JP5026053B2 - 導電性高分子溶液の製造方法 - Google Patents

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本発明は、π共役系導電性高分子が有機溶剤に溶解している導電性高分子溶液を製造するための方法に関する。
一般的に、主鎖がπ電子を含む共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、電解重合法及び化学酸化重合法により合成される。
電解重合法では、ドーパントとなる電解質とπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーとの混合溶液中に、予め形成した電極材料などの支持体を浸漬し、支持体上にπ共役系導電性高分子をフィルム状に形成する。そのため、大量に製造することが困難である。
一方、化学酸化重合法では、このような制約がなく、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーに酸化剤及び酸化重合触媒を添加し、溶液中で大量のπ共役系導電性高分子を製造できる。
しかし、化学酸化重合法では、π共役系導電性高分子主鎖の共役系の成長に伴い、溶媒に対する溶解性が乏しくなるため、不溶の固形粉体で得られるようになる。不溶性のものでは、塗布によってプラスチックシート等の各種基材上にπ共役系導電性高分子膜を均一に形成することが困難になる。
そのため、π共役系導電性高分子に官能基を導入して可溶化する方法、バインダ樹脂に分散して可溶化する方法、アニオン基含有高分子酸を添加して可溶化する方法が試みられている。
例えば、水への溶解性を向上させるために、分子量が2000〜500000の範囲のアニオン基含有高分子酸であるポリスチレンスルホン酸の存在下で、酸化剤を用いて、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合してポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)水溶液を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、ポリアクリル酸の存在下で化学酸化重合してπ共役系導電性高分子コロイド水溶液を製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
特許第2636968号公報 特開平7−165892号公報
上述したように、これまでに提案されていたπ共役系導電性高分子を含む導電性高分子溶液は水溶液であるが、水溶液を塗布して塗膜を形成する場合には乾燥時間が長くなるため、導電性塗膜の生産性が低かった。そのため、有機溶剤中にπ共役系導電性高分子が溶解した導電性高分子溶液が求められている。
有機溶剤中にπ共役系導電性高分子が溶解した導電性高分子溶液を得る方法としては、π共役系導電性高分子の水溶液にアルコールを添加する方法が考えられる。しかし、アルコールを添加すると、π共役系導電性高分子の濃度が低下するため、該導電性高分子溶液により導電性塗膜を形成した際には乾燥時間が長くなる傾向にある。そこで、π共役系導電性高分子の濃度を高くするために、エバポレータ等により水および有機溶剤を除去することが考えられるが、この導電性高分子溶液においてπ共役系導電性高分子濃度を高くすると、π共役系導電性高分子が分離して沈殿したり、ゲル化したりする傾向にあった。
また、従来の導電性高分子溶液ではπ共役系導電性高分子を水溶性にしているため、π共役系導電性高分子と、ハードコート樹脂などの疎水性樹脂との相溶性が低く、導電性高分子溶液の用途展開が制限されていた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、塗膜形成の乾燥時間を短縮でき、π共役系導電性高分子が疎水性樹脂と相溶しやすい導電性高分子溶液を製造できる導電性高分子溶液の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を包含する。
[1] 可溶化高分子の存在下、水中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを重合して、導電性高分子水溶液を調製する工程と、
該導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程とを有し、
前記可溶化高分子は、アニオン基及び電子吸引基の少なくとも一方を有し、水にπ共役系導電性高分子を可溶化することを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。
[2] 導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程の後に、水層と有機溶剤層とに分離させ、有機溶剤層のみを回収する工程を有することを特徴とする[1]に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
[3] 導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程では、導電性高分子水溶液にアミン化合物を添加した後に、限外ろ過により導電性高分子水溶液を濃縮し、有機溶剤を添加することを特徴とする[1]に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
[4] 導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程では、導電性高分子水溶液に有機溶剤を添加した後に、アミン化合物を添加することを特徴とする[1]に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
[5] バインダ樹脂を添加することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
