JP5017731B2 - 非磁性粉末およびそれを用いた重層塗布型磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、重層塗布型磁気記録媒体における「下層」(すなわち磁性層の下に塗布される非磁性層)に適した非磁性粉末、およびそれを用いた重層塗布型磁気記録媒体に関する。
近年、磁気記録媒体では、記録容量の増加、信頼性の向上がより一層望まれている。そのため、テープの構造も従来のベースフィルムの上に直接磁性層を設ける形から、ベースフィルムの上に非磁性層(下層)を中間層として設け、その上に磁性層(上層)を設けた重層構造の磁気テープが開発されている。重層構造をとることで電磁変換特性が改善され、より一層の高記録密度化が実現される。また、テープの耐久性が改善され、信頼性も向上する。
しかし、世の中の情報量の増大は止まるところがなく、記録媒体としては、より一層の記憶容量の増大と信頼性の向上が求められている。それに対応すべく、重層塗布型磁気記録媒体においては、磁性体の性能向上だけではなく、磁性層とベースフィルムの間の非磁性層(下層)についても特性改善が強く求められている。
下層に求められる主な要求特性としては、ベースフィルムに塗布された際の「平滑度」と「塗膜強度」が挙げられる。
平滑度に関しては、下層の表面を平滑化することで、上層の磁性層がより平滑になり、それによって電磁変換特性の優れた磁気記録媒体が実現可能になり、高記録密度化に繋がる。
塗膜強度に関しては、近年、テープ一巻あたりの高容量化に伴いテープ厚の薄肉化が進行しつつあり、加えて高密度化に伴って寸法安定性(テープ幅やテープ長の変動が少ないこと)が重要になってきているため、下層の強度を向上させることがテープ自体の強度向上をもたらし、信頼性の向上に繋がる。
これらの要求特性を満たすために、下層用の非磁性粉末としては、塗料化段階で分散性に優れること、塗布時の充填性が高いこと、樹脂との接着性が高いことが求められる。そのような非磁性粉末を用いると、平滑で、かつ強度の高い塗膜が形成される。
従来、重層塗布型磁気記録媒体の非磁性層(下層)に用いる非磁性粉末として、球状酸化チタン粉末または針状酸化鉄粉末が知られている(特許文献1〜4)。また、本出願人は下層に適した針状のオキシ水酸化鉄(ゲーサイト)粉末を開発し、特許文献5〜7に開示した。すなわち、オキシ水酸化鉄粒子を微細化するとともに、その組成や形状を工夫することにより、例えば磁性層を薄膜化して短い記録波長領域での出力確保や電磁変換特性(優れた消去特性やオーバーライト特性)を改善することができるのである。また本出願人は、粒子間焼結の低減されたオキシ水酸化鉄や酸化鉄を用いた場合に、分散性に優れた非磁性粉末が提供できることを特許文献8、9に開示した。
一方、下層用の非磁性粉末の粒度に関し、特許文献10には、粒度分布が狭い(粒度分布曲線においてピークがシャープである)ことが、テープ表面性などの諸特性改善には有利であると教示されている。
特開昭63−187418号公報 特開平4−167225号公報 特開平6−60362号公報 特開平6−131653号公報 特開平9−255341号公報 特開平10−53421号公報 特開平10−340447号公報 特開2001−176058号公報 特開2004−5932号公報 特開平6−274855号公報
前記従来の球状酸化チタンでは、テープ化した場合の強度が針状のものに比較して不十分であった。針状酸化鉄では、それを得る過程で高温での焼成プロセスが必要となるため、粒子間焼結が生じやすく、かつ針状性も崩れやすい。このためテープ特性(表面平滑性や、非磁性層の強度など)が不十分となりやすかった。
また、本出願人の提案による前記オキシ水酸化鉄粉末や酸化鉄粉末においても、重層塗布型磁気記録媒体の薄肉化、高記録密度化のニーズに十分対応するには更なる改善が望まれる。特に、非磁性層内部に存在する粒子間空隙は、非磁性塗膜の平滑性を悪化させる要因となる。また、空隙があることで樹脂を介する粒子間結合が弱くなり、非磁性層の重要な目的の1つであるテープ強度向上が阻害される。この空隙の問題については未だ改善の余地が残されている。
本発明はこのような現状に鑑み、重層塗布型磁気記録媒体の非磁性層(下層)において、今後ますます厳しくなりつつある「平滑化」および「塗膜強度向上」の要求に対応できる非磁性粉末を開発し提供しようというものである。
発明者らは種々検討の結果、粒度分布をコントロールすることにより、重層塗布型磁気記録媒体の下層を構成する塗膜中において、非磁性粒子間の空隙が低減され、上記目的にかなう非磁性粉末が得られることを見出した。すなわち、本発明では、粒度分布曲線に2つ以上のピークを持つ非磁性粉末、特にオキシ水酸化鉄(ゲーサイト)の粉末を提供する。
ここで、粒度分布曲線とは、横軸に粒子径、縦軸に一定間隔の粒子径区分に属する粒子数(または粒子の存在率)を採ったグラフにおける、粒子径−粒子数(または粒子の存在率すなわち頻度)の関係(すなわち粒度分布)を表す曲線である。粒子の測定数は300個以上とし、上記粒子径区分の間隔は測定された粒子径の最大値と最小値を100等分以上に分割する間隔とする。最も狭い度数分布の間隔は0.5nm以下に設定する。また、100等分したときの間隔が0.5nm以下になるときは、間隔を0.5nm刻みにしても差し障りない。粒子径は粒子の長軸長である。粒度分布の測定は、後述するような透過型顕微鏡観察により実施できる。「ピーク」は粒度分布曲線の頂点である。
