以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、天然ゴム分子中に極性基を含有する変性天然ゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が20〜170 m2/gであり、該窒素吸着比表面積と200℃〜400℃の範囲の加熱減量とが上記式(I)の関係を満たすカーボンブラックを10〜150質量部配合してなることを特徴とする。本発明のゴム組成物に含まれるカーボンブラックは、200℃〜400℃の範囲で加熱することで、質量が減少する特性を有する。そして、この温度範囲の質量減少は、主としてカーボンブラックの表面官能基の減少に起因するため、本発明で用いるカーボンブラックは、200℃〜400℃の範囲で消滅する官能基を有する。また、該カーボンブラックは、窒素吸着比表面積と200℃〜400℃の範囲の加熱減量とが上記式(I)の関係を満たし、即ち、一般的なカーボンブラックよりも、単位表面積当りの200℃〜400℃の範囲で消滅する官能基の数が多い。一方、本発明のゴム組成物に含まれる変性天然ゴムは、極性基を有するため、未変性の天然ゴムに比べてカーボンブラックに対する親和性が高く、また、上記カーボンブラックの200℃〜400℃の範囲で消滅する官能基は、変性天然ゴムの極性基との反応性に優れる。そのため、上記カーボンブラックと変性天然ゴムを組み合せて使用することで、両者の相互作用によって、変性天然ゴムに対するカーボンブラックの分散性が大幅に向上し、カーボンブラックの補強性充填剤としての効果が十分に発揮される結果、ゴム組成物の耐破壊性を低下させることなく、低発熱性を大幅に改善することができる。
上記極性基含有変性天然ゴムの製造には、原料として、天然ゴムラテックスを用いてもよいし、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の固形天然ゴム原材料を用いてもよい。
例えば、天然ゴムラテックスを原料とする場合は、極性基含有変性天然ゴムラテックスを製造し、更に凝固及び乾燥させることで、極性基含有変性天然ゴムを得ることができる。ここで、極性基含有変性天然ゴムラテックスの製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させる方法、(2)天然ゴムラテックスに極性基含有メルカプト化合物を添加し、該極性基含有メルカプト化合物を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加させる方法、(3)天然ゴムラテックスに極性基含有オレフィン及びメタセシス触媒を加え、該メタセシス触媒によって天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に極性基含有オレフィンを反応させる方法が挙げられる。
上記変性天然ゴムの製造に用いる天然ゴムラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱タンパク質ラテックス、及びこれらを組み合せたもの等を用いることができる。
上記天然ゴムラテックスに添加される極性基含有単量体は、分子内に少なくとも一つの極性基を有し、天然ゴム分子とグラフト重合できる限り特に制限されるものでない。ここで、該極性基含有単量体は、天然ゴム分子とグラフト重合するために、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、極性基含有ビニル系単量体であることが好ましい。上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及びスズ含有基等を好適に挙げることができる。これら極性基を含有する単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記アミノ基を含有する単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有する重合性単量体が挙げられる。該アミノ基を有する重合性単量体の中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有単量体が特に好ましい。これらアミノ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。ここで、第1級アミノ基含有単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4-ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、第2級アミノ基含有単量体としては、(1)アニリノスチレン、β-フェニル-p-アニリノスチレン、β-シアノ-p-アニリノスチレン、β-シアノ-β-メチル-p-アニリノスチレン、β-クロロ-p-アニリノスチレン、β-カルボキシ-p-アニリノスチレン、β-メトキシカルボニル-p-アニリノスチレン、β-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-β-メチル-p-アニリノスチレン、α-カルボキシ-β-カルボキシ-β-フェニル-p-アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)1-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン、3-アニリノフェニル-2-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN-モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。更に、第3級アミノ基含有単量体としては、N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられ、これらの中でも、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。また、上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられ、これらの中でも、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が特に好ましい。
