組成物であって、大きく分けて、次のような2つの形態をとることができる。
第1の導電性セラミックス材料は、次のような成分の複合体組成物である。
少なくとも1種類の酸化物の粒子(第1の成分)…
RuO2 ,ReO2 ,IrO2 ,SrVO3 ,CaVO3 ,LaTiO3 ,SrMoO3 ,CaMoO3 ,SrCrO3 ,CaCrO3 ,LaVO3 ,GdVO3 ,SrMnO3 ,CaMnO3 ,NiCrO3 ,BiCrO3 ,LaCrO3 ,LnCrO3 ,SrRuO3 ,CaRuO3 ,SrFeO3 ,BaRuO3 ,LaMnO3 ,LnMnO3 ,LaFeO3 ,LnFeO3 ,LaCoO3 ,LaRhO3 ,LaNiO3 ,PbRuO3 ,Bi2 Ru27 ,LaTaO3 ,SrRuO3 ,PbRuO3 ,BiRuO3
少なくとも1種類の助剤の粒子(第2の成分)…
LiF,Li3 PO4 ,Li2 CO3 ,Li2 SO4 ,Bi23 ,Biを含む複合酸化物,PbO,Pbを含む複合酸化物。
【0019】
この第1の導電性セラミックス材料では、RuO2 等の酸化物粒子からなるマトリクス中に、LiF等の助剤の粒子が分散せしめられている。LiF等の助剤は、酸化物粒子の焼結助剤として機能することができる。なお、「粒子」なる語は、それを本願明細書で使用した場合、広義で用いられており、本発明の実施に使用し得るいろいろな粒子、すなわち、粉末、微粒子、粗粒子などを包含している。一般的に、RuO2 等の酸化物粒子は、約0.05〜0.3μmの平均粒径を有しており、好ましくは、約0.08〜0.2μmの平均粒径を有している。また、酸化物粒子と組み合わせて使用される、LiF等の焼結助剤の粒子は、通常、約1.0〜5.0μmの平均粒径を有しており、好ましくは、約2.0〜4.0μmの平均粒径を有している。
【0020】
第1の導電性セラミックス材料は、好ましくは、10-5/℃以下の熱膨張率を有している。このセラミックス材料から複雑な形状の部品を作製したり、複雑なアセンブリ工程を伴うような場合に、熱膨張に原因するズレや割れなどの欠陥の発生を、効果的に防止できるからである。
また、第1の導電性セラミックス材料は、好ましくは、室温(約25℃)で測定して、1×10-4〜1×104 Ω・cmの範囲の固有電気抵抗値(比抵抗)、さらに好ましくは、1×10-2〜1×102 Ω・cmの固有電気抵抗値を有している。したがって、かかるセラミックス材料を使用して静電偏向器の偏向電極を作製した場合には、渦電流の発生に原因する電子ビームの位置ズレの問題を防止することができる。
【0021】
さらに、固有電気抵抗値を上述のような好ましい範囲に設定することは、本発明に従うと、出発物質として使用するRuO2 等の酸化物粒子とLiF等の助剤の粒子の配合割合を適宜調整することによって、容易にかつ正確に行うことができる。一般的に、RuO2 等の酸化物粒子の配合割合が増大するとともに固有電気抵抗値が減少するので、RuO2 等の酸化物粒子の割合を、導電性セラミックス材料の全量(体積)を基準にして、約15〜70%の範囲にすることが好ましく、さらに好ましくは、約20〜30%の範囲である。
【0022】
第2の導電性セラミックス材料は、酸化に対して耐性を有する少なくとも1種類の金属の粒子(第1の成分)と、少なくとも1種類の無機ガラスの粒子(第2の成分)との複合体組成物である。
この複合体組成物において、第1の成分として使用される金属は、好ましくは、Au,Pt又はその組み合わせである。AuとPtの組み合わせとしては、これらの金属又はその化合物の合金あるいは混合物を挙げることができる。また、第2の成分として使用される無機ガラスは、好ましくは、400℃以上の軟化点を有している無機ガラスである。このような無機ガラスは、さらに、鉛などの揮発性金属元素を実質的に含まない組成を有することが好ましい。鉛などは、真空雰囲気中で使用している間に還元作用を受け、導電性を発現するからである。本発明の実施に有用な無機ガラスとしては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、ほう珪酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラスなどを挙げることができる。
【0023】
