本発明は感光体ベルトや中間転写ベルト等のトナー像担持体に対向してコロナ転写手段を設け、前記トナー担持体上に形成されたトナー像を前記トナー像担持体と前記コロナ転写手段との間の転写領域に搬送された記録媒体上に転写する転写装置に関し、また、この転写装置を用いた画像形成装置に関する。
電子写真方式を用いた画像形成装置においては、感光体や中間転写体等のトナー像担持体上に形成されたトナー画像を記録媒体上に転写し、定着機により記録媒体面に溶融・固着する。
図12に、従来の転写装置における、感光ベルトや中間転写ベルト上に形成されたマイナス帯電トナーを、表面に凹部を有する用紙に転写する場合の問題点を説明する概略図を示す。
図12(a)は、低価格な粗面紙や、第1面へのトナー像定着時の熱によって用紙変形を生じた用紙の第2面のように、凹部15が存在する用紙に転写する場合を示す。このような種類の用紙では、凹部15の深さdは30〜50μm、幅Whが8〜10mmである。なお、感光ベルト32の表面は感光体層32a、電極層32bからなる。
コロナ転写手段である転写器16によって用紙14の裏面に付与されたプラス電荷18と、感光ベルト32の電極層32bとの間に働く静電電界により、マイナス帯電のトナー19(19a,19b)が用紙14面に引きつけられる必要がある。その場合、用紙14の平坦部では、用紙面とトナー像が密着するため、トナー19aには十分な転写電界が働く。そのため、トナー19aの転写性は良い。一方、用紙14表面の凹部15に対向するトナー19bには、用紙表面の空隙である凹部15の深さdにより、トナー19bに働く転写電界が小さくなり、トナー19bの転写性が低下して画像欠陥が生じる。
図12(b)は、コート紙に梨地、布目、絹目等のエンボス(浮き出し)加工が行われ、人工的に凹凸を形成した用紙(エンボス紙)の表面に、中間転写ベルト17上に形成されたカラートナー画像を転写する場合を示す。エンボス紙は、チケットやカタログ、パンフレットなどの表紙に使用される。エンボス紙の表面に形成された凹部15の深さdは10〜30μm、幅Whは0.2〜0.4mmである。この場合、中間転写ベルト17上に形成された2〜3層のカラートナーを一括して、より幅の狭い凹部15内部に転写する必要がある。
図12(a)の場合と同様、凹部15に対向するトナーに対しては、転写電界が小さく転写性が低下する。さらに、カラートナー画像の場合、トナーは多層となり、中間転写ベルト17面と接触する側のトナー20a,21a,22aには転写電界が作用しにくく、これらトナーの転写性がさらに低下する。
図13は、静電転写時にトナーに働く力を説明する図である。
図13(a)は、感光ベルトや中間転写ベルト等のトナー担持体37表面に形成されたトナー19を、転写器16を用いて用紙14に転写する場合に、トナー19に働く力について説明した図である。トナー19のトナー担持体37面への付着力は、鏡像力FMとファンデルワールス力Ffの和である。一方、トナー19を用紙14に引きつける力は、用紙14の裏面に付与されたプラス電荷18(トナーの帯電電荷と逆極性)に基づく静電気力FEである。
この鏡像力FMとファンデルワールス力Ffに打ち勝ってトナー19を用紙14に転写するためには、静電気力FEを大きくする必要がある。このため、転写器16に印加する電圧/電流値を高くして用紙裏面に付与するプラス電荷18のコロナ電荷量を増加し、転写電界Eを高める方法がある。しかし、転写電界を高くしすぎると局部的な電界集中により、トナーの飛び散り等の画質劣化が発生する。
これを防ぐ方法として、トナー19のトナー担持体37面への付着力(鏡像力FMとファンデルワールス力Ff)の低減、そして、トナーを用紙の方向に向かわせる新たな力をトナーに付与することが考えられる。
鏡像力FMは、トナーの帯電電荷とトナー担持体に生じた鏡像電荷との間に働く静電気力で、トナーの粒径とトナーの帯電電荷、トナー担持体の誘電率と厚みに依存する。一方、ファンデルワールス力Ffは非静電的な力であり、次式で与えられる。
Ff=A×R/(6×D2) ・・・・・・(1)
ここで、AはHamaker定数で、トナーとトナー担持体を構成する物質に依存する。Rはトナーの半径、Dはトナーとトナー担持体面との分離距離である。(1)式からわかるように、Ffはトナーの半径Rに比例し、トナーとトナー担持体面との分離距離Dの2乗に反比例する。
