以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
<第1の実施形態>
図1〜図12を参照して、本発明の第1の実施形態に係る表示端末1について説明する。
図1〜図4を参照して、表示端末1の物理的構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に例示する表示端末1は、携帯用の電子機器に具備可能な小型の電気泳動表示部である表示パネル2と、表示パネル2での画像表示を制御する制御基板3とを、略直方体形状の筐体に備えている。また、図1には図示しないが、表示端末1の側面には、メモリカード87(図5参照)を挿入するためのカードスロットが設けられている。
表示端末1の正面中央に配置された表示パネル2は、一例として正面視縦長の直方体形状をなす。図1に点線で示すように、表示端末1を正面視したときの表示パネル2の奥側には制御基板3が設けられており、表示パネル2と制御基板3とが電気的に接続されている。また、表示パネル2の表示面が配置される表示端末1の正面には、後述する操作キー95、電源ボタン85および温度センサ81が配置されている。
表示パネル2の構造について説明する。図2〜図4に示すように、表示パネル2は、その下面部分に設けられる下部基板10と、その上面部分に設けられる上部基板20とが対向配置され、下部基板10と上部基板20との間に表示部30を備える。なお、図2中のA−A線は、表示端末1の横方向(左右方向)に平行な線を示し、図2中のB−B線は、表示端末1の縦方向(上下方向)に平行な線を示す。
下部基板10は、表示部30に電界を発生させる下部電極12と、下部電極12の上面側に絶縁材料を塗布等して形成した絶縁膜である下部電極保護膜11と、下部電極12の下面側に設けられて表示端末1を支持する筐体支持部13とを備える。下部電極保護膜11は、ポリエチレンテレフタレートやシリカ等の樹脂フィルムやガラスなどの無機材料等の高い絶縁性を発揮可能な材料により形成される。本実施形態では、下部電極保護膜11および筐体支持部13は、可撓性のあるポリエチレンテレフタレートにより構成されたプラスチック基板(樹脂フィルム)である。また、下部電極12は、一定の電圧が印加されるように線状の電気導電体が横方向(A−A線方向)に平行に且つ所定間隔を空けて配設された、複数の電極を具備する基板である。
下部基板10の上方向(図3,4の上方向)には、下部基板10に対向して、かつ平行に所定間隔を空けて上部基板20が設けられる。上部基板20は、表示部30に電界を発生させる上部電極22と、上部電極22の下面側に絶縁材料を塗布等して形成した絶縁膜である上部電極保護膜21と、上部電極22の上面側に設けられて透明な部材により構成されて表示画面として機能する表示層23とを備える。上部電極保護膜21は、ポリイミド,ポリエチレンテレフタレート,ガラスなどの高い透明性を発揮可能な材料により形成される。上部電極22は、一定の電圧が印加されるように線状の電気導電体が縦方向(B−B線方向)に平行に且つ所定間隔を空けて配設された、複数の電極を具備する基板であり、かつ高い透明性を発揮可能な材料により構成される。本実施形態では、上部電極保護膜21はポリエチレンテレフタレートにより構成されたプラスチック基板(樹脂フィルム)である。上部電極22は、酸化インジウムすず(ITO)により形成された透明電極である。表示層23は、ガラス基板である。つまり、上部基板20は透明体であるから、利用者が上部基板20の上方向(図3,4の上方向)から表示部30を視認可能な表示基板として機能する。
表示部30の構造について説明する。図3および図4に示すように、対向して設けられる下部基板10及び上部基板20と、スペーサー31とで形成される間隙が、表示部30である。スペーサー31は、下部基板10及び上部基板20との間隙に架設され、その間隙を格子状に均等に分割して複数の小区画セルを形成するとともに、下部基板10及び上部基板20を支持する。スペーサー31は、格子状に複数の貫通孔が形成された板状部材として構成された可撓性部材であり、例えばポリイミドやポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂で構成されればよい。
表示部30の内部には、帯電粒子33a,33bおよび分散媒34が充填される。帯電粒子33a,33bは、分散媒34中において帯電可能な材料が用いられ、有機化合物や無機化合物からなる顔料や染料、もしくは顔料や染料を合成樹脂で包んだものからなる。本実施形態では、帯電粒子33aは、スチレン樹脂と二酸化チタンの混合物で、平均粒子径が5μmのもの(7wt%)であって、粒子中の二酸化チタンの量が40wt%のものを使用する。帯電粒子33bは、スチレン樹脂とカーボンブラックの混合物で、平均粒子径が5μmのもの(10wt%)であって、粒子中のカーボンブラックの量が30wt%のものを使用する。そのため、帯電粒子33aは白色の色調であり、帯電粒子33bは黒色の色調である。帯電粒子33aと帯電粒子33bとは正あるいは負に相異なるように帯電しており、ここでは帯電粒子33aが負に、帯電粒子33bが正に帯電しているものとする。