上記ニトリル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記ヒドロキシル基を含有する単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系単量体等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、m-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記カルボキシル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記エポキシ基を含有する単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記含窒素複素環基を含有する単量体において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有する単量体としては、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらの中でも、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記スズ含有基を有する単量体としては、アリルトリ-n-ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ-n-オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-オクチルスズ、ビニルトリ-n-ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ-n-オクチルスズ等のスズ含有単量体を挙げることができる。これらスズ含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合は、上記極性基含有単量体の天然ゴム分子へのグラフト重合を、乳化重合で行う。ここで、該乳化重合においては、一般的に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記極性基含有単量体を加え、更に重合開始剤を加えて、所定の温度で撹拌して極性基含有単量体を重合させることが好ましい。なお、上記極性基含有単量体の天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、極性基含有単量体を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えてもよい。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有単量体の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
上記重合開始剤としては、特に制限はなく、種々の乳化重合用の重合開始剤を用いることができ、その添加方法についても特に制限はない。一般に用いられる重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。なお、重合温度を低下させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いることが好ましい。かかるレドックス系重合開始剤において、過酸化物と組み合せる還元剤としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系重合開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組み合せとしては、tert-ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組み合せ等が挙げられる。上記変性天然ゴムを用いて、ゴム組成物の加工性を低下させることなく低発熱性及び耐破壊性を向上させるには、各天然ゴム分子に上記極性基含有単量体が少量且つ均一に導入されることが重要であるため、上記重合開始剤の添加量は、上記極性基含有単量体に対し1〜100mol%の範囲が好ましく、10〜100mol%の範囲が更に好ましい。
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜7時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基含有単量体がグラフト共重合した変性天然ゴムラテックスが得られる。また、該変性天然ゴムラテックスを凝固させ、洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥することで変性天然ゴムが得られる。ここで、変性天然ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。
上記天然ゴムラテックスに添加されて、該天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加反応する極性基含有メルカプト化合物は、分子内に少なくとも一つのメルカプト基と該メルカプト基以外の極性基とを有する限り特に制限されるものでない。上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、及びスズ含有基等を好適に挙げることができる。これら極性基を含有するメルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記アミノ基を含有するメルカプト化合物としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有するメルカプト化合物が挙げられる。該アミノ基を有するメルカプト化合物の中でも、第3級アミノ基含有メルカプト化合物が特に好ましい。ここで、第1級アミノ基含有メルカプト化合物としては、4-メルカプトアニリン、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトプロピルアミン、3-メルカプトプロピルアミン、2-メルカプトブチルアミン、3-メルカプトブチルアミン、4-メルカプトブチルアミン等が挙げられる。また、第2級アミノ基含有メルカプト化合物としては、N-メチルアミノエタンチオール、N-エチルアミノエタンチオール、N-メチルアミノプロパンチオール、N-エチルアミノプロパンチオール、N-メチルアミノブタンチオール、N-エチルアミノブタンチオール等が挙げられる。更に、第3級アミノ基含有メルカプト化合物としては、N,N-ジメチルアミノエタンチオール、N,N-ジエチルアミノエタンチオール、N,N-ジメチルアミノプロパンチオール、N,N-ジエチルアミノプロパンチオール、N,N-ジメチルアミノブタンチオール、N,N-ジエチルアミノブタンチオール等のN,N-ジ置換アミノアルキルメルカプタン等が挙げられる。これらアミノ基含有メルカプト化合物の中でも、2-メルカプトエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノエタンチオール等が好ましい。これらアミノ基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記ニトリル基を有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトプロパンニトリル、3-メルカプトプロパンニトリル、2-メルカプトブタンニトリル、3-メルカプトブタンニトリル、4-メルカプトブタンニトリル等が挙げられ、これらニトリル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記ヒドロキシル基を含有するメルカプト化合物としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基を有するメルカプト化合物が挙げられる。該ヒドロキシル基含有メルカプト化合物の具体例としては、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-プロパノール、4-メルカプト-1-ブタノール、4-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-1-ブタノール、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-1-ヘキサノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、2-メルカプトベンジルアルコール、2-メルカプトフェノール、4-メルカプトフェノール等が挙げられ、これらの中でも、2-メルカプトエタノール等が好ましい。