JP5016676B2 - 免疫系の活性化または細胞死の程度の検出のための方法 - Google Patents

免疫系の活性化または細胞死の程度の検出のための方法 Download PDF

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Description

本発明は、免疫系の活性化、好ましくはNET形成の意味での免疫系の活性化、の検出方法、または非-腫瘍性組織中または体液中での細胞死の程度の検出方法に関するものであり、ここで非-細胞結合性DNAが個体由来のサンプル中で測定されるものである。さらに、本発明は、少なくとも1つの容器中に蛍光色素とDNAスタンダードとをパッケージングすることを含む、個体中での免疫系の活性化の検出または細胞死の程度の検出のためのキットを製造する方法に関する。
本記載中において、多数の文献を引用する。製造者のマニュアルを含めてこれらの文献の内容は、その全体を参照により本明細書中に援用する。
大きな手術の後、特に心肺装置を用いた手術の後だけではなく、多発性外傷、敗血症、熱傷を伴う事故の後、並びに虚血/再かん流疾患の後(動脈閉塞または毛細血管閉塞の後)、強力でしばしば過剰な免疫系の活性化が見られる。これらは、臓器において一過性の損傷または永久的な損傷を引き起こす可能性があるが、しかし死に至らしめる可能性もある。この免疫応答の細胞成分は、好中球顆粒球により媒介される。この活性化の効果を推定するため、この事象の程度について時宜に即して情報を受けることが重要である。典型的には、既知の指標またはマーカーの測定を行う。それにもかかわらず、現在に至るまで、活性化または発現が1〜2、3日遅れる因子のみが知られている。
このように、一般的なパラメータであるC-反応性タンパク質(CRP)が、事象後約2日後に増加し、一方で、IL-6は1日後に増加する。CRPは肝臓中でIL-6により誘導され、そして誘導後わずか72時間でその最大値に達する。さらに、成人において、CRPは非常に不活性なパラメータであり、その上昇は長時間持続し、短期の治療の成功を示さず、そして手術により生じるその上昇のために、手術後段階初期において、炎症性合併症の検出のための非常に限定的な用途のみを有する。それにもかかわらず、現時点において、CRPは、炎症性診断の“究極の判断基準(gold standard)”であり、そして最高のサービスを提供するクリニックのほとんどの研究室の統計資料において確実に最も高価なパラメータである。従って、これまで知られているマーカーは、担当医の迅速な対応が必要とされる急性的な事象のためには適切ではない。例えば、動脈閉塞の後、切断術を行うべきか否かについて、数時間内に決断しなければならない。
50〜80%とともに、好中球顆粒球は、白血球の主要な部分を形成し、そして病原体に対する防御の最前線を形成する。好中球顆粒球は、積極的に微生物を殺すことができる多数の酵素をそれ自体が含有する顆粒をその細胞質中に含有する。好中球顆粒球は、とりわけ、微生物の存在により活性化され、そして感染症の原因に向けて遊走する。その後、それぞれの汚染物質が食作用により内在化され、そして顆粒由来の酵素の補助により殺される。最近、好中球により適用されるさらなる防御機構が見出された:NET(好中球細胞外捕捉)様々なタンパク質により修飾されたDNAを基礎とする構造を形成する。アズール性の(一次)顆粒のタンパク質(例えば、エラスターゼ、カテプシンGおよびミエロペルオキシダーゼ)は、二次顆粒および三次顆粒に対して特異的なタンパク質(例えば、ラクトフェリンおよびゼラチナーゼ)と共に見出すことができる。同様に、ヒストンH1、H2A、H2B、H3、およびH4を主要な構造成分であるDNA中に見出すことができ(Brinkmann, et. al. 2004)、このことは強力な抗微生物性特性を示す。NETは、活性化の10分後には既に好中球顆粒球により分泌される。この放出は、アクチベーターの用量に依存し、従って活性化の程度に依存する。NETは、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の両方ともと関連する。この構造中に存在するエラスターゼと一緒に、それらは細菌の毒性因子の活性化に積極的に寄与する。最近、原核微生物に対する活性の他に、真核微生物(すなわち、酵母Candida albicans,)に対するNETの活性もまた示された(Urban et al., 2006)。NETは、in vitroおよびin vivoの両方ともで形成され、ウサギにおける実験的細菌性赤痢の経過ならびにヒトにおける自発性虫垂炎の経過において検出することができる。
先行技術は、NETがヒストンを細胞外に提示するという事実は、例えば、紅斑性狼瘡などの自己免疫疾患との関連で、宿主の身体に対して有害な作用を結果として引き起こす可能性もあったことを示す。というのも、これらの通常は暴露されていない抗原が外来性物質として認識される可能性があるためである。
