JP5028080B2 - 低摩耗性摺動部材及びそれを用いた人工関節 - Google Patents

低摩耗性摺動部材及びそれを用いた人工関節 Download PDF

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Description

本発明は、湿潤環境下で使用される低摩耗性の摺動部材に関し、特に、人の関節を補綴するための人工関節に用いられる摺動部材に関する。
人工股関節、人工膝関節等の人工関節の摺動面を構成する摺動部材として、超高分子量ポリエチレン(UHMWPEと称す)が一般に使用されている。しかし、人工関節が生体内で使用されるとき、摩擦運動により生じるUHMWPEの摩耗粉は、骨の融解(osteolysis)を誘発することがある。骨の融解が引き起こす人工関節と骨との固着力の低下、いわゆるルーズニングが人工関節置換術の合併症として大きな問題になっている。UHMWPEの通常の摩耗量は、年間0.1mm〜0.2mm程度であり、人工関節置換術を施術後、しばらくは問題ないが、5年程度経過するとルーズニングが著しくなるので、人工関節を取り替える必要が生じ、患者にとって大きな負担となっている。
ルーズニングの解決方法の1つは、UHMWPEの摩耗粉の量を減少させることである。そのために、関節面の素材の組合せや素材自体の改良といった様々な試みが行われている。その1つとして、近年では、電子線やガンマ線の照射により分子鎖を架橋させたUHMWPE(クロスリンクポリエチレン、以下CLPEと称する)についての研究が、盛んに行われている(例えば特許文献1〜3)。これらの研究は、高分子材料にガンマ線や電子線等の高エネルギー放射線を照射すると、分子鎖の切断によりフリーラジカルが生成し、続いて分子鎖の再結合や架橋反応等が起こることを利用している。前述のCLPEは、従来のUHMWPEに比べて耐摩耗特性に優れており、その摩耗量は1/5〜1/10にまで低減できると報告されている。
また、UHMWPEの表面に皮膜層を形成して、摺動部表面の摺動特性を向上させる研究も盛んに行われている。例えば、人工関節などのように、優れた摺動特性を要求される医療用器具の表面に、アリルアミンとホスホリルコリン類似基を有するランダム共重合体の皮膜を固定して、生体適合性や表面潤滑性を付与することが知られている(例えば特許文献4)。
特に、UHMWPEで形成した人工関節の摺動表面に、ホスホリルコリン基を有する重合性モノマーをグラフト結合すると、人工関節の摩耗を抑える効果が高く、従来よりも摩耗粉の発生を抑制できる高分子材料製人工関節部材が得られる(例えば特許文献5)。
特許第2984203号明細書 米国特許第6228900号明細書 国際公開第97/29793号パンフレット 国際公開第01/05855号パンフレット 特開2003−310649号公報
現在の技術では、関節摺動部材の摺動面を修飾して耐摩耗性を付与したとしても、摺動面の摩耗を完全に防止できるわけではない。そのため、従来の表面修飾した関節摺動部材では、使用開始直後には良好な耐摩耗性を示したとしても、長期間にわたる使用で表面修飾領域が摩耗や剥離によって除去されれば、耐摩耗性が一気に劣化する。そして、耐摩耗性の低下により摩耗粉が発生すれば、ルーズニングが生じる可能性が高い。
上述のCLPEを用いた関節摺動部材は、臨床使用期間が未だに短いので、長期間にわたって耐摩耗性が維持できるかどうか十分に確認されていない。
また、UHMWPE製の医療用器具表面にランダム共重合体の皮膜を固定する手法を人工関節摺動部材に応用した場合、ランダム共重合体皮膜は、過酷な摩擦摩耗環境下におかれてUHMWPEの表面から剥離する可能性が極めて高く、実用化は困難である。
このような剥離が起こる理由は、UHMWPE表面とランダム共重合体皮膜との結合力が低いことにある。結合力が低い原因は、既に十分に重合の進んだランダム共重合体膜をUHMWPEの表面に固定するからであり、また、別の原因は、UHMWPE表面に、重合化したランダム共重合体膜と結合するための官能基が存在しないことである。
これに対して、特許文献5では、UHMWPE基材の表面にホスホリルコリン基を有する高分子鎖をグラフト結合することにより、ホスホリルコリン基を有する高分子鎖とUHMWPE表面との間の結合力を高めることに成功した。これにより、過酷な摩擦摩耗環境下にあっても剥離しない耐摩耗性皮膜を、UHMWPEの摺動面に形成した関節摺動部材が得られた。しかしながら、関節摺動部材が長期間にわたって耐摩耗性を維持できるどうかは十分に確認されていない。例えば、特許文献5では、得られた関節摺動部材の摺動面にステンレス製の鋼球体を負荷状態で接触させて、回転サイクル300万回までの耐摩耗性の加速試験を行っているが、これは3年の使用に相当し、人工関節に求められる長期間(例えば5年以上)にわたって使用したときの耐摩耗性を知ることはできない。
そこで、本発明は、長期間にわたって耐摩耗性を維持でき、耐久性に優れた摺動部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、UHMWPE表面にホスホリルコリン基を有する高分子膜を固定した場合、その耐摩耗性が高分子膜の厚さに依存し、その最適範囲が存在することを見いだして本発明の人工関節用摺動部材を完成したものである。
すなわち、本発明の摺動部材は、
湿潤環境下で使用される低摩耗性の摺動部材であって、
上記摺動部材が、メチレン基を有する高分子材料から成形された基材と、該基材の摺動面を被覆した高分子膜とを含み、
上記高分子膜は、上記摺動面にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖により構成されており、
上記高分子膜の厚さが、10〜200nmであり、
上記摺動面のリン酸指数(赤外分光分析スペクトルのリン酸基のピーク強度/メチレン基のピーク強度)が0.45以上であることを特徴とする。
本発明の摺動部材は、長期間にわたって厳しい摩擦環境下で使用しても摩耗量を少なく抑えることができるので、摩耗粉によって誘発される骨融解が起こりにくい。また、長期間にわたって摺動面の形状変形が起こりにくいので、設計時の人工関節の性能を維持できる。これにより、一旦人工関節の置換術を行うと、長期間にわたって人工関節が安定して機能するので、再置換術の回数を減らす又はなくすことができる。また、体内環境以外の湿潤環境であっても、優れた耐摩耗性を示すので、摩擦環境下におかれている摺動部材にも好適である。
また、本発明は、上記の摺動部材を製造するための方法であって、メチレン基を有する高分子材料から成る基材を成形する工程と、上記基材の摺動面に、ホスホリルコリン基を有する高分子鎖をグラフト結合により固定することにより、摺動面に高分子膜を形成する工程と、を含み、上記高分子膜を形成する工程が、上記基材の摺動面に光重合開始剤を塗布する過程と、ホスホリルコリン基を有する重合性モノマーを含有する溶液に浸漬した状態で、上記基材の摺動面に上記光重合開始剤を励起させるのに必要な強度の紫外線を照射する過程と、を含み、上記重合成モノマーを含有する溶液のモノマー濃度が、0.25〜0.50mol/Lであることを特徴とする。
本発明によれば、モノマー濃度を調節することにより、好ましい膜厚を有する均一な高分子膜を形成することができる。
本発明の摺動部材によれば、長期間にわたって耐摩耗性を維持でき、耐久性に優れた摺動部材を提供することができる。
<実施の形態1>
図1は、人工関節の一種である人工股関節1の模式図である。人工股関節1は、寛骨93の臼蓋94に固定される摺動部材(臼蓋カップ)10と、大腿骨91の近位端に固定される大腿骨ステム20とから構成されている。臼蓋カップ10は、ほぼ半球状の臼蓋固定面14とほぼ半球状にくぼんだ摺動面16とを有するカップ基材12と、摺動面16に被覆された高分子膜30を有している。臼蓋カップ10の摺動面16に大腿骨ステム20の骨頭22を嵌め込んで摺動させることにより、股関節として機能する。
