JP5030765B2 - 無黄変軟質ポリウレタンフォーム - Google Patents

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Description

本発明は、無黄変軟質ポリウレタンフォームに関する。詳細には、紫外線や窒素酸化物や熱の作用に起因する黄変がほとんどなく、かつ機械的物性や発泡安定性に優れた無黄変軟質ポリウレタンフォームに関する。
軟質ポリウレタンフォームは軽量であって、且つ優れたゴム状弾性を有し、触感や保温性にも優れるため、広く使用されている。ブラジャーパット、肩パット等の衣料製品、紙おむつ、ナプキン等のサニタリー製品、パフ材等の化粧用製品等の美感や清潔感が要求されるものについては、上記特性に加えて紫外線等による変色のない軟質ポリウレタンフォームが求められている。
従来、軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールとポリイソシアネートとを、発泡剤、整泡剤、触媒等の存在下に反応させることによって製造されている。ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(以下、「TDI」ともいう)のような芳香族ポリイソシアネートは、反応をコントロールしやすく、発泡安定性やクッション性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られやすいばかりでなく、安価であるため一般的に用いられている。しかしながら、TDIのような芳香族ポリイソシアネートを用いて得られる軟質ポリウレタンフォームは、紫外線の影響を受け、時間の経過とともに黄色に変色してしまう問題があった。
このような紫外線による変色を防止する手段として、芳香族ポリイソシアネートに代えて脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートを使用した紫外線による色調変化を受け難い軟質ポリウレタンフォームが提案されている。
しかしながら、脂肪族又は脂環式のポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートに比べて反応性が低いため重合に時間がかかり生産性に劣る。また、十分な発泡が得られなかったり、全体的に均一な反応が達成されなかったりして性状が均一な製品を得られず、さらに圧縮残留歪みもきわめて大きい等の発泡安定性の問題を抱えている。
上述した問題点を解決する方策として、例えば特許文献1のようにN−C=N結合を含む触媒およびカルボン酸の金属塩、イソシアネート成分として、IPDIに対して脂肪族/又は脂環族ポリイソシアネートの三量体を混合したものを使用する方法(例えば特許文献1を参照)が開示されている。しかしながら、重合と泡化反応のバランスが確保し難く、極端に反応が遅く若しくは速くなってしてしまい、生産性に欠けたりフォームとして必要な機械的物性に劣る問題があった。
そこで、圧縮残留歪みが小さい軟質ポリウレタンフォームを成形する方法として、イソシアネート成分として、IPDI及び/又はその誘導体とHDIの三量体及び/又はその誘導体の重量による混合比=70〜30:30〜70で用いるフォームが提案されている(特許文献2を参照)。しかしながら特許文献2の方法によっても、フォームとして必要な機械的物性は充分でなく、フォームが収縮してしまったりセルが独泡になったりする、あるいはセルが連通であっても均一なセル形状にならない等の問題があり、フォーム性状に優れる軟質ポリウレタンフォームを得ることは難しかった。またアミン系触媒を大量に使用するため、独特のアミン臭が生じ、特に衣料製品、サニタリー製品、化粧用製品の使用には不適であった。
特開昭50−64389号公報 特開2006−257187号公報
本発明はこれらの欠点に鑑み、紫外線や窒素ガスに起因する黄変が抑制されかつ機械的物性やフォーム性状に優れた軟質ポリウレタンフォームを提供することである。さらには臭気のない軟質ポリウレタンフォームを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討を重ねた結果、イソシアネート成分として、特定の二種以上のイソシアネートを特定の混合比で用い、かつ特定の整泡剤を用いることにより、成形性に優れ、紫外線や窒素ガスに起因する黄変が抑制され、かつフォーム性状に優れる軟質ポリウレタンフォームが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)少なくともポリオール成分、イソシアネート成分、整泡剤、触媒、発泡剤とを含むポリウレタンフォーム原料を発泡させてなるポリウレタンフォームであって、ポリオール成分の水酸基において一級の水酸基の割合が50%を超えるものであり、ポリイソシアネート成分として、(A);3−イソシアナトメチル3,5,5トリメチルヘキシルイソシアネート(IPDI)及び/又はIPDIの三量体及び/又は三量体の混合物と、(B);ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の三量体及び/又は三量体の混合物とを、重量による混合比(A):(B)=80〜20:20〜80で用い、整泡剤は分子末端に活性水素基を有する反応性のシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする無黄変軟質ポリウレタンフォーム。
