以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発 明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から 逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に 理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、薄膜集積回路を固定する手段として剥離層を形成しない領域を設けた、つまり剥離層を選択的に形成した形態の薄膜集積回路の作製方法について説明する。
図1(A)に示すように、絶縁基板100に、剥離層102、半導体膜を能動領域として有する薄膜トランジスタ(TFTとも表記する)を有する層(TFT層と呼ぶ)103を順次形成し、薄膜集積回路101を複数形成する。また図1(B)は図1(A)のa−bの断面図、図1(C)は図1(A)のc−dの断面図を示す。
絶縁基板100しては、バリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板等が挙げられる。またその他の絶縁表面を有する基板としては、ポリエチレン-テレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチックや、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板がある。また、ステンレスなどの金属または半導体基板などの表面に酸化珪素や窒化珪素などの絶縁膜を形成した基板なども用いることができる。このような絶縁基板は、円形のシリコンウェハからICチップを取り出す場合と比較して、母体基板形状に制約がなく、薄膜集積回路の低コスト化を達成することができる。
剥離層102は、珪素を有する構造を適用することができ、その状態は、非晶質半導体、非晶質状態と結晶状態とが混在したセミアモルファス半導体(SASとも表記する)、及び結晶性半導体のいずれでもよい。なおSASは、非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができる微結晶半導体が含まれる。これらの剥離層102は、スパッタリング法、又はプラズマCVD法等によって形成することができる。また剥離層102は、30nm〜1μmの膜厚とすればよい。剥離層102の成膜装置の薄膜形成限界が許容すれば、30nm以下とすることも可能である。
また剥離層102には、リンやボロン等の元素を添加してもよい。さらに加熱等により当該元素を活性化させてもよい。元素を添加することにより、剥離層102の反応速度、つまりエッチングレートを制御することができる。
本実施の形態では、剥離層102に30nm〜1μm、好ましくは30nm〜50nmの膜厚を有するSASを用いるが、上述したその他の材料を用いても構わない。
また剥離層として、金属を有する膜を形成してもよい。当該金属としては、W、Ti、Ta、Mo、Nd、Ni、Co、Zr、Zn、Ru、Rh、Pd、Os、Irから選ばれた元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる単層、或いはこれらの積層を用いることができる。金属を有する膜の作製方法として例えば、金属のターゲットを用いるスパッタリング法により形成すればよい。なお金属層の膜厚は、10nm〜200nm、好ましくは50nm〜75nmとなるように形成すればよい。金属層の代わりに、上記金属の窒化物(例えば、窒化タングステンや窒化モリブデン)を有する膜を用いても構わない。
このとき剥離層102を選択的に形成する。例えば、少なくとも絶縁基板の周囲に形成しないようにする。また薄膜集積回路間において、剥離層102を形成しない領域を設けてもよい。剥離層102が形成されない領域104により、剥離層102除去後であっても、TFT層がばらばらになることがない。すなわちTFT層は、絶縁基板100と一体化されている。そのため、絶縁基板の移動に伴い、TFT層が飛散することを防止でき、取り扱いが簡便となる。
選択的に剥離層102を形成する方法として、絶縁基板100の周囲を覆うようにマスクを配置して剥離層102を形成したり、絶縁基板100全面に剥離層102を形成した後に絶縁基板100の周囲のみエッチングする方法がある。
TFT層103は、下地絶縁膜、所望の形状にパターニングされた半導体膜124、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(以下、ゲート絶縁膜と呼ぶ)125を介して設けられたゲート電極として機能する導電膜(以下、ゲート電極と呼ぶ)126を有する薄膜トランジスタ128n、128pを有する。半導体膜は、0.2μm以下、代表的には40nm〜170nm、好ましくは50nm〜150nmの膜厚とする。なお薄膜トランジスタの構造は、シングルドレイン構造、LDD(Lightly Doped Drain)構造、及びGOLD(Gate-drain Overlapped LDD)構造のいずれでもよい。また半導体膜はチャネル形成領域、及び不純物領域(ソース領域、ドレイン領域、GOLD領域、LDD領域を含む)を有し、添加される不純物元素の導電型によりnチャネル型薄膜トランジスタ128n、又はpチャネル型薄膜トランジスタ128pと区別することができる。またチャネル形成領域が微細化するにつれ短チャネル効果を防止するためには、ゲート電極の側面に絶縁物を形成し、所謂サイドウォール構造とすると好ましく、当該絶縁物下方の半導体膜には低濃度不純物領域が形成される。そして各不純物領域と接続する配線130を有する。
またTFT層103がエッチングされないために、剥離層102上に形成される下地絶縁膜は、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)(x、y=1、2・・・)等の酸素、又は窒素を有する絶縁膜の単層構造、又はこれらの積層構造を有するとよい。下地絶縁膜には、エッチングガスに対し、剥離層102との十分な選択比がとれる材料を用いる。
本実施の形態では下地絶縁膜として、第1の絶縁膜121、第2の絶縁膜122、第3の絶縁膜123を有する構造とする。例えば第1の絶縁膜121として酸化珪素膜、第2の絶縁膜122として酸化窒化珪素膜、第3の絶縁膜123として酸化珪素膜を用いる。これは、絶縁基板100等からの不純物拡散を考えると、酸化窒化珪素膜を用いると好ましいが、当該酸化窒化珪素膜は剥離層、及び半導体膜との密着性が低いことが懸念される。そこで、剥離層、半導体膜、及び酸化窒化珪素膜との密着性の高い酸化珪素膜を設けている。
半導体膜124は、非晶質半導体、非晶質状態と結晶状態とが混在したSAS、非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができる微結晶半導体、及び結晶性半導体から選ばれたいずれの状態を有してもよい。
本実施の形態では、非晶質半導体膜を形成し、加熱処理により結晶化された結晶性半導体膜を形成する。加熱処理とは、加熱炉、レーザ照射、若しくはレーザ光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールと呼ぶ)、又はそれらを組み合わせて用いることができる。
レーザ照射を用いる場合、連続発振型のレーザビーム(CWレーザビーム)やパルス発振型のレーザビーム(パルスレーザビーム)を用いることができる。レーザビームとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライドレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。このようなレーザビームの基本波と併せて、当該基本波の第2高調波から第4高調波のレーザビームを照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば第2高調波から第4高調波のレーザビームには、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。このときレーザのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度として照射する。