特に、粒度分布曲線のピーク高さが最も高いピークと2番目に高いピークにおいて、小径側ピーク位置に相当する粒子径DP1(nm)と大径側ピーク位置に相当する粒子径DP2(nm)が下記(1)式、あるいは更に(2)(3)式の関係を満たすものが好適な対象となる。
P2/DP1≧2 ……(1)
5≦DP1≦70 ……(2)
30≦DP2≦300 ……(3)
特に、オキシ水酸化鉄粉末を対象とする場合、(1)〜(3)式に加え更に小径側のピーク高さHP1と大径側のピーク高さHP2の間に下記(7)式の関係が成立しているものが好適な対象となる。
1≦HP1/HP2≦50 ……(7)
ここで、ピーク高さは粒子数をリニアスケールで表したグラフにおけるピーク高さである。
また本発明では、下記(4)〜(6)式を満たす平均粒子径D1(nm)のオキシ水酸化鉄粉末と平均粒子径D2(nm)のオキシ水酸化鉄粉末を下記(8)式を満たす混合比で混合してなる非磁性粉末が提供される。
2≦D2/D1≦17 ……(4)
5≦D1≦70 ……(5)
30≦D2≦300 ……(6)
1≦W1/W2≦50 ……(8)
ここで、W1は平均粒子径D1の粉末の配合量(質量%)、W2は平均粒子径D2の粉末の配合量(質量%)である。
オキシ水酸化鉄粒子で構成される粉末においては、当該オキシ水酸化鉄粒子中にAl、Si、P、または希土類元素類を単独または複合で含むものが好適な対象となる。例えば、Alを0.01〜50質量%含有する粉末、Siを0.01〜50質量%含有する粉末、Pを0.01〜50質量%含有する粉末が挙げられる。また、希土類元素類R(RはYと希土類元素のうちの1種以上)を含有し、R/Fe原子比が0.1〜10であるものが挙げられる。
また、これらの特異な粒度分布を有する非磁性粉末を用いた重層塗布型磁気記録媒体が提供される。
本発明によれば、塗膜中での粒子間空隙を低減する効果の高い特異な粒度分布を持つ非磁性粉末が提供される。また、大粒径粒子の間の空隙に小粒径粒子が入り込むことによって、表層部における空隙が低減され当該塗膜表面の平滑度が向上し、かつ当該塗膜の強度が向上する。従来、塗膜厚みを厚くすることで表面凹凸を軽減していたのに対し、2つ以上のピークを持つ粒度分布を呈する本発明の非磁性粉末を使用すると、より薄肉化した塗膜において従来の単一ピークの粒度分布を呈するものと同等以上の表面平滑性が得られ、使用する粉末の総重量も低減できる。したがって本発明は、特に薄肉化、高記録密度化の要求が高い重層塗布型磁気記録媒体の下層材として極めて好適である。なかでも、特定の粒度分布を有する本発明の針状オキシ水酸化鉄粉末は、酸化鉄粉末と比較した場合、例えば、i) 粒子の凝集が少なく、取扱い性に優れる、ii) 塗膜中での分散性にも優れるので、塗布後に短時間で平滑な塗膜表面を得ることができる、iii) 焼成の工程を削減できるので製造コストの低減が可能である、といったメリットを有する。
図1に、本発明例の特異な粒度分布を有するオキシ水酸化鉄粉末の粒度分布曲線を例示する。粒度分布曲線に2つのピークが見られる。この粉末は後述の実施例1のものである。
図2には、従来のオキシ水酸化鉄粉末の粒度分布曲線を例示する。この場合、ピークは1つである。この粉末は後述の比較例1のものである。
図1のように、粒度分布曲線において小径側と大径側にピークを持つ粉末は、塗膜中に分散させたとき、前述のように粒子径の大きい粒子の間を粒子径の小さい粒子が埋めるようにして、粒子充填度の高い塗膜を形成する。この高い充填度が塗膜の平滑性および強度を顕著に改善する。ただし、小径側のピークと大径側のピークがあまり近接していると、大きい粒子の空隙に対する小さい粒子の補填が起こりにくいため、小さい粒子が大きい粒子の間を埋める効果が出にくい。
発明者らの研究によれば、粒度分布曲線に存在する2つのピークにおいて、小径側のピークと大径側のピークは、下記(1)式を満たすように離れていることが望ましい。
P2/DP1≧2 ……(1)
ここで、DP1は小径側のピーク位置に相当する粒子径(nm)、DP2は大径側のピーク位置に相当する粒子径(nm)である。3つ以上のピークが存在する場合は、基本的にそれらのピークのうち、ある2つのピークについて上記(1)式を満たすことが望ましい。なお、両者のピークがあまり離れすぎていると、塗膜中で均一な分散が実現しにくいので、できれば下記(1)'式を満たすことが好ましい。(1)''式が一層好ましく、(1)'''式が更に一層好ましい。
2≦DP2/DP1≦17 ……(1)'
2≦DP2/DP1≦10 ……(1)''
2≦DP2/DP1≦8 ……(1)'''
オキシ水酸化鉄粉末の場合は、小径側のピークと大径側のピークは上記(1)式好ましくは上記(1)'式、(1)''式あるいは(1)'''式を満たすことに加え、更に下記(2)式および(3)式の関係が成立していることが望ましい。
5≦DP1≦70 ……(2)
30≦DP2≦300 ……(3)
小径側のピークが5nmよりも小さい場合、BET比表面積が大きくなり、粒子が凝集しやすいことから、塗膜中で均一な分散を実現することが難しくなる。逆に大径側のピークが300nmを超えると、大きい粒子が増加することによりテープ表面に凹凸が生じやすくなり、所望の平滑化を達成し難い。
小径側のピークについては上記(2)式に代えて下記(2)'式を満たすことがより好ましく、(2)''式が一層好ましい。
10≦DP1≦70 ……(2)'
15≦DP1≦70 ……(2)''
大径側のピークについては上記(3)式に代えて下記(3)'式を満たすことがより好ましく、(3)''式が一層好ましい。
70≦DP2≦250 ……(3)'
70≦DP2≦200 ……(3)''