図1及び図2に示すように、本発明の臼蓋カップ10は、カップ基材12の摺動面16の表面に、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30が被覆されている。この高分子膜30は、詳細には、ホスホリルコリン基を有する高分子鎖が表面に配列した構造になっている。このような構造は、生体膜の構造に類似している。
生体関節部等の骨材表面を構成する生体膜は、リン脂質分子の集合体で、その表面は微視的にホスホリルコリン基で覆われている(石原:外科61巻132頁(1999))。この生体膜は、膜の内部に潤滑液を保持することにより、極めて摩擦係数の低い潤滑な関節面を構成する。本発明の高分子膜30も、生体膜と同様に潤滑液との親和性が高く、膜の内部に潤滑液を保持することができるので、従来の臼蓋カップ10の摺動面16に比べると、摩擦係数を下げることができる。
上記のように、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を臼蓋カップ10の摺動面16に被覆すれば、摺動特性を向上して耐摩耗性を改善することができる。しかしながら、人工関節用の摺動部材には、体液に接触した状態で全体重を支えつつ摺動するという過酷な使用環境において、長期間にわたって耐摩耗性が維持できること、すなわち極めて厳しい耐久性が要求される。
そこで、本発明では、臼蓋カップ10の耐久性について、高分子膜30の膜厚との関係を調べた。その結果、高分子膜30の膜厚が10〜200nmであると、優れた耐摩耗性を示すことがわった。膜厚が10nm未満であると、耐摩耗性が不足して短期間で耐久性が劣化するので好ましくない。また、膜厚が200nmより厚いと、高分子膜30の均質性が低下する傾向がみられ、部分的に皮膜が薄い又は膜がない部分が生じて、その部分から高分子膜30が剥離し又は臼蓋カップ10が摩耗して、耐摩耗性が低下するので好ましくない。高分子膜30の特に好ましい膜厚は、30〜100nmである。
臼蓋カップ10の耐久性が高まると、長期間にわたって摩耗粉の発生を抑えることができるので、ルーズニングが抑制される。よって、再置換の回数の少ない又は不要な人工関節を提供することができる。
また、本発明では、臼蓋カップ10の耐久性を延ばすために、高分子膜30の密度にも着目した。本発明において高分子膜の「密度」とは、厳密には単位面積当たりに存在するMPCポリマーの量であるが、MPCポリマーの膜厚が十分に薄い場合には、単位面積当たりのMPCポリマーの密集度の指標として使用できる。よって、密度が高いほど、臼蓋カップの摺動面上にMPCポリマーが密集して存在していると見なすことができる。
本発明では、高分子膜30の密度を規定する単位として、「リン酸指数」という新たな概念を導入し、耐久性と高分子膜の密度とを定量的に規定した。
ここで「リン酸指数」とは、フーリエ変換赤外線分光(FT−IR)分析のスペクトルにおいて、メチレン基の吸収である1460cm−1のピーク強度Iメチレンに対するリン酸基の吸収である1080cm−1のピーク強度Iリン酸の強度比、つまりIリン酸/Iメチレンと定義する。
本発明のように、メチレン基を含む高分子材料からなるカップ基材12に、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を形成し、FT−IR測定を行うと、カップ基材12に起因したメチレン基のピークと、高分子膜30に起因したリン酸基のピークとが観測される。このとき、カップ基材12が一定であり且つ高分子膜30の膜厚が極度に変化しなければ(例えば1μm以内の膜厚差であれば)、それら2つのピーク強度から算出したリン酸指数は、カップ基材12の単位面積あたりに存在するリン酸基の個数にほぼ比例する。
このリン酸指数を用いて、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を摺動面16に備えた臼蓋カップ10の耐久性を調べたところ、膜厚が10〜200nmの高分子膜30では、リン酸指数0.32以上の臼蓋カップであれば、従来の臼蓋カップに比べて格段に耐久性が改善されており、加速実験からは、5年以上の耐久性を有するとの実験結果が得られた。さらに、リン酸指数0.45以上の臼蓋カップでは10年以上の耐久性を有するとの実験結果が得られており、これは、ある程度の高齢に達してから人工関節置換術を行った場合、生涯にわたって再置換を必要としない年数に相当するといえる。
このように、臼蓋カップ10の耐久性を高めるには、高分子膜30のリン酸指数が0.32以上であると好ましく、0.45以上であるとより好ましい。
また、高分子膜30の親水性が高いと、体内において潤滑液となじむと考えられる。潤滑液によって十分に湿潤した高分子膜30は、臼蓋カップ10の摺動面16に優れた摺動性を付与し、臼蓋カップ10の耐久性を高めることができると期待される。この親水性は、高分子膜30の密度によって変えることが可能である。そこで、本発明では、リン酸指数と親水性との関係、及び耐久性と親水性の関係を明らかにした。親水性(水に対するぬれ性)は、高分子膜30に水を滴下したときの接触角で規定する。
ホスホリルコリン基を有する高分子膜30は、リン酸指数が上昇すると、親水性(ぬれ性)が向上して、水の接触角が小さくなる傾向にある。しかしながら、リン酸指数が0.3以上になると、接触角は14°で飽和して、それ以上リン酸指数を高くしても、接触角が小さくなることはなかった。
また、耐久性については、加速実験の結果から、臨床使用期間として十分な年数である5年以上の耐久性を有すると見積もられた臼蓋カップ10では、高分子膜30は、水に対するぬれ性が、接触角で20°以下であり、さらに、10年以上の長期間の耐久性を有すると見積もられた臼蓋カップ10では、高分子膜30は、飽和角度である接触角で14°以下である。このように、高分子膜30の水に対する接触角を20°以下にすると好ましく、さらに14°以下にするのがより好ましく、臼蓋カップの耐久性を高めて長期間にわたって摩耗粉の発生を抑えることにより、ルーズニングを抑制し、再置換の回数の少ない又は不要な人工関節を得ることができる。
本発明の摺動部材を製造するには、臼蓋カップ10の摺動面16に高分子膜30を固定する必要がある。従来からいくつかの固定方法が知られているが、本発明では紫外線を用いたグラフト重合によって、摺動面16にホスホリルコリン基を有する重合性モノマーを結合させることにより高分子膜30を固定している。この方法は、臼蓋カップ10を構成する高分子材料の強度等の性能を劣化させることなく、摺動面16のみを修飾することができ、かつ結合部分が化学的に安定し、更に、多量のホスホリルコリン基を人工関節部材の摺動面に形成して高分子膜30の密度を高めることができる利点がある。
高分子膜30の形成には、ホスホリルコリン基を有する重合性モノマーを用いるが、特に、一端にホスホリルコリン基を、他端に臼蓋カップ10を構成する高分子材料とグラフト重合可能な官能基を有するモノマーを選択することにより、臼蓋カップ10の摺動面16に高分子膜30をグラフト結合させることができる。
本発明に好適な重合性モノマーとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、ω−メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン、4−スチリルオキシブチルホスホリルコリン等がある。特に、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPCと称す)が好ましい。
MPCモノマーは、下記に示すような化学構造式を有しており、ホスホリルコリン基と、重合性のメタクリル酸ユニットとを備えている。MPCモノマーは、ラジカル重合により容易に高分子量のMPCポリマーを形成することができるという特徴がある(Ishiharaら:Polymer Journal誌22巻 355頁(1990))。そのため、高分子膜30をMPCモノマーから合成すると、高分子膜30と摺動面16とのグラフト結合を、比較的緩やかな条件で行うことができ、さらに、密度の高い高分子膜30を形成して、多量のホスホリルコリン基を摺動面16に形成させることができる。
