JP5019110B2 - 赤外線厚さ計 - Google Patents

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Description

本発明は、照射した光の吸収に基づいて薄膜フィルムの厚さを測定する赤外線厚さ計に関する。
従来の技術として、フィルムの吸収感度を測定することでフィルムの厚さを測定する赤外線厚さ計がある。
図4は従来の赤外線厚さ計の原理を示す説明図である。光源51から出射された光はバンドパスフィルタ52を通過し、測定フィルムに吸収感度がある光と感度がない光に分光される。バンドパスフィルタ52の分光特性はモータ53の回転により切り換えられる。バンドパスフィルタ52で分光された光は、偏光フィルム54を透過する際にフィルムシート55のフィルム面に対して平行な成分だけに偏光され、フィルム55に斜め方向に入射し透過する。フィルム55の流れ方向(MD方向ともいう)の光源と反対側に反射用ミラー56が置かれ、ミラー56で反射された光は再度、フィルムシート5を透過し、検出器57で光の信号レベルに応じた電気信号に変換される。検出器57から出力される検出信号に基づき、フィルム55に吸収感度がある光とない光の場合を比較し、吸光指数を求めることで、フィルム5の厚さを測定することができる。上記で、フィルム55に光を斜め方向に入射すると、通常はフィルム55の表裏で干渉現象が発生して測定誤差となるが、バンドパスフィルタ52で分光した光を、偏光フィルタ54を透過させ、フィルム面に対して平行な成分だけに偏光してフィルム55に入射させることにより、干渉現象を避けることができる。
赤外線厚さ計に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
特開平4−212003号公報
図4の赤外線厚さ計によれば、フィルム表面と平行な成分に偏光した光をフィルムに対して斜め方向から入射するので光干渉の影響を除去でき、精度よく薄いフィルムの厚さを測定できる。
しかし、赤外線厚さ計は、フィルム分子間の赤外線吸収を利用して厚さを測定するセンサであるが、延伸フィルムにおいては、フィルム内部の分子配列の向きが異なる角度に配列されていると配向の影響を受けてしまい、測定誤差となるため、精度の良い測定が行えなかった。
なお、一般的な薄いフィルムは、原反と呼ばれるフィルムに熱を加えて柔らかくし、流れ方向と幅方向とに引っ張る(延伸する)ことで薄くすることにより生産される。このときの引っ張る力の分布により、フィルムの分子配向が決定され、フィルムの幅方向の分子配向に分布が生じる。
したがって、垂直に光を入射させる赤外線厚さ計では、配向の影響をほとんど受けなかったが、光を斜め方向に入射させることにより、配向の影響を受けやすくなるという問題があった。
図5は、ポリエステルフィルム15μmを図4の赤外線厚さ計で測定した結果であり、測定ポイントを中心に測定フィルムを10°毎に回転させ、角度と吸収指数の関係を記録した結果を示すチャートである。測定フィルムを、測定ポイントを中心に回転させると吸収指数が大きい角度と少ない角度が現れる。延伸したフィルムの厚さをオンラインで測定すると延伸の強さ、延伸の方向により配向の違いが発生し、同じ厚さのフィルムにおいても赤外線の吸収指数が変化するため、フィルム厚さの測定誤差が発生し、正確な厚さ測定が行えないことになる。
フィルム厚さ計とは異なるセンサで、フィルムの分子配向を測定する分子配向計がある。測定原理は、フィルム表面に垂直に光を照射し、フィルムの配向に応じて散乱した光の分布を測定中心の周囲に複数個配置した検出器で測定することで、フィルムの分子配向を測定する。測定中心に対する散乱光の分布は、図5の分布と相関があり、受光した信号レベルの最大値と最小値の比率を配向指数として定義する。
ここで、以下に分子配向計の原理を説明する。
図6に分子配向計の検出部の基本的構成を示す。赤外発光ダイオード(LED)61の光をレンズ62で平行光にしてフィルム65の被測定フィルム面に垂直に照射する。投光軸に対して大きな角度の円周上に反射光強度分布を検出するフォトダイオード(PD)63を測定面に向けて複数個配置する。このときに、LED61とPD63の位置関係が変動すると反射強度分布に影響があるので、一体ブロック構造にしてお互いの位置関係が変動しないようにする。