(2)触媒として少なくともアミン系触媒とジアザビシクロアルカン系触媒および三量化触媒とを併用し、アミン系触媒が、分子末端に活性水素基を有する反応性のアミン系触媒であることを特徴とする請求項1に記載の無黄変軟質ポリウレタンフォーム。
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームによれば、紫外線や窒素ガスに起因するフォームの黄変を抑制することができ、TDIのような汎用のポリイソシアネートを用いて成形する場合と同様にフォームとして必要な機械的物性(圧縮残留歪み性等)を有し、性状が均一な軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。さらに、アミン系触媒に起因する臭気の発生がほとんどなく、衣料用や化粧用としての使用に好適である。
以下本発明を詳細に説明する。本発明に係る無黄変軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分、整泡剤、触媒、発泡剤およびその他添加剤とを用いて発泡、硬化させて得られる。以下まず無黄変軟質ポリウレタンフォームを製造する際に用いられる各成分について説明する。
〔ポリオール成分〕
本発明において使用されるポリオール成分は軟質ポリウレタンフォーム用として知られているエーテル系ポリオールまたはエステル系ポリオールを用いることができる。エーテル系ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、エステル系ポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを使用することもできる。このなかでも、官能基数が2〜4で分子量が400〜8000の反応性の高いポリエーテルポリオールが好ましく使用される。
本発明においては、上記ポリオール成分を単独で、および適宜組み合わせて、一級の水酸基の割合が50%以上、好ましくは60%以上となるように調整する。一級の水酸基は立体障害がないので反応性が高く、ポリオール成分の水酸基において一級の水酸基の割合が50%以上であると、後述する反応性の乏しいポリイソシアネートを使用しても反応性の低下を防ぎ、発泡安定性に優れ、フォーム性状が均一な軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
〔ポリイソシアネート成分〕
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームに用いられるイソシアネート成分としては、IPDI及び/又はIPDIの三量体及び/又は三量体の重合体の混合物と(以下、「IPDI類」ともいう)、HDIの三量体及び/又は三量体の重合体の混合物(以下、「HDI類」ともいう)とを用いる。
IPDIは、脂環族ジイソシアネートに属し、2個のNCO基を有している。なお、本発明においては、IPDIの三量体や三量体の重合体の混合物を用いてもよい。
HDIは、脂肪族ポリイソシアネートに属するヘキサメチレンジイソシアネートであり、本発明においては、HDIの三量体及び/又は三量体の重合体の混合物を用いる。
ここで、ジイソシアネートの三量体としては、ジイソシアネートの単量体がイソシアネート基の反応を介して環状のイソシアヌレート環を形成しているものをいう。また、三量体の重合体とは、ポリイソシアネートの三量体からなるイソシアヌレート環の環外に存在するイソシアネート基同士の反応により重合したものをいう。
IPDI及び/又はIPDIの三量体及び/又は三量体の重合体と、HDIの三量体及び/又はその誘導体の混合比は、重量換算で80:20〜20:80であり、好ましくは80:20〜60:40である。イソシアネート成分中、IPDI類が80重量%を超えると、得られる軟質ポリウレタンフォームの圧縮残留歪みが低下する。また、イソシアネート成分中、IPDI類が20重量%よりも少ないと、得られる軟質ポリウレタンフォームの引張強度、引張伸度が低下する。
〔整泡剤〕