本発明の導電性高分子溶液の製造方法によれば、塗膜形成の乾燥時間を短縮でき、π共役系導電性高分子が疎水性樹脂と相溶しやすい導電性高分子溶液を製造できる。
本発明の導電性高分子溶液の製造方法は、可溶化高分子の存在下、水中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを重合して、導電性高分子水溶液を調製する工程と、該導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程とを有する方法であり、例えば、以下の第1〜第3の実施形態例の方法が挙げられる。
「第1の実施形態例」
本発明の導電性高分子溶液の製造方法の第1の実施形態例について説明する。
本実施形態例の導電性高分子溶液の製造方法は、可溶化高分子の存在下、水中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを重合して、導電性高分子水溶液を調製する工程(以下、第1の工程という。)と、該導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程(以下、第2の工程という。)と、該第2の工程の後に、水層と有機溶剤層とに分離させ、有機溶剤層のみを回収する工程(以下、第3の工程という。)とを有する方法である。
<第1の工程>
(可溶化高分子)
第1の工程で使用する可溶化高分子とは、第1の工程で得られるπ共役系導電性高分子を可溶化する高分子であり、可溶化高分子としては、アニオン基及び/又は電子吸引基を有する高分子が挙げられる。
[アニオン基を有する高分子]
アニオン基を有する高分子(以下、ポリアニオンという。)は、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、少なくともアニオン基を有する構成単位を有するものである。
このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシル基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶剤への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基が好ましい。
ポリアニオンのアニオン基としては、共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸が好ましい。ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸は、熱エネルギーを吸収して自ら分解することにより、π共役系導電性高分子成分の熱分解が緩和されるため、耐熱性、耐環境性に優れる。さらに、エステル基を有するため、バインダとの相溶性、分散性に優れる。
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
[電子吸引基を有する高分子]
電子吸引基を有する高分子は、電子吸引基として、例えば、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、カルボニル基、アセチル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を構成単位とした高分子が挙げられる。これらの中でも、シアノ基は極性が高く、π共役系導電性高分子をより可溶化できることから好ましい。また、バインダとの相溶性、分散性をより高くできることから好ましい。
電子吸引性基を有する高分子の具体例としては、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂や、ヒドロキシル基あるいはアミノ基含有樹脂をシアノエチル化した樹脂(例えば、シアノエチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースなどが挙げられる。
可溶化高分子には、耐衝撃性を改良するための合成ゴムや、耐環境特性を向上させるための老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤があらかじめ添加されていてもよい。ただし、アミン化合物系の酸化防止剤は上記導電性高分子を重合させる際に用いる酸化剤の働きを阻害することがあるので、酸化防止剤にはフェノール系のものを用いたり、重合後に混合したりするなどの対策が必要である。
可溶化高分子の量は、得られるπ共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲とすることが好ましく、1〜7モルの範囲とすることがより好ましい。得られるπ共役系導電性高分子1モルに対する可溶化高分子の量を0.1モルより少なくすると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への溶解性が低くなり、均一な導電性高分子溶液を得ることが困難になる。また、π共役系導電性高分子1モルに対する可溶化高分子の量を10モルより多くすると、π共役系導電性高分子の含有割合が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
(π共役系導電性高分子の前駆体モノマーおよびπ共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子の前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
上記前駆体モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒としては、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ぺルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