これらヒドロキシル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記カルボキシル基を含有するメルカプト化合物としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、メルカプトマロン酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸等が挙げられ、これらの中でも、メルカプト酢酸等が好ましい。これらカルボキシル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記含窒素複素環基を含有するメルカプト化合物において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトピリジン、3-メルカプトピリジン、4-メルカプトピリジン、5-メチル-2-メルカプトピリジン、5-エチル-2-メルカプトピリジン等が挙げられ、また、他の含窒素複素環基を含有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトピリミジン、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、2-メルカプトピリジン、4-メルカプトピリジン等が好ましい。これら含窒素複素環基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記スズ含有基を有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトエチルトリ-n-ブチルスズ、2-メルカプトエチルトリメチルスズ、2-メルカプトエチルトリフェニルスズ、3-メルカプトプロピルトリ-n-ブチルスズ、3-メルカプトプロピルトリメチルスズ、3-メルカプトプロピルトリフェニルスズ等のスズ含有メルカプト化合物を挙げることができる。これらスズ含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記極性基含有メルカプト化合物を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加させる場合は、一般に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記極性基含有メルカプト化合物を加え、所定の温度で撹拌することで、上記極性基含有メルカプト化合物を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子の主鎖の二重結合に付加反応させる。なお、上記極性基含有メルカプト化合物の天然ゴムラテックスヘの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、極性基含有メルカプト化合物を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックスに加えてもよい。また、必要に応じて、更に有機過酸化物を添加することもできる。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有メルカプト化合物の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
ゴム組成物の加工性を低下させることなく低発熱性及び耐破壊性を向上させるには、各天然ゴム分子に上記極性基含有メルカプト化合物が少量且つ均一に導入されることが重要であるため、上記変性反応は、撹拌しながら行うことが好ましく、例えば、天然ゴムラテックス及び極性基含有メルカプト化合物等の上記成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜24時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基含有メルカプト化合物が付加した変性天然ゴムラテックスが得られる。
上記天然ゴムラテックスに添加される極性基含有オレフィンは、分子内に少なくとも一つの極性基を有し、また、天然ゴム分子とクロスメタセシス反応するために炭素−炭素二重結合を有する。ここで、上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及びスズ含有基等を好適に挙げることができる。これら極性基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記アミノ基を含有するオレフィンとしては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有するオレフィンが挙げられる。該アミノ基を有するオレフィンの中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有オレフィンが特に好ましい。これらアミノ基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。ここで、第1級アミノ基含有オレフィンとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4-ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、第2級アミノ基含有オレフィンとしては、(1)アニリノスチレン、β-フェニル-p-アニリノスチレン、β-シアノ-p-アニリノスチレン、β-シアノ-β-メチル-p-アニリノスチレン、β-クロロ-p-アニリノスチレン、β-カルボキシ-p-アニリノスチレン、β-メトキシカルボニル-p-アニリノスチレン、β-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-β-メチル-p-アニリノスチレン、α-カルボキシ-β-カルボキシ-β-フェニル-p-アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)1-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン、3-アニリノフェニル-2-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN-モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。更に、第3級アミノ基含有オレフィンとしては、N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられ、これらの中でも、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。また、上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられ、これらの中でも、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が特に好ましい。