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームに用いられる整泡剤は、分子末端に活性水素基を有する反応性のシリコーン系界面活性剤を使用する。分子末端に活性水素基を有する反応性のシリコーン系界面活性剤としては、分子末端が水酸基、アミノ基等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。具体的には、東レ・ダウコーニング株式会社製のSZ−1327、SZ−1333、SZ−1718、SZ−1710、SF−2937F、SF−2945F、SH−193や、信越化学株式会社製のF−114、F−341、F−345、F−305モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のL−626等が挙げられる。上記分子末端に活性水素基を有する反応性のシリコーン系界面活性剤を使用することにより、イソシアネート成分として、IPDI類、HDI類を使用しても、性状が均一で機械的物性に優れる軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。その理由は定かではないが、本発明において使用されるポリオール成分は一級の水酸基の割合が高いために、分子末端に活性水素基を持つシリコーンのほうがポリオール成分との相溶性に優れる、さらに反応性であるためウレタン樹脂の重合に関与しかつ軟質ポリウレタンフォーム中に取り込まれるからであると考えられる。
〔触媒〕
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームには、軟質ポリウレタンフォームの製造に通常使用されている触媒が使用できるが、特にアミン系触媒とジアザビシクロアルカン系触媒と三量化触媒とを併用すると、反応性が高く、機械的物性を備えたフォームが得られやすいため好ましい。
アミン系触媒としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるものが使用され得るが、分子末端に活性水素基を有する反応性のアミン系触媒が好ましい。分子末端に活性水素基を有する反応性のアミン系触媒は、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N,N,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。このような分子末端に活性水素基を有するアミン系触媒は、ポリウレタンフォームの重合において、樹脂化に関与し樹脂骨格に取り込まれるため、得られる軟質ポリウレタンフォームには遊離のアミン系触媒量が極めて少なく、臭気を抑制することができる。
ジアザビシクロアルカン系触媒としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン‐7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。
三量化触媒としては、カルボン酸、炭酸、フェノール、安息香酸等のアルカリ金属塩の使用が好ましい。
その他、錫触媒等を適宜組み合わせて使用してもよい。
〔発泡剤〕
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームに用いる発泡剤としては、水のみを発泡剤として用いるのが環境的に好ましいが、必要に応じてメチレンクロライド等の低沸点の有機化合物や、空気、二酸化炭素等の気体も使用することができる。
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームには、本発明の特徴である難黄変性を一層向上させるために、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系、ラクトン系等が、光安定剤としてはヒンダートアミン系、ベンゾエート系等が、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等が挙げられる。
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームには、その他添加剤として、必要に応じて従来公知の難燃剤、顔料等を使用できる。
本発明の無黄変軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、従来の軟質ポリウレタンフォームの製造方法に基づいて行なうことができ、例えば、プレポリマー法、ワンショット法等を適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
<実施例1〜9、比較例1〜4>
表1に記載の配合処方のポリオール成分、触媒、整泡剤、発泡剤、安定剤を攪拌混合し、そこに表1に記載の配合処方のイソシアネート成分を加え、混ぜ合わせて発泡させることにより軟質ポリウレタンフォームを得た。
各実施例および比較例で得られた軟質ポリウレタンフォームについて、以下の測定・評価を行なった。
<密度>
JIS K7222に準じて測定した。
<黄変度(△YI)>