分散媒34としては、高絶縁性を発揮可能で、かつ粘性の低い、アルコール類,炭化水素,シリコーンオイルなどを利用できる。本実施形態の分散媒34は、パラフィン系溶剤であるエクソンモービル社製Isopar(73wt%)を使用する。なお、分散媒34には、添加剤としてエタノール(10wt%)が加えられている。
上部基板20の上面(下部基板10と対向しない面)には、正面視、小区画セルが存在しない表示部30の周縁部を、利用者が視認できないように隠蔽するためのマスク部40が設けられる。マスク部40は、上部基板20の四辺に沿って一定幅で設けられ、表示部30を利用者が視認できるように貫通孔が設けられた板状部材である。マスク部40は、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を着色したものを接着したり、表示層23の表面に印刷したインク層で形成すればよい。かかる構成により、表示端末1(表示パネル2)をその上方からみると、マスク部40に設けられた貫通孔から表示部30を視認可能である。
図5を参照して、表示端末1の電気的構成について説明する。図5に示すように、表示端末1の制御基板3(図1参照)では、CPU90と、ROM91と、RAM92と、EEPROM93と、RTC(Real Time Clock)94と、表示コントローラ51と、キーコントローラ52と、メモリカードインタフェース(I/F)53と、電源コントローラ54と、温度センサインタフェース(I/F)55とが、バスを介して接続されている。CPU90は、表示端末1の制御を司る。ROM91は、表示端末1を動作させる制御プログラムや、表示端末1の動作に関わる設定情報を記憶する。RAM92は、各種データを一時的に記憶するメモリである。EEPROM93は、各種データを記憶する不揮発性メモリである。本実施形態では、後述する閾値設定テーブルが記憶される領域である閾値設定テーブル記憶エリア98が、ROM91に設けられる。また、後述する電圧閾値が記憶される領域である電圧閾値記憶エリア99が、EEPROM93に設けられる。なお、RTC94は、制御基板3に実装された計時専用のチップであり、表示端末1の電源が切られているときも後述するバッテリ82からの電源供給を受けて時間を計測可能である。
表示コントローラ51は、表示パネル2での画像表示を制御する。より詳細には、表示コントローラ51は、下部電極12に接続されたチャンネルCH1および上部電極22に接続されたチャンネルCH2に対する電気信号(波形)の印加によって、表示部30での電界発生を制御する。これにより、表示部30内で帯電粒子33a,33bを移動させて、表示パネル2に画像が形成される。キーコントローラ52は、操作キー95および電源ボタン85における入力操作を受け付ける。操作キー95は、ユーザがメニュー画面においてコンテンツを選択したり、画像データをページめくりで切り替えたりするためのキーである。電源ボタン85は、ユーザが表示端末1の電源のオン・オフを指示するためのボタンである。メモリカードI/F53は、カードスロットに挿入されたメモリカード87に対するデータの読出・書込を行う。電源コントローラ54は、表示端末1に内蔵されて電源を供給するバッテリ82の充放電を制御したり、バッテリ82の電池残量や電圧低下を検知したり、表示端末1に供給する電圧を制御したりする。なお、表示端末1は、図示外の外部電源から電力供給を受けていない場合には、バッテリ82の電力で駆動される。温度センサI/F55は、温度センサ81によって検出される温度を取得する。温度センサ81は、表示パネル2と同一面に配置されて、表示パネル2近傍の温度を検出する。
メモリカード87は、表示パネル2に表示される画像データとして、第三者に閲覧されても問題がない画像データと、ユーザにとって重要な機密情報であって第三者による閲覧が制限されるべき画像データ(以下、機密データ)とが記憶されている。そのため、メモリカード87には、第三者に閲覧されても問題がない画像データが記憶される記憶領域である画像データ記憶エリア100と、機密データが記憶される記憶領域である機密データ記憶エリア110とが設けられている。本実施形態の表示端末1では、メモリカード87に記憶されている画像データ(機密データを含む)のいずれかが、ユーザの入力操作に応じて表示パネル2に表示される。
