以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。始めに渋滞度作成の概略について説明する。
〔本実施形態の概略〕
図1は、本実施形態における交通情報作成の手順を示すフローチャートであり、図2は、交通情報がどのように作成されるかをステップ毎に示す図であり、図3は、交通情報作成システム及び車載装置の構成例を示す図である。
本実施形態の交通情報作成方法は、いわゆるプローブカー(以下、単に車両という。)が走行した道路の車両情報に基づき、道路が渋滞しているか否か、また、渋滞しているならどのように渋滞しているかの情報を作成するものである。また、車両情報とは、車速、位置情報、渋滞度等、車両2から検出される情報、又は、それら情報を加工した情報である。
車両情報と車両2の位置情報とが取得されれば、車載装置10、又は、車両2に接続可能なサーバ(例えば、車両情報サーバ5)の何れが交通情報を作成すればよい。しかしながら、車両情報のみを処理する段階では、車載装置10が車両情報を処理する方が通信処理を省略できるため好適である。一方で、複数の車両の車両情報に基づいてより詳細な交通情報を作成する場合、サーバが処理することが好適である。このため、本実施形態では、ステップS1〜S5のうち、ステップS1〜ステップS4が車載装置において処理され、ステップS5が主にサーバによって処理される。但し、処理の主体を限定するものではない。
まず、ステップS1では、一定距離又は一定時間毎の渋滞度を取得する。本実施形態において、渋滞度は、例えば、混雑度合いが大きい順に、「重渋滞」、「軽渋滞」、「重混雑」、「軽混雑」、「渋滞なし(1)」及び「渋滞なし(2)」の6つの状態に分類され、以下、それぞれ、ローマ数字I、II、III、IV、V、VIで表現される。なお、6つの状態のいずれにも分類できない場合には「不明」状態とされる。
また、本実施形態では、渋滞度I〜IVを、特に、「遅い状態の渋滞度」と称し、渋滞度VIを、特に、「早い状態の渋滞度」と称する。そして、「渋滞」、「渋滞箇所」、「渋滞状態」、「渋滞区間」は、渋滞度I〜IVの状態を指し、「快速道」、「快速箇所」、「快速状態」、「快速区間」は、渋滞度VIの状態を指すものとする。
図2のステップS1では、各矢印が一定距離又は一定時間毎の渋滞度を示すものであり、符号Vが付与された矢印(斜線)と符号Iが付与された矢印(白地)とで、プローブカーの走行状態が表現されている。車載装置は、一定距離又は一定時間毎に車速を取得し、このような走行状態を表現できるようにする。
ステップS2では、断続的な渋滞が連結される。例えば、渋滞度Vの矢印y1、y2及びy3は、渋滞度Iの矢印によって前後を挟まれている。矢印y1、y2及びy3に対応する区間では、車両が渋滞なしに走行できることを意味するが、一定距離又は一定時間内に渋滞が再発するので、渋滞が継続しているとみなすことができるからである。
ステップS3では、同等又はより大きな混雑度合いの渋滞度を連続したものとして扱い、所定距離より短い区間を有する渋滞を破棄する。例えば、渋滞状態の矢印y4は、渋滞度V(渋滞なし(1))の矢印に挟まれているが、渋滞なしに走行できる区間に短い渋滞が出現する場合、渋滞度Vの状態が継続しているとみなすことができるからである。
ステップS4では、リンク(交差点間を接続する道路であってナビゲーションシステム等が経路探索を行う際の最小単位である。)に渋滞度を割り当てる。渋滞の発生位置は、リンクの区切りに依存しないため、ステップS1〜S3では渋滞度とリンクとを関連付けていないからである。ステップS3までの処理によって生成された渋滞度は、この時点でリンクに割り当てられる。
渋滞度をリンクに割り当てる際、全体渋滞度及び部分渋滞度の二つの渋滞度が作成される。全体渋滞度は、リンク全体の混雑度合いを示し、部分渋滞度は、リンク内を細分化した詳細な混雑度合いを示す。例えば、図2では、点線で区切られる計五つのリンクが含まれている。このようなリンク情報は、カーナビゲーションシステムの地図データから求められる。二つの渋滞度がリンクに割り当てられることで、リンク全体の混雑度合いとリンク内の詳細な混雑度合いとを表現することができる。
ステップS5では、リンク端の渋滞度を補正する。車両が信号で停止及び発進を行うことでリンク端の前後の車速が下がり、その結果、リンク端の渋滞度が正確に検出できない場合があるからである。また、ステップS5の処理は、ネットワークを介して接続される後述の車両情報サーバで処理されてもよい。
以上より、本実施形態の交通情報作成方法は、ステップS1において、平均車速ではなく瞬間車速を取り込むことができ、ステップS2において、渋滞せずに走行できる渋滞途中の短い区間を渋滞に含めることができる(前後の渋滞区間を連結できる。)。また、ステップS3において、ステップS2において連結された後の渋滞区間の距離がそれでも短い場合、その渋滞区間を渋滞度Vに置き換えることで、一時的な車速変化による影響を除去することができる。
このように、本実施形態の交通情報作成手段は、車速の遅い状態又は早い状態が車速に応じた所定期間に亘って連続している状態を抽出するので、実際の通過時間を反映した交通情報を作成することができる。
また、ステップS4により、取得した渋滞度を実際の道路に割り当て、ステップS5によりリンク端を補正するので、個々の車両の停車位置等に起因する渋滞箇所のズレを補正できる。また、渋滞度VIを検出するので、快適に走行できる道路を案内することができる。
図3(a)は、交通情報作成システムの全体構成図を示し、図3(b)は、車載装置10の機能ブロック図を示す。車両2は、車速等の自車両の車両情報を収集する車載装置10(特許請求の範囲における交通情報作成装置に相当する。)を備え、基地局3及びネットワーク4を介して車両情報を処理する車両情報センタのサーバ(以下、「車両情報サーバ」とする。)5に車両情報を送信し、また、車両情報サーバ5からリンク端を補正した渋滞度を受信することができる。