これら前駆体モノマーより得られるπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は溶媒溶解性や、疎水性樹脂を添加した場合の相溶性及び分散性を向上させるためより好ましい。アルキル基の中では導電性に悪影響を与えることがないため、メチル基が好ましい。
さらに、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSSと略す)は、比較的熱安定性が高く、重合度が低いことから塗膜成形後の透明性が有利となる点で好ましい。
得られたπ共役系導電性高分子には可溶化高分子が、アニオン基または電子吸引基を介して配位されており、その結果、π共役系導電性高分子と可溶化高分子とが複合体を形成している。該複合体において可溶化高分子がポリアニオンである場合には、π共役系導電性高分子のドーパントとして機能する。
<第2の工程>
(アミン化合物)
第2の工程で使用するアミン化合物としては、可溶化高分子のアニオン基または電子吸引基に配位あるいは結合するものであれば特に限定されない。ここで、配位あるいは結合とは、可溶化高分子とアミン化合物とが電子を互いに供与/受容することにより、それらの分子間距離が短くなる結合形態のことである。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、イミダゾール、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾール、N−ペンチル−イミダゾール、N−ヘキシル−イミダゾール、N−ヘプチル−イミダゾール、N−オクチル−イミダゾール、N−デシル−イミダゾール、N−ウンデシル−イミダゾール、N−ドデシル−イミダゾール、2−ヘプチル−イミダゾール、ピリジンなどが挙げられる。
アミン化合物の分子量は、有機溶剤への溶解性を考慮すると、50〜2000であることが好ましい。
アミン化合物の量は、π共役系導電性高分子のドープに寄与していない可溶化高分子のアニオン基および電子吸引基に対して0.1〜10モル当量であることが好ましく、0.5〜2.0当量であることがより好ましく、0.85〜1.25当量であることが特に好ましい。
アミン化合物の量が前記下限値以上であれば、アミン化合物が可溶化高分子のアニオン基および電子吸引基のほぼ全部に配位するため、π共役系導電性高分子の有機溶剤への溶解性がより高くなる。また、前記上限値以下であれば、余剰なアミン化合物が導電性高分子溶液中に含まれないから、得られる導電性塗膜の導電性や機械的物性の低下を防止できる。
(有機溶剤)
有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等を使用する。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶剤との混合物としてもよい。
<第3の工程>
該導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加した後に水層と有機溶剤層とに分離させ、有機溶剤層を回収する方法としては、例えば、分液ロート内で静置して水層と有機溶剤層とを分離し、分離した水層を取り除く方法などが挙げられる。
<他の成分>
導電性高分子溶液を製造する際には、可溶化高分子、π共役系導電性高分子、アミン化合物および有機溶剤以外の他の成分を添加してもよい。他の成分はいずれの時点で添加してもよい。例えば、導電性高分子水溶液に添加してもよいし、得られた導電性高分子溶液に添加してもよい。
他の成分としては、例えば、バインダ樹脂、ドーパントなどが挙げられる。
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂としては、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
これらバインダ樹脂は、有機溶剤にあらかじめ溶解されていてもよいし、スルホン酸基やカルボン酸基などの官能基が付与されて水溶液化されていてもよいし、乳化など水に分散されていてもよい。
バインダ樹脂の中でも、容易に混合できることから、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンのいずれか1種以上が好ましい。また、アクリル樹脂は、硬度が硬いとともに透明性に優れるため、光学フィルタのような用途に適している。
アクリル樹脂としては熱エネルギー及び/又は光エネルギーによって硬化する液状重合体を含むことが好ましい。
ここで、熱エネルギーにより硬化する液状重合体としては、反応型重合体及び自己架橋型重合体が挙げられる。
反応型重合体は、置換基を有する単量体が重合した重合体であり、置換基としては、カルボキシル基、酸無水物、オキセタン系、グリシジル基、アミノ基などが挙げられる。具体的な単量体としては、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピメリン酸、アスコルビン酸、フタル酸、アセチルサルチル酸、アジピン酸、イソフタル酸、安息香酸、m−トルイル酸等のカルボン酸化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸、ジクロル無水マレイン酸、テトラクロル無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピメリット酸等の酸無水物、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、アジドメチルメチルオキセタン等のオキセタン化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェノールグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(すなわち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン)等のグリシジルエーテル化合物、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N,N−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントイン等のグリシジルアミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DHP30−トリ(2−エチルヘクソエート)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素、モノエチルアミン、メンタンジアミン、キシレンジアミン、エチルメチルイミダゾール等のアミン化合物、1分子中に2個以上のオキシラン環を含む化合物のうち、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンによるグリシジル化合物、あるいはその類似物が挙げられる。
