JP5023692B2 - Icタグ用基材及びこのicタグ用基材を備えたicタグ - Google Patents
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また、樹脂フィルム等の軟包材にAl箔等の金属層を積層した包装材料からなるパウチ容器は、軽量で柔軟性、耐久性、ガスバリア性等に優れ、加工も容易で安価に製造できることから、食品や飲料のみならず、洗剤、化粧品等の主に液体製品の容器として広く使用されている。
そして、このような樹脂製あるいは金属製の各種容器には、商品名や内容物の成分、生産者、生産地、賞味期限等の所定の商品情報が、文字やバーコード等で表示されている。この種の商品情報の表示は、通常、容器や容器を包装する包装体に印刷されたり、ラベル等に印刷されて容器に貼付されるようになっている。
また、バーコード表示の場合、リーダで読み取るためにバーコード自体を容器表面に平面状に表示しなければならず、また、傷や汚れ等があると読み取り不能となってしまい、しかも、バーコードでコード化できる情報量は限られていることから、文字による表示の場合と同様に、商品情報を表示、認識する手段としては一定の限界があった。
ICタグは、非接触ICタグ、RFID(Radio
Frequency Identification)タグ、RFタグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを樹脂やガラス等で封止してタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末で、ICチップに所定の情報を記録して対象物にタグを取り付け、記録した情報を無線通信により読取装置(リーダ・ライタ)側でピックアップすることにより、ICチップに記録された情報を認識、表示するものである。
このようなICタグを用いることで、商品に関する種々の情報、例えば商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限・賞味期限等の種々の情報が記録可能となり、従来の文字やバーコードによる商品表示では不可能であった多種多様な商品情報であっても、小型・薄型化されたタグを商品に装着するだけで利用することが可能になった。
なお、ICタグは、電源を内蔵した能動型(アクティブタイプ)と電源を内蔵しない受動型(パッシブタイプ)があり、また、使用する交信周波数によって、135kHzや13.56MHzの周波数帯を使用する電磁誘導方式や、UHF帯や2.45GHz等の周波数帯を使用する電波方式などに分けられる。
具体的には、ICタグのすぐ後ろに金属が存在すると、リーダ・ライタから送信される信号がICタグのアンテナを認識できず、アンテナの性能が著しく劣化してしまい、電波のエネルギーをICタグのアンテナで受信することができなくなる。
また、電波は吸収され易い材料、物質が近くにあるとそこへ集中してエネルギーを与える性質があるため、電波吸収性の高い物質である水がICタグの後ろにあると、水が電波のエネルギーをほとんど吸収してしまう。
特に、UHF帯や2.45GHz等の高周波数帯を使用する電波方式のICタグでは、135kHzや13.56MHz帯域を使用する電磁誘導方式の場合と比べて、通信距離は長くなる反面、水による吸収や金属による影響等によって通信特性が大きく損なわれやすいという問題があった。
また、ICタグの通信特性はアンテナサイズによる利得によって決定されることから、通信距離を大きく確保しようとすれば、アンテナサイズが大きくなり、結果としてタグ全体のサイズが大型化し、タグの小型化が困難となるという問題もあった。
例えば、2.45GHzの周波数帯を使用する電波方式のICタグの場合、電波が金属容器に反射することを利用して、ICチップを交信周波数の1/4波長だけ容器外面から離すことで、水分による損失(吸収)や、金属によるアンテナ性能の劣化を低減することができる。具体的には、ICタグを容器外面から約30mm程度離間させることで、容器内容物による損失を低減させることができ、また、金属容器によるアンテナ性能の劣化を防止することができる。従って、この場合には、ICチップとアンテナを搭載するタグ基材を30mmの厚みに形成すれば、水分や金属の影響を受けることなく通信可能なICタグを構成できることになる。
ICタグを容器に取り付けると、ICタグが発生する磁束は容器を貫通する方向に生じることになる。このため、タグを金属容器に取り付けた場合、アンテナ部が発する電磁波が金属容器側に吸収される熱損失等が生じてしまい、タグの通信特性が損なわれる事態が生じる。
そこで、従来提案されている金属容器専用のICタグは、図14に示すように、ICタグ220の金属容器130と対向する側に、シート形状等に形成した磁性体(高透磁率体)221や誘電体が配設されるようになっており、これによって、ICタグ220が発する磁束を磁性体221内に通過させて、金属容器130側に渦電流が発生することを防止するようになっていた。
この提案によれば、絶縁性皮膜で被覆した導電性超微粉末からなる塗料を樹脂バインダに添加・混合することにより、樹脂材料の成形性・加工性を維持しつつ、樹脂材料の高誘電率化が可能となり、これによって高周波雑音の影響を低減して、無線LANや非接触ICカードの内蔵アンテナ用の電波吸収体の小型化・薄型化が可能となるとされている。
まず、タグをスペーサ等によって容器から所定距離だけ離間させる方法は、水分や金属の影響を低減できるとしても、タグを搭載する基材の厚みが大型化してしまい(例えば2.45GHzのICタグの場合約30mm)、容器に取り付けた場合、タグが容器から大きく突出してしまうことになり、現実のタグ構成としての採用は困難であった。