車両情報サーバ5は、インターネット等のネットワーク4に接続されている。また、車両2は、ネットワーク1に接続された基地局3と無線又は有線で通信可能に構成されている。通信方式の形態は、例えば、基地局3から車両情報サーバ5までは公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線で接続され、基地局3から車両2までは、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN、Wimax(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、衛星電話、ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信システム)等の無線で接続される。データの送受信には、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)等のプロトコルと上位互換であるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)、MIME(Multipurpose Internet Mail Extension)等のプロトコルが使用される。
車載装置10は、GPS(Global Positioning System)衛星から電波を受信するGPS受信器14、車速パルス等により車両2の車速を検出する車速センサ11と、車両情報を車両情報センタ5に送信したり、車両情報サーバ5から渋滞度を受信したりする通信装置13と、道路地図を格納した地図データ記憶装置15と、これらを制御するプローブECU(Electrical Control Unit)12とを有する。
地図データ記憶装置15には、道路網や交差点等の道路地図情報が、緯度・経度に対応付けて格納されている。道路地図は、実際の道路網をノード(例えば交差点等、道路と道路とが交差、合流又は分岐する点である。)及びリンク(ノードとノードとを接続する道路の構成要素である。)に対応付けた、テーブル状のデータベースとして構成される。また、リンクには、一般道又は自動車専用道路等の道路種別や、制限速度等の規制情報、飲食店等に関する施設情報が格納されている。
プローブECU12は、プログラムを実行するCPU、プログラムを記憶したROM、データやプログラムを一時的に記憶するRAM、データを入出力する入出力装置がバスを介して接続されたコンピュータとして構成される。
プローブECU12のCPUがプログラムを実行することで、渋滞度作成手段12a、渋滞度認識判定手段12b、連結渋滞判定手段12c、リンク割り当て手段12d及びリンク端補正手段12eを実現する。また、プローブECU12のROMには、渋滞度を設定するためのパラメータテーブル16(後述)が記憶されている。
図4は、車両情報サーバ5のハードウェア構成図を示す。車両情報センタ5は、プログラムを実行するCPU21、プログラムやドライバを記憶したROM22、データやプログラムを一時的に記憶するRAM23、OSを含むプログラムやファイルを記憶した記憶装置24(例えば、HDDである。)、ネットワークに接続するための通信装置25(例えば、ネットワークカードである。)、パラメータ等を記憶するNVRAM26、CD−ROM等の記憶媒体を読み書きするドライブ装置27等が相互にバス28を介して接続されたコンピュータとして構成されている。
車両情報サーバ5の記憶装置24には、CPU21が実行することで、渋滞度作成手段12a、渋滞度認識判定手段12b、連結渋滞判定手段12c、リンク割り当て手段12d及びリンク端補正手段12eを実現するプログラムがインストールされている。車両情報サーバ5がステップS1〜S5を実現する場合、CPU21は、全てのプログラムを実行し、車両情報サーバ5がステップS5のみを実現する場合、CPU21は、リンク端補正手段12eを実現するプログラムのみを実行する。なお、車両情報サーバ5は、必要に応じてパラメータテーブル16の一部又は全部を有する。
次に、ステップS1〜S5の詳細を説明する。
〔ステップS1〕
渋滞度作成手段12aは、車両の走行中、一定距離(例えば、10メートル)又は一定時間(例えば、1秒間)毎に車速センサ11が検出する車速を取得する。
渋滞度作成手段12aは、車速を取得する度に車速に対応した渋滞度を抽出する。図5は、道路種別毎に登録されている渋滞度を設定するためのパラメータテーブル16を示す図である。道路種別として、例えば、高速道、有料道、一般道、及び、IC(Inter Change)取付道、SA(Service Area)/PA(Parking Area)取付道が設定されており、道路種別毎でかつ渋滞度毎に、規定速度、連結渋滞判定距離、渋滞度認識判定値、部分渋滞作成対象リンク長及びリンク端補正対象範囲が設定登録されている。道路種別毎に渋滞度を設定するための規定速度が異なることで、運転者の感覚に適した渋滞度を抽出することができる。
渋滞度作成手段12aは、パラメータテーブル16を参照して車速に応じた渋滞度を抽出する。例えば、一般道を走行している場合、車速がA〔km/h〕以下のときに渋滞度Iを抽出し、車速がB〔km/h〕以下のときに渋滞度IIを抽出し、車速がC〔km/h〕以下のときに渋滞度IIIを抽出し、車速がD〔km/h〕以下のときに渋滞度IVを抽出し、車速がE〔km/h〕以下のときに渋滞度Vを抽出し、車速がそれ以外のときに渋滞度VIを抽出する。なお、図5では、A<B<C<D<E<F<G<Hである。