反応型重合体においては、少なくとも2官能以上の架橋剤を使用する。その架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、塩基性金属化合物のAl(OH)、Al(OOC・CH(OOCH)、Al(OOC・CH、ZrO(OCH)、Mg(OOC・CH)、Ca(OH)、Ba(OH)等を適宜使用できる。
自己架橋型重合体は、加熱により官能基同士で自己架橋するものであり、例えば、グリシジル基とカルボキシル基を含むもの、あるいは、N−メチロールとカルボキシル基の両方を含むものなどが挙げられる。
光エネルギーによって硬化する液状重合体としては、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドシリコーン等のオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。
光エネルギーによって硬化する液状重合体を構成する単量体単位としては、例えば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーデル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
光エネルギーによって硬化する液状重合体は、光重合開始剤によって硬化する。その光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。さらに、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる。
また、カチオン重合開始剤としては、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、シラノール/アルミニウムキレート、α−スルホニルオキシケトン類等が挙げられる。
本実施形態例の製造方法において、バインダ樹脂を添加すれば、得られる導電性塗膜の耐傷性や表面硬度を高くでき、基材との密着性を向上させることができる。そのため、バインダ樹脂を添加することが好ましい。
(ドーパント)
ドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性のものであってもよい。
ドーパントを添加した場合には、導電性をより向上させることができる。
[ドナー性ドーパント]
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
[アクセプタ性ドーパント]
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシル基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
以上説明した実施形態例の導電性高分子溶液の製造方法では、アミン化合物を添加することにより、可溶化高分子のアニオン基または電子吸引基にアミン化合物を配位あるいは結合させる。これにより、可溶化高分子を親水性から親油性に変換できるため、可溶化高分子とこれに配位するπ共役系導電性高分子を、有機溶剤に高濃度で溶解させることができる。そして、有機溶剤層のみを回収することで、π共役系導電性高分子および可溶化高分子が有機溶剤に溶解している導電性高分子溶液を得ることができる。
このような導電性高分子溶液では、塗膜形成の乾燥時間を短縮できる。したがって、導電性塗膜の生産性を高くすることができる。
また、導電性高分子溶液に含まれるπ共役系導電性高分子は親水性ではなく、親油性になっているため、疎水性樹脂と相溶しやすい。
しかも、この導電性高分子溶液より形成される導電性塗膜は導電性が高い。
「第2の実施形態例」
本発明の導電性高分子溶液の製造方法の第2の実施形態例について説明する。
第2の実施形態例の製造方法は、第1の工程と第2の工程とを有する方法であって、第2の工程では、導電性高分子水溶液にアミン化合物を添加した後に、限外ろ過により導電性高分子水溶液を濃縮し、有機溶剤を添加する方法である。
本実施形態例におけるπ共役系導電性高分子、可溶化高分子、有機溶剤およびアミン化合物はとしては第1の実施形態例と同様のものが使用される。
導電性高分子水溶液にアミン化合物を添加する際には、有機溶剤も同時に添加しても構わない。
導電性高分子水溶液を濃縮する際の限外ろ過は膜分離の1種で、例えば、多孔質支持基材上にそれよりも小さい細孔を有する高分子膜を有した限外ろ過膜を用いて成分を分離する手法である。本実施形態例では、主として水を分離し、除去するために、限外ろ過を適用する。
限外ろ過に用いられる限外ろ過膜としては、分画分子量が1万〜50万のものが好ましい。分画分子量が1万未満であると、溶媒が限外ろ過膜を透過しにくくなり、濃縮が困難になる傾向にあり、50万を超えると、高分子成分も限外ろ過膜を透過しやすくなるため、やはり濃縮が困難になる傾向にある。
限外ろ過による導電性高分子水溶液の濃縮と有機溶剤の添加とは複数回繰り返すことが好ましい。導電性高分子水溶液の濃縮と有機溶剤の添加とを複数回繰り返せば、得られる導電性高分子溶液中の水分量を少なく、具体的には5質量%以下にすることができる。
