JP5020342B2 - 水中放射線測定装置 - Google Patents

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本発明は、水中放射線測定装置に関する。特に、原子力発電所の復水器から海に戻される放水中の放射線量を測定する水中放射線測定装置の構造に関する。
一般に、原子力発電所では、発電機に連結したタービンを回転させた過熱蒸気を復水器で冷却して再利用している。そして、過熱蒸気を冷却するために、取水口から海水を取水し、復水器で熱交換した後に、海水を他の冷却水と共に放水口から海に戻している。
原子力発電所では、環境への放射線の影響を調査するために、復水器から海に放水される水中の放射線量を測定している。このような水中の放射線量を測定する手段としては、(1)放水される水をサンプリングして水中の放射線量測定するサンプリング方式がある。又、(2)放水される配管の外側から放射線検出器で放射線量を測定する方法もある。更に、(3)防水形のケーブル付き放射線検出器を水中に吊るして、放射線量を測定する方法もある。
しかし、サンプリング方式では、水をサンプリングするためのポンプ及び配管などの設備が必要である。そして、これらの設備が複雑となって、メンテナンスに労力を要すると共に、設備の故障リスクが高くなって、継続して放射線量を測定することが困難である。
一方、放射線検出器を水中に直接、浸けて放射線量を測定する方法は、ポンプ及び配管などの設備が必要とせず、水中の放射線量を継続して一定の場所で測定することが可能とされている。
しかし、この放射線検出器は、その筐体(ハウジング)がオーリングなどで防水されているが、振動などの影響でオーリングから放射線検出器の内部に浸水して、短絡を発生するなど故障も多く、寿命の短いものとしていた。
このような不具合を無くすため、単純な構造で、外部に対する放射線遮蔽効果を減ずることなく、放射線検出器を濡らすことなく、水中の測定対象物に近づけて放射線を測定でき、放射線検出器の保守性も向上できる水中放射線測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1による水中放射線測定装置は、先端が閉塞されたフレキシブルな素材からなり、放射線検出器が挿入されると少なくとも一部分が潰れる棒状の挿入管と、挿入管の内部に反先端側から挿入して移動自在に設けられ、測定対象物からの放射線を検出する放射線検出器と、挿入管の内部の放射線検出器を移動させる駆動手段とを備えたことを特徴としている。
特開平6−27246号公報
しかしながら、特許文献1による水中放射線測定装置は、ケーブル付き放射線検出器をフレキシブルな挿入管で包囲して、流動しない静水を貯蔵したプール(燃料貯蔵プール)に水没させている。
一方、前述した環境調査では、流動する放水中にケーブル付き放射線検出器を水没させる必要がある。ケーブル付き放射線検出器をフレキシブルな挿入管で包囲すれば、防水は可能であるが、ケーブルに吊るされた放射線検出器が揺動して、ケーブルに不要なテンションが作用するなど、放射線検出器に負荷を与えて、故障の発生や寿命を短くするという問題がある。
流動する放水中にケーブル付き放射線検出器を水没させても、放射線検出器を濡らすことなく、かつ、放射線検出器に不要な負荷を与えないように、水中放射線測定装置を構成できれば、放射線検出器の故障の発生を低減でき、寿命を延ばすことも可能である。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、流動する放水中に水没されるケーブル付き放射線検出器に不要な負荷を与えることなく、故障の発生を低減でき、寿命を延ばす水中放射線測定装置を提供することを目的とする。
本発明者は、放射線検出器を中空の長尺鋼管の内部に収容し、この長尺鋼管の上部開口が放水の水面より高くなるように、長尺鋼管を鉛直に放水中に設置することにより、この課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな水中放射線測定装置を発明するに至った。
(1)本発明による水中放射線測定装置は、流動する放水の放射線量を測定する水中放射線測定装置であって、ケーブルを延出する放射線検出器と、前記ケーブルで吊るされた状態で前記放射線検出器を内部に収容する長尺のガイド鋼管と、を備え、前記ガイド鋼管は、上端面に設けられた開口と、下端面を水密可能に閉塞する底蓋と、を有し、前記ガイド鋼管の開口が前記放水の水面より上に位置するように、前記ガイド鋼管を前記放水の中に略鉛直に設置する。
(2)前記放射線検出器を一体に内装すると共に、前記ガイド鋼管に収容される有底の保護鋼管を更に備え、前記保護鋼管は、前記ガイド鋼管の内壁と所定の間隙を設ける外径と、前記ガイド鋼管の開口から突出するように、前記ガイド鋼管の全長より十分長い全長と、を有することが好ましい。