ところで、本実施形態の表示端末1では、表示パネル2での画像形成の前段階で、表示コントローラ51が表示部30に対して交互に逆極性のパルス電圧を印加する。これにより、表示部30の内部壁面に不所望に付着した帯電粒子の剥離を容易にして、表示パネル2での帯電粒子の電気泳動を促進している(いわゆる、リフレッシュ動作)。このリフレッシュ動作に際しては、温度センサ81によって検出される温度に応じて、表示コントローラ51が表示パネル2に印加する電気信号(波形)を変化させる。具体的には、帯電粒子は温度が高いほど移動しやすくなるため、温度センサ81によって検出される温度に応じて電気信号(波形)を変化させることで帯電粒子の移動速度を一定にしている。
以下では、図6〜図13を参照して、本実施形態の表示端末1にて実行される各種処理について説明する。
図6を参照して、表示端末1にて実行されるメイン処理について説明する。なお、図6に示すメイン処理は、ユーザによって電源ボタン85がオンされると、ROM91に記憶されている制御プログラムに基づいて、CPU90によって実行される。図6に示すメイン処理では、まずバッテリ82の電池残量が少ないと判断される基準となる電圧値である電圧閾値を設定する電圧閾値設定処理が起動される(S1)。
図7を参照して、S1で起動される電圧閾値設定処理について説明する。図7に示す電圧閾値設定処理では、まずメモリカード87に記憶されている画像データの容量を取得するデータ容量取得処理が実行される(S21)。
図8を参照して、S21で実行されるデータ容量取得処理について説明する。図8に示すデータ容量取得処理では、まずメモリカードI/F53を介してメモリカード87へのアクセスが実行される(S31)。そして、アクセス先のメモリカード87のデータ容量が計算される(S33)。S33で計算されたデータ容量に基づいて、メモリカード87の全データ容量(つまり、画像データ記憶エリア100および機密データ記憶エリア110を含めたデータ容量)が、RAM92に記録される(S35)。さらに、メモリカード87の機密データ容量(つまり、機密データ記憶エリア110のみのデータ容量)が、RAM92に記録される(S37)。その後、電圧閾値設定処理(図7)に戻る。
図7に戻り、データ容量取得処理(S21)が実行されたのち、EEPROM93に記憶されている閾値設定条件が「全データ」であるか否かが判断される(S23)。閾値設定条件は、データ保護の対象がメモリカード87に記憶されている全ての画像データであるか、または、機密データのみであるかを示す情報である。閾値設定条件は、あらかじめユーザによって任意に「全データ」または「機密データ」に設定されていればよい。また、閾値設定条件は、ユーザによる設定がない場合にデフォルトで「全データ」または「機密データ」が設定されてもよい。
閾値設定条件が「全データ」であると判断された場合(S23:YES)、「全データ」のデータ容量に対応する電圧閾値が、EEPROM93の電圧閾値記憶エリア99に設定される(S25)。すなわち、S35にて記録された全データ容量に対応する電圧閾値が、ROM91の閾値設定テーブル記憶エリア98に記憶されている閾値設定テーブル301(図10参照)に基づいて設定される。一方、閾値設定条件が「機密データ」であると判断された場合(S23:NO)、「機密データ」のデータ容量に対応する電圧閾値が電圧閾値記憶エリア99に設定される(S27)。すなわち、S37にて記録された機密データ容量に対応する電圧閾値が、S25と同様に閾値設定テーブル301(図10参照)に基づいて設定される。S25またはS27が実行されたのち、電圧閾値設定処理(図7)が終了する。
ここで、図9および図10を参照して、バッテリ82の電圧低下特性と閾値設定テーブル301との関係について説明する。なお、図9の電圧低下特性を示すグラフは、横軸に放電時間(言い換えると、放電容量)を示し、縦軸にセル電圧を示す。そして、放電温度が一定(20℃)の条件下で、表示端末1を電源オンかつ非操作状態とした場合(つまり、定電流放電を行った場合)におけるバッテリ82の電圧低下特性を示している。
図9に示すように、本実施形態の表示端末1に内蔵されるバッテリ82は、20℃の環境下で満充電するとセル電圧4Vとなるリチウムイオン電池である。そして、表示端末1の電源オンかつ非操作状態という条件のもとで、バッテリ82のセル電圧は時間経過に伴って漸減し、およそ2週間でセル電圧3.6Vとなる。さらに、バッテリ82は2週間を超えて時間経過すると、単位時間当たりのセル電圧の減少幅が大きくなる。つまり、バッテリ82は、セル電圧が3.6Vよりも小さくなると、セル電圧の減少速度が大きくなる電圧低下特性を有している。そして、本実施形態の表示端末1では、バッテリ82のセル電圧が3.5Vに至ると、各種動作に最低限必要な電池残量がないために電源が自動的にオフされる。なお、電圧閾値記憶エリア99には、デフォルトの電圧閾値として「3.5V」が設定されているものとする。