上記ニトリル基を含有するオレフィンとしては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記ヒドロキシル基を含有するオレフィンとしては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有するメタセシス反応性オレフィンが挙げられる。かかるオレフィンとしては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィン、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系オレフィン、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系オレフィン等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有オレフィンの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、m-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィン、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィンが特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィンとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記カルボキシル基を含有するオレフィンとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記エポキシ基を含有するオレフィンとしては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記含窒素複素環基を含有するオレフィンにおいて、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有するオレフィンとしては、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらの中でも、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記スズ含有基を有するオレフィンとしては、アリルトリ-n-ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ-n-オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-オクチルスズ、ビニルトリ-n-ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ-n-オクチルスズ等のスズ含有単量体を挙げることができる。これらスズ含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
メタセシス触媒によって天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に極性基含有オレフィンを反応させる場合は、一般に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記極性基含有オレフィンを加え、更にメタセシス触媒を加えて、所定の温度で撹拌して天然ゴム分子と極性基含有オレフィンをメタセシス反応させる。ここで、上記極性基含有オレフィンの天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、極性基含有オレフィンを乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えてもよい。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有オレフィンの乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
上記メタセシス触媒としては、天然ゴム分子と上記極性基含有オレフィンとのメタセシス反応に対して触媒作用を有する限り特に制限されず、種々のメタセシス触媒を用いることができる。該メタセシス触媒は、遷移金属を含有するが、天然ゴムラテックス中で使用するため、水に対する安定性が高いことが好ましい。そのため、メタセシス触媒を構成する遷移金属は、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムのいずれかであることが好ましい。上記メタセシス触媒として、具体的には、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロライド[RuCl2(=CHPh)(PCy3)2]の他、RuCl2(=CH−CH=CPh2)(PPh3)2、RuCl2(=CHPh)(PCp3)2、RuCl2(=CHPh)(PPh3)2、RuCl2(=CHPh)[Cy2PCH2CH2N(CH3)3 +Cl]2等を挙げることができる。なお、化学式中、Cyはシクロヘキシル基を示し、Cpはシクロペンチル基を示す。上記メタセシス触媒の添加量は、上記極性基含有オレフィンに対し1〜500mol%の範囲が好ましく、10〜100mol%の範囲が更に好ましい。
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜24時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基が導入された変性天然ゴムラテックスが得られる。
また、原料として、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料を用いる場合は、極性基含有化合物を機械的せん断力を与えて、天然ゴム原材料にグラフト重合又は付加させることにより変性天然ゴムが得られる。
上記天然ゴム原材料としては、乾燥後の各種固形天然ゴム、各種天然ゴムラテックス凝固物(アンスモークドシートを包含する)又は天然ゴムカップランプを用いることができ、これら天然ゴム原材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
上記極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合、該極性基含有化合物は、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、極性基含有ビニル系単量体であることが好ましい。一方、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加反応させる場合、該極性基含有化合物は、分子内にメルカプト基を有することが好ましく、極性基含有メルカプト化合物であることが好ましい。
上記天然ゴム原材料と極性基含有化合物との混合物に機械的せん断力を与える手段としては、二軸押出混練装置及びドライプリブレーカーが好ましい。ここで、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合は、上記機械的せん断力を与えられる装置内に天然ゴム原材料及び極性基含有化合物(好ましくは、極性基含有ビニル系単量体)と共に重合開始剤を投入し、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に極性基含有化合物をグラフト重合により導入することができる。また、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加反応させる場合は、上記機械的せん断力を与えられる装置内に天然ゴム原材料及び極性基含有化合物(好ましくは、極性基含有メルカプト化合物)を投入し、必要に応じて有機過酸化物等を更に投入して、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム原材料中の天然ゴム分子の主鎖の二重結合に極性基含有化合物を付加反応させることができる。ここで使用する極性基含有化合物としては、上述した極性基含有単量体、極性基含有メルカプト化合物、極性基含有オレフィン等が挙げられる。