癌治療法の有効性を調べるために血液中のDNAを測定することは、比較的新規であるが、今のところは通常適用される方法である。癌治療法は、腫瘍細胞の細胞死を目的としているため、細胞死のあいだに遊離するDNAの測定のための本発明の方法は、理にかなっている(Umetani et al., 2006)。
Brinkmann, V., et al., (2004). Science 303; S. 1532-5. Urban, C. F., et al., (2005). Cell Microbiol 8 (4); S. 668-76. Umetani, N., et al., (2006). J. Clin Oncol 24, S. 4270-6
既に上述したように、体内の炎症、偶発事故を検出するための手術性浸潤の後、早期にそれぞれの対策を行うために、既に生じたまたは生じうる免疫系の活性化の程度を迅速に推定することは必須である。従って、適切な方法で迅速に利用可能な結果をもたらすマーカーを見出しそして検出可能にすることが好ましい。特定の病理学的現象の後の細胞死(この関連で壊死を意味する)のためのそのような指標を有することは利点でもある。免疫応答および壊死を裏付ける分子メカニズムについての理解がより深まってきているにもかかわらず、これまでは当該技術分野において、過度の免疫応答による損傷の程度を迅速に示すマーカーがうまく見つかっていなかった。
上述した技術的課題の解決法は、特許請求の範囲において特徴づけられる態様により記載される。
本発明の一態様は、免疫系の活性化、好ましくはNET形成の意味での免疫系の活性化、の検出方法、または非-腫瘍性組織または体液中での細胞死の程度の検出方法に関するものであり、ここで非-細胞結合性DNAが個体由来のサンプル中で測定されるものである。
従って、特定のマーカーが免疫応答を媒介する細胞の細胞表面上で特異的に検出することができる場合に、“免疫系の活性化”が一般に存在する。とりわけ、“大きな”血液カウント、特に好中球顆粒球およびリンパ球の血液カウント、の細胞数の顕著な変化が生じる場合に、活性化が存在する。中でも、免疫応答は、微生物、ウィルスの形態での病原体により引き起こされ、そして刺激物質または有毒物質(例:誤嚥性肺炎)、アレルゲン、医薬、および生体物質(CD28、TeGenero)によっても引き起こされる。より具体的には、“免疫系の活性化”という用語は、好中球顆粒球によるNETの放出が増加することを意味する。
細胞死は、プログラム細胞死(生理学的細胞死、アポトーシス)または病理学的細胞死(壊死)を一般に含む。
アポトーシスは、外部から(例えば、免疫細胞により)引き起こされる場合、または細胞内における内部プロセスにより(例えば、遺伝情報の強力な損傷の後に)生じる場合がある。壊死とは対照的に、アポトーシスは、関係する細胞により積極的に行われ、そして細胞の代謝の一部を形成する。従って、この細胞死の型は、厳密にコントロールされるものであり、そしてそれぞれの細胞は周囲組織に損傷を与えること無く消滅することが保証される。
おそらく、例えば、毒、細菌、栄養または酸素の欠乏、放射線などの損傷を与える作用が、細胞を壊死に導く可能性がある。この後には、周囲組織の炎症反応が生じる。組織の種類に応じて、細胞が再び増殖するかまたは組織の壊死部分が結合組織により形成される瘢痕により置換されるという事実により、壊死は完全に治癒する。
光学的には、アポトーシスおよび壊死は、容易に識別可能である。アポトーシスの場合、細胞の収縮が開始され、そしてDNAがエンドヌクレアーゼにより規定の小片に分解されるのに対して、壊死の場合には細胞は膨大し、その細胞膜の崩壊が生じる。細胞質、細胞オルガネラ、およびDNAが細胞外腔に放出され、そしてその後マクロファージにより処理されるため、後遺症は局所的な炎症である。これと関連して、細胞核由来のDNAもまた放出される。
これと関連して“非-腫瘍性”は、組織が病的な増殖を引き起こす遺伝的情報の変化の経過を発症しなかったことを意味する。組織は、良性癌でもなければ悪性癌でもない。現在までのところ、癌に悩まされていない個体において非-細胞結合性DNAの測定を実施することについて、何ら理由は存在しなかった。現在までのところ、非-細胞結合性DNAの放出は、癌治療において腫瘍細胞が細胞死する場合に限り知られておりそして利用されてきた。
体液は、体内に存在するすべての液体または身体により分泌されるすべての液体であり、例えば、血液、羊水(liquor)、尿、漿液、唾液、または病的に変化した糞便を上げられる。