小さい粒子と大きい粒子の存在比については、オキシ水酸化鉄粉末の場合、小径側のピーク高さHP1と大径側のピーク高さHP2の間に下記(7)式好ましくは(7)'式の関係が成立していることが望まれる。
1≦HP1/HP2≦50 ……(7)
1≦HP1/HP2≦25 ……(7)'
この(7)式または(7)'式は、特に前記(1)〜(3)式を満たすオキシ水酸化鉄粉末において好適に適用される。
本発明に従う粉末の平均粒子径(平均長軸長)は20〜200nmの範囲にあることが好ましい。
以上説明したような、粒度分布曲線の小径側と大径側にピークを持つ特異な粒度分布の非磁性粉末は、平均粒径の異なる2種類の粉末(いずれも単一のピークを持つ通常の粒度分布を有するもの)を混合することによって得ることができる。例えばオキシ水酸化鉄粉末の場合、下記(4)〜(6)式を満たす平均粒子径D1(nm)のオキシ水酸化鉄粉末と平均粒子径D2(nm)のオキシ水酸化鉄粉末を混合することによって前記(1)〜(3)式を満たすような特異な粒度分布が得られる。
2≦D2/D1≦17 ……(4)
5≦D1≦70 ……(5)
30≦D2≦300 ……(6)
この場合、特に、(4)式に代えて下記(4)’式を満たすことが好ましく、(4)''が一層好ましい。
2≦D2/D1≦10 ……(4)'
2≦D2/D1≦8 ……(4)''
粒子径が小さい方の粉末の平均粒子径については、上記(5)式に代えて下記(5)'式を満たすことが好ましく、(5)''式が更に好ましい。
10≦D1≦70 ……(5)'
15≦D1≦70 ……(5)''
粒子径が大きい方の粉末の平均粒子径については、上記(6)式に代えて下記(6)'式を満たすことが好ましく、(6)''式が更に好ましい。
70≦D2≦250 ……(6)'
70≦D2≦200 ……(6)''
2種類の粉末の混合比は、質量比において、概ね下記(8)式好ましくは(8)'式に従えばよい。
1≦W1/W2≦50 ……(8)
1≦W1/W2≦30 ……(8)'
ここで、W1は小さい粒子径を有する粉末の配合量(単位;例えばg)または配合割合(例えば質量%)、W2は小さい粒子径を有する粉末の配合量(単位;例えばg)または配合割合(例えば質量%)である。
本発明に従うオキシ水酸化鉄粉末は以下のようにして製造することができる。
オキシ水酸化鉄を作る方法としては、[1] 第一鉄塩水溶液に当量以上の水酸化アルカリ水溶液を加えて得られる水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液を用いて、pH11以上にて80℃以下の温度で酸素含有ガスを通気しながら酸化反応を進行させ、これによって液中にオキシ水酸化鉄を生成させる方法、[2] 第二鉄塩水溶液に、鉄に対し1.0〜3.5当量の水酸化アルカリ水溶液を加えて、水酸化第二鉄コロイドを含む懸濁液を10〜90℃で生成させ、その後これを2〜20時間熟成してから加水分解することによりオキシ水酸化鉄粉体を生成させる方法、[3] 第一鉄塩水溶液に炭酸アルカリ水溶液を加え、さらにアルカリ水溶液を加えるかまたは加えずして得られる懸濁液を用いて、酸素含有ガスを通気しながら酸化反応を進行させ、液中にオキシ水酸化鉄を生成させる方法、などが採用できる。
どの製法によるオキシ水酸化鉄を用いても、以下に述べるように混合することで、塗膜中の粒子間空隙を低減することができる。
まず、上記[1]もしくは[3]の酸化反応または[2]の加水分解反応が終了した、オキシ水酸化鉄が分散懸濁している液を激しく撹拌した状態にする。そこに、別途反応を終了させた、粒子径の異なるオキシ水酸化鉄が懸濁した液を添加する。激しく撹拌を行うこと、および懸濁液添加後の撹拌時間も長めにとることで、混合された懸濁液内部の分散均一化が促進される。混合して得られた懸濁液を常法により、濾別・水洗・乾燥することで、目的のオキシ水酸化鉄粉末が得られる。
使用する懸濁液は、反応終了後のものをそのまま用いても良いし、反応終了後に常法により濾別・水洗して得たオキシ水酸化鉄ケーキを水に再度分散させ、その懸濁液を用いても良い。また、濾別・水洗・乾燥させたオキシ水酸化鉄粉末を再度水に分散させた懸濁液を用いてもかまわない。水洗においては、濾液が中性付近になるまで十分に洗い流すのがよい。また、乾燥に関しては、含有する水分を除去することが目的であるため、加熱の有無は問わないが、80℃〜230℃程度の温度範囲であれば十分な乾燥が行える。ただし、80℃を下回る温度では乾燥が十分に行われない可能性があり、媒体化したときの分散性が低下する。また、230℃を超える温度では、オキシ水酸化鉄が脱水分解して、α酸化鉄(ヘマタイト)化し本発明で意図する分散性が低下する可能性もあるので、好ましくない。
以上は粒子径の異なるオキシ水酸化鉄粉末を液中で混合させる方法(湿式混合)であるが、別法として、粒子径の異なるオキシ水酸化鉄粉末を、液体を介せずに混合する方法(乾式混合)でも本発明の本質を損なうものではない。ただし、混合の均一性のためには、乾式混合よりも湿式混合の方が好ましい。
先述の混合方法は、粒子径の異なる2種類のオキシ水酸化鉄を用いる場合を例示したが、3種類以上のオキシ水酸化鉄を用いても本発明を逸脱するものではない。
本発明のオキシ水酸化鉄粉末は、Alを50質量%以下の範囲で含むことができる。Alを含むことで良好な耐熱性を示し、テープ化の際の各種工程における昇温時にオキシ水酸化鉄粉末の変質を防止する効果が得られる。また、Alは樹脂との相溶性(なじみ性)を向上させ、非磁性層の平滑化に寄与する。これらの効果を十分に引き出すためには、0.01質量%以上のAl含有量を確保することが望ましい。ただし、Al含有量が50質量%を超えると樹脂との相溶性が却って低下し、塗膜中の分散性が悪化する。一般的には5質量%以下のAl含有量範囲で実用上十分な効果が得られ、通常は0.1〜2質量%程度のAl含有量とすればよい。