一方、図10に示す閾値設定テーブル301には、保護対象となる画像データ(以下、保護対象データ)のデータ容量に、電圧閾値が対応付けて記憶されている。閾値設定テーブル301における「データ容量」は、メガバイト(Mbyte)単位とし、小数点以下は四捨五入されるものとする。先述のS25およびS27では、閾値設定テーブル301を参照して、保護対象データのデータ容量に応じた電圧閾値が電圧閾値記憶エリア99に設定される。具体的には、先述のS25では、「全データ」のデータ容量が「1〜99」であれば、電圧閾値が「3.6V」に変更される。「全データ」のデータ容量が「100〜999」であれば、電圧閾値が「3.7V」に変更される。「全データ」のデータ容量が「1000以上」であれば、電圧閾値が「3.8V」に変更される。また、先述のS27でも同様に、「機密データ」のデータ容量に応じた電圧閾値が変更される。なお、保護対象データのデータ容量が「1未満」である場合には、電圧閾値がデフォルトの「3.5V」に維持される。
このように、閾値設定テーブル301(図10)では、表示端末1に最低限必要な電池残量を示すセル電圧3.5V以上の電圧閾値が設定される。さらに、保護対象データのデータ容量が大きいほど、電圧閾値が高く設定される。これは、保護対象データのデータ容量が大きくなっても、後述するデータ保護処理(S11)を行うのに最低限必要な電池残量が確保されるようにするためである。
図6に戻り、電圧閾値設定処理が起動されたのち(S1)、表示パネル2に表示されている画面の切り替え指示があったか否かが判断される(S3)。すなわち、ユーザが操作キー95を操作して画面の切り替え指示を行った場合(S3:YES)、表示パネル2に表示される画面の切り替えが行われた時点からの経過時間を計測する時間計測処理がリセットされる(S5)。
ここで、図11を参照して、時間計測処理について説明する。なお、図11に示す時間計測処理は、S5が実行されたことを契機として開始され、表示端末1が電源オフにされてもバッテリ82からの電源供給を受けて内部的に実行される。つまり、時間計測処理は、表示パネル2に表示される画面の切り替えが行われると、その後に表示端末1が電源オフにされたとしても継続して実行される。
図11に示す時間計測処理では、まずRTC94に基づくタイマがリセットされ、EEPROM93に記憶されている時間経過フラグが「FALSE」に設定される(S41)。時間経過フラグは、表示パネル2に表示される画面の切り替えが行われた時点からの経過時間が、一定時間(本実施形態では2時間とする。)を経過したか否かを示す。そして、RTC94に基づくタイマの計時が開始され(S43)、このタイマによって計時された経過時間が一定時間を経過したか否かが判断される(S45)。
タイマによって計時された経過時間が一定時間を経過した場合(S45:YES)、先述の時間経過フラグが「TRUE」に設定される(S47)。そして、表示パネル2に表示されている画面が機密データであるか否かが判断される(S49)。表示パネル2に機密データが表示されている場合(S49:YES)、表示パネル2に所定の警告が表示される(S51)。本実施形態の表示端末1では、機密データが長時間にわたって表示され、かつ、電池残量が少なくなると、後述するように機密データの削除等が実行される。そこで、S51では、図12に例示する警告画像400のように、機密データが長時間にわたって表示されているため、電池残量が少なくなると機密データが消去される旨が表示パネル2に表示される。これにより、ユーザに何らの注意喚起もなく機密データが自動的に削除される不具合が防止される。
S51が実行されたのち、または、表示パネル2に機密データが表示されていない場合(S49:NO)、時間計測処理(図11)が終了する。一方、タイマによって計時された経過時間が一定時間を経過していない場合(S45:NO)、S45にて待ち状態となる。また、タイマによって計時された経過時間が一定時間を経過する前に、表示パネル2に表示される画面の切り替えが行われた場合、S5によって時間計測処理(図11)が最初からリスタートされる。
なお、時間計測処理(図11)は、表示端末1が電源オフ中に実行されている場合、S51にて表示パネル2に警告表示するのに必要な電源供給がない。そのため、表示端末1が電源オフ中に時間経過フラグが「TRUE」に設定されたときは(S47)、S49およびS51は表示端末1が電源オンにされたのちに実行されることが好適である。
図6に戻り、時間計測処理のリセット(S5)が実行されたのち、S3に戻る。そして、画面の切り替え指示がない場合(S3:NO)、バッテリ82の現在の電圧が電圧閾値記憶エリア99に設定されている電圧閾値よりも小さいか否かが判断される(S7)。電源コントローラ54は、バッテリ82から検出される電圧値が電圧閾値記憶エリア99の電圧閾値よりも小さいときは、所定の割り込み信号をCPU90に発する。所定の割り込み信号が検出された場合(S7:YES)、バッテリ82の電池残量が少ないことになるから、先述の時間経過フラグが「TRUE」であるか否かが判断される(S9)。時間経過フラグが「TRUE」である場合(S9:YES)、表示パネル2に表示される画面が切り替えられてから長時間が経過していることになるから、メモリカード87に記憶されている機密データを第三者が閲覧できないようにするデータ保護処理が実行される(S11)。