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尚、本発明で使用できる高分子膜30は、ホスホリルコリン基を有する単一の重合性モノマーから構成した単独重合体のみならず、ホスホリルコリン基を有するモノマーと、例えば他のビニル化合物モノマーとから成る共重合体から形成することもできる。これにより、高分子膜30に機械的強度向上等の機能を付加することもできる。
臼蓋カップ10のカップ基材12はメチレン基を有する高分子材料から成形されるが、UHMWPEを用いるのが好ましい。UHMWPEは、メチレン基を有する高分子材料のうちでも耐摩耗性、耐変形性等の機械的特性に優れているので、カップ基材12に適している。UHMWPEは、分子量が大きいほど耐摩耗性が高くなるので、少なくとも分子量100万g/mol以上の、好ましくは分子量300万g/mol以上のUHMWPEを用いるのが好ましい。
さらに、UHMWPEを架橋処理したCLPEは、UHMWPEよりもさらに機械的特性に優れているので、臼蓋カップ10のカップ基材12に好ましく利用することができる。CLPE製のカップ基材12は、UHMWPEに、例えばX線照射、ガンマ線照射又は電子線照射等の高エネルギーを照射して架橋処理した後に、カップ状に形成することにより得ることができる。CLPEの架橋処理は、高エネルギーの代わりに架橋剤を用いて行うこともできるが、人工関節等の生体材料に用いた場合に、架橋剤の生体安全性が不確実な場合には用いることができない。これに比べて、高エネルギーによる架橋処理は、UHMWPEの生体安全性を損なうことなく架橋処理を行うことができるので好ましい。
特に、CLPE製カップ基材12が、X線、ガンマ線、又は電子線等の高エネルギー線を照射したときに産出されるフリーラジカルを含有しているのが好ましい。カップ基材12内に含まれるフリーラジカルは、カップ基材12の摺動面16に重合性モノマーをグラフト重合するときに、重合の開始点として機能することができるので、摺動面16の高分子膜30の密度を増加させるのに有効である。しかしながら、カップ基材12の全体をCLPEに変性することはコストアップにつながることから、例えばカップ基材12の摺動面16のみを架橋処理によりCLPEに変性して、摺動面16の耐摩耗性を向上したカップ基材12も臼蓋カップ10に好適である。
このようなラジカル含有のCLPE製カップ基材12を得るには、カップ基材12を成形する工程の前に、予め高エネルギー線を照射したメチレン基を有する高分子材料を調製する工程を行うとよい。この高分子材料を調製する工程とは、メチレン基を有する高分子材料にガンマ線を照射する過程と、ガンマ線を照射した高分子材料を、その融点以下の温度で熱処理する過程とを含んでいる。UHMWPE製のカップ基材12に高エネルギーを照射して大量のフリーラジカルを発生させ、次いで融点以下で熱処理することにより、フリーラジカルの大部分をC−C再結合や架橋結合に消費し、一部をカップ基材12中に残すことができる。熱処理する過程の処理温度を融点以上にすると、ほぼ全てのフリーラジカルが消費されてしまうので好ましくない。
本実施形態の人工股関節用臼蓋カップ10は、メチレン基を有する高分子材料(例えばUHMWPE)を機械加工等によりカップ基材12を成形し、さらにカップ基材12の摺動面16にホスホリルコリン基を有する高分子膜30をグラフト結合することにより製造することができる。ここで、カップ基材12の摺動面16に高分子膜30をグラフト結合するには、カップ基材12の摺動面16に光重合開始剤を塗布しておき、そのカップ基材12を、ホスホリルコリン基を有する重合性モノマーを含有する溶液に浸漬し、その状態でカップ基材12の摺動面16に紫外線(例えば波長300〜400nm)を照射する。カップ基材12の摺動面16に紫外線を照射すると、摺動面16近傍の重合性モノマーがポリマー化して高分子膜30を形成すると共に、高分子膜30が摺動面16にグラフト結合する。
得られる高分子膜30の膜厚は、重合性モノマーを含む溶液のモノマー濃度、溶液の温度、紫外線の照射時間、及びカップ基材12内に含まれるフリーラジカル量に依存し、それらを調節することにより所望の膜厚の高分子膜30を得ることができる。紫外線照射時間は40分以上であるのが好ましい。ここで、特許文献5の実施例に開示されている溶液の濃度(0.5mol/L)及び溶液の温度(60℃)の条件で高分子膜30を形成した場合には、紫外線照射時間を40分までは、臼蓋カップ10の摺動面16に形成される高分子膜30のリン酸指数の増加率が高い。よって、紫外線照射時間は40分以上、より好ましくは45分〜90分にするのが好ましい。
照射時間を40分としたときに、高分子膜30の膜厚を10〜200nmにするには、溶液のモノマー濃度が0.25mol/L〜0.5mol/Lに調節するとよい。モノマー濃度が0.25mol/Lよりも低いと、高分子膜30の膜厚が薄くなりすぎるだけでなく、臼蓋カップ10の摺動面16での高分子膜30の密度が低くなるので好ましくない。また、モノマー濃度が0.5mol/Lよりも高いと、臼蓋カップ10の摺動面16に達してグラフト重合する前に、溶液内に浮遊した状態でモノマー同士が重合してしまう。このような重合を起こすと、局所的にモノマー濃度が低下し、高分子膜30の膜厚が増加しない。これに対して他の部分ではモノマーが十分に存在するので高分子膜30の膜厚が増加する。その結果、厚さにムラのある高分子膜30が形成され、耐久性の低い高分子膜30が形成されてしまう。よって、モノマー濃度が0.5mol/Lよりも高いのは好ましくない。
<実施の形態2>
図3は、別の人工股関節であるバイポーラ人工股関節40を示している。この人工股関節40は、骨頭部分に特徴があり、ボール状の骨頭22と、その骨頭22を受容するアウターヘッド42との2つの部材とから構成されている。
骨頭22は、セラミックス又は金属製のボール状部材から成り、ステム本体21の近位部に固定されている。
アウターヘッド42は、金属又はセラミックス製の半球状の中空部材であるアウターシェル44と、アウターシェル44の内部に固定されたUHMWPE製のライナー基材46と、ライナー基材46内部の球面状の摺動面16に固定された高分子膜30とから構成されている。ライナー基材46と高分子膜30とにより、人工関節の摺動部材が構成されており、高分子膜30は、実施の形態1と同様に、摺動面16にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖から形成されている。
アウターヘッド42は、ライナー基材46の摺動面16に骨頭22を摺動可能に受容して、第1摺動部を構成する。さらに、アウターヘッド42自体も、生体骨の臼蓋に摺動可能に受容されて、第2摺動部を構成する。
このバイポーラ人工股関節40は、股関節の動作量に伴って、上記の第1及び第2摺動部で、順次摺動運動するようになっている。まず、第1摺動部において第1摺動運動が起こり、股関節の運動量が第1摺動部の可動域を超えると、第2摺動部において第2摺動運動が起こる。よって、日常生活の範囲では、第1摺動運動が主であり、第1摺動部の摩耗量が多い傾向にある。本実施の形態では、アウターヘッド42のライナー基材46の摺動面16に、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を備えることにより、第1摺動部の摺動特性を向上させて、耐摩耗性及び耐久性を向上させている。これにより、長期間にわたって摩耗粉の発生を抑えて、ルーズニングを抑制し、再置換の回数の少ない又は不要な人工股関節を得ることができる。
<実施の形態3>
図4は、人工肩関節70を示しており、肩甲骨の関節窩に固定される摺動部材(関節窩カップ15)と、上腕骨の近位端に固定される上腕骨ステム25とから構成されている。
上腕骨ステム25は、上腕骨の骨髄に挿入されるステム本体26と、ステム本体26の近位部の端部に固定されたほぼ半球状の金属又はセラミックス製の骨頭27とから構成されている。