また、このような従来の金属専用のICタグでは、タグ自体が金属専用に設計・構成されたもので、既存のICタグを金属容器用に使用可能とするものではなかった。すなわち、通常の汎用タグについて金属容器に使用した場合の問題点を解決するものではなかった。
ICタグは、安価で大量生産される汎用タグを使用してこそ、低コストで小型軽量かつ大記憶容量の無線通信手段として使用できるという特徴を最大限に生かすことができるものである。
従って、厚みが30mmを超えるような肉厚のタグや、金属専用で大型・複雑な構成で、しかも樹脂製容器への対応ができないタグでは、汎用タグのメリットを著しく減殺するものであった。
しかも、同特許文献4には、1MHzの比誘電率が45.7であった等の開示があるのみであり、無線LANや電波方式ICタグで使用されるGHz帯の交信周波数にどのように対応できるかは不明であり、上述したようなICタグの問題を解消し得るものではなかった。
また、本発明のICタグ用基材は、前記機能層は、比誘電率が80以上である構成としてある。
より具体的には、本発明のICタグ用基材は、前記機能層が、Alからなる扁平形状の金属粉を含有する構成とすることができる。
また、本発明のICタグ用基材は、前記誘電率層は、比誘電率が90以上であり、前記透磁率層は、比透磁率が3.8以上である構成としてある。
その基材内の電波路を長くするには、基材内の屈折率を大きくすることで確保できると考えられ、屈折率は、その部材の誘電率と透磁率によって求められ、誘電率と透磁率が高いほど屈折率は大きくなる。
本発明では、基材層に積層される機能層を設け、この機能層を所定の誘電率及び透磁率となるように設定することで、基材内の屈折率を高め、これによって電波路を長く確保するようにしてある。
機能層の比誘電率、比透磁率は、後述するSパラメータ反射法により測定することができる(電気通信学会技法Vol.84 No.310)。
また、このような本発明のICタグ用基材では、ICタグが受信する電波はタグが取り付けられる金属面(金属容器)で反射することによって通信距離を稼ぐことが可能となる。
また、ICタグが受信する電波を金属容器で反射させることによって通信距離を伸ばすことができ、アンテナサイズを小型化しても所定の通信距離を確保することが可能となり、結果として、タグサイズの小型化を図ることができる。
すなわち、本発明では、基材を特性の異なる多層構造とし、各層の比透磁率と比誘電率を所定の値に設定することで、多層基材内の屈折率を高めることができ、ICタグで送受信される電波路を長く確保して、ICタグを容器から所定距離だけ離間させるのと同様の効果を得ることができる。また、金属容器を積極的に利用して、タグが受信する電波を金属面で反射させることで通信距離を確保することができる。
このように、本発明のICタグ用基材を介することで、どのようなICタグをどのような容器に取り付けても、また、容器内に内容物があってもなくても、ICタグの通信利得を常に良好な状態に確保することができ、正確な無線通信が可能となり、既存の汎用タグであってもそのまま使用するこができ、汎用性、信頼性に優れた、薄型化・小型化されたICタグを実現することが可能となる。
また、本発明のICタグ用基材は、前記透磁率層が、Al、Fe−Si、Cu、Fe、Ni、フェライトのうち少なくとも一の磁性材料からなる扁平形状の金属粉、もしくはTiO2、Fe2O3C、フェライトのうち少なくとも一の磁性材料からなる金属酸化物粉を含有する構成とすることができる。
ここで、本発明では、好適な材料から選択した金属を扁平形状の粉体とすることで、バインダとなる樹脂材料に満遍なく均一に混合させることができるようになっている。
このようにして、本発明のICタグ用基材では、使用するICタグの出力や周波数特性に対応した好適な誘電率、透磁率を備えた機能層を設定することができ、汎用性、拡張性に優れたICタグ用基材を提供することができる。
さらに、本発明のICタグ用基材は、前記基材層が、不織布又は発泡樹脂からなる距離層を備える構成とすることができる。
また、この樹脂層に更に積層し、又は樹脂層に代えて、不織布や発泡樹脂からなる距離層を備えることができる。
そこで、本実施形態では、機能層の基材層となるPET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層を、ICタグを容器から離間させる距離層(空気層)として機能させ、また、基材層に不織布,発泡樹脂等を積層して距離層とするようにしてある。
また、不織布や発泡樹脂の特長は設計の自由度にあり、所望の厚みと大きさの距離層を容易かつ低コストで形成することが可能となる。
なお、距離層としては、同様の観点から、不織布や発泡樹脂以外にも、例えば樹脂塗料を格子状に塗布することで内部に空洞を有することで形成でき、これを本発明の距離層として採用することもできる。
そして、フィルム状等に形成された樹脂層には、不織布等からなる距離層を更に積層形成可能であり、また、樹脂層の表面に電磁波シールド塗料等を塗布することも容易に行える。
このように、PET樹脂等のプラスチックからなる樹脂層は、本発明に係る距離層として、また、機能層を積層する基材層として好適に機能させることができる。
このような構成からなる本発明のICタグ用基材によれば、機能層を支持する基材層として、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂層又は熱可塑性樹脂層を備えることができる。そして、このような熱硬化性樹脂層又は熱可塑性樹脂層を、ICタグを容器側から離間させる距離層としても機能させることができる。