第2の導電性セラミックス材料では、無機ガラスからなるマトリクス中に、Au,Pt等の金属の粒子が分散せしめられている。ここで、無機ガラスの粒子は、約1.0〜5.0μmの平均粒径を有しており、好ましくは、約2.0〜4.0μmの平均粒径を有している。また、無機ガラスの粒子と組み合わせて使用される金属の粒子は、通常、約0.1〜20μmの平均粒径を有しており、好ましくは、約0.1〜5μmの平均粒径を有している。
【0024】
第1の導電性セラミックス材料と同様に、第2の導電性セラミックス材料も、好ましくは、10-5/℃以下の熱膨張率を有している。このセラミックス材料から複雑な形状の部品を作製したり、複雑なアセンブリ工程を伴うような場合に、熱膨張に原因するズレや割れなどの欠陥の発生を、効果的に防止できるからである。
【0025】
同様に、第2の導電性セラミックス材料は、好ましくは、室温(約25℃)で測定して、1×10-4〜1×104 Ω・cmの範囲の固有電気抵抗値、さらに好ましくは、1×10-2〜1×102 Ω・cmの固有電気抵抗値を有している。したがって、かかるセラミックス材料を使用して静電偏向器の偏向電極を作製した場合には、渦電流の発生に原因する電子ビームの位置ズレの問題を防止することができる。
【0026】
さらに、固有電気抵抗値を上述のような好ましい範囲に設定することは、本発明に従うと、出発物質として使用する無機ガラスの粒子と金属の粒子の配合割合を適宜調整することによって、容易にかつ正確に行うことができる。一般的に、無機ガラスの配合割合が増大するとともに固有電気抵抗値が減少するので、無機ガラス粒子の割合を、導電性セラミックス材料の全量(体積)を基準にして、約10〜80%の範囲にすることが好ましく、さらに好ましくは、約40〜80%の範囲である。
【0027】
本発明の導電性セラミックス材料は、ニーズに応じていろいろの形態を有することができるが、一般的に、焼成された成形体の形態を有していることが好ましい。かかる成形体は、所望に応じていろいろな技法に従い製造することができ、したがって、種々の形状及び寸法を有することができる。以下に、いくつかの好ましい製造方法を記載する。
【0028】
例えば、焼成された成形体は、原料粒子を成形し、焼成した後、得られたバルク体を機械加工して製造することができる。この製造方法は、好ましくは、例えば、
所定の粒径を有する原料粒子を予め定められた配合比で混合する工程、
得られた混合物を圧粉成形やその他の成形法で成形して前駆体を形成する工程、
得られた前駆体を焼成して焼成体(本願発明では、「バルク体」ともいう)を形成する工程、そして
バルク体を機械加工して、静電偏向器の偏向電極等の最終的に所望の形状に整える工程
によって実施することができる。
【0029】
また、この製造方法において、原料粒子の混合工程は、常用の混合装置、例えばボールミルなどを使用して行うことができる。引き続く成形工程も、常用の成形機、成形条件を使用して行うことができる。前駆体の焼成工程は、前駆体を適当な焼成炉に入れた後、例えば、約900〜1000℃の高温で約60〜300分間にわたって加熱することによって、行うことができる。最後の機械加工工程は、例えば、施盤、フライス盤や、その他の切削装置を使用して行うことができる。必要に応じて、得られた製品を研磨などで仕上げ処理してもよい。
【0030】
別法によれば、焼成された成形体は、原料粒子を成形して所定形状の成形体を得た後、得られた成形体を焼成し、さらには必要に応じて仕上げ加工することによって製造することもできる。この製造方法は、さらに詳しく述べると、例えば、
所定の粒径を有する原料粒子を予め定められた配合比で混合する工程、
得られた混合物を射出成形やその他の成形法で成形して、静電偏向器の偏向電極等の最終的に所望の形状にほぼ等しい成形体を形成する工程、
得られた成形体を焼成して焼成成形体を形成する工程、そして
焼成成形体を仕上げ加工する工程
によって実施することができる。
【0031】
先の製造方法と同様に、この製造方法においても、原料粒子の混合工程や、それに引き続く成形工程及び焼成工程は、常用の装置及び処理条件を使用して有利に行うことができる。最後の仕上げ工程は、例えば、研磨材、アルミナ粒、ダイヤモンド粒などを使用して行うことができる。
別の好ましい形態において、本発明の導電性セラミックス材料は、コーティングの形態を有することができる。かかるセラミックス材料は、さらに好ましくは、金属加工体の表面に被覆されたコーティングの形態を有することができる。ここで、コーティングの下地となる金属加工体は、特に限定されるものではなく、例えば、機械加工、鋳造、射出成形などの加工法によって所定の形状を付与された任意の金属製品を挙げることができる。適当な金属の一例を示すと、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などがある。場合によっては、金属以外の加工体を下地として使用してもよい。