このとき例えば図14(A)に示すような光学系を用い、CWレーザ装置を用いて結晶化を行なう。まず、レーザ発振器290から射出されるCWレーザビームが光学系291により長く引き延ばされ、線状に加工される。具体的には、レーザビームは、光学系291が有するシリンドリカルレンズや凸レンズを通過すると、線状に加工される。このときビームスポットの長軸の長さが、200〜350μmとなるように加工するとよい。
その後、線状に加工されたレーザビームは、ガルバノミラー293と、fθレンズ294とを介して半導体膜124へ入射する。このとき線状レーザは、半導体膜上に所定の大きさのレーザスポット282を形成するように調整されている。またfθレンズ294により、ガルバノミラーの角度によらず、被照射物表面において、レーザスポット282の形状を一定とすることができる。
このときガルバノミラーの振動を制御する装置(制御装置)296により振動する、つまりガルバノミラーの角度が変化するようになっており、レーザスポット282は、一方向(例えば、図中のX軸方向)に移動する。例えばガルバノミラーが半周期振動すると、レーザビームが半導体膜上のX軸方向に一定距離移動するように調節されている(往路)。
その後、半導体膜124はXYステージ295によりY軸方向へ移動する。そして同様に、ガルバノミラーにより、レーザスポットが半導体膜上のX軸方向に移動する(復路)。このようなレーザビームの往復運動を用いて、経路283をレーザスポットが移動し、レーザ照射を行うことができる。
このとき図14(B)に示すように、薄膜トランジスタのキャリアの移動方向と、レーザビームのX軸への移動方向(走査方向)283とが沿うようにレーザ照射を行なう。例えば図14(B)に示す形状を有する半導体膜230の場合、レーザビームのX軸への移動方向(走査方向)と平行となるように、半導体膜に形成されるソース領域230(s)、チャネル形成領域230(c)、ドレイン領域230(d)を配置する。その結果、キャリアが横切る粒界を少なくする又はなくすことができるため、薄膜トランジスタの移動度を高めることができる。
またさらにレーザビームの入射角θを、半導体膜に対して0°<θ<90°となるようにしてもよい。その結果、レーザビームの干渉を防止することができる。
なお連続発振の基本波のレーザビームと連続発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザビームとパルス発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。複数のレーザビームを照射することにより、エネルギーを補うことができる。
またパルス発振型のレーザビームであって、半導体膜がレーザ光によって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザ光を照射できるような発振周波数でレーザを発振させるレーザビームを用いることもできる。このような周波数でレーザビームを発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。 具体的なレーザビームの発振周波数は10MHz以上であって、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を使用する。
なお、希ガスや窒素などの不活性ガス雰囲気中でレーザビームを照射するようにしてもよい。これにより、レーザビームの照射による半導体表面の荒れを抑えたり、平坦性を高めることができ、界面準位密度のばらつきによって生じる閾値のばらつきを抑えることができる。
またSiH4とF2、又はSiH4とH2を用いて微結晶半導体膜を形成し、その後上記のようなレーザ照射をおこなって結晶化してもよい。
その他の加熱処理として、加熱炉を用いる場合、非晶質半導体膜を500〜550℃で2〜20時間かけて加熱する。このとき、徐々に高温となるように温度を500〜550℃の範囲で多段階に設定するとよい。最初の低温加熱工程により、非晶質半導体膜の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減する、所謂水素だしを行なうこともできる。さらに、結晶化を促進させる金属元素、例えばNiを非晶質半導体膜上に形成すると、加熱温度を低減することができ好ましい。このような金属元素を用いた結晶化であっても、600〜950℃に加熱しても構わない。
但し、金属元素を形成する場合、半導体素子の電気特性に悪影響を及ぼすことが懸念されるので、当該金属元素を低減又は除去するためのゲッタリング工程を施す必要が生じる。例えば、非晶質半導体膜をゲッタリングシンクとして金属元素を捕獲するよう工程を行う。
また直接被形成面に、結晶性半導体膜を形成してもよい。この場合、GeF4、又はF2等のフッ素系ガスと、SiH4、又はSi2H6等のシラン系ガスとを用い、熱又はプラズマを利用して直接被形成面に、結晶性半導体膜を形成することができる。このように直接結晶性半導体膜を形成する場合であって、高温処理が必要となるときは、絶縁基板100として耐熱性の高い石英基板を用いるとよい。
以上のような半導体膜を加熱する工程により、剥離層102へ加熱の影響があると考えられる。例えば、炉を用いた加熱処理を行なう場合や、532nmの波長を用いてレーザ照射を行なう場合、剥離層102までエネルギーが到達することがある。その結果、剥離層102も結晶化されることがある。このような剥離層102の結晶化状態によっても、反応速度を制御することができる。
一方、効率よく半導体膜を結晶化するため、剥離層102へレーザによるエネルギーを到達させないように、下地絶縁膜の構造を選択することもできる。例えば、下地絶縁膜の材料、膜厚、積層順を選択することによって、剥離層102へレーザによるエネルギーを到達させないようにすることができる。
以上に示したいずれかの方法により形成される半導体膜は、シリコンウェハから形成されるICチップと比べて多くの水素を有する。具体的には、水素を1×1019〜1×1022/cm3、好ましくは1×1019〜5×1020/cm3有するように形成することができる。この水素により、半導体膜中のダングリングボンドを緩和する、所謂ターミネート効果を奏することができる。加えて半導体膜中の水素により、薄膜集積回路の柔軟性を高めることができる。
さらに、パターニングされた半導体膜が薄膜集積回路において占める面積の割合を、1〜30%とすることで、曲げ応力による薄膜トランジスタの破壊や剥がれを防止することができる。
このような半導体膜を有する薄膜トランジスタのサブシュレッド係数(S値)は、0.35V/dec以下、好ましくは0.25〜0.09V/decとなる。また当該薄膜トランジスタの移動度は、10cm2/Vs以上となる。
このようなTFTを用いて19段リングオシレータを構成した場合において、電源電圧3〜5Vのとき、その発振周波数は1MH以上、好ましくは100MHz以上の特性を有する。電源電圧3〜5Vにおいて、インバータ1段あたりの遅延時間は26ns、好ましくは0.26ns以下となる。
このように薄膜集積回路は、非常に薄い半導体膜を能動領域として有しているため、シリコンウェハから形成されるICチップと比較して、薄型化を達成することができる。具体的な薄膜集積回路の厚みは0.3μm〜3μm、代表的には2μm程度となる。
以上の構造によりTFTとしての機能を奏することは可能であるが、好ましくは第1の層間絶縁膜127、第2の層間絶縁膜129を形成するとよい。第1の層間絶縁膜127からの水素により、半導体膜のレーザダメージ、ダングリングボンド等を補修することができる。すなわち水素によるターミネーション効果を得ることができる。このような第1の層間絶縁膜127としては、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)(x、y=1、2・・・)等の酸素、又は窒素を有する絶縁膜を用いることができる。