一般に、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂は、PETフィルム等の基材表面に塗工することができ、その塗工厚のコントロールも容易である。また、基材にPETフィルムより柔らかい樹脂を選定することで、基材層をよりフレキシブルにすることが可能となる。また、このような熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂は、機能層の塗工の下地としての役割も果たすことができ、さらに、上述した不織布層の場合と同様に、ICタグを容器から離間させる距離層として機能させることができる。
そこで、本発明では、機能層の基材となる基材層として、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂層又は熱可塑性樹脂層を採用し、基材層及び距離層として機能させることができる。
このような構成からなる本発明のICタグ用基材によれば、機能層を支持する基材層として、Al箔層等からなる金属層を備えることができ、この金属層を、基材として構成することができる。
本発明のICタグ用基材によれば、所定の屈折率を有する機能層を備えることで、ICタグを金属に取り付けても通信特性が劣化しない。このため、基材層に金属層を積層したり、基材層自体を金属により構成したりすることも可能となる。
本発明のICタグ用基材によれば、所定の屈折率を有する機能層を備えることで、容器に水が充填されてもその影響を充分に抑制・低減でき、良好な通信特性が得られる。ところが、例えばPETボトル容器のキャップの表面や裏面にICタグが備えられるような場合には、ボトル容器に充填される水の水位、すなわち、水面とICタグとの距離によっては、水の影響を考慮する必要がある。
しかしながら、水がボトル口部一杯まで充填された場合、キャップに取り付けられたICタグと水面との距離が5mm未満に狭まることがある。
そこで、このような場合には、ICタグ用基材の基材層としてAl箔等からなる金属層を備えることで、ICタグが受信する電波を金属層で反射させることができ、これによってボトル内の水の影響を排して良好な通信特性を得ることができる。
従って、金属層を備えた基材層は、特にPETボトル容器のキャップ部に取り付けられるICタグ用の基材として好適に用いることができる。
さらに、本発明のICタグは、ICチップと、アンテナと、これらICチップ及びアンテナが実装される基材とを備え、リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグであって、前記基材が、本発明のICタグ用基材からなる構成としてある。
電波方式のICタグは、電磁誘導方式のICタグと比較して、高周波数帯域を使用するために、金属による反射や水分による影響を受けやすく、電磁誘導方式タグのように、単にタグと容器の間に磁性体等を介在させるだけでは、通信特性の劣化を防止することができない。
本発明では、基材を構成する各層の比透磁率と比誘電率を所定の値に設定することで基材内の屈折率を高めて、タグの電波路を長く確保することによって、ICタグを容器から所定距離だけ離間させるのと同様の効果を得ることができるので、ICタグの電波の金属による影響も、水分による吸収も十分に防止でき、電波方式のICタグの通信特性を良好に維持・確保することができる。
また、実装するタグの通信特性や形状,大きさ等に応じて、各層の厚みを任意に設定・変更することができ、また、複数の機能層を任意の層数だけ積層することもできる。
さらに、機能層を有する基材を複数積層して一つのICタグ用基材を構成することもできる。
すなわち、容器全体を本発明に係るICタグ用基材で包装することもでき、また、容器中のICタグを実装する部位のみを本発明に係るICタグ用基材で包装するラベルとして使用することもでき、さらに、プラスチック容器自体を本発明に係るICタグ用基材で構成することもできる。
このようにして、本発明によれば、任意の形状、大きさ、用途等の樹脂容器や金属容器について、どのようなICタグを取り付けても、容器の内容物の有無にかかわらず、そのICタグの通信利得を良好に確保することができるICタグ対応容器として提供することができる。
これにより、小型・薄型で軽量であるという汎用のICタグの利点を何等損なうことなく、各種の樹脂容器や金属容器について使用してもICタグ本来の良好な通信特性を得ることができる、特に、PETボトル等の樹脂容器や、アルミニウム缶やスチール缶、ラベル缶、パウチ容器等の金属容器に好適なICタグ用基材を提供することができる。
[ICタグ用基材]
図1は、本発明の一実施形態に係るICタグ用基材を模式的に示す要部斜視図であり、(a)はICタグを実装する前の状態を、(b)はICタグを実装した状態を示している。
同図に示すように、本実施形態のICタグ用基材10は、ICタグ20が実装されてタグの一部を構成する基材であり、基材表面の所定の箇所にリーダ・ライタ(図示せず)との間で無線通信を行うICタグ20が取り付けられるようになっている。
ここで、本実施形態のICタグ用基材10は、ICタグ20を実装・支持するための基材であり、ICタグ20が実装可能な大きさであれば十分であるが、例えばPETボトルやラベル缶の包装体のように、被包装体となる容器の全体を包むように包装できる大きさに形成することもでき、また、容器の胴部に巻装等して容器の一部を包装できるように形成してもよい。
さらに、後述するように、ICタグ用基材10は、PETボトルのキャップの表面に取り付けたり、キャップ内に内蔵・埋設したりすることもでき(図6〜図9参照)、その場合には、ICタグ用基材10はキャップの一部を構成することになる。
すなわち、本発明のICタグ用基材10は、ICタグ20の一部を構成する基材として使用される他、樹脂容器のシュリンクフィルムやラベル缶のラベルのように、容器全体をフィルム状に形成したICタグ用基材10で包装することもでき、また、容器中のICタグを実装する部位のみをICタグ用基材10で包装するラベル等として使用することもでき、さらに、プラスチック容器自体を所定の厚みと強度を有する本発明のICタグ用基材10によって構成することもできる。