【0032】
一般的に、導電性セラミックス材料からなるコーティングは、所定形状の金属加工体を得た後、その表面に、原料粒子からなるコーティングを被着することによって形成することができる。適当な被着法としては、スピンコート法、ディップコート法等の塗布法や、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法、プラズマ溶射法、電気めっき、無電解めっきなどを挙げることができる。また、かかるコーティングの膜厚は、コーティングの使途などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約1〜500μmの範囲であり、好ましくは、約10〜200μmの範囲である。
【0033】
本発明の導電性セラミックス材料は、その優れた特性のため、いろいろな分野で有利に使用することができ、特に、電極材料として、あるいは電極部品として有利に使用することができる。
本発明の電極部品は、それを磁場内で使用したとき、特にその作用効果が顕著である。したがって、本発明の電極部品は、荷電粒子ビーム露光装置で用いられる静電偏向器として、特に有利に使用することができる。また、本発明の導電性セラミックス材料は、荷電粒子ビーム露光装置で被処理基板を担持するために用いられるステージ部材や、その他の部材としても、有利に使用することができる。
【0034】
本発明によれば、さらに、荷電粒子ビーム露光装置も提供される。本発明の荷電粒子ビーム露光装置は、
真空室と、
真空室内に配設された荷電粒子ビーム源と、
真空室内に配設され、被処理基板を担持するように適合されたステージ部材と、
真空室内で、荷電粒子ビーム源とステージ部材との間に配設された電磁レンズと、
真空室内で、荷電粒子ビーム源とステージ部材との間に配設された静電偏向器とを備えるとともに、
静電偏向器が、本発明の導電性セラミックス材料から構成される偏向電極を含んでなることを特徴とする。
【0035】
別の面において、本発明の荷電粒子ビーム露光装置は、そのステージ部材がさらに、本発明の導電性セラミックス材料から構成されていてもよい。
さらに別の面において、本発明の荷電粒子ビーム露光装置は、その真空室の内壁がさらに、本発明の導電性セラミックス材料からなるライナを備えていてもよい。
【0036】
引き続いて、本発明の荷電粒子ビーム露光装置を添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の荷電粒子ビーム露光装置の好ましい1態様を概略的に示す模式図である。図1を参照するに、荷電粒子ビーム露光装置10は、鏡筒10A内にLaB6等よりなる電子銃等のビーム源11を備える。電子銃11から所定の光軸に沿って発射され、可動ステージ12上に保持された被処理基板13に到達する電子等の荷電粒子ビームの光路内には、電磁レンズ14A〜14Fが、上流側から下流側に向かって順次配設されている。
【0037】
荷電粒子ビーム露光装置10では、ビーム源11から出射した荷電粒子ビームは典型的には矩形形状のアパーチャを形成されたビーム整形板15を通過することにより最初に矩形形状に整形され、電磁レンズ14A及び14Bにより、多数の微細なビーム整形アパーチャが形成されたブロックマスク16上に、平行ビームの形で集束される。ブロックマスク16の近傍には電磁偏向器16A及び静電偏向器16Bが配設されており、これらを駆動することにより、矩形荷電粒子ビームは所定の光軸から偏向され、ブロックマスク16中の選択されたアパーチャを通過することにより、所望の選択された形状に整形される。
【0038】
また、上記のようにして選択された形状に整形された荷電粒子ビームは、さらに電磁レンズ14Cにより所定の光軸上に戻され、縮小光学系を構成する電磁レンズ14D及び14Eにより縮小された後、電磁レンズ14Fにより、ステージ12上の被処理基板13上に集束される。すなわち、電磁レンズ14Fは対物レンズとして作用する。
【0039】
