前記課題を達成するために、本発明によれば、回路が形成された内層回路基板に対して塗膜形成工程、穴明け工程、及び導体層形成工程を少なくとも経て多層プリント配線板を製造する方法における上記塗膜形成工程に用いる熱硬化性樹脂組成物であり、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物が提供される。
さらに本発明によれば、支持体ベースフィルム上に下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有するウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物を含む膜が半硬化状態で形成されていることを特徴とする熱硬化性接着フィルムが提供される。なお、ここでいう半硬化状態とは、室温で固体であって、加熱状態では流動化するものをいう。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、導体との充分な密着性を有し、しかも高耐熱性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低吸水率、寸法安定性に優れる層間絶縁樹脂層を形成できる。同様に、本発明に係る熱硬化性接着フィルムは、支持体ベースフィルム上に、前記ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)を必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物を含む膜が半硬化状態で形成されたものであるため、比較的低温でラミネートすることができ、導体との充分な密着性を有し、しかも前記のような諸特性に優れた層間組緑樹脂層を作業性良く形成することができる。従って、かかる熱硬化性樹脂組成物あるいは熱硬化性接着フィルムを用いることにより、高性能、高密度の多層プリント基板を作業性良く製造できる。
本発明者らは、多層プリント配線板の眉間絶縁樹脂層として、高耐熱性、難燃性、低誘電率及び導体との充分な密着性を満足する熱硬化性樹脂組成物あるいはさらに比較的低温でラミネートすることができる熱硬化性接着フィルムについて鋭意検討した結果、前記熱硬化性樹脂組成物あるいは熱硬化性接着フィルムが、作業性が良好で、これを用いた多層プリント配線板が極めて優れた性能を有することを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、前記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有することを特徴としており、該樹脂組成物を用いることにより、導体との充分な密着性を有し、しかも高耐熱性、低誘電率、低誘電正接、低吸水率、寸法安定性に優れる層間絶縁樹脂層を作業性良く形成することができる。
また、本発明に係る熱硬化性接着フィルムは、支持体ベースフィルム上に、前記ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)を必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物からなる膜が半硬化状態で形成されているため、比較的低温でラミネートすることができ、導体との充分な密着性を有し、しかも前記のような諸特性に優れた層間絶縁樹脂層を作業性良く形成することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において特に重要な成分は、前記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂(A)であり、物性はポリウレタン特有のものであるが、エポキシ樹脂と同様のハンドリング性を有し、形成される層間絶縁樹脂層に対して以下のような重要な作用・効果をもたらす。
(a)ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応硬化物が高耐熱性と高いガラス転移点Tgを実現させる。
(b)エポキシ基との反応が可能となり、エポキシ樹脂の特徴である接着性、電気特性、作業性、低温硬化性を実現・向上できる。
(e)ポリウレタン樹脂(A)はエポキシ樹脂(B)中のエポキシ基と反応し、更にこの反応で生成する水酸基をイソシアネートにてブロックする反応を有する為、低吸水率、低誘電率、低誘電正接、低線膨張係数を実現できる。
(f)ポリウレタン樹脂が特にイソシアヌレート環を含んでいる場合、通常の線状構造と異なり、ハイパーブランチ型ポリマー構造の高分子体となる。そのため、高分子体であるにも拘らずエポキシ樹脂や有機溶剤と任意に溶解することができ、作業性は低分子化合物もしくはオリゴマーと同程度であり、しかも高分子材料としての特性を有する。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、以上のような作用・効果を発揮するポリウレタン樹脂(A)をエポキシ樹脂(B)とを含有するため、エポキシ樹脂の前記したような特性発揮及び高沸点有機溶剤使用による塗膜乾燥時の泡発生防止や塗布時の粘度変化防止の効果と相侯って、導体との充分な密着性を有する。また、本発明に係る熱硬化性接着フィルムは、以上のような作用・効果を発揮するポリウレタン樹脂(A)をエポキシ樹脂(B)と組み合わせて含有する熱硬化性樹脂組成物から膜が形成されているため、比較的低温でラミネートすることができ、導体との充分な密着性を有する。しかも、これらは高耐熱性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低吸水率の層間絶縁樹脂層を作業性良く形成することが可能となる。
木発明の熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性接着フィルムは、回路が形成された内層回路基板に対して塗膜形成工程もしくはフィルムラミネート工程による樹脂絶縁層形成、穴明け工程、及び導体層形成工程を少なくとも経て多層プリント配線板を製造する方法における上記樹脂絶縁層形成に好適に用いることができる。
上記多層プリント配線板を製造する方法の形態としては、例えば、回路が形成された内層回路基板に本発明の熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥するか、本発明の熱硬化性接着フィルムをラミネートした後、必要に応じて熱硬化させ、次いでドリル又はレーザー加工機にて穴(バイアホール、スルーホール等)をあけ、さらに当該穴及び乾燥塗膜もしくはフィルム上に導体めっきを施す工程を少なくとも経る第一の形態や、内層回路基板に熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥するか、熱硬化性接着フィルムをラミネートし、その乾燥塗膜もしくはフィルム上に銅箔をプレス又はラミネートにより一体成形し、必要に応じて熱硬化させ、次いでドリル又はレーザー加工機にて穴をあけ、当該穴の部分にめっきを行ない内層回路と導通させた後、表層の導体をエッチングしてパターン形成する工程を少なくとも経る第二の形態、などが好適に採用される。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物あるいは熱硬化性接着フィルムを用いる多層プリント配線板の製造方法について説明し、その後、本発明の熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性接着フィルムについて詳細に説明する。
先ず、熱硬化性樹脂組成物を用いる場合、回路が形成された内層回路基板にローラーコート、スクリーン印刷、カーテンコート、ダイコート等にて塗布する。このとき熱硬化性樹脂組成物の粘度は十分な膜厚が得られ、塗装むらやスジが発生しにくいことから25℃において0.1〜400dPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜300dPa・sである。
このときの熱硬化性樹脂紳成物は、回転粘度計で測定した回転数5rpmの粘度と回転数50rpmの粘度との比が、1.1以上であること、すなわちTI値が1.1以上であるとコーティング後にダレが発生しにくく、また、塗膜にスジが発生しにくいことから好ましい。さらに好ましくは1.1〜2.0である。また、必要に応じてアスベスト、オルベン、ベントン、微紛シリカ等の公知慣用のチキソ化剤を加えることが好ましい。さらに顔料、消泡剤、添加剤なども添加することができる。
なお、上記TI値の範囲内にある熱硬化性樹脂組成物は、塗布工程の後に行なう乾燥工程も基板を垂直にした状態のまま行なうことができ、省スペースと基板への挨の付着防止の観点から有効である。この乾燥工程では、溶剤を充分に揮発させるように設定しなければならない。そのためには、溶剤の揮発が良好で、塗膜中に突沸現象を招きにくいことから乾燥温度80〜130℃で乾燥時間5〜60分が好ましい。