図6は、車速に応じて抽出された渋滞度を矢印により示した図である。図6(a)は、遅い状態の渋滞度を、図6(b)は、早い状態の渋滞度を示す。
矢印の真上に示された数字が、車速を示し、各矢印内のローマ数字が、抽出された渋滞度を示す。なお、説明のため、車速を取得した順番に1〜20の番号を付した。このような車速及び渋滞度は、車両情報としてプローブECU12のRAMや地図データ記憶装置15の一部に記憶される。
このように、平均速度でなく地点毎の車速で渋滞度を判断するため、瞬間的な車速変化による影響を除去して精度の高い交通情報を作成することができる。平均速度により渋滞度を判定すると、信号待ちによる停止時間も平均車速に算入されてしまい、平均速度の低下が渋滞又は信号の何れによるものかを判別することが困難となるが、本実施形態では、瞬間的な車速の変化を抽出するので、信号待ちによる停止時間が他の瞬間における渋滞度の抽出に影響することがない。
〔ステップS2〕
ステップS2では、連結渋滞判定手段12bがステップS1で抽出された渋滞度に基づき断続的な渋滞を継続した渋滞に置き換える。遅い状態の渋滞度は、I〜IVの四段階に区分されているが、本実施形態では、特定の渋滞度と同じ渋滞度又はその特定の渋滞度より混雑度合いがより大きい渋滞度(以下、「同等渋滞度」という。)が所定距離範囲内で再発する場合、その間の渋滞度をその特定の渋滞度と同じ渋滞度に置き換えるようにする。
また、渋滞度Vより早い状態の渋滞度は、渋滞度VIのみであるが、本実施形態では、渋滞度VIが所定距離範囲内で再発する場合、その間の渋滞度を渋滞度VIと同じ渋滞度に置き換えるようにする。
ステップS2の「所定距離」は、図5のパラメータテーブル16に、予め道路種別毎に連結渋滞判定距離として登録されている。例えば、一般道の渋滞度IVの場合、一旦、渋滞度Vになっても、連結渋滞判定距離L2メートル以内に渋滞度IVの同等渋滞度が再発するとき、その間の渋滞度Vを渋滞度IVに置き換えるようにする。すなわち、連結渋滞判定距離以内に、より早い方の渋滞度が出現した場合に、そのより早い方の渋滞度を比較対象となった遅い方の渋滞度で置き換えるようにする。
図7は、連結渋滞判定手段12bが渋滞度を置き換える様子を示す図である。図7(a)は、図6(a)の遅い状態の渋滞度に対応し、図7(b)は、図6(b)の早い状態の渋滞度に対応する。なお、本実施形態の連結渋滞判定距離L2は、矢印三つ分の走行距離に相当するものとする。従って、三つの矢印以内に同等渋滞度が再発した場合、その間の渋滞度が置き換えられる。
図7(a)では、三番目の車速で渋滞度IVが検出された後、四番目の車速は渋滞度Vとなっているが、五番目の車速では再び渋滞度IVが検出されている。すなわち、四番目の車速では渋滞が解消されたが、再び、連結渋滞判定距離以内に渋滞度IVが検出されているので、四番目の渋滞度を渋滞度IVに置き換えるようにする。
また、七番目の車速で渋滞度Iが検出された後、八番目、九番目の車速で渋滞度IIIが検出され、十番目の車速で渋滞度IIが検出されているが、十一番目の車速では再び渋滞度Iが検出されている。すなわち、八から十番目の車速では渋滞が緩和されたが、再び、連結渋滞判定距離以内に渋滞度Iが検出されているので、八から十番目の渋滞度を渋滞度Iに置き換えるようにする。
図8(a)は、遅い状態の渋滞度が検出される場合の走行距離と車速との関係の一例を示す図である。図8(a)において、走行距離が約300メートルから1300メートルの区間にある渋滞範囲では、低い車速が断続的に検出されている。図8(a)に示すように、0〜10km/hの車速を渋滞領域、10〜20km/hの車速を混雑領域とした場合、渋滞度作成手段12aは、その渋滞範囲で渋滞度I〜IVを検出する。
一方、その渋滞範囲においても渋滞度Vの車速が一時的に検出されるが、連結渋滞判定距離L2以内で再び渋滞度I〜IVの何れかが検出されるので、連結渋滞判定手段12bは、渋滞が継続しているとみなす。このように、車両が短い距離で加減速を繰り返している場合には、断続的な渋滞を連結することにより、継続した渋滞とみなすようにする。
同様にして、早い状態の渋滞度も置き換える。図7(b)では、六番目の車速で渋滞度VIが検出された後、七番目の車速で渋滞度Vが検出され、八番目の車速で渋滞度IVが検出され、九番目の車速で渋滞度Vが検出されているが、十番目の車速で再び渋滞度VIが検出されている。すなわち、七から九番目の車速は渋滞度VIではないが、再び、連結渋滞判定距離以内に渋滞度VIが検出されているので、七番目から九番目の車速の渋滞度を渋滞度VIで置き換えるようにする。
また、十番目の車速で渋滞度VIが検出された後、十一番目の車速で渋滞度Vが検出されているが、十二番目の車速で再び渋滞度VIが検出されている。すなわち、十一番目の車速は渋滞度VIでないが、再び、連結渋滞判定距離以内に渋滞度VIが検出されているので、十一番目の渋滞度を渋滞度VIで置き換えるようにする。
なお、渋滞度VIが一時的に渋滞度Vになる場合とは、例えば、右折待ちの車を避けるための減速等が想定され、そのような渋滞度Vを渋滞度VIで置き換えることでより正確な渋滞度を検出するようにする。
ところで、車両は、右折や左折をするが、一定距離又は一定時間毎に車速が検出されるので、右左折による減速時の車速が検出されてしまう。その場合、渋滞していなくても車速が低下するので、右左折のための減速時の車速によって渋滞度を連結すると、右左折の前後の渋滞度を誤って置き換えてしまうおそれがある。このため、本実施形態では、右左折の際には渋滞度を連結しないようにする。
図9(a)は、右折時に検出された渋滞度の一例を示す図である。図9(a)に示すように、右折前の渋滞度及び右折後の渋滞度は、別のかたまりとして扱い、上述した条件を満たす場合であっても、連結渋滞判定手段12bは、渋滞度を連結しないようにする。