さらに、鏡筒10A内には、電磁レンズ14Fの近傍に、被処理基板13上に集束された荷電粒子ビームを偏向させ、被処理基板13の表面上を走査させる静電偏向器20及び電磁偏向器18が設けられる。このうち、電磁偏向器18はコイルを含み、発生する磁界により荷電粒子ビームを被処理基板13の表面上の数ミリメートル角程度の広範囲な領域において比較的低速で走査させるのに対し、静電偏向器20は、電極板よりなり、発生する電界により荷電粒子ビームを被処理基板13の表面上の100μm角程度の限られた領域において非常に高速に走査させる。同様に、電磁偏向器16Aは、発生する磁界により、荷電粒子ビームにブロックマスク16上の広範囲な領域を低速で走査させるのに対し、静電偏向器16Bは、発生する電界により、ブロックマスク16上の限られた領域を非常に高速に走査させる。
【0040】
図1の荷電粒子ビーム露光装置10では、さらに、鏡筒10A中に別の静電偏向器19が設けられ、これを駆動することにより、被処理基板13上における荷電粒子ビームが高速にオンオフされ、その結果ステージ12上の被処理基板13は、所望の形状の荷電粒子ビームにより、高速で露光される。さらに、ステージ12の下には、荷電粒子ビームの光軸合わせに使われるイマージョンレンズ11Bが形成されている。
【0041】
図2及び図3は、それぞれ、静電偏向器20の構成を示す斜視図及び断面図である。図3は、図2の線分III −III に沿った断面図である。
図2及び図3を参照するに、静電偏向器20は、Al23 等の絶縁物により形成された円筒形状の部材21と、この円筒部材21の内壁面上に、分離溝23を隔てて互いに平行に配設された複数の電極部材22とよりなり、電子ビーム等の荷電粒子ビームは、複数の電極部材22により画成された実質的に円筒形状の通路中を、所定の光軸(図中、EBで示す)に沿って通過する。その際、複数の電極部材22のうちの選択された部分に駆動電圧を印加することにより、荷電粒子ビームは光軸EBから偏向される。
【0042】
図3の断面図よりわかるように、各々の電極部材22は、円筒部材21の内壁面上に、相互に電気的および空間的に分離された状態で、なおかつ円筒部材21の内壁面を光軸EBから見た場合に連続的に覆うように、相互にインターロックするような形状に形成されている。このため、絶縁性円筒部材21の内壁面が露出し、荷電粒子ビームによりチャージアップする問題が回避される。電極部材22は、円筒部材21の内壁面21A上に、接着剤により固定される。
【0043】
図4は、図2及び図3に示した電極部材22の一つを、静電偏向器20から取り出した状態を示したものである。
図4を参照するに、電極部材22は比較的複雑な形状をしているが、本発明によると、前記したような手法を用いることにより、容易にかつ歩留まりよく製造することができる。また、その際、原料粒子の配合割合を適宜調整することによって、渦電流の発生を効果的に防止できる1×10-1Ω・cm程度の固有電気抵抗値を実現することができる。さらに、このようにして形成された電極部材22は、本発明に従い特定な組成の複合セラミックス材料よりなるため、図1の荷電粒子露光装置10において静電偏向器20として使用した場合、酸素プラズマ中において繰り返しクリーニングを行っても、電気特性が劣化することはない。
【0044】
正確な理由はまだ究明されるに至っていないが、上述のような電気特性の劣化の防止は、原料粒子として使用する酸化物粒子の特性によるところが大であると考察される。例えば、Ru−O系の酸化物を参照すると、その相平衡図は現時点で完全には確定していないが、低温においては酸素分圧PO2 が低くても、金属相のRuよりもRuO2 が安定である傾向は疑う余地なく確認される。特に、荷電粒子露光装置中においてプラズマクリーニング処理に使われる10-3〜10-2Torr、すなわち0.1〜1Pa程度の圧力範囲では、900から1000℃程度の温度まではRuO2 が安定であり、実際にかかるプラズマクリーニング処理で使われる温度はこれよりもはるかに低いことを考えると、かかるRuO2 を非磁性導電性粒子として含むセラミックス材料よりなる電極部材22は、かかるプラズマクリーニング処理を繰り返しても劣化しないことが理解される。
【0045】
Ru−O系においては、さらにRuO2 +1/2O2 →RuO3 の酸化反応が考えられるが、RuO3 は室温以上の温度で気体であり、上記酸化反応のギブス自由エネルギは少なくとも室温以上の温度では正となることが確認されている。したがって、RuO2 が酸化プラズマ雰囲気中でさらに酸化され、気体状のRuO3 となって除去される可能性は考えられない。
【0046】
図5は、図4の電極部材22を製造する方法の一例を順を追って示すフローシートである。