トナーの感光体面への付着力を低減するため、図13(b)に示すように、トナー担持体37の裏面にトナー担持体を加振する加振手段38を設置する方法がある。トナー担持体37を上下に振動させることによりトナー19に慣性力FBを付与し、FEと合わせてトナー担持体からのトナー19の離脱力を増加し、トナー19を電気的かつ機械的に用紙の凹部15内に入り込ませ転写させる。なお、慣性力FBは、トナーの重量と振動周波数、振動振幅に依存する。これにより、表面に凹凸のある用紙14へのモノクロトナー画像の転写(図12(a))や、多層トナー像の転写(図12(b))が可能となる。
上記したトナー担持体の裏側から振動エネルギーを付与する加振手段として、電磁振動子や超音波振動子を用いる方法が提案(特許文献1)され、超音波振動子を用いる方式が実用化されている。
図13(b)に示したように、圧電体の縦振動(d33モード)を利用した超音波振動子38bとホーン38aを組み合わせて周波数20〜100kHz、振動振幅が数μmの共振器を構成している。ホーン38aの振動先端部を、感光ベルトや中間転写ベルト等のトナー担持体の裏面に接触させることにより、トナー担持体を介してトナーに振動エネルギーを付与してトナーの付着力を低減し、トナーの用紙への転写性を向上するものである。
プリンタや複写器等の画像形成装置においては、広幅印刷のニーズが増加しており、印刷幅は、カット紙プリンタではA3サイズ幅、連続紙プリンタで20インチ幅までサポートされている。このため、トナー担持体の幅も広くなり、加振手段による振動エネルギー付与領域も420mm〜500mm超となっている。
一方、一つの共振器でカバーできる加振手段としての幅は、超音波振動子とホーンとの共振特性から決まり、対応可能な幅は2〜3インチである。このため、20インチ幅をサポートするには、7〜10個の共振器を横一列に配列する必要があるが、一方で、複数個の共振器を駆動する時の相互干渉(クロスカップリング現象)が課題となる。そのため、隣接するホーンを接触させないようにした構成が知られている(特許文献2)。
また、共振器を複数個配列した場合、相互干渉により個々の共振器の振動特性(主に振動速度)が均一とならず、特に両サイドで振動速度が低下する傾向がある。このため、振動特性が均一となるように、中央部と両サイド部で駆動電圧を変える必要があり、それぞれの共振器の駆動を別々の大きさの電圧で駆動する等の対策が提案されている(特許文献3)。
特公昭55−20231号公報
特開平4−234076号公報
特開平4−234082号公報
しかしながら、特許文献2に示された、隣接するホーン同士を接触させない構成では、隣接ホーン間はトナー担持体に振動エネルギーを付与出来ない。
また、特許文献3のように、中央部と両サイド部で駆動電圧を変える構成は、複数の電源が必要となる。
その他に超音波振動子として、ボルト締めランジェバン型振動子がある。この素子の駆動には、駆動電圧が200〜300V、周波数が20kHz以上の高周波・高電圧電源が必要であり、20インチ幅をサポートする投入電力は、数百〜1kWとなってしまう。
加えて、従来の圧電バイモルフ素子構成(片持ち支持構造)の加振手段では、素子の幅を広くすると幅方向の屈曲振動の共振と長手方向の屈曲振動の干渉が生じるため、長手方向の振動が不安定となり、目的とする広幅の加振源としての機構を充分確保できない。
本発明は、上記従来技術の課題点に鑑み、数kHzで、低電圧の電源で対応できる高効率な加振手段を用いて、表面に凹凸を有するエンボス紙や粗面紙への転写や、両面印刷の第2面のような凹部のある用紙の転写において、画像欠陥のない良好な転写を可能とする転写装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、トナー像を一時的に担持するトナー担持体と、該トナー担持体に対向して設けられ、該トナー担持体との対向領域である転写領域に搬送される記録媒体に前記トナー担持体上に形成されたトナー像を静電的に転写する転写手段と、前記トナー担持体を挟んで前記転写手段と対向する位置に前記トナー担持体へ振動エネルギーを付与する加振手段とを備えた転写装置において、前記加振手段は、各圧電体表面に振動の長手方向に平行な複数の短冊形状電極部を有する一対の圧電体を、導電性弾性部材の両面に分極方向を同方向にして貼り合わせた構造の圧電バイモルフ素子を有し、且つ前記一対の圧電体の振動長手方向の一端側を固定部材により支持固定した片持ち支持構造体であって、前記各圧電体の振動長手方向の他端側に形成される圧電バイモルフ素子の振動長Lbよりも、前記短冊形状電極の幅Lkが短いことを特徴とする。
また、隣接する短冊形状電極部間の各々の距離Lsは、各前記圧電体の厚さtkよりも長いことを特徴とする。