図13を参照して、S11で実行されるデータ保護処理について説明する。図13のデータ保護処理では、まず表示パネル2に表示される画面が消去される(S61)。具体的には、表示コントローラ51による電気信号(波形)の印加によって、表示パネル2の表示面を黒または白とすることが例示される。なお、S61では、表示パネル2の表示面に、機密データとは関係がない所定の画面を表示するようにしてもよい。
そして、EEPROM93の閾値設定条件が「全データ」であるか否かが判断される(S63)。閾値設定条件が「全データ」である場合(S63:YES)、メモリカード87に記憶されている全ての画像データ(つまり、画像データ記憶エリア100に記憶されている画像データ、および、機密データ記憶エリア110に記憶されている機密データ)が削除される(S65)。なお、S65では、全画像データの削除に代えて、メモリカード87を初期化(フォーマット)してもよい。一方、閾値設定条件が「機密データ」である場合(S63:NO)、メモリカード87に記憶されている機密データのみ(つまり、機密データ記憶エリア110に記憶されている機密データ)が削除される(S67)。
これにより、表示端末1では、表示パネル2に機密データが表示されていたとしても、第三者が閲覧できないように表示面から消去される。また、メモリカード87に記憶されている機密データ自体も削除されるため、第三者が表示端末1を操作して機密データを表示させることもできなくなる。なお、S65またはS67が実行されたのち、メイン処理(図6)に戻る。
図6に戻り、データ保護処理(S11)が実行されたのち、メイン処理が終了する。また、所定の割り込み信号が検出されない場合(S7:NO)、または、時間経過フラグが「FALSE」である場合(S9:NO)、いずれもデータ保護処理(S11)を実行する条件が満たされないため、S3に戻る。なお、表示端末1がオフ状態とされたときも、メイン処理が終了する。
ところで、本実施形態では、先述したように時間計測処理(図11)が表示端末1が電源オフ中でも実行されるため、表示端末1の電源オフ中に時間経過フラグが「TRUE」に設定されることがある。この場合に、表示端末1が電源オンにされてメイン処理(図6)が実行されると、バッテリ82の電池残量が少なければ上記と同様にデータ保護処理(S11)が実行される(つまり、表示端末1が電源オンされた直後に、画面消去およびデータ削除が実行される)。これにより、表示端末1が電源オフの状態で長期間放置されたとしても、表示端末1に記憶されている機密データが適切に保護される。
第1の実施形態に係る表示端末1によれば、バッテリ82から検出される電圧値が電圧閾値よりも小さいと判断され、且つ、表示パネル2の表示画面が切り換えられてから所定時間以上を経過したと判断された場合に、メモリカード87に記憶されている画像データの削除が行われる。したがって、ユーザによって利用されているにも関わらずデータ削除が行われる不具合の発生を抑制しつつ、第三者への機密情報の漏洩を適切に防止することができる。さらに、メモリカード87の記憶容量に応じて電圧閾値を変更することで、画像データの削除に最低限必要な電池残量を確保することができる。
また、EEPROM93に記憶されている閾値設定条件が「機密データ」に設定されている場合は、機密データ記憶エリア110のデータ容量に応じて電圧閾値が変更され、機密データ記憶エリア110に記憶されている機密データが削除される。したがって、メモリカード87に記憶されている画像データのうちで機密データのみを処理対象とすることで、データ削除の迅速化を図ることができるとともに、そのデータ削除に最低限必要な電池残量を低減することができる。さらに、保護対象となる画像データを、ユーザの任意で全データまたは機密データに可変とすることができる。
<第2の実施形態>
図14〜図16を参照して、本発明の第2の実施形態に係る表示端末1について説明する。なお、第2の実施形態に係る表示端末1は、基本的に第1の実施形態に示すものと同様であるが、電圧閾値の設定手法が異なる。以下では、第1の実施形態と同一構成については同一符号を付し、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
図14を参照して、第2の実施形態において、メイン処理(図6参照)のS1で起動される電圧閾値設定処理について説明する。図14に示す電圧閾値設定処理では、まず温度センサ81に基づいて現在の温度を計測する温度計測処理が起動される(S101)。
