JP5029620B2 - 筒状部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、筒状部材の製造方法に関し、例えば筒状部材内の中空部を形成する内壁に圧縮残留応力を付与する筒状部材の製造方法に適用して好適なものである。
従来の筒状部材の製造方法では、筒状部材の内壁に圧縮残留応力を付与する加工処理方法として、被加工対象物としての筒状部材内の中空部にオイルなどの高圧流体を導入し、高圧流体に発生する内圧力で内壁に圧縮残留応力を形成するものがある(特許文献1参照)。
このような内壁に圧縮残留応力を付与する加工処理方法の一種として特許文献1に開示する方法では、中空部に流体を充填した後に、その充填容積を縮小させることで流体を加圧し、当該加圧流体に発生する内圧力で中空部の内壁に圧縮残留応力を付与するようにしている。
この技術では、充填、加圧、及び減圧の各段階の所要処理時間を短くできるため、生産性を高めることが可能となる。
国際公開WO2008/058494号公報
しかしながら、特許文献1による従来技術では、被加工対象物、即ち筒状部材は、その中空部の容積量や母材の機械的特性などの製造ばらつきが生じる。例えば中空部の容積量にばらつきがあると、所定の目標内圧力に対し実際の内圧力(以下、実内圧力)が変動という懸念がある。
そのような実内圧力が万が一過度に変動する場合があるとすると、例えば付与された圧縮残留応力が所定の圧縮残留応力を満足する良品と、所定の圧縮残留応力を満たさない不良品とに選別する必要がある。
言い換えると、「加工処理された被加工物に対し、内壁に所定の圧縮残留応力が付与されているか否かを判定する」評価技術が必要となるのである。
さて、従来技術では、こうした内部の内壁に圧縮残留応力を付与する加工処理がなされた被加工物の品質保証に関し、全数の品質保証に対し非破壊検査により上記判定を有効に行なえる評価技術がないのである。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、内壁に所定の圧縮残留応力が付与されている被加工物であるか否かを、被加工物の全数に対し有効に判定可能な筒状部材の製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を備える。
即ち、請求項1に記載の発明では、筒状を呈し、少なくとも中空部を有する筒状部材に対し、筒状部材の内壁に圧縮残留応力を付与する筒状部材の製造方法であって、内壁に圧縮残留応力を付与するために、内壁内に液体を導入し、液体を加圧することにより液体の内圧力で内壁を塑性変形させる液圧負荷工程を有する筒状部材の製造方法において、
液体の内圧力に対し、筒状部材の硬度と、筒状部材の所定部位における変形量との関係を設定し、前記所定部位の寸法を、液体の加圧前及び加圧後に測定する測定工程と、液体の加圧前及び加圧後に測定された前記所定部位の寸法の差と、前記関係とに基づいて内壁に圧縮残留応力が付与されたか否かを判定する判定工程と、を備えることを特徴とする。
かかる筒状部材の製造方法では、筒状部材の内壁に圧縮残留応力を付与するために、液圧負荷工程によって、内壁内に液体を導入し、液体を加圧することにより液体の内圧力で内壁を塑性変形させるようにしている。
このような筒状部材の製造方法に対し、請求項1に記載の発明によると、内壁に負荷される液体の内圧力に対し、筒状部材の硬度と、筒状部材の所定部位における変形量との関係を予め設定している。これによると、筒状部材の硬度に応じて筒状部材の母材の降伏強度が実質的に決定されるため、液体の内圧力に応じ、例えば内壁への液圧負荷時並びに液圧負荷の解除時など液圧負荷過程における筒状部材の所定部位の変形量を監視することが可能となる。
さらに、測定工程では、前記所定部位の寸法を、液体の加圧前及び加圧後に測定するので、液体の加圧前及び加圧後に測定される前記所定部位の寸法の差、即ち液圧負荷過程での筒状部材の所定部位における実変形量を、液圧負荷工程と併行して監視することができる。
そのような実変形量に関し、判定工程により、実変形量と、硬度と変形量の相関関係とに基づいて内壁に圧縮残留応力が付与されたか否かを判定することになるので、被加工物である筒状部材の全数に対し、内壁に所定の圧縮残留応力が付与された良品であるか否かを有効に判定可能となるのである。