関節窩カップ15は、肩甲骨の関節窩に埋没される肩甲骨ステム19と、浅い皿状に凹んだ摺動面16とを有するカップ基材17と、摺動面16に被覆された高分子膜30を有している。高分子膜30は、実施の形態1と同様に、摺動面16にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖から形成されている。
この人工肩関節70は、関節窩カップ15の摺動面16に、上腕骨ステム25の骨頭27を当接して摺動運動させることにより、前後運動及び旋回運動が可能な肩関節として機能する。
実施の形態3の人工肩関節70では、カップ基材17の摺動面16に、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を備えることにより、摺動部材の摺動特性を向上させて、耐摩耗性及び耐久性を向上させている。これにより、長期間にわたって摩耗粉の発生を抑えて、ルーズニングを抑制し、再置換の回数の少ない又は不要な人工肩関節を得ることができる。
<実施の形態4>
図5は、人工脊椎32を示しており、脊椎の椎間板を挟み込む上下2つの椎体に、それぞれ固定される上部コンポーネント33及び下部コンポーネント34から構成されている。
下部コンポーネント34は、椎間板の代わりに関節部分の摺動を確保する凸状摺動部材36と、その凸状摺動部材36を受容する金属製のケース35と、ケース35の下面から突出しており、下部コンポーネント34を椎体に固定するステム39とから構成されている。
凸状摺動部材36は、中央に膨らみ(摺動面16)を備えた円盤状の基材37と、摺動面16に被覆された高分子膜30を有している。高分子膜30は、実施の形態1と同様に、摺動面16にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖から形成されている。
上部コンポーネント33は金属から形成されており、下面には、凸状摺動部材36の摺動面16を摺動可能に受容する凹状受け部38を有し、上面には、椎体に固定するステム39を備えている。
この人工脊椎32は、凸状摺動部材36の摺動面16に、上部コンポーネント33の凹状受け部38を当接して摺動運動させることにより、全方位に湾曲可能な脊椎の一部を構成している。
実施の形態4の人工脊椎32では、下部コンポーネント34の凸状摺動部材36の摺動面16に、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を備えることにより、摺動部材の摺動特性を向上させて、耐摩耗性及び耐久性を向上させている。これにより、長期間にわたって摩耗粉の発生を抑えて、ルーズニングを抑制し、再置換の回数の少ない又は不要な人工脊椎を得ることができる。
<実施の形態5〜8>
図6〜図9は、主に前後方向に屈曲する運動を司る関節を置換するための人工関節である。このような人工関節では、関節を構成する2つの部材を軸で結合したヒンジタイプと、関節を構成する2部材を接触状態で使用する非ヒンジタイプの2種類に分類することができる。
現在使用されているヒンジタイプの人工関節には、人工指関節、人工膝関節、又は人工肘関節があり、非ヒンジタイプの人工関節には、人工膝関節、人工肘関節、又は人工足関節がある。
以下に、非ヒンジタイプの人工関節と、ヒンジタイプの人工関節の例を示す。
(実施の形態5)
図6は、非ヒンジタイプの人工膝関節72であり、脛骨の近位部に固定される脛骨コンポーネント50と、大腿骨の遠位部に固定される金属又はセラミックス製の関節部材(大腿骨コンポーネント52)とから構成されており、これらは分離した状態でそれぞれの骨端部に固定される。
大腿骨コンポーネント52は、その下面側に、前方向(膝頭方向、矢印A)から後ろ方向(膝裏方向、矢印P)に弧を描いて延びる2つの曲面状突出面53、53(内側顆と外側顆)を備えている。
人工膝関節72の脛骨コンポーネント50は、関節面を構成する摺動部材(脛骨トレイ48)と、脛骨トレイ48を脛骨に固定する脛骨ステム51とから構成されている。脛骨トレイ48は、その上面に、前方向Aから後ろ方向Pに延びる曲面状の凹みが形成されており、この凹みが、大腿骨コンポーネント52の2つの突出面53、53と当接する摺動面16、16になっている。脛骨トレイ48は、詳しくは、UHMWPEから成形されたトレイ基材49と、トレイ基材49の摺動面16、16に被覆された高分子膜30とから形成されている。高分子膜30は、実施の形態1と同様に、摺動面16にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖から形成されている。
実施の形態5の人工膝関節72は、大腿骨コンポーネント52の突出面53、53と、脛骨トレイ48の摺動面16、16とが摺動することにより、前後方向に屈伸可能になっている。
(実施の形態6)
図7は、非ヒンジタイプの人工肘関節74であり、尺骨の近位部に固定される尺骨コンポーネント58と、上腕骨の遠位部に固定される関節部材(上腕骨コンポーネント62)とから構成されており、これらは分離した状態でそれぞれの骨端部に固定される。
尺骨コンポーネント58は、関節面を構成する摺動部材(尺骨トレイ54)と、尺骨トレイ54を尺骨に固定する尺骨ステム60とから構成されている。尺骨トレイ54は、環状部材の一部を半径方向に切り取ったような形状をしていて、内面が摺動面16になっている。尺骨トレイ54の摺動面16は、幅方向の両側の縁部から中央方向に向かって盛り上がって、円周方向に延びる突条部分55を形成している。
尺骨トレイ54は、詳しくは、UHMWPEから成形されたトレイ基材56と、トレイ基材56の摺動面16に被覆された高分子膜30とから形成されている。高分子膜30は、実施の形態1と同様に、摺動面16にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖から形成されている。
人工肘関節74の上腕骨コンポーネント62は、金属又はセラミックスから成形されており、部分的に切り欠いたほぼ円筒状の形状になっている。上腕骨コンポーネント62の外面は、真ん中が僅かにくびれて滑車63を成している。
上腕骨コンポーネント62の滑車63と、尺骨トレイ54の突条部分55とが嵌め合うことにより、前後に屈伸可能な人工肘関節が形成される。
(実施の形態7)
図8は、非ヒンジタイプの人工足関節76(左足用)であり、脛骨の遠位部に固定される脛骨コンポーネント66と、距骨の近位部に固定される関節部材(距骨コンポーネント68)とから構成されており、これらは分離した状態でそれぞれの骨端部に固定される。
脛骨コンポーネント66は、関節面を構成する摺動部材(脛骨トレイ64)と、脛骨トレイ64を脛骨に固定する脛骨ステム67とから構成されている。
脛骨トレイ64は、前方向Aから後ろ方向Pに向かって湾曲した凹状曲面に成形された下面を有しており、この下面が摺動面16になっている。また、脛骨トレイ64の内側Mの縁部から下方に向かってフランジ96が突出しており、関節が横方向にずれて脱臼するのを防止している。脛骨トレイ64は、詳しくは、UHMWPEから成形されたトレイ基材65と、トレイ基材65の摺動面16に被覆された高分子膜30とから形成されている。高分子膜30は、実施の形態1と同様に、摺動面16にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖から形成されている。
人工足関節76の距骨コンポーネント68は、金属又はセラミックスから成形されており、前方向Aから後ろ方向Pに向かって湾曲した凸状曲面に成形された上面を有している。また、距骨コンポーネント68は、下面に形成された距骨ステム98を距骨の骨髄に挿入することにより、距骨の近位部に固定される。
距骨コンポーネント68の上面と、脛骨トレイ64の摺動面16とが摺動可能に接触することにより、前後に屈伸可能な人工足関節が形成される。
実施の形態5〜実施の形態7では、トレイ基材の摺動面に、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を備えることにより、摺動部材の摺動特性を向上させて、耐摩耗性及び耐久性を向上させている。これにより、長期間にわたって摩耗粉の発生を抑えて、ルーズニングを抑制し、再置換の回数の少ない又は不要な人工関節を得ることができる。