基材層11は、ICタグ用基材10の基材となる層であり、PET樹脂等で薄膜フィルム状に形成されている。
具体的には、基材層11は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の熱可塑性プラスチックにより形成される。
例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂を薄膜形成することで基材層11を形成することができる。熱可塑性ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを主成分とする共重合体又はブレンド等で、融点が約200〜260℃のものを使用でき、また、ポリエステル系樹脂被膜の厚みは、通常約5〜50μm程度である。
ICタグ用基材10としての厚みや強度、耐久性等を考慮すると、基材層11の厚みは5μmから100μm程度が好ましい。
この基材層11は、単層(1層)であってもよく、また、2層、3層等の多層であってもよい。多層の場合、延伸フィルムを熱接着や接着剤層を介して接着することで形成できる。
ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂は、基材等に塗工することができ、その塗工厚のコントロールも容易である。従って、PET樹脂等を基材としてその表面にポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂を塗工して基材層11を形成することができる。
また、このようなポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂は、機能層12の塗工の下地としての役割も果たすことができ、例えば、機能層12を複数積層する場合に、機能層12とポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂の基材樹脂層を交互に塗工・積層することができる(後述する図5に示す基材樹脂層11a参照)。
そして、このような熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる基材樹脂層を、後述する不織布層と同様に、ICタグ20を容器から離間させる距離層14として機能させることができる。
具体的には、機能層12を支持する基材層11として、Al箔層等からなる金属層を備えることができる。
本実施形態のICタグ用基材10では、後述する所定の屈折率を有する機能層12を備えることで、ICタグ20を金属に取り付けても通信特性が劣化しない。従って、基材層11に金属層を積層したり、基材層11自体を金属により構成することも可能となる。
金属層の厚みとしては、ICタグ用基材10としての厚みや強度、耐久性等を考慮すると、5μmから100μm程度が好ましい。
本実施形態のICタグ用基材10によれば、所定の屈折率を有する機能層12を備えることで、容器に水が充填されてもその影響を充分に抑制・低減でき、良好な通信特性が得られる。
ところが、例えばPETボトル容器のキャップの表面や裏面にICタグが備えられるような場合には(図6〜図9参照)、ボトル容器に充填される水の水位、すなわち、水面とICタグとの距離によっては、水の影響を考慮する必要がある。
しかしながら、水がボトル口部一杯まで充填された満注状態の場合、キャップに取り付けられたICタグと水面との距離が5mm未満に狭まることがある(後述する図9参照)。
そこで、このような場合には、ICタグ用基材10の基材層11としてAl箔等からなる金属箔層を備えることで、ICタグが受信する電波を金属箔層で反射させることができ、これによってボトル内の水の影響を排して良好な通信特性を得ることができる。従って、金属箔層等を備えた基材層11は、特にPETボトル容器のキャップ部に取り付けられるICタグ用の基材に好適である。
なお、ICタグと水面との距離をとるために、キャップ内に5mm程度の空間を持った中栓を設けてもよい。
なお、この基材層11は、適宜省略することも可能である。後述するように、本実施形態のICタグ用基材10は、ICタグ20を容器から離間させる距離層14を備えており(図3(d)参照)、この距離層14を基材として、距離層14に直接機能層12を積層形成できれば、基材層11は省略することができる。この意味では、基材層11は、距離層14の一部を構成する層と捉えることができ、不織布等からなる距離層14とともに、基材層11の厚みによってICタグ20を容器から離間させて、良好な通信特性を得ることができる。すなわち、距離層14とともに基材層11が備えられることで、ICタグ20は「距離層+樹脂層」の厚みによって容器から所定距離だけ離間させることができるようになる。
機能層12は、基材層11の表面に積層される層であり、所定の比誘電率と比透磁率を有している。
本実施形態では、図1及び図2に示すように、機能層12は、特性の異なる二つの層からなり、そのうち一層が、所定の誘電率を有する誘電率層12a、他の一層が、所定の透磁率を有する透磁率層12bとなっている。
そして、機能層12は、誘電率層12a及び透磁率層12b全体としての比誘電率と比透磁率の積が250以上となるように構成してあり、このような特性が得られるように、機能層12は、誘電率層12a及び透磁率層12b全体として比誘電率が80以上となるように構成してある。
このように、比透磁率と比誘電率を所定の値に設定した機能層12を備えることで、図2(b)に示すように、基材内の電波路を長く確保することができるようになる。