また第2の層間絶縁膜129により平坦性を高めることができる。このような第2の層間絶縁膜129は、有機材料や無機材料を用いることができる。有機材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。シロキサンとは、珪素(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構造され、置換基に少なくとも水素を含む、又は置換基にフッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有するポリマー材料を出発原料として形成される。なお、シロキサン樹脂とは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。またポリシラザンとは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を含む液体材料を出発原料として形成される。無機材料としては、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)(x、y=1、2・・・)等の酸素、又は窒素を有する絶縁膜を用いることができる。また、第2の層間絶縁膜129として、これら絶縁膜の積層構造を用いてもよい。例えば有機材料を用いて第2の層間絶縁膜129を形成すると、平坦性は高まるが、水分や酸素が吸収されやすい状態となってしまう。これを防止するため、有機材料上に、無機材料を有する絶縁膜を形成するとよい。無機材料に、窒素を有する絶縁膜を用いると、水分に加えてNa等のアルカリイオンの侵入を防ぐことができる。
更に好ましくは、配線130を覆うように第4の絶縁膜131を設けるとよい。薄膜集積回路が実装される物品は、手で触ることが多いため、Na等のアルカリイオンの拡散が懸念される。そのため、薄膜集積回路の最上面に第4の絶縁膜131を形成するとよい。第4の絶縁膜131としては、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)(x、y=1、2・・・)等の酸素、又は窒素を有する絶縁膜を用いることができるが、代表的には窒化酸化珪素(SiNxOy)を用いるとよい。
その後、薄膜集積回路101間(境界)に溝(開口部とも呼ぶ)105を形成する。溝105は、ダイシング、スクライビング又はマスクを利用したエッチング等によって行なうことができる。溝105の形状は、円状(所謂穴に相当)、矩形状(所謂スリットに相当)等とすることができる。ダイシングの場合には、ダイシング装置(所謂ダイサー)を用いるブレードダイシング法が一般的である。ブレードとは、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだ砥石で、その幅は約30〜50μmであり、このブレードを高速回転させることにより、TFT層103を分離する。また、スクライビングの場合には、ダイヤモンドスクライビング法とレーザスクライビング法等がある。また、エッチングの場合には、露光、現像工程によりマスクパターンを形成し、ドライエッチング、ウェットエッチング等によりTFT層103を分離することができる。ドライエッチングにおいては、大気圧プラズマ法を用いてもよい。このようにして薄膜集積回路101間に、溝105を形成することができる。
なお溝105は必ずしも、各薄膜集積回路間に形成する必要はなく、複数の薄膜集積回路が形成される領域間に形成してもよい。
また図5に示すように、TFT層103中に開口部108を形成してもよい。このとき開口部は、チャネル形成領域となる半導体膜が設けられている領域以外に形成する必要がある。このような開口部を溝と合わせて使用することにより、溝105の大きさや数を調節したり、剥離層の除去に要する時間を短縮することができる。開口部の円状、矩形状等であればよく、形状や数は、図5に示すものに限定されない。
また薄膜集積回路101の境界に溝105を選択的に形成すると、薄膜集積回路間の溝105以外の領域には絶縁膜、又は導電膜等が残留する。このような薄膜集積回路間に残留した絶縁膜、又は導電膜等を接続領域106と表記する。なお接続領域106は、薄膜集積回路がばらばらとならず、一体となるようにつなぎ止める機能を有すればよい。そのため接続領域106は、絶縁膜、及び導電膜のいずれを有してもよく、さらに単層構造でも、積層構造でもよい。薄膜集積回路が一体となることにより、工程中の飛散を防ぐことができる。
また薄膜集積回路101は、剥離層102が形成されていない領域104で、絶縁基板100に固定されている。そのため、薄膜集積回路101は、絶縁基板100と離れることがない。
この状態で、図2に示すように剥離層102を除去する。また図2(A)は上面図、図2(B)は図2(A)のa−bの断面図、図2(C)は図2(A)のc−dの断面図を示す。
まず、剥離層102を除去するエッチング剤115を導入する。エッチング剤としては、ハロゲン化物、代表的にはフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用することができる。例えばフッ化ハロゲンとしてClF3(三フッ化塩素)を使用することができる。なお、ClF3は、塩素を200℃以上でフッ素と反応させることにより、Cl2(g)+3F2(g)→2ClF3(g)の過程を経て生成することができる。またClF3は、反応空間の温度によっては液体の場合もあり(沸点11.75℃)、その際にはフッ化ハロゲンを含む液体としてウェットエッチングを採用することもできる。その他のフッ化ハロゲンを含む気体として、ClF3等に窒素を混合したガスを用いてもよい。
また、剥離層102をエッチングし、下地絶縁膜をエッチングしないようなエッチング剤であれば、ClF3に限定されるものでなく、またフッ化ハロゲンに限定されるものでもない。例えば、CF4、SF6、NF3、F2等のフッ素を含む気体をプラズマ化して用いることもできる。その他のエッチング剤として、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)のような強アルカリ溶液を用いてもよい。
さらに、ClF3等のフッ化ハロゲンを含む気体によって化学的に除去する場合、選択的にエッチングされる材料を剥離層102として用い、エッチングされない材料を下地膜として用いるという条件に従うならば、剥離層102及び下地絶縁膜の組合せは、上記材料に限定されるものではない。
本実施の形態では、図15に示すような複数の基板を一度に処理することのできる減圧CVD装置を用い、エッチング剤:ClF3(三フッ化塩素)ガス、温度:350℃、流量:300sccm、気圧:6Torr、時間:3hの条件で剥離層102を除去することができるが、この条件に限定されるものではない。このような、減圧CVD装置により、薄膜集積回路の量産性を高めることができる。
また図15に示す減圧CVD装置は、複数の絶縁基板100を処理することができるようなベルジャー89を有する。そして、ガス導入管よりClF3 115が導入され、排気管92より不要なガスが排気される。このとき、接続領域106や、剥離層102が形成されない領域104により薄膜集積回路は絶縁基板100に固定されているため、排気管へ吸い込まれたり、飛散する恐れがない。また薄膜集積回路は接続領域によって一体化されているため、吸い込まれることはない。
さらに減圧CVD装置の側面には加熱手段、例えばヒータ91を設けてもよい。加熱手段により処理温度を100℃〜300℃とすると剥離層102とエッチング剤の反応速度を高めることができる。その結果、エッチング剤の使用量を少なくすることができ、処理時間を短縮することもできる。
このようなエッチング剤の導入により、剥離層102を徐々に後退させて、除去することができる。
エッチング剤の導入時、TFT層103がエッチングされないようにエッチング剤、ガス流量、温度等を設定する。本実施の形態で用いるClF3は、珪素を選択的にエッチングする特性があるため、剥離層102を選択的に除去することができる。さらにTFT層103がエッチングされないように、下地絶縁膜には酸素、又は窒素を有する絶縁膜を用いると好ましい。これら剥離層と、下地絶縁膜との反応速度の差、つまり選択比が高いため、薄膜集積回路を保護しつつ、剥離層102を容易に除去することができる。本実施例では、TFT層103の上下に設けられた酸化窒化珪素等からなる、露出した層間絶縁膜、ゲート絶縁膜、又は配線等の側面により、TFT層がエッチグ剤と反応することを防止できる。
剥離層102を除去後の工程を、図3及び図4を用いて説明する。図3(A)に示すように、剥離層102を除去する。次いで図3(B)に示すように、薄膜集積回路101を固定するための接着面を備える手段140を貼り付ける。接着面を備える手段としては、シリコーンゴム、パーフロロエラストマー、フルオンアフラス、テフロン(登録商標)ゴム等を使用することができる。特に、パーフロロエラストマー、フルオンアフラスは、耐熱性、耐薬品性の高く好ましい。
