JP5023267B2 - Iii族窒化物薄膜の形成方法 - Google Patents

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本発明は、III族窒化物薄膜の形成方法、特に分子線エピタキシー(MBE)によるIII族窒化物薄膜(極性:(0001))の形成方法に関するものである。
六方晶であるサファイアC面基板上にGaNを成長させる場合、通常、六方晶のウルツ鉱型GaNがサファイア基板とc軸を揃えて成長する。しかし、ウルツ鉱型GaNはc軸方向に極性をもつため、通常は、図1(A)および(B)に示すように、2種類の極性、すなわち2種類の原子の配列状態をもつ結晶の混在した膜となってしまう。このようにサファイアC面基板1上に成長するGaN膜において、図1(A)に示すようにGa原子の直上にN原子が配列された場合をGaN(0001)(Ga−face)、図1(B)に示すようにN原子の直上にGa原子が配列された場合をGaN(000−1)(N−face)と呼んでいる。これらの2種類の極性と成長した膜の特性とは密接に関係しており、GaN(0001)膜の方が、GaN(000−1)膜、あるいはGaN(0001)とGaN(000−1)との混在した膜よりも、光学的、電気的特性、さらには表面平坦性に優れているということが報告されている(Keller et al., Appl. Phys. Lett. 68(1996)1525, Fuke et al., J. Appl. Phys. 83(1998)764)。したがって、いかに成長する膜の極性をGa−faceに制御するかということが高品質III族窒化物半導体素子を作製するうえでの重要なキーポイントとなっている。
有機金属気相成長法(MOCVD法)においては、有機金属ガスの供給時期、核密度増大のためにサファイア基板上に成長させる低温バッファ層のアニール条件等を制御することにより、成長する膜の極性をGa−faceに制御することが既に可能となっている。これに対し、分子線エピタキシー(MBE)法においては、これまでGaN(000−1)が支配的な膜しか得られておらず、GaN(0001)膜を得ることは不可能であった。
この発明は、上記のような従来のMBE法におけるGaN系III族窒化物薄膜形成の際の問題点を解決するものであり、成長する膜の極性を(0001)に制御して、従来よりも光学的、電気的特性に優れたGaN系III族窒化物薄膜を形成する方法を提供することを課題としている。
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、次のような手段を用いることにより、成長する膜の極性を(0001)に制御することに成功し、本発明を完成するに至った。
(1)サファイアC面基板上に、窒素プラズマを窒素源とし、金属GaをGa源として、MBE法によりGaN単結晶薄膜をエピタキシャル成長させるには、まず基板を約800℃で加熱して清浄化する。次いで、約200オングストローム程度のGaN層を約500℃の低温で堆積させた後にアニールすることによって、GaNの核形成を促進させる低温バッファ層を形成する。このようにして形成された低温バッファ層上に、成長温度600℃〜800℃でGaN層を成長させるという方法が通常用いられている。また、さらに核密度を増大させることを目的として低温バッファ層形成前に、窒素プラズマをサファイア基板に照射してサファイア基板を窒化し、GaNと格子定数の近いAlN層を基板表面に形成させる方法が採用されることもある。以上のような方法でGaNを成長させた場合には、得られたGaN膜はGaN(0001)とGaN(000−1)との混在した膜となってしまう。また、サファイア基板の窒化プロセスを導入した場合には、GaN(000−1)の混在率が増大するのみで、GaN(0001)のみの膜を得ることはできなかった。しかし、本発明者らは、低温バッファ層形成後、成長温度600℃〜800℃でGaN膜を成長させる際に、窒素プラズマ、金属Gaを主成分とする金属とともに金属Inを同時に成長表面に照射すると、Inが成長膜中に取り込まれることもなく、成長膜の極性が(0001)になることを見い出した。この発明は、このことを利用して、成長するGaN系III族窒化物薄膜の極性を(0001)に制御し、目的とするGaN系III族窒化物を得ようとするものである。
この発明によれば、従来のMBE法においては不可能であったGaN系III族窒化物薄膜の極性を光学的、電気的特性に優れた(0001)に制御することが可能となるため、高品質なIII族窒化物半導体素子を製造することができるという効果を奏する。
(A)基板上に形成されたGaN系膜の極性(0001)を説明するための原子配列状態を示す模型図。 (B)基板上に形成されたGaN系膜の極性(000−1)を説明するための原子配列状態を示す模型図。 (A)この発明の実施例1により得られたGaN系薄膜を有する基板の断面図。 (B)この発明の実施例1により得られたGaN系薄膜を有する基板の断面図。
以下、この発明の実施の形態を説明する。