また、前記一対の圧電体の各表面に形成される電極は、前記複数の短冊形状電極部と、これらが連結される共通電極部とで構成される櫛歯状電極であることを特徴する。
また、前記導電性弾性部材は櫛歯形状であり、該櫛歯形状と前記圧電体の櫛歯状電極とが重なるように前記圧電体が貼り合わされることを特徴とする。
また、前記複数の短冊形状電極部の各々の幅Lkは、前記圧電バイモルフ素子の振動長Lbに対し、Lb/4≦Lk≦Lb/2であることを特徴とする。
また、前記固定部材はその一部に開口部を有し、且つ前記共通電極部表面を覆うように設置され、前記圧電バイモルフ素子を駆動するための給電線が、前記共通電極部から前記開口部を通して引き出されることを特徴とする。
また、前記圧電体は、圧電セラミックス板又は圧電フィルムの表面及び裏面に分極処理をするための全面電極を形成し、両電極間に直流高電圧が印加されて分極処理された後、エッチング処理により電極が形成されることを特徴とする。
また、前記圧電バイモルフ素子は、少なくとも記録媒体への転写領域幅と同じか、それ以上の幅の導電性弾性部材の両面に、櫛歯形状電極部が表面に形成された一対の圧電体を所定の隣接間距離Lpを設けて幅方向に配列して貼り合わせた複数組の圧電バイモルフユニットから構成され、電圧印加時のそれぞれの圧電体の伸張と収縮を導電性弾性部材を共通とした屈曲振動として取り出す圧電バイモルフ素子であることを特徴とする。
また、トナー像が表面に形成されたトナー担持体と、回動する前記トナー担持体に対向して配置され、前記トナー像を前記記録媒体上に静電的に転写する転写部を備える画像形成装置において、前記転写部として上記した転写装置を用いたことを特徴とする。
さらに、前記トナー担持体は、中間転写ベルト又は感光ベルトの何れかであることを特徴する。
本発明の転写装置では、幅方向の振動が抑制されるため、長手方向の均一な振動が広い幅にわたって得られ、従って、表面に凹凸を有するエンボス紙や粗面紙への転写や、両面印刷の第2面のような凹部のある用紙の転写において、画像欠陥のない良好な転写を可能とする。
初めに、従来構成となる一般的な圧電バイモルフ素子の構成について説明する。
図9は、従来の圧電バイモルフ素子の構成を示す図である。圧電バイモルフ素子は、導電性弾性部材4(以下、シム材と称する)の両側に、PZT(ジルコン酸チタン酸塩)等の圧電セラミックスからなる2枚の圧電体1,5を、それぞれの自発分極2a,2bの分極方向を同方向にして接着剤を用いて貼りつけたものである。接着層での電位分担によるロスを考慮すると、接着剤としては導電性接着剤を用いることが望ましい。
圧電体1,5の表面の電極3,6から、それぞれ、給電リード線13a,13bが、また、シム材4からは給電リード線13cが引き出される。給電リード線13a,13bが接続された端子S1と給電リード線13cの端子S2間に電圧を印加すると、逆圧電効果により、圧電体1,5のX方向及びY方向に電界(電圧)に比例した伸縮が生じる。端子S2をアース電位とし、端子S1にプラス電圧を印加すると、電界の方向と各圧電体の分極方向との関係から、圧電体1はX,Yのいずれの方向も収縮し、圧電体5はX,Yのいずれの方向も伸張する。この結果、圧電バイモルフ素子7Aは圧電体5側を凸にして反り返った形状となる。一方、端子S1にマイナス電圧を印加すると圧電体1側を凸にして反り返った形状となる。
図10に、圧電バイモルフ素子の動作原理を示す。
図10(a)は、圧電バイモルフ素子7の形状を示したもので、X方向の長さLcをY方向の幅Lwよりも充分長くしたもので、X方向の逆圧電効果がY方向の逆圧電効果よりも大きく出る形状である。
図10(b),図10(c)は、Z方向の断面において、図10(a)に示した圧電バイモルフ素子7のX方向の一端を、固定部材9a,9bで挟持した片持ち支持構成とし、直流電源36により電圧を印加した時の動作原理を示す。
端子S1にプラス電位、端子S2をアース電位とした場合は図10(b)のように、圧電体1はX軸(長手方向)に収縮、圧電体5はX軸(長手方向)に伸張する。この結果、圧電バイモルフ素子7はシム材4を中心軸として上方向に変位Uで屈曲する。一方、端子S1にマイナス電圧を印加した場合は、図10(c)のように、バイモルフ素子7は下側方向に変位Uで屈曲する。従って、圧電バイモルフ素子7に交流電圧を印加すると、図10(b)と図10(c)の状態を交互に繰り返して上下(Z軸方向)に往復振動する。
圧電バイモルフ素子7の変位U、共振周波数f及び最大発生力FWは次式で与えられる。