また、フィルムシート65の流れ方向(MD方向)に対してこのブロックの取り付け位置を固定することで各PDの方向を固定する。複数のPD信号は増幅されA/D変換されて演算部に送られる。演算部では複数のPD63で検出された光強度分布を、投光軸中心を原点とする極座標上に展開し、楕円状の分布を作成する。その様子を図7に示す。これを最小自乗法で楕円関数近似し、その短軸72の向きから「配向角度」を、その楕円71の形状(長軸bと短軸aの比)から配向の強さ(配向指数)を求める(次式参照)。
配向角=θ (1)
配向指数=(b/a−1) (2)
配向角度の極性は、図7を上方から見たフィルム面とした場合、図中のθの矢印方向がプラスの極性と定義する。
なお、フィルム配向計は、測定ポイントの周囲の複数の角度から斜めに光を照射し、垂直方向に反射した光の成分を検出する方式もある。
図8は、異なる分子配向を持つフィルムの厚さを赤外線フィルム厚さ計で測定した結果と実厚みとの誤差を示す特性曲線図である。赤外線フィルム厚さ計で幅方向に延伸比率が異なるフィルムの厚さを測定すると、配向指数が大きくなるほど、赤外線フィルム厚さ計の指示値は低めになる傾向がある。これは、フィルムの配向指数が大きくなるほど、フィルム分子の結合されている方向性が赤外線厚さ計で測定する光軸に対し、垂直成分が多くなるので、赤外線が吸収される成分が減り、同じ厚さであっても、厚さ指示値が低くなってしまう。
本発明はこのような課題を解決しようとするもので、薄いフィルムなどの測定において、フィルムの表裏面での干渉や分子配向の影響を受けず、精度よく測定できる赤外線厚さ計を提供することを目的とする。
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明に係る赤外線厚さ計は、
偏光した第1の光をフィルム表面に対して斜め方向の角度から入射し、吸収による光の減衰量に基づいてフィルム厚さを測定する赤外線厚さ計において、
前記第1の光の前記フィルム表面への入射点の、前記フィルムの流れ方向の近傍に照射された第2の光の散乱分布を検出する分子配向検出部と、
該分子配向検出部から出力される検出信号に基づいて前記フィルムの配向指数を演算する配向演算部と、
前記配向指数に対する前記フィルム厚さの誤差特性に基づいて前記フィルム厚さを補正演算する補正演算部と
を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の赤外線厚さ計において、
前記分子配向検出部は、前記フィルム表面に垂直に第2の光を照射する光源と、
該光源の周囲に配置され前記フィルムで散乱された光を検出する複数の検出器と
を備えたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、
請求項1記載の赤外線厚さ計において、
前記配向演算部は前記分子配向検出部から出力される複数の検出信号の最大レベルと、最低レベルから配向指数を演算する
ことを特徴とする。
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、偏光した第1の光をフィルム表面に対して斜め方向の角度から入射し、吸収による光の減衰量に基づいてフィルム厚さを測定する赤外線厚さ計において、前記フィルム表面に照射した第2の光の散乱分布を検出する分子配向検出部と、該分子配向検出部から出力される検出信号に基づいて配向指数を演算する配向演算部と、前記配向指数に対する前記フィルム厚さの誤差特性に基づいて前記フィルム厚さを補正演算する補正演算部とを備えたことにより、薄いフィルムなどの測定において、フィルムの表裏面での干渉や分子配向の影響を受けず、精度よく測定できる赤外線厚さ計を提供することができる。
以下本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る赤外線厚さ計の一実施例のセンサ部30を示し、(A)は側面方向から見た構成説明図、(B)は上面方向から見た構成説明図である。
赤外線厚さ計のセンサ部30は赤外線厚さ検出部10と分子配向検出部20とから構成される。
赤外線厚さ検出部10において、光源11は赤外線光を放射し、バンドパスフィルタ12は、光源11から出射された赤外線光を測定に必要な波長帯に分離するため、出射された光を測定フィルム15に吸収感度がある光と感度がない光に分光する。モータ13はバンドパスフィルタ12の分光特性を回転により切り換える。偏光フィルタ14は、バンドパスフィルタ12で分光された光を入射して、フィルムシート15のフィルム面に対して平行な成分だけを偏光して通過させ、フィルム15に対して、斜め方向から入射させる。反射用ミラー16は、フィルム15の流れ方向下方に置かれ、フィルム15を透過した光を反射して、再度フィルムシート15を透過させる。通常、2つの透過点の距離は2センチ前後である。検出器17は、再度フィルムシート15を透過し、フィルム15の厚さに応じて吸収され、減衰した赤外線光を検出して光信号レベルに応じた電気信号に変換する。