次に、第一の形態においてはポストキュアー(最終硬化)を行なう。最終硬化の温度は硬化が十分で、且つ、内層基板や硬化塗膜に対する熱劣化が生じにくいので、電気特性、機械的特性が悪くなりにくいことから150〜200℃で30〜120分の範周で行なうことが好ましい。
その後、硬化した塗膜を必要に応じて研磨する。研磨の目的は、
(1)塗布乾燥後に生じる凹凸をフラットにする、
(2)研磨後に行なう表面の粗化工程での薬品のアタックを容易にする(表面滞れ性向上)、
(3)膜厚を希望の厚みに薄くする、
ことであるが、硬化後に充分な平坦性や膜厚がある場合等、必要ないと判断できる際には研磨しなくてもよい。このとき、使用できる研磨の種類としては、ベルトサンダー、パフ、ナイロンブラシ等がある。
一方、本発明の熱硬化性接着フィルムを用いる場合、回路が形成された内層回路基板に真空フィルムラミネ一夕ーで加熱ラミネートして一体成形する。また、必要に応じて、真空フィルムラミネ一夕ーで加熱ラミネートした後、さらに熱板プレス機にてフィルム表面を加熱加圧してレベリング(平坦化)することが好ましい。
ここで、上記工程で用いる真空ラミネ一夕ーは、基板を1枚ずつ処理でき、温度が70〜180℃、真空度が5Torr以下で、銅箔との隙間をなくし、樹脂を溶融させ密着させるものが好ましい。また、レベリングさせる熱板プレス機も、ラミネ一夕ーから連続的に1枚ずつ処理でき、70〜180℃で5〜30kg/cm2の圧力がかけられる装置が好ましい。また、ラミネート、レベリングにかける時間は銅箔との密着性とレベリング性が十分、量産性も良好な事から30秒から2分以内が好ましく、両方が同じ時間であると連続的に処理できるので好ましい。また、平坦性が要求されない場合、レベリングの工程を省くこともできる。これらラミネートに使用できる装置としては、MEIKI社製MVLP−500や、モートン社VA−720、VA−724、NPVA−1、NPVA−24などがある。この際、プリプレグや他の接着シートを介して本発明の熱硬化性接着フィルムを接着することもできる。
上記工程では、真空フィルムラミネ一夕ーを用いた加熱ラミネートにより接着フィルムが再溶融し、内層回路に強力に接着する。また、接着フィルム表面の内層回路による凹凸は、熱板プレス機にて接着フィルムを加熱加圧してレベリングする際に解消され、そのまま硬化するので、最終的にはフラットな表面状態の多層板が得られる。そして、加熱ラミネート後の基板は、熱風循頻式もしくは遠赤外線等で最終硬化される。そのときの硬化温度は130〜200℃で、30〜120分の範囲が適当である。このとき、支持体ベースフィルムは取り除いていても構わないし、そのまま硬化後に取り除いても構わない。
次に、前記のようにして硬化塗膜又は接着性フィルムからなる樹脂絶縁層が形成された基板に、必要に応じてCO2やUV−YAGレーザー等の半導体レーザ又はドリルにて穴をあける。このとき、穴は基板の表と裏を導通させることを目的とする貫通穴(スルーホール)でも、内層の回路と組成物表面の回路を導通させることを目的とする部分穴(ペリードビア)のどちらでもよい。
穴明け後、穴の内壁や底部に存在する残渣(スミヤ)を除去することと導体(その後に形成する金属めっき)とのアンカー効果を発現させるために、表面の凹凸の形成を市販のデスミヤ液(粗化剤)で同時に行なう。また、この工程はプラズマ等のドライプロセスでも可能である。
次に、デスミヤ液で残渣を除去した穴や、該薬品で凹凸を生じた塗膜表面に導体めっきを施し、さらには回路を形成する。その方法としては、
(1)基板全面に無電解の金属めっきを施し、さらに電解めっきにて金属めっき層を形成した後、形成したいパターン通りに市販のネガ型パターンレジスト又はポジ型パターンレジストのパターンを形成する。その後、金属をエッチングすることにより、最外層の導体パターンを得るパネルめっき法、
(2)塗膜表面上に逆パターンの永久めっきレジストを形成し、そのレジストが形成されていない部分に無電解めっきにて導体パターンを形成するアディティブ法、
(3)上記(1)の方法と同様、基板全体に無電解金属めっきを施した後、逆パターンのネガ型又はポジ型めっきレジストのバターンを形成する。その後、電解めっきにてレジストのパターンが存在しない部分に選択的にめっき層を形成させる。次いで、パターンレジストを剥離し、パターンレジストに隠されていた無電解めっき層をエッチングすることにより導体パターンを得るセミアディティブ法、
などがある。
汎用性においては上記(1)の方法、ファインパターン化を要求する場合には上記(2)と(3)の方法が好ましい。また、いずれの方法においても、無電解めっき又は電解めっき後もしくは両方のめっきを施した後に、金属のストレス除去、強度向上の目的で80〜180℃で10〜60分のアニールと呼ばれる熱処理を施してもよい。
ここで用いる金属めっきとしては、銅、ズズ、はんだ、ニッケル等、特に制限は無く、複数組み合わせて使用することができる。また、ここで用いるめっきの代りに金属のスパッタ等で代用することも可能である。
第二の形態においては、熱硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜が形成された又は熱硬化性接着フィルムがラミネートされた内層回路基板と銅箔を一体成形する工程が必要になる。その方法としては、以下に述べるようなラミネート法、プレス法などがある。
(1)ラミネート法
熱硬化性樹脂組成物を用いた場合、基板上に形成した乾燥塗膜上に、片面もしくは両面に粗面を有する銅箔又は樹脂付き銅箔を前述した第一の形態で説明した真空フィルムラミネ一夕ーで加熱ラミネートして一体成形する。また、必着に応じて、真空フィルムラミネ一夕ーで銅箔又は樹脂付き銅箔を加熱ラミネートした後、さらに熱板プレス機にて塗膜を加熱加圧してレベリング(平坦化)することが好ましい。
ここでラミネート、レベリングにかける時間は銅箔との密着性とレベリング性が十分で、且つ、量産性にも優れることから30秒から2分以内が好ましく、両方が同じ時間であると連続的に処理できるので好ましい。また、平坦性が要求されない場合、レベリングの工程を省くこともできる。この際、プリプレグや接着シートを介して銅箔を乾燥塗膜に接着することもできる。
一方、熱硬化性接着フィルムを用いる場合、前述した第一の形態に示した真空ラミネ一夕ーを用い、同様に内層回路基板にラミネートする。ラミネートした後、第一の形態では加熱硬化を行なうが、この第二の形態の場合、支持体であるベースフィルムを剥離した後、さらに同様のラミネート工程を片面もしくは両面に粗面を有する銅箔又は樹脂付き銅箔を接着フィルムの上にもう一度行なうことにより、一体成形する。また、必要に応じて、さらに熱板プレス機にて加熱加圧してレベリング(平坦化)することが好ましい。この際、プリプレグや接着シートを介して銅箔を熱硬化性接着フィルムに接着することもできる。
この工程では、塗布乾燥した塗膜又は接着フィルムは、真空フィルムラミネ一夕ーを用いた加熱ラミネートにより再溶融し、銅箔の粗面に入り込んでそのアンカー効果により強力に接着することで充分なピール強度が得られるようになる。また、塗布乾燥した塗膜又はラミネートした接着フィルムの内層回路による凹凸面は、熱板プレス機にて塗膜を加熱加圧レベリングする際に解消され、そのまま硬化するので、最終的にはフラットな表面状態の多層板が得られる。そして、銅箔又は樹脂付き銅箔の加熱ラミネート後の基板は、熱風循環式もしくは遠赤外躁等で最終硬化される。そのときの硬化温度は150〜200℃で30〜120分の範囲である。
(2)プレス法
基板上に形成した乾燥塗膜上に、片面もしくは両面に粗面を有する銅箔又は樹脂付き銅箔を重ね合せ、熱板プレス機で加熱加圧して一体成形を行なう。プレスの条件としては、機械の性能により多少異なるが、140〜200℃で1〜4時間、圧力15〜50kg/cm2の範囲で行なう。この際、プリプレグや接着シートを介して銅箔を乾燥塗膜に接着することもできる。
この加熱加圧工程では、塗布乾燥した塗膜は、熱板プレス機を用いた加熱加圧により再溶融し、熱硬化する。このとき、前記塗膜は、銅箔の粗面に入り込んでそのアンカー効果により強力に接着することで充分なピール強度が得られるようになる。また、塗布乾燥した塗膜の内層回路による凹凸面は、再溶融する際に解消され、そのまま硬化するので最終的にはフラットな表面状態の多層板が得られる。
これらの工程で用いられる銅箔としては、ジャパンエナジー社製のJTCやJTC−A、JTC−FM、古河サーキットフォイル社製のGTSやGTS−MP、F3−WS等の市販の電解銅箔を用いることが好ましい。また、さらに好ましくは片面又は両面が予め粗面化処理された銅箔が良く、さらに各種金属めっきで表面をさらに処理したり、公知慣用のカップリング剤、有機キレート剤を用いて処理したものが好適である。また、ここで使用する銅箔は銅箔又は樹脂付き銅箔としてのハンドリングが十分で作業中に破損しにくいこと、積み重ね時に銅の重みにより膜厚が変化しにくく、使用目的の高性能なプリント基板を製造するという観点、銅箔が厚いことは回路形成に不利になることから9μm以上、18μm以下の厚さを有することが好ましい。