また、請求項2に記載の発明では、液体の加圧後とは、液圧負荷工程の加圧段階であって、液体の内圧力としての最大圧力を形成し、当該最大圧力に保持されている加圧段階、および、加圧段階が終了し、液体を加圧過程前の圧力に減圧した減圧段階のうちの、いずれかの段階であって、測定工程では、当該段階にあるとき、液体の加圧後における前記所定部位の寸法を測定することを特徴とする。
これによると、液体の加圧後とは、液圧負荷工程において液体が最大圧力に保持されている加圧段階、および加圧段階の終了後の、液体を加圧過程前の圧力に減圧した減圧段階のうちの、いずれかの段階とする。そのような段階にあるとき、測定工程では、液体の加圧後における前記所定部位の寸法を測定するので、圧縮残留応力が発生する塑性変形領域を含む変形領域が形成される前記所定部位の寸法を、安定して測定することができる。
また、請求項3に記載の発明の如く、測定工程では、前記加圧段階にあるとき、前記液体の加圧後における前記所定部位の寸法を測定することが好ましい。
加圧された液体の内圧力による内壁への負荷により、内壁には、塑性変形領域と、その外周側に存在する弾性変形領域とが形成されることになる。ここで、減圧段階にあるときに前記所定部位の寸法を測定する場合には、実質的に塑性変形領域で発生した塑性変形が残存するだけとなるため、加圧段階前と減圧段階との前記所定部位の寸法の差が小さくなる可能性があるので、実変形量の検出精度の低下を招くおそれがある。
これに対し請求項3に記載の発明によれば、上記加圧段階では、塑性変形領域及び弾性変形領でそれぞれ塑性変形及び弾性変形が、液体の内圧力に応じて発生しているため、加圧段階前と加圧段階との前記所定部位の寸法の差が比較的大きくなるので、実変形量の検出精度向上が図れる。
また、請求項4に記載の発明では、前記所定部位の寸法は、筒状部材の内壁の内径、または筒状部材の外壁の外径であることを特徴とする。
これによると、測定工程により液体の加圧前及び加圧後に測定される所定部位の寸法を、筒状部材の内壁の内径、または筒状部材の外壁の外径としているので、液圧負荷工程内において、測定工程による測定が比較的容易に実現可能である。それ故に、被加工物である筒状部材の全数に対する品質確認と、液圧負荷工程での生産性低下の防止との両立が可能となる。
また、請求項5乃至6に記載の発明では、筒状部材は、中空部を有する筒状部本体と、筒状部本体の延びる長手方向に対し交差する交差方向に中空部に開口する交差穴部を有し、中空部とは反対側の端部に外側筒部とを備え、前記所定部位の寸法は、筒状部本体および外側筒部のいずれかの外径であることを特徴とする。
これによると、筒状部材は、筒状部本体と外側筒部とを有しており、中空部、及び中空部に開口する交差穴部に、液体が導入され、加圧された液体の内圧力が中空部及び交差穴部の内壁に負荷されることになる。そのような筒状部本体と外側筒部とを有する筒状部材に対し、測定工程により液体の加圧前及び加圧後に測定される所定部位の寸法を、筒状部本体および外側筒部のいずれかの外径としているので、測定工程の実施による液圧負荷工程の中断を回避することができる。それ故に、筒状部材の全数に対する品質確認と、液圧負荷工程での生産性低下の防止との両立が確実にできる。
また、請求項6に記載の発明の如く、前記所定部位の寸法は、外側筒部の外径であって、外側筒部のうちの前記中空部側の端部における外径であることが好ましい。これによると、中空部に開口する交差穴部を有する外側筒部の外径であって、外側筒部のうちの中空部側の端部における外径を、前記所定部位の寸法としているので、応力集中し易い交差穴部の開口部周辺の内壁部分に関し、その内壁部分に所定の圧縮残留応力が付与されているか否かを、判定することができる。
また、請求項7に記載の発明では、測定工程は、液圧負荷工程前にあるとき、筒状部材の硬度を測定する硬度測定工程を有することを特徴とする。
これによると、筒状部材の母材のロット毎の硬度ではなく、各筒状部材における硬度を実測することができる。これにより、実測された硬度に基づいて各筒状部材における降伏強度を見極めることが可能となるため、液圧負荷過程における各筒状部材の所定部位の変形量を、正確に監視することができる。故に、実変形量と、硬度と変形量の相関関係とに基づいて内壁に所定の圧縮残留応力が付与されたか否かを判定する判定工程での判定精度の向上が図れる。