(実施の形態8)
図9は、ヒンジタイプの人工指関節80であり、中手骨と指骨との間の関節や、指骨間の関節の置換術に使用される。人工指関節80は、関節の遠位側に位置する指骨の骨端部に固定される軸側コンポーネント81と、関節の近位側に位置する中手骨又は指骨の骨端部に固定される軸受けコンポーネント85とから構成されている。
軸側コンポーネント81は、金属又はセラミックスから一体に形成されており、両側の端部84、84が突出した軸部82と、軸部82の中央付近に接続いて軸部82を骨端部に固定するためのステム83とを備えている。
人工指関節80の軸受けコンポーネント85は、軸部82の両端を嵌め込むための2つの軸受け穴88、88が形成された軸受け部材86と、軸受け部材86を骨端部に固定するステム87とを備えている。軸受け穴88の内面は、摺動面16になっている。軸受け部材86は、詳しくは、UHMWPEから成形された軸受け基材89と、軸受け穴88の摺動面16に被覆された高分子膜30とから形成されている。高分子膜30は、実施の形態1と同様に、摺動面16にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖から形成されている。
この人工指関節80では、軸受けコンポーネント85の軸受け穴88に軸部82の端部84を嵌め込むことにより、ヒンジ構造が形成される。このヒンジ構造において、軸受け穴88の中で軸部82が回転動作することにより、屈伸可能な人工指関節80が形成される。
実施の形態8では、軸受け穴88の摺動面16に、ホスホリルコリン基を有する高分子膜30を備えることにより、ヒンジ構造の摺動特性を向上させて、耐摩耗性及び耐久性を向上させている。これにより、長期間にわたって摩耗粉の発生を抑えて、ルーズニングを抑制し、再置換の回数の少ない又は不要な人工指関節を得ることができる。
人工関節のモデルとして、図1及び図2に示した人工股関節用の臼蓋カップ10を形成し、親水性、リン酸指数、及び耐久性(耐摩耗性を保持できる期間)を調べた。臼蓋カップ10のカップ基材12にはCLPEを用い、試料a〜gを準備した。
高分子膜30を被覆した試料b〜gは、以下の条件で作製した。なお、試料aは、比較用として、高分子膜30を被覆していないものである。
(試料bの作製)
試料bは、以下の工程によって作製した。
工程1.臼蓋カップ10のカップ基材12を、ベンゾフェノンのアセトン溶液(濃度10mg/mL)に30秒間浸漬した後、直ちに引き上げて、カップ基材12表面の溶媒を除去した。
工程2.カップ基材12を、MPC水溶液(モノマー濃度0.5mol/L、水溶液温度60℃)に浸漬した状態で、カップ基材12の摺動面16に紫外線(波長300〜400nm)を25分照射して、摺動面16の表面とグラフト結合した高分子膜(MPCポリマー膜)30を形成した。
工程3.カップ基材12をMPC水溶液から取り出して、純水で十分に洗浄した。
(試料cの作製)
試料bの作製工程のうち、工程2の紫外線照射時間を50分とした以外は同様に処理した。
(試料dの作製)
試料bの作製工程のうち、工程2の紫外線照射時間を90分とした以外は同様に処理した。
(試料eの作製)
試料bの作製工程のうち、工程2の紫外線照射時間を180分とした以外は同様に処理した。
(試料fの作製)
試料dの作製工程のうち、MPC水溶液のモノマー濃度を0.25mol/Lとした以外は同様に処理した。
(試料gの作製)
試料dの作製工程のうち、MPC水溶液のモノマー濃度を1.00mol/Lとし、工程2の紫外線照射時間を90分とした以外は同様に処理した。
(親水性、リン酸指数の測定)
各試料のMPCポリマー膜30について、水に対する接触角(親水性の指標)及びリン酸指数を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 0005028080
(耐久性試験)
試料a〜gの臼蓋カップと人工骨頭とを人工的に摺動させて、人体内での使用状態を再現した環境で加速試験を行った。
加速試験には、股関節が回転揺動しながら摺動する状態をシミュレートできるMTS社製の摩耗試験装置を用いた。図10は、摩耗試験装置100の概略側面図であり、体液類似液を溜める容器102が、回転モータ106に傾斜状態(例えば45°)で固定される。容器102の底部には、臼蓋カップ10を固定するホルダー104がある。容器102の上方には、先端に骨頭を固定した骨頭固定軸108が配置されていて、骨頭22を臼蓋カップ10の摺動面16にはめ合わせた状態で、骨頭22に下方向に荷重Fを負荷することができる。
耐久性試験では、生体内を模擬した状態での臼蓋カップ10の耐久性を評価するために、試験中は、臼蓋カップ10および骨頭22を0.1%のアジ化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸三ナトリウムを含む25%牛血清110中に浸漬した。骨頭22には市販のコバルトクロム合金(直径26mm)を用い、毎秒1回の歩行周期に183kgfと280kgfの2つのピークを持つDouble Peak Paulの歩行条件により歩行状態をシミュレートした。なお、牛血清110は、回転サイクル数50万回ごとに入れ替えた。
上記の条件で行った加速試験において、回転サイクル数50万回ごとに試料の質量を測定し、摩耗試験前の試料の質量を除算して摩耗量を求めた。その結果を、図11及び図12に示す。図中のグラフa〜gは、試料a〜gの試験結果である。
なお、図11及び図12のグラフでは、摩耗量がマイナスになっている場合がある。これは、試料を構成するMPCポリマー膜30及びのカップ基材12が水分を吸収したことにより、重量が増加したためである。本実施例では、摩耗量がマイナスになった場合(すなわち重量が増加した場合)には、摩耗量がゼロであったと見なすものとする。
図11は、回転サイクル数500万回までの試験結果である。回転サイクル数250万回までは、MPCポリマー膜を備えている試料b〜gは、摩耗量の著しい増加は見られず、良好な耐摩耗性を示している。しかしながら、回転サイクル数300万回以上になると、試料bの摩耗量が急激に増加して、400万回では試料a(MPCポリマー膜なし)の摩耗量と同等の摩耗量になり、さらに450万回以上では、試料aを超える摩耗量となった。試料gは、試料bよりも遅れて、回転サイクル数350万回以上で摩耗量が急激に増加し、その後は試料aと同程度の摩耗速度で摩耗した。
この結果から、摺動面にMPCポリマー膜を備えた臼蓋カップは、使用年数が短い間は、MPCポリマー膜の密度に関係なく良好な耐摩耗性を示すが、使用年数が長くなると、密度の低いMPCポリマー膜では全く耐摩耗性を示さなくなることが明らかになった。また、試料gはリン酸指数が高いのに耐久性が低めになったのは、試料gの膜厚が厚かったために、被覆が部分的に不十分であってもリン酸指数は高い数値になったためであると考えられる。
図12は、試料a、試料c及び試料dについての、回転サイクル数1000万回までの試験結果である。試料a(MPCポリマー膜なし)は、回転サイクル数にほぼ比例して摩耗量が増加している。試料cは、800万回転以下では摩耗量が極めて少なく、優れた耐摩耗性を示している。試料dは、1000万回まで有意な摩耗量の増加は見られず、優れた耐久性と、長期間にわたって使用開始時と変わらない耐摩耗性を維持できることが明らかになった。
図11及び図12の耐久性試験の結果のうち、同じモノマー濃度の溶液を用いた試料について、1.紫外線照射時間、2.水に対する接触角度、及び3.リン酸指数の3つの指標に対してまとめたものを、図13〜15に示す。図中の点a〜eは、試料a〜eの試験結果である。
図13〜15のグラフにおいて、縦軸の摩耗率(mg/100万回)とは、回転サイクル100万回で臼蓋カップが摩耗した重量(mg)のことである。例えば、1000万回での摩耗率とは、試験開始から数えて900万回から1000万回までの間の100万回分において、臼蓋カップが摩耗した重量のことである。加速試験において、回転サイクル100万回が1年間の使用に相当することから、摩耗率は、1年間あたりの摩耗粉の発生量に換算できる。