このようにして得られた基板にCO2レーザー、UV−YAGレーザー等の半導体レーザーもしくはドリルを用いて穴をあける。特にCO2レーザーを用いて穴明け加工する時は、穴をあける部分の銅箔を先にエッチングしてガイドを設けるか、レーザー光が銅箔に充分吸収するよう銅箔を処理することが必要になる。また、穴は基板の表と裏を導通させることを目的とする貫通穴(スルーホール)でも、内層の回路と乾操塗膜又は接着フィルムからなる樹脂絶縁層表面の回路を導通させることを目的とする部分穴(ベリードビア)のどちらでもよい。
次に、穴を導通させることを目的に公知慣用のデスミヤ処理を行ない、引き続き無電解銅めっき、電解銅めっきを施すことにより、スルーホール、ペリードビア、又はコンフォーマルビアを形成し、表裏の銅箔及び銅箔と内層回路とを導通させる。
その後、プリント配線板で用いられている既知のパターンエッチング方法にて、表層の銅箔をエッチングしてパターン形成することにより、所望の多層プリント配線板が得られる。
あるいは、回路のファインパターン化を目的にラミネートした銅箔を薄くなるまでエッチングしてからパターンレジストを用いて回路形成することも可能であり、さらに、全面エッチングして前記第一の形態の回路形成方法(2)(アディティブ法)か(3)(セミアディティブ法)で回路形成することも可能である。
前記第一の形態、第二の形態に拘らず、こうして得られた多層プリント配線板は、さらに工程を繰り返して多層化したり、また、プリプレグや樹脂付銅箔を重ね合せ、熱板プレス機を用いて加熱加圧成形をすることにより多層化を行なっても構わない。
以上説明した多層プリント配線板の製造方法において、用いる内層基板としては、例えば、プラスチック基横やセラミック基板、金属基板、フィルム基板などを使用することができ、具体的には、ガラスエポキシ基板やガラスポリイミド基板、アルミナ基板、低温焼成セラミック基板、窒化アルミニウム基板、アルミニウム基板、ポリイミドフィルム基板などを使用することができる。そして、内層の回路(配線パターン)は銅が好ましく、さらに銅回路は化学的な表面処理が施されたものが好ましい。バフ研磨等の物理的な研磨を施した回路上では、本発明の組成物は密着性が劣り、はんだ熱で膨れを生じる場合がある。好適な化学処理としては、汎用の黒化処理や、銅を薬品によりエッチングし粗化面を形成する処理、例えばメック杜エッチボンド、アトテック社ボンドフィルム、マクダーミット社のマルチボンド等が好ましい。特に本発明の工程では、コーティング時又はラミネート持に内層銅回路が傷付く可能性があるので、後者のエッチングタイプの表面処理が傷が付き難い点で優れている。
前記したように、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、前記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを必須成分として含有する。
一方、本発明に係る熱硬化性接着フィルムの組成は、前記したように、前記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを必須成分として含有するさらに本発明に係る熱硬化性接着フィルムの組成は、少なくとも片側に支持フィルムが存在している。これは、本発明の接着フィルムが一定の温度で溶融し、接着性を発現するため、接着させる時のカバーの働きをするものである。つまり、接着フィルムの両側に接着させる場合は、支持フィルの無い側を非接着体に密着させ、接着もしくは仮接着し、その後、支持フィルムを剥離してさらに非接着体を密着させ、接着させることにより実現できる。また、この接着フィルムの保管、輸送の際には、シート状、ロール状に拘らず、支持フィルムと反対側の層に保護フィルムを使用することができる。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表されるようにポリウレタン結合としてイソシアネート基とフェノール性水酸基が連結した構造を有する。ポリウレタン樹脂(A)としては、なかでも有機溶剤に溶解するポリウレタン樹脂が取り扱い易いことから好ましい。
(式中、Xは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基を示す。)
前記一般式(1)で表される構造を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、下記一般式(3)で表される構造を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
(上記式中R
x1、R
x2は同一でも異なっていても良く、ポリイソシアネート化合物から二つのイソシアネート基を除いた残基を示す。)
また、前記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、下記一般式(4)で表される構造を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
(上記式中Rx
1はポリイソシアネート化合物から二つのイソシアネート基を除いた残基を示す。)
前記一般式(3)及び一般式(4)中のRx1は同一でも良いし異なっていても良い。
ここで、上記一般式(3)においてRx1および/またはRx2が後述する一般式(11)のR5に該当すると、一般式(11)に一般式(1)が結合した構造を有した分岐状ポリウレタン樹脂となる。上記一般式(4)においてRx1が後述する一般式(11)のR5に該当すると、一般式(11)に一般式(2)が結合した構造を有した分岐状ポリウレタン樹脂となる。
前記一般式(1)および/または一般式(2)中のXとしては、例えば、下記構造等が挙げられる。
(式中R
1は、単結合あるいは2価の連結基であり、R
2は同一でも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。)
(式中R
3は、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基または下記一般式(7)で示される構造を示す。)
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)としては、一般式(1)及び(2)のXとして前記一般式(5)、(6)、(8)の郡から選ばれる一種以上の構造を有するポリウレタン樹脂が好ましい。
前記一般式(5)示される構造中のR1としては例えば、単結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、オキソ基、ジメチルシリレン基、フルオレン−9−ジイル基、トリシクロ[5.2.1.02,8]デカン−ジイル基等の2価の結合基等が挙げられる。また、R2としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素原子数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
尚、本発明において、カルボニル基は下記構造式(1a)、スルホニル基は下記構造式(1b)、メチレン基は下記構造式(1c)、イソプロピリデン基は下記構造式(1d)、ヘキサフルオロイソプロピリデン基は下記構造式(1e)、オキソ基は下記構造式(1f)、ジメチルシリレン基は下記構造式(1g)、フルオレン−9−ジイル基は下記構造式(1h)、トリシクロ[5.2.1.02,8]デカン−ジイル基は下記構造式(1i)でありこれらは、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、ジシクロペンタジエン変性ビスフェノール等の残基である。(なお、図中の*は結合部位を表す。)また、ポリフェノール化合物、例えば、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂、ナフトールとアルキルフェノールとホルムアルデヒド縮合物から合成されるポリフェノール樹脂等から2つの水酸基を除いた構造残基等も挙げられる。
前記R1の中でも、単結合及び前記一般式(1b)、一般式(1c)、一般式(1d)で示される構造が溶解性、相溶性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られ、また、ポリウレタン樹脂(A)を得る際の合成もしやすいことから好ましい。また、前記R2の中でも、水素原子、メチル基が好ましい。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、前記一般式(1)で表される構造および/または一般式(2)で表される構造を有すれば良いが、中でも前記一般式(1)で表される構造および一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂がより好ましい。ここで、前記一般式(1)で示される構造及び前記一般式(2)で示される構造中のXは同一でも良いし異なっていても良い。
