図1は、この発明の一実施形態に係る車両10の概略的な構成を示す図である。車両10の変速機12は、主として、クラッチ14と、クラッチアクチュエータ16と、ギア機構18と、シフトアクチュエータ22及びセレクトアクチュエータ24から成るギア切替アクチュエータ20と、トランスミッション制御ユニット26{以下「TCU26」(TCU:Transmission Control Unit)と称する。}とを有する。
本実施形態では、変速機12の上記各構成要素が、ユニットとしてユニット工場で製造され、組立工場で車両10の車体(図示せず)に組み付けられる。図1では、組付け後の車両10の状態が示されている。
変速機12は、自動マニュアル変速機(AMT:Automated Manual Transmission)であり、運転者によるシフトレバー30の操作に応じて、自動的にクラッチ動作(クラッチ14の切断及び接続)及びギア切替えを行う(手動ギア切替モード)。さらに、本実施形態の変速機12は、運転者がシフトレバー30を操作することなく、自動的にクラッチ動作及びギア切替えを行うこともできる(自動ギア切替モード)。
車両10では、エンジンEからの駆動力Fdrは、クラッチ14を介してギア機構18に伝達される。ギア機構18に伝達された駆動力Fdrは、伝達系32を介して駆動輪34に伝達される。
クラッチ14には、油圧配管36を介してクラッチアクチュエータ16が接続されている。クラッチアクチュエータ16は、TCU26からの指令(クラッチ動作信号Scl)に応じて、クラッチ14のクラッチ動作を制御する。クラッチ14は、エンジンEのフライホイール(図示せず)に対するプレッシャプレート(図示せず)の位置を示すクラッチ位置信号ScpをTCU26に送信する。
ギア機構18は、図示しない複数のギアを有し、ギア切替えが可能である。このギア機構18の複数のシフトフォーク40には、選択されたギア段に応じて、ギア切替アクチュエータ20のシフトアーム42が接続される。シフトアーム42は、シフトアクチュエータ22によりシフト動作(図1中、水平方向への移動)を行い、セレクトアクチュエータ24によりセレクト動作(シフトアーム42の軸を中心とする回転)を行う。シフトアクチュエータ22は、TCU26からの指令(シフト動作信号Ssft)に応じてシフトアーム42をシフト動作させる。シフトアクチュエータ22は、その内部に配置された位置センサ(図示せず)によりシフトアーム42のシフト方向への移動量(シフト移動量Asft)[mm]を検出し、このシフト移動量Asftを示すシフト移動量信号SasftをTCU26に送信する。セレクトアクチュエータ24は、TCU26からの指令(セレクト動作信号Ssel)に応じてシフトアーム42をセレクト動作させる。セレクトアクチュエータ24は、その内部に配置された位置センサ(図示せず)によりシフトアーム42のセレクト方向への移動量(セレクト移動量Asel)[θ]を検出し、このセレクト移動量Aselを示すセレクト移動量信号SaselをTCU26に送信する。
TCU26は、クラッチアクチュエータ16、シフトアクチュエータ22及びセレクトアクチュエータ24を制御する(詳細は後述する。)。TCU26には、メモリ28が接続されている。メモリ28は、ギアエンド学習プログラム、シンクロ位置学習プログラム及びクラッチ締結位置学習プログラムを書換え可能に記憶している。
変速機12の基本的な構成や動作は、例えば、特許文献2〜4に記載のものを用いることができる。
本実施形態では、さらに、エンジン回転数センサ50と、エンジントルクセンサ52と、クラッチトルクセンサ54とが設けられる。エンジン回転数センサ50は、エンジンEの回転数(エンジン回転数NE)[rpm]を検出し、このエンジン回転数NEを示すエンジン回転数信号SneをTCU26に送信する。エンジントルクセンサ52は、エンジンEのトルク(エンジントルクTQe)[N]を検出し、このエンジントルクTQeを示すエンジントルク信号StqeをTCU26に送信する。クラッチトルクセンサ54は、クラッチ14にかかるトルク(クラッチトルクTQc)[N]を検出し、このクラッチトルクTQcを示すクラッチトルク信号StqcをTCU26に送信する。