本発明の経過において、血液中の非-細胞結合性DNAの濃度が、癌または病原体により引き起こされるのではない特定の病理学的現象の存在下において増加することが、驚くべきことに見いだされた。特定の理論に縛られることを望まないが、出願人は、病的状態に応じて、この非-細胞結合性DNAが遊離型でおよび/または上述したNETの形状で存在するという想定のもとで行動する。この場合において、これらのNETは、微生物の防御のために生成されるだけではなく、特定の病理学的現象により引き起こされる免疫応答の経過において一般的に放出される。これらのNETの一部は、毛細管に接着しているのに対して、別の部分は血流の結果として引きはがされそして血漿および血清中に存在する。上述したように、そのような免疫応答などの早期の検出のための現在までのところ適切なマーカーは存在しないため、患者サンプル中のNETを生成する顆粒球を活性化させた後10分後にすでに放出されているNETを検出することは、主治医の時宜を得た応答を引き起こすことができ、それにより生命を救うことができる。
一般的には、血液中の遊離のDNAを0〜約150 ng/mlの範囲の濃度で有する個体は、健康個体であるとしてみなされる。
従って、本発明の方法の好ましい態様において、150 ng/mlよりもかなり高い値は、免疫系の活性化の指標であるか、または細胞死の程度が上昇したことの指標である。
本発明の方法により、特定の事象により引き起こされる免疫系の活性化を、時宜を得て測定することができ、そして免疫系の活性化または細胞死の程度の上昇を測定するならば、そのような事象を経験した個体は、適切な測定値を時宜を得て取得することができるように、モニタリングすることができる。例示的な事象は、手術、多発性外傷を伴う事故、軟部組織外傷、虚血/再かん流疾患、梗塞症、虚血、塞栓症、感染症、敗血症、移植、中毒、子癇、医薬の副作用および/または輸血である。
好ましくは、例えば、手術の場合、本発明の方法に従ったDNA濃度の測定は、比較値を得るために、それぞれの事象の前に行われる。
このことが可能ではない場合、例えば事故の場合、事象後にいくつかの測定を行って、個体の症状をモニタリングすることができる。
好ましくはそして可能ならば、上記事象(例えば、手術)の間またはその後に、ならびに例えば、事故などの事象の後のみに、本発明の方法を適用する。本発明の方法を用いたDNA濃度の測定は、数回、そして必要な長さの期間のあいだ、すなわち、免疫系のさらなる活性化が見られないこと、または細胞死の程度が増加することが見られないこと、またはそれらが期待されることを、測定された値が示すまで、行うことができる。個体の状態の重症度および事象の特徴に応じて、測定間の期間は、約1時間、例えば、1またはそれ以上の上記事象ののちすぐ、から数時間または1日まで変化させることができる。
事象として手術の例に関して、DNA濃度を手術の直前に測定して、比較値を得ることができる。さらなる測定を手術中に行って、個体の免疫系に対する手術治療の効果をモニタリングする。その後、測定を例えば、手術後1時間、2時間、5時間および10時間に行うことができる。DNA濃度が以前の値と比較して顕著に増大している場合、主治医は、とるべき適切な手段について時宜を得て決定することができる。典型的には、DNA濃度は、手術の経過において、ならびに上述したその他の事象のあいだまたはその後に、上昇し、そして特定の可変の時間のあいだ上昇したレベルで一定であり続け、そしてその後、免疫系がそれ以上活性化されないことを示す程度に再び減少する、ことが予想される。
1回より多くの測定が1個体からのサンプルにおいて行われる場合、得られた最後の値をその患者から得られるサンプルにおいて測定された以前の値と比較する。この場合、その以前の値もまた、150 ng/mlを超えていてもよい。その患者から得られた以前の値と比較して顕著に高い値は、免疫系のさらなる活性化または細胞死の程度の増加の指標となる可能性がある。この点において、“顕著に高い”とは、以前に得られた値と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも100%高い値のことを意味する。例えば、患者において800 ng/mlのDNA濃度が以前に測定された場合、例えば、その後に測定された1000 ng/mlのDNA濃度は、免疫系のさらなる活性化または細胞死の程度の増加の指標である。
別の好ましい態様において、増加が少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、そして最も好ましくは少なくとも100%の増加であれば、150 ng/ml以下の値へのDNA濃度の増加も、顕著とみなされる。例えば、1個体から得られた最初の値が50 ng/mlであり、そしてその後に測定された2回目の値が120 ng/mlである場合、値が150 ng/ml以下であっても、得られた値は免疫系の活性化または細胞死の程度の増加の指標である。
