JP5016214B2 - 電気デバイス - Google Patents
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Description
液晶表示装置の防湿構造としては、例えば、特許文献2において、液晶表示装置のシール部に吸湿性ポリマー粒子を含ませた構造が提案されている。
そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するために、水を消費する機能かつ蓄電機能を有する、防水性に優れた保護層を備えた電気デバイスを提供することを目的とする。
基板と、前記基板上に形成された電気化学素子と、前記基板上の電気化学素子の少なくとも一部を覆う保護層と、を具備する電気デバイスであって、
前記保護層は、
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に形成された、弁金属を含む陽極層と、
前記陽極層上に形成された第1の酸化皮膜層と、
前記第1の酸化皮膜層上に形成された固体電解質層と、
前記固体電解質層上に形成された第2の酸化皮膜層と、
前記第2の酸化皮膜層上に形成された陰極層と、
前記陰極層上に形成された第2の絶縁層と、
前記陽極層と電気的に接続された第1の電圧印加端子と、
前記陰極層と電気的に接続された第2の電圧印加端子とを備え、
前記陰極層が弁金属を含むことを特徴とする。
上記構成により、保護層が、その内部に浸入した水分を消費する層として機能するため、電気化学素子が水の存在により劣化するのを抑制することができる。
[参考の形態1]
本参考の形態では、陽極層が弁作用を有する金属(以下、弁金属という。)であるアルミニウムからなり、電気化学素子が固体リチウム二次電池である場合について説明する。
図1において、電気デバイスは、シリコン基板1、シリコン基板1上に形成された電気化学素子17、および電気化学素子17を覆う保護層18からなる。シリコン基板1上には、熱酸化によりシリコン酸化膜1a(例えば、厚さ1μm)が形成されており、シリコン酸化膜1aを介して、基板1上に電気化学素子17が形成されている。
この正極集電体2の作製方法としては、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、イオンビーム蒸着法、または電子ビーム蒸着法などが用いられる。ただし、基板1にアルミニウム、銅、ステンレスなどの電子伝導性を有する材料を用いた場合は、正極集電体2は配置されなくてもよい。
このように、水消費機構部19を備えることにより、保護層18は優れた防水性を有するため、電気デバイスの信頼性が向上するとともに、電気デバイスの高容量化が可能となる。
水の消費機能および蓄電機能が、十分に発揮されるという観点から、陽極層8の厚さは、0.2〜1μmであるのが好ましい。
また、水の消費機能が発揮されるという観点から、陽極層8の厚さは0.5〜3μmであるのが好ましい。
本参考の形態では、陽極層8にアルミニウムを用いているが、アルミニウム以外に、タンタル、ニオブ、またはジルコニウムなどの弁金属を用いてもよい。また、陽極層8においては、上記の弁金属を単体で用いてもよく、複数の弁金属を組み合わせて用いてもよい。また、複数の弁金属を含む合金を用いてもよい。陽極層8を、弁金属を含む複数の層で構成してもよい。
酸化皮膜層9の厚さは、必要とされる容量や耐電圧により決められる。弁金属がアルミニウムの場合は、電解液を用いるときの耐電圧1Vあたりに必要な酸化皮膜層の厚さは14Åであり、固体電解質を用いるときは電解液を用いた場合の1.5倍以上の厚さを必要とする。これは、固体電解質に含まれる水が電解液に比べ少ないことと、電気抵抗が低いことに起因する。酸化皮膜層9の厚さの上限は特にはないが、酸化皮膜層9を厚くすると酸化皮膜層9の絶縁抵抗が増し水の消費が減少するので、固体電解質を用いた場合の酸化皮膜層9の厚さは電解液を用いた場合の10倍以下であるのが好ましい。