さらに、本実施形態では、TCU26は、シフトレバー30と、イグニションスイッチ60(以下「IGSW60」と称する。)と、ハンドブレーキ62と、フットブレーキ64と、ドア66と、コントロールパネル68と、スピーカ70とに電気的に接続されている。シフトレバー30は、選択されているギア位置を示すシフトレバー信号SslをTCU26に送信する。IGSW60は、その選択位置がオフ位置、アクセサリ位置、オン位置のいずれであるかを示すイグニション信号SigをTCU26に送信する。ハンドブレーキ62は、ハンドブレーキ62が作動しているかどうかを示すハンドブレーキ信号ShdをTCU26に送信する。フットブレーキ64は、フットブレーキ64が作動しているかどうかを示すフットブレーキ信号SfbをTCU26に送信する。ドア66は、ドア66が開かれているかどうかを示すドア信号SdoをTCU26に送信する。コントロールパネル68は、TCU26からの指令(表示指令信号Srd)に応じた表示を行う。スピーカ70は、TCU26からの指令(音出力指令信号Sbz)に応じた音(ブザー音、音声等)を出力する。
図2には、本実施形態のシフトレバー30の外観が示されている。図2のシフトレバー30は、走行時の位置が位置P1であり、「+」に1回移動させる度に、ギアが1段上がり、「−」に1回移動させる度に、ギアが1段下がる。また、シフトレバー30を「A/M」に1回移動させる度に、手動ギア切替モードと自動ギア切替モードとが切り替わる(初期設定は、手動ギア切替モードである。)。シフトレバー30は、位置P1、ニュートラル位置P2及びバックギア位置P3では固定可能であるが、「+」、「−」又は「A/M」に移動したときは、自動的に位置P1に戻る。
図3には、本実施形態のコントロールパネル68の外観が示されている。コントロールパネル68は、速度表示部80と、エンジン回転数表示部82と、残燃料表示部84とを有する。残燃料表示部84の下側には、選択中のギア段を示すギア段表示部86と、自動ギア切替モードが選択中であることを示す自動ギア切替モード表示部88とが配置されている。自動ギア切替モード表示部88は、自動ギア切替モードが選択されているとき点灯し、手動ギア切替モードが選択されているとき消灯する。本実施形態において、ギア段表示部86と、自動ギア切替モード表示部88は、TCU26が変速機12における基準位置を学習する際、進行状況を示すのにも用いられる(詳細は後述する。)。
図4には、変速機12の各構成要素が車両10の車体に組み付けられた状態で行われる基準位置の学習処理のフローチャートが示されている。
ステップS1において、TCU26は、各ギア段についてギアエンドを学習するギアエンド学習処理を行う。ギアエンドとは、シフトフォーク40とシフトアーム42とが完全に接続され、ギア機構18内の各ギアが接続される位置(同条件でシフトアクチュエータ22及びセレクトアクチュエータ24を作動させてもそれ以上シフトアーム42がシフトフォーク40側に移動しない位置)を示す。
ステップS2において、TCU26は、各ギア段についてシンクロ位置を学習するシンクロ位置学習処理を行う。シンクロ位置とは、シフトフォーク40とシフトアーム42とが接触を開始する位置を示す。
ステップS3において、TCU26は、クラッチ締結位置を学習するクラッチ締結位置学習処理を行う。クラッチ締結位置とは、クラッチ14がエンジンEとつながる位置を示す。
図5及び図6には、ギアエンド学習処理の詳細なフローチャートが示されている。ステップS11において、TCU26は、IGSW60からのイグニション信号Sigに基づいて、IGSW60がオンであるか否かを判定する。IGSW60がオンでない場合(S11:No)、ステップS11を繰り返す。
IGSW60がオンである場合(S11:Yes)、TCU26は、TCU26がパワーホールド中であるか否かを判定する。パワーホールドとは、IGSW60がオフとされた後に車両10を停止する処理を行うためにTCU26を一定時間オンにし続けることをいい、パワーホールドは、IGSW60をオフにした後、直ぐにオンにしても継続される。また、図5には図示していないが、ギアエンド学習処理全体でのタイムアウト判定用の時間の計測を開始する。図5及び図6に示す処理が終了する前に、当該時間が、タイムアウトを判定するための所定の閾値以上となった場合、エラー表示をし、IGSW60がオフにされるとステップS11に戻る。
ステップS12においてTCU26がパワーホールド中である場合(S12:Yes)、TCU26は、ステップS13において、TCU26がパワーホールド中である旨のエラー表示をコントロールパネル68に提示し、IGSW60をオフにすることを作業者に促す。ステップS14において、TCU26は、IGSW60がオフにされたか否かをイグニション信号Sigに基づいて判定する。IGSW60がオンのままである場合(S14:No)、ステップS13に戻って当該エラー表示を継続する。IGSW60がオフにされた場合(S14:Yes)、ステップS11に戻る。