上述した各成分を機械的せん断力を与えられる装置内に仕込み、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム分子に上記極性基含有化合物がグラフト重合又は付加した変性天然ゴムが得られる。なお、この際、天然ゴム分子の変性反応を加温して行ってもよく、好ましくは30〜160℃、より好ましくは50〜130℃の温度で行うことで、十分な反応効率で変性天然ゴムを得ることができる。
上記変性天然ゴムの極性基含有量は、変性天然ゴム中のゴム成分に対して0.001〜0.5mmol/gの範囲が好ましく、0.002〜0.3mmol/gの範囲が更に好ましく、0.003〜0.2mmol/gの範囲がより一層好ましい。変性天然ゴムの極性基含有量が0.001mmol/g未満では、ゴム組成物の耐破壊性を維持しつつ、低発熱性を十分に改良できないことがある。また、変性天然ゴムの極性基含有量が0.5mmol/gを超えると、粘弾性、S−S特性(引張試験機における応力−歪曲線)等の天然ゴム本来の物理特性を大きく変えてしまい、天然ゴム本来の優れた物理特性が損なわれると共に、ゴム組成物の加工性が大幅に悪化するおそれがある。
本発明のゴム組成物に用いるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が20〜170m2/gである。カーボンブラックのN2SAが20m2/g未満では、ゴム組成物の補強性が低く、耐破壊性が低下し、一方、170m2/gを超えると、未加硫時のゴム組成物の粘度が上昇して、加工性が悪化する。
本発明のゴム組成物に用いるカーボンブラックは、下記式(I):
[200℃〜400℃の範囲の加熱減量(質量%)]/N2SA ≧ 0.0025 ・・・ (I)
の関係を満たす。上記式(I)の関係を満たさないカーボンブラックを使用した場合、ゴム組成物の低発熱性を十分に改善できないことがある。カーボンブラックを200℃〜400℃で加熱した際の質量減少は、主として、カーボンブラック表面のカルボキシル基の消滅に起因する。そして、上記式(I)の関係を満たすカーボンブラックは、単位表面積当りの200℃〜400℃での加熱減量が大きい、即ち、カルボキシル基等の官能基が多く、また、該官能基は、上記変性天然ゴムとの混練中に、変性天然ゴムの極性基と相互作用するため、カーボンブラックの変性天然ゴムに対する分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性を大幅に改善することができる。なお、カーボンブラックの官能基としては、上記カルボキシル基の他に、スルホン基等の比較的低温で脱離する官能基を挙げることができる。
上記カーボンブラックは、一般的なカーボンブラックを硝酸処理、酢酸処理、硫酸処理、過マンガン酸カリウム溶液処理、過酸化水素処理等の液相処理、オゾン処理等の酸性ガス処理、低温乾燥等することで、製造することができる。なお、原料のカーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。本発明のゴム組成物において、上記カーボンブラックの配合量は、上記変性天然ゴム100質量部に対して10〜150質量部の範囲である。カーボンブラックの配合量が10質量部未満では、ゴム組成物の補強性が不十分となる場合があり、一方、150質量部を超えると、ゴム組成物の加工性が悪化する場合がある。
本発明のゴム組成物には、上記変性天然ゴム及びカーボンブラックの他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、シランカップリング剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、上記変性天然ゴムに、上記カーボンブラックと、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。上記ゴム組成物を用いたタイヤは、低燃費性に優れる上、十分な破壊特性を有する。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<変性天然ゴムの製造例1>
(天然ゴムラテックスの変性反応工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、重合開始剤としてtert-ブチルハイドロパーオキサイド 1.2gとテトラエチレンペンタミン 1.2gとを加え、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
(凝固及び乾燥工程)
上記変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムAを得た。このようにして得られた変性天然ゴムAの質量から、単量体として加えたN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が100%であることが確認された。また、該変性天然ゴムAを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたが、抽出物を分析したところホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、得られた変性天然ゴムAの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.027mmol/gである。
<変性天然ゴムの製造例2>
単量体としてN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gの代わりに、4-ビニルピリジン 1.7gを加える以外は、上記製造例1と同様にして変性天然ゴムBを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムBを分析したところ、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、変性天然ゴムBの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.027mmol/gである。
<変性天然ゴムの製造例3>
フィールドラテックスに水を添加して、乾燥ゴム濃度30%のラテックスを得た。このラテックス2000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]を2-メルカプトエチルアミン 1.2gに加えて乳化したものを添加し、撹拌しながら60℃で8時間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスCを得た。その後、製造例1と同様に凝固及び乾燥することにより変性天然ゴムCを得た。また、得られた変性天然ゴムCの極性基含有量を熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析計を用いて分析したところ、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.021mmol/gであった。