変位U=3×d31×(Lb/tt)2×(1+ts/tt)×α×V (m) ・・・・・・(2)
共振周波数f=0.162×(tt/Lb2)×√(Yn/ρ) (Hz) ・・・・・・(3)
最大発生力FW=(Lw/4)×(tt/Lb)3×U×Yn (N) ・・・・・・(4)
ここで、Lbは圧電バイモルフ素子の振動長、ttは圧電体1,5及びシム材4を合わせたトータル厚み、tsはシム材の厚み、また、αは非線形補正係数定数で2である。Ynは、バイモルフ素子(圧電体とシム材含む)としてのヤング率、ρは密度である。
圧電バイモルフ素子7は、超音波振動子に比べて振動周波数は数kHz以下と低いものの、変位Uは数百μm〜数mmであり、超音波振動子の10μm以下に比べて、数桁大きく取れることが特長で、加えて消費電力が小さく、電磁的雑音が発生しない等の長所がある。
本発明では、図13(b)に示した従来構成の超音波振動子38bとホーン38aとからなる加振手段に代えて、圧電バイモルフ素子を用い、トナー担持体37の裏面に振動エネルギーを加えてトナーに慣性力FBを付与し、トナーとトナー担持体との付着力を低減させることを考える。このときの慣性力FBは次式で与えられる。
FB=4π2f2・U・m (N) ・・・・・・(5)
ここで、fは圧電バイモルフ素子の振動周波数、mはトナー1個の重量である。
(5)式から分かるように、慣性力FBは振動周波数fの2乗、変位U,mの1乗に比例する。慣性力FBを大きくするには、2乗で寄与する振動周波数fを高くするのが効率的であり、式(3)から振動長Lbを短くする必要がある。
また、一定の張力を持って保持されたトナー担持体37を加振するためには、圧電バイモルフ素子7の振動時の最大発生力FWを大きくする必要があり、このために、式(4)からLwを大きくしなければならないことが分かる。
図11に、Lwを大きくした場合の圧電バイモルフ素子及びこれを用いた加振手段を示す。
図11(a)は、圧電バイモルフ素子の形状を示し、Lw>>Lcである。圧電バイモルフ素子7をX方向の一端で固定部材9a,9bで挟持した片持ち支持構成を考える。振動長LbはLcよりも更に短くなる。矩形波交流電源12により駆動した時、X方向(長手方向)で生じる屈曲振動35aに加えてY方向(幅方向)で生じる屈曲振動35bの影響が加わるため、互いに干渉して不安定な振動となり、トナー担持体37の裏面に均一な振動エネルギーを加えるという目的を達成できない。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明の転写装置の特徴である、加振手段の要部構成を説明する。
本発明に用いる加振手段には、相互干渉(クロスカップリング)が生ずる縦振動(d33モード)を利用した共振器方式ではなく、圧電体の横効果振動(d31モード)を利用したバイモルフ素子方式を用いる。
図5は、加振手段に用いられる圧電バイモルフ素子7の構造を説明する図である。
図5(a−1),図5(a−2)に、圧電バイモルフ素子7を構成する圧電体1を示す。図5(a−1)は、圧電体1の上側の電極3aを示し、図5(a−2)は、電極3a面と反対側の面に設けられる電極3bの形状を示す。電極3a,3bの説明の為に個別に示したものであり、実際の圧電体1は、電極3a,3bの双方が設けられた構成となる。なお、圧電体1の寸法は、長さLc、幅Lwである。電極3aは、幅Lk1、長さLfの複数の短冊型形状部3aKと、短冊型電極部が連結される共通電極3aLからなる櫛歯状電極である。一方、裏面の電極3bは全面電極である。
図5(b)に、シム材4の形状を示す。シム材4の材質としては、燐青銅、Fe−42Ni、ステンレス等を用いることができる。
図5(c−1),図5(c−2)に、圧電体5の上側と下側の電極6a,6bの形状を示す。電極6aは全面電極、電極6bは幅Lk2、長さLfの複数の短冊型形状部6bKと、短冊型電極部が連結される共通電極6bLからなる櫛歯状電極である。隣接する短冊型電極部間のスペースはLs2である。基本的に、Lk1=Lk2、Ls1=Ls2であることが望ましい。
図5(d)は、圧電体1,シム材4,圧電体5の順に、接着剤8を用いて張り合わせてなる圧電バイモルフ素子7を示す図である。このとき、電極3aのパターンと電極6bのパターンとが重なるように張り合わせる。この結果、シム材4を共通にして、圧電バイモルフ素子要素7e1,7e2,7e3,7e4が4個並列に構成されることになる。各圧電バイモルフ素子要素は、幅Lk(=Lk1=Lk2)となる。