また、陽極層8の弁金属箔にタンタルやニオブを用いる場合、電解液を用いるときの耐電圧1Vあたりの酸化皮膜層9の必要な厚さは、タンタルの場合で23Å、ニオブの場合で25Å程度である。
電子伝導性固体電解質層10を形成する方法としては、酸化皮膜層9上に、可溶性高分子や化学酸化重合などに用いられる溶液をスピンコーターやインクジェット法などで塗工した後、乾燥する方法や、酸化皮膜層9上に、TCNQ錯体を蒸着する方法などがある。電子伝導性固体電解質層に用いられる材料としては、上記以外に、薄く、ピンホールが少なく、フィルム状に形成しやすく、熱、応力などで剥離しにくいものが好ましい。
電子伝導性固体電解質層10が薄すぎると酸化皮膜層9の被覆が不十分となり陽極層8と陰極層11間で短絡しやすくなり、逆に厚すぎると電気デバイスの体積エネルギー密度の低下につながる、という理由により、電子伝導性固体電解質層10の厚さは、0.5〜5μmであるのが好ましい。
集電性を保つことができ、シート抵抗が小さいという点で、陰極層11の厚さは、0.2〜0.8μmであるのが好ましい。
本参考の形態では、陰極層11にアルミニウムを用いているが、アルミニウム以外に、電子伝導性固体電解質10内でマイグレーションを生じ、陽極層8と陰極層11の間で短絡することなく電子伝導性が高い材料、例えばニッケル、グラファイトなどの材料を用いてもよい。
上記の参考の形態では、電子伝導性固体電解質層10上に陰極層11が形成されている。これに対して実施の形態1では、電子伝導固体電解質層10と陰極層11との間に第2の酸化皮膜層を形成している。その場合、陰極層11が陽極層8の場合と同様に、上記の弁金属を含むと、水消費機構部19の静電容量は、第1の酸化皮膜層(酸化皮膜層9)と第2の酸化皮膜層の合成容量となるので第2の酸化皮膜層の厚さが増すにつれて減少する。上記の参考の形態及び実施の形態1のそれ以外の構成は基本的には同じである。第1の酸化皮膜層と第2の酸化皮膜層において、材料の誘電率が同じでかつ厚さが等しい場合、第2の酸化皮膜層を形成しない場合の2分の1の静電容量となり、陽極層8と陰極層11との短絡防止に効果的である。また、第1の酸化皮膜層9と第2の酸化皮膜層が誘電率の異なる材料で構成されてもよい。
電子伝導性固体電解質層10と陰極層11との間に配される第2の酸化皮膜層は、例えば、第1の酸化皮膜層9と同様にRFスパッタ、蒸着などの方法により得られる。
(a)2Al → 2Al3+ + 6e-
(b)2Al3+ + 6OH- → Al2O3 + 3H2O
(c)2Al + 6OH- → Al2O3 + 3H2O + 6e-
(d)6H2O + 6e- → 6OH- + 3H2↑
(e)2Al+ 3H2O → Al2O3 + 3H2↑
それに対し、真の陰極である電子伝導性固体電解質層10の表面では、式(d)に示す陰極反応が起こる。全体の反応は式(e)で表される。
本参考の形態では、陽極層がタンタルからなり、電気化学素子が液晶素子である場合について説明する。
ここで、図2は、本参考の形態の電気デバイスの正面図である。また、図3は、図2のA―A’方向の概略縦断面図である。
電気化学素子37は、液晶層21、ならびに液晶層21を挟む画素電極23および電極22からなる。第1の基板20a上には、画素を形成する画素電極23以外に、信号線、走査線等の信号配線等が配される(図示せず)。第2の基板20b上には、画素電極23と同じ材料からなる電極22が配される。
液晶層21が電極22および画素電極23に挟持される構造からなる電気化学素子37であれば、本発明は適用可能であり、液晶層21の材質によらず有効である。特に、GH型液晶(ゲスト−ホスト型液晶)に対して有効である。液晶層21の材料としては、GH型液晶以外に、例えば、液晶表示素子の表示方式としては、TN(Twisted Nematic)型液晶、STN(Super Twisted Nematic)型液晶、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶、または強誘電性液晶が挙げられる。