Alの添加方法に特に制限はないが、例えば、i) オキシ水酸化鉄の生成反応中にAlを添加して粒子の中にAlを含ませる方法、ii) 反応終了後にAlを液中に添加して、オキシ水酸化鉄の表面にAlを被着させる方法、が挙げられる。i)ii)の方法を単独で行っても良いし、組み合わせて行っても良い。
また、本発明のオキシ水酸化鉄粉末は、Siを50重量%以下の範囲で含むことができる。Siは、Alと同じく耐熱性、樹脂との相溶性を改善する。Si添加によりこれらの効果を十分に発揮させるためには、0.01質量%以上のSi含有量とすることが望ましい。ただし、50質量%を超えると樹脂との相溶性が低下して分散性が悪化する。一般的には5質量%以下のSi含有量範囲で実用上十分な効果が得られ、通常は0.1〜2質量%程度のSi含有量とすればよい。Siの添加方法も、前述のAlの場合と同様の手法が採用できる。
Al、Si以外に、Pの含有も耐熱性向上や分散性向上に寄与しうる。P含有量も0.01〜50質量%の範囲とすることが望ましい。50質量%を超えると、やはり樹脂との相溶性が低下して分散性が悪化する。一般的には5質量%以下のP含有量範囲で実用上十分な効果が得られ、通常は0.1〜2質量%程度のP含有量とすればよい。Pの添加方法も、前述のAlの場合と同様の手法が採用できる。
上記Al、Si、Pの代わりに希土類元素類R(RはYおよび希土類元素の1種以上を意味する)を添加しても良い。この場合、R/Feの原子比を0.1〜10とすることにより、良好な耐熱性と分散性を引き出すことができる。
以上のAl、Si、P、希土類元素類Rは、それぞれ単独添加しても組み合わせて添加しても構わない。
本発明に従うオキシ水酸化鉄粉末において、特に以下の特性を有するものが重層塗布型磁気記録媒体の下層材として一層好適である。
脂肪酸吸着量を表すステアリン酸吸着量は、0.01〜5.0mg/m2であることが望ましい。0.01〜4.0mg/m2がより好ましく、0.01〜3.0mg/m2が一層好ましい。脂肪酸の消費量が多い場合、該粉末が塗料中へ分散された際に、粉末粒子の表面と脂肪酸の(中和)反応が発生している可能性があり、これは、媒体化した場合、添加した潤滑剤(脂肪酸)が粉末粒子への中和反応によって消費されてしまい、潤滑剤としての機能を果たさなくなってしまう可能性があることを意味する。したがって、ステアリン酸吸着量の多い粉末を使用した磁気記録媒体は、保存安定性が悪化し、データストレージ用途には適さないものとなってしまう。すなわち、ここで計測される粉末の物性値としてのステアリン酸吸着量は小さければ小さいほどよい。
さらに、ステアリン酸の吸着量は粉末表面の疎水性の度合いを表す指標になる。粒子の表面が親水性であれば、極性の大きい水分子の粒子表面への吸着が促進されてしまい、粉末への樹脂の吸着が妨害される要因となり、粒子の分散性が低下するため好ましくない。したがって、この点からも、ステアリン酸の吸着量は小さいほど分散性の優れた粉末となるため好ましい。
塩化ビニル樹脂の吸着量は、ステアリン酸吸着量と異なり、できるだけ高い範囲にあることが好ましい。例えば0.1mg/m2以上であることが望まれる。0.5mg/m2以上がより好ましく、1.0mg/m2以上が一層好ましい。樹脂と非磁性粉末の結合量が増加すると、粒子の表面に高分子(バインダー)の厚い吸着層が生じ、高分子の架橋効果が得られるようになるため、塗膜の動的粘弾性が改善する。よって、塗膜自身の強度改善効果を得るためには、粒子表面にはできるだけ多くの高分子が吸着することが望ましい。
ポリウレタン樹脂の吸着量も、上記の塩化ビニル樹脂と同様の理由により、多ければ多いほど好ましい。すなわち、0.1mg/m2以上であることが望ましく、0.5mg/m2以上がより好ましく、1.0mg/m2以上が一層好ましい。
媒体表面(下層および上層を形成した完成品テープの表面)の粗さは小さく抑えるべきであるが、全くの平滑すなわち凹凸が全く存在しないような状態であれば、ヘッドとの摩擦が起こり、いわゆる「テープ鳴き」が発生するため好ましくない。よって、当該粗さはRa値で1〜20nmであることが望ましい。1〜15nmがより好ましく、1〜10nmが一層好ましい。
塗膜にカレンダー処理した場合の収縮率(カレンダー変化率)は大きければ大きいほど良い。これは、塗膜の収縮率が大きいほど、重層化した際の成形性が良好となり、ひいては磁性層表層の表面平滑性が改善するため好ましい。下層単体におけるカレンダー変化率は50%以上であることが望ましい。60%以上がより好ましく、70%以上が一層好ましい。
また、テープに対する機械的強度を示す、鋼球摺動においては傷幅ができるだけ狭く、また走行回数はできるだけ多い方が好ましい。具体的には、傷幅は鋼球の直径の5%以下であることが望ましく、3%以下がより好ましく、1.5%以下が一層好ましい。走行回数を表す剥離までの通過回数は、例えば600pass以上が望ましく、800passあるいは更に900pass以上がより好ましい。
重層構造の磁気記録媒体において、本発明に従うオキシ水酸化鉄粉末を下層材に用いる場合、上層用磁性粉末、ベースフィルム、非磁性層(下層)用塗料、磁性層(上層)用塗料については、次のものが例示できる。
〔磁性層(上層)用の磁性粉末〕
