JP5023763B2 - クリンカ中の塩素及びアルカリ成分低減方法、並びにセメント組成物中の塩素及びアルカリ成分低減方法 - Google Patents
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Description
また、セメントに含まれるアルカリ成分は、セメントに含有されるアルカリに由来する水酸化アルカリ(NaOHおよびKOH)とある種のシリカ鉱物を含有する骨材が反応するアルカリシリカ反応(ASR)を招き、コンクリートに異常な膨張が生じ、さらにそれに伴ってひび割れが発生する原因となっている。
従って、セメント組成物中に含有される塩素やアルカリ成分の低減が望まれている。
また、各種産業廃棄物を、セメント製造時の原料の一部として用いて、一般廃棄物への再利用が盛んに進められているが、これらの一般廃棄物も、通常塩素、アルカリ成分が比較的多く含まれているので、セメント製造上及びセメント品質上好ましいものではない。
また、アルカリ成分はJIS規格で、Na2Oeqとして0.75質量%以下と規定されている。
また、ダスト等を水洗する設備により、ダストを溶解槽で温水と混合して、塩素等を溶解させた後、その溶液を脱水して塩素を削減して、セメント原料としている。
従って、このような突発的な状況における焼成後のクリンカから塩素・アルカリ成分を削減できる方法が望まれていた。
更に、本発明の目的は、焼成後のクリンカ中の塩素やアルカリ成分がJIS規格を越えた量で含有していても、焼成後のクリンカから塩素やアルカリ成分をJIS規格以下に低減することができる、クリンカ中の塩素およびアルカリ成分削減方法を提供することである。
また本発明の他の目的は、当該クリンカを用いることでセメント中の塩素およびアルカリ成分を同時に削減することができる、セメント中の塩素およびアルカリ成分削減方法を提供することである。
すなわち本発明のクリンカ中の塩素及びアルカリ成分低減方法は、クリンカを、該クリンカ質量の10倍の質量の水で洗浄することにより、塩素及びアルカリ成分を同時に除去することを特徴とする、クリンカ中の塩素及びアルカリ成分低減方法である。
好適には、前記クリンカは、焼成後のクリンカであって、塩素含有量及び/又はアルカリ成分含有量がJIS規格の数値を超えているクリンカであることを特徴とするクリンカ中の塩素及びアルカリ成分低減方法である。
好適には、前記、洗浄はクリンカと石膏とを粉砕混合する直前に行うことを特徴とする、セメント組成物中の塩素及びアルカリ成分低減方法である。
その結果、鉄筋コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨を腐食させることなく、またアルカリシリカ反応を誘発することもなくひび割れを防止することが可能となる。
本発明のクリンカ中の塩素及びアルカリ成分除去方法は、クリンカを水で洗浄することにより、クリンカ中の塩素やアルカリ成分を除去できるものである。
以下に詳細にセメントの製造に用いるクリンカを水で洗浄することを説明する。
洗浄方法としては、クリンカが水で洗浄できれば特に限定されないが、例えば、クリンカを水中に浸漬させる方法、クリンカを流水で洗浄する方法、クリンカに水を散水する方法、等があげられる。
特に本発明においては、クリンカは焼成後のクリンカ、例えば、クリンカ焼成中に焼成炉からコーチングが脱落し、これにより塩素及び/又はアルカリ成分がJIS規格を超えてしまったクリンカが好適に適用することができる。
粗粉砕して大きさを小さくすることにより、水と接するクリンカの表面積が大きくなるとともに内部へ水が浸透しやすくなるため塩素やアルカリ成分をより削減することができるようになる。
該水の温度は、特に限定されず、通常は水道水等を用いることができる。
水温が高いほど塩素やアルカリ成分の溶解度が高くなるが、クリンカの水和反応も進行してしまうため、適宜状況に応じて、設定することができる。
浸漬させる時間は、水温、クリンカ量に応じて適宜設定すればよい。
次いで、セメント組成物粉末を製造するには、セメントクリンカにセメントの硬化速度を調整する機能を有する石膏を加え、粉砕して粉末状として、セメント組成物を調製する。
本発明においては、仕上げ工程において水洗されたクリンカと石膏とを混合するものである。
該粉砕機は、粉砕によりミル内の粉砕温度が上昇するので、ミルに投入される直前にクリンカを水洗することでクリンカは湿潤するが、直ちにミルに投入するので乾燥させることができる。
該仕上げ粉砕機は、粉砕によりミル内の粉砕温度が上昇するので、ミルに投入される直前にクリンカを水洗することでクリンカは湿潤するが、直ちにミルに投入するので乾燥させることができる。
好ましくは、予備粉砕直前にクリンカを水洗するかしないかに係らず、前記仕上げ粉砕機で粉砕する直前に水洗されることがより望ましい。