本実施形態例の製造方法において、有機溶剤として水溶性のものを用いた場合には、π共役系導電性高分子が、水と有機溶剤とからなる混合溶媒に溶解した導電性高分子溶液を得ることができる。
本実施形態例の導電性高分子溶液の製造方法でも、第1の実施形態例と同様に、可溶化高分子のアニオン基または電子吸引基にアミン化合物を配位あるいは結合させるため、可溶化高分子とこれに配位するπ共役系導電性高分子を、有機溶剤に高濃度で溶解させることができる。したがって、π共役系導電性高分子および可溶化高分子が有機溶剤に溶解している導電性高分子溶液を得ることができる。
本実施形態例の導電性高分子溶液でも、塗膜形成の乾燥時間を短縮でき、また、π共役系導電性高分子は疎水性樹脂と相溶しやすくなっている。しかも、この導電性高分子溶液より形成される導電性塗膜は導電性が高い。
また、この製造方法では限外ろ過によって水を除去するため、製造量が多い場合にも対応できる。
「第3の実施形態例」
本発明の導電性高分子溶液の製造方法の第3の実施形態例について説明する。
第3の実施形態例の製造方法は、第1の工程と第2の工程とを有し、第2の工程では、導電性高分子水溶液に有機溶剤を添加した後に、アミン化合物を添加する工程とを有する方法である。
本実施形態例におけるπ共役系導電性高分子、可溶化高分子、有機溶剤およびアミン化合物は第1の実施形態例と同様のものが使用される。
本実施形態例の製造方法において、有機溶剤として水溶性のものを用いた場合には、π共役系導電性高分子が、水と有機溶剤とからなる混合溶媒に溶解した導電性高分子溶液を得ることができる。有機溶剤として非水溶性のものを用いた場合には、第1の実施形態例と同様に、水層と有機溶剤層とを分離し、有機溶剤層を回収することにより、有機溶剤溶液を得ることができる。
本実施形態例の導電性高分子溶液の製造方法でも、第1の実施形態例と同様に、導電性高分子水溶液中に可溶化高分子のアニオン基または電子吸引基にアミン化合物を配位あるいは結合させるため、可溶化高分子とこれに配位するπ共役系導電性高分子を親油性に変換して、有機溶剤中に移行させることができる。したがって、π共役系導電性高分子を有機溶剤に高濃度で溶解させることができる。したがって、π共役系導電性高分子および可溶化高分子が有機溶剤に溶解している導電性高分子溶液を得ることができる。
本実施形態例の導電性高分子溶液でも、塗膜形成の乾燥時間を短縮でき、また、π共役系導電性高分子が疎水性樹脂と相溶しやすくなっている。しかも、この導電性高分子溶液より形成される導電性塗膜は導電性が高い。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。
(製造例2)PSS−PEDOTの水溶液の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のPSS−PEDOTの水溶液を得た。
以下の実施例1〜4は、本願請求項2の導電性高分子溶液の製造方法に該当する例である。
(実施例1)
前記PSS−PEDOT水溶液の100mLにアセトン200mL、メタノール50mLを添加した混合液に、トリオクチルアミン1.05gを添加した後、これをスターラにより3時間攪拌した。その後、水100mL、トルエン50mLを添加し、スターラにより1時間攪拌した後、静置して、上層の有機溶剤層と下層の水層とに分離した。次いで、水層を分離除去し、メチルエチルケトン100mLを添加し、ナノマイザ処理して、PSS−PEDOTのトリオクチルアンモニウム塩の0.6質量%トルエン・メチルエチルケトン混合溶液を得た。
この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステル社製T680E)上に塗布し、100℃で1分間させて導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値をハイレスタ(三菱化学製)により測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0005026053
(実施例2)
トリオクチルアミン1.05gの代わりにジデシルアミン0.89gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PSS−PEDOTのジデシルアンモニウム塩の0.6質量%トルエン・メチルエチルケトン混合溶液を得た。そして、実施例1と同様にして、導電性塗膜を形成し、その表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
トリオクチルアミン1.05gの代わりにステアリルアミン0.81gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PSS−PEDOTのトリステアリルアンモニウム塩の0.6質量%トルエン・メチルエチルケトン混合溶液を得た。そして、実施例1と同様にして、導電性塗膜を形成し、その表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例4)
トリオクチルアミン1.05gの代わりに2−ヘプタデシルイミダゾール0.92gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PSS−PEDOTの2−ヘプタデシルイミダゾール塩の0.6質量%トルエン・メチルエチルケトン混合溶液を得た。そして、実施例1と同様にして、導電性塗膜を形成し、その表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
トリオクチルアミン1.05gを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、上層の有機溶剤層と下層の水層とに分離した。PSS−PEDOTは上層に移行せず、全て下層に残った。
以下の実施例5は、本願請求項3の導電性高分子溶液の製造方法に該当する例であり、実施例6〜9は、本願請求項4の導電性高分子溶液の製造方法に該当する例である。