例えば、Feに対する含有量割合として、Co:5超え〜50at.%、Al:0.1〜50at.%、希土類元素(Yを含む):0.1〜30at.%、周期律表第1a族元素(Li、Na、K等):0.05質量%以下、周期律表第2a族元素(Mg、Ca、Sr、Ba等):0.1質量%以下を含有する鉄主体の強磁性粉末であって、平均長軸長10〜200nm、BET比表面積30〜150m2/g、X線結晶粒径(Dx):5〜20nmであり、且つ、保磁力(Hc):79.6〜238.9kA/m(1000〜3000 Oe)、飽和磁化(σs):10〜200Am2/kg(10〜200emu/g)の磁気特性を有する磁性粉末を挙げることができる。
〔ベースフィルム〕
例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン・アラミド、芳香族ポリアミド、等の樹脂フィルムを挙げることができる。
〔非磁性層(下層)用塗料〕
例えば、非磁性粉末(オキシ水酸化鉄):85質量部、カーボンブラック:20質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(MR110):15質量部、ポリウレタン樹脂(UR8200):15質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部からなる組成の非磁性塗料を挙げることができる。
〔磁性層(上層)用塗料〕
例えば、金属磁性粉末:100質量部、カーボンブラック:5質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(MR110):15質量部、ポリウレタン樹脂(UR8200):15質量部、ステアリン酸:1質量部、アセチルアセトン:1質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部からなる組成の磁性塗料を挙げることができる。
下層用、上層用いずれの塗料においても、各材料を所定組成となるような割合で配合し、ニーダーやサンドグラインダーなどを用いて混練分散を行うことによって塗布液に調整することができる。得られた塗布液をベースフィルム上にそれぞれ目標厚みとなるように塗布した後、磁性層が湿潤状態にあるうちに、磁場をかけて磁性層を配向させ、ついで乾燥、カレンダー処理を行うことによって磁気テープが作製できる。上に例示した強磁性粉末、ベースフィルム、塗料組成物を使用し、且つ本発明に従う非磁性粉末を使用した非磁性層を形成することによって、従来のものにはない、高密度記録に適した高性能の磁気記録媒体を製造できる。
後述する各実施例、比較例で採用した各特性値の評価法を説明する。
〔粒子の長軸長および短軸長〕
これらは、透過型電子顕微鏡観察を行って求めた。具体的には以下のとおりである。
観察試料の調整は、測定サンプル約0.005gを2%コロジオン溶液10mL中に添加し、分散処理を施してから、その溶液を水に1〜2滴滴下してコロジオン膜を生成させ、これをグリッドの片面に付着させ、自然乾燥させた後に被膜強化のためにカーボン蒸着を施すことによって行った。
この試料について、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、100CX−Mark-II型)を使用し、100kVの加速電圧で、明視野での観察を行った。平均長軸長、短軸長の値は、電子顕微鏡写真(58000倍)を縦方向および横方向にそれぞれ3倍に引き延ばした写真をプリントし、この写真に示される粒子500個以上についてそれぞれ長軸長、短軸長を測定し、その平均値を求めることによって算出した。ただし、電子顕微鏡写真上に存在する粒子については、単分散している粒子の他、粒子間で結合(焼結、連晶)している粒子、重なりあう粒子などさまざまな態様を呈しているため、測定を行う上で、どの粒子をどのように測定するかあらかじめ合理的で妥当な基準を設けておく必要がある。その基準は以下のとおりとした。
−長軸長、短軸長測定基準−
長軸長は粒子の長手方向において最も長いところを測定した値を指す。短軸長は粒子の幅方向において最も長いところを測定した値を指す。
透過型電子顕微鏡写真上に映っている粒子のうち、測定する粒子の選定基準は次のとおりとした。
[1] 粒子の一部が写真の視野の外にはみだしている粒子は測定しない。
[2] 輪郭がはっきりしており、孤立して存在している粒子は測定する。
[3] 形状が針状になっていないが、独立しており単独粒子として測定が可能な粒子は測定する。
[4] 粒子同士に重なりがあるが、両者の境界が明瞭で、粒子全体の形状も判断可能な粒子は、それぞれの粒子を単独粒子として測定する。
[5] 重なり合っている粒子で、境界がはっきりせず、粒子の全形も判らない粒子は、粒子の形状が判断できないものとして測定しない。
粒子間の結合の有無、すなわち粒子がただ重なり合っているのか、それとも焼結しているのかは次のようにして判定した。
(イ) フォーカスの異なった複数枚の写真を準備し、フリンジ(注:電子顕微鏡の明視野において、物質が変化しているところで見られる境界線のこと)がよく現れている写真から、粒子の境界部分を判断した。
(ロ) 重なり合う粒子において、両者の輪郭が交差する部分を観察し、両者の輪郭線が丸みを帯びて交わっている場合は焼結していると判断し、全ての交差部分において両者の輪郭線が他方の輪郭線とは無関係にある角度をもって点で交わっている場合は単に重なっているだけであると判断した。