ステップS12に戻り、TCU26がパワーホールド中でない場合(S12:No)、ステップS15において、TCU26は、ハンドブレーキ62からのハンドブレーキ信号Shd及びシフトレバー30からのシフトレバー信号Sslに基づいて、ハンドブレーキ62がオンであり且つシフトレバー30のシフト位置がニュートラル位置であるか否かを判定する。
ハンドブレーキ62がオンでない場合又はシフト位置がニュートラル位置でない場合(S15:No)、ステップS15を繰り返す。ハンドブレーキ62がオンであり且つシフト位置がニュートラル位置にある場合(S15:Yes)、ステップS16において、TCU26は、メモリ28に記憶されているギアエンド学習プログラムを起動する。その際、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させてギアエンド学習プログラムが起動中であることを示す。
図6のステップS17において、ギアエンド学習プログラムの起動が終了すると、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点灯させる。この際、タイムアウト判定用の時間T1の計測を開始する。
続くステップS18において、TCU26は、シフトレバー30が、ニュートラル位置P2、バックギア位置P3及びニュートラル位置P2の順に移動されたか否かを判定する。シフトレバー30がそのように移動されない場合(S18:No)、ステップS19において、TCU26は、タイムアウトになったか否か、すなわち、時間T1が、タイムアウトを判定するための閾値TH_t1以上となったか否かを判定する。タイムアウトになっていない場合(S19:No)、ステップS18に戻る。タイムアウトになった場合(S19:Yes)、ステップS20において、TCU26は、ギアエンド学習処理を強制終了し、その旨のエラー表示をコントロールパネル68に行い、IGSW60をオフにすることを作業者に促す。続くステップS21において、TCU26は、IGSW60がオンであるか否かを判定する。IGSW60がオンのままである場合(S21:No)、ステップS20に戻る。IGSW60がオフにされた場合(S21:Yes)、ステップS11に戻り、ギアエンド学習処理を初めからやり直す。
ステップS18に戻り、シフトレバー30が、ニュートラル位置、バックギア位置及びニュートラル位置の順に移動された場合(S18:Yes)、ステップS22において、TCU26は、各ギア段についてギアエンドを学習する。ギアエンドの学習は、シフトアクチュエータ22からのシフト移動量信号Sasftが示すシフト移動量Asft及びセレクトアクチュエータ24からのセレクト移動量信号Saselが示すセレクト移動量Aselを監視し、シフト移動量Asft及びセレクト移動量Aselの単位時間当たりの変化量が所定の閾値以下となった点をギアエンドと判定する。ギアエンドの学習中、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させると共に、スピーカ70からブザー音を出力させる。全セグメントを点滅させる代わりに、対象となっているギア段を点滅表示させてもよい。
続くステップS23において、TCU26は、ギアエンドの学習が正常に終了したか否かを判定する。ギアエンドの学習がまだ終了していない場合(S23:No)、ステップS24において、TCU26は、ギアエンドの学習にエラーが発生したか否かを判定する。ギアエンドの学習にエラーが発生していない場合(S24:No)、ステップS22に戻り、ギアエンドの学習を継続する。ギアエンドの学習にエラーが発生した場合(S24:Yes)、ステップS25において、TCU26は、エラーが発生したギア段をギア段表示部86に表示させる。例えば、1速でエラーが発生した場合、ギア段表示部86に「1」を表示させる。続くステップS26において、TCU26は、IGSW60がオフにされたか否かを判定する。IGSW60がオンのままである場合(S26:No)、TCU26は、ステップS25に戻って当該エラー表示を継続する。IGSW60がオフにされた場合(S26:Yes)、ステップS11に戻る。
ステップS23に戻り、ギアエンドの学習が正常に終了した場合(S23:Yes)、ステップS27において、TCU26は、ギアエンドの学習が終了した旨をギア段表示部86に表示させる。具体的には、ギア段表示部86に「N」を点灯させる。併せて、TCU26は、学習したギアエンドをメモリ28に書き込む。続くステップS28において、TCU26は、メモリ28に記憶され、ギアエンドの学習が終了したか否かを示すフラグFlg1を「0」(ギアエンドの学習可)から「1」(ギアエンドの学習不可)に変更する。フラグFlg1は、ギアエンド学習プログラムに含まれる。このため、フラグFlg1の変更によりギアエンド学習プログラムが一部書き換えられることとなる。ステップS29において、TCU26は、IGSW60がオフにされたか否かを判定する。IGSW60がオンのままである場合(S29:No)、ステップS29を繰り返す。IGSW60がオフにされた場合(S29:Yes)、ギアエンド学習処理を終了し、図4のステップS2に進む。