一般に、微量の摩耗粉はマクロファージにより処理されるが、臨床使用においてみられる摩耗粉の数は、数十〜数百万個以上に及び、貪食細胞の生理的な処理能力をはるかに上回っており、貪食細胞の放出するサイトカイン(PGE2、TNF−α、IL−1、IL−6など)が過剰に破骨細胞を刺激して、骨融解が発生すると考えられている。すなわち、一定期間に発生する摩耗粉の量を、体内での摩耗粉の処理許容限界より低く抑えることにより、骨融解を効果的に抑制できると考えられる。よって、摩耗率は、骨融解の抑制効果を知る指標に適しているといえる。
従来の人工股関節では、UHMWPE製の臼蓋カップが、摩耗率10〜20mg/100万回、CLPE製の臼蓋カップが、摩耗率3〜5mg/100万回である。本実施例では、摩耗率を極めて低い値に抑えることのできる範囲を明確にすることから、摩耗率1mg/100万回以下を耐摩耗性の基準とした。所定の回転サイクル数における耐摩耗性の適否と上記3つの指標(紫外線照射時間、水に対する接触角度、及びリン酸指数)との関係を調べた。
図13のグラフは、回転サイクル250万回の摺動運動(およそ3年の使用に相当)を行った時のカップの摩耗率を示している。図13(A)は、重合時間に対する摩耗率を、図13(B)は、接触角に対する摩耗率を、そして図13(C)は、リン酸指数に対する摩耗率をそれぞれプロットしたグラフである。
これらのグラフから、摺動面16に、紫外線照射時間25分以上、水に対する接触角度50°以下、そしてリン酸指数0.15以上のMPCポリマー膜を備えることにより、臼蓋カップ10は、およそ3年の使用後も良好な耐摩耗性を維持できることがわかった。また、250万回の試験では、臼蓋カップ10の摩耗率は、紫外線照射時間、水に対する接触角度、及びリン酸指数の3つの指標に対して、単調増加又は単調減少する傾向を示した。
図14のグラフは、回転サイクル500万回の摺動運動(およそ5年の使用に相当)を行った時のカップの摩耗率を示している。図14(A)は、重合時間に対する摩耗率を、図14(B)は、接触角に対する摩耗率を、そして図14(C)は、リン酸指数に対する摩耗率をそれぞれプロットしたグラフである。
このグラフから、摺動面16に、紫外線照射時間45分以上、水に対する接触角度20°以下、そしてリン酸指数0.28以上のMPCポリマー膜を備えることにより、臼蓋カップ10は、加速実験の結果からおよそ5年の使用後も良好な耐摩耗性を維持できると見積もられる。
500万回の試験では、250万回の試験結果と異なり、試料b(リン酸指数0.1のMPCポリマー膜あり)の摩耗率が、試料a(MPCポリマー膜なし)の摩耗率を越えていた。
図15のグラフは、回転サイクル1000万回の摺動運動(およそ10年の使用に相当)を行った時のカップの摩耗率を示している。図15(A)は、重合時間に対する摩耗率を、図15(B)は、接触角に対する摩耗率を、そして図15(C)は、リン酸指数に対する摩耗率をそれぞれプロットしたグラフである。
このグラフから、摺動面16に、紫外線照射時間90分以上、水に対する接触角度14°以下、そしてリン酸指数0.45以上のMPCポリマー膜を備えることにより、臼蓋カップ10は、加速実験の結果からおよそ10年の使用後も良好な耐摩耗性を維持できると見積もられる。
1000万回の試験では、試料c(リン酸指数0.32のMPCポリマー膜あり)の摩耗率は、試料a(MPCポリマー膜なし)の摩耗率と同程度まで低下していた。
図13〜14から、臼蓋カップにMPCポリマー膜を形成すると、使用開始から3年程度までは、膜の密度に関係なく耐摩耗性を向上させることができるが、5年以上経つと、MPCポリマー膜の密度が低い場合には、臼蓋カップに十分な耐久性を付与できない可能性があることが明らかになった。
また、約5年間の使用に相当する加速実験(500万回)で発生した摩耗量で比較すると、本発明の摺動部材を使用した臼蓋カップ(試料c〜e)の摩耗量は、MPC未被膜のUHMWPE製臼蓋カップの摩耗量の約1/20以下に、またMPC未被膜のCLPE製臼蓋カップ(試料a)の摩耗量の約1/10以下に減少させることができた。これは、本発明の摺動部材が、長期臨床使用時に耐えうることを示している。
(比較例)
特許文献5に開示されている作製条件で臼蓋カップ(試料Xとする)を形成した場合の耐摩耗性を推定して、図13〜15に点Xとしてプロットした。試料Xの作製工程は、本実施例の試料bの作製工程のうち、工程2の紫外線照射時間を30分とした以外は同様であった。
試料Xの摩耗率は、回転サイクル250万回では許容範囲内にあるが、500万回では許容できず、さらに1000万回ではMPCポリマー膜のない試料aと同程度まで低下することが推定される。
このように、長期間にわたって優れた耐摩耗性を有する摺動部材を得るには、摺動面にホスホリルコリン基を有する高分子膜を備えるのみでは不十分であり、形成する高分子膜の密度を高くする必要があることが明らかになった。
実施例1で作製した試料a〜eについて、摺動面に存在するMPCポリマー膜の密度を間接的に知るために、摺動面のリン原子濃度及び窒素原子の原子濃度(atom%)を測定し、それらの原子濃度と試料の耐久性との関係を調べた。
前出のMPCモノマーの化学構造式からわかるように、MPCモノマー1分子には、リン原子濃度と窒素原子とが1原子ずつ含まれている。よって、測定領域内に含まれるリン原子濃度及び窒素原子の含有率(原子濃度に相当)は、その範囲にあるMPCモノマーの個数に比例する。すなわち、リン原子濃度及び窒素原子の原子濃度は、MPCポリマー膜の密度を知る指標にすることができる。
リン原子濃度及び窒素原子の原子濃度の決定には、X線光電子分光(XPS)分析を用いた。XPSは、実施例1のFT−IRに比べて分析領域が極めて小さいことから、試料表面が凹凸を有する形状であっても測定できるという利点がある。その反面、XPS分析の測定結果は、局所的な情報のみを反映することから、MPCポリマー膜が完全に均一でない場合には、測定箇所によって得られる結果が異なってくる可能性がある。よって、XPS分析の測定結果は、複数点て測定した結果を平均化することが好ましい。
XPS分析には、X線源としてMg−Kα線を用い、印加電圧15kV、検出角度90°の条件で測定した。得られたXPSスペクトルを用いて、リン原子の原子濃度と窒素原子の原子濃度とをそれぞれ求めた。なお、原子濃度の単位は、atom%で表記する。
実施例1で作製した試料a〜eの摺動面に形成されているMPCポリマー膜をXPS分析したところ、MPCポリマー膜のリン原子及び窒素原子の原子濃度は、表2に示すとおりであった。
Figure 0005028080
表2の結果と、実施例1の耐摩耗性試験の結果とに基づいて、原子濃度と耐摩耗性との関係を図16〜図18に示す。図中の点a〜eは、試料a〜eの試験結果である。
図16のグラフは、回転サイクル250万回の摺動運動(およそ3年の使用に相当)、図17のグラフは、回転サイクル500万回の摺動運動(およそ5年の使用に相当)、そして図18のグラフは、回転サイクル1000万回の摺動運動(およそ10年の使用に相当)を行った時のカップの摩耗率を示している。図16(A)、図17(A)及び図18(A)は、リン原子の原子濃度に対する摩耗率をプロットしたグラフである。図16(B)、図17(B)及び図18(B)は、窒素原子の原子濃度に対する摩耗率をプロットしたグラフである。
実施例1と同様に、摩耗率1mg/100万回以下を耐摩耗性の基準として、それぞれの回転サイクルにおけるしきい値を求めた。
図16に示した回転サイクル250万回のグラフから、リン原子の原子濃度が3.1atom%以上、窒素原子の原子濃度が2.3atom%以上であれば、3年程度の使用期間内では、良好な耐摩耗性を示すことがわかった。また、250万回では、それらの原子濃度の上昇に従って、耐摩耗性が向上する傾向を示した。