右左折したか否かは、カーナビゲーションシステムの道路地図により判定されてもよい。車両が走行しているリンクが切り替わった場合であって、切り替わる前後のリンク間の角度が所定角度以上のとき、連結渋滞判定手段12bは、車両が右左折したものと判定する。右左折したものと判定された場合、右左折の場所は、車両情報として記憶される。
なお、連結渋滞判定距離は、道路種別毎に登録されているので、異なる道路種別の道路を跨って走行した場合には、何れの連結渋滞判定距離を適用するかを調整する必要がある。図9(b)は、一般道と高速道とを跨って走行した場合の渋滞度の一例を示す。
一番目から四番目までの車速、及び、十一番目から十五番目までの車速では、渋滞度IIが検出されており、五番目から十番目までの車速では、渋滞度Vが検出されている。渋滞度IIで連結するためには、渋滞度Vの区間が連結渋滞判定距離以内である必要があるが、図9(b)では、八番目及び九番目の車速を境に道路種別が異なっている。このような場合、本実施形態では、道路種別の比率に応じて連結渋滞判定距離を調整する。
例えば、一般道の走行距離がAメートル、高速道の走行距離がBメートルの場合、パラメータテーブル16によれば、一般道で渋滞度IIの連結渋滞判定距離は、L2であり、高速道で渋滞度IIの連結渋滞判定距離は、L4であるので、跨った区間(五番目から十番目までの車速の区間)の連結渋滞判定距離は、次のように調整される。
連結渋滞判定距離=L2×A/(A+B)+L4×B/(A+B)
異なる道路種別の道路を跨って走行している場合、道路種別の比率に応じて連結渋滞判定距離を調整することで、例えば、道路種別の切り替わりの際に出現する渋滞も適切に連結することができる。
以上のようにして連結された渋滞度は、車両情報としてプローブECU12のRAMや地図データ記憶装置15の一部に記憶される。
このように、遅い状態の渋滞度では、断続的な渋滞を連結したものとし、早い状態の渋滞度では、一時的な速度の低下を除去するので、突発的な加減速による不安定な情報を排除して安定した交通情報を作成することができる。
〔ステップS3〕
ステップS3において、渋滞度認識判定手段12cは、渋滞が連続している場合、それらを連続したものとして扱い、また、連結後の渋滞度V(標準の渋滞度)の並びの中にある他の渋滞度(渋滞度I〜IV及びVI)を有する短い区間を破棄するようにする。
ステップS2において渋滞度が連結された後に、他の状態の渋滞度を有する短い区間が渋滞度Vの並びの中で孤立する場合、その区間は、一時的に車速が低下し、或いは、増大したものであり、実際には、渋滞又は快速走行になっていることは少ないと考えられる。そこで、他の渋滞度が連続する区間の距離が所定距離未満の場合、その区間の渋滞度を破棄して渋滞度V(標準の渋滞度)に置き換えることとする。
すなわち、本実施形態では、他の渋滞度の区間の連続距離数が所定距離未満の場合、その区間の渋滞度を破棄して渋滞度Vで置き換えるようにする。
また、渋滞度認識判定手段12cは、同じ渋滞度が連続していれば、その渋滞度が連続しているものとして扱う。また、異なる渋滞度が連続する場合、遅い状態の渋滞度では、混雑度合いのより大きな渋滞度が連続する間も混雑度合いのより小さな渋滞度が連続しているものとして扱う。例えば、渋滞度IVの間に渋滞度Iが出現する場合、渋滞度Iの間も渋滞度IVが連続しているものとする。
すなわち、本実施形態では、遅い状態の渋滞度の場合、渋滞度の連続距離数は、同じ渋滞度又はより混雑度合いが大きい渋滞度が連続する限り、連続しているものとして扱う。また、早い状態の渋滞度の場合も同様である。
ステップS3における「所定距離」は、図5のパラメータテーブル16に、予め道路種別毎に渋滞度認識判定値として登録されている。例えば、一般道で渋滞度IVの場合、渋滞度認識判定値はL3となり、その区間の距離がL3未満であれば、その区間の渋滞度IVを破棄して渋滞度Vで置き換えるようにする。
図8(b)は、遅い状態の渋滞度が検出される場合の走行距離と車速との関係の一例を示す図である。図8(b)は、ステップS2における連結判定後の渋滞度の一例を区間b1、b2で示した。0〜10km/hの車速を渋滞領域とし、10〜20km/hの車速を混雑領域とした場合、区間b1は、渋滞度III及び渋滞度IVで表され、区間b2は、渋滞度I及び渋滞度IIで表される。
区間b1の距離は、区間b2の距離より大きいが、例えば、この道路の渋滞度認識判定値が区間b1の距離>渋滞度認識判定値>区間b2の距離の関係にある場合、渋滞の区間b2は、渋滞度認識判定値未満であるので破棄され、混雑の区間b1は、渋滞度認識判定値以上であるので破棄されることなく連続したものとして扱われる。
また、図8(c)は、遅い状態の渋滞度が検出される場合の走行距離と車速との関係の別の一例を示す図である。図8(c)は、ステップS2における連結判定後の渋滞度の一例であるが、走行距離が240メートル付近の位置でのみ車速が低下している。このように短い区間でのみ低下する車速が検出された場合、その区間の距離が渋滞度認識判定値以下であるので、渋滞度I〜IVの何れにも連結されずに破棄される。このような処理により信号待ちのための一時的な停止による影響を除去できる。
図10は、渋滞度認識判定手段12cが短い渋滞区間を破棄する一方で、渋滞度を連続しているものとして扱う様子を示す図である。図10(a)は、遅い状態の渋滞度の場合を示し、図10(b)は、早い状態の渋滞度の場合をそれぞれ示す。図10(a)は、図8(b)と同様の内容を矢印で示す図である。なお、図10は、図6又は図7の渋滞度とは異なる。また、本実施形態の渋滞度認識判定値L3は、矢印三つ分の距離に相当するものとする。