本実施形態では、簡単に計算できるようにΠ=εμ/ε0μ0とし、この値を指標とした。例えば、30mmの空気層を1mmで実現しようとするには、上記屈折率の式から、Π=900となるよう設定すれば良いと考えられる。
なお、機能層の比誘電率、比透磁率は、Sパラメータ反射法により測定することができる(電気通信学会技法Vol.84 No.310)。
以下、Sパラメータ反射法について概略を説明する。
Sパラメータ反射法による比誘電率、比透磁率の測定方法とは、試料に測定したい周波数の電波信号を垂直に入射した場合に、その反射量、透過量及び位相を測定することにより、複素比誘電率と複素比透磁率を計算より求める手法である。
具体的には、ネットワークアナライザと同軸管を用いて行い、測定手順は以下の通りである。
(1)完全反射測定(リファレンス)
まず、同軸管先端に金属板を付ける(試料は付けない)。
次に、同軸管にネットワークアナライザより測定したい周波数発信させS11及び位相を測定する。
ここで、S11とは、ネットワークアナライザが受信した電波強度とネットワークアナライザが発信した電波強度のことをいい、位相とは、ネットワークアナライザが受信した電波強度とネットワークアナライザが発信した電波の位相差のことをいう。
(2)疑似透過測定(リファレンス)
まず、同軸管先端に電波が透過しやすい治具をつける(試料は付けない)。
次に、同軸管にネットワークアナライザより測定したい周波数発信させS11及び位相を測定する。
(3)試料反射測定
まず、同軸管先端に金属板を付け、同軸管中側の金属板表面に試料を置く。
次に、同軸管にネットワークアナライザより測定したい周波数発信させS11及び位相を測定する。
(4)試料透過測定
まず、同軸管先端に電波が透過しやすい治具をつけ、同軸管中側の治具表面に試料を置く。
次に、同軸管にネットワークアナライザより測定したい周波数発信させS11及び位相を測定する。
以上のような4つの測定を行うことにより、計算によって複素比誘電率と複素比透磁率を導き出すことができる。
また、透磁率層12bとしては、例えば、樹脂材料等からなるバインダにAl、Fe−Si、Cu、Fe、Niのうち少なくとも一の磁性材料からなる扁平形状の金属粉、もしくはTiO2、Fe2O3C、フェライトのうち少なくとも一の磁性材料からなる金属酸化物粉を含有することにより構成することができる。
この誘電率層12aと透磁率層12bは、後述するように、塗料化されて塗布によって積層できるようになっており、その厚み(膜厚)は、約10〜200μm程度に形成される。
なお、表1に示す値は、3本ロールなどで分散性を向上させると、誘電率・透磁率ともに大きくなりMaxに近い値となる。
そして、表2に示すように、誘電率層12a及び透磁率層12bを層構造にすることで、高い屈折率が得られることがわかる。
なお、本実施形態では、好適な材料から選択した金属を扁平形状の粉体とすることで、後述するように、バインダとなる樹脂材料に満遍なく均一に分散・混合させることができるようにしてある。
例えば、図3(a)に示すように、複数の機能層12を任意の層数だけ積層することができる。同図に示す例では、同一構成の基材層11及び機能層12を1セットとして二層積層している。
また、図3(b)に示すよう、機能層12の誘電率層12a又は透磁率層12bの厚みを大きく(又は小さく)することができる。同図に示す例では、誘電率層12a及び透磁率層12bの双方の厚みを大きくし、基材全体としては図3(a)に示す基材と同じ厚みとなるようにしてある。
さらに、図3(d)に示すように、基材層11と機能層12の間に、後述する不織布等からなる距離層14を積層することもできる。
なお、図示しないが、距離層14は、機能層12の表面側に積層してもよい。その場合には、実装するICタグ20は、距離層14の表面に実装されることになる。
また、このように塗料を塗布するだけで機能層12を形成できるので、ICタグ20を取り付ける実装部分のみに塗料を塗布することで、使用するICタグ20の大きさや装着部位等に合わせて、基材層11の任意の部位に任意の大きさ・形状の機能層12を容易かつ迅速に塗布形成することができる。
従って、ICタグ20がICタグ用基材10の任意の部位に無作為に取り付けられるような場合には、基材層11の表面全体に塗料を塗布して機能層12を形成する。
機能層12を構成する塗料の製造方法としては、Fe−SiやAlなどの金属粉末からなるフィラーを、ニス、プライマー、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステルなどのバインダとなる樹脂の溶媒に混入して製造することができる。
フィラーとなる金属粉末は、図4に示すように、樹脂溶媒に満遍なく均一に混合させることができるように、扁平形状(鱗片状)であることが好ましい。
但し、粉末は球状のものでもよく、また、扁平形状と球状を混合してもかまわない。また、フィラーの分散には三本ローラを使用してもよい。
溶媒には、油性又は水性の塗料を使用することができ、熱乾燥タイプやUV硬化タイプなど、特に限定はされない。
また、フィラーと溶媒の混合比としては、屈折化の効果や金属に塗布可能な粘度を考慮すると、バインダの固形量を100としたとき、フィラーを100〜1000重量部(好ましくは350重量部)の範囲が好適である。
塗料を基材層11へ塗布するには、バーコータ、ロールコート、刷毛などを用いることができる。また、塗料を直接基材層11へ塗布してもよいが、密着性を考慮すると、基材層11の上にプライマーなどの接着剤を塗布した後に、その上に塗料を塗布するようにしてもよい。
また、図5に示すように、PET樹脂やAl箔等からなる基材層11上に、機能層12となる塗料と、ニス,プライマー又はポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂などからなる基材樹脂層11aを交互に塗布し、積層させても良い。この場合、最上層は基材樹脂層が好ましい。