得られた粉砕混合物はセパレータに導入され、所望の粒度範囲の粉末がポルトランドセメントとして得られる。
必要に応じて、セパレータで所望の粒度範囲に調整されたセメント粉末に、フライアッシュや高炉スラグ粉末を添加して、混合機で均一に混合して、フライアッシュセメントや高炉セメントを調製することもできる。
(実施例1)
表3中の比較例1に示される組成と同様の組成を有し、表1及び図2に示す「粒度分布1」(但し、受皿(0.075mm以下の5%部分)は除く)を有する「工場クリンカ」を、図1に示すように、ロートにろ紙No2をセットして、クリンカを静かに投入した後、該クリンカ質量の10倍の質量の蒸留水を、該ロートの上部から散水して、洗浄を行った。
その際、該ロートはアスピレータによって吸引濾過されているため、洗浄蒸留水が流下した後、直ちに該クリンカを130℃で24時間乾燥した。
該洗浄・乾燥したクリンカをジョークラッシャー粉砕し、次いでブラウンミル粉砕し、更にボールミル粉砕した(図3)。
次いで、得られた該粉砕後のクリンカに、含有されるSO3量が2質量%となるように二水石膏(住友大阪セメント岐阜工場;排脱二水石膏、SO3=45.13%)を添加して混合し、仕上げ粉砕して各セメントを調製した。
表1及び図2に示す粒度分布1を有する上記「工場クリンカ」をジョークラッシャー粉砕して、JIS篩5mm(篩目)全通とした。
得られたクリンカの粒度分布を「ジョークラッシャー粉砕クリンカ(粒度分布2)」(但し、受皿(0.075mm以下の5%部分)は除く)として、表1及び図2に示す。
なお、クリンカの粒度分布とは、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験」に準拠してJIS篩によって測定した値の分布である。
当該「ジョークラッシャー粉砕(粒度分布2)」したクリンカを、実施例1と同様にして洗浄、乾燥した。
次いで、該洗浄・乾燥したクリンカを、ブラウンミル粉砕し、次いでボールミル粉砕し(図3)、該粉砕後のクリンカを用いて実施例1と同様にして、セメントを調製した。
表1及び図2に示す粒度分布2を有する上記「ジョークラッシャー粉砕(粒度分布2)クリンカ」を、ブラウンミル粉砕した。
得られたクリンカの粒度分布を「ブラウンミル粉砕クリンカ(粒度分布3)」として、表1及び図2に示す。
なお、該粉砕したクリンカの粒度分布は、レーザー回折式粒度分布計(マイクロトラックMT3300EX、日機装株式会社製)にて測定した分布である。
当該「ブラウンミル粉砕クリンカ(粒度分布3)」したクリンカを、実施例1と同様にして洗浄、乾燥した。
次いで、該洗浄・乾燥したクリンカを、ボールミル粉砕し(図3)、該粉砕後のクリンカを用いて実施例1と同様にして、セメントを調製した。
表3に示す組成を有し、実施例3中の「ブラウンミル粉砕クリンカ(粒度分布3)」を、そのまま比較例として用いた。
該クリンカを用いて、実施例1と同様にして、セメントを調製した。
実施例1〜3及び比較例1で得られたクリンカ中の水酸化カルシウム量をTG−DTA(熱質量−示差熱分析装置;(製品名Thermo Plus2・株式会社リガク製;測定条件 10℃/分で昇温、空気フロー 150μl/分))を用いて測定した。
その結果を表3に示す。
実施例1〜3及び比較例1で得られたクリンカ中の塩素、酸化ナトリウム、酸化カリウムの含有量をJIS R 5202に準じて定量した。
その結果を表3に示す。
実施例1〜3及び比較例1より得られた各セメントを用いて、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して、各モルタルを調製した。
得られた各モルタルについて、前記JIS R 5201に準じて、強度及び凝結時間を測定した。
その結果を表3に示す。
更に、これらのクリンカを用いて得られたセメントの強度及び凝結時間は、洗浄前の比較例1のものとほぼ同等であった。
Claims (4)
- クリンカを、該クリンカ質量の10倍の質量の水で洗浄することにより、塩素及びアルカリ成分を同時に低減することを特徴とする、クリンカ中の塩素及びアルカリ成分低減方法。
- 請求項1記載の方法において、クリンカは、焼成後のクリンカであって、塩素含有量及び/又はアルカリ成分含有量が日本工業規格の数値を超えているクリンカであることを特徴とする、クリンカ中の塩素及びアルカリ成分低減方法。
- クリンカを、該クリンカ質量の10倍の質量の水で洗浄することにより塩素及びアルカリ成分を同時低減し、次いで、該洗浄後クリンカに石膏を添加して均一に粉砕混合することを特徴とする、セメント組成物中の塩素及びアルカリ成分低減方法。
- 請求項3記載の方法において、洗浄はクリンカと石膏とを粉砕混合する直前に行うことを特徴とする、セメント組成物中の塩素及びアルカリ成分低減方法。
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