図7〜図9には、シンクロ位置学習処理の詳細なフローチャートが示されている。図7のステップS31〜S34は、図5のステップS11〜S14とほぼ同様の処理の流れである。また、図7には図示していないが、IGSW60がオンである場合(S31:Yes)、シンクロ位置学習処理全体でのタイムアウト判定用の時間の計測を開始する。図7〜図9に示す処理が終了する前に、当該時間が、タイムアウトを判定するための所定の閾値以上となった場合、エラー表示をし、IGSW60がオフにされるとステップS31に戻る。
ステップS32において、TCU26がパワーホールド中でない場合(S32:No)、ステップS35において、TCU26は、ハンドブレーキ62からのハンドブレーキ信号Shd、シフトレバー30からのシフトレバー信号Ssl及びフットブレーキ64からのフットブレーキ信号Sftに基づいて、ハンドブレーキ62及びフットブレーキ64がオンであり且つシフトレバー30のシフト位置がニュートラル位置であるか否かを判定する。ハンドブレーキ62若しくはフットブレーキ64がオンでない場合又はシフト位置がニュートラル位置でない場合(S35:No)、ステップS35を繰り返す。
ハンドブレーキ62及びフットブレーキ64がオンであり且つシフト位置がニュートラル位置にある場合(S35:Yes)、ステップS36において、TCU26は、メモリ28に記憶されているシンクロ位置学習プログラムを起動する。その際、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメント及び自動ギア切替モード表示部88を点滅させてシンクロ位置学習プログラムが起動中であることを示す。図8のステップS37において、シンクロ位置学習プログラムの起動が終了すると、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメント及び自動ギア切替モード表示部88を点灯させる。この際、TCU26は、タイムアウト判定用の時間T2の計測を開始する。
続くステップS38〜S41は、図6のステップS18〜S21とほぼ同様の処理の流れであり、ステップS39のタイムアウトの判定では、閾値TH_t2を用いる。
ステップS38において、シフトレバー30が、ニュートラル位置P2、バックギア位置P3及びニュートラル位置P2の順に移動された場合(S38:Yes)、ステップS42において、TCU26は、シフトアーム42に関するニュートラル位置の学習を行う。ニュートラル位置の学習は、例えば、シフトアーム42を、シフト方向の最小値(シフトフォーク40から最も離れた位置)及びセレクト方向の最小値又は最大値(シフトアーム42をセレクト方向にできる限り移動させた位置)まで移動させ、当該位置からシフト方向及びセレクト方向に所定距離移動させた位置がニュートラル位置として定義される。ニュートラル位置の学習中、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させると共に、スピーカ70からブザー音を出力させる。ステップS43において、ニュートラル位置の学習が終了すると、TCU26は、ブザー音を停止させ、ギア段表示部86の全セグメントを点灯させる。この際、タイムアウト判定用の時間T3の計測を開始する。
続くステップS44において、TCU26は、エンジン回転数センサ50又はエンジントルクセンサ52の出力を用いて、(作業者がIGSW60を操作することにより)エンジンEが始動したか否かを判定する。エンジンEが始動していない場合、ステップS45に進む。ステップS45及びその後のステップS46、S47は、図8のステップS39〜S41と同様であり、ステップS45のタイムアウトの判定では、閾値TH_t3を用いる。
ステップS44において、エンジンEが始動すると(S44:Yes)、ステップS48に進む。なお、ステップS44でエンジンEが始動した場合、TCU26は、タイムアウト判定用の時間T4の計測を開始する。ステップS48及びその後のステップS49〜S51は、図8のステップS38〜S41と同様であり、ステップS49のタイムアウトの判定では、閾値TH_t4を用いる。