隣接する短冊型電極部間のスペースをLs1(Ls2)、圧電体の厚みをtkとした時、隣接する短冊型形状電極間の圧電体領域には電圧が印加されないようにLs1>tk、Ls2>tkとするのが望ましい。
なお、圧電体1,5は上記電極部の櫛歯状加工に関わらず加工は行わない。寧ろ積極的に各櫛歯電極部が圧電体で連結された構造とする。このことにより、振動の均一性を保つ効果が得られる。
また、圧電体の素材としてPZTを用いる場合は加工の困難性を伴うが、この点についても新たな加工を必要としないという利点もある。
図7は、図5(d)に示した圧電バイモルフ素子7を、長さLhの固定部材9a,9bを用いて片持ち支持構成としたもので、振動長Lb(=Lc−Lh)の加振手段23である。また、振動領域の先端部には、トナー担持体の裏面と接触して圧電バイモルフ素子の屈曲振動エネルギーを、トナー担持体に付与するための突起部材11を設けた。突起部材11は、アルミニウム等の金属やポリアセタールやベークライト等の樹脂材を用いることができる。
高い周波数で駆動するには、1/4≦Lk/Lb≦1/2とすることが望ましい。その理由として、自由長(長さLb)方向の運動に比べて、幅方向(Lk)の運動の影響を小さくするためには、幅方向(Lk)をLbよりも小さくする。程度としては、Lk/Lb≦1/2程度が良い。
一方、バイモルフ素子の振動時の発生圧力は(4)式で与えられる。発生圧力はLw(Lkと同じ)に比例、Lbに逆比例する。ベルトを振動させるためには、発生圧力を確保する必要があり、Lwが小さくなるとベルトを押し上げる力が低下する。このため、Lk/Lbの下限が存在する。その下限値としては1/4以上であると良い。図8に、圧電バイモルフ素子の幅Lk/自由長Lbと発生力Fwとの関係図を示す。
固定部材9aの一部に切り込み部10aを設け、ここから給電リード線13aを共通電極領域3aLに導電性ペーストを用いて接続し、同様に固定部材9bの一部に設けた切り込み部10b(図示せず)から、給電リード線13bを共通電極領域6bLに接続した。また、給電リード線13cをシム材4に接続した。
振動長Lb>>Lkであるので、圧電バイモルフ素子要素7e1,7e2,7e3,7e4では、長手方向の振動が優勢となる。このため、Lw>Lbであるにも関わらず、従来構成(図10(a)の形状)の圧電バイモルフ素子と同じ振動モードとなる。
すなわち、本実施例の圧電バイモルフ素子の構成を広幅の圧電バイモルフ素子に適用し、且つ振動長Lbを短くして高い周波数で駆動したとしても、屈曲振動35aを主振動とする均一な振動の加振手段が得られ、本加振手段を転写手段に用いることで転写性向上に寄与出来る。
図6は、図5を用いて説明した実施例1とは別構成となる圧電バイモルフ素子の構成を示す。
図6(a−1),図6(a−2)は、それぞれ、圧電体1の上側と下側の電極3a,3bの形状を示す。図5との違いは、下側の電極3bも幅Lk3、長さLfの複数の短冊型電極部3bKと、短冊型電極部が連結される共通電極3bLからなる櫛歯状電極とした点である。
さらに、図6(b)に示すように、シム材4の形状も幅Lk4、長さLfの図6(c−1),図6(c−2)は、圧電体2の上側と下側の電極6a,6bの形状を示す。図5との違いは、電極6aも幅Lk5、長さLfの複数の短冊型電極部6aKと、短冊型電極部が連結される共通電極6aLからなる櫛歯状電極としたことである。
図6(d)に、圧電体1,シム材4,圧電体5をこの順に、電極3a,3b、シム材4、電極6a,6bの形状が重なるように接着剤8で張り合わせた圧電バイモルフ素子7を示す。シム材4を共通にして、幅Lk(=Lk1=Lk2=Lk3=Lk4=Lk5)、およびそれぞれの間隔Ls(=Ls1=Ls2=Ls3=Ls4=Ls5)、長さLfの圧電バイモルフ素子要素7e1,7e2,7e3,7e4が4個並列に構成される。圧電バイモルフ素子7に駆動電圧が印加された際、圧電体1,5に働く電界は圧電体面に完全垂直となり、隣接する短冊型電極間の圧電体領域には電界は働かない。このため、本構成の圧電バイモルフ素子を用いることで、さらに安定な均一振動の加振手段が得られる。従って、実施例1の素子(図5)に比べて、さらに振動の安定化を図ることが可能となる。
次に、広幅圧電バイモルフ素子、及びこれを用いた加振手段について説明する。
図1は、本発明の転写装置に用いる広幅圧電バイモルフ素子を用いた加振手段の説明図である。