本発明の第1実施形態による製造方法を適用するコモンレールを示す概観図である。 図1中のII−II線断面図である。 コモンレールを搭載する蓄圧式燃料噴射装置の構成を示す模式図である。 第1実施形態によるコモンレールの製造方法の一例を示す模式図である。 図4中のV−V線断面図である。 コモンレールの製造方法のうちの特徴的工程を説明する模式図である。 液体の内圧力に対し、コモンレールの硬度と、コモンレールの所定部位での変形量との関係を示す相関図である。 第2実施形態に係わる液体の内圧力に対し、コモンレールの硬度と、コモンレールの所定部位での変形量との関係を示す相関図である。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符合を付すことにより、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1〜3は、本発明の実施形態によるコモンレールの製造方法を適用するコモンレールを示している。図4〜7は、コモンレールの製造方法の一例を示すものである。コモンレールは請求範囲に記載の筒状部材に相当する。
図1、3に示すように、蓄圧式燃料噴射装置10は、コモンレール30、燃料噴射ポンプ11、および燃料噴射弁12を備えている。燃料噴射ポンプ11は、燃料タンク13から吸入通路14を経由して燃料を吸入する。燃料噴射ポンプ11は、吸入した燃料を所定の圧力まで加圧しコモンレール30に供給する。燃料噴射ポンプ11で余剰となった燃料は、排出通路15を経由して燃料タンク13に排出される。燃料噴射ポンプ11は、「供給通路」としての供給配管16を経由して加圧した燃料をコモンレール30に供給する。コモンレール30は、燃料噴射ポンプ11で加圧された燃料を所定の圧力で維持するように蓄えると共に、当該燃料を、図示しないエンジンの各気筒に搭載される燃料噴射弁12に分配する。
コモンレール30には、圧力センサ31が設けられている。圧力センサ31は、コモンレール30に蓄えられた燃料の圧力を検出する。圧力センサ31は、図示しない電子制御装置に接続されている。電子制御装置は、圧力センサ31で検出したコモンレール30内の燃料の圧力に基づいて燃料噴射ポンプ11から吐出される燃料の流量を調整する。また、コモンレール30には、圧力制御弁32が設けられている。圧力制御弁32は、コモンレール30に蓄えられた燃料の圧力が所定値より大きくなると開弁する。圧力制御弁32が開弁することによってコモンレール30から排出された燃料は、排出通路15を経由して燃料タンク13へ戻される。
なお、圧力センサ31並びに圧力制御弁32は、コモンレール30のレール本体40の両軸端部に、ねじ締結などの接合手段により取り付けられている。本実施形態では、圧力センサ31並びに圧力制御弁32に図示しない雄ねじ部が設けれ、コモンレール30の両軸端部に、上記雄ねじ部とねじ止め可能な雌ねじ部が設けられている。
コモンレール30は、図1、2に示すように、「筒状部本体」としてのレール本体40と、「外側筒部」としての配管接続部50とを有している。レール本体40は、中空の筒状に形成されている。図1に示すように、複数の配管接続部50は、レール本体40から径方向外側へ突出する。本実施形態では、配管接続部50が、容器本体40の長手方向(図中の左右方向)に沿って五個所設けられている。五つの配管接続部50のうち一つには、燃料噴射ポンプ11に接続する供給配管16が接続される。残る四つの配管接続部50には、燃料噴射弁12に接続する燃料配管60が接続される。
図2に示すように、筒状のレール本体40は、内部に中空部41が形成されている。中空部41は、レール本体40の長手方向に伸びている。配管接続部50は、レール本体40の長手方向に対し直交する直交方向の外側へ突出している。本実施形態では、配管接続部50は、レール本体40と一体に単一の部材で形成されている。配管接続部50は、中空部41とは反対側の端部に座面部59を有している。座面部59では、配管接続部50の内壁が中空部41側へかけて内径が小さくなる円錐台形状に形成されている。
配管接続部50は、内周側に配管接続部50を連通する交差穴部51を備えており、交差穴部51は、一方の開口部が中空部41に接続し、他方の開口部が座面部59に開口している。言い換えると、交差穴部51は、配管接続部50及びレール本体40を貫いて中空部41に接続している。このような交差穴部51は、上記円錐台形状の座面部59を含んでいる。
交差穴部51は、中空部41側の端部から中空部41とは反対側の端部まで、配管接続部50の内壁52の内周を縮径するテーパ部を複数段(本実施例では、二段)形成されている。このテーパ部は、座面部59と、座面部59より中空部41側に位置し、円錐台状を呈する円錐台部54を備えている。
言い換えると、交差穴部51の内径が複数段(本実施例では、二段)形成されている。なお、交差穴部51の内径は複数段に形成されるものに限らず、その内径がほぼ同一径に形成されているものであってもよい。