図10(a)では、五番目の車速で渋滞度IVが検出されるが、連続距離が渋滞度認識判定値未満であるので破棄され、一番目から十一番目までの車速で渋滞度Vが設定される。
また、十三番目から十五番目までの車速で渋滞度Iが検出されるので、これらは一つにまとめられる。十六番目の車速で渋滞度IIが検出され、隣接する十三番目から十五番目までの渋滞度がより混雑度合いの大きい渋滞度であるので、十三番目から十六番目までは、一部で渋滞度Iと重畳しながら渋滞度IIが連続しているものとして扱われる。同様に、十七番目の車速で渋滞度IIIが検出され、隣接する十二番目から十六番目までの渋滞度が同等渋滞度であるので、十二番目から十七番目までは、一部で渋滞度I及びIIと重畳しながら渋滞度IIIが連続しているものとして扱われる。更に、十八番目の車速で渋滞度IVが検出され、隣接する十二番目から十八番目までの渋滞度がより混雑度合いの大きい渋滞度であるので、十二番目から十八番目までは、一部で渋滞度I〜IIIと重畳しながら渋滞度IVが連続しているものとして扱われる。
十二番目から十八番目までの渋滞度IVが連続しているものとして扱われた区間の距離は、渋滞度IVの渋滞度認識判定値以上なので、破棄されずに連続しているものとして扱われる。
このように、連続距離が短い渋滞度だけを破棄することで、信号待ちのように一時的に車速が低下した状態が渋滞と認識されるのを防止することができる。
また、図10(b)では、三番目の車速で渋滞度VIが検出されるが、連続距離が渋滞度認識判定値未満なので破棄される。同様に、八番目、九番目の渋滞度VIも破棄される。
また、十四番目から十八番目までの車速で渋滞度VIが検出されるが、これは、連続距離が渋滞度認識判定値以上なので、破棄されずに連続しているものとして扱われる。
このように、連続距離が短い渋滞度だけを破棄することで、一部だけ高速に走行できるような交通情報が作成されてしまうのを防止することができる。
なお、ステップS2と同様に、右左折のための減速時の車速により、渋滞が連続していると判定されることがないように、本実施形態では、右左折の際には渋滞度が連続しているものとして扱わないようにする。
また、渋滞度認識判定値は、道路種別毎に登録されているため、異なる道路種別の道路を跨って走行した場合に、どちらの渋滞度認識判定値を適用するか調整する必要があるが、本実施形態では、ステップS2と同様に、道路種別の比率に応じて渋滞度認識判定値を調整することとする。
例えば、図9(b)を例に説明すれば、一般道の走行距離がAメートル、高速道の走行距離がBメートルの場合、パラメータテーブル16によれば、一般道で渋滞度IIの渋滞度認識判定値はL3であり、高速道で渋滞度IIの渋滞度認識判定値はL5であるので、跨った区間(五番目から十番目までの車速の区間)の渋滞度認識判定値は、次の用に調整される。
渋滞度認識判定値=L3×A/(A+B)+L5×B/(A+B)
異なる道路種別の道路を跨って走行している場合、道路種別の比率に応じて渋滞度認識判定値を調整することで、例えば、道路種別の切り替わりの際に出現する渋滞も適切に連続したものとして扱うことができる。
以上のようにして、破棄され、或いは、連続したものとして扱われた渋滞度は、車両情報としてプローブECU12のRAMや地図データ記憶装置15の一部に記憶される。
このように、一時的な速度変化を除去して連続したものとして取り扱うことで、信号待ち等の瞬間的な速度変化による影響を取り除き、精度の高い交通情報を作成できる。
次に、渋滞度認識判定手段12cが短い渋滞状態を破棄する場合の例外処理について説明する。
図11及び図12は、その例外処理の対象となる車両情報の一例を示す図であり、図11(a)は、ステップS1において渋滞度作成手段12aが作成した、断続的に機敏な停止を繰り返す車両の車両情報を示し、図11(b)は、ステップS2において連結渋滞判定手段12bが図11(a)に示す車両情報を処理した状態を示し、図11(c)は、ステップS3において渋滞度認識判定手段12cが図11(b)に示す車両情報を処理した状態を示す。
また、図12(a)は、ステップS1において渋滞度作成手段12aが作成した、断続的に緩慢な停止を繰り返す車両の車両情報を示し、図12(b)は、ステップS2において連結渋滞判定手段12bが図12(a)に示す車両情報を処理した状態を示し、図12(c)は、ステップS3において渋滞度認識判定手段12cが図12(b)に示す車両情報を処理した状態を示す。
図11に示すように、渋滞度認識判定手段12cは、信号待ちのための停車を渋滞と混同しないように、渋滞度認識判定値よりも短い渋滞区間における渋滞度I〜IVを破棄する。
しかし、一つの信号機を通過するために複数回の停車が強いられるような場合、その区間は、渋滞又は混雑として認識されるべきであるが、図11(a)に示すように走行と停車とを機敏に繰り返すメリハリのある運転が行われた場合には、渋滞度認識判定手段12cにより渋滞度I〜IVが破棄され、快速状態であると判断されてしまう。
なお、図12(a)に示すように、走行と停車とを緩慢に繰り返す運転が行われた場合、渋滞度認識判定手段12cは、渋滞度I〜IVを破棄することなく、渋滞状態を認識することができる。
そこで、渋滞度認識判定手段12cは、一つのリンクで複数回の停車を認識した場合、隣接する車両停止位置を結ぶ区間であり、その中でも距離が第一距離以下となる短い区間(以下、「短渋滞区間」とする。)を抽出するようにする。
「第一距離」は、車両停止位置間の距離が大きい区間を例外処理の対象から排除するためのものであり、連結渋滞判定距離よりも大きく、渋滞度認識判定値よりも小さな値が設定される。この例外処理は、渋滞度認識判定手段12bによって連結されることなく、渋滞度認識判定手段12cによって破棄されてしまう渋滞区間における渋滞度を調整するための処理だからである。