図1(a)は、広幅圧電バイモルフ素子7Aの構成を示す。本広幅実施例1として図5(d)で示した7e1,7e2,7e3,7e4の圧電バイモルフ素子要素が4個並列に配置された圧電バイモルフ素子ユニットをシム材4を共通部材として4組(7a,7b,7c,7d)構成したものである。7a,7b,7c,7dの4組の圧電バイモルフ素子ユニットからなる幅Lが511mm、長さLcが30mm(この内、シム材4の端子幅Ltは5mm)の広幅圧電バイモルフ素子7の形状を示す。
図1(b−1)は、シム材4の形状を示す。厚み50μm、長さLmが30mm、幅Lが511mmの燐青銅板である。このシム材を共通部材として4組の圧電バイモルフ素子ユニットを形成する。
この圧電バイモルフ素子ユニット7a,7b,7c,7dを、実施例1で用いた図5により説明する。
圧電体1,5は、圧電定数d31が300×10−12(m/V)のPZTで、厚みtkが300μm、幅Lwが127mm、長さLcが25mmである。焼結・成形されたPZT板の分極処理は、圧電体の両面全域にメッキや焼き付け、蒸着等により電極を形成し、100℃前後の絶縁油の中で両電極間に2〜3kV/mmの直流電圧を印加し、数十分間保持することにより行われ、圧電体の面に直角方向に分極2aが形成される。
圧電体1については、上側の電極面はエッチング処理により、図5(a−1)に示すような電極領域3aL,3aKを残して除去することにより、櫛歯状の電極3aを形成した。一方、下側の面は処理せず、電極3bとなる。同様の方法で、圧電体5の分極処理、及び電極6a,6bの形成を行った。
これらの4組の圧電体1,5を、図1(b−1)のシム材4の両面に、それぞれの分極方向2a,2bを同方向(下向き)に、かつ、隣接する圧電体間距離Lpを1mmとして接着剤を用いて接着し、広幅圧電バイモルフ素子7Aとして組み立てた。なお、圧電体間距離Lpを設けたのは、素子駆動時に隣接する圧電体同士が接触するのを防止するためである。
図1(c)は、図1(a)の広幅圧電バイモルフ素子7Aを用いた加振手段23を示す。圧電バイモルフ素子7の一端に、ポリアセタール樹脂製の突起部材11を接着剤を用いて貼り付けた。突起部材11の断面形状は台形で、高さ(Z方向)は3mmである。また、長さLhが15mmの固定部材9a,9bを用いて、前記バイモルフ素子を挟持した。そして、給電リード線13aを、固定部材9aに設けた切り込み部10a1,10a2,10a3,10a4から、上側の各圧電体のそれぞれの共通電極に接続する。同様に、給電リード線13bを、固定部材9bに設けた切り込み部10b1,10b2,10b3,10b4(図示せず)から下側の各圧電体の共通電極に接続する。
給電リード線13a,13bを纏めて、駆動電源12の高圧側に、シム材4への給電リード線13cをアース側に接続する。振動長Lbは10mmである。駆動電源12により、圧電バイモルフ素子7に交流電圧を印加すると、先端に設けられた突起部材11が上下に振動する。
図2は、図1(c)に示す広幅圧電バイモルフ素子からなる加振手段23を用いた本発明の転写装置を説明する図である。ポリイミド樹脂からなる中間転写ベルト17上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の4色のマイナス帯電のトナー(19,20,21,22)からなるカラー画像を用紙14としてエンボス紙の表面に転写する。
回動する中間転写ベルト17の裏面側に加振手段23を配置した。用紙14の裏面には、コロナ転写手段である転写器16により、プラス電荷18を付与する。加振手段23により、ベルト17に振動エネルギーを与え、トナーに慣性力を生じさせる。用いたトナーの粒径は9μmである。
振動長Lbは10mmである。波高値±40V、周波数1.1kHzの矩形波交流を印加すると突起部材11は約±250μmの振幅で上下に振動した。これにより、中間転写ベルト17上のトナーには約10nNの慣性力が働く。
トナー19b,20b,21b,22bは、プラス電荷18による静電気力の他に、上記慣性力が加わり、ファンデルワールス力による束縛から逃れて用紙14の凹部15および平坦部に飛翔する。これにより、表面の凹凸の大きなエンボス紙である用紙14に画像欠陥のない良好なトナー転写が可能となる。広幅圧電バイモルフ素子7Aの幅Lは511mmであり、20インチ幅の連続用紙に対応することができる。
なお、広幅圧電バイモルフ素子7Aの幅は変更可能であり、A3サイズの横送りの場合、420mm幅とすれば良い。エンボス紙以外の粗面紙や第1面へのトナー像定着時の熱による用紙変形(シワ等)により生じた用紙第2面の凹部にも画像欠陥のない良好な転写を行うことができる。また、圧電体として圧電セラミックスであるPZTを用いて説明してきたが、PVDF等の圧電性プラスチックを用いることも可能である。