<変性天然ゴムの製造例4>
上記濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら30分間撹拌した。次に、メタセシス触媒としてビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロライド 3.0gを加え、40℃で7時間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスDを得た。その後、製造例1と同様に凝固及び乾燥することにより変性天然ゴムDを得た。このようにして得られた変性天然ゴムDの質量から、添加したN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が84%であることが確認された。また、該変性天然ゴムDを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより天然ゴム分子に導入されていないオレフィン同士の反応物の分離を試みたところ、天然ゴム分子に導入されていないオレフィン同士の反応物が仕込みオレフィン量の6%検出された。従って、上記変性天然ゴムDの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.021mmol/gである。
<変性天然ゴムの製造例5>
フィールドラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、該ラテックスを凝固させ、更に、得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した。次に、得られた凝固物の乾燥ゴム含有量を求め、乾燥ゴム量換算で600gの凝固物と、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gと、tert-ブチルハイドロパーオキサイド(t-BHPO)1.2gとを混練機内で室温にて30rpmで2分間練り込み、均一に分散させた。次に、得られた混合物にテトラエチレンペンタミン(TEPA)1.2gを均一に加えながら、神戸製鋼製二軸混練押出機[同方向回転スクリュー径=30mm, L/D=35, ベントホール3ヶ所]を用い、バレル温度120℃、回転数100rpmで機械的せん断力を加えながら押し出すことにより、乾燥した変性天然ゴムEを得た。また、得られた変性天然ゴムEの質量から、単量体として加えたN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率は、83%であった。更に、該変性天然ゴムEを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたところ、ホモポリマーが仕込みモノマー量の7%検出された。従って、上記変性天然ゴムEの極性基含有量は、天然ゴム原材料中の固形ゴム成分に対して0.021mmol/gである。
<天然ゴムの製造例>
上記天然ゴムラテックスを変性反応工程を経ずに、直接、凝固及び乾燥させて天然ゴムFを調製した。
<カーボンブラックの調製>
比較としてカーボンブラックA(N234)及びカーボンブラックB(N330)を使用し、また、カーボンブラックA(N234)を1%のHNO3水溶液に加え、室温で30分撹拌し、懸濁液を濾過した後、150℃で12時間乾燥させてカーボンブラックCを調製し、更に、カーボンブラックB(N330)を1%のHNO3水溶液に加え、室温で30分撹拌し、懸濁液を濾過した後、150℃で12時間乾燥させてカーボンブラックDを調製した。また更に、カーボンブラック(N326)を1%のHNO3水溶液に加え、室温で30分撹拌し、懸濁液を濾過した後、150℃で12時間乾燥させてカーボンブラックEを調製した。
<カーボンブラックの評価>
上記のようにして得たカーボンブラックに対し、公知の方法でN2SA吸着比表面積を測定した。また、(i)カーボンブラックを105℃の恒温乾燥機中で1時間乾燥し、デシケータ中で室温まで冷却した後、(ii)TG測定用パン上に約10mgを精秤し、N2ガス中でTGを測定した。次に、(iii)40℃〜600℃まで10℃/minの昇温条件下で、(ii)の初期重量に対する200℃〜400℃までの重量減少%を測定した。結果を表1に示す。
<ゴム組成物の調製及び評価>
上記(変性)天然ゴム及びカーボンブラックを用い、表2に示す配合処方のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物に対して、下記の方法で耐破壊性及び発熱性を測定・評価した。結果を表3に示す。
(1)耐破壊性
上記ゴム組成物を加硫して得た試験片に対して、JIS K6251「加硫ゴムの引張試験方法」に準拠して引張試験を行い、引張強さ(Tb)を測定し、比較例1の試験片の引張強さを100として指数表示した。指数値が大きい程、引張強さが大きく、耐破壊性に優れることを示す。
(2)発熱性
上記ゴム組成物を加硫して得た試験片に対し、TOYOSEIKI製スペクトロメータを用い、動的歪振幅1.0%、周波数15Hz、測定温度50℃で損失正接(tanδ)を測定し、下記の式から発熱性指数を算出した。指数値が小さい程、tanδが低く、低発熱性に優れることを示す。
発熱性指数=(供試試験片のtanδ)/(比較例1の試験片のtanδ)× 100
*1 使用した(変性)天然ゴムの種類を表3に示す.
*2 使用したカーボンブラックの種類を表3に示す.
*3 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*4 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
表3から、未変性の天然ゴムに対してN2SAが20〜170m2/gの範囲にあり且つ上記式(I)の関係を満たすカーボンブラック配合した比較例2のゴム組成物は、未変性の天然ゴムに対して上記式(I)の関係を満たさない未処理のカーボンブラック配合した比較例1のゴム組成物に対して、低発熱性の改善効果が非常に小さかった。また、極性基を含む変性天然ゴムに対して上記式(I)の関係を満たさない未処理のカーボンブラック配合した比較例3のゴム組成物は、低発熱性の改善効果が不十分であった。更に、比較例3と比較例4の比較から、低級グレードのカーボンブラックを使用することで、低発熱性を改善できるものの、耐破壊性が悪化することが分かる。
一方、比較例1〜3と実施例1との比較から、使用するカーボンブラックのグレードを下げなくても、ゴム組成物を大幅に低発熱化でき、また、耐破壊性を維持できることが分かる。また、実施例2及び3から、使用するカーボンブラックのグレードを変更しつつ、上記式(I)の関係を満たすカーボンブラックを使用することで、低発熱性の向上に重点を置いたゴム組成物や、低発熱性と耐破壊性のバランスを高度に両立したゴム組成物が得られることが分かる。
更に、比較例5〜6及び実施例4〜6、比較例7〜8及び実施例7〜9、比較例9〜10及び実施例10〜12、比較例11〜12及び実施例13〜15から、極性基含有変性天然ゴムの種類を変更しても、上記の傾向が成立し、本発明の効果が種々の極性基含有変性天然ゴムに対して成立することが確認できる。