定性的にならびに定量的に、DNAは日常的に、多数の方法で検出することができる。その中でも、PCR法およびDNAと特異的に相互作用する試薬を用いた検出である。非-細胞結合性DNAは、様々な方法を用いて測定することができる。インターカレーター色素を添加した後に蛍光を測定すること以外に、現在では、濃度を測定するために、DNAのUV吸収を測定することも日常的に適用される。必要なサンプル容量は今や、低μl範囲にまで到達した(例えば、NanoDropを用いた測定は、2μlからの範囲である)。現在のところ、蛍光法を用いたDNAについてのより低い検出限界は、約50 ng/mlである。
本明細書中で開示された方法は、非-細胞-結合性DNAの測定を目的としている。この点において、用語“非-細胞-結合性”は、すなわち、例えば、DNAに附属していないタンパク質、糖残基などのさらなる追加物質を伴わない、いずれかの純粋な、細胞外に存在するDNAを含むが、そのような物質を負荷されていてもよい。“非-細胞-結合性DNA”は好ましくは、NET構造中のDNAまたはその他の細胞死により放出されたDNAを含み、ここでそのDNAは体液中または組織中に存在するものである。
好ましい態様において、非-細胞結合性DNAの測定は、定量的である。
測定されるべき非-細胞結合性DNAの濃度または量は、血液中またはその他の体液中または組織中で検出することができるDNA量である。その濃度は、絶対値、ならびに重量あたりの量または容量あたりの量、例えば、mg/ml、μg/ml、ng/mlまたはその他の単位へとそれぞれ変換したもの、の形態で、測定することができる。
本発明の別の好ましい態様において、サンプルは、全血から得られた血漿または血清を含む。
用語“血漿”は、固形構成成分、例えば細胞(赤血球、白血球、など)、から分離され、そして凝固が沈静化している、血液の液相を意味する。
用語“血清”は、血液の凝固後、血小板および凝固因子と混合されて血液固形物を形成する細胞構成成分を分離することにより得られる、血液の液体部分を記述する。
さらに好ましい態様において、非-細胞結合性DNAの測定は、蛍光色素を血漿または血清に添加した後の蛍光放射を測定することを含む。
特定の物質を、二本鎖DNAおよび一本鎖DNA中に導入する(インターカレーター)。その後、ある程度、物質のみはそれらの蛍光特性を獲得しまたは向上させる。DNA中に蓄積させることにより、そして特定の波長の光を照射する際、この物質は、定量的に測定することができそしてDNA量と相関する異なる波長の光を放出する。蛍光色素は、インターカレーターとは異なっていてもよく、そして測定されるべきDNAと、例えば化学的修飾により接触させることができる。一般的に適用される色素は、例えば、Cy3、Cy5および同様の物質である。
DNAは、蛍光色素を挿入することにより検出することもでき、この方法は、例えば、特異的抗体を用いて修飾されるタンパク質を検出するのとは対照的に、顕著な時間の節約という利点を有する。単独で使用してまたは免疫応答の初期検出性と一緒に組み合わせて、臨床診断において従来から存在しそしてかなり面倒な方法に取って変わる可能性がある強力で臨床的に価値がある方法を開発した。
さらにずっと好ましい態様において、蛍光色素はピコグリーン(登録商標)(Molecular Probes)またはQant-iTTM(Invitrogen)である。この色素は、製造者の指示に従って使用することができる。好ましくは、適切な量のピコグリーンを希釈し、好ましくは使用直前に希釈する。適切な量は、例えば、1 ml PBS、血清、血漿、またはこれらの混合物中で希釈することができる、例えば、1、2、3、4または5μlのピコグリーンであるか、または、その他の供給者を使用する場合には、適宜調節した量である。色素が乾燥された状態で存在する場合、適宜溶解することができる。
さらに好ましい態様において、少なくとも1またはそれ以上のスタンダードとの比較に基づいて、非-細胞結合性DNAの測定を行う。
DNA(例えば、子牛胸腺由来のもの)を用いて、既知濃度のこのDNAを液体中で希釈し、その後蛍光および/または吸収を、好ましくは適切な色素(例えばピコグリーン)を添加した後に測定することにより、検量線(標準曲線)を作成することができる。これにより得られる値を、健康な個体から得られた値または疾患を有する個体から得られた値のそれぞれの値と比較する。健康な個体は、調べられた個体と同一の種の個体である必要はない。利用可能である場合、健康個体の値を決定するための血漿または血清は、体内における(NET-)DNAの放出を潜在的に引き起こす事象の前に、それぞれの個体から得ることが好ましい。より現実的には、サンプルを例えば手術前に、個体から採取することができる。