(3)前記ガイド鋼管は、前記放水で整流される固定舵を備え、この固定舵は、前記放水の上流側に配置される前半部が前記ガイド鋼管の外周の半円弧で形成され、前記放水の下流側に配置される後半部が前記ガイド鋼管から突出して鋭角に形成されていることが好ましい。
(4)前記ガイド鋼管は、当該ガイド鋼管の腐蝕を防止する電極棒を備え、この電極棒は、前記ガイド鋼管よりイオン化傾向の高い金属で組成されていることが好ましい。
(5)前記固定舵は、前記ガイド鋼管の底面から上方に向かって所定の長さに亘り、配置していることが好ましい。
本発明による水中放射線測定装置は、放射線検出器を長尺鋼管の内部に収容し、長尺鋼管の上部開口が放水の水面より高くなるように、長尺鋼管を鉛直に流動する放水中に設置しているので、放射線検出器を濡らすことなく、かつ、放射線検出器に不要な負荷を与えないようにできる。
本発明の一実施形態による水中放射線測定装置の構成を示す斜視図であり、要部を断面で示している。 前記実施形態による水中放射線測定装置の構成を示す斜視分解組立図であり、図1と異なる方向から水中放射線測定装置を観ている。 前記実施形態による水中放射線測定装置を二連にして放水路に配置した状態を示す斜視図である。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[水中放射線測定装置の構成]
最初に、本発明の一実施形態による水中放射線測定装置の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による水中放射線測定装置の構成を示す斜視図であり、要部を断面で示している。
又、図2は、前記実施形態による水中放射線測定装置の構成を示す斜視分解組立図であり、図1と異なる方向から水中放射線測定装置を観ている。図3は、前記実施形態による水中放射線測定装置を二連にして放水路に配置した状態を示す斜視図である。
図1又は図2を参照すると、本発明の一実施形態による水中放射線測定装置(以下、測定装置と略称する)10は、放水口9から放水される流動する放水Wの放射線量を測定する。
図1又は図2を参照すると、測定装置10は、ケーブル1wを延出する放射線検出器1と長尺のガイド鋼管2を備えている。ガイド鋼管2は、ケーブル1wで吊るされた状態で放射線検出器1を内部に収容できる。測定装置10は、放射線検出器1を一体に内装する有底の保護鋼管3を備えている。
図1又は図2を参照すると、例えば、ガイド鋼管2は、復水器(図示せず)から海に放水される人工の放水路(開渠)に略鉛直に設置される。ガイド鋼管2は、その上端面に開口2aを設けている。又、ガイド鋼管2は、その下端面を底蓋2bで水密可能に閉塞している。
図1又は図2を参照すると、ガイド鋼管2は、その開口2aから放射線検出器1付きの保護鋼管3が挿入されている。保護鋼管3は、ガイド鋼管2の内壁と所定の間隙を設ける外径と、ガイド鋼管2の開口2aから突出するように、ガイド鋼管2の全長より十分長い全長と、を有している。保護鋼管3は、例えば、鉄又はステンレス合金などで組成されている。
図1又は図2を参照すると、ガイド鋼管2は、その底面から支軸2cを突出している。そして、支軸2cが放水路の底面に着座すると共に、ガイド鋼管2の開口2aが放水の水面より上に位置するように、ガイド鋼管2を放水中に略鉛直に設置している。これにより、放射線検出器1を防水できる。
図1又は図2を参照すると、ガイド鋼管2は、その上部側に支持部材(アングル部材)2dを設けている。支持部材2dを地上の構造物に固定することにより(図3参照)、流動する放水Wに対して、ガイド鋼管2の姿勢を安定できる。開口2aの周囲に設けたフランジ2eを地上の構造物に固定することにより、ガイド鋼管2の姿勢を安定させることもできる。
図1又は図2を参照すると、ガイド鋼管2は、放水Wで整流される固定舵21を備えている。固定舵21は、放水Wの上流側に配置される前半部がガイド鋼管2の外周の半円弧で形成されている。又、固定舵21は、放水Wの下流側に配置される後半部がガイド鋼管2から突出して鋭角に形成されている。そして、固定舵21は、ガイド鋼管2の底面から上方に向かって所定の長さに亘り、配置されている。
図1又は図2を参照すると、ガイド鋼管2は、ガイド鋼管2の腐蝕を防止する電極棒4を備えている。電極棒4は、四角柱状の電極4aと電極4aの両端から突出する一対の支柱4b・4bで構成されている。
ガイド鋼管2は、一対のブラケット2f・2fを遠心方向に突出している。これらのブラケット2f・2fに一対の支柱4b・4bを当接し、更に、押さえ具4cで支柱4b・4bを挟持することにより、電極棒4をガイド鋼管2と略平行に配置できる。