(ハ) 境界が存在しているか、していないかはっきりせず、判断が難しい場合は、粒子間焼結が生じているとは判断せず、個々の粒子として測定し、粒子を大きく見積もった。
〔粒度分布〕
粒度分布曲線は、前述の透過型電子顕微鏡による500個以上の粒子についての長軸長測定データに基づき、次のようにして作成した。0.5nmごとに区切った各粒径区分に属する粒子数を求め、全測定粒子数に対する各粒径区分に属する粒子数の割合(%)すなわち頻度(%)を算出し、通常方眼紙中に、横軸に粒径、縦軸に頻度をとって、各粒子径区分に対応する頻度をプロットし、各プロットを滑らかな曲線で結ぶことによって作成した。なお、各プロットの横軸位置は、各粒子径区分の中央値の位置とした。
〔粒子の軸比〕
長軸と短軸の長さの比であり、平均長軸長と平均短軸長の商で表す。
〔比表面積〕
BET法で測定した。
〔Dx(結晶子サイズ)〕
X線回折装置(理学電機 RAD−2C)で得られる、Fe(110)=Kλ/βcosθ、(ただし、K:シェラー定数0.9、λ:照射X線波長、β:回折ピークの半価幅(ラジアンに補正して用いる)、θ:回折角)に従って求める。
〔ステアリン酸吸着量〕
試料粉末をステアリン酸2%溶液(溶媒はMEK)に分散させた後、遠心分離器により試料粉末を沈ませ、上澄み液の濃度を求めることにより比表面積あたりの吸着量として算出した。
〔樹脂吸着量(MR)〕
試料粉末を塩ビ系樹脂(MR−110)の1%溶液(溶媒はMEKとトルエン)を使用し、ステアリン酸吸着量と同様の方法で算出した。
〔樹脂吸着量(UR)〕
ポリウレタン樹脂(UR−8200)の2%溶液(溶媒はMEK、トルエンおよびMIBK)を使用し、ステアリン酸吸着量と同様の方法で算出した。
〔塗料粘度〕
株式会社東機産業製の粘度計(R110型)を用いて、オキシ水酸化鉄を分散させた非磁性塗料の粘度を測定した。
オキシ水酸化鉄を分散させた非磁性塗料をベースフィルムに塗布して非磁性層を形成させた中間製品段階のテープ(以下「非磁性層テープ」という)について、以下の評価を行った。ただしヤング率については、磁性層(上層)を形成した完成品のテープを対象に測定した。鋼球摺動試験は、完成品テープについても実施した。
〔表面平滑性〕
−表面粗度−
株式会社小坂研究所製の3次元微細形状測定機(ET−30HK)を用いて、非磁性層テープおよび磁性層(上層)を形成した完成品テープについて、それぞれ塗膜表面の算術平均粗さRaを測定することにより評価した。
−光沢度−
非磁性層テープについて、非磁性層塗膜表面の光沢度(角度60度)をグロスメーターで測定した。
−触針式による表面粗度−
JIS−X−6172−2000 7.9.他に記載されるように、半径12.5μmの触針を荷重20mgで254μmのカットオフで測定した。
〔走行耐久性・塗膜強度(鋼球摺動)〕
非磁性層テープを塗膜面が上になるようにガラス板に貼り付け、水平な場所にガラス板を置き、テープの非磁性層塗膜面に直径5mmのステンレス鋼球をのせ、鉛直方向に5gの荷重がかかるようにする。この状態からガラス板を水平に低速2320mm/minで片道20mmで往復運動させる。この摺動運動において、塗膜が剥がれ落ちるまでの摺動回数を測定した。
〔ヤング率〕
JIS−X−6172−2000他に記載のある磁気テープの弾性率の測定法に従い測定した。すなわち、178mm以上のテープ試験片を102mmの長さで固定し、固定ジグを5mm/minの速度で引っ張る。0%および1%伸びたときの張力の傾きから弾性率を計算した。
〔剛性〕
上記ヤング率の測定により得られた値を元にして、下記のように計算される。
剛性D=E×t3/12×((1−v)2)
ここで、Eはヤング率(N/mm2)、tはテープ厚さ(mm)、vはポアソン比:0.33である。
〔伸び荷重〕
JIS−X−6172−2000他に記載のある方法に従って求めた。すなわち、2%の精度で荷重表示可能な引張試験機で測定し、178mm以上の長さを有するテープ試験片を102mmの長さになるように固定ジグに取り付ける。最低10%の伸び率になるまでに51mm/minの速度で引き延ばす。3%の伸び率の時の張力をもって伸び荷重とする。
〔カッピング〕
JIS−X−6172−2000他に記載のあるようにテープを1.0±0.1mに切り取り、テープの両面が試験環境の雰囲気に露出するように垂らして、3時間以上放置する。このテープの中心部分から、長さ25mmの試験片を切り取る。この試験片を高さ25mm以上、内径13.0±0.2mmの円筒内に立て光学的コンパレータに立てて載せ、試験片の両方の縁をコンパレータの十字線に揃え、十字線から試験片の中心までの距離を測定することによって求めた。
〔実施例1〕
平均長軸長44nm、BET比表面積64.2m2/g、Al含有量0.28質量%のオキシ水酸化鉄粉末Aと、平均長軸長155nm、BET比表面積45.8m2/g、Al含有量0.38質量%のオキシ水酸化鉄粉末Bを用意した。この場合、前述の平均粒子径D1およびD2はそれぞれ44nmおよび155nmとなる。なお、これらはいずれも、オキシ水酸化鉄の生成反応中にAlを添加する方法で粒子の中にAlを含ませたものである。
オキシ水酸化鉄粉末Aを11.17g含む懸濁液2リットルを、液の温度を35℃に保ちながらホモミクサー(特殊機化工業株式会社製、TK−HOMOMIKSER MARKII)を用いて5000rpmで激しく撹拌し、その状態を30分間保持した。次いで、撹拌状態のまま、これに、オキシ水酸化鉄粉末Bを44.68g含む懸濁液2リットルを添加し、60分間撹拌し、混合した。得られたオキシ水酸化鉄含有スラリーを濾過、水洗したのち、130℃の大気中で水分の発生が無くなるまで乾燥を行い、乾燥したオキシ水酸化鉄粉末を得た。なお、この場合、前述の混合比W1/W2=44.68/11.17=4となる。