図17に示した回転サイクル500万回のグラフから、リン原子の原子濃度が4.7atom%以上、窒素原子の原子濃度が3.6atom%以上であると、耐久性が良好であり、5年程度の使用後であっても優れた耐摩耗性を示すと見積もることができる。また、図18に示した回転サイクル1000万回のグラフから、リン原子の原子濃度が4.6atom%以上、窒素原子の原子濃度が3.5atom%以上であると、耐久性がさらに優れており、5年を越える長期間の使用後でも優れた耐摩耗性を示すと見積もることができる。なお、500万回以上の試験結果は、250万回の試験結果と異なり、試料b(リン原子の原子濃度2.65atom%、窒素原子の原子濃度1.86atom%のMPCポリマー膜あり)の摩耗率は、試料a(MPCポリマー膜なし)の摩耗率を越えていた。
図16〜18から、臼蓋カップにMPCポリマー膜を形成すると、使用開始から3年程度までは、膜の密度に関係なく耐摩耗性を向上させることができるが、5年以上経つと、MPCポリマー膜の密度が低い場合には、臼蓋カップに十分な耐久性を付与できない可能性があることが明らかになった。
実施例1で作製した試料a、d、f及びgについて、臼蓋カップの摺動面を被覆しているMPCポリマー膜の厚さを測定した。測定に使用する試料をエポキシ樹脂に包埋し、四塩化ルテニウム染色した後、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出した。観察には、日本電子製JEM−1010型透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、加速電圧100kVとして行った。
図19Aは、MPC被覆していない試料a、図19Bは試料f(モノマー濃度0.25mol/L)、図19Cは試料d(モノマー濃度0.50mol/L)、図19Dは試料g(モノマー濃度1.00mol/L)である。
図19B〜図19Dでは、図19Aには見られない被覆層(MPCポリマー膜)が観察された。図19Bでは、膜厚が10〜30nmであり、図19Cでは、膜厚が100〜200nmである。複数箇所のTEM像を観察したところ、MPCポリマー膜が摺動面の全体を覆っていることが確認された。これに対して、図19Dでは、膜厚200〜250nmのMPCポリマー膜が形成されているが、複数箇所で観察すると、部分的に被膜が殆ど形成されていない、いわゆるピンホールが点在していることがわかった。このことは、以下の理由によると考えられる。
臼蓋カップをモノマー溶液に含浸した状態で摺動面に紫外線を照射することにより、摺動表面のベンゾフェノンが活性化されて、続いて、摺動表面のポリエチレンが活性化される。活性化されたポリエチレンに、モノマー溶液中のMPCモノマーが反応し、摺動部の表面にグラフト重合する。このときのグラフト重合が適切であれば、MPCポリマーの密集度が高くなる。そして、摺動面に重合したMPCポリマーに、溶液中のMPCモノマーが次々と重合してMPCポリマー鎖長が増加し、結果として膜厚が増加する。モノマー溶液のモノマー濃度が0.25mol/L(試料f)〜0.75mol/L(試料d)であると、グラフト重合が適切に進行する。しかしながら、モノマー溶液のモノマー濃度が、例えば1.0mol/Lと高すぎると、紫外線を受けたMPCモノマーが、摺動面に達する前に近接のMPCモノマーと重合を開始してしまい、溶液中でMPCポリマーを形成する。このMPCポリマーは摺動面と結合していないので、洗浄すると臼蓋カップから除去されてしまう。このMPCポリマーの形成は、周囲のMPCモノマー濃度を急激に低下させることから、局所的にモノマー濃度が低い領域が形成され、そのモノマー濃度が低すぎれば、MPCポリマー膜を形成できず、ピンホールとなってしまう。
このように、MPCモノマー溶液の濃度が低すぎても高すぎても、均一なMPCポリマー膜を形成することはできず、臼蓋カップの耐久性低下につながる。
実施例1で作製した試料dの条件において、モノマー濃度のみを変化させた場合に、MPCポリマー膜の物性に与える影響を調べた。
(親水性の測定)
モノマー濃度を変えた複数の試料について、MPCポリマー膜30の水に対する接触角(親水性の指標)を測定し、その結果を図20にまとめた。なお、図中の符号a、d、f及びgは、実施例1の試料a、d、f及びgに相当することを示している。図20からわかるように、接触角は、一定のモノマー濃度(0.25mol/L〜0.50mol/L)で最低値となり、その範囲から外れると、接触角が増加する傾向がみられる。
モノマー濃度が低すぎる場合には、MPCポリマー膜の密集度が低いことや膜厚が薄いことが原因であると考えられる。また、モノマー濃度が高すぎると、MPCポリマー膜の膜厚は厚くなるものの、ピンホールの発生率が高くなって局所的にMPCポリマー膜の密集度が低くなり、その結果接触角が大きくなると考えられる。
(リン原子濃度と窒素原子濃度の測定)
モノマー濃度を変えた複数の試料について、XPS分析を行ってリン原子濃度及び窒素原子濃度を測定し、その結果を図21にまとめた。なお、図中の符号a、d、f及びgは、実施例1の試料a、d、f及びgに相当することを示している。図21から、リン原子濃度(グラフP)及び窒素原子濃度(グラフN)は、同様の傾向を示すことがわかる。リン原子濃度及び窒素濃度は、モノマー濃度が0.5mol/Lで最も高い。親水性が良好であったモノマー濃度0.25mol/L〜0.50mol/Lの範囲では、リン原子濃度が4.3atom%以上、窒素濃度が3.9atom%以上と高い値を示した。
また、モノマー濃度が高い0.75mol/L以上では、MPCポリマー膜の膜厚が厚いにもかかわらず、リン原子濃度や窒素原子濃度が低くなっている。これは、ピンホールの影響によりMPCポリマー膜の密度が低くなったためと考えられる。
紫外線照射時間がMPCポリマー膜に与える影響が、モノマー濃度によってどのように変化するかを調べた。本実施例では、指標としてリン原子濃度を測定した。試料の調製は、実施例1と同様の操作を行う。モノマー溶液のモノマー濃度は0.17mol/L、0.25mol/L、及び0.50mol/Lの3種類とし、紫外線照射時間を変えて試料を調製した。各試料のXPS分析からリン原子濃度を求め、図22にまとめた。すべてのモノマー濃度において、リン原子濃度の増加傾向はほぼ同様であった。リン原子濃度は、紫外線照射時間50分までは照射時間にほぼ比例して増加し、そこからは増加しにくくなった。すなわち、モノマー濃度にかかわらず、50分の紫外線照射によりMPCポリマー膜はほぼ形成されると考えられる。特に、モノマー濃度が高い場合には、低い場合に比べて、50分を越える紫外線照射によるリン原子濃度の増加率が低く、照射時間50分でほぼ飽和することが確認された。全てのモノマー濃度において、50分以上の照射をすることが好ましいといえる。
本発明の実施形態1にかかる人工股関節の概略図である。 本発明の実施形態1にかかる人工股関節用の臼蓋カップの斜視図である。 本発明の実施形態2にかかるバイポーラ人工股関節の概略図である。 本発明の実施形態3にかかる人工肩関節の概略図である。 本発明の実施形態4にかかる人工脊椎の概略図である。 本発明の実施形態5にかかる人工膝関節の概略図である。 本発明の実施形態6にかかる人工肘関節の概略図である。 本発明の実施形態7にかかる人工足関節の概略図である。 本発明の実施形態8にかかる人工指関節の概略図である。 本発明の実施例に使用した摩耗試験装置の概略図である。 本発明の実施例1にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例1にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例1にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである(A〜C)。 本発明の実施例1にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである(A〜C)。 