また、本実施形態では、図2に示すように交差穴部51の中心軸が、レール本体40及び中空部41の中心軸(図中の紙面に対し垂直方向)と一致するように配置されているが、交差穴部51の中心軸を中空部41の中心軸からずれるようにオフセット配置されるものであってよい。いずれの配置であっても、交差穴部51の中空部41側の開口部周辺の内壁部分が、上記蓄圧式燃料噴射装置10の運転時にコモンレール30に蓄えられる燃料の圧力によって応力集中し易い領域となる。
配管接続部50の外壁には、燃料配管60及び供給配管16のうちのいずれかの配管に接続するための雄ねじ部53が形成されている。雄ねじ部53には、上記配管側の接続構成要素としての接続ナット(図示せず)が取り付けられる。接続ナットの内壁には、雄ねじ部53とねじ止め可能な雌ねじ部が形成されている。接続ナットは、上記配管の本体と係合しており、上記配管の本体は、内部に燃料通路を形成する筒状のパイプである。上記配管の本体は、コモンレール30側の端部の座面部59に押し当てる接続ヘッドを有している。
以上、コモンレール30の基本構成について説明した。以下、コモンレールの製造方法について、図4、5に基づいて説明する。
(製造方法)
(形成工程)
形成工程では、いずれの要素40、50も金属製で形成する。レール本体40及び配管接続部50は、熱間鍛造などにより一体に形成する。そして、当該一体要素40、50内に、中空部41及び交差穴部51を区画形成する内壁42、52を、切削加工により形成する。
なお、上記レール本体40及び配管接続部50は、このような形成方法に限らず、別部材として形成した後に、レール本体40及び配管接続部50を溶接などの接合手段により接合することで一体化する形成方法であってもよい。
(組付工程)
組付工程は、後述する液圧負荷工程を実施するための前工程である。そのため、ここでは、圧力センサ31及び圧力制御弁32をレール本体40の両軸端部に取付ける最終組付工程ではない。
この組付工程では、圧力センサ31、圧力制御弁32、並びに燃料配管の接続ヘッドを代用する冶具として、封止冶具81、82、83を使用する。
第1封止冶具81及び第2封止冶具82は、レール本体40の両軸端部側に配置され、中空部41の両端を封止する。具体的には、第1封止冶具81及び第2封止冶具82は、その先端部が、凸状を呈する円錐面部を有しており、円錐面部は、中空部41の両端側の内壁42の角部(エッジ)に、封止可能に押し当てる押当面として機能する。
第3封止冶具83は、交差穴部51の中空部41とは反対側の端部を封止する。具体的には、第3封止冶具83は、その先端部が、凸状を呈する円錐面部83aを有しており、円錐面部83aは、座面部59の内周側の角部(エッジ)に、封止可能に押し当てる押当面として機能する。これにより、液圧負荷時における高いシール性を確保することができる。
(液圧負荷工程)
液圧負荷工程では、液圧負荷対象となる交差穴部51部分の中空空間A及び中空部41に作動液を導入し、作動液の液圧による内圧力を、中空空間Aに対応する内壁52の内壁部分、及び中空部41に対応する内壁42(以下、単に「内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分」という)に押し付ける工程であり、この工程では、その内圧力で、内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分を塑性変形させる。作動液は請求範囲に記載の液体に相当する。
液圧負荷工程では、「作動液圧発生源」としての高圧発生源90を使用する。高圧発生源90は、作動液を、交差穴部51部分の中空空間A及び中空部41に供給すると共に、封止された内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分の空間容積を減縮し、作動液を増圧する増圧ピストン(図示せず)を備えている。
高圧発生源90と第2封止冶具82との間は、作動液供給通路91で接続されており、作動液供給通路91の容積は、上記内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分の空間容積に含まれる。このため、作動液供給通路91は、作動液供給通路91の通路断面積並びに通路長を小さくすることにより、上記容積量を抑制することが好ましい。