まず、工程S1において、典型的にはRuO2 よりなる非磁性導電性酸化物粒子と焼結助剤の粒子を混合する。必要に応じて、バインダ樹脂も併用してもよい。得られた混合物を、工程S2において、所定の形状、例えば板状の形状に圧粉成形する。
【0047】
次いで、工程S3において、得られた板状成形体を約1000℃の温度で数時間熱処理し、非磁性導電性酸化物粒子中に焼結助剤が分散した板状の焼成成形体を形成する。
さらに、工程S4において、工程S3において得られた焼成成形体を機械加工する。図4の電極部材22が得られる。
【0048】
ところで、先に説明した図5の製造工程では、工程S2で得られる成形体は、板状あるいは円柱状の簡単な形状のものに限られており、このため工程S3で得られる焼成成形体も、同様に簡単な形状のものに限定される。このため、図5の製造工程では、工程S4において、得られた焼成成形体を機械加工して、最終的に所望の形状に整形する必要があった。
【0049】
別法によれば、上述のような問題を容易に解消することができる。すなわち、図4の電極部材22や、その他の形状を有する電極部材は、図6に順を追って示す製造工程でも有利に製造することができる。
図6の製造工程では、工程S11において、前記工程S1と同様に、RuO2 等の非磁性導電性酸化物の粒子を焼結助剤の粒子及び任意にバインダ樹脂と混合した後、引き続く工程S12において、得られた原料粒子の混合物を射出成型機に供給し、図4の電極部材22とほぼ同じ形状及び寸法を備えた成形体(電極の前駆体)を形成する。
【0050】
次いで、得られた電極の前駆体を所定の温度で加熱してバインダ樹脂を熱分解によって飛散させた後、工程S13において焼成を行う。図4の電極部材22が得られる。この電極部材22は、必要に応じて、工程S14で仕上げ加工をおこなってもよい。なお、この製造工程において、工程S14で機械加工を行う必要を生じる場合もあるであろうが、この場合の機械加工は簡単であり、その結果電極部材22の製造効率を大きく増大させることができる。
【0051】
図7は、本発明の荷電粒子ビーム露光装置のいま1つの実施形態を示したものであり、図8は、図7の荷電粒子ビーム露光装置30で使われるステージ31の構成を概略的に示した断面図である。なお、図7中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図7を参照するに、荷電粒子ビーム露光装置30では、静電偏向器20のみならず、全ての静電偏向器、すなわち静電偏向器16B及び静電偏向器19に対応する静電偏向器36B及び39の偏向電極を、本発明による導電性セラミックス材料から形成している。また、図8に示すように、被処理基板を担持するステージ31を、金属製の基体31Aと、その表面に被着された、本発明の導電性セラミックス複合材料からなる被膜31Bとから構成している。かかる複合体構造を採用したことにより、従来のステージで生じていた渦電流による、電子ビームのドリフトが抑制され、高速で高精度の露光が可能になる。
【0052】
また、図8に示す被膜31Bは、前記複合材料の原料粉末を、プラズマ溶射により基体31A上に堆積することで、容易に形成することができる。
図9は、本発明の荷電粒子ビーム露光装置のいま1つの実施形態を示したものである。なお、図9中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0053】
図9を参照するに、荷電粒子ビーム露光装置40は、図7の荷電粒子ビーム露光装置30と同様な構成を有するが、鏡筒10A及びこれに連続する試料室の内壁に、本発明の導電性セラミックス材料からなるライナ10Bが形成されている点で相違する。
図示のようなライナ10Bを本発明の複合セラミックス材料より形成することにより、電磁偏向器16A、電磁レンズ14A〜14F、あるいは電磁偏向器18が形成する磁界に伴い鏡筒10Aを流れる渦電流を抑制することができる。これに伴い、かかる渦電流による二次的な磁界も抑制され、電子ビーム露光の精度を向上させることができる。
【0054】
また、ライナ10Bは、鏡筒10Aの内壁面上に原料粉末からプラズマ溶射を行うことにより、容易に形成することができる。
【0055】
【実施例】
下記の実施例は、本発明をさらに説明するためのものである。
実施例1
平均粒径が1μmのRuO2 粉末を、平均粒径が3μmのLiF粉末に対して体積比で20%の割合で混合し、これにアセトン及びPVB(ポリビニルブチラール)樹脂粉末を体積比で2%の割合で添加した。得られた混合物をボールミルで20時間にわたってミリングした。