ステップS48において、シフトレバー30が、ニュートラル位置P2、バックギア位置P3及びニュートラル位置P2の順に移動された場合(S48:Yes)、図9のステップS52において、TCU26は、各ギア段についてシンクロ位置の学習を行う。シンクロ位置の学習は、例えば、ギア段毎にシフトアーム42をシフト方向及びセレクト方向に移動させ、エンジントルクセンサ52が検出したエンジントルクTQeが所定の変化(低下)を示した時点においてシフト移動量信号Sasftから判定される位置をシンクロ位置と判定する。シンクロ位置の学習中、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させると共に、スピーカ70からブザー音を出力させる。
続くステップS53において、TCU26は、シンクロ位置の学習が正常に終了したか否かを判定する。シンクロ位置の学習がまだ終了していない場合(S53:No)、ステップS54において、TCU26は、シンクロ位置の学習にエラーが発生したか否かを判定する。シンクロ位置の学習にエラーが発生していない場合(S54:No)、ステップS52に戻ってシンクロ位置の学習を継続する。シンクロ位置の学習にエラーが発生した場合(S54:Yes)、ステップS55において、TCU26は、エラーが発生したギア段をギア段表示部86に表示させる。例えば、2速でエラーが発生した場合、ギア段表示部86に「2」と表示させる。続くステップS56において、TCU26は、IGSW60がオフにされたか否かを判定する。IGSW60がオンのままである場合(S56:No)、TCU26は、ステップS55に戻って当該エラー表示を継続する。IGSW60がオフにされた場合(S56:Yes)、ステップS31に戻る。
ステップS53に戻り、シンクロ位置の学習が正常に終了した場合(S53:Yes)、ステップS57において、TCU26は、シンクロ位置の学習が終了した旨をギア段表示部86に表示する。具体的には、ギア段表示部86に「N」を点灯させる。併せて、TCU26は、学習したシンクロ位置をメモリ28に書き込む。続くステップS58において、TCU26は、メモリ28に記憶され、シンクロ位置の学習が終了したか否かを示すフラグFlg2を「0」(シンクロ位置の学習可)から「1」(シンクロ位置の学習不可)に変更する。フラグFlg2は、シンクロ位置学習プログラムに含まれる。このため、フラグFlg2の変更によりシンクロ位置学習プログラムが一部書き換えられることとなる。ステップS59において、TCU26は、IGSW60がオフにされたか否かを判定する。IGSW60がオンのままである場合(S59:No)、ステップS59を繰り返す。IGSW60がオフにされた場合(S59:Yes)、シンクロ位置学習処理を終了し、図4のステップS3に進む。
図10〜図12には、クラッチ締結位置学習処理の詳細なフローチャートが示されている。図10のステップS61〜S64は、図5のステップS11〜S14と同様である。図10には図示していないが、IGSW60がオンである場合(S61:Yes)、クラッチ締結位置学習処理全体でのタイムアウト判定用の時間の計測を開始する。図10〜図12に示す処理が終了する前に、当該時間が、タイムアウトを判定するための所定の閾値以上となった場合、エラー表示をし、IGSW60がオフにされるとステップS61に戻る。
ステップS62において、TCU26がパワーホールド中でない場合(S62:No)、ステップS65において、TCU26は、ハンドブレーキ62からのハンドブレーキ信号Shd、シフトレバー30からのシフトレバー信号Ssl、フットブレーキ64からのフットブレーキ信号Sft及びドア66からのドア信号Sdoに基づいて、ハンドブレーキ62及びフットブレーキ64がオンであり且つシフトレバー30のシフト位置がニュートラル位置であり且つドア66が開かれているか否かを判定する。ハンドブレーキ62若しくはフットブレーキ64がオンでない場合若しくはシフト位置がニュートラル位置でない場合又はドア66が閉じている場合(S65:No)、ステップS65を繰り返す。
ハンドブレーキ62及びフットブレーキ64がオンであり且つシフト位置がニュートラル位置にあり且つドア66が開いている場合(S65:Yes)、ステップS66において、TCU26は、メモリ28に記憶されているクラッチ締結位置学習プログラムを起動する。その際、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させてクラッチ締結位置学習プログラムが起動中であることを示す。図11のステップS67において、クラッチ締結位置学習プログラムの起動が終了すると、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点灯させる。この際、TCU26は、タイムアウト判定用の時間T5の計測を開始する。