ポリウレタン樹脂(A)として前記一般式(1)で表される構造と一般式(2)で表される構造とを有するポリウレタン樹脂の具体例としては、例えば、下記一般式(10)で表される構造等を挙げることができる。
(上記式中Rx
2はポリイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた残基を示す。nは0〜100の整数である。)
前記一般式(10)で表される構造中のXとしては、前記一般式(1)で表される構造と一般式(2)中のXで表される構造等が挙げられる。
前記一般式(3)及び一般式(4)で示されるポリウレタン樹脂中でRx1、Rx2が2官能のジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた残基である場合は、一般式(10)で示される様な線状の構造を有するポリウレタン樹脂となる。また、Rx1、Rx2が3官能以上の多官能のイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた残基である構造をとる場合は、分岐状の構造を有するポリウレタン樹脂となる。
前記一般式(2)で示される末端の水酸基はフェノール性水酸基であり、このフェノール性水酸基は、多官能フェノール化合物の1個の水酸基がウレタン結合で樹脂骨格に連結した以外の残りの1個のフェノール性水酸基である。一般式(2)で示される構造を得る際に用いる多価のフェノール性水酸基含有化合物は、2官能性フェノール化合物が好ましいが2官能フェノール化合物以外に3官能以上のポリフェノール化合物を使用あるいは併用し、末端に複数のフェノール性水酸基を残存させても良い。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)として前記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂は末端にフェノール性水酸基を有しており、後述するエポキシ樹脂(B)と反応し硬化することが可能である。
更に、ポリウレタン樹脂(A)は一般式(1)や一般式(2)で示される様にフェノール性水酸基とイソシアネート基からなるウレタン結合の構造を有する。一般にフェノール性水酸基とイソシアネートによるウレタン結合は、解離温度が低い為、フェノールやクレゾール等の低分子モノフェノール化合物などはイソシアネート基のブロック剤として使用されることがある。しかしながらこうしたブロック剤の解離は、塗膜や成型物の硬化反応において解離し揮発成分として気泡やボイドの発生につながり好ましいものではない。本発明において、フェノール性水酸基の導入を、2価以上のポリフェノール化合物を用いて行うと、硬化時の温度の高い状況下で樹脂から解離しても揮発せず系内に残存し、その為、ポリウレタン樹脂(A)は積極的にエポキシ樹脂との架橋反応により硬化を行う。さらに生成したイソシアネート基は、このフェノール−エポキシ間の反応により生成する水酸基とさらにウレタン化反応を行い、分子の新たな架橋構造の構築を行い誘電特性に不利な水酸基をブロックすると考えられる。よって生成するウレタン結合により、樹脂骨格である剛直なイミド構造を結びつけるネットワークを形成し良好な耐熱性あるいは機械物性を発現すると本発明者らは考えている。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は下記一般式(11)で示される構造にて分岐しているポリウレタン樹脂が、他の樹脂成分との相溶性、溶剤溶解性の向上や得られる硬化塗膜の耐熱性が良好なことから好ましい。
(式中R
5はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基構造を示す。)
前記一般式(11)中のR5としては、例えば、芳香族系の残基構造、脂肪属系の残基構造、脂環族系等の残基構造等が挙げられる。中でも、炭素原子数が4から13のものを好ましく使用することができる。R5の構造は、結晶化の防止や溶解性向上の面から2種以上の構造を併用したほうが好ましい。特に芳香族系の残基構造と脂肪族あるいは脂環族の残基構造との併用が好ましい。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、例えば、2個以上のフェノール性水酸基を有するポリフェノール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを反応させることにより容易に得ることができる。
前記2個以上のフェノール性水酸基を有するポリフェノール化合物(a1)としては、例えば、ハイドロキノン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、ジメチルブチリデンビスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス〔2,6−ジメチルフェノール〕、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、5,5’−(1−メチルエチリデン)ビス〔1,1’−ビフェニル−2−オール〕、ナフタレンジオール、ジシクロペンタジエン変性ビスフェノール、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドとハイドロキノンとの反応生成物等が挙げられる。更にポリフェノール化合物(A)としてフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等の3官能以上のフェノール化合物も使用可能である。尚、本発明で用いるポリウレタン樹脂の製造方法においては合成上、ポリフェノール化合物(A)として3官能以上のポリフェノール化合物を使用することで樹脂の高粘度化やゲル化の発生等があるため、2個のフェノール性水酸基を含有するポリフェノール化合物(2官能のポリフェノール化合物)を使用することが好ましい。中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール系化合物が好ましい。
また、難燃性や耐熱性に優れる硬化物が得られることからポリウレタン樹脂(A)を得る際にナフタレンジオールや9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドとハイドロキノンとの反応生成物を使用することが好ましい。
尚、本発明の効果を損なわない範囲で一部、フェノールやクレゾール等の一官能性のフェノール化合物を併用しても良い。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物等が使用可能である。
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等に代表される芳香族ポリソシアネート化合物等が挙げられる。
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、ノルボヌレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
また前記ポリイソシアネート化合物(a2)と各種ポリオール成分をイソシアネート基過剰で予め反応させたイソシアネートプレポリマーを使用、併用することも可能である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いるポリウレタン樹脂は、分岐構造をとる事により、溶剤溶解性や硬化剤等その他の樹脂成分との相溶性が向上することができる為より好ましい。かかる分岐の手法としては、ポリイソシアネート化合物(a2)の一部ないし全部として例えば、前記ジイソシアネート化合物等の単独や混合でのイソシアヌレート体であるイソシアヌレート環を有する3官能以上のポリイソシアネート化合物を使用、併用することが好ましい。
前記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物は、例えば、1種または2種以上のジイソシアネート化合物を第4級アンモニウム塩等のイソシアヌレート化触媒の存在下あるいは非存在下において、イソシアヌレート化することにより得られるものであって、3量体、5量体、7量体等のイソシアヌレートの混合物からなるもの等が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート体の具体例としては、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート等脂肪族系ポリイソシアネート類やジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(a2)としては、ジイソシアネート化合物とイソシアヌレート環を有するジイソシアネート化合物と併用する場合はジイソシアネート化合物として、芳香族ジイソシアネートを、イソシアヌレート型ポリイソシアネートとして脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネートを含有する混合物を用いるのが好ましい。