【0056】
次に、上述のミリング工程により得られたスラリを乾燥してアセトンを完全に除去した後、らいかい機で粉砕した。成形用の原料粉末が得られた。
さらに、得られた原料粉末を金型に装填し、5MPa の圧力で板状に加圧成形した。得られた板状の成形体を1000℃で約2時間、大気中で焼成した後、焼成成形体を機械加工した。先に図4を参照して説明した電極部材22が得られた。
【0057】
得られた電極部材22は、荷電粒子ビーム露光装置中で使われる静電偏向器として適当な、約1×10-1〜1×10-2Ω・cmの固有電気抵抗値を示した。また、この電極部材はすべて酸化物からなるため、先に図1で示した荷電粒子ビーム露光装置において、酸素プラズマ中でのクリーニング処理に対して安定であった。
実施例2
平均粒径が5μmのAu粉末を、平均粒径が3μmのほう珪酸酸塩ガラスに対して体積比で30%の割合で混合し、これにアセトン及びPVB(ポリビニルブチラール)樹脂を体積比で2%の割合で添加した。得られた混合物をボールミルで20時間にわたってミリングした。
【0058】
次に、上述のミリング工程により得られたスラリを乾燥してアセトンを完全に除去した後、らいかい機で粉砕した。成形用の原料粉末が得られた。
さらに、得られた原料粉末を金型に装填し、5MPa の圧力で板状に加圧成形した。得られた板状の成形体を1000℃で約2時間、大気中で焼成した後、さらに続けて、Ar10%を含む酸素の雰囲気中で、2000気圧の圧力で、950℃で約5時間にわたって焼成した。得られた焼成成形体を機械加工した。先に図4を参照して説明した電極部材22が得られた。
【0059】
得られた電極部材22は、荷電粒子ビーム露光装置中で使われる静電偏向器として適当な、約1×10-1〜1×10-2Ω・cmの固有電気抵抗値を示した。また、この電極部材はすべて酸化物と酸化物ガラスからなるため、先に図1で示した荷電粒子ビーム露光装置において、酸素プラズマ中でのクリーニング処理に対して安定であった。
実施例3
平均粒径が1μmのPt粉末、平均粒径が2μmのほう珪酸酸塩ガラス粉末及び平均粒径が3μmの軟化点1100℃のアルミノ珪酸酸塩ガラス粉末を、それぞれ、体積比で60%、30%及び10%の割合で混合し、これにアセトン及びPVB(ポリビニルブチラール)樹脂を体積比で2%の割合で添加した。得られた混合物をボールミルで20時間にわたってミリングした。
【0060】
次に、上述のミリング工程により得られたスラリを乾燥してアセトンを完全に除去した後、らいかい機で粉砕した。成形用の原料粉末が得られた。
さらに、得られた原料粉末を金型に装填し、5MPa の圧力で板状に加圧成形した。得られた板状の成形体を1000℃で約5時間、大気中で焼成した。得られた焼成成形体を機械加工した。先に図4を参照して説明した電極部材22が得られた。
【0061】
得られた電極部材22は、荷電粒子ビーム露光装置中で使われる静電偏向器として適当な、約1×10-1〜1×10-2Ω・cmの固有電気抵抗値を示した。また、この電極部材はすべて酸化物と酸化物ガラスからなるため、先に図1で示した荷電粒子ビーム露光装置において、酸素プラズマ中でのクリーニング処理に対して安定であった。
実施例4
平均粒径が0.1μmのRuO2 粉末、平均粒径が2μmのSrRuO3粉末及び平均粒径が2μmのBi23粉末を、それぞれ、体積比で15%、10%及び65%の割合で混合し、これにアセトン及びPVB(ポリビニルブチラール)樹脂を体積比で2%の割合で添加した。得られた混合物をボールミルで20時間にわたってミリングした。
【0062】
次に、上述のミリング工程により得られたスラリを乾燥してアセトンを完全に除去した後、らいかい機で粉砕した。成形用の原料粉末が得られた。
さらに、得られた原料粉末を金型に装填し、5MPa の圧力で板状に加圧成形した。得られた板状の成形体を1000℃で約5時間、大気中で焼成した。得られた焼成成形体を機械加工した。先に図4を参照して説明した電極部材22が得られた。
【0063】
得られた電極部材22は、荷電粒子ビーム露光装置中で使われる静電偏向器として適当な、約1×10-1〜1×10-2Ω・cmの固有電気抵抗値を示した。また、この電極部材はすべて酸化物からなるため、先に図1で示した荷電粒子ビーム露光装置において、酸素プラズマ中でのクリーニング処理に対して安定であった。
【0064】