続くステップS68〜S71は、図6のステップS18〜S21とほぼ同様の処理であり、ステップS69のタイムアウトの判定では、閾値TH_t5を用いる。
ステップS68において、シフトレバー30が、ニュートラル位置P2、バックギア位置P3及びニュートラル位置P2の順に移動された場合(S68:Yes)、ステップS72において、TCU26は、リフィルを実施する。リフィルとは、油圧シリンダのピストンを開放状態にして油圧(残圧)をキャンセルする処理である。リフィルの実施中、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させると共に、スピーカ70からブザー音を出力させる。ステップS73において、リフィルの実施が終了すると、TCU26は、ブザー音を停止させ、ギア段表示部86に「N」を点灯させる。この際、TCU26は、タイムアウト判定用の時間T6の計測を開始する。
続くステップS74において、TCU26は、エンジン回転数センサ50又はエンジントルクセンサ52の出力を用いて、(作業者がIGSW60を操作することにより)エンジンEが始動したか否かを判定する。エンジンEが始動していない場合(S74:No)、ステップS75に進む。ステップS75及びその後のステップS76、S77は、図8のステップS45〜S47と同様であり、ステップS75のタイムアウトの判定では、閾値TH_t6を用いる。
ステップS74においてエンジンEが始動すると(S74:Yes)、ステップS78において、TCU26は、エンジンEの始動後、エンジンEの回転が安定するまでの立上りを待つ所定時間、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させる。当該所定時間が経過すると、ステップS79において、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点灯させる。この際、TCU26は、タイムアウト判定用の時間T7の計測を開始する。
ステップS80において、TCU26は、シフトレバー30のシフト位置が、ニュートラル位置P2からA/Mの位置に移動されたか否かを判定する。シフト位置がそのように移動されたと判定されない場合(S80:No)、ステップS81に進む。ステップS81及びその後のステップS82、S83は、図11のステップS69〜S71と同様であり、ステップS81のタイムアウトの判定では、閾値TH_t7を用いる。
ステップS80において、シフトレバー30のシフト位置が、ニュートラル位置からA/Mの位置に移動した場合(S80:Yes)、図12のステップS84において、TCU26は、クラッチ締結位置の学習を行う。クラッチ締結位置の学習は、例えば、クラッチトルクセンサ54が検出したクラッチトルクTQcが所定の変化(増加)を示した時点において、クラッチ位置信号Scpが示す位置をクラッチ締結位置と判定する。クラッチ締結位置の学習中、TCU26は、ギア段表示部86の全セグメントを点滅させると共に、スピーカ70からブザー音を出力させる。
続くステップS85において、TCU26は、クラッチ締結位置の学習が正常に終了したか否かを判定する。クラッチ締結位置の学習がまだ終了していない場合(S85:No)、ステップS86において、TCU26は、クラッチ締結位置の学習にエラーが発生したか否かを判定する。クラッチ締結位置の学習にエラーが発生していない場合(S86:No)、ステップS84に戻り、クラッチ締結位置の学習を継続する。クラッチ締結位置の学習にエラーが発生した場合(S86:Yes)、ステップS87において、TCU26は、自動ギア切替モード表示部88を点灯させると共に、ギア段表示部86に「5」を表示する。続くステップS88において、TCU26は、IGSW60がオフにされたか否かを判定する。IGSW60がオンのままである場合(S88:No)、TCU26は、ステップS87に戻って当該エラー表示を継続する。IGSW60がオフにされた場合(S88:Yes)、ステップS61に戻る。