その後、図3(C)に示すように、絶縁基板100を剥離(分離とも呼ぶ)する。このとき、接着面を備える手段140の接着強度は、剥離層が形成されない領域104の接着強度より高くなるように設定する。ただし、剥離層が形成されない領域104は、絶縁基板100にTFT層等が直接成膜されており、接着力が強いため、絶縁基板100上に少なくともその一部が残留しても構わない。これを踏まえて、剥離層が形成されていない領域104による絶縁基板への固定強度は、絶縁基板100が剥離できるものであればよい。
また絶縁基板100を剥離後であっても、薄膜集積回路同士は、接続領域106により接続され、一体化された状態を維持することができる。
剥離された絶縁基板100は再利用することができる。その結果、薄膜集積回路の低コスト化を達成することができる。再利用する場合、溝105を形成するためのダイシングやスクライビング等において、絶縁基板100に傷が生成されないように制御するのが望ましい。しかし、傷がついた場合であっても、有機樹脂や無機膜を塗布法や液滴吐出法によって形成し、平坦化処理を行って用いることができる。なお液滴吐出法とは、導電膜や絶縁膜などの材料が混入された組成物の液滴(ドットとも呼ぶ)を選択的に吐出(噴出)する方法であり、その方式によっては、インクジェット法とも呼ばれる。また溝105をなくし平坦化処理を行うため、絶縁基板100を研磨してもよい。
次いで図4(A)に示すように、接着剤141を用いて、薄膜集積回路を別基体142へ接着することができる。別基体142は、可撓性を有するフレキシブル基板が好ましい。フレキシブル基板には、ポリエチレン-テレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチックや、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板を用いることができる。
接着剤141としては、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂系接着剤、樹脂添加剤等の接着剤又は両面テープ等を用いることができる。
フレキシブル基板へ移し替える結果、薄膜集積回路の柔軟性が向上し、破壊強度を高めることができる。また絶縁基板100上に形成された薄膜集積回路と比べて、軽量化、薄型化を達成でき、可撓性を高めることができる。
なお、別基体142をあえて用意する必要もなく、実装する物品の表面へ接着してもよい。すなわち薄膜集積回路101は、絶縁基板100を除去し、物品へそのまま実装することができる。そのため、薄膜集積回路の薄膜化、及び実装する物品に実装した状態の薄膜化、及び軽量化を達成することができる。
その後図4(B)に示すように、接着面を備える手段140を除去する。そのため、接着面を備える手段140が有する接着面の接着強度は、接着剤141の接着強度より低くなるように設定する。その結果、接着面を備える手段140を簡便に除去、剥離することができる。
最後に図4(C)に示すように、薄膜集積回路をダイシング、スクライビング、又はレーザカット法により切断する。例えば、別基体142に吸収されるレーザを使用して切断することができる。例えばCO2レーザを使用することができる。
また薄膜集積回路の側面等の周囲に、エポキシ樹脂等の有機樹脂を充填してもよい。その結果、薄膜集積回路は外部から保護され、持ち運びしやすい形態となる。
このように切断される薄膜集積回路の面積は、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)とすることができる。
このような絶縁基板100に薄膜集積回路を形成する場合、円形のシリコンウェハからチップを取り出すICチップと比較して、母体基板形状に制約がない。そのため、薄膜集積回路の大量生産を行なうことができる。さらに絶縁基板100を再利用することができるため、コストを削減することができる。
また本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハからなるICチップと異なり、0.2μm以下、代表的には40nm〜170nm、好ましくは50nm〜150nmの膜厚の半導体膜を能動領域として有し、非常に薄型となることを特徴とする。その結果、物品へ実装しても、薄膜集積回路の存在が認識しづらく、改ざん防止につながる。
このような薄型の薄膜集積回路は、フレキシブル基板に移し替える方法をとることもできるため、シリコンウェハから形成されるICチップと比較して破損しにくく、強度を高めることができる。
また本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハを有さないため、シリコンウェハから形成されるICチップと比較して、電波吸収の心配がなく、高感度な信号の受信を行なうことができる。
さらに本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハを有さないため、透光性を有することができる。その結果、実装物品の印字面に実装しても、デザイン性を損ねることがない。
また本発明の薄膜集積回路は、アンテナにより電力、又は信号を得ることができる。このアンテナは、薄膜集積回路上に形成することができる。また別途基板に形成されたアンテナを張り合わせることもできる。張り合わせるとは、接着剤を用いて接着する以外に、接着剤により固定する状態を含む。
また詳しく述べると、薄膜集積回路を有するチップ、つまりIDFチップは、アンテナが実装されている非接触型IDFチップ(無線タグとも呼ばれる)、アンテナは実装せずに外部電源と接続する端子を形成した接触型IDFチップ、非接触型及び接触型とを混在したハイブリッド型IDFチップがある。本実施の形態で示した薄膜集積回路は、非接触型IDFチップ、接触型IDFチップ、及びハイブリッド型IDFチップのいずれにも適用することができる。
すなわち本発明の薄膜集積回路の作製方法は、非接触型IDFチップ、接触型IDFチップ、及びハイブリッド型IDFチップのいずれに適用しても、ばらばらに分離することを防止できる効果を奏する。
さらに本発明の薄膜集積回路は絶縁基板100上に形成するため、円形のシリコンウェハから形成されたICチップと比較して、母体基板形状に制約がない。そのため、薄膜集積回路の量産性を高め、大量生産を行なうことができる。その結果、薄膜集積回路のコストの削減が期待できる。単価が非常に安い薄膜集積回路は、単価コストの削減により非常に大きな利益を生むことができる。
例えば、直径12インチのシリコンウェハを用いた場合と、730×920mm2のガラス基板を用いた場合とで取り数等を比較する。前者のシリコンウェハの面積は約73000mm2であるが、後者のガラス基板の面積は約672000mm2であり、ガラス基板はシリコンウェハの約9.2倍に相当する。後者のガラス基板の面積は約672000mm2では、基板の分断により消費される面積を無視すると、1mm四方の薄膜集積回路が約672000個形成できる計算になり、その個数はシリコンウェハの約9.2倍の数に相当する。そして薄膜集積回路の量産化を行なうための設備投資は、7300×9200mm2のガラス基板を用いた場合の方が直径12インチのシリコンウェハを用いた場合よりも工程数が少なくて済むため、額を3分の1で済ませることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示した薄膜集積回路の製造装置の例を示す。
図6には、送り出し用キャリア201、送り出し用エレベータ202、ベルトコンベア203、転置用ローラー204、フィルムの送り出し用ロール205、取り出し用キャリア206、取り出し用エレベータ207、ローラー208a、208b、208c、208d、動作評価用装置209、フィルム送り出し用ロール210、アライメント装置211、巻き取り用ロール212を示す。なおフィルムの送り出し用ロール205からは、薄膜集積回路の上面に対して接着面を備えるもの、所謂テープが送り出される。