図11を参照すると、三番目の渋滞度と九番目の渋滞度との間の区間L1、及び、九番目の渋滞度と十五番目の渋滞度との間の区間L2が、短渋滞区間に該当する。なお、隣接する車両停止位置を結ぶ区間の距離が第一距離より大きくなる場合、渋滞度認識判定手段12cは、その区間を短渋滞区間とすることはない。そのような区間を渋滞又は混雑として認識する必要がないからである。
次に、渋滞度認識判定手段12cは、孤立する短渋滞区間(以下、「孤立短渋滞区間」とする。)の距離が第二距離以上となる場合、或いは、短渋滞区間が複数隣接する場合には、それらを連結した区間(以下、「連結短渋滞区間」とする。)の距離が第二距離以上となる場合に、その短渋滞区間又はその連結短渋滞区間における渋滞度を調整する。
「第二距離」は、車両停止位置が短い区間だけに集中するような場合を例外処理の対象から排除するためのものであり、孤立短渋滞区間又は連結短渋滞区間が抽出されたときであっても、渋滞度認識判定手段12cが、原則に従って、信号待ち等の一時的な停止と渋滞とを混同しないよう、それらの区間の渋滞度を破棄できるようにする。
次に、図13を参照しながら、この例外処理により渋滞度の調整が行われる場合について説明する。
図13(a)は、一つのリンク内で車両が八回停止した状態を示す車両情報であり、停止地点がP1〜P8で示される。なお、ステップS1における連結渋滞判定距離は、30メートルであり、ステップS2における渋滞度認識判定値は、300メートルであり、第一距離及び第二距離は、それぞれ、200メートル、250メートルに設定されているものとする。
最初に、渋滞度認識判定手段12cは、第一距離(200メートル)以下の短渋滞区間として、P1−P2間(140メートル)、P2−P3間(130メートル)、P4−P5間(150メートル)、P5−P6間(70メートル)、P6−P7間(160メートル)、P7−P8間(12メートル)の六つの区間を抽出する。
なお、渋滞度認識判定手段12cは、第一距離(200メートル)より長いP3−P4間(800メートル)を短渋滞区間として抽出しない。停止間隔が大きいため渋滞区間として認識する必要がないからである。
次に、渋滞度認識判定手段12cは、P1−P3間、P4−P8間を連結短渋滞区間として認識し、それぞれの距離、270(130+140)メートル、500(150+70+160+120)メートルと第二距離(250メートル)と比較する。
その後、渋滞度認識判定手段12cは、双方の連結短渋滞区間の距離が第二距離より大きいため、それら区間の渋滞度を渋滞度Iに設定する。
次に、この例外処理の理解のため、渋滞度の調整が行われない場合を図13(a)の場合と対照させながら説明する。
図13(b)は、一つのリンク内で車両が七回停止した状態を示す車両情報であり、停止地点がP10〜P16で示される。なお、連結渋滞判定距離、渋滞度認識判定値、第一距離及び第二距離の設定は、図13(a)の場合と同じものとする。
最初に、渋滞度認識判定手段12cは、第一距離(200メートル)以下の短渋滞区間として、P10−P11間(140メートル)、P11−P12間(50メートル)、P13−P14間(150メートル)、P15−P16間(120メートル)の四つの区間を抽出する。
なお、渋滞度認識判定手段12cは、第一距離(200メートル)より長いP12−P13間(880メートル)、P14−P15間(230メートル)を短渋滞区間として抽出しない。停止間隔が大きいため渋滞区間として認識する必要がないからである。
次に、渋滞度認識判定手段12cは、P10−P12間を連結短渋滞区間として認識し、また、P13−P14間、P15−P16間を孤立短渋滞区間として認識し、それぞれの距離、190(140+50)メートル、150メートル、120メートルと第二距離(250メートル)とを比較する。
その後、渋滞度認識判定手段12cは、連結短渋滞区間及び孤立短渋滞区間の距離が全て第二距離(250メートル)より小さいため、それら区間の渋滞度を渋滞度Iに設定することなく、原則通り、それら区間の渋滞度を渋滞度Vで置き換えるようにする。
以上のような例外処理により、渋滞度認識判定手段12cは、渋滞度認識判定値よりも短い区間で渋滞状態を認識しても、その区間の距離が短いために信号待ち等による停滞であって渋滞ではないと判断してその渋滞区間を破棄することで(渋滞度を渋滞度Vに置き換えることで)、車両が一つの信号を通過するために停止を繰り返しており本来的には渋滞状態として認識されるべき区間を見落としてしまうのを防止することができる。
なお、上述の例外処理において、渋滞度認識判定手段12cは、短渋滞区間の渋滞度を渋滞度Iに調整するが、他の渋滞状態(渋滞度II〜IV)に調整するようにしてもよく、特別な専用の渋滞度(例えば、渋滞度VII)に調整するようにしてもよい。車両が一つの信号を通過するために停止を繰り返すような渋滞状態に関する情報の有効利用を図るためである。
〔ステップS4〕
ステップS4では、リンク割り当て手段12dが、渋滞度認識判定後の渋滞度をリンクに割り当てる。リンクに割り当てることで、リンク毎に渋滞度を検出することができる。リンクの渋滞度は、一つのリンク全体が単一の渋滞度の場合もあるし、複数の渋滞度を含んでいる場合もある。そこで、リンク割り当て手段12dは、リンク全体の渋滞度(以下、「代表渋滞度」とする。)と一つのリンク内の複数の渋滞度を渋滞度毎に示す部分渋滞度とを生成する。但し、リンク長が短い場合には部分渋滞度を生成する必要性が低いので、リンク長が所定距離以上の場合に限って部分渋滞度を生成するようにする。また、リンク内の渋滞度が単一である場合には、部分渋滞度を生成しない。