ステップS85に戻り、クラッチ締結位置の学習が正常に終了した場合(S85:Yes)、ステップS89において、TCU26は、クラッチ締結位置の学習が終了した旨をギア段表示部86に表示する。具体的には、自動ギア切替モード表示部88を点灯させると共に、ギア段表示部86に「1」を点灯させる。併せて、TCU26は、学習したクラッチ締結位置をメモリ28に書き込む。続くステップS90において、TCU26は、シフトレバー30のシフト位置が、A/Mからニュートラル位置に変更されたか否かを判定する。シフト位置がA/Mのままである場合(S90:No)、ステップS89に戻る。シフト位置がA/Mからニュートラル位置に変更された場合(S90:Yes)、ステップS91において、TCU26は、メモリ28に記憶され、クラッチ締結位置の学習が終了したか否かを示すフラグFlg3を「0」(クラッチ締結位置の学習可)から「1」(クラッチ締結位置の学習不可)に変更する。フラグFlg3は、クラッチ締結位置学習プログラムに含まれる。このため、フラグFlg3の変更によりクラッチ締結位置学習プログラムが一部書き換えられることとなる。ステップS92において、TCU26は、IGSW60がオフにされたか否かを判定する。IGSW60がオンのままである場合(S92:No)、ステップS92を繰り返す。IGSW60がオフにされた場合(S92:Yes)、クラッチ締結位置学習処理を終了し、図4の処理を終える。
図13には、ギアエンド、シンクロ位置及びクラッチ締結位置の再書込みを防止するフローチャートが示されている。
ステップS101において、TCU26は、ギアエンド学習処理の開始条件(図5のS11、S12、S15)が満たされているか否かを判定する。当該開始条件が満たされていない場合(S101:No)、処理を終了する。当該開始条件が満たされている場合(S101:Yes)、ステップS102に進む。
ステップS102において、TCU26は、ギアエンド学習処理が終了しているか否か(フラグFlg1=1)を判定する。ギアエンド学習処理が終了していない場合(S102:No)、ステップS103において、TCU26は、ギアエンド学習処理を実行する。ギアエンド学習処理が終了している場合(S102:Yes)、新たなギアエンド学習処理を行わずにステップS104に進む。
ステップS104において、TCU26は、シンクロ位置学習処理の開始条件(図7のS31、S32、S35)が満たされているか否かを判定する。当該開始条件が満たされていない場合(S104:No)、ステップS105において、TCU26は、コントロールパネル68やスピーカ70を介してシンクロ位置学習処理が未了である旨を通知する。当該開始条件が満たされている場合(S104:Yes)、ステップS106に進む。
ステップS106において、TCU26は、シンクロ位置学習処理が終了しているか否か(フラグFlg2=1)を判定する。シンクロ位置学習処理が終了していない場合(S106:No)、ステップS107において、TCU26は、シンクロ位置学習処理を実行する。シンクロ位置学習処理が終了している場合(S106:Yes)、新たなシンクロ位置学習処理を行わずにステップS108に進む。
ステップS108において、TCU26は、クラッチ締結位置学習処理の開始条件(図10のS61、S62、S65)が満たされているか否かを判定する。当該開始条件が満たされていない場合(S108:No)、ステップS109において、TCU26は、コントロールパネル68やスピーカ70を介してクラッチ締結位置学習処理が未了である旨を通知する。当該開始条件が満たされている場合(S108:Yes)、ステップS110に進む。
ステップS110において、TCU26は、クラッチ締結位置学習処理が終了しているか否か(フラグFlg3=1)を判定する。クラッチ締結位置学習処理が終了していない場合(S110:No)、ステップS111において、TCU26は、クラッチ締結位置学習処理を実行する。クラッチ締結位置学習処理が終了している場合(S110:Yes)、新たなクラッチ締結位置学習処理を行わずに図13の処理を終了する。
以上のように、本実施形態によれば、シフトレバー30に対して作業者から所定の入力動作が行われたとき、変速機12のギアエンド、シンクロ位置及びクラッチ締結位置の学習を開始する。一般に、シフトレバー30は、運転者が操作し易いように配置される。このため、作業者は、ギアエンド、シンクロ位置及びクラッチ締結位置の学習を簡単な処理で行うことができる。その結果、例えば、工場の制御設備や携帯型のテスタを車両10に接続してギアエンド等の学習をする場合と比べて、着脱の手間が省けるため、作業工数を削減することが可能となると共に、変速機12側に接続部を設ける必要がなくなるため、設計の自由度も向上する。