図2に示したように、剥離層102が除去された薄膜集積回路は、送り出し用キャリア201から搬送され、ベルトコンベア203上に配置される。すると、接着面を備える支持基体に相当する転置用ローラー204に、接続領域106により接続されている薄膜集積回路が転置される。転置用ローラー204が、実施の形態1に示した接着面を備える手段140に相当する。このような転置用ローラー204は、シリコン系樹脂、又はフッ素系樹脂により形成することができる。具体的には、シリコーンゴム、パーフロロエラストマー、フルオンアフラス、テフロン(登録商標)ゴム等により形成することができる。特に、パーフロロエラストマー、フルオンアフラスは、耐熱性、耐薬品性の高く好ましい。これら材料からなる転置用ローラー204は、その表面に粘着性を有する。
このとき、転置用ローラー204の接着強度は、剥離層102が形成されない領域104の接着強度より高くなるように設定しているため、薄膜集積回路のみを転置し、絶縁基板100はそのままベルトコンベア203により移動することによって、絶縁基板100を剥離することができる。ただし、剥離層が形成されない領域104は、絶縁基板100に直接成膜されており、接着力が強いため、絶縁基板100上に少なくともその一部が残留することもある。すなわち、剥離層が形成されていない領域104の接着強度は、絶縁基板100を剥離することができる強度であればよい。
そして絶縁基板100を回収し、再利用することができる。すなわち図3(B)及び(C)、図4(A)及び(B)に示した工程を、転置用ローラー204により効率よく行なうことができる。
その後フィルムの送り出し用ロール205から、接着面を備えるフィルム、例えばスコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ張り合わせたもの等が送り出される。これらのフィルムは、エッチングガスに対する耐性を有し、熱耐性が強いと好ましい。そして、ローラー208aにより、転置された薄膜集積回路に接着面を備えるフィルムを張り合わせることができる。接着面を備えるフィルムには、ホットメルトフィルム等の接着力が強いフィルムを用いることができる。
なお接着面を備えるフィルムには、アンテナが形成されていてもよい。その場合、ローラー208aの近傍にアライメント装置を設けるとよい。またアンテナの間隔と、薄膜集積回路の間隔が異なる場合、伸展性フィルムにアンテナを形成し、フィルムを引っ張りながらアンテナと薄膜集積回路を張り合わせてもよい。
フィルムが張り合わされた薄膜集積回路は、ローラー208b等により、動作評価用装置209の前方を通過する。このとき薄膜集積回路の動作を非接触で確認することもできる。例えば、動作評価用装置としてリーダ\ライタ装置を用い、アンテナが実装された薄膜集積回路が搬送されてくると、所定の信号を送信し当該信号を返信するか否かによって動作を確認することができる。
このとき例えば、730×920mm2のガラス基板を用いて薄膜集積回路を形成すると、1mm四方のIDタグが約672000個作製することができるため、動作確認は、ランダムに選択された薄膜集積回路に対して行なう。
その後、保護フィルム送り出し用ロール210より、保護膜として機能するフィルム(保護フィルム)、例えばラミネート加工用フィルム、スコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ張り合わせたもの等が送り出される。これらの保護フィルムは、エッチングガスに対する耐性を有し、熱耐性が強いと好ましい。そしてアライメント装置211、例えばCCDカメラにより、張り合わせのアライメントを制御し、薄膜集積回路に保護フィルムを張り合わせる。
最後に、巻き取り用ロール212に完成した薄膜集積回路が巻き取られる。
その後、図4(C)に示したように、物品へ実装するときに薄膜集積回路を切断する。そのため、巻き取り用ロール212に巻き取られた状態で薄膜集積回路の移動、又は取引を行なうことができる。その結果、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)と、非常に微少な薄膜集積回路がばらばらに分離することなく、簡便な作製、移動を行なうことができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、薄膜集積回路を固定する手段として薄膜集積回路を押さえる手段を用いた、薄膜集積回路の作製方法について説明する。また薄膜集積回路等、実施の形態1と同様な構成に関する説明は省略し、異なる構成について説明する。
図7(A)に示すように、実施の形態1と同様に、絶縁基板100に、剥離層102、半導体膜を能動領域として有するTFT層103を順次形成し、薄膜集積回路101を複数形成する。また図7(B)は図7(A)のa−bの断面図、図7(C)は図7(A)のc−dの断面図を示す。
このとき、実施の形態1と異なり、剥離層102が形成されない領域は設けなくともよい。すなわち、絶縁基板100全面に、剥離層102を形成してもよい。その結果、接続領域106を大きくとることができる。
TFT層103形成後、実施の形態1と同様に溝105を形成する。
その後、薄膜集積回路を押さえる手段150を張り合わせる。張り合わせるとは、接着剤を用いて接着する以外に、接着性により固定する状態を含む。薄膜集積回路を押さえる手段は、例えばシリコン系樹脂、又はフッ素系樹脂等の接着性(粘着性)を有するものを用いることができる。具体的には、シリコーンゴム、パーフロロエラストマー、フルオンアフラス、テフロン(登録商標)ゴム等を用いることができる。特に、パーフロロエラストマー、フルオンアフラスは、耐熱性、耐薬品性の高く好ましい。
このとき、薄膜集積回路を押さえる手段には、開口部151が設けられている。開口部151の形状は、円状、矩形状等とすることができ、図7に示す形状に限定されない。開口部151は、薄膜集積回路間に形成された溝105と重なるように設ける。但し、開口部151の形状、大きさや数は、溝105と同一でなくともよい。すなわち、開口部151、溝105の形状、大きさや数は、剥離層102を除去するためのエッチング剤を導入することができるように設定すればよい。また、開口部151と、溝105は同時に形成することも可能である。
その後、薄膜集積回路を押さえる手段150が張り合わされた状態で、開口部151及び溝105へ、エッチング剤115を導入し、剥離層102を除去する。エッチング剤は、薄膜集積回路を押さえる手段と反応しないものを用いる。具体的なエッチング剤や処理時間等は、実施の形態1を参照することができる。そして、絶縁基板100を剥離する。
このように、薄膜集積回路を押さえる手段150によって、薄膜集積回路がばらばらに分離することを防止できる。
その後、図8に示すように、接着剤141を用いて、薄膜集積回路を別基体142へ接着することができる。また図8(B)は図8(A)のa−bの断面図、図8(C)は図8(A)のc−dの断面図を示す。そして、薄膜集積回路を押さえる手段150を除去する。そのため、薄膜集積回路を押さえる手段150の接着強度は、接着剤141の接着強度より低くなるように決定する。
次いで図9に示すように、薄膜集積回路をダイシング、スクライビング、又はレーザカット法により切断する。また図9(B)は図9(A)のa−bの断面図、図9(C)は図9(A)のc−dの断面図を示す。
また薄膜集積回路の側面等の周囲に、エポキシ樹脂等の有機樹脂を充填してもよい。その結果、薄膜集積回路は外部から保護され、持ち運びしやすい形態となる。
このように切断される薄膜集積回路の面積は、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)とすることができる。
このような絶縁基板に薄膜集積回路を形成する場合、円形のシリコンウェハから作製されたICチップと比較して、母体基板形状に制約がない。そのため、薄膜集積回路の量産性を高め、大量生産を行なうことができる。さらに絶縁基板100を再利用することができるため、コストを削減することができる。
また本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハからなるICチップと異なり、0.2μm以下、代表的には40nm〜170nm、好ましくは50nm〜150nmの膜厚の半導体膜を能動領域として有し、非常に薄型となることを特徴とする。その結果、物品へ実装しても、薄膜集積回路の存在が認識しづらく、改ざん防止につながる。
このような薄型の薄膜集積回路の強度を高める場合、フレキシブル基板に移し替える方法をとることもできるため、シリコンウェハから形成されるICチップと比較して破損しにくい特徴を有する。