(実施例5)
前記PSS−PEDOT水溶液の400mLに、トリプロピルアミン1.70gを溶解したイソプロパノール400mLを添加し、限外ろ過機(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社社製FB02−CC−FUS1582)により水およびイソプロパノールの300mLを除去して濃縮した。得られた濃縮溶液500mLにイソプロパノール3000mLを添加し、限外ろ過機により水およびイソプロパノールの3000mLを除去して濃縮した。次いで、ナノマイザ処理して、800mLのPSS−PEDOTのトリプロピルアンモニウム塩の0.6質量%イソプロパノール溶液(水分量1.6質量%)を得た。
この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステル社製T680E)上に塗布し、100℃で1分間させて導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値をハイレスタ(三菱化学製)により測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0005026053
(実施例6)
前記PSS−PEDOT水溶液の10mLにメチルエチルケトン90mLを添加した後、トリオクチルアミン105mgを添加し、ナノマイザ処理して、PSS−PEDOTのトリオクチルアンモニウム塩の0.6質量%水・メチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステル社製T680E)上に塗布し、100℃で1分間させて導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値をハイレスタ(三菱化学製)により測定した。その結果を表2に示す。
(実施例7)
トリオクチルアミン105mgの代わりにジデシルアミン89mgを用いたこと以外は実施例6と同様にして、PSS−PEDOTのジデシルアンモニウム塩の0.12質量%水・メチルエチルケトン混合溶液を得た。そして、実施例6と同様にして、導電性塗膜を形成し、その表面抵抗値を測定した。その結果を表2に示す。
(実施例8)
トリオクチルアミン105mgの代わりにステアリルアミン81mgを用いたこと以外は実施例6と同様にして、PSS−PEDOTのジステアリルアンモニウム塩の0.12質量%水・メチルエチルケトン混合溶液を得た。そして、実施例6と同様にして、導電性塗膜を形成し、その表面抵抗値を測定した。その結果を表2に示す。
(実施例9)
トリオクチルアミン105mgの代わりに2−ヘプタデシルイミダゾール92mgを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PSS−PEDOTのトリオクチルアンモニウム塩の0.6質量%トルエン・メチルエチルケトン混合溶液を得た。そして、実施例1と同様にして、導電性塗膜を形成し、その表面抵抗値を測定した。その結果を表2に示す。
(比較例2)
トリオクチルアミン105mgを添加しなかったこと以外は実施例6と同様にして、PSS−PEDOTのトリオクチルアンモニウム塩の0.6質量%水・メチルエチルケトン溶液を得ようとしたが、全てのPSS−PEDOTは沈殿して、導電性高分子溶液を得ることができなかった。
このPSS−PEDOTが分離した液を用いて、実施例6と同様にして、表面抵抗値を測定したが、導電しなかった。
導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加して得た実施例1〜9の製造方法によれば、π共役系導電性高分子が有機溶剤に溶解した導電性高分子溶液を得ることができた。これら導電性高分子溶液から形成した導電性塗膜は導電性に優れていた。
これに対し、導電性高分子水溶液に有機溶剤を添加し、アミン化合物を添加しなかった比較例1,2では、π共役系導電性高分子が有機溶剤に溶解した導電性高分子溶液を得ることはできなかった。

Claims (5)

  1. 可溶化高分子の存在下、水中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを重合して、導電性高分子水溶液を調製する工程と、
    該導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程とを有し、
    前記可溶化高分子は、アニオン基及び電子吸引基の少なくとも一方を有し、水にπ共役系導電性高分子を可溶化することを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。
  2. 導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程の後に、水層と有機溶剤層とに分離させ、有機溶剤層のみを回収する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
  3. 導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程では、導電性高分子水溶液にアミン化合物を添加した後に、限外ろ過により導電性高分子水溶液を濃縮し、有機溶剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
  4. 導電性高分子水溶液にアミン化合物と有機溶剤とを添加する工程では、導電性高分子水溶液に有機溶剤を添加した後に、アミン化合物を添加することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
  5. バインダ樹脂を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
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