上記作動液は、オイルなどの作動油を使用する。このような作動油は、作動油を加圧すると、流動性が低下し流動しにくくなる。作動油の流動性が過度に低下する場合には、高圧発生源90側で発生する作動液圧と、内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分の空間内、即ち中空空間A及び中空部41で実際に発生する実作動液圧とが過度にずれるという懸念がある。そのため、作動液は、上記のような作動油のうち、目標内圧力(目標液圧負荷)を形成するための液圧範囲において流動性が過度に低下しない程度の特定作動油を使用することが好ましい。なお、液圧範囲は、その最大液圧が40MPa以上の超高圧範囲にある。
本実施形態では、詳しくは、液圧負荷工程は、作動液充填工程、作動液加圧工程、および解除工程を備えている。
作動液充填工程では、高圧発生源90から交差穴部51部分の中空空間A及び中空部41に作動液を送油することにより、内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分の空間内のエア抜きを行なうと共に、作動液の充填を行なう。具体的には、例えば複数の第3封止冶具83のうちのいずれか一つの特定第3封止冶具の、交差穴部51の円錐台部54への押し当て力を比較的低く設定することにより、特定第3封止冶具周辺から作動液を流出させることができる。その結果、作動液の流出と共にエア抜きが容易に実施できる。
作動液充填工程では、エア抜きにより作動液の充填が完了すると、特定第3封止冶具による上記押し当て力を、増大させることにより、目標内圧力を形成するための設定値を確保するようにする。
作動液加圧工程では、高圧発生源90の増圧ピストンを作動させることにより、内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分の空間内の作動液圧を、目標内圧力となる目標作動液圧に増圧させる。これにより、内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分が、液圧負荷により塑性変形する。故に、内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分は、液圧負荷の解除後も、塑性変形層が存在するようになるのである。
ここで、液圧負荷時において内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分は、全領域が塑性変形しなくとも、一部の領域に塑性変形層が存在する程度であってもよいのである。これにより、液圧負荷解除後において、復元しようとする弾性変形層の収縮作用により、塑性変形層に圧縮残留応力を発生し得るのである。
特に上記内壁42及び内壁52のうち、交差穴部51の中空部41側の開口部周辺の内壁42及び内壁52の部分は、応力集中し易い。こうした応力集中し易い領域は耐久性低下を招くおそれがある。
これに対し、本実施形態では、液圧負荷工程において内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分に、塑性変形層を有するよう形成処理するので、応力集中し易い交差穴部51の中空部41側の開口部周辺の内壁42及び内壁52の部分に、圧縮残留応力を付与することができる。これにより、上記応力集中し易い交差穴部51の中空部41側の開口部周辺の内壁42及び内壁52の部分において実使用時に発生する最大応力が、予め付与した圧縮残留応力により減じられるので、レール本体40の耐久性の向上が図れる。
(最終組付工程)
上記液圧負荷工程によって、内壁52及び内壁42の液圧負荷対象部分に圧縮残留応力が付与されると、最終工程では、封止冶具81、82、83を取り外しと共に、圧力センサ31及び圧力制御弁32をレール本体40の両軸端部に取付ける。
以上、コモンレールの製造方法の基本工程について説明した。以下、コモンレールの製造方法の特徴的工程について、図2、及び図4〜7に基づいて説明する。
(コモンレールの製造方法の特徴的工程)
図6は特徴工程である測定工程を説明する模式図であり、上記液圧負荷工程等の基本工程と、測定工程との関係を示すものである。図7は、作動液の内圧力に対し、コモンレール30の硬度と、コモンレール30の所定部位での変形量との関係を示す相関図の一例を示している。なお、図6において、横軸である時間軸上のAは組付工程であり、Bは液圧負荷工程であって、Baは作動液充填工程、Bbは作動液加圧工程、Bcは解除工程に対応する。作動液の液圧Pは、作動液供給通路91内の液圧を測定したものである。