得られたオキシ水酸化鉄粉末について前述の各種特性調査および化学分析を行った。また、このオキシ水酸化鉄粉末について粒度分布を調べ、粒度分布曲線における前述のピーク粒径DP1、DP2、およびピーク高さHP1、HP2を求めた。
次に、このオキシ水酸化鉄粉末を用いて非磁性層(下層)用の塗料を作った。下記組成となるように各材料を配合し、これを遠心ボールミルで1時間分散させて塗料化した。
(非磁性塗料組成)
オキシ水酸化鉄粉末:100質量部、塩ビ系樹脂:10質量部、ポリウレタン樹脂:10質量部、メチルエチルケトン:165質量部、シクロヘキサノン:65質量部、トルエン:165質量部、ステアリン酸:1質量部、アセチルアセトン:1質量部
この塗料をポリエチレンテレフタラートからなるベースフィルム上に、アプリケーターを用いて、目標厚みが約3μmとなるように塗布し、非磁性層テープを作製した。この非磁性層テープについて前述の各種特性を調査した。
これらの各種結果を表1〜3にまとめて示した(以下、実施例2〜30において同様)。
〔実施例2〜15〕
実施例1のオキシ水酸化鉄粉末A、Bに替えて、表1に示す組成、BET比表面積を有するオキシ水酸化鉄粉末を用いた以外は、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
〔実施例16〜19〕
実施例1のオキシ水酸化鉄粉末A、Bとほぼ同じ粉末を用いて、両者の混合割合を表2に示すように変化させた以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
〔実施例20〜29〕
実施例1のオキシ水酸化鉄粉末A、Bに替えてPおよびYを含む表1記載の組成のものを用い、両者の混合割合を表2に示すように変化させた以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
〔実施例30〕
実施例1のオキシ水酸化鉄粉末A、Bに替えて、意図的な物質添加を行っていない純粋なオキシ水酸化鉄粉末を用いた以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
〔比較例1〕
実施例1で用いたオキシ水酸化鉄粉末Aとほぼ同じ粉末のみを用い、他オキシ水酸化鉄粉末を混合しなかったこと以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
これらの各種結果を表4〜6にまとめて示した(以下、比較例2〜7において同様)。
〔比較例2〕
実施例1で用いたオキシ水酸化鉄粉末Bとほぼ同じ粉末のみを用い、他オキシ水酸化鉄粉末を混合しなかったこと以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
〔比較例3〕
実施例1で用いたオキシ水酸化鉄粉末A、Bとほぼ同じ粉末を使用し、混合比をW1/W2=0.5とかなり小さくした以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。すなわちここでは、粉末Aとほぼ同じ粉末を11.17g含む懸濁液2リットルと、粉末Bとほぼ同じ粉末を5.59g含む懸濁液2リットルを用意して混合した。
〔比較例4〕
実施例1で用いたオキシ水酸化鉄粉末A、Bとほぼ同じ粉末を使用し、混合比をW1/W2=60とかなり大きくした以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。すなわちここでは、粉末Aとほぼ同じ粉末を1.45g含む懸濁液2リットルと、粉末Bとほぼ同じ粉末を87.0g含む懸濁液2リットルを用意して混合した。
〔比較例5〕
使用した2種類のオキシ水酸化鉄粉末の粒径比をD1/D2=17.5と極端に大きくした以外は、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
〔比較例6〕
粒径差が小さい2種類のオキシ水酸化鉄粉末を用いた以外、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。すなわちここでは、実施例1のオキシ水酸化鉄粉末Aの替わりに平均長軸長45μm、BET比表面積64.2m2/g、Al含有量0.5質量%のオキシ水酸化鉄粉末を用い、同オキシ水酸化鉄粉末Bの替わりに平均長軸長60nm、BET比表面積55.8m2/g、Al含有量0.3質量%のオキシ水酸化鉄粉末を用いた。この場合、前述の平均粒子径D1およびD2はそれぞれ43nmおよび62nmとなる。
〔比較例7〕
粒子径が小さい方のオキシ水酸化物として粒径がD1=82nmと大きいものを使用して、実施例1と同じ条件で各種試験・調査を行った。
Figure 0005017731
Figure 0005017731
Figure 0005017731
Figure 0005017731
Figure 0005017731
Figure 0005017731
表1、表2から判るように、各実施例においては表面平滑性の高い非磁性層塗膜が得られ、その耐久性も鋼球摺動回数800Pass以上をクリアし、非常に良好であった。