図15を参照して、S101で起動される温度計測処理について説明する。図15の温度計測処理では、まずADコンバータによるAD変換に基づいて温度の計測が行われる(S111)。すなわち、温度センサ81は温度を電圧に変換して温度センサI/F55に出力するため、図示外のADコンバータで温度センサ81から出力される電圧を数値化し、その数値によって温度が取得される。
次に、S111が表示端末1の起動後の初回温度計測であるか否かが判断される(S113)。言い換えると、今回の温度計測(S111)が、表示端末1が電源オンされたのちに最初に行われたものであるか否かが判断される。S111が初回温度計測でない場合(S113:NO)、表示端末1が起動されたのちにおいて、今回の温度計測(S111)よりも前に温度計測(S111)が実行されていることになる。そこで、今回の温度計測(S111)に基づく温度レベルが、前回の温度計測(S111)に基づく温度レベルと異なるか否かが判断される(S115)。温度レベルは、温度計測(S111)によって取得された温度が含まれる温度幅をいい、5℃単位(例えば、0〜5℃、6〜10℃、11〜15℃・・・)や10℃単位(例えば、0〜10℃、11〜20℃・・・)などでレベル分けされる。
今回計測の温度レベルが前回計測の温度レベルと異なる場合(S115:YES)、S111にて計測された温度(つまり、現在の温度)が、RAM92に展開されている制御プログラムのグローバル変数に記録される(S117)。そして、EEPROM93に記憶されている温度レベル変更通知が「TRUE」に設定される(S119)。温度レベル変更通知は、温度センサ81によって検出される現在の温度が所定幅を超えて変化したか否かを示す。
一方、S111が初回温度計測である場合(S113:NO)、前回の電源オフされる前に最後に計測された温度と比較して、現在の温度が大きく変化している可能性がある。そのため、上記と同様に、現在の温度がグローバル変数に記録され(S117)、温度レベル変更通知が「TRUE」に設定される(S119)。S119が実行されたのち、または、今回計測の温度レベルが前回計測の温度レベルと同じである場合(S115:NO)、S111に戻る。そして、温度計測処理(図15)は、表示端末1が電源オンされている間は繰り返し実行される。
図14に戻り、温度計測処理が起動されたのち(S101)、先述の温度レベル変更通知が「TRUE」であるか否かが判断される(S103)。温度レベル変更通知が「TRUE」である場合(S103:YES)、RAM92から温度のグローバル変数が読み出されて、現在の温度が取得される(S105)。そして、閾値設定テーブル記憶エリア98に記憶される閾値設定テーブル302(図16参照)に基づいて、現在の温度に対応する電圧閾値が電圧閾値記憶エリア99に設定される(S107)。
図16に示す閾値設定テーブル302には、温度と電圧閾値とが対応付けて記憶されている。閾値設定テーブル302における「温度」は、摂氏(℃)単位とし、小数点以下は四捨五入されるものとする。先述のS107では、閾値設定テーブル302を参照して現在の温度に応じた電圧閾値が設定される。具体的には、現在の温度が「1〜25」であれば、電圧閾値が「3.6V」に変更される。現在の温度が「−19〜0」であれば、電圧閾値が「3.7V」に変更される。現在の温度が「−20以下」であれば、電圧閾値が「3.8V」に変更される。なお、現在の温度が「26以上」である場合には、電圧閾値がデフォルトの「3.5V」に維持される。
このように、閾値設定テーブル302(図16)では、表示端末1に最低限必要な電池残量を示すセル電圧3.5V以上の電圧閾値が設定される。さらに、現在の温度が低いほど、電圧閾値が高く設定される。これは、放電中のリチウムイオンの移動が低温では動きにくくなる(つまり、セルの内部抵抗が上昇する)ためにセル電圧の低下が早くなるというリチウムイオン電池(バッテリ82)の電圧低下特性に基づく。これにより、現在の温度が低くなっても、先述のデータ保護処理(S11)を行うのに最低限必要な電池残量が確保される。
図14に戻り、現在の温度に対応する電圧閾値が設定されたのち(S107)、先述の温度レベル変更通知に「FALSE」が設定されて(S109)、S103に戻る。そして、電圧閾値設定処理(図14)は、表示端末1が電源オンされている間は繰り返し実行される。そのため、第2の実施形態に係る表示端末1では、電源がオフからオンに切り換えられる毎に、または、前回計測から温度が大きく変化する毎に、現在の温度に応じた好適な電圧閾値に変更される。