ここで、コモンレール30の内壁42、52に作動液の液圧を負荷することにより、内壁42、52が弾性変形する弾性変形領域を経て、コモンレール30の母材の降伏強度である降伏点を境に塑性変形が生じ始める。内壁42、52に負荷する作動液の液圧、即ち内圧力が、降伏強度より大きくほど、内壁42、52における塑性変形層が拡大する。こうした内圧力により内壁42、52に塑性変形層が拡大していくと、その塑性変形作用の拡大により、レール本体40の内壁42の内径45及び配管接続部50の内壁52の内径55が拡大する。
その塑性変形作用が内壁42、52側で拡大すると、コモンレール30の外壁43、即ちレール本体40の外壁43及び配管接続部50の外壁57においても弾性変形もしくは塑性変形が発生することになる。それ故に、内壁42、52側の塑性変形作用拡大によれば、上記外壁43の外径46及び上記外壁57の外径56も拡大する。
そして、液圧負荷工程Bの作動液加圧工程Bbにおける作動液加圧中にあるとき、および作動液加圧工程Bbが終了し、解除工程Bcにあるときのいずれも、塑性変形層が存在することになるので、上記外壁43、57の外径46、56の拡大作用が、作動液加圧中及び作動液加圧解除後のいずれでも観測できることを、実験により発明者は確認した。
即ち、図7に示すように、作動液加圧解除後の外壁43、57の外径46、56の拡大作用、つまり外壁43、57での外径46、56寸法の変形量は、上記母材の硬度に応じて形成される。例えば硬度が高くなる程、降伏強度が大きくなるため、上記外径46、56寸法の変形量自体は硬度が低い場合に比べて小さくなるが、発生する圧縮残留応力は硬度が低い場合に比べて大きくなる。
そこで、本実施形態では、以下の測定工程Eを設けるようにした。即ち、測定工程Eでは、液圧負荷工程B前の段階Ebにおいて、レール本体40の外壁43の外径46に関し、その初期寸法46aを測定すると共に、液圧負荷工程B直後の段階Ecにおいて、塑性変形層存在後の寸法46bを測定する。このように測定された外径寸法46の差(46b−46a)を算出することで、塑性変形作用による実変形量を見極めることが可能となる。
そして、判定工程では、この実変形量を、図7の変形量と硬度との相関図とを比較することにより、実変形量が、所定の圧縮残留応力を内壁42、52に付与し得る変形量であるか否かを判定するのである。詳しくは判定工程では、実変形量が図7中の変形量の枠範囲内にあれば、所定の圧縮残留応力が内壁42、52に付与されたと判定し、実変形量が図7中の変形量の枠範囲外にあれば、所定の圧縮残留応力が内壁42、52に付与されていないと判定する。
ここで、図7中の変形量の枠範囲は、製造されるコモンレール30の内壁42、52の肉厚のばらつきや、中空部41並びに中空空間Aの容積量のばらつきなどのうち、許容される製造ばらつきに基づいて規定されている。
さらに、本実施形態では、測定工程Eは、コモンレール30の母材のロットごとの硬度ではなく、製造されるコモンレール30ごとの硬度を測定する硬度測定段階Eaを設けるようにした。硬度測定段階Eaは、上記組付工程A前に、製造される各コモンレール30の硬度を測定するように構成されている。
これにより、製造されるコモンレール30の実硬度、即ち実降伏強度を見極めるので、実変形量と比較判定する上記図7中の変形量の枠範囲を絞ることができる。それ故に、実変形量と、図7の変形量と硬度との相関図とに基づいて内壁42、52に所定の圧縮残留応力が付与されたか否かを、より精度よく判定することができる。
以上説明した本実施形態では、内壁42、52に負荷される作動液の内圧力に対し、所定部位であるレール本体40の外壁43の外径46に関し、その外形径46の変形量と硬度との関係が、図7の相関図に示す関係の如く予め設定されている。そして、測定工程Eでは、外形径46の実変形量を、液圧負荷工程と併行して監視することができる。
そのような外形径46の実変形量に関し、判定工程により、実変形量と、変形量と硬度との相関図とに基づいて内壁42、52に所定の圧縮残留応力が付与されたか否かを判定することになる。それ故に、被加工物であるコモンレール30の全数に対し、内壁42、52に所定の圧縮残留応力が付与された良品であるか否かを、有効に判定し得るのである。
また、以上説明した本実施形態において、外形径46の実変形量の監視のため、測定工程Eでは、液圧負荷工程B前の段階Eb、および液圧負荷工程B直後の段階Ecにあるときの外径寸法46を測定した。段階Ecでは、液圧負荷工程B前の元の作動液の液圧P1に減圧され、作動液加圧が実質的に解除されているものの、塑性変形層が存在しているので、外形径46における塑性変形層存在後の寸法46bを安定して測定することができる。