前記ポリイソシアネート化合物(a2)としては、脂肪族ジイソシアネート化合物を用いると溶解性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られ、且つ、電気特性が良好な硬化塗膜が得られることからより好ましい。
更に、ポリイソシアネート化合物(a2)は、前記以外のポリイソシアネート化合物、例えば、前記ジイソシアネート化合物や前記ジイソシアネートのビュレット体、アダクト体、アロハネート体、あるいはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)等と併用しても良い。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物(a2)は、溶剤溶解性が良好な熱硬化性樹脂組成物が得られ、且つ、結晶性を崩す理由から2種以上のポリイソシアネート化合物を併用することが好ましい。加えて耐熱性に優れる硬化塗膜が得られることから上述のイソシアヌレート体を併用することが好ましい。イソシアヌレート体を併用する場合は、全ポリイソシアネート化合物(B)量の70重量%以下に設定することが樹脂の高分子量化やゲル化を防ぐ意味で好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いるポリウレタン樹脂(A)は、2個以上のフェノール性水酸基を有するポリフェノール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを反応させることにより得ることができる。
前記ポリウレタン樹脂(A)の製造方法ではポリイソシアネート化合物(a2)に対してポリフェノール化合物(a1)が反応する。末端をフェノール性水酸基として残存させる為にポリフェノール化合物(a1)中のフェノール性水酸基のモル数がポリイソシアネート化合物(a2)中のイソシアネート基のモル数より大きくなる条件で反応させることが好ましい。特に好ましい範囲として合成上の安定性や硬化物の各種性能の面で、〔{(a1)中のフェノール性水酸基のモル数}/(a2)中のイソシアネート基のモル数〕が1から10の範囲であり、より好ましくは1.05から7の範囲である。
反応条件としては、50℃から250℃の範囲で行うことが可能であり、反応速度と副反応防止の面から70℃から180℃の温度で行うことが好ましい。また、ウレタン結合の解離を防ぐ為に70〜140℃で反応を行うことが更に好ましい。
反応は、イソシアネート基がほぼ全て反応するまで行った方が得られるポリウレタン樹脂の安定性が良好となることから好ましい。また、若干残存するイソシアネート基に対して、アルコールや、フェノール化合物を添加し反応させても良い。
前記ポリウレタン樹脂(A)の製造方法では、有機溶剤を使用すると均一な反応を進行できるため好ましい。ここで有機溶剤は、系中にあらかじめ存在させてから反応を行っても、途中で導入してもよい。また、この反応に際して適切な反応速度を維持するために系中の有機溶剤の割合は、反応系の80重量%以下であるが好ましく、10〜70重量%であることがより好ましい。かかる有機溶剤としては、原料成分としてイソシアネート基を含有する化合物を使用するため、水酸基やアミノ基等の活性プロトンを有しない非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。
前記非プロトン性極性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒を使用することができる。また、溶解可能であれば、その他エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、石油系溶剤等を使用しても良い。また、各種溶剤を混合して使用しても良い。
かかるエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;低分子のエチレン−プロピレン共重合体等の共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、石油系溶剤として、トルエン、キシレンやその他高沸点の芳香族溶剤等や、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族、脂環族溶剤を使用することも可能である。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は溶剤溶解性が良好な熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られ、且つ、種々の物性に優れる硬化塗膜が得られることから800〜50,000が好ましく、1,000〜20,000がより好ましい。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)のフェノール性水酸基当量は、400〜50000が好ましい。
本発明で用いるエポキシ樹脂(B)は分子内に2個以上のエポキシ基を有していることが好ましい。こうしたエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型ノボラック等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;2,2′,6,6′−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂やこれら芳香族系エポキシ樹脂の水素添加物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキヒシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のごときヘテロ環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、芳香族系エポキシ樹脂が、硬化塗膜の機会物性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られることから好ましい。
前記ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤(B)の配合量は、樹脂分の重量比として(A)/(B)が1/100から50/1の割合で使用することができ、さらに好ましくは、1/10から20/1である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に、前記ポリウレタン樹脂(A)が有するフェノール性水酸基と反応する化合物を添加することができる。具体的には、例えば、前記エポキシ樹脂(B)以外のエポキシ化合物、イソシアネート化合物、シリケート、アルコキシシラン化合物等が挙げられる。
前記イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のイソシアネート化合物、脂肪族系のイソシアネート化合物および脂環族系のイソシアネート化合物等が使用できる。好ましくは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。また、ブロックイソシアネート化合物も使用可能である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに硬化物の機械強度や耐熱性を向上させる目的で、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物を配合することができる。
フェノール性水酸基を2個以上有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジェン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類など公知慣用のフェノール樹脂を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