下記の第1表は、前記実施例1〜実施例4のそれぞれにおいて作製した電極部材22を、図1の荷電粒子ビーム露光装置10において静電偏向器20として使用した場合の、被処理基板13上で測定された、電子線照射10秒後のドリフト量(nm)をまとめたものである。また、酸素プラズマ処理に対する耐性を評価するため、酸素プラズマを2分間及び180分間照射した場合についても、ドリフト量を測定した。さらに、比較に供するため、電極部材22として従来のAl23 ・TiC(AlTiC)セラミックを使った場合(比較例1)及び電極部材22として従来のAlTiCセラミックを1μmのPtめっき膜で覆った材料を使った場合(比較例2)の測定結果も併記する。
【0065】
【表1】
Figure 0005032721
第1表に記載の測定結果から理解されるように、比較例1のように従来のAlTiCセラミックを電極材料に使用した場合には、そのAlTiCセラミックの磁性(0.005emu/cm3 )の影響で、電子線照射の初期の段階からビームのドリフトが見られた。また、酸素プラズマ照射後は、AlTiCセラミックが変質して絶縁化が発生したために、チャージアップ現象により、ビームのドリフト量が顕著に増加し、1μm以上となった。
【0066】
また、比較例2のようにPt膜付きのAlTiCセラミックを使用した場合には、初期ビームドリフト量は、Ptめっき膜の影響で、比較例1に比較して改善が認められた。しかし、酸素プラズマ照射後は、Ptめっき膜のエッチングが生じたために、比較例1と同様に、材料変質に原因するチャージアップ現象が発生し、酸素プラズマの照射時間とともに、ビームのドリフト量が増加した。
【0067】
これらの好ましくない結果とは対照的に、実施例1〜実施例4のそれぞれでは、電子線照射の初期の段階で、僅かではあるがビームのドリフトが見られた。これは、電極部材の表面に付着していた有機物の汚れ等に由来するもので、チャージアップが起こってドリフトが発生したものと考察される。ところが、酸素プラズマ照射後は、これらの汚れが取り除かれたために、ドリフト量が顕著に改善された。また、酸素プラズマの照射時間が長くなればなるほど、部材表面の汚れ量が少なくなり、ドリフト量が減少した。
【0068】
以上のような結果を総合するに、本発明(実施例1〜4)に従うと、本発明の電極部材を図1の荷電粒子ビーム露光装置10において静電偏向器20として使うことにより、電極部材の固有電気抵抗値が最適化され、電子ビーム露光装置10の描画速度を向上させることができる。
また、従来の電極材料を使った場合、電子線照射10秒後のドリフト量がプラズマ処理時間の増加とともに顕著に増加するのに対し、本発明による電極材料を使った場合には、かかる変化は全く見られない。例えば、AlTiC製電極では、酸素プラズマ照射10秒後の電子ビームドリフト量は1μmであったが、本発明の電極を用いた場合のドリフト量は10nm以下であった。
【0069】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々の変更や改良が可能である。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、出発物質を複合させたことによって、室温で10-1Ω・cm程度の固有電気抵抗値を有し、酸素プラズマ処理によってその固有抵抗値が低下せしめられず、また、その表面が酸素プラズマ処理によって悪影響を被ることがない導電性セラミックス材料を得ることができる。また、このセラミックス材料は、荷電粒子ビーム露光装置に電極材料として使用した時に、スループットの向上と装置の長寿命化を同時に達成することができる。
【0080】
また、本発明によれば、室温で1×10-1Ω・cm程度の固有電気抵抗値を有し、酸素プラズマ処理によってその固有抵抗値が低下せしめられず、また、その表面が酸素プラズマ処理によって悪影響を被ることがない、特に荷電粒子ビーム露光装置の偏向電極として有用な電極部品を得ることができる。
さらに、本発明によれば、荷電粒子ビーム露光装置に搭載した時に、ビームのスポット位置を正確に、かつ迅速に動かすことができるばかりでなく、スループットの向上と装置の長寿命化を同時に達成し得る静電偏向器を得ることができる。
【0081】
さらにまた、本発明によれば、高集積化が進んだ半導体装置等の製造において微細なレジストパターンの形成に有利に使用することができるとともに、スループットを向上させ、長時間にわたって静電偏向器を交換しないで済む荷電粒子ビーム露光装置を得ることができる。