ステップS4における「所定距離」は、図5のパラメータテーブル16に予め道路種別毎に部分渋滞作成対象リンク長として登録されている。例えば、一般道の場合、部分渋滞作成対象リンク長はL5メートルであり、リンク長がL5メートル以上であれば、部分渋滞度を作成する。
図14は、リンク割り当て手段12dが代表渋滞度と部分渋滞度とを作成する様子を示す図である。図14(a)は、リンク長が何れも部分渋滞作成リンク長以上の場合を示し、図14(b)は、リンク長が何れも部分渋滞作成対象リンク長未満の場合を示す。なお、図14(a)、図14(b)は、何れも遅い状態の渋滞度に関するものであるが、早い状態の渋滞度も同様に処理できる。
図14(a)の上段の渋滞度は、ステップS3の渋滞度認識判定後の渋滞度であり、渋滞度は、リンクA〜Eで区切られている。リンクAには、渋滞度I及びVが含まれるので、リンク割り当て手段12dは、二つの渋滞度I及びVからリンクAの代表渋滞度を決定する。リンクAの代表渋滞度は、リンクAにおける車速の平均値、中央値等の種々の統計的処理を採用できるが、本実施形態では、車速の調和平均により代表渋滞度を決定する。
従って、リンク割り当て手段12dは、次のようにしてリンクAにおける車速の調和平均を算出する。
リンクAにおける車速の調和平均=リンクAの距離/(渋滞度Iの距離/渋滞度Iの速度+渋滞度Vの距離/渋滞度Vの速度)
この結果、図14(a)では、リンクAの代表渋滞度は、渋滞度Iとなる。
リンクBは、渋滞度Vのみで構成されるので、渋滞度Vが代表渋滞度となる。リンクCは、渋滞度III及びVで構成されるので、それら車速の調和平均から渋滞度IVが代表渋滞度となる。リンクDは、渋滞度Iのみで構成されるので、渋滞度Iが代表渋滞度となる。リンクEは、渋滞度I、II及びIIIで構成されるので、それら車速の調和平均から渋滞度IIが代表渋滞度となる。
次いで、リンク割り当て手段12dは、原則的に、渋滞度認識判定後の渋滞度を使用して部分渋滞度を生成し、連続した渋滞状態(渋滞度I〜IVの何れでもよい。)が検出された場合にはそれらが一つの渋滞区間となるよう調和平均を算出して部分渋滞度を生成する。
リンクAは、渋滞度I及びVを部分渋滞度とする。リンクBは、部分渋滞度を有さない(代表渋滞度と部分渋滞度とが同じになる。)。リンクCは、渋滞度III及びVを部分渋滞度とする。リンクDは、部分渋滞度を有さない(代表渋滞度と部分渋滞度とが同じになる。)。リンクEは、連続する渋滞度I〜IVを一つの渋滞区間にし、車速の調和平均から渋滞度IIを導出した上で、渋滞度II及びVを部分渋滞度とする。
続いて、リンク長が何れも部分渋滞作成対象リンク長未満の場合について説明する。なお、リンク長が部分渋滞作成対象リンク長未満であっても、代表渋滞度の生成については同じなので説明を省略する。
図14(b)のリンク長は、全て部分渋滞作成対象リンク長未満であるので、リンク割り当て手段12dは、部分渋滞度を生成しない。従って、図14(b)に示すように、全体渋滞度と部分渋滞度とは同じものとなる。
リンクに割り当てられた代表渋滞度及び部分渋滞度は、車両情報としてプローブECU12のRAMや地図データ記憶装置15の一部に記憶される。
上述のように渋滞度をリンクに割り当てることで、渋滞度をリンク(道路)に対応付けて取り扱うことが可能となる。また、割り当て後もリンク内における部分的な渋滞を取り扱うことができるので、詳細に交通情報を把握することができる。
〔ステップS5〕
ステップS5では、リンク端補正手段12eが個々の車両の車両情報を用いてより高精度の交通情報を生成する。ステップS4までの処理により取得した車両情報では、個々の車両の挙動により渋滞箇所が異なることになる。そこで、ステップS5では、複数の車両の車両情報を用いて、各車両の挙動に起因するズレを補正する。
個々の車両の車両情報を集計して処理する場合、車両情報サーバ5のリンク端補正手段12eがリンク端を補正することとし、処理結果を各車両の位置に応じて配信することが好適となる。本実施形態では、各車両が車両情報を車両情報サーバ5に送信し、車両情報サーバ5のリンク端補正手段12eが高精度の交通情報を生成する。
なお、各車両のプローブECU12がリンク端を補正するようにしてもよい。この場合、プローブECU12は、周知の車車間通信及び路車間通信等により、車両間で車両情報を送受信する。
ステップS4においてリンク毎に代表渋滞度が得られている。複数の車両が同じリンクを走行した場合、それぞれが代表渋滞度を生成する。図15(a)は、複数の車両が生成した同じリンクの代表渋滞度を示す。あるリンクについて、車両Aは、渋滞度IVを検出し、車両Bは、渋滞度Iを検出し、車両Cは、渋滞度IIを検出し、車両Dは、渋滞度Vを検出し、車両Eは、渋滞度IIを検出している。リンク端補正手段12eは、これらの車両情報に基づいて、例えば、調和平均を求めることにより、そのリンクの渋滞度を生成する。その結果、図15(a)では、渋滞度IIが導出される。
続いて、リンク端補正手段12eは、複数の車両の車両情報からリンク内の詳細な渋滞度を生成する。リンク端補正手段12eは、各車両が出力する部分渋滞度の先頭位置及び末尾位置から、あるリンクにおいて部分的に渋滞している箇所をグループ化する。
図15(b)は、複数の車両の車両情報から生成された部分渋滞度及びそのグループ化の様子を示す図である。リンク端補正手段12eは、各車両の部分渋滞度を重畳させて、渋滞箇所が重なっている部分を同じ渋滞グループにグループ化する。
図15(b)では、車両Aの部分渋滞度は、渋滞度Iの二つの渋滞箇所A1、A2を有し、車両Bの部分渋滞度は、渋滞度Iの一つの渋滞箇所B1を有し、車両Cの部分渋滞度は、渋滞度IIの一つの渋滞箇所C1を有し、車両Dの部分渋滞度は、渋滞度Iの二つの渋滞箇所D1、D2を有する。