フェノール樹脂は、耐熱性に優れる硬化物が得られる熱硬化性樹脂組成物が得られることからエポキシ樹脂(B)の1エポキシ当量に対しフェノール性水酸基が0−1.2当量の割合で配合することが望ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて熱可塑性樹脂を配合することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリスルフィド、ポリスルフォン、ポリアセタール、ブチラール樹脂、NBR、フェノキシ樹脂、ポリプタジエン、各種エンジニアリング・プラスチック等、公知慣用のものを単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中のエポキシ樹脂が硬化した後、均一に分散するか、もしくは相分離するに拘らず、室温の状態では樹脂組成物中に均一に分散又は溶解するものが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、コーティング時のはじき防止や転写性の改善に寄与してコーティングの厚膜化に効果があり、また強靭性の付与、柔軟性の付与、硬化収縮の低減による基材のそり防止に効果がある。さらに加熱ラミネート時やレベリング時の溶融粘度を高くすることができ、成形後の樹脂染み出し量のコントロールに有効である。
熱可塑性樹脂は、加熱ラミネート時やレベリング時に塗膜の溶融粘度が高くすぎず、組成物の状態で分離を生じにくいことから全組成物の50重量%以下の割合で配合することが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに硬化物の密着性、機械的強度、線膨張係数などの特性を向上させる目的で、無機充填材を配合することができる。例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉などの公知慣用の無機充填材を単独で又は複数組み合わせて使用できる。そして、その配合比率は樹脂組成物の0−90重量%が適当である。また、ここで用いる無機充填材の粒径は、95%以上の粒子が3μm以下のものであることが望ましく、さらに好ましくは2μm以下のものであり、さらに球状のシリカが最適である。
ここで、これら無機充填材添加の効果について説明すると、無機充填材はデスミヤ時の表面の凹凸形成の助剤になっていることが明らかになっている。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化塗膜をデスミヤ液で粗化したとき、樹脂だけでなくこれら無機充填材も同時に粗化され、導体めっき層に対するアンカー効果として作用する。これは、これら無機充填材粒子がデスミヤ処理により塗膜から脱落するためと考えられる。そこでこれら無機充填材の粒径が重要になり、3μm以上の粒径の粒子が多いと粗化のプロファイルに大きな穴があいた状態になり、めっきの未着の原因になったり、回路形成の妨げになったりするので好ましくない。また、成分の観点では誘電率の低いシリカが好ましく、形状では破砕タイプよりも球状タイプの方が塗膜から脱落し易かったり、粗化面の形状が安定しているためアンカー効果が大きく、よりピール強度が高くなるので好ましい。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、アゾ顔料、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、キナクリドン系、黄鉛、ジンククロメート、モリブデート・オレンジの如きクロム酸塩;紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄;炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド;硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物;硫酸鉛の如き硫酸塩;群青の如き珪酸塩;炭酸塩、コバルト・バイオレッド;マンガン紫の如き燐酸塩;アルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉、ニッケル粉の如き金属粉;カーボンブラック等の公知慣用の着色剤や、アスベスト、オルベン、ベントン、微粉シリカ等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消油剤及び/又はレベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、チタネート系、アルミニウム系の公知慣用の添加剤類を配合することができる。
更に本発明の熱硬化性樹脂組成物にはフェノキシ樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリアリレーン樹脂等のバインダー樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルコキシシラン系硬化剤、多塩基酸無水物、シアネート化合物等の硬化剤あるいは反応性化合物;メラミン、ジシアンジアミド、グアナミンやその誘導体、イミダゾール類、アミン類、水酸基を1個有するフェノール類、有機フォスフィン類、ホスホニュウム塩類、4級アンモニュウム塩類、光カチオン触媒等の硬化触媒や硬化促進剤;さらにフィラー、その他添加剤等添加することも可能である。
また、上記硬化促進剤として、ウレタン化触媒の併用が好ましい。かかるウレタン化触媒としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下DBU)やその有機塩化合物、トリエチレンジアミン、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等のジアルキル錫のアルキルエステル類、ビスマスのカルボキシレート等挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の調製法には、特に限定はないが各種成分を機械的に混合しても、熱溶融により混合しても、溶剤に希釈してから混合しても良い。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、有機系、無機−金属系のフィルム状基材やガラスクロス、ポリアラミドクロス等の織物基材に通常、キャスト法、含浸、塗装等目的の方法で塗工施行される。硬化温度は80〜300℃で、硬化時間は20分間〜5時間である。
本発明の多層プリント配線板の層間絶縁材用接着フィルムは、ベースフィルムを支持体として、所定の有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを塗布後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させ、常温周形の樹脂組成物として製膜し、作製することができる。このとき、本接着フィルムの樹脂塗膜は、その半硬化状態において150℃のゲルタイムが20秒以上になるように調整したものが内層回路への樹脂の追随性があり、ボイドが発生しにくいことから好ましい。
支持ベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、さらにはシリコンフィルムなどが挙げられる。特に好ましいものは、つぶ等、欠損がなく、寸法精度に優れコスト的にも優れるポリエチレンテレフタレートである。支持ベースフィルムの厚さとしては、支持体としての強度があり、ラミネート時に熱伝導のむらが生じにくくラミネート不良を起こしにくいことから10−100μmが好ましい。なお、支持ベースフィルムには、マッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
前記樹脂ワニスの調製に使用する有機溶剤としては、通常の溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本発明の接着フィルムには、残留有機溶剤(150℃に保持された乾燥機中にて30分乾燥した時の、乾燥前後の重量減少率で規定)が存在しても、ラミネート復や硬化後にボイドの発生等プリント基板としての特性が損なわれない範囲であれば問題が無い。一般的には10重量%以下である。
上記のようにして製膜された膜の厚さは、ラミネートされる内層回路基板の導体厚さ以上で、内層回路パターンの残銅率、板厚、スルホール径、表面ビアホール径、穴数と絶縁層厚さの設定値により異なるが、10―120μmの範囲であるのが一般的である。板厚が厚く、スルーホールの樹脂充填容積が大きい場合には、厚めの膜厚が必要になる。このようにして得られる常温固形の樹脂組成物からなる膜と支持ベースフィルムとからなる本発明の接着フィルムは、そのまま又は膜の他の面に保護フィルムをさらに積層し、ロール状に巻きとって貯蔵される。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン、ポリエチレンテレフクレート等のポリエステルなどが挙げられるが、コストの面ではポリオレフイン系が好ましく、中でもつぶや欠損の少ないポリプロピレンが特に好ましい。また、保護フィルムの厚さとしては5−50μmが一般的である。なお、保護フィルムにはマッド処理、エンボス加工の他、離型処理が施してあってもよい。