この発明の実施の形態によれば、通常の分子線エピタキシャル装置を用い、通常の真空下で原料物質を蒸発させ、このガス状物質を600〜800℃に加熱したサファイアC面基板上に供給し、薄膜結晶を成長させて、目的とするGaN系III族窒化物薄膜を形成する。成長温度600℃〜800℃において、窒素源として窒素プラズマを、またIII族源としてGaを主成分とする金属を基板に照射してGaN系III族窒化物薄膜を成長させる際に、窒素源およびIII族源の照射と同時に成長初期の間だけ金属Inを照射する。これにより、極性が(0001)に制御された、光学的、電気的特性に優れた薄膜を得ることができる。このようにして形成された薄膜を有する基板の一つの例を図2(A)および(B)に示す。図2(A)および(B)に示したように、サファイア基板21上に、GaN系(0001)膜、あるいはGaN系(000−1)膜、あるいは(0001)と(000−1)との混在した膜22、22’が下地として設けられ、その上にIn照射中に形成されるGaN系III族窒化物薄膜(In照射層)23が形成され、さらにその上にGaN系III族窒化物薄膜24が形成される。ここで、GaN系III族窒化物薄膜24は、Gaの他、III族金属元素としてIn、Al等を含んでも良いし、また、ドーパントとしてBe、Mg、Siなどを含んでも良い。この実施の形態においては:
1.成長させるIII族窒化物薄膜の下地としては、GaN系(0001)膜、あるいはGaN系(000−1)膜、あるいは(0001)と(000−1)との混在した膜であればいずれの膜でも使用できる。例えば、サファイアC面基板21を加熱して(例えば、約800℃)清浄化した後、所定の厚さのGaN層を低温(例えば、約500℃)で堆積せしめ、次いでアニール処理することにより形成された低温バッファ層22でも(図2(A))、あるいは他の成長法(例えば、スパッタ、レーザーデポジションなど)で成長させた膜22’でも(図2(B))、上記結晶方位を有するものであれば使用できる。この低温バッファ層はGaNの核形成を促進させる。
2.窒素プラズマは、RFで生成されるものでもECRで生成されるものでも良い。
3.III族金属(Ga)としては、その強度(フラックス)が1×1013コ/cm2s〜1×1015コ/cm2sであるものを用いる。強度が1×1013コ/cm2s未満であると実用的な成長速度(0.1μm/hr)が得られず、また、1×1015コ/cm2sを超えると結晶性が劣化するからである。
4.金属Inとしては、照射するIII族金属(Ga)の強度の2桁低い強度から1桁高い強度までの範囲内のものを用いることが好ましい。これは、この強度の範囲外では効果がないからである。
5.金属Inは、III族窒化物薄膜の成長初期にのみ照射しても、または成長中照射し続けても良い。
(実施例)
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
通常の分子線エピタキシャル装置を用い、図2(A)および(B)に示したようなGaN系薄膜を以下のようにして形成した。
まず、サファイアC面基板21を800℃に加熱して清浄化処理し、この基板上に、窒素プラズマとGaを主成分とする金属を照射して所定の厚さのGaN層を約500℃で堆積せしめ、次いで約600℃でアニール処理して、低温バッファ層(極性:(0001)と(000−1)との混在)22を形成せしめた。その後、約10-2〜10-4Paの真空中で、III族源としてのGaを主成分とする金属原料物質(強度:2×1013コ/cm2s)を蒸発させ、このガス状物質を、RFで生成された窒素プラズマと共に、800℃に加熱したサファイアC面基板上に供給し、照射した。結晶成長温度730℃でGaN系薄膜を成長させる際に、上記ガス状物質と窒素プラズマの照射と同時にガス状の金属In(強度:7×1012コ/cm2s)を結晶成長初期にだけ照射した。このようにして低温バッファ層22上に薄膜結晶を成長させて、目的とするGaN系薄膜を形成した(図2(A))。この場合、結晶成長初期の金属In照射中に形成されたGaN系薄膜23には、金属Inは取り込まれておらず、また、その極性は(0001)であった。金属In照射をやめた後に成長したGaN系薄膜24の極性も(0001)であった。
下地としての低温バッファ層22に代えてスパッタ法により成長せしめた膜(極性:(0001)と(000−1)との混在)22’を使用して上記方法を繰り返したところ、得られたGaN系薄膜の極性も上記の場合と同様に(0001)であった(図2(B))。また、下地として、GaN系(0001)膜、あるいはGaN系(000−1)膜、あるいは(0001)と(000−1)との混在した膜を形成せしめ、これを用いて上記方法を繰り返したところ、下地の極性にとらわれることなく、得られたGaN系薄膜の極性は全て(0001)であった。これは、金属Inを照射することにより、下地の極性に関わりなく所望の極性のGaN系薄膜が得られることを意味する。
なお、窒素プラズマとして、RFで生成したものに代えてECRで生成したものを用いても同様な結果が得られる。また、金属Inを結晶成長中照射し続けた場合も、上記と同様に金属InがGaN系薄膜中に取り込まれることもなく、得られた薄膜の極性は所望のものである。
上記のようにして得られたGaN系(0001)薄膜は、光学的、電気的特性に優れている。
以上のようにして、この発明で形成されたGaN系薄膜は、所望のタイプの電子デバイスあるいは光電子デバイスなどに組み込まれて利用できる。
1 サファイアC面基板
21、31、41、51 サファイアC面基板
22、22’ 下地
23 In照射層
24 GaN系薄膜

Claims (1)

  1. サファイアC面基板上に、窒素源として窒素プラズマを、またIII族源としてGaを主成分とする金属を用いて分子線エピタキシーにより成長温度600℃〜800℃でGaN系III族窒化物薄膜をエピタキシャル成長させるに際し、金属Gaとして、その強度(フラックス)が1×1013コ/cm2s〜1×1015コ/cm2sであるものを用い、該GaN系III族窒化物薄膜の成長初期に金属Inを、照射する金属Gaの強度の2桁低い強度から1桁高い強度で、照射することにより、成長する膜の極性を(0001)に制御することを特徴とするIII族窒化物薄膜の形成方法。
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