各車両が示す渋滞箇所を比較すると、A1及びB1、B1及びC1、並びに、C1及びD1が一部で重複している。リンク端補正手段12eは、このように渋滞箇所が重複している部分の先端部(A1の右端)から後端部(C1の左端)までを一つの部分渋滞グループとする。
同様に、A2及びD2で渋滞箇所が重複しているので、リンク端補正手段12eは、渋滞箇所が重複している部分の先端部(A2の右端)から後端部(D2の左端)までを一つの部分渋滞グループとする。図15(b)では、二つの部分渋滞グループを#1及び#2とした。
このように、複数の車両の部分渋滞度をグループ化することで、車両の挙動に起因する渋滞箇所のズレを除去することができる。
しかしながら、複数の車両のうちの一台でのみ渋滞箇所が検出される場合にはグループ化は行われない。図15(c)は、図15(b)と同様に各車両の部分渋滞度に渋滞箇所を含むが、車両Cが通知する渋滞箇所C1は、他の車両が通知する渋滞箇所の何れとも重複しない。このように、一台でのみ孤立した渋滞箇所が検出される場合、リンク端補正手段12eは、その渋滞箇所をグループ化しないようにする。渋滞箇所の過剰な連鎖を防止するためである。
なお、一つのリンクに複数の渋滞グループが生成される場合、サンプル数(渋滞箇所を検出した車両の数)が多い渋滞グループを優先的に採用する。また、サンプル数が同数の場合、渋滞箇所の距離がより長い渋滞グループを優先的に採用する。
次に、渋滞グループの先頭位置及び末尾位置について説明する。複数の車両の部分渋滞度から渋滞グループを生成しても、そのリンクを走行する全ての車両から車両情報を取得したわけではないので、渋滞の先頭位置及び末尾位置が正確に検出できるわけではなく、また、渋滞位置は変動するものでもある。
そこで、便宜上、渋滞の先頭位置、末尾位置及び渋滞度を次のように決定する。
(a)渋滞先頭位置:複数の車両のうち最もリンク終端に近い位置
(b)渋滞末尾位置:各車両の渋滞末尾位置の算術平均
(c)渋滞度:各車両の部分渋滞度の調和平均
図16(a)は、渋滞グループの先頭位置、末尾位置及び渋滞度を説明するための図である。車両Aが通知する渋滞の末尾位置はリンク終端からaメートルであり、車両Bが通知する渋滞の末尾位置はリンク終端からbメートルであり、車両Cが通知する渋滞の尾位置はリンク終端からcメートルであり、車両Eが通知する渋滞の末尾位置はリンク終端からeメートルである。なお、車両Dは、渋滞箇所を通知していないので、リンク長dが渋滞の末尾位置として用いられる。従って、渋滞末尾位置は、a〜eの算術平均として求められる。なお、リンク終端とは、矢印の先端側である。
また、車両Aは、渋滞度Iを通知し、車両Bは、渋滞度Iを通知し、車両Cは、渋滞度IIを通知し、車両Eは、渋滞度IIを通知している。従って、渋滞グループの渋滞度は、それらの調和平均により、渋滞度Iとされる。
次いで、リンク端補正手段12eは、部分渋滞度のリンク端の渋滞度を補正する。なお、代表渋滞度は、リンク全体を単一の渋滞度で表すため、リンク端の渋滞度を補正する必要がない。
また、本実施形態では、複数の車両の渋滞度をグループ化した後に、リンク端を補正するが、各車両の部分渋滞度におけるリンク端を補正した上でグループ化を行うようにしてもよい。
図16(b)は、部分渋滞度のリンク端の補正を説明するための図である。リンク端補正手段12eは、リンク終端から所定距離以内の渋滞度を、隣接している渋滞度で置き換える。リンク端補正手段12eは、ステップS3における例外処理で認識された渋滞区間を補正対照から除外するようにしてもよい。
ステップS5における「所定距離」は、図5のパラメータテーブル16に予めリンク端補正対象範囲として登録されている。リンク端の補正は、原則的に、信号機のあるリンクの場合に必要となるため、リンク端補正対象範囲は、一般道についてのみ登録されている。
図16(b)の左図では、リンク終端からリンク端補正対象範囲内に渋滞度Vの短い区間が含まれるので、渋滞度Iによりリンク終端までの渋滞度Vを置き換える。一方、図16(b)の右図のように、リンク終端からリンク端補正対象範囲内に渋滞度Iの区間全てが含まれていないので、渋滞度Iの置き換えは行われない。
このように、リンク終端側にある渋滞度Vの短い区間は、信号待ちをしているものの先頭車両ではないため、リンク終端を通過する際に車速が上昇した車両が通知する車両情報に起因するが、実際には、リンク終端まで渋滞が継続している場合が多い。そこで、図16(b)の左図のように、リンク終端を補正することで、渋滞箇所の先頭位置をより正確に検出できるようにする。
同様に、リンク端補正手段12eは、部分渋滞の先頭位置がリンク始端から所定距離内にある場合、その部分渋滞度を破棄するようにする。
図16(c)の左図では、リンク始端からリンク端補正対象範囲内に渋滞度Iの短い区間が含まれるので、その区間の渋滞度Iを破棄する。また、図16(c)の右図のように、リンク始端からリンク端補正対象範囲内に渋滞度Iの区間全てが含まれていないので、渋滞度Iの破棄は行われない。
このように、リンク始端側にある渋滞度Iの短い区間は、一つ前のリンクで信号待ちしていた車両の加速が十分でないためリンク始端を通過する際に車速が上昇していない車両が通知する車両情報に起因するが、実際には、渋滞が発生していない場合が多い。そこで、図16(c)の左図のように、リンク始端を補正することで、渋滞箇所でないリンク始端が渋滞しているものと認識されないようにする。
また、複数の車両の渋滞度を統計処理することで、各車両が個別に通知する渋滞位置や渋滞度を平滑化し、そのリンクのより正確な交通情報を作成できるようにする。
以上のように、本実施形態の交通情報作成方法は、信号機に従った停止等、瞬間的な車速の変化による影響を除去することで、プローブカーにより収集された車両情報に基づき、より正確な交通情報を作成することができる。