本実施形態では、シフトレバー30を所定の経路で移動させたとき(図6のS18:Yes、図8のS48:Yes、図11のS80:Yes)、ギアエンド、シンクロ位置又はクラッチ締結位置の学習を開始する(図6のS22、図9のS52、図12のS84)。シフトレバー30は複数位置で停止可能であるため、シフトレバー30を移動させる経路は比較的多く設定することができる。このため、複数種類の基準位置(ギアエンド、シンクロ位置及びクラッチ締結位置)を学習する場合、それぞれの学習に別々の経路を対応させることが可能となり、その結果、作業者が学習内容を区別し易くなる。
本実施形態では、ギアエンド学習処理への移行条件として、ハンドブレーキ62がオンであり、且つシフトレバー30がニュートラル位置にある状態でIGSW60がオンにされることを要求し(図5のS11:Yes且つS15:Yes)、シンクロ位置学習処理への移行条件として、ハンドブレーキ62及びフットブレーキ64がオンであり、且つシフトレバー30がニュートラル位置(位置P2)にある状態でIGSW60がオンにされることを要求した(図7のS31:Yes且つS35:Yes)。これにより、シンクロ位置学習処理の移行条件は、シンクロ位置学習処理への移行条件に、フットブレーキ64がかけられていることを追加したものとなるため、作業手順に無理が無く、工程管理が容易になる。
本実施形態のギアエンド学習処理では、エンジンEを停止させた状態でギアエンドを学習し、シンクロ位置学習処理では、エンジンEを駆動させた状態でシンクロ位置を学習する。これにより、ハンドブレーキ62を効かせ、車両10を安定させた状態でギアエンドを学習することができると共に、ハンドブレーキ62及びフットブレーキ64を効かせ、車両10をさらに安定させた状態でシンクロ位置を学習することができる。
本実施形態のギアエンド学習処理及びシンクロ位置学習処理では、学習の準備中であるとき、ギア段表示部86の表示を点滅させ、学習の準備が終了したとき、ギア段表示部86の表示を点灯させ、学習中であるとき、ギア段表示部86の表示を点滅させ、学習が終了したとき、ギア段表示部86の表示を点灯させ、シンクロ位置学習処理では、ギア段表示部86に加え、自動ギア切替モード表示部88も点滅又は点灯させる。これにより、学習の進行状況を作業者に簡易に通知することができる。また、ギア段表示部86及び自動ギア切替モード表示部88を当該通知に用いるため、進行状況を作業者に違和感なく知らせることができる。さらに、シンクロ位置学習処理では、ギア段表示部86に加え、自動ギア切替モード表示部88も点滅又は点灯させることにより、ギアエンド学習処理の終了を作業者に認識させることが可能となる。
本実施形態では、シフトレバー30が、ニュートラル位置P2、バックギア位置P3、ニュートラル位置P2の順に移動されたとき(図6のS18:Yes、図8のS48:Yes)、ギアエンド又はシンクロ位置の学習を開始する(図6のS22、図9のS52)。一般に、1速、2速等の通常の走行位置に比べてバックギア位置P3は、シフトレバー30を入れ難い。このため、バックギア位置P3への移動を条件とすることにより、作業者に認識度の高い操作を要求することができる。
本実施形態では、ギアエンドの学習が終了した後、ギアエンドの学習を禁止し、ギアエンドの学習が終了しているにもかかわらず、ギアエンド学習処理への移行条件が満たされた場合、シンクロ位置の学習を行うべきことを通知する(図13のS105)。また、シンクロ位置の学習が終了した後、シンクロ位置の学習を禁止し、シンクロ位置の学習が終了しているにもかかわらず、シンクロ位置学習処理への移行条件が満たされた場合、クラッチ締結位置の学習を行うべきことを通知する(図13のS109)。これにより、一旦、ギアエンド又はシンクロ位置の学習が終了した後は、再度、ギアエンド又はシンクロ位置の学習を禁止することで、ギアエンド又はシンクロ位置の意図しない書換えを防止することができる。また、既に終了している学習が要求された場合、次に行うべき学習の内容を作業者に示すことで、次に行うべき学習を作業者に促すことができる。
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下に示す構成を採ることができる。
上記実施形態では、変速機12の基準位置として、ギアエンド、シンクロ位置及びクラッチ締結位置を用いたが、いずれか1つ又は2つでもよい。或いは、その他の基準位置であってもよい。
上記実施形態では、変速指令を手動で入力する機器として、シフトレバー30を用いたが、これに限られず、例えば、パドルシフトを用いてもよい。この場合、パドルシフトのプッシュ回数を移行条件の一要素として用いることもできる。
上記実施形態では、ギアエンドの学習開始条件として、シフトレバー30をニュートラル位置P2、バックギア位置P3及びニュートラル位置P2の順に移動させたが、これに限られない。その他の基準位置の学習開始条件も同様である。