最も簡単な場合において、検量線(標準曲線)は、既知の傾きと組み合わせた一つの点からなる。この点は、好ましくは、0.01〜4μg/ml DNAの範囲、さらに好ましくは0.1〜2μg/ml DNAの範囲、さらに好ましくは0.2〜0.6μg/ml DNAの範囲に存在する。検量線(標準曲線)もまた、0.01〜10μg/mlの範囲の2またはそれ以上の点からなっていてもよい。
さらにずっと好ましい態様において、検量線(標準曲線)は、10μg/ml未満の希釈から始めて、好ましくは7μg/ml未満から始めて、そして特に5μg/ml DNA未満から始めて、少なくとも1つの値を含むことが好ましい。
さらにずっと好ましい態様において、健康個体の血漿または血清を用いて、または血清または血漿の光学的特性と匹敵する光学的特性を有する液体を用いて、希釈を行う。
当業者は、どの液体が適切な光学的特性を有するか、そしてどの液体を血漿または血清の代わりに使用することができるか、を容易に決定することができる。そのような液体は、好ましくは、アルブミンまたはビリルビンまたは血清または血漿の光学的特性を模倣するために適しているその他の物質を含有する。両方の物質の濃度を調節して、測定サンプルの濃度に似せることができる。その液体は、2〜5%NaClもまた含んでもよく、またはさらに含有してもよい。
健康個体の血漿を用いた希釈は、サンプルおよびDNA標準について均等な測定条件を作製するように機能する。健康個体自体由来の血漿の測定はゼロ値を生成し、この場合においては血清/血漿中の正常なDNA濃度についての標準値を構成することができる。
健康個体および様々な疾患パターンを有する疾患個体由来の既知の標準を用いて測定された濃度の比較は、診断のために、そして処置および治療に関して決定をするために、本質的なものである可能性がある。
さらに好ましい態様において、クエン酸、ヘパリン、天然および合成のヒル由来活性成分、酵素阻害剤およびキレート剤からなる群に由来する少なくとも1つの抗凝固剤が、測定前に全血に対して添加される。
抗凝固剤は、その添加後、血液の凝固を低下させる物質である。これらの物質は、診断目的に使いやすい血液を得るために日常的に適用される。
さらに好ましい態様において、血液の固体構成成分が、遠心分離によりまたは重力または濾過に基づくその他の手段により、血清または血漿から分離される。
遠心分離は、固体血液成分と液体血液成分とを分離するための方法として、当該技術分野において周知である。凝固した血液および凝固していない血液を、その固体構成成分と液体構成成分とに分離するために適している。一般的に、固体血液構成成分を分離するために適した方法はすべて、本発明を実施するために利用可能である。
分離のステップもまた、細胞内DNAを血清または血漿から分離し、そして従って測定されるべきサンプルから分離し、それにより非-細胞結合性DNAのみを測定することを保証する。
さらに好ましい態様において、免疫系の活性化は、手術性浸潤、多発性外傷を伴う事故、軟部組織外傷、敗血症、熱傷、虚血/再かん流疾患、梗塞症、塞栓症、感染症、敗血症、移植、中毒、子癇、医薬の副作用および/または輸血により引き起こされる。
中でも、感染症は、細菌、ウィルス、寄生虫、酵母または真菌により引き起こされる可能性がある。
本発明は、とりわけ手術性浸潤の後、多発性外傷を伴う事故の後、並びに敗血症の場合に生じる症状に関連して、血液中の非-細胞結合性DNAの上昇を記載する。
このことに関連して、実施例2において示されるように、心肺装置が使用される場合には、必ずという訳ではないけれどかなりしばしば免疫系の活性化が生じるため、大きな手術性浸潤は、特に好ましく、特に心肺装置(HLM)を利用する必要があるものが好ましい。心肺装置を利用することは、肺および心臓における虚血フェーズを含み、そして非-細胞結合性DNAの両方の増加のいずれかの経過において本発明の終了もまた検出した後、再かん流を必要とする。
敗血症は、全身性の感染症であり(局所的なものではなく)、しばしば制御不能な免疫応答と関連する。一般的に、過剰な反応において放出される大量の伝達物質は、全身の炎症を引き起こし、それが病原体と闘うために有用なことなく、とりわけ、膨大、血液循環困難および酸素欠乏と関連している。いったん重要な器官が病気に冒されると、それから生じるそれらの機能性の喪失は、すぐに、患者の生存にとっての本質的な制限因子となる可能性がある。
上述したように、顆粒球は、ネット-様構造中にそれらのDNAを放出して、細菌および真菌を捕獲しそして不活性化する。例として以下に示すように、非-細胞結合性DNAの濃度もまた、多発性外傷、軟部組織外傷、敗血症、熱傷の場合、ならびに虚血/再かん流疾患の後に生じる。これらの傷害は、それぞれの免疫応答または炎症応答を引き起こすサイトカイン類の放出を引き起こす。しかしながら、主に機構的な刺激(衝撃波、せん断応力)もまた、NETの形成を引き起こすことができる。従って、例は、高速度での事故、銃創、窓外放出および血液ローラーポンプである。出願人は、この文脈において理論により縛られることを望まないが、出願人は、非-細胞結合性DNAが顆粒球により放出されるNETから主として構成されるとの合理的な前提を示す。