実施例2にて説明した圧電バイモルフ素子を用いた広幅圧電バイモルフ素子、及びこれを用いた加振手段について説明する。
図1(b−2)は、実施例3で用いたシム材とは異なる形状のシム材4を示す。シム材4は、厚み50μm、幅Lが511mm、長さLmが30mmのFe−42Ni板を櫛歯状に加工したものである。幅Lwは127mm、Lpは1mm、Lk4は31mm、Ls4は1mmである。
シム材4を共通部材として、4組の圧電バイモルフ素子ユニットを形成した。なお、使用した圧電体1,5は、実施例2で説明した圧電体1,5と同じものである。実施例2にて説明したように、圧電バイモルフ素子ユニットは、圧電体1の上下の電極3a,3b、シム材4、圧電体5の上下の電極6a,6bは、いずれも櫛歯状電極であり、それぞれの寸法を合わせ、それぞれが重なった構造とする。
実施例3では、シム材4の形状が平板であったため隣接電極間で圧電体に斜め電界が働いたが、本実施例4の構造の圧電バイモルフ素子では、電圧印加時に圧電体1,5に加わる電界は圧電体面に完全垂直となり、短冊型電極部間の圧電体領域の電界はゼロとなる。このため、実施例3に比べて、隣接する圧電バイモルフ素子の振動の影響を無くすことができる。特に、高周波領域で駆動する際に、安定した振動形態の広幅圧電バイモルフ素子が得られることを確認した。この圧電バイモルフ素子を用いた加振手段の外観は、実施例3(図1(c))と略同様である。なお、広幅圧電バイモルフ素子の幅Lがさらに広くなっても振動の安定性に優れた加振手段性能が得られる。
図3は、本発明の転写装置を用いた画像形成装置の構成を示す図である。
Kトナー画像形成部29a、Cトナー画像形成部29b、Mトナー画像形成部29c、Yトナー画像形成部29dは、現像剤が異なるだけで基本的に同じ構成である。そのため、Kトナー画像形成部29aで構成と機能を説明する。
OPCの感光ドラム26aを帯電器24aで帯電後、レーザ光学系やLED等の露光部25aで印刷画像に対応した光パターンを露光して静電潜像を形成し、現像機27aにて感光ドラム26a上にKトナー画像を形成する。トナーはマイナス帯電トナーであり、上記トナー画像は正極性の電圧が印加された転写ロール28aにより、中間転写ベルト17面に転写される。
回動する中間転写ベルト17面上に、Cトナー画像、Mトナー画像、Yトナー画像が順次転写され、中間転写ベルト17上に、フルカラー画像が形成される。中間転写ベルト17の外側にコロナ転写器16、内側に実施例1で説明した加振手段23を配置した。駆動電源12は矩形波交流電源であり、圧電バイモルフ素子7の突起部材11が下方に変位した時に、中間転写ベルト17の裏面に接触してトナーに慣性力を付与する。慣性力を付与されたトナー19b,20b,21b,22bは、中間転写ベルト17面とのファンデルワールス力に打ち勝って、プラス電荷18に基づく静電気力により飛翔し、転写部に搬送されたエンボス紙のカット紙である用紙14に転写される。
転写されたトナーは、ヒートロール31aとバックアップロール31bから構成されるヒートロール定着装置により、用紙14上に溶融固着される。加振手段23の駆動は、用紙種に応じて選択することができ、コート紙や表面の比較的平坦な上質紙の場合にはコロナ転写だけで行い、エンボス紙等の表面に凹凸のある用紙の場合にのみ、加振手段23を動作させても良い。もちろん、用紙種に係わらず動作させればトナーに慣性力が付加される分、転写性能が向上することは言うまでもない。
また、用紙の搬送系を連続紙対応に変更すれば、連続紙にも対応できることはいうまでもない。
図4は、本発明の転写装置を用いた画像形成装置の別の構成を示す図である。
本実施例では、連続紙である用紙14に印刷する。回動するOPCの感光ベルト32に対向して、Kトナー画像形成部29a、Cトナー画像形成部29b、Mトナー画像形成部29c、Yトナー画像形成部29dを配置する。OPCの感光ベルト32を、帯電器24aで帯電後、レーザ光学系やLED等の露光部25aで、Kトナー画像に対応した光パターンを露光して静電潜像を形成し、現像機27aで感光ベルト32上にKトナー画像を形成する。
次に、帯電器24bで感光ベルト面を再帯電し、露光部25aによる露光で帯電電位の下がった領域の電位を回復させる。そして、Cトナー画像に対応した光パターンを露光部25bで露光して静電潜像を形成し、現像機27bにて感光ベルト32上にCトナー画像を形成する。このように、順次、Mトナー画像、Yトナー画像を形成することにより、感光ベルト32上にカラー画像が形成される。