また、以上説明した本実施形態では、測定段階Eにおいて各段階Eb、Ecで測定する所定部位の寸法を、レール本体40の外壁43の外径46としている。上記外壁43の外径46は、加圧される作動液が封入されているコモンレール30内に存在する部位の寸法ではないので、比較的容易に測定できる部位である。それ故に、液圧負荷工程の実行と併行実施に関し、液圧負荷工程の実行を中断することなく、各段階Eb、Ecでの測定を実行することができるので、被加工物であるコモンレール30の全数に対する品質確認と、品質確認に伴なう液圧負荷工程Bでの生産性低下を防止することとの両立が可能となる。
(第2実施形態)
第2実施形態を図8に示す。第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態では、変形量と硬度との相関図において変形量を、塑性変形作用及び弾性変形作用による変形量とする一例を示すものである。図8は、作動液の内圧力に対し、硬度と所定部位での変形量との関係を示す相関図の一例を示している。
第1実施形態による図7の相関図では、作動液加圧解除後の変形量と硬度の関係を示している。これに対し、第2実施形態による図8の相関図では、作動液加圧中の変形量と硬度の関係を示している。図8において破線で示される変形量は、図7の相関図中の上記変形量を表すものである。
ここで、作動液加圧中の外壁43の外径46の拡大作用は、塑性変形作用による上記変形量に、弾性変形層の弾性変形作用による変形量が加わることになるので、外形径46の実変形量の監視のため、作動液加圧解除後の外径46の拡大作用に比べて増大する。そのような作動液加圧中の外壁43の外径46の拡大作用によれば、図8の実線で示される変形量、硬度、及び圧縮残留応力の関係が得られ、かつ図7の相関図中の上記変形量に対し監視対象の変形量の大きさを大きく設定できるので、実変形量を検出する検出精度の向上が図れる。
ここで、本実施形態による測定段階Eでは、段階Ecを、作動液加圧が実質的に解除され減圧段階に替えて、加圧段階であって、最大圧力P2に保持される加圧段階とするようにした。これによると、作動液の内圧力が所定の最大圧力P2で保持されているので、塑性変形及び弾性変形拡大作用を受ける寸法46bを、安定して測定することができる。
このような本実施形態によれば、実変形量と、図8の変形量と硬度との相関図とに基づいて内壁42、52に所定の圧縮残留応力が付与されたか否かを、更により精度よく判定することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態は第1実施形態の変形例である。第3実施形態では、実変形量を監視するための所定部位の寸法を、配管接続部50の外壁57の外径56とする一例である。
ここで、第1実施形態で説明したように、外壁43、57の外径46、56の拡大作用が、作動液加圧中及び作動液加圧解除後のいずれでも観測できることを、実験により発明者は確認している。
そこで、本実施形態では、測定工程Eにおける段階Eb、Ecで実施する実変形量監視のための測定部位を、外壁57の外径56とした。このような本実施形態であっても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、本実施形態では、上記測定部位として、配管接続部50のうちの、中空部41側の端部の外壁57の外径56とすることが好ましい。これによると、上記中空部41側の端部の外壁57の外径56は、実変形量監視のための測定部位として、圧縮残留応力が付与される内壁42、52のうちの、交差穴部51の開口部周辺の内壁部分に比較的近い。それ故に、応力集中し易い交差穴部の開口部周辺の内壁部分に関し、その内壁部分に所定の圧縮残留応力が付与されているか否かの判定を、有効になし得るのである。
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
(1)以上説明した本実施形態では、実変形量監視のための測定部位として、レール本体40の外壁43の外径46、または配管接続部50の外壁57の外径56を、測定部位の寸法とした。これに限らず、測定部位の寸法を、レール本体40の内壁42の内径45、または配管接続部50内壁52の内径55としてもよい。この場合、作動液加圧中は測定できないものの、第1実施形態と同様に、液圧負箇荷工程B前の段階Eb、及び液圧負箇荷工程B後の段階Ec時に、内径45、55を測定することは比較的容易に実現可能である。それ故に、被加工物であるコモンレール30の全数に対する品質確認と、これに伴なう液圧負荷工程Bでの生産性低下を抑制することとの両立が可能となる。