第2の実施形態に係る表示端末1によれば、バッテリ82から検出される電圧値が電圧閾値よりも小さいと判断され、且つ、表示パネル2の表示画面が切り換えられてから所定時間以上を経過したと判断された場合に、メモリカード87に記憶されている画像データの削除が行われる。したがって、ユーザによって利用されているにも関わらずデータ削除が行われる不具合の発生を抑制しつつ、第三者への機密情報の漏洩を適切に防止することができる。さらに、温度センサ81によって検知される現在の温度に応じて電圧閾値を変更することで、画像データの削除に最低限必要な電池残量を確保することができる。
<第3の実施形態>
図17および図18を参照して、本発明の第3の実施形態に係る表示端末1について説明する。なお、第3の実施形態に係る表示端末1は、基本的に第1の実施形態に示すものと同様であるが、電圧閾値の設定手法が異なる。以下では、第1の実施形態と同一構成については同一符号を付し、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
図17を参照して、第3の実施形態において、メイン処理(図6参照)のS1で起動される電圧閾値設定処理について説明する。図17に示す電圧閾値設定処理では、まず電源コントローラ54を介してユーザの充電操作ありか否かが判断される(S201)。具体的には、表示端末1に図示外の充電コネクタが接続された場合、電源コントローラ54にてバッテリ82への充電が開始されたことが検出される。バッテリ82への充電が開始されるとユーザの充電操作ありと判断され(S201:YES)、EEPROM93に記憶されている充電回数が1カウントアップされる(S203)。その後、EEPROM93に記憶されている現在の充電回数が読み出される(S205)。そして、閾値設定テーブル記憶エリア98に記憶される閾値設定テーブル303(図18参照)に基づいて、現在の充電回数に対応する電圧閾値が電圧閾値記憶エリア99に設定される(S207)。
図18に示す閾値設定テーブル303には、充電回数と電圧閾値とが対応付けて記憶されている。先述のS207では、閾値設定テーブル303を参照して現在の充電回数に応じた電圧閾値が設定される。具体的には、現在の充電回数が「50〜499」であれば、電圧閾値が「3.6V」に変更される。現在の充電回数が「500〜999」であれば、電圧閾値が「3.7V」に変更される。現在の充電回数が「1000以上」であれば、電圧閾値が「3.8V」に変更される。なお、現在の充電回数が「50未満」である場合には、電圧閾値がデフォルトの「3.5V」に維持される。
このように、閾値設定テーブル303(図18)では、表示端末1に最低限必要な電池残量を示すセル電圧3.5V以上の電圧閾値が設定される。さらに、現在の充電回数が大きいほど、電圧閾値が高く設定される。これは、充電回数が大きいほど電圧降下曲線の傾きが大きくなるというリチウムイオン電池(バッテリ82)の電圧低下特性に基づく。これにより、現在の充電回数が大きくなっても、先述のデータ保護処理(S11)を行うのに最低限必要な電池残量が確保される。
図17に戻り、現在の充電回数に対応する電圧閾値が設定されたのち(S207)、または、ユーザの充電操作がない場合(S201:NO)、S201に戻る。そして、電圧閾値設定処理(図17)は、表示端末1が電源オンされている間は繰り返し実行される。そのため、第3の実施形態に係る表示端末1では、現在の充電回数が増加するのに応じて、その充電回数に応じた好適な電圧閾値に変更される。
第3の実施形態に係る表示端末1によれば、バッテリ82から検出される電圧値が電圧閾値よりも小さいと判断され、且つ、表示パネル2の表示画面が切り換えられてから所定時間以上を経過したと判断された場合に、メモリカード87に記憶されている画像データの削除が行われる。したがって、ユーザによって利用されているにも関わらずデータ削除が行われる不具合の発生を抑制しつつ、第三者への機密情報の漏洩を適切に防止することができる。さらに、バッテリ82の充電回数に応じて電圧閾値を変更することで、画像データの削除に最低限必要な電池残量を確保することができる。
<第4の実施形態>
図19および図20を参照して、本発明の第4の実施形態に係る表示端末1について説明する。なお、第4の実施形態に係る表示端末1は、基本的に第1の実施形態に示すものと同様であるが、電圧閾値の設定手法が異なる。以下では、第1の実施形態と同一構成については同一符号を付し、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
図19を参照して、第4の実施形態において、メイン処理(図6参照)のS1で起動される電圧閾値設定処理について説明する。図19に示す電圧閾値設定処理では、まずEEPROM93に記憶されているデータ保護設定が「データ削除」であるか否かが判定される(S301)。データ保護設定は、先述のデータ保護処理(S11)で実行される内容が、保護対象データの削除および暗号化のいずれであるかを示す情報である。データ保護設定は、あらかじめユーザによって任意に「データ削除」または「データ暗号化」に設定されていればよい。また、データ保護設定は、ユーザによる設定がない場合に、デフォルトで「データ削除」または「データ暗号化」が設定されてもよい。