さらに加えて、本発明の導電性セラミックス材料は、静電偏向器の偏向電極のみならず、ステージや鏡筒のライナ等、磁界内で使われる導電性部材に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による荷電粒子ビーム露光装置の好ましい一例を示す模式図である。
【図2】図1の荷電粒子ビーム露光装置で使用される静電偏向器の構成を示す斜視図である。
【図3】図2の静電偏向器の線分III ‐III に沿った断面図である。
【図4】図2及び図3の静電偏向器で使用される偏向電極の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の偏向電極の製造工程の一例を示すフローシートである。
【図6】本発明の偏向電極の製造工程のもう1つの例を示すフローシートである。
【図7】本発明による荷電粒子ビーム露光装置のもう1つの好ましい例を示す模式図である。
【図8】図7の荷電粒子ビーム露光装置で使用されるステージ部材の構成を示す断面図である。
【図9】本発明による荷電粒子ビーム露光装置のさらにもう1つの好ましい例を示す模式図である。
【符号の説明】
10…荷電粒子ビーム露光装置
10A…鏡筒
10B…ライナ
11…電子ビーム源
11B…イマージョンレンズ
12…ステージ
13…被処理基板
14A〜14F…電磁レンズ
16…ブロックマスク
18…電磁偏向器
19…静電偏向器
20…静電偏向器
21…絶縁性円筒部材
22…偏向電極
23…分離溝
30…荷電粒子ビーム露光装置
39…静電偏向器
40…荷電粒子ビーム露光装置

Claims (8)

  1. 電極の形成に用いられるものであって、室温で測定して、1×10−4〜1×10Ω・cmの比抵抗を有し、そして
    RuO2及びSrRuO3からなる群から選ばれた少なくとも1種類の酸化物粒子と、LiF及びBi23を含む複合酸化物からなる少なくとも1種類の助剤粒子とから形成され、前記酸化物粒子が、該導電性セラミックス材料の全量(体積)を基準にして、15〜70%の範囲で含まれる導電性セラミックス材料であることを特徴とする導電性電極材料。
  2. 電極の形成に用いられるものであって、室温で測定して、1×10 −4 〜1×10 Ω・cmの比抵抗を有し、そして
    酸化に対して耐性を有する、Au,Pt又はその組み合わせから選ばれる少なくとも1種類の金属の粒子と、少なくとも1種類の無機ガラスの粒子とから形成され、前記無機ガラスが、揮発性元素である鉛を含まず、かつ400℃以上の軟化点を有している無機珪酸塩ガラスであり、前記無機ガラスの粒子が、該導電性複合体材料の全量(体積)を基準にして、10〜80%の範囲で含まれる導電性複合体材料であることを特徴とする導電性電極材料。
  3. 焼成された成形体の形態を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性電極材料。
  4. 金属加工体の表面に被覆されたコーティングの形態を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性電極材料。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性電極材料からなることを特徴とする電極部品。
  6. 磁場内で用いられることを特徴とする請求項に記載の電極部品。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性電極材料から構成された偏向電極を含んでなることを特徴とする、荷電粒子ビーム露光装置で用いられる静電偏向器。
  8. 真空室と、
    前記真空室内に配設された荷電粒子ビーム源と、
    前記真空室内に配設され、被処理基板を担持するように適合されたステージ部材と、
    前記真空室内で、前記荷電粒子ビーム源と前記ステージ部材との間に配設された電磁レンズと、
    前記真空室内で、前記荷電粒子ビーム源と前記ステージ部材との間に配設された静電偏向器とを備えた荷電粒子ビーム露光装置において、
    前記静電偏向器が、請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性電極材料から構成される偏向電極を含んでなることを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置。
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