本発明の実施例1にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである(A〜C)。 本発明の実施例2にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである(A、B)。 本発明の実施例2にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである(A、B)。 本発明の実施例2にかかる臼蓋カップの摩耗試験の結果を示すグラフである(A、B)。 本発明の実施例3にかかる臼蓋カップの断面TEM像である。 本発明の実施例3にかかる臼蓋カップの断面TEM像である。 本発明の実施例3にかかる臼蓋カップの断面TEM像である。 本発明の実施例3にかかる臼蓋カップの断面TEM像である。 本発明の実施例4にかかる臼蓋カップの水に対する接触角の測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例4にかかる臼蓋カップのリン原子濃度及び窒素原子濃度の測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5にかかる臼蓋カップのリン原子濃度の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1 人工股関節、 10 臼蓋カップ、 12 カップ基材、 15 関節窩カップ、 16 摺動面、 20 大腿骨ステム、 22、27 骨頭、 30 高分子膜、 32 人工脊椎、 33 上部コンポーネント、 36 凸状摺動部材、 40 バイポーラ骨頭、 46 ライナー基材、 48 脛骨トレイ、 52 大腿骨コンポーネント、 54 尺骨トレイ、 62 上腕骨コンポーネント、 64 脛骨トレイ、 68 距骨コンポーネント、 70 人工肩関節、 72 人工膝関節、 74 人工肘関節、 76 人工足関節、 80 人工指関節、 82 軸部、 86 軸受け部材。

Claims (20)

  1. 湿潤環境下で使用される低摩耗性の摺動部材であって、
    上記摺動部材が、メチレン基を有する高分子材料から成形された基材と、該基材の摺動面を被覆した高分子膜とを含み、
    上記高分子膜は、上記摺動面にグラフト結合されたホスホリルコリン基含有高分子鎖により構成されており、
    上記高分子膜の厚さが、10〜200nmであり、
    上記摺動面のリン酸指数(赤外分光分析スペクトルのリン酸基のピーク強度/メチレン基のピーク強度)が0.45以上であることを特徴とする摺動部材。
  2. 上記高分子膜の厚さが、30〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
  3. 上記ホスホリルコリン基を有する高分子膜の水に対するぬれ性が、接触角20°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動部材。
  4. 上記ホスホリルコリン基を有する高分子膜の水に対するぬれ性が、接触角14°以下であることを特徴とする請求項3に記載の摺動部材。
  5. 上記摺動面のX線光電子分光分析から得られたリン原子濃度が、4.7atom%以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の摺動部材。
  6. 上記摺動面のX線光電子分光分析から得られた窒素原子濃度が、3.6atom%以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の摺動部材。
  7. 前記高分子膜が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマーであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の摺動部材。
  8. 上記基材を成形するための上記メチレン基を有する高分子材料が、300万g/mol以上の超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の摺動部材。
  9. 上記メチレン基を有する高分子材料が、上記超高分子量ポリエチレンを架橋処理したクロスリンクポリエチレンであるあることを特徴とする請求項に記載の摺動部材。
  10. 上記メチレン基を有する高分子材料から成る上記基材が、フリーラジカルを含むことを特徴とする請求項に記載の摺動部材。
  11. 上記摺動部材が、人工股関節、人工肩関節、人工脊椎、人工膝関節、人工肘関節、人工足関節、人工指関節、又は人工椎間板に含まれる高分子材料から成る人工関節用の摺動部材であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の摺動部材。
  12. 請求項11に記載の人工関節用の摺動部材と、該摺動部材に摺動可能に接触するセラミックス又は金属から成る対向部材と、を含む関節部分を有することを特徴とする人工関節。
  13. 上記人工関節が人工股関節、人工肩関節、又は人工脊椎であり、
    上記人工関節用の摺動部材が、球面状の摺動面を備えたカップであり、
    上記対向部材が、上記カップの摺動面に摺動可能に受容又は当接される骨頭であることを特徴とする請求項12に記載の人工関節。
  14. 上記人工関節が人工膝関節、人工肘関節、又は人工足関節であり、
    上記人工関節用の摺動部材が、曲面状の摺動面を備えたトレイであり、
    上記対向部材が、上記トレイの摺動面と摺動可能に当接される関節部材であることを特徴とする請求項12に記載の人工関節。
  15. 上記人工関節が、ヒンジ構造を有する人工指関節、人工膝関節、又は人工肘関節であり、
    上記対向部材が、両端が突出した軸部を備えた軸側コンポーネントであり、
    上記摺動部材が、上記軸部の両端を摺動可能に嵌め込むための軸受け穴を備えた軸受け部材であることを特徴とする請求項12に記載の人工関節。
  16. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の摺動部材を製造するための方法であって、
    メチレン基を有する高分子材料から成る基材を成形する工程と、
    上記基材の摺動面に、ホスホリルコリン基を有する高分子鎖をグラフト結合により固定することにより、摺動面に高分子膜を形成する工程と、を含み、
    上記高分子膜を形成する工程が、
    上記基材の摺動面に光重合開始剤を塗布する過程と、
    ホスホリルコリン基を有する重合性モノマーを含有する溶液に浸漬した状態で、上記基材の摺動面に上記光重合開始剤を励起させるのに必要な強度の紫外線を照射する過程と、を含み、
    上記重合性モノマーを含有する溶液のモノマー濃度が、0.25〜0.50mol/Lであることを特徴とする摺動部材の製造方法。
  17. 上記高分子膜を形成する工程の上記紫外線を照射する過程において、上記紫外線の照射時間が45分〜90分であることを特徴とする請求項16に記載の摺動部材の製造方法。
  18. 上記高分子膜を形成する工程に続いて、さらに、上記基材の摺動面にガンマ線を照射する工程を含むことを特徴とする請求項16又は17に記載の摺動部材の製造方法。
  19. 上記基材を成形する工程が、予め高エネルギー線を照射した上記メチレン基を有する高分子材料を、上記基材の形状に加工する工程であることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の摺動部材の製造方法。
  20. 上記製造方法が、上記基材を成形する工程の前に、上記予め高エネルギー線を照射した上記メチレン基を有する高分子材料を調製する工程をさらに含み、
    上記高分子材料を調製する工程が、メチレン基を有する高分子材料にガンマ線を照射する過程と、上記ガンマ線を照射した高分子材料を、その融点以下の温度で熱処理する過程とを含むことを特徴とする請求項19に記載の摺動部材の製造方法。
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