ガイド鋼管2は、例えば、鉄又はステンレス合金などで組成されている。一方、電極4aは、鉄又はステンレス合金よりもイオン化傾向の高い亜鉛(Zn)などの金属で組成されている。したがって、電極棒4が先に腐食することにより、ガイド鋼管2を腐食から防止できる。
[水中放射線測定装置の作用]
次に、実施形態による測定装置10の作用及び効果を説明する。図1又は図2を参照すると、放水Wの放射線量が放射線検出器1で検出され、その検出データがケーブル1wを介して測定器本体(図示せず)に送出される。そして、例えば、検出データが増幅されて、放水Wの放射線量の測定データが取得される。
図1又は図2を参照すると、実施形態による測定装置10は、放射線検出器1を長尺のガイド鋼管2の内部に収容し、ガイド鋼管2の上部に設けた開口2aが放水Wの水面より高くなるように、ガイド鋼管2を鉛直に流動する放水W中に設置している。
したがって、放射線検出器1を濡らすことなく、かつ、放射線検出器1に不要な負荷を与えないようにできる。そして、放射線検出器1の故障の発生を低減でき、寿命を延ばすことも可能である。
図1又は図2を参照すると、放射線検出器1は、ガイド鋼管2と保護鋼管3とで、二重に保護されている。したがって、放射線検出器1の防水がより完璧になり、湿気の影響も排除することができる。又、放射線検出器1が流動する放水Wの振動などの影響を直接受けないというメリットもある。
図1又は図2を参照すると、放射線検出器1を保守又は点検したいときは、放射線検出器1を保護鋼管3と共に、ガイド鋼管2から引き抜くことが好ましい。放射線検出器1を吊り下げ又は吊り上げて、ガイド鋼管2の深部に位置決めするよりも、保護鋼管3内の放射線検出器1の位置決めを地上で実行するほうが作業性に優れるからである。
図1又は図2を参照すると、放射線検出器1は、ガイド鋼管2と保護鋼管3とで、二重に保護されている。したがって、復水器を稼動中であっても、つまり、復水器から海に放水している間であっても、放射線検出器1を保護鋼管3と共に、ガイド鋼管2から引き抜くことが容易である。
図1又は図2を参照すると、ガイド鋼管2は、放水Wで整流される固定舵21を備えているので、放水Wの流れに逆らわず、ガイド鋼管2を制動できる。又、ガイド鋼管2は、ガイド鋼管2よりイオン化傾向の高い金属で組成された電極棒4を備えているので、ガイド鋼管2の腐蝕を防止できる。
図3を参照すると、実施形態による測定装置10は、放水路に対して一対に設置している。このように、測定装置10を一対に設置することにより、一方の放射線検出器1が故障しても、他方の放射線検出器1で放水Wの放射線量を測定できる。
図3に示された、測定装置10の設置場所は、復水器からの放水が暗渠となる水路9aで輸送され、グレーチング(溝蓋)8で覆われた「開渠」に切り換わる、いわゆる接合槽である。このように、復水器から離れた場所であって、海に近い接合槽に測定装置10を設置することにより、放水Wの流れが緩やかになり、ガイド鋼管2に不要な応力が作用し難くなる。
1 放射線検出器
1w ケーブル
2 ガイド鋼管
2a 開口
2b 底蓋
10 測定装置(水中放射線測定装置)
W 放水

Claims (3)

  1. 流動する放水の放射線量を測定する水中放射線測定装置であって、
    ケーブルを延出する放射線検出器と、
    前記ケーブルで吊るされた状態で前記放射線検出器を内部に収容する長尺のガイド鋼管と、
    前記放射線検出器を一体に内装すると共に、前記ガイド鋼管に収容される有底の保護鋼管と、を備え、
    前記ガイド鋼管は、
    上端面に設けられた開口と、
    この開口の周囲に設けられ、地上の構造物に固定できるフランジと、
    下端面を水密可能に閉塞する底蓋と、
    当該ガイド鋼管の腐蝕を防止する電極棒と、を有し、
    前記保護鋼管は、
    前記ガイド鋼管の内壁と所定の間隙を設ける外径と、
    前記ガイド鋼管の開口のフランジから突出し、前記ガイド鋼管から引き出すことが容易となるように、前記ガイド鋼管の全長より長い全長と、を有し、
    前記ガイド鋼管の開口が前記放水の水面より上に位置するように、前記ガイド鋼管を前記放水の中に略鉛直に設置し、
    電極棒は、前記ガイド鋼管よりイオン化傾向の高い金属で組成されている、水中放射線測定装置。
  2. 前記ガイド鋼管は、前記放水で整流される固定舵を備え、
    この固定舵は、前記放水の上流側に配置される前半部が前記ガイド鋼管の外周の半円弧で形成され、前記放水の下流側に配置される後半部が前記ガイド鋼管から突出して鋭角に形成されている請求項1記載の水中放射線測定装置。
  3. 前記固定舵は、前記ガイド鋼管の底面から上方に向かって所定の長さに亘り、配置している請求項2記載の水中放射線測定装置。
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