評価サンプルとして、縦50mm×横50mm×厚み10mmのサンプルを作成し、色彩色差計(ミノルタカメラ社製「CR−200B」)を用い、JIS K7373:2006に準じて、サンプル表面の初期YI値を測定する。
a.NOXガス変色性
サンプルを、JIS L 0855に準じて、NOXガス濃度650ppmの容器内に入れ、1.5時間暴露する。暴露した後のサンプルの表面を、初期と同様にYI値を測定し、初期YI値との差を、ΔYI値として求める。すなわち、ΔYI値は、色の変化具合を数字化したものであり、値が小さい方が、色の変化(黄変)が少ないことを示す。
b.紫外線変色性
フェードメーター(スガ試験機社製「紫外線フェードメーター U48HB」)にサンプルを設置した後に、ブラックパネル温度63℃(雨なし)、湿度50%RH以下にて、100時間UV照射を行う。照射した後のサンプルの表面を、初期YI値の測定と同様にしてYI値を測定し、初期YI値との差を、ΔYI値として求める。
<圧縮残留歪み>
JIS K6400−4:2004に準じて測定を行なった。
<引張強さ>
JIS K6400−5:2004に準じて測定を行なった。
<伸び>
JIS K6400−5:2004に準じて測定を行なった。
<フォーム性状>
目視にて判断した。
〇:通気度があり、セルが細かく均一
×:通気度が低くフォームが収縮する。もしくはセルが粗く均一でない
<臭気>
異臭気について官能評価した。
○:異臭気を感じない
×:異臭気を感じる
Figure 0005030765
Figure 0005030765
表中:
ポリオール1:ポリエーテルポリオール(一級の水酸基の割合 75%) 三井化学ポリウレタン社製 EP−330N
ポリオール2:ポリエーテルポリオール(一級の水酸基の割合 50%) 三井化学ポリウレタン社製 MS−300
ポリオール3:ポリエーテルポリオール(一級の水酸基の割合 34%) 三井化学ポリウレタン社製 EP−2053
IPDI:Evonik Industries AG社製 VESTANAT IPDI
HDI:日本ポリウレタン工業社製 コロネートHX
整泡剤1:反応性シリコーン系界面活性剤 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製 L−626
整泡剤2:反応性シリコーン系界面活性剤 信越化学社製 F−114
整泡剤3:シリコーン系界面活性剤 東レ・ダウコーニング社製 SRX−298
触媒1:反応性アミン系触媒 エアプロダクツ社製 DabcoNE500
触媒2:反応性アミン系触媒 三和油脂興業社製 ジエタノールアミン
触媒3:アミン系触媒 エアプロダクツ社製 Dabco DC−2
触媒4:ジアザビシクロアルカン系触媒 サンアプロ社製 U−CAT1102
触媒5:三量化触媒 日本化学産業社製 プキャット15G
触媒6:錫触媒 日東化成社製 DBTDL
安定剤1:城北化学工業社製 JPP−13R
安定剤2:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 Tinuvin571
実施例1〜9は、表1からわかるように何れもほとんど黄変がなく、機械的物性やフォーム性状に優れ、特に実施例1〜8にほとんど臭気のない無黄変軟質ポリウレタンフォームが得られた。
一方、比較例1および2は、IPDIとHDIの比率が本発明の範囲外であるため、フォームが得られなかった。
比較例3は一級の水酸基の割合が50%未満のポリオールを使用したため、フォームが収縮した。比較例4は分子末端に活性水素基を有する反応性のシリコーン系界面活性剤を使用しなかったため均一な性状のフォームが得られず、フォームの機械的物性も劣った。


Claims (2)

  1. 少なくともポリオール成分、イソシアネート成分、整泡剤、触媒、発泡剤とを含むポリウレタンフォーム原料を発泡させてなるポリウレタンフォームであって、
    ポリオール成分の水酸基において一級の水酸基の割合が50%以上であり、
    ポリイソシアネート成分は、(A);3−イソシアナトメチル3,5,5トリメチルヘキシルイソシアネート(IPDI)及び/又はIPDIの三量体及び/又は三量体の混合物と、(B);ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の三量体及び/又は三量体の混合物とを、重量による混合比(A):(B)=80〜20:20〜80で用い、
    整泡剤は分子末端に活性水素基を有する反応性のシリコーン系界面活性剤であること、
    を特徴とする無黄変軟質ポリウレタンフォーム。
  2. 触媒として少なくともアミン系触媒とジアザビシクロアルカン系触媒および三量化触媒とを併用し、アミン系触媒が、分子末端に活性水素基を有する反応性のアミン系触媒であることを特徴とする請求項1に記載の無黄変軟質ポリウレタンフォーム。
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