次に、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明する。以下において、部および%は特に断りのない限り、すべて重量基準である。
合成例1(ポリウレタン樹脂の製造)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γ−ブチロラクトン 57gと、BPF(ビスフェノールF)80.8g(0.4モル)と、TDI(トリレンジイソシアネート)52.2g(0.3モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して80℃に昇温し、この温度で5時間反応させた。反応後、γブチロラクトンにて樹脂固形分濃度を60%に調整し、25℃での粘度が180Pa・sの無色透明なポリウレタン樹脂(X−1)の溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(X−1)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基は、BPFの水酸基と共にウレタン結合を形成し、BPFの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端がBPFの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
合成例2(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γブチロラクトン 200gと、TMBP(テトラメチルビフェノール) 121g(0.5モル)と、TDI 69.6g(0.4モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して90℃に昇温し、この温度で7時間反応させた。反応後系内はクリアなオレンジ色の液体となり、ここに不揮発分が40%になるようにγブチロラクトンで調整し、25℃での粘度が6.2Pa・sのポリウレタン樹脂(X−2)の溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(X−2)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基は、TMBPの水酸基と共にウレタン結合を形成し、TMBPの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端がTMBPの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
合成例3(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γブチロラクトン 200gと、BP(ビフェノール) 93g(0.5モル)と、TDI 69.6g(0.4モル)を仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して90℃に昇温し、この温度で7時間反応させた。反応後系内はやや濁りのある無色の液体となり、ここに不揮発分が38%になるようにγブチロラクトンで調整し、25℃での粘度が2.8Pa・sのポリウレタン樹脂(X−3)の溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(X−3)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基はBPの水酸基と共にウレタン結合を形成し、BPの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端がBPの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
合成例4(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γブチロラクトン 200gと、HCA−HQ(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイドとキノンとの反応物:三光株式会社製)162g(0.5モル)と、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)100g(0.4モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して90℃に昇温し、この温度で7時間反応させた。反応後系内はクリアな茶色の液体となり、ここに不揮発分が40%になるようにγブチロラクトンで調整し、25℃での粘度が10.2Pa・sのポリウレタン樹脂(X−4)の溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(X−4)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基はHCA−HQの水酸基と共にウレタン結合を形成し、HCA−HQの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端がHCA−HQの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
合成例5(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γブチロラクトン 295gと、BPS(ビスフェノールS)175g(0.7モル) IPDI−N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート化3量体;NCO%=18.03%)69.9g(イソシアネート基として0.3モル)と、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート) 50g(0.2モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して90℃に昇温し、この温度で7時間反応させた。反応後系内は無色クリアな液体で、不揮発分が50%で、25℃での粘度が5.2Pa・sのポリウレタン樹脂(X−5)の溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(X−5)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基はBPSの水酸基と共にウレタン結合を形成し、BPSの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端がBPSの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
合成例6(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γブチロラクトン 265.2gと、1−6ND(1,6ジヒドロキシナフタレン) 64g(0.4モル)と、TMBP 96.8g(0.4モル)とTDI 104.4g(0.6モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して90℃に昇温し、この温度で7時間反応させた。反応後系内はクリアな濃い茶色の液体となり、ここに不揮発分が40%になるようにγブチロラクトンで調整し、25℃での粘度が2.6Pa・sのポリウレタン樹脂(X−6)の溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(X−6)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基は1−6ND及びTMBPの水酸基と共にウレタン結合を形成し、1−6ND及びTMBPの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端が1−6NDの水酸基および/またはTMBPの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
実施例1〜8及び比較例1〜5
第1表及び第2表に示す配合にて熱硬化性樹脂組成物1〜8及び比較対照用熱硬化性樹脂組成物1〜5を調製した。表中の数値はいずれも固形換算分での配合量(重量部)を表す。得られた樹脂組成物のチキソトロビックインデックス(TI倍)は、すべて1.2〜2.0の範囲内であった。
第1表、第2表の脚注
N680:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂 エポキシ当量=214 軟化点81℃
EP2050:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ当量=640
2E4MZ:2-エチル−4−メチル−イミダゾール
DBTA:ジブチルチンジアセテート
CNR:オルソクレゾールノボラック型樹脂 融点 90℃ 水酸基当量=105