また本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハを有さないため、シリコンウェハから形成されるICチップと比較して、電波吸収の心配がなく、高感度な信号の受信を行なうことができる。
さらに本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハを有さないため、透光性を有することができる。その結果、実装物品の印字面に実装しても、デザイン性を損ねることがない。
本発明の薄膜集積回路は、アンテナにより電力、又は信号を得ることができる。このアンテナは、薄膜集積回路上に直接形成することができる。また、別途基板に形成されたアンテナを張り合わせることができる。アンテナと張り合わせる場合、異方性導電体を用いて張り合わせれば、電気的に接続することができる。
また本発明の薄膜集積回路は、非接触型IDFチップ、接触型IDFチップ、及びハイブリッド型IDFチップのいずれにおいても、ばらばらに分離することを防止できる効果を奏する。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示した薄膜集積回路の製造装置の例を示す。
図13(A)から(E)には、送り出し用キャリア401、基板移動用アーム400、治具403、エッチング剤導入用チャンバー405、エッチング剤導入口406、エッチング剤搬出口407、治具移動用アーム408、ベルトコンベア410、フィルムの送り出し用ロール411、巻き取り用ロール412、フィルム送り出し用ロール413、アライメント装置414を示す。
図13(A)に示すように、剥離層102を除去する前の状態の薄膜集積回路は、送り出し用キャリア401から送り出し用エレベータ402を用いて搬送される。このとき、剥離層102により薄膜集積回路は、ばらばらに分離することなく移動することができる。
そして図13(B)に示すように、基板移動用アーム400を用いて、絶縁基板100に形成された薄膜集積回路を挟み込んで持ち上げ、図13(C)に示すエッチング剤導入用チャンバー405へ設置する。また絶縁基板100に形成された薄膜集積回路を下方からすくい上げ、チャンバー405の下部へ絶縁基板100を端から入れることもできる。すなわち、絶縁基板100に形成された薄膜集積回路をチャンバー405へ設置を可能とする手段であれば、ガラス移動用アーム400に限定されない。
このときチャンバー405には、治具403が設置されている。この治具は、取り外しを可能とするため、当該治具の側面が狭持されるようにして設置されるとよい。治具403は、シリコン系樹脂、又はフッ素系樹脂を用いて作製することができる。具体的にはシリコーンゴム、パーフロロエラストマー、フルオンアフラス、テフロン(登録商標)ゴム等を用いることができ、薄膜集積回路の間隔、つまり溝105の間隔に合わせて、開口部(151に相当)が設けられている。これら材料から形成される治具403は、その表面に粘着性を有することができる。そして図13(D)に示すように、チャンバー405を閉じると、治具403が薄膜集積回路へ押しつけられ、薄膜集積回路を押さえる手段として機能する。
この状態で、エッチング剤導入口406からエッチング剤を導入し、エッチング剤搬出口407から排出する。エッチング剤は、チャンバー405の上方に設けられた薄膜集積回路を押さえる手段(例えばシリコーンゴムに相当する)に形成された開口部を通って、剥離層102を除去する。そして、絶縁基板100を剥離することができる。剥離された絶縁基板100は再利用することができる。このとき、チャンバー405内に残った絶縁基板100は吸着パッド等により取り出せばよい。以上により、図7に示した工程が効率よく行われる。
剥離層102除去後、図13(E)に示すように、治具移動用アーム408、及び治具403により薄膜集積回路を接着し、移動することができる。治具403は、例えばシリコーンゴムを用いることができ、その表面は粘着性を有する。このとき治具403により、薄膜集積回路はばらばらに分離することなく移動することができる。
その後、フィルムの送り出し用ロール411から送り出される、接着面を備えるフィルム、例えばスコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ張り合わせたもの等に、薄膜集積回路は転置される。そのため、治具403の接着強度は、接着面を備えるフィルムの接着強度より低くなるように決定する。
なお接着面を備えるフィルムには、アンテナが形成されていてもよい。またアンテナの間隔と、薄膜集積回路の間隔が異なる場合、伸展性フィルムにアンテナを形成し、フィルムを引っ張りながらアンテナと薄膜集積回路を張り合わせてもよい。
以上により、図8に示した工程が効率よく行われる。
その後、フィルム送り出し用ロール413より、保護膜として機能するフィルム(保護フィルム)、例えばラミネート加工用フィルム、スコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ張り合わせたもの等が送り出される。これらの保護フィルムは、エッチングガスに対する耐性を有し、熱耐性が強いと好ましい。そしてアライメント装置414、例えばCCDカメラにより、張り合わせのアライメントを制御し、薄膜集積回路に保護フィルムを張り合わせる。
最後に、巻き取り用ロール412に完成した薄膜集積回路が巻き取られる。
その後、図9に示したように、物品へ実装するときに薄膜集積回路を切断する。そのため、巻き取り用ロール412に巻き取られた状態で薄膜集積回路の移動、又は取引を行なうことができる。その結果、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)と、非常に微小な薄膜集積回路がばらばらに分離することなく、簡便な作製、移動、又は取引を行なうことができる。
また本実施の形態に示す製造装置においても、動作評価用装置209を搭載することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1に示した剥離層を形成しない領域を設ける方法と、実施の形態3に示した薄膜集積回路を押さえる手段を組み合わせた薄膜集積回路の作製方法について説明する。
図10に示すように、剥離層102が形成されない領域104及び接続領域106が形成された薄膜集積回路101へ、開口部151が設けられた薄膜集積回路を押さえる手段150を張り合わせる。
その後、図11に示すように、開口部151、及び溝105に、エッチング剤115を導入し、剥離層102を除去する。また図11(A)は図10のa−bの断面図、図11(B)は図10のc−dの断面図を示す。
次いで、薄膜集積回路を押さえる手段150によりばらばらに分離することがない状態で、絶縁基板100を剥離する。そのため、薄膜集積回路を押さえる手段150を張り合わせるための接着剤の接着強度は、絶縁基板100を剥離することができるように決定する。
次いで図12に示すように、接着剤141を用いて、薄膜集積回路を別基体142へ接着することができる。また図12(B)は図12(A)のa−bの断面図、図12(C)は図12(A)のc−dの断面図を示す。
その後、薄膜集積回路を押さえる手段150を除去する。そのため、薄膜集積回路を押さえる手段150の接着強度は、接着剤141の接着強度より低くなるように決定する。
次いで、薄膜集積回路101をダイシング、スクライビング、又はレーザカット法により切断する。
また薄膜集積回路の側面等の周囲に、エポキシ樹脂等の有機樹脂を充填してもよい。その結果、薄膜集積回路は外部から保護され、持ち運びしやすい形態となる。
このように切断される薄膜集積回路の面積は、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)とすることができる。
以上のように、実施の形態1及び3は自由に組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、アンテナの作製方法について説明する。
まず、アンテナ用の基板(アンテナ用基板)へアンテナを形成する場合について説明する。