塗料の塗布厚は、金属粉末の溶媒への混入濃度及び粉末の大きさにもよるが、ICタグ用基材10としての厚みを考慮に入れた場合、10μmから200μm程度が好ましい。
距離層14は、基材層11に積層される、ICタグ20を容器から離間させるための層である(図3(d)参照)。
距離層14は、不織布や発泡樹脂、上述したポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等によって形成することができる。
ICタグ20に対する樹脂容器の内容物による影響や金属容器の影響を低減するには、理想的にはタグの実装部分の実効比誘電率を1.0(空気)とすることが望ましいが、これではICタグを空気中に浮揚させることを意味し、ICタグ用基材10単体でそのような構成を取ることは困難である。
そこで、不織布や発泡樹脂からなる距離層14を形成することで、ICタグを空気中に浮揚させた場合に近い実効比誘電率が得られる。
また、不織布や発泡樹脂の特長は設計の自由度にあり、所望の厚みと大きさの距離層を容易かつ低コストで形成することが可能となる。
不織布は、例えば、合成繊維製、天然繊維製等の任意の材質のものを選択可能であり、厚みや大きさ、形状等は、実装するICタグ20に対応して任意に設定することができる。
また、距離層14に好適な発泡樹脂としては、種々の方法に形成することができるが、例えば、発泡剤を用いる方法、ポリマーを混合(混練)する際に空気や窒素ガスを注入する方法、化学反応を利用する方法等がある。
なお、不織布や発泡樹脂以外にも、同様の観点から、例えば樹脂塗料を格子状に塗布することで内部に空洞を有する距離層を形成することができ、これを距離層14として採用することもできる。
また、不織布等からなる距離層14は、上述したように、基材層11が距離層14として機能してICタグの通信利得が十分確保される場合には、基材層11を距離層14として、不織布等からなる距離層14を省略することも可能である。
ICタグ20は、ICチップ21とアンテナ22を有し、これらICチップ21とアンテナ22が樹脂やガラス等からなる基材に搭載されて一体的に封止されて一つのICタグを構成している。
そして、本実施形態では、ICタグ用基材10がICタグ20の基材として使用され、図1に示すように、ICタグ20がICタグ用基材10の機能層12の表面に実装されるようになっている。
なお、上述したように、機能層12の表面に不織布等からなる距離層14を備えることも可能であり、その場合には、ICタグ20は、距離層14の表面に実装されることになる。
図1に示す例では、ICタグ20がICタグ用基材10の製造工程において予め実装される場合であり、機能層12の表面に実装されたICタグ20は、さらにカバーフィルム層13で覆われるようになっている。
そして、アンテナを介してリーダ・ライタとの間で無線通信によって読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップに記録されたデータが認識されるようになっている。
ICチップに記録されるデータとしては、例えば、商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意の情報や各種データが記録可能であり、また、書換も可能である。データの記録や書換は専用のリーダ・ライタにより行える。
本実施形態では、特に、UHF帯域や2.45GHz帯域を使用する電波方式のICタグ20を使用している。
同図に示すように、ICタグ20で受信される電波は、基材内の機能層12の誘電率層12aと透磁率層12bの中を屈折しながら伝送される。
また、機能層12を透過した電波の一部は基材層11を通って伝送され、一部は容器側に透過する。
これによって、基材の厚みを薄肉化しても、実質的にICタグ20を取り付け対象物から離間させたのと同様の電波路長を確保することができ、タグが取り付けられる容器内の水分や金属容器の影響を回避することができる。
また、タグを金属容器に取り付ける場合には、基材層11を透過した電波の一部が金属容器で反射することによって通信距離を伸ばすことができ、アンテナサイズを小型化しても所定の通信距離を確保することが可能となる。
次に、以上のような本実施形態のICタグ用基材10の製造方法について説明する。
ICタグ用基材10は、まず、基材層11をPET樹脂等のプラスチック樹脂やAl箔等の金属で薄膜形成し、この基材層11の表面に上述した金属粉末をバインダに分散させて塗料化した塗料を塗布して機能層12を形成する。
このとき、基材層11に塗布する塗料は、基材層11の表面全体に塗布することができ、また、ICタグ20を実装する部分のみに塗布することもできる。
また、Al箔等からなる基材層11に機能層12を塗工(塗布)し、その上にポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる基材樹脂層11aを塗工し、その上に再び機能層12を塗工し、その上に再び基材樹脂層11aを塗工し・・・と繰り返すことで、機能層12と基材樹脂層11aを多層化したICタグ用基材10(図5に示す基材樹脂層11a参照)を容易に形成することができる。
以上によって、本実施形態のICタグ用基材10が完成する。
また、基材層11と機能層12の誘電率層12aと透磁率層12b(及び距離層14)の積層順は任意に変更することができる。図3に示す例では、容器側から基材層11→(距離層14)→誘電率層12a→透磁率層12bの順に積層したが、これを例えば、基材層11→距離層14→透磁率層12b→誘電率層12aとしたり、距離層14→基材層11→誘電率層12a→透磁率層12bとしたりするように、他の積層順としてもよい。