さらに、出願人は、NETもまた、腎臓損傷、および進行中の感染症の後にしばしば生じる動脈閉塞疾患(AOD、心筋梗塞症を含む)に関与するという前提から始める。中でも、このことはおそらくは小径を有する血管中の広い表面のDNA-ベースのNETにより引き起こされる封鎖から生じる。さらに、NET形成および接着は、血管中で流体力学的に好ましくない表面構造を引き起こす可能性があり、それは例えば、プラーク形成、特に高血圧の存在下におけるプラーク形成と関連したものであり、それが次いで、この領域における乱流のために顆粒球にとっての機械的ストレス(同様に、インプラントの場合、バイオフィルムの形成)の増加を引き起こす。
さらに好ましい態様において、細胞死は、外傷、熱傷、中毒、肝細胞壊死、横紋筋融解症、手術性浸潤、多発性外傷を伴う事故、軟部組織外傷、虚血/再かん流疾患、梗塞症、虚血、塞栓症、感染症、敗血症、移植、中毒、子癇、医薬の副作用および/または輸血の結果である。
輸血の場合、免疫系の活性化または細胞死は、間違った血液型の血液が輸血される場合に生じる可能性がある。
これらの病的症状の経過において、壊死の形態の細胞死が生じる可能性があり、この場合、壊死細胞のDNAが放出される。一般に、壊死は外的な病理学的条件により生じ、そしてアポトーシスとは対照的に、制御不能に生じる。
さらに好ましい態様において、個体は哺乳動物である。
特に好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。
さらに好ましい態様において、タンパク質がDNAに接着する。
さらに上述したように、NETは、純粋なDNAからは構成されず、しかし様々な種類のタンパク質により修飾される。これらのタンパク質は通常は、DNAの環境において核中に見出されるタンパク質である。本発明において、NETには対応しないDNA-タンパク質-構造もまた、含まれる。
さらに好ましい態様において、タンパク質は、プロテアーゼまたはヒストンである。
基本的に、本発明には、NETの存在、またはアズール性の(一次)顆粒のタンパク質(例えば、エラスターゼ、カテプシンGおよびミエロペルオキシダーゼ)、ならびにラクトフェリンやゼラチナーゼなどの二次および高次顆粒に特異的なタンパク質を含むタンパク質により修飾されたその他のDNAの存在を特異的に検出するために機能することができる、全てのタンパク質が含まれる。
従って、好ましい態様において、本発明の方法は、NET-DNAおよび/またはタンパク質で修飾されたその他のDNA上に特異的に見出されるタンパク質を検出する工程を含む。
特異的タンパク質を検出するための方法は当該技術分野において周知であり、そして例えば、ウェスタンブロット、ELISA、FACS解析、または酵素的アッセイを含む。
さらに好ましい態様において、そして免疫系の活性化の文脈において、DNAは顆粒球から生じる。
本発明のさらなる態様は、蛍光色素およびDNAスタンダードを少なくとも1つの容器中にパッケージングすることを含む、個体における免疫系の活性化の検出または細胞死の程度の検出のためのキットを調製する方法に関する。
このキットは、好ましくは、手術性浸潤、多発性外傷を伴う事故、軟部組織外傷、敗血症、熱傷、虚血/再かん流疾患および/または輸血、または細胞死を伴う個体において、例えば、外傷、熱傷、中毒、肝細胞壊死、横紋筋融解症、梗塞症、虚血、塞栓症、感染症、敗血症、手術および/または輸血の後に免疫系の活性化が生じる場合に、使用される。.蛍光色素およびDNAスタンダードに加えて、このキットは、DNAスタンダードの希釈用の健康個体の血漿をさらに含有することができる。
本発明はまた、蛍光色素およびDNAスタンダードを含む、個体中における免疫系の活性化または細胞死の程度を検出するためのキットにも関連する。場合によっては、このキットは、DNAスタンダードを希釈するための健康個体の血漿を含有することができる。キットの様々な構成成分を、1またはそれ以上のバイアルなど、1またはそれ以上の容器中にパッケージングすることができる。バイアルは、構成成分に加えて、保存のための保存剤またはバッファーを含んでいてもよい。
図面は以下の内容を示す:
図1:多発性外傷を伴う患者の血液における遊離のDNAの濃度の経過を示す。26人の患者のDNA濃度は、入院時から初めて、毎日追跡された。DNA濃度のレベルは、けがの重症度や転機と相関する。濃度はμg/mlで示す。グループ1:患者1〜12;グループ2:患者13〜21;グループ3:患者22〜26。ISS:傷害重症度スコア。 図2:心肺装置(HLM)と接続したブタのDNA濃度の経過の、対照ブタにおける経過との比較。サンプルA:手術前に採取;サンプルB:HLMへの接続前に採取;サンプルB2:HLMの90分後、再かん流の前に採取;サンプルC:再かん流後30分後、そして手術の終了時に採取。濃度はng/mlで示す。暗い灰色:対照ブタ、明るい灰色:HLMブタ。 図3:12人のHLM患者および2人のオフポンプ手術患者の血液中のDNA濃度の経過。手術前に採取されたサンプル(サンプルA2)、再かん流前(サンプルB)、手術後(サンプルC)、手術後1時間(サンプルD)、手術後1日(サンプルF)、および手術後2日(サンプルG)。濃度はμg/mlで示す。暗い灰色:HLM患者、明るい灰色:オフポンプ手術で処置された患者。
実施例は本発明を説明する。
実施例1
DNA濃度の測定のための試験方法は、本発明に従う。
Figure 0005016676
試験方法
調製物:
a)子牛胸腺由来のDNAスタンダードの稀釈(常に新たに調製):
スタンダードは、1 mg/mlの開始濃度を有する。スタンダードは、4μg/mlから始めて徐々に低下させる希釈で実験中に適用される。この目的のため、健康個体の滅菌フィルターEDTA-血漿中で希釈される(場合により、+30%PBS)。
b)ピコグリーン:ピコグリーン二本鎖(ds)DNAは、−18℃で保存し、そして使用直前に希釈すべきである;この目的のため、1〜5μlのピコグリーンを1 ml PBS中で希釈する。
Figure 0005016676
評価
各患者の空欄の値は、ピコグリーン値から差し引かれる。検量線(標準曲線)の場合、唯一の空欄値は、全てのその他のスタンダードピコグリーン値から差し引かれる全てのスタンダード濃度について調製される。検量線(標準曲線)を用いて、サンプルのds-DNA濃度の読み取りが可能である。
実施例2
多発性外傷と関連する手術性浸潤後の様々な疾患パターンを伴う患者の血液中のDNA濃度の経過
多発性の同時に生じた損傷であって、少なくとも一つの損傷または複数の損傷の組合せが生命を脅かすようなものが存在することを、多発性外傷と定義する(Tschemeによる定義)。
医学において、外傷は、力により生じる損傷、負傷または創傷である。複数の負傷(多発性外傷)は、同様に生命を脅かす可能性のある身体の一領域の単独の負傷(例えば、頭部を撃たれた後の単独の頭蓋脳損傷)とは識別される。
多発性外傷の最も頻繁な原因は、交通事故および高高度からの落下である。多発性外傷の患者の看護は、救急医の全てのサービスの約1%にのぼる。
本件研究は、26人の患者を用いて行い、その人たちの多発性外傷は様々な原因を有しており、そして病院で治療された。それらの人々の入院の経過を通じて、血液が患者から定期的に採取され、そしてDNA濃度が採取された血清から、実施例1に従って測定された。患者を、それらの症状の経過に従って3つの群にわけ、そしてDNA動態を決定した:
グループI:(n=12)最初は(外傷後4時間まで)、血清中のcf-DNAが<800 ng/ml;
解釈:低リスク、SIRS(全身性炎症性応答症候群)はありそうにない;
グループII:(n=9)血漿中、最初は>800 ng/mlであり、72時間以内に<800 ng/mlにまで値が減少し、そしてその後10日間は低いままである;
解釈:相当な負傷だが、転帰は良好であり、最初はIIIと区別できない;
グループIII:最初は、>800 ng/mlであり、および/またはその後>800 ng/mlという再発性の値を伴う波形の経過。
解釈:重度の負傷、SIRSや敗血症を含む良好ではない転帰のリスクが高い。
各患者のDNA濃度の経過は、図1に示す。多くの事例において、侵襲直後の高いDNA濃度から始めて、DNA濃度の比較的迅速な減少が観察された。
試験中、負傷の重症度とDNA濃度とのあいだの相関性が観察された。患者22、24、25および26は、負傷のために死亡した。3つの事例の全てにおいて、病院に運ばれてから約4〜10日後に、未知の原因による血液中DNA濃度の別の上昇が見られた;しかしながら、その後、全ての事例において値は減少した。可能性として予測されていたように、死亡の直前に、DNA濃度においてそれ以上の上昇は見られなかった。このことには、免疫応答の阻害であるいわゆる免疫麻痺に、現時点では十分に理解されていない原因が関与している可能性がある。
Figure 0005016676
実施例3
対照ブタのものと比較した、心肺装置に接続した後のブタの血液中における遊離のDNAの濃度の変化
ブタは、それらの生体構造(anatomy)およびプロポーションが大まかにはヒトのものと類似しているため、現在のところ研究用の実験動物として使用される。