少なくとも4つの現像機のうち、現像機27aを除く、現像機27b,27c,27dは、現像ロール上の磁気ブラシが感光ベルト面と接触しない非接触現像機とする。これは前段の現像機にて形成されたトナー画像を磁気ブラシ(図示せず)で掻き取らないためである。
回動する感光ベルト32の外側に転写器16を、内側に1組の加振手段23a,23bを配置する。両加振手段23a,23bは、実施例4で説明した構成の圧電バイモルフ素子を用いた加振手段で、それぞれ駆動電源12a,12bにより駆動される。ここで、駆動電源12a,12bの波形は、例えば矩形波を用い、その位相差を180度とした。
圧電バイモルフ素子7a,7bの突起部材11a,11bが上下方向に振動し、中間転写ベルト17裏面に衝撃を与えた時、トナーは中間転写ベルト17面から離脱するための慣性力を受ける。ボックス紙やロール紙等の連続紙である用紙14が、トラクタ33aと33bとにより転写部に搬送される。
ここで、転写部は、用紙案内ガイド34、転写器16から構成される。感光ベルト32上のトナー像は、用紙14裏面に与えられたプラス電荷により、用紙14に転写される。ヒートロール31aとバックアップロール31bとから構成されるヒートロール定着装置により、トナーは用紙に溶融固着される。連続紙対応の画像装置では、用紙の高速搬送が可能であるために印刷速度の高速化が進み、現在ではプロセス速度1.7m/s機が実用化されている。
本実施例では、2つの加振手段23a,23bを設け、両突起部材11a,11bが交互に振動するため、駆動周波数をfとすると、中間転写ベルト32の振動周波数は2fとなり、実質的に1秒間にベルト上のトナー画像に慣性力を付与する回数を2倍に増加させることができる。このため、画像形成装置の高速化、高精細化に対応することが可能となる。本実施例では矩形波交流電源を用いたが、正弦波交流電源も使用することができる。また、用紙の搬送系をカット紙対応に変更すれば、カット紙にも対応できることはいうまでもない。
実施例5の中間転写ベルトと同様、感光ベルト32がトナー担持体となる。このように、可撓性を有するトナー像担持体から記録媒体にトナー像を転写する場合に、本発明の転写装置を適用することができる。また、実施例4,5では、4色のトナーを用いたカラー印刷の場合を示したが、モノクロ画像の場合にも適用できることは言うまでもない。
上記したように、本発明の転写装置に用いる圧電バイモルフ素子は、電極形状に特徴があり、高い周波数で駆動するために、振動長を短くしても長手方向の屈曲振動が均一で、転写性の向上に寄与する。また、駆動電圧は±数十Vと低電圧で、且つ、消費電力は数W以下と、超音波振動子を用いる方式に比べて、大幅な低消費電力化を図ることができる。
さらに、本発明の転写装置に用いた圧電バイモルフ素子構造は、圧電体の表面に形成する電極形状に特徴を有し、圧電体の大きさには関係しない。このため、複数個の圧電体を導電性弾性部材(シム材)の両面に貼り合わせた広幅構成とすることが可能である。
また、優れた振動特性が得られる加振手段により、表面に凹凸を有するエンボス紙や粗面紙への転写や、両面印刷の第2面のような凹部のある用紙の転写において、画像欠陥のない良好な転写装置が得られる。従って、画像形成装置に本発明の転写装置を適用することにより、画像欠陥の無い良好な印刷を行うことが可能となる。
本発明の転写装置に用いる圧電バイモルフ素子を用いた加振手段の実施例を示す構成図。
本発明の転写装置の実施例を示す構成図。
本発明の画像形成装置の構成図。
本発明の別の画像形成装置の構成図。
本発明の圧電バイモルフ素子を説明する分解図。
本発明の別の圧電バイモルフ素子を説明する分解図。
本発明の圧電バイモルフ素子を用いた加振手段の構成図。
圧電バイモルフ素子の幅Lk/振動自由長Lbの比と発生力Fwとの関係を表す図。
従来の圧電バイモルフ素子の構成図。
圧電バイモルフ素子の動作特性を示す説明図。
従来の圧電バイモルフ素子を用いた加振手段の問題点を説明する図。
表面に凹部を有する用紙への静電転写の課題の説明図。
静電転写時にトナー担持体上のトナーに働く力と超音波振動装置を用いた従来の転写装置の説明図。
符号の説明
1,5:圧電体、2:自発分極、4:シム材、3,6:電極、7:圧電バイモルフ素子、8:接着剤、9:固定部材、10:切り込み部、11:突起部材、12:駆動電源、14:用紙、15:凹部、16:転写器、17:中間転写ベルト、19,20,21,22:トナー、23:加振手段、34:用紙案内ガイド、37:トナー担持体、38:超音波振動子。