以上のような構成からなるICタグ用基材10は、実装されるICタグ20とともに、PETボトルや缶ボトルのキャップの表面に取り付けたり、キャップ内に内蔵・埋設することができる。
具体的には、図6に示すように、ICタグ用基材10に実装されたICタグ20を、インサート成形によりキャップと一体成形することができる。
また、図7に示すように、ICタグ20を実装したICタグ用基材10を、PETボトル等のキャップ裏面(天面)に配設し、これをモールド樹脂等により樹脂封止してキャップ内にICタグを埋設することもできる。
また、図8に示すように、ICタグ20を実装したICタグ用基材10を、PETボトル等のキャップ裏面(天面)に配設し、その上からキャップに中栓をしてICタグ20及びICタグ用基材10をキャップに脱落不能に取り付けることもできる。
さらに、図9に示すように、ICタグ20を実装したICタグ用基材10を、キャップの表面に搭載・貼着するようにしてもよい。
上述したように、本実施形態のICタグ用基材10によれば、機能層12や距離層14を備えることで、容器内の水による影響を抑制・低減でき、良好な通信特性が得られる。
ところが、例えばPETボトル容器のキャップの表面や裏面にICタグが備えられるような場合には、ボトル容器に充填される水の水位、すなわち、水面とICタグとの距離によっては、水の影響を考慮する必要がある。
しかしながら、図9(b)に示すように、水がボトル口部一杯まで充填された満注状態の場合、キャップに取り付けられたICタグと水面との距離が5mm未満に狭まることがある。
そこで、このような場合には、ICタグ用基材10の基材層11としてAl箔等からなる金属箔層を備えることで、ICタグが受信する電波を金属箔層で反射させることができ、これによってボトル内の水の影響を排して良好な通信特性を得ることができる。特に、水の影響を受けやすい共振周波数2.45GHzのICタグ20をPETボトル容器のキャップ部に取り付ける場合に好適である。
次に、本実施形態に係るICタグ用基材10を介して容器等に実装されるICタグ20の通信特性について図10〜図12を参照して説明する。
図10は、共振周波数2.45GHzのICタグ20を、機能層12としてAlからなる誘電率層12aとFe−Siからなる透磁率層12bを備える本実施形態のICタグ用基材10を介して金属製の容器に実装した場合のICタグの膜厚と通信距離の関係を示すグラフである。なお、同図は、周囲環境などの影響を考慮せずに設計されている既存の汎用タグを使用した結果を示している。
これに対して、本実施形態のICタグ用基材10を介して金属容器に取り付けられるタグは、「□」を結ぶ折れ線で示すように、ICタグ全体の厚みが約0.5mmのときに、通信距離が約20mmとピーク値を示しており、タグを単純に離間させた場合よりも長い通信距離が得られている。
従って、FeSi+Alからなる機能層12を備えるICタグ用基材10の場合には、ICタグ全体の厚みが約0.5mmで通信距離約20mmのICタグを実現することができる。
同図に示すように、汎用タグおよび、小型タグを使用した場合、ともに膜厚0.5mmのときにピークを持つ。このことから、ピークはタグに因らないことが示される。
同図中、まず「□」の折れ線は、機能層12としてAlからなる誘電率層12aとFe−Siからなる透磁率層12bを備えた基材10について、機能層12の膜厚を約200μm(FeSi層105μm+Al層95μm)とし、膜厚約50μmのPET樹脂層からなる基材層11に積層したものを一単位とし、この基材を順次重ねることで基材全体の膜厚を大きくし(図3(a)参照)、通信距離を調べたものである。
この場合には、膜厚約0.5mmのときに最大通信距離約20mmが得られた。
この場合には、膜厚約0.7mm〜1.0mmで、それぞれ最大通信距離約65mm〜90mmが得られた。
また、基材の薄膜化の点から見ると、Fe−Si+Al層からなる機能層12を備えた基材で、膜厚約0.5mmで最大通信距離約20mmが得られ、タグを金属から離間させた場合と比較すると、同じ距離(膜厚)で2倍の通信距離が得られ、同じ通信距離を得るために基材の膜厚は半分で済むことになる。
以上の図10〜6のグラフからわかるように、本実施形態のICタグ用基材10を使用することで、ICタグを単純に金属から離間させた場合や樹脂埋設した場合と比較して、長い通信距離を確保でき、かつ、基材を薄膜化できることが可能となることがわかる。
また、このような本実施形態のタグ用基材10では、ICタグ20が受信する電波はタグが取り付けられる金属面(金属容器)で反射することによって通信距離を稼ぐことが可能となる。
また、ICタグ20が受信する電波を金属容器で反射させることによって通信距離を伸ばすことができるので、アンテナサイズを小型化しても所定の通信距離を確保することが可能となり、結果として、タグサイズの小型化を図ることが可能となる。
このようにして、既存のどのようなICタグ20であっても、本実施形態のICタグ用基材10を介して樹脂容器や金属容器に取り付けられることにより、タグ本来の適正な通信範囲での正確な無線通信が行えるようになり、かつ、所望の通信距離を確保しつつタグサイズの薄型化・小型化を図ることができる。
以下、本発明に係るICタグ用基材の一実施例を説明する。
(実施例1)
厚さ50μmのPETフィルムに、ポリエステル系バインダ(バルスパーロック製クリアコーティング7850)50gにAl粉末(平均粒径:9.5μm、アスペクト比:67.8)を50g混ぜ塗料化したものを塗り、熱硬化(180℃のオーブンに10分)させて基材を作製した。塗膜の厚みは、50、90、160、180μmとした。
塗膜の誘電率・透磁率については、キーコム(株)社製のSパラメータ方式反射法同軸管タイプεr、μr測定器システムを用いて測定した。測定結果は、比誘電率ε=175.2、比透磁率μ=2.3であり、その積は403.0であった。