図22に示すように、アンテナ用基板501にアンテナ502を形成する。アンテナ用基板はバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、ポリエチレン-テレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチックや、アクリル等のフレキシブル基板を用いることができる。アンテナ用基板は薄い方が好ましいため、フィルム状の基板が好ましい。なお図22では、アンテナ用基板へ矩形状に巻かれたアンテナを形成する場合を説明するが、アンテナの形状や長さはこれに限定されない。例えば、円状、又は線状のアンテナであってもよい。またアンテナの長さは、通信周波数によって選択することができる。
アンテナは、印刷法、スパッタリング法、液滴吐出法、メッキ法、フォトリソグラフィー法及びメタルマスクを用いた蒸着法のいずれか、又はそれらを組み合わせた方法により形成することができる。組み合わせた方法として例えば、スパッタリング法、液滴吐出法、印刷法、フォトリソグラフィー法及び蒸着法のいずれかにより第1のアンテナを形成し、メッキ法(無電解メッキ、又は電解メッキ)により第1のアンテナを覆うように第2のアンテナを形成した、積層型アンテナを形成することもできる。またアンテナを液滴吐出法、又は印刷法により形成する場合、導電膜をパターニングする必要がないため、作製工程を低減することができ好ましい。
アンテナ材料には、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Au(金)、Cu(銅)、Pt(白金)等の導電材料を用いることができる。上記材料のうち配線抵抗が懸念される場合、アンテナを厚くすることにより低減することができる。また、アンテナ形成面積が広いときには、アンテナの幅を広くすることで配線抵抗を低減することができる。また上述したように積層型アンテナとし、抵抗の低い材料で覆うことで配線抵抗を低減してもよい。一方、Cuのように抵抗が低いが、その拡散が懸念される導電材料は、アンテナの被形成面及び/又はCuの周囲を覆うように絶縁膜を形成するとよい。
液滴吐出法においては、溶媒としてテトラデカンに混入されたAgをノズルより滴下して、アンテナを形成することができる。このときAgの密着性を高めるため、アンテナ用基板上に酸化チタン(TiOx)からなる下地膜を形成してもよい。
アンテナには、接続端子503を形成するとよい。当該接続端子により、簡便に薄膜集積回路と接続することができる。なお接続端子は、必ずしも設ける必要はなく、図22の形状及び配置に限定されるものではない。
以上のように形成されたアンテナに、圧力を加えて平坦性を向上させてもよい。その結果、アンテナを薄膜化することができる。加圧に加えて、加熱を施してもよく、さらに加圧処理と加熱処理とを同時に行うこともできる。液滴吐出法を用いる場合、溶媒を除去するために加熱処理を行う必要があるときは、加圧処理と加熱処理とを同時に行うとよい。
またアンテナ用基板に溝を形成し、当該溝にアンテナを形成してもよい。溝にアンテナを形成することができるため、アンテナ用基板及びアンテナの薄膜化を達成することができる。
またアンテナは、アンテナ用基板の両面に形成することもできる。その場合、アンテナ用基板の両面に、上記と同様な方法によりアンテナを形成すればよい。その結果、アンテナ長を延ばすことができるため、通信距離を長くでき、通信感度を高めることができる。
以上のように形成されたアンテナ用基板は、図6に示したフィルムの送り出し用ロール205や図13に示したフィルムの送り出し用ロール411から送り出すことができる。すなわちアンテナ用基板は、薄膜集積回路を押さえる手段としての機能を奏することができる。
次いで、薄膜集積回路にアンテナを一体形成する場合について図23を用いて説明する。上記実施の形態と同様に、絶縁基板100上に配線130を有するTFT層103を形成する。そして配線130を覆うように絶縁膜505を形成する。絶縁膜505は、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)(x、y=1、2・・・)等の酸素、又は窒素を有する絶縁膜の単層構造、又はこれらの積層構造を有するように形成する。アンテナ材料にCu等の拡散が懸念される導電材料を用いる場合、窒素を有する絶縁膜を少なくとも有するように形成するとよい。また薄膜集積回路を実装する物品は、手で触れることが多いため、Na等のアルカリ金属の拡散が懸念されるため、絶縁膜505は、窒素を有する絶縁膜を少なくとも有するように形成するとよい。
その後、アンテナ502を形成する。アンテナの材料や作製方法は、図22を用いた説明を参照することができる。
また、配線130と、アンテナ502とを接続するため、絶縁膜505に開口部を形成する。このとき、接続端子503の下方に開口部を形成すればよい。
以上、アンテナを配線130上の絶縁膜505に形成する場合を説明したが、配線130と同一層に形成してもよい。
このように形成されるアンテナを実装することにより、非接触型IDFチップ、及びハイブリッド型IDFチップを形成することができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、薄膜集積回路を実装した物品について説明する。
セキュリティ確保を目的として、多様な物品へ薄膜集積回路を有するチップを実装する場合を説明する。セキュリティ確保とは、盗難防止又は偽造防止の面から捉えることができる。
盗難防止の例として、バッグに非接触型IDFチップを実装する場合を説明する。図16(A)に示すように、バッグ301に非接触型IDFチップ300を実装する。例えば、バッグの底又は側面の一部等にIDFチップを実装することができる。非接触型IDFチップは非常に薄型で小さいため、バッグのデザイン性を低下させずに実装することができる。加えて非接触型IDFチップ300は透光性を有し、盗難者は非接触型IDFチップが実装されているかを判断しにくい。そのため、盗難者によって非接触型IDFチップ300が取り外される恐れが低減する。
このような非接触型IDFチップ実装バッグ301が盗難された場合、例えば図16(B)に示すようなGPS(Global Positioning System)を用いてバッグの現在位置に関する情報を得ることができる。なおGPSとは、GPS用の衛星302から送られる信号をとらえてその時間差を求め、これをもとに測位するシステムである。この衛星からの情報を電子機器、例えば携帯電話機303により受信し、バックの現在位置に関する情報を表示させることができる。
また盗難された物品以外にも忘れ物や落とし物を、GPSを用いて現在位置に関する情報を得ることができる。
またバッグ以外にも、自動車、自転車等の乗物、時計やアクセサリーにIDFチップを実装することができる。
次に偽造防止の例として、パスポートや免許証等にIDFチップを実装する場合を説明する。
図17(A)に、IDFチップ300を実装したパスポート311を示す。図17(A)ではIDFチップ300がパスポートの表紙に実装されているが、その他のページに実装してもよく、IDFチップ300は透光性を有するため表面に実装してもよい。またIDFチップを表紙等の材料で挟み込むようにし、表紙の内部に実装することも可能である。
図17(B)には、IDFチップ300を実装した免許証312を示す。図17(B)では、IDFチップ300が免許証の内部に実装されている。またIDFチップ300は透光性を有するため、免許証の印刷面上に設けても構わない。例えば、IDFチップは免許証の印字面上に実装し、ラミネートで覆うことができる。またIDFチップを免許証の材料で挟み込むようにし、内部に実装することも可能である。
以上のような物品にIDFチップを実装することにより、偽造を防止することができる。また上述したバッグにIDFチップを実装し、偽造を防止することもできる。加えて非常に薄型で小さいIDFチップを用いるため、パスポートや免許証等のデザイン性を損ねることがない。さらにIDFチップは透光性を有するため、表面に実装しても構わない。
またIDFチップにより、パスポートや免許証等の管理を簡便に行なうことができる。さらにパスポートや免許証等に直接情報を記入することなく、IDFチップに保存することができるため、プライバシーを守ることができる。
IDFチップは、非常に薄型で小さく、更に可撓性を備えることができるため、シート状の物品へ実装することができる。例えば、シート状物品として紙幣へIDFチップを実装する場合を説明する。
図18に示すように、紙幣313に非接触型IDFチップ300を実装する。図18では、IDFチップは紙幣の内部に実装する形態を示すが、表面に露出してもよい。