分子配向検出部20において、光源21は、LEDなどからなり、フィルム15の被測定面を垂直に照射する。検出器23は投光軸に対して大きな角度の円周上にフォトダイオード(PD)などが被測定面に向けて複数個配置されたもので、被測定面からの反射光強度分布を検出する。検出器23は4個以上が配置されるが、図1では検出器が12個配置された場合を示す。このときに、光源21と検出器23の位置関係が変動すると反射強度分布に影響があるので、一体ブロック構造にしてお互いの位置関係が変動しないようにする。
なお、赤外線厚さ検出部10におけるフィルムシート15上の光照射位置と分子配向検出部20におけるフィルムシート15上の光照射位置(入射点)とは一致するのが理想であるが、それが難しい場合は、幅方向の位置を合わせた上で、フィルムシート15の流れ方向(MD方向ともいう)に沿って15センチ以内の近傍に配置することが望ましい。赤外線厚さ検出部10と分子配向検出部20相互の配置はこの点を考慮して行う。
図2は上記の赤外線厚さ計全体の構成ブロック図である。
演算部40は厚さ演算部41、配向演算部42及び補正演算部43から構成される。
厚さ演算部41は、赤外線厚さ検出部10から出力される検出信号に基づき、フィルム15に吸収感度がある光とない光の場合を比較し(比率をとるなど)、周知の方法で吸光指数を求めることによりフィルム15の厚さを算出する。配向演算部42は、分子配向検出部20から出力される検出信号に基づいて配向指数を算出する。補正演算部43は、厚さ演算部41で求めたフィルムの厚さに対して、配向演算部42で求めた配向指数による補正演算を行う。
図1及び図2に示した赤外線厚さ計の動作を次に説明する。
図1の赤外線厚さ検出部10において、光源11から出射された光はバンドパスフィルタ12を通過し、測定フィルム15に吸収感度がある光と感度がない光に分光される。バンドパスフィルタ12の分光特性はモータ13の回転により切り換えられる。バンドパスフィルタ12で分光された光は、偏光フィルタ14を透過してフィルムシート15のフィルム面に対して平行な成分の偏光となり(第1の光)、フィルム15に対して斜め方向から入射する。フィルム15を透過した光は反射用ミラー16で反射され、再度フィルムシート15を透過して検出器17に入射し、光の信号レベルに応じた電気信号に変換される。
図1の分子配向検出部20において、光源21から出射された光はレンズなど(図示せず)で平行光にされた後(第2の光)、フィルム15の被測定面を垂直に照射する。被測定面で反射し、散乱された光は。複数の検出器23に入射して散乱光の強度分布が検出される。
図2において、赤外線厚さ検出部10から出力される検出信号は演算部40に送られ、厚さ演算部41に入力されて、フィルム15に吸収感度がある光とない光の場合の検出信号を比較する周知の方法で吸光指数が演算され、吸光指数に基づいてフィルム15の厚さが求められる。
分子配向検出部20から出力された検出信号は、増幅された後、A/D変換されて演算部40に送られ、配向演算部42で配向指数が演算される。配向演算部42では、検出器23から出力される複数の検出信号の内、反射信号が最大となったレベルと、最低になったレベルから、前述の(2)式に基づいて配向指数を演算により求める。
厚さ演算部41で求められたフィルムの厚さ及び配向演算部42で求められた配向指数は補正演算部43に入力され、配向指数によりフィルムの厚さの補正を行う補正演算が行われる。ここで、厚さ演算部41で演算したフィルムの厚さ(補正前)をT1、配向演算部42で測定したフィルムの配向指数をAとし、配向指数の関数をF(A)とすると、配向指数で補正したフィルムの厚さT2は(3)式で与えられる。
T2 = T1−F(A) (3)
すなわち、厚さ演算部41で演算したフィルムの厚さT1を配向指数の関数F(A)で補正することにより、実際の厚さT2を測定することができる。ここで、補正関数F(A)は、配向指数に対するフィルム厚さの誤差特性を示す図8の特性を赤外線厚さ検出部10について予め測定しておき、その結果をテーブル化してメモリに記憶させたものを用いる。また、近似式による演算を行ってもよい。