同じ塗膜厚みの基材を同じ向きで積層してICタグ用基材とし、PETフィルム側に動作周波数2.45GHzの汎用ICタグを取り付けた。このICタグをアルミニウムDI缶に取り付けて通信試験を行った結果を表3に示す。
厚さ12μmのPETフィルムに、ポリウレタン系バインダ(日本ポリウレタン社製)の樹脂成分100重量部にAl粉末(平均粒径:9.5μm、アスペクト比:67.8)を350重量部混ぜ塗料化したものを塗り、乾燥(130℃のオーブンに3分)させて基材を作製した。塗膜の厚みは、30μmとした。
塗膜の誘電率・透磁率については、実施例1と同等の値であった。
実施例1と同様に通信試験を行った結果、基材積層厚み0.94mmで通信距離98mmであった。
実施例1と同様にして作製したICタグ(塗膜厚みが50μm、積層厚み0.92mm、動作周波数2.45GHz)を内容量500mlの水が入ったPETボトルの側壁に取り付けて通信試験を行った。その結果、通信距離は90mmであり、内容物の影響を受けることなく良好な通信特性が得られた。
50μmのPETフィルムに、バインダに7850を50g使用してFeSi粉末(平均粒径:25μm、アスペクト比:50)を50g混ぜ塗料化したものを140μm塗り、実施例1と同条件で熱硬化させて基材を作製した。
塗膜の物性値は、ε=52.9、μ=4.7であり、積は248.6であった。
この基材を同じ向きで積層して、PETフィルム側に動作周波数2.45GHzの汎用ICタグを取り付けた。このICタグをアルミニウムDI缶に取り付けて通信試験を行った結果、積層厚みが1mm以内の範囲では、通信距離が5mm前後であり良好な通信特性が得られなかった。
50μmのPETフィルムに、実施例1と同様のAl粉末を混ぜた塗料を95μm塗って熱硬化(180℃、10分)させたものに、さらに比較例1と同様のFeSi粉末を混ぜた塗料を105μm塗って熱硬化(180℃、10分)させて基材を作製した。この基材のAl塗膜の物性値は、ε=175.2、μ=2.3であり、積は403.0で、FeSi塗膜の物性値は、ε=52.9、μ=4.7であり、積は248.6であった。また、塗膜部全体での物性値は、ε=146.2、μ=3.5であり、積は511.7であった。
この基材を同じ向きで積層し、PETフィルム側に動作周波数2.45GHzの汎用ICタグを取り付けた。このICタグをアルミニウムDI缶に取り付けて通信試験を行った結果、0.51mm積層したところでピークを得た。また、そのときの通信距離は20mmであった。
例えば、上述した実施形態では、本発明のICタグ用基材を備えたICタグが取り付けられる容器として、飲料や食品の容器として用いられるPETボトルや缶容器、パウチ容器を例にとって説明したが、本発明のICタグ用基材を備えたICタグを適用できる容器としては、容器の用途や収納する内容物、容器の構成成分等は特に限定されるものではない。すなわち、樹脂製や金属製の容器であれば、どのような大きさ、形状、材質等の容器であってもよく、また、容器に収納される内容物がどのようなものであってもよい。
11 基材層
11a 基材樹脂層
12 機能層
12a 誘電率層
12b 透磁率層
14 距離層
20 ICタグ
21 ICチップ
22 アンテナ
Claims (13)
- リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグが取り付けられるICタグ用基材であって、
基材層と、
この基材層に積層される、所定の比誘電率と比透磁率を有する機能層と、
を備え、
前記機能層は、
比誘電率と比透磁率の積が250以上であることを特徴とするICタグ用基材。 - 前記機能層は、
比誘電率が80以上である請求項1記載のICタグ用基材。 - 前記機能層が、
Alからなる扁平形状の金属粉を含有する請求項1又は2記載のICタグ用基材。 - 前記機能層が、特性の異なる複数の層からなり、
前記複数の層のうち、少なくとも一の層が、所定の誘電率を有する誘電率層からなり、
前記複数の層のうち、少なくとも他の一の層が、所定の透磁率を有する透磁率層からなる請求項1乃至3のいずれか一項記載のICタグ用基材。 - 前記誘電率層は、比誘電率が90以上であり、
前記透磁率層は、比透磁率が3.8以上である請求項4記載のICタグ用基材。 - 前記誘電率層が、Alからなる扁平形状の金属粉を含有する請求項4又は5記載のICタグ用基材。
- 前記透磁率層が、Al、Fe−Si、Cu、Fe、Niのうち少なくとも一の磁性材料からなる扁平形状の金属粉、又はTiO2、Fe2O3、フェライトのうち少なくとも一の磁性材料からなる金属酸化物粉を含有する請求項4乃至6のいずれか一項記載のICタグ用基材。
- 前記基材層が、熱可塑性プラスチックの樹脂層を備える請求項1乃至7のいずれか一項記載のICタグ用基材。
- 前記基材層が、不織布又は発泡樹脂からなる距離層を備える請求項1乃至8のいずれか一項記載のICタグ用基材。
- 前記基材層が、熱硬化性樹脂層又は熱可塑性樹脂層を備える請求項1乃至9のいずれか一項記載のICタグ用基材。
- 前記基材層が、金属層を備える請求項1乃至10のいずれか一項記載のICタグ用基材。
- 取り付けられる前記ICタグが電波方式タグからなる請求項1乃至11のいずれか一項記載のICタグ用基材。
- ICチップと、アンテナと、これらICチップ及びアンテナが実装される基材とを備え、リーダ・ライタとの間で無線通信を行うICタグであって、
前記基材が、請求項1乃至12のいずれか一項記載のICタグ用基材からなることを特徴とするICタグ。
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