対照群は、開胸術のみを行い、そして2時間のあいだ麻酔で昏睡を維持させた。血液は、手術前(A)、手術中(B)、手術終了前30分(B2)、ならびに手術後(C)に、全てのブタから採取され、それから開示された方法にしたがって遊離のDNAの濃度を測定した。表4の測定データは、図2に示される。驚くべきことに、HLMブタの血液中のDNA濃度は、実験の経過において、開始時の値に比較して3〜6倍に上昇し、一方、対照ブタの血液中の濃度は予想されたように一定である。無菌対照ブタの血液中の遊離のDNA濃度の経過は、HLMブタ経過と驚くほどに似ている。
実施例4
バイパス手術を受け心肺装置を使用するあいだ特異的なフィルターを介して血液を送った患者の血液、およびオフポンプ手術を用いてバイパス手術を受けた2人の患者の血液における、DNA濃度の変化の比較
図3において、表5にまとめられた研究の結果を、図面に示す。この研究は、遊離のDNAの濃度の増加が、HLMを使用しながらバイパス手術を受けた患者の血液中において測定されたことを示す。HLMへの接続を必要としないオフポンプ手術によりバイパス手術を受けた患者は、手術後の状態が良好であることが以前から知られていた。本研究では、このことが、それらの血液中における遊離のDNAの低い濃度と関連していることを確認する。
参照文献:
Brinkmann, V., Reichard, U., Goosmann, Ch., Fauler, B., Uhlemann, Y., Weiss, D. S., Weinrauch, Y., Zychlinsky, A. (2004). Neutrophil extracellular traps kill bacteria. Science 303; S. 1532-5.
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Figure 0005016676
Figure 0005016676

Claims (13)

  1. a)免疫系の活性化、またはb)非-腫瘍性組織または体液中の細胞死の程度、の検出方法であって、
    ここで、非-細胞結合性DNAを個体由来のサンプルであって全血から得た血漿または血清を含むものの中で測定し、DNAの測定が、蛍光色素を血漿または血清に対して添加した後の蛍光発光を測定することを含み、遊離のDNAの測定を、10μg/ml未満のDNA希釈から始める少なくとも一つの値を含む検量線(標準曲線)との比較に基づいて行い、そして希釈を、健康個体の血漿または血清を用いて行うか、または血清または血漿の光学的特性と同等の光学的特性を有する液体を用いて行う、前記検出方法。
  2. DNAの測定が定量的である、請求項1に記載の方法。
  3. 蛍光色素がピコグリーンである、請求項1または2に記載の方法。
  4. クエン酸、ヘパリン、ヒル由来の天然または合成有効成分、酵素阻害剤、そしてキレート剤からなる群から選択される少なくとも1つの抗凝固剤を、全血に対して添加してから測定を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 固体血液成分を、遠心分離によるかまたは重力または濾過に基づくその他の手段により、血清または血漿から分離する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 免疫系の活性化が、手術性浸潤、多発性外傷を伴う事故、軟部組織外傷、敗血症、熱傷、梗塞症、塞栓症、感染症、虚血/再かん流疾患、移植、中毒、子癇、医薬の副作用および/または輸血により引き起こされる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 細胞死が、熱傷、中毒、肝細胞壊死、横紋筋融解症、手術性浸潤、多発性外傷を伴う事故、軟部組織外傷、虚血/再かん流疾患、梗塞症、虚血、塞栓症、感染症、敗血症、移植、中毒、子癇、医薬の副作用および/または輸血により引き起こされる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 個体がほ乳動物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 哺乳動物がヒトである、請求項8に記載の方法。
  10. タンパク質をDNAに対して結合することができる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. タンパク質がプロテアーゼまたはヒストンである、請求項10に記載の方法。
  12. DNAに加えて、請求項11に記載のタンパク質を測定する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 免疫系の活性化と一致して、DNAが顆粒球に由来する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
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