これに対し、比較例1、2では粒度分布曲線に単一のピークしか存在せず、比較例1の場合はそのピーク粒径が大きいため塗膜面の平滑性(Ra)および塗膜耐久性に劣り、比較例2の場合はそのピーク粒径が小さいため塗膜耐久性が悪かった。比較例3では混合比W1/W2が小さすぎたため、大径粒子の空隙部分を小径粒子で十分に埋めることができず、非磁性層(下層)の表面平滑性が悪く、塗膜耐久性にも劣った。比較例4では逆に混合比W1/W2が大きすぎたため粒度分布曲線のピーク高さの比HP1/HP2が大きく、結果的に大径粒子の空隙部分を小径粒子で埋めても、なお余剰の小径粒子が多く存在し、表面平滑性が悪くなり塗膜耐久性にも劣った。比較例5では粒子径の比D2/D1が大きすぎたため大径粒子の空隙を小径粒子で十分に埋めることができず、やはり表面平滑性および塗膜耐久性に劣った。比較例6では粒度分布曲線に2つのピークが存在するものの、2つの粒子の粒度分布が重なりを有しているため明瞭な「二山分布」にはならなかった。すなわち、ピーク粒径DP1、DP2の差が小さすぎたため大きい粒子の空隙を小さい粒子が埋める効果が十分に発揮されず、結果的に塗膜耐久性が悪かった。比較例7では小径粒子の粒径が大きすぎたため、大径粒子の空隙が十分に埋まらず、表面平滑性および塗膜耐久性に劣った。
〔実施例40〜46および比較例20〜22〕
それぞれ実施例40〜46では実施例1、3、5、7、11、17、18で得られたオキシ水酸化鉄粉末を用い、比較例20〜22ではそれぞれ比較例1、3、4で得られたオキシ水酸化鉄粉末を用いて、非磁性層(下層)を形成し、その上に下記の金属磁性粉末を用いて磁性層(上層)を形成した重層構造の塗布型磁気記録媒体(磁気テープ)を作製して、電磁変換特性とテープ耐久性、強度の評価を行った。
非磁性塗料および磁性塗料は、下記の組成となるように各材料を配合し、ニーダーおよびサンドグラインダーを用いて、混練、分散を行って作った。
(非磁性塗料)
実施例1の非磁性粉末(オキシ水酸化鉄):85質量部、カーボンブラック:20質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(MR110):15質量部、ポリウレタン樹脂(UR8200):15質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部
(金属磁性粉末)
長軸長:60nm、BET比表面積:63m2/g、Dx:12.5nm、Hc:167.2A/m(2100 Oe)、σs:123Am2/kg(123emu/g)、Co/Fe:17.8at.%、pH:9.6、Δσs:6.3%の平針状を呈した金属磁性粉末。
(磁性塗料)
上記の金属磁性粉末:100質量部、カーボンブラック:5質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(MR110):15質量部、ポリウレタン樹脂(UR8200):15質量部、ステアリン酸:1質量部、アセチルアセトン:1質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部
アラミド支持体からなるベースフイルムの上に、上記非磁性塗料(下層)と上記磁性塗料(上層)を、非磁性層厚(下層厚)2.0μm、磁性層厚(上層厚)0.20μmの目標厚みとなるように塗布し、磁性層が湿潤状態にあるうちに磁場をかけて配向させ、乾燥、カレンダーを行って磁気テープを作製した。
得られた磁気テープについて既出の方法で表面平滑性(粗度)およびテープ耐久性(鋼球摺動のパス回数)、ヤング率の試験を行うとともに、電磁変換特性(C/Nおよび出力)を測定した。C/N比の測定は、記録ヘッドをドラムテスターに取り付けて、デジタル信号を、記録波長0.35μmで記録した。その際MRヘッドを使用し、再生信号を測定し、ノイズは変調ノイズを測定し、後述比較例20の出力、C/Nを0dBとして、その相対値で表示した。
これらの結果を表7に示した。
Figure 0005017731
表7から判るように、本発明に従う非磁性粉末を下層材に用いると、重層構造にしたときのテープ表面平滑性が極めて良好であり、その結果、高い出力と高いC/Nを示し、高密度記録媒体として好適なものである。また、磁気テープの耐久性にも優れており、ヘッドとの摺動に対しても優れた耐久性を示す。
本発明の実施例1におけるオキシ水酸化鉄粉末の粒度分布曲線の1例を示すグラフ。 比較例1におけるオキシ水酸化鉄粉末の粒度分布曲線の1例を示すグラフ。

Claims (6)

  1. 下記(4)〜(6)式を満たす平均粒子径D1(nm)のオキシ水酸化鉄粉末と平均粒子径D2(nm)のオキシ水酸化鉄粉末を下記(8)式を満たす混合比で混合してなる非磁性粉末。
    2≦D2/D1≦17……(4)
    5≦D1≦70……(5)
    30≦D2≦300……(6)
    1≦W1/W2≦50……(8)
    ここで、W1は平均粒子径D1の粉末の配合量(質量%)、W2は平均粒子径D2の粉末の配合量(質量%)である。
  2. Alを0.01〜50質量%含有する請求項1に記載の非磁性粉末。
  3. Siを0.01〜50質量%含有する請求項1または2に記載の非磁性粉末。
  4. Pを0.01〜50質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の非磁性粉末。
  5. 希土類元素類R(RはYと希土類元素のうちの1種以上)を含有し、R/Fe原子比が0.1〜10である請求項1〜4のいずれかに記載の非磁性粉末。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の非磁性粉末を用いた重層塗布型磁気記録媒体。
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