データ保護設定が「データ削除」である場合(S301:YES)、閾値設定テーブル記憶エリア98に記憶される閾値設定テーブル304(図20参照)に基づいて、「データ削除」に対応する電圧閾値が電圧閾値記憶エリア99に設定される(S303)。一方、データ保護設定が「データ暗号化」である場合(S301:NO)、S303と同様に閾値設定テーブル304(図20参照)に基づいて、「データ暗号化」に対応する電圧閾値が電圧閾値記憶エリア99に設定される(S305)。S303またはS305が実行されたのち、電圧閾値設定処理(図19)が終了する。
図20に示す閾値設定テーブル304には、データ保護設定と電圧閾値とが対応付けて記憶されている。先述のS303およびS305では、閾値設定テーブル304を参照してデータ保護設定に応じた電圧閾値が設定される。具体的には、S303では電圧閾値が「データ削除」に対応する「3.6V」に変更される。S305では電圧閾値が「データ暗号化」に対応する「3.8V」に変更される。
なお、第4の実施形態に係る表示端末1では、メイン処理(図6参照)のデータ保護処理(S11)において、EEPROM93のデータ保護設定に応じた処理が行われる。具体的には、データ保護設定が「データ削除」に設定されている場合、図13に示すデータ保護処理が実行される。一方、データ保護設定が「データ暗号化」に設定されている場合、S65では全データの削除に代えて全データの暗号化が行われ、S67では機密データの削除に代えて機密データの暗号化が行われる。なお、S65およびS67で実行されるデータ暗号化は、公知の手法を用いればよい。
このように、閾値設定テーブル304(図20)では、表示端末1に最低限必要な電池残量を示すセル電圧3.5V以上の電圧閾値が設定される。さらに、「データ暗号化」のほうが「データ削除」よりも一般に消費電力が大きいため、データ保護として「データ暗号化」が行われる場合には電圧閾値が高く設定される。これにより、先述のデータ保護処理(S11)として消費電力が大きい処理が行われる場合でも、その処理に最低限必要な電池残量が確保される。
第4の実施形態に係る表示端末1によれば、バッテリ82から検出される電圧値が電圧閾値よりも小さいと判断され、且つ、表示パネル2の表示画面が切り換えられてから所定時間以上を経過したと判断された場合に、メモリカード87に記憶されている画像データの削除または暗号化が行われる。したがって、ユーザによって利用されているにも関わらずデータ削除またはデータ暗号化が行われる不具合の発生を抑制しつつ、第三者への機密情報の漏洩を適切に防止することができる。また、EEPROM93に記憶されているデータ保護設定に応じて電圧閾値を変更することで、画像データの削除または暗号化に最低限必要な電池残量を確保することができる。さらに、データ保護処理(S11)に行われる処理を、ユーザの任意でデータ削除またはデータ暗号化に可変とすることができる。
ところで、上記実施形態において、表示端末1が本発明の「表示装置」に相当する。そして、表示パネル2が本発明の「表示手段」に相当する。メモリカード87が本発明の「データ記憶手段」に相当する。表示コントローラ51が本発明の「表示制御手段」に相当する。電源コントローラ54が本発明の「電池残量検出手段」に相当する。S7を実行するCPU90が、本発明の「電池残量判断手段」に相当する。S41〜S47を実行するCPU90が、本発明の「時間計測手段」に相当する。S9を実行するCPU90が、本発明の「経過時間判断手段」に相当する。S11を実行するCPU90が、本発明の「データ制限手段」に相当する。電圧閾値設定処理(図7、図14、図17、図19)を実行するCPU90が、本発明の「閾値変更手段」にそれぞれ相当する。S35を実行するCPU90が、本発明の「第1記憶容量特定手段」に相当する。S37を実行するCPU90が、本発明の「第2記憶容量特定手段」に相当する。S105を実行するCPU90が、本発明の「温度検出手段」に相当する。S205を実行するCPU90が、本発明の「充電回数検出手段」に相当する。ROM91に記憶されている制御プログラムが、本発明の「情報保護プログラム」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更が可能である。例えば、上述の第1〜第4の実施形態では、電圧閾値を設定するためのパラメータとして、データ容量、温度、充電回数、データ保護方法をそれぞれ使用した場合を例示した。しかしながら、電圧閾値を設定するためのパラメータとして、データ容量、温度、充電回数、データ保護方法の二以上を適宜組み合わせて使用してもよい。