図3は、赤外線厚さ計で48μmの厚さのポリイミドフィルムの厚さを測定した例について、配向補正前後の指示値を示す図である。配向補正を行う前では、本来赤外線の吸収によって減衰する光の信号強度が、配向による影響を受けて変化してしまうため、測定誤差となり、正しい厚さ測定が行われていない。一般に、配向指数が小さいフィルムでは、厚さ指示値が高く表示されるが、配向指数が大きいフィルムでは、赤外線が吸収される成分が少なくなり、実際の厚さよりも厚さ指示値が低く表示されてしまう。
これに対し、同じ測定箇所を分子配向検出部20で測定し、求めた配向指数で補正することにより、補正後の演算結果は、実厚みL1と相関がある結果が得られた。
上記のような構成の赤外線厚さ計によれば、厚さ演算部41で求めたフィルムの厚さを、配向演算部42で求めた配向指数で補正演算を行うことにより、配向の影響を受けずに精度良くフィルムの厚さを演算表示することが可能となる。特にフィルムの厚さが薄い場合に効果が大きい。
また、偏光した光をフィルム表面に対し斜め方向の角度から入射させてフィルム厚さを測定することにより、光干渉の影響を受けずに精度良く、フィルム厚さを測定できる。
また、延伸フィルムの生産工程において、走査手段によりフィルムの幅方向の厚さと配向分布を同時に測定できることにより、品質の向上を図ることができる。
また、フィルムの配向指数を測定することができるので、厚さの補正以外の目的にも使用することができる。例えば、配向指数をオンラインで測定することにより、幅方向への引っ張り過ぎによるフィルム破断の予想検知が可能となり、フィルム破断による生産ライン停止を避けることにより、生産効率のアップを図ることができる。
なお、上記の実施例では、配向演算部42において、配向指数は、複数個ある検出器のうち、検出感度が最大値となった数値と最小値となった数値の比率により求めているが、図7に示すように、複数の検出部23で検出された光強度分布を最小自乗法で楕円関数近似し、その短軸72の向きから配向角度を、その楕円71の形状(長軸bと短軸aの比)から前記(2)式で配向指数を求め、補正演算部43において配向角度と配向指数の両方を用いて厚さ演算部41から出力されたフィルムの厚さを補正演算してもよい。この場合には、配向角が大きい場合などにも精度よくフィルムの厚さを補正することができる。
また、本提案で示した分子配向検出部20の例は、1つの光源から出た光の散乱を周囲の複数ある検出器で散乱光の分布を検出するが、周囲に配置した複数の光源から光を照射し、中央部分に設置した1つの検出器で、各光源からの光の散乱分布を測定してもよい。
本発明の実施の形態に係る赤外線厚さ計の一実施例のセンサ部30の構成説明図である。 図1の赤外線厚さ計の構成ブロック図である。 図1の赤外線厚さ計で厚さを測定した例について、配向補正前後の指示値を示す図である。 従来の赤外線厚さ計の原理を示す説明図である。 図4の赤外線厚さ計の測定結果から角度と吸収指数の関係を示したチャートである。 分子配向計の検出部の基本的構成を示す図である。 図6の装置による反射光強度の楕円分布を示す極座標チャートである。 異なる分子配向を持つフィルムの厚さを図4の赤外線フィルム厚さ計で測定した結果と実厚みとの誤差を示す特性曲線図である。
符号の説明
15 フィルム
20 分子配向検出部
21 光源
23 検出器
42 配向演算部
43 補正演算回路

Claims (3)

  1. 偏光した第1の光をフィルム表面に対して斜め方向の角度から入射し、吸収による光の減衰量に基づいてフィルム厚さを測定する赤外線厚さ計において、
    前記第1の光を前記フィルム表面に入射する入射点の位置の近傍であって、前記フィルム表面に照射する第2の光の散乱分布を検出する分子配向検出部と、
    該分子配向検出部から出力される検出信号に基づいて前記フィルムの配向指数を演算する配向演算部と、
    前記配向指数に対する前記フィルム厚さの誤差特性に基づいて前記フィルム厚さを補正演算する補正演算部と、
    を備えたことを特徴とする赤外線厚さ計。
  2. 前記分子配向検出部は、前記フィルム表面に垂直に第2の光を照射する光源と、
    該光源の周囲に配置され前記フィルムで散乱された光を検出する複数の検出部と
    を備えたことを特徴とする請求項1記載の赤外線厚さ計。
  3. 前記配向演算部は前記分子配向検出部から出力される複数の検出信号の最大レベルと、最低レベルから配向指数を演算する
    ことを特徴とする請求項1記載の赤外線厚さ計。
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