(2)液圧負荷工程で使用する作動液を、オイルなどの作動油としたが、これに限らず、設定する液圧負荷範囲において流動性を有する液体であればいずれの液体であってもよい。
(3)以上説明した本実施形態では、測定工程Eは、製造されるコモンレール30ごとの硬度を測定する硬度測定段階Eaを設けるようにした。これに限らず、コモンレール30の母材のロットごとの硬度を、当該ロットに対応するコモンレール30の硬度として代用するようにしてもよい。
(4)以上説明した本実施形態では、配管接続部50の交差穴部51が、レール本体40の中空部41の長手方向に対し直交する方向に、中空部41に開口するとした。これに限らず、交差穴部51が、単に、中空部41の長手方向に対し交差する方向に、中空部41に開口するものであってもよい。
10 蓄圧式燃料噴射装置
12 燃料噴射弁
16 供給配管(供給通路)
30 コモンレール
31 圧力センサ
32 圧力制御弁
40 レール本体
41 中空部
42 内壁
43 外壁
45 内壁42の内径
46 外壁43の外径
50 配管接続部
51 交差穴部
52 内壁
53 雄ねじ部
54 円錐台部(テーパ部)
55 内壁52の内径
56 配管接続部50の外壁57の外径
57 外壁
59 座面部(テーパ部)
60 燃料配管
81 第1封止冶具(封止冶具)
82 第2封止冶具(封止冶具)
83 第3封止冶具(封止冶具)
83a 円錐面部
90 高圧発生源(内圧力発生源)
91 作動液供給通路

Claims (7)

  1. 筒状を呈し、少なくとも中空部を有する筒状部材に対し、前記筒状部材の内壁に圧縮残留応力を付与する筒状部材の製造方法であって、前記内壁に圧縮残留応力を付与するために、前記内壁内に液体を導入し、前記液体を加圧することにより前記液体の内圧力で前記内壁を塑性変形させる液圧負荷工程を有する筒状部材の製造方法において、
    前記液体の内圧力に対し、前記筒状部材の硬度と、前記筒状部材の所定部位における変形量との関係を予め設定し、
    前記所定部位の寸法を、前記液体の加圧前及び加圧後に測定する測定工程と、
    前記液体の加圧前及び加圧後に測定された前記所定部位の寸法の差と、前記関係とに基づいて前記内壁に圧縮残留応力が付与されたか否かを判定する判定工程と、
    を備えることを特徴とする筒状部材の製造方法。
  2. 前記液体の加圧後とは、
    前記液圧負荷工程の加圧段階であって、前記液体の内圧力としての最大圧力を形成し、当該最大圧力に保持されている加圧段階、
    および、前記加圧段階が終了し、前記液体を前記加圧過程前の圧力に減圧した減圧段階のうちの、いずれかの段階であって、
    前記測定工程では、当該段階にあるとき、前記液体の加圧後における前記所定部位の寸法を測定することを特徴とする請求項1に記載の筒状部材の製造方法。
  3. 前記測定工程では、前記加圧段階にあるとき、前記液体の加圧後における前記所定部位の寸法を測定することを特徴とする請求項2に記載の筒状部材の製造方法。
  4. 前記所定部位の寸法は、前記内壁の内径、または前記筒状部材の外壁の外径であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
  5. 前記筒状部材は、
    前記中空部を有する筒状部本体と、
    前記筒状部本体の延びる長手方向に対し交差する交差方向に前記中空部に開口する交差穴部を有し、前記中空部とは反対側の端部に外側筒部とを備え、
    前記所定部位の寸法は、前記筒状部本体および前記外側筒部のいずれかの外径であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
  6. 前記所定部位の寸法は、前記外側筒部の外径であって、前記外側筒部のうちの、前記中空部側の端部における外径であることを特徴とする請求項5に記載の筒状部材の製造方法。
  7. 前記測定工程は、前記液圧負荷工程前にあるとき、前記筒状部材の硬度を測定する硬度測定工程を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
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