BPF:ビスフェノールF
実施例9〜16及び比較例6〜10
前記実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ、ロールコーターを用いて、フィルムの膜厚が50μmになるようにPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー38R75:38μm)に塗布し、40〜120℃で乾燥して接着フィルム1〜8及び比較対照用接着フィルム1´〜5´を得た。このとき150℃におけるゲル化タイムはすべてのサンプルにおいて20秒から120秒の範囲内であった。
試験例1
前記実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ、銅箔(35μm)にスクリーン印刷し、110℃で30分乾燥し、次いで150℃×30分さらに170℃×30分の条件で最終硬化させた。この試料の銅箔をエッチングし、それぞれの硬化皮膜として物性を測定した。結果を第3表及び第4表に示す。
上記第3表及び第4表中の各物性は、以下のようにして測定・評価した。
(a)ガラス転移温度Tg:
TMA(熱機械分析)により測定した。
(b)CTEα1(Tg以下の線膨張係数):
TMAにより測定した。
(c)誘電率Dk及び誘電正接Df:
JIS K6911に従って測定した。尚、表中の値は実測値の100倍(×1000)の値である。
(d)吸水率
硬化皮膜を23℃±2℃に管理された蒸留水に浸漬し、24時間後の重量変化より求めた。
試験例2
前記実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ、1000μmの溝ピッチを有するウレタンゴム製ロールを備えた垂直吊り上げ式ロールコーター(ファーネス社製)を用いて、銅箔18μm厚のガラスエポキシ両面銅張積層板から内層回路を形成し、さらにエッチボンド(メック社製)処理した基板の両面に同時に塗布し、次いで110℃で乾燥し、絶縁層となる乾燥塗膜を形成した。
次に、前述したプリント配線板の製造方法の第一の形態に従い、乾燥後の基板を150℃で30分間熱風循環式乾燥炉にて最終硬化させ、CO2レーザー(三菱電機社製)を用いて穴加工を行なった。次いで、汎用公知の薬品を用いてデスミヤ処理、無電解銅めっき、電解銅めっきを施し、パネルめっき法にて回路形成してプリント配線板を得た。得られたプリント配線板は水分の除去や銅めっきのアニールの目的で170℃で30分熱処理した。
このようにして作製したプリント配線板について、特性を評価した。結果を第5表及び第6表に示す。また、第5表及び第6表中の各物性は、以下のようにして測定・評価した。
(e)ピール強度:
JIS C6481に従って測定した。
(f)はんだ耐熱性:
288℃±3℃のはんだ層に、完成したプリント配線板(10cm×lOcm)を10秒間浸漬する。この操作を5回線り返した後、銅箔と樹脂の剥がれを確認した。なお、表4中の符号の意味は以下のとおりである。
OK:剥がれ無し。
NG:剥がれ有り。
(g)パターン形成性:
ラインアンドスペース75μm/75μmの回路の剥がれを目視で検査した。なお、表4中の符号の意味は以下のとおりである。
OK:剥がれ無し。
NG:剥がれ有り。
(h)難燃性:
0.4mmの厚さのFR−4基材に硬化塗膜で80μmになるように両面に絶縁層を形成し、UL−94に従い試験を行なった。なお、表4中の符号の意味は以下のとおりである。
NG:サンプル片の炎がクランプまで達し、ULー94のV0不適合である。
試験例3
前記試験例1の基板作成において、ポストキュアー後に#320相当と#600相当のパフ研磨を2回繰り返した以外は同様に作成した基板の第3表及び第4表に示した、物性、特性を評価した。結果は第3表、第4表に示した結果とほぼ同様で、さらに内層回路の凹凸に伴う基板表面の凹凸が減少していることが確認された。
試験例4
前記試験例2の基板作成において、パネルめっき法をセミアディティブ法に変更して作成した以外は同様に作成した基板の第4表に示した特性を評価した。結果は第4表に示した結果とほぼ同様でさらにライン/スペース=25μm/25μmの回路が形成でき、剥がれが生じていなかった。
試験例5
次に、前述したプリント配線板の製造方法の第二の形態に従い、前記実施例1〜8及び比較例1〜5の熱硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成した基板の両面に18μm厚の銅箔(ジャパンエナジー社製)を重ね、真空ラミネ一夕ー(MEIKl社製、MVLP−500)を用い、5kgf/cm2、150℃、1分、1Torrの条件にて加熱ラミネートし、次いで熱板プレス機で10kgf/cm2、150℃、1分の条件にてレベリングした後、熱風循環式乾燥機で170℃×30分の条件にて硬化させ、積層板を作製した。
さらに、この積層板の所定のスルーホール部はドリルで穴をあけ、レーザービア部は、まず、穴位置をエッチングレジストを用いて選択的に銅箔を除去してガイドを設け、レーザー加工機により穴明けを行なった。次に、スルーホール部とレーザービア部のスミヤをデスミヤ処理で除去した後、無電解銅めっき及び電解銅めっきにより穴を導通させ、市販のエッチングレジストを介したエッチングによりパターン形成し、多層プリント配線板を作製した。このようにして作製した多層プリント配線板について、前記と同様にピール強度、はんだ耐熱性、パターン形成性、難燃性の各特性を評価した。得られた結果を下記第7表及び第8表に示す。
試験例6
前記実施例9〜16及び比較例5〜10で作製した接着フィルム1〜8及び比較対照用接着フィルム1´〜5´を、35μmの銅箔に真空ラミネ一夕ー(MEIKl社製、MVLP−500)を用いて5kgf/cm2、140℃、1分、1Torrの条件にて加熱ラミネートし、次いで熱板プレス機で10kgf/cm2、150℃、1分の条件にてレベリングした後、PETフィルムを剥離して熱風循環式乾燥機で150℃×60分さらに170℃×30分の条件で硬化させた。そして、得られたサンプルの銅箔を市販のエッチング液でエッチングし、前記試験例1と同様にして物性の評価を行なった。結果を第9表及び第10表に示す。
試験例7
次に、前述したプリント配線板の製造方法の第一の形態に従い、前記実施例9〜16及び比較例5〜10で作製した接着フィルムを、銅箔18μm厚のガラスエポキシ両面銅張積層板から内層回路を形成し、さらにエッチボンド(メック社製)処理した基板の両面に、真空ラミネ一夕ー(MEIKI社製、MVLP−500)を用い、5kgf/cm2、140℃、1分、1Torrの条件にて加熱ラミネートし、次いで熱板プレス機で10kgf/cm2、150℃、1分の条件にてレベリングした後、熱風循頻式乾燥機で150℃×60分の条件にて硬化させ、積層板を作製した。
さらに、この積層板の所定のスルーホール部、ビアホール部等にドリルとレーザーにより穴明けを行ない、次いで汎用公知の薬品を用いてデスミヤ処理と表面の凹凸形成を行なった。次に、無電解銅めっき及び電解銅めっきにより全面と穴部を導通させた後、水分の除去や銅めっきのアニールの目的で、170℃で30分熱処理した後、市販のエッチングレジストを介したエッチングによりパターンを形成し、多層プリント配線板を作製した。
このようにして作製した多層プリント配線板について、前記試験例2と同様にして第7表に示す物性及び特性について試験・評価した。結果を第11表及び第12表
試験例8
前記試験例7の基板作製においてパネルめっき法をセミアディティブ法に変更して作製した基板の特性はほぼ上記と同等で、さらにライン/スペース=25μm/25μmの回路が形成でき、剥がれが生じていなかった。
試験例9
次に、前述したプリント配線板の製造方法の第一の形態に従い、前記実施例9〜16及び比較例5〜10で作製した接着フィルムをラミネートした積層板の支持フィルムを剥離し、18μm厚の銅箔(ジャパンエナジー社製JTC−AM)を重ね、真空ラミネ一夕ー(MEIKI社製、MVLP−500)を用い、5kgf/cm2、150℃、1分、1Torrの条件にて加熱ラミネートし、次いで熱板プレス機で10kgf/cm2、150℃、1分の条件にてレベリングした後、熱風循衆式乾燥機で170℃×30分の条件にて硬化させ、積層板を作製した。
さらに、この積層板の所定のスルーホール部はドリルで穴をあけ、レーザービア部は、まず穴位置をエッチングレジストを用いて選択的に銅箔を除去してガイドを設け、レーザー加工機により穴明けを行なった。次に、スルーホール部とレーザービア部のスミヤをデスミヤ処理して除去した後、無電解銅めっき及び電解銅めっきにより穴部を導通させ、市版のエッチングレジストを介したエッチングによりパターンを形成し、多層プリント配線板を作製した。このようにして作製した多層プリント配線板について、前記と同様にピール強度、はんだ耐熱性、パターン形成性、難燃性の各特性を評価した。得られた結果を下記第8表に示す。