またIDFチップを含有するインクを用いて紙幣を印刷してもよい。さらに、紙幣の材料と薬品とを混ぜ合わせるときに、IDFチップをばらまいて、複数のIDFチップを実装した紙幣としてもよい。IDFチップは低コストで生産することができるため、複数のIDFチップを実装しても紙幣コストに影響を及ぼすことが少なくてすむ。
また紙幣以外の有価証券、例えば株券や小切手、又は硬貨にIDFチップを実装してもよい。
このようなシート状物品は、曲げる機会が多いため、IDFチップへの曲げ応力を考慮する。
例えば、IDFチップ実装の紙幣が長軸方向に曲がる状態で説明する。なお一般的に、シート状物品は、長軸方向に曲がりやすい、又は曲げやすいため、長軸方向に曲げる場合で説明する。曲げた状態のとき、IDFチップ300が有する薄膜トランジスタは、ソース領域、チャネル形成領域、ドレイン領域は、曲げる方向と、キャリアの移動方向とが垂直になるように配置すると好ましい。すなわち薄膜トランジスタのソース領域、チャネル形成領域、ドレイン領域の配置を、曲げる方向と垂直になるようにする。その結果、曲げ応力による薄膜トランジスタの破壊や剥がれを防止することができる。
また図14に示すように、レーザ照射を用いた結晶性半導体膜を用いる場合、レーザ走査方向(X軸方向)も曲げる方向と垂直となるように設定すると好ましい。
このような方向にIDFチップを曲げることにより、IDFチップ、特に薄膜トランジスタを破壊することがなく、さらにキャリアの移動方向に存在する結晶粒界を極力低減することができる。その結果、薄膜トランジスタの電気特性、特に移動度を向上させることができる。
加えて、パターニングされた半導体膜がIDFチップにおいて占める面積の割合を、1〜30%とすることで、曲げ応力による薄膜トランジスタの破壊や剥がれを防止することができる。
次に安全管理を行なうため、食料品等の商品へIDFチップを実装する場合を説明する。
図19には非接触型IDFチップ300を実装したラベル320と、当該ラベルが貼られた肉のパック321を示す。IDFチップ300はラベルの表面に実装していてもよいし、ラベル内部に実装してもよい。また野菜等の生鮮食品の場合、生鮮食品を覆うラップにIDFチップを実装してもよい。
このようにラベルにIDFチップを実装する場合、アンテナサイズを大きくしても構わない。アンテナサイズが大きくなるにつれ、リーダ装置との通信距離を長くでき、通信感度を高めることができる。
IDFチップには、商品の生産地、生産者、加工年月日、賞味期限等の商品に関する基本事項、更には商品を用いた調理例等の応用事項を記録することができる。このような基本事項は、書き換える必要がないためマスクROM等の書き換え不能なメモリを用いて記録するとよい。また応用事項は、EEROM等の書き換え、消去可能なメモリを用いて記録するとよい。
また食料品の安全管理を行なうためには、加工前の動植物の状態を知り得ることが重要である。そのため、動植物内にIDFチップを埋め込み、リーダ装置によって動植物に関する情報を取得するとよい。動植物に関する情報とは、飼育地、飼料、飼育者、伝染病の感染の有無等である。
またIDFチップに、商品の値段が記録されていれば、従来のバーコードを用いる方式よりも、簡便、短時間に商品の精算を行なうことが可能となる。例えば、IDFチップが実装された複数の商品を一挙に精算することができる。但し、このように複数のIDFチップを読み取る場合、アンチコリジョン機能を、リーダ機能を有するレジスタに搭載する必要がある。
さらにIDFチップの通信距離によっては、レジスターと商品との距離が遠くても、商品の精算を可能とすることができる。またIDFチップは万引き防止にも役立つ。
さらにIDFチップは、バーコード、磁気テープ等のその他の情報媒体と併用することもできる。例えば、IDFチップには書き換え不要な基本事項を記録し、バーコードには更新すべき情報、例えば値引き価格や特価情報を記録するとよい。
このようにIDFチップを実装することにより、消費者へ提供できる情報を増大させることができ、消費者は安心して商品を購入することができる。
物流管理を行なうため、ビール瓶等の商品へ非接触型IDFチップを実装する場合を説明する。図20(A)に示すように、ビール瓶326にIDFチップ300を実装する。例えば、ラベル325を用いてIDFチップ300を実装することができる。ラベルへ実装する場合、アンテナサイズを大きくすることができる。その結果、通信距離を長くしたり、通信感度を高めることができる。
IDFチップには、製造日、製造場所、使用材料等の基本事項を記録する。このような基本事項は、書き換える必要がないためマスクROM等の書き換え不能なメモリを用いて記録するとよい。加えてIDFチップには、各ビール瓶の配送先、配送日時等の個別事項を記録する。例えば、図20(B)に示すように、各ビール瓶がベルトコンベア327により流れ、ライタ装置328を通過するときに、各配送先、配送日時を記録することができる。このような個別事項は、EEROM等の書き換え、消去可能なメモリを用いて記録するとよい。
また配達はケース毎に行われるため、ケース毎、又は複数のケース毎にIDFチップを実装し、個別事項を記録することもできる。
また配達先から購入された商品情報がネットワークを通じて物流管理センターへ送信されると、この商品情報に基づき、ライタ装置又は当該ライタ装置を制御するパーソナルコンピュータ等が配送先や配送日時を算出し、IDFチップへ記録するようなシステムを構築するとよい。
このような複数の配達先が記録されうる飲料品は、IDFチップを実装することにより、手作業で行なう入力にかかる時間を削減でき、それに起因した入力ミスを低減することができる。加えて物流管理の分野において最もコストのかかる人件費用を削減することができる。IDFチップを実装したことにより、ミスの少ない、低コストな物流管理を行なうことができる。
さらに配達先において、ビールに合う食料品や、ビールを使った料理法等の応用事項を記録してもよい。その結果、食料品等の宣伝を兼ねることができ、消費者の購買意欲を高めることができる。このような応用事項は、EEROM等の書き換え、消去可能なメモリを用いて記録するとよい。このようにIDFチップを実装することにより、消費者へ提供できる情報を増大させることができ、消費者は安心して商品を購入することができる。
次に製造管理を行なうため、IDFチップを実装した製造品と、当該IDFチップの情報に基づき制御される製造装置(製造ロボット)について説明する。
現在、オリジナル商品を生産する場面が多くみられ、このような場合、生産ラインでは当該商品のオリジナル情報に基づき生産される。例えば、ドアの塗装色を自由に選択することができる自動車の生産ラインにおいては、自動車の一部にIDFチップを実装し、当該IDFチップからの情報に基づき、塗装装置を制御する。そして購入者の希望に応じて塗装された自動車をそれぞれ生産することができる。IDFチップを実装する結果、事前に生産ラインに投入される自動車の順序や同色を有する数を調整する必要がない。強いては、自動車の順序や数それに合わせるように塗装装置を制御するプログラムを設定しなくてすむ。すなわち製造装置は、自動車に実装されたIDFチップの情報に基づき、個別に動作することができる。
このようにIDFチップは様々な場所で使用することができる。そしてIDFチップに記録された情報により、製造に関する固有情報を得ることができ、当該情報に基づき製造装置を制御することができる。
次に、接触型IDFチップを用いたICカードを、電子マネーとして利用する形態について説明する。図21に、クレジットカード351を用いて、決済を行なっている様子を示す。クレジットカード351は、接触型IDFチップ350を有している。レジスター352、リーダ/ライタ装置353を設置する。IDFチップ350には、クレジットカード351に入金されている金額の情報が保持されており、リーダ/ライタ装置353は該金額の情報を非接触で読み取り、レジスター352に送信することができる。レジスター352では、クレジットカード351に入金されている金額が、決済する金額以上であることを確認し、決済を行なう。そしてリーダ/ライタ装置353に決済後の残額の情報を送信する。リーダ/ライタ装置353は残額の情報を、IDFチップ350に書き込むことができる。
なおリーダ/ライタ装置353に、暗証番号などを入力することができるキー354を付加し、第三者によってクレジットカード351を用いた決済が無断で行なわれるのを制限できるようにしてもよい。