陽極層28は、例えば、基板20a上にタンタルをRF(高周波)スパッタすることにより得られる。水消費機構部39の陽極層28以外の作製方法は、参考の形態1と同じ方法で得られる。
(f)2Ta → 2Ta5+ + 10e-
(g)2Ta5+ + 10OH- → Ta2O3 + 5H2O
(h)2Ta + 10OH- → Ta2O5 + 5H2O + 10e-
(i)10H2O + 10e- → 10OH- + 5H2↑
(j)2Ta+ 5H2O → Ta2O5 + 5H2↑
本実施の形態では、電気化学素子に表示素子として液晶素子を用いたが、これ以外に、有機EL等の表示素子を用いてもよい。
《参考例1》
本参考例では、電気化学素子に、特に防水性が要求される固体リチウム二次電池を使用して、実施の形態1と同じ電気デバイスを以下のように作製した。
以下のような方法により、シリコン基板1およびシリコン酸化膜1a上に、固体リチウム二次電池からなる電気化学素子17を作製した。
熱酸化により厚さ150μmのシリコン基板1上に、厚さ1μmのシリコン酸化膜1aを形成した。真空蒸着法によりシリコン酸化膜1a上にアルミニウム膜からなる正極集電体2(厚さ:0.5μm、縦:10mm、横:15mm)を形成した。スパッタにより正極集電体2上にLiCoO2からなる正極活物質膜3(厚さ:5μm、縦:8mm、横:8mm)を形成した。シリコン酸化膜1aおよび正極集電体2の一部とともに、正極活物質膜3上に窒化リン酸リチウムからなるイオン導電性固体電解質膜4(厚さ:2μm、縦:14mm、横:14mm)を形成した。
上記で得られた電気化学素子17における正極端子13および負極端子14以外の部分を覆うように、シリコーン樹脂を電気化学素子上に塗工した後、乾燥硬化させてシリコーン樹脂層(厚さ:2μm)を形成した。さらに、その表面に厚さ1μmの酸化珪素層を、RFスパッタにより形成し、シリコーン樹脂層および酸化珪素層からなる絶縁層7(縦:16mm、横:16mm)を形成した。
このようにして、陽極層8、酸化皮膜層9、陰極層11、電子伝導性固体電解質層10、陽極端子15、および陰極端子16からなる水消費機構部19を形成した。
このようにして、基板1上の電気化学素子17を、絶縁層7、水消費機構部19、および外部絶縁層12からなる保護層18で覆った。
RFスパッタにより、電子伝導性固体電解質層10と陰極層11との間に、所定の大きさの酸化アルミニウムからなる第2の酸化皮膜層(厚さ:0.015μm)を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法により電気デバイスを作製した。
図4に示す水消費機構部を有しない保護層で覆われた電気化学素子からなる電気デバイスを以下のように作製した。
蒸着により、絶縁層7の表面にアルミニウム層24(厚さ:0.5μm)を形成し、RFスパッタにより、アルミニウム層24の表面に厚さ2μmの酸化珪素からなる絶縁層27を形成した。そして、絶縁層27の表面に厚さ0.5μmのアルミニウム層24を形成し、RFスパッタによりアルミニウム層上に厚さ2μmの酸化珪素からなる絶縁層27を形成した。そして、正極端子13および負極端子14の端部以外の部分を覆うように、参考例1と同じ外部絶縁層12を形成した。
このようにして、シリコン基板1上の電気化学素子17を覆う、絶縁層7および27、アルミニウム層24、および外部絶縁層12からなる保護層を形成した。
上記で作製した参考例1、実施例1、および比較例1の電気デバイスについて以下のような保存試験を実施した。
各電気デバイスを、温度60℃および湿度90%の環境下で1日間保存した。保存後、次の1日において各電気デバイスを取り出し、0.1mAの電流値で定電流充電(上限電圧:4.2V)した後、放電(電流値:0.1mA、終止電圧:3.0V)して、電流容量を測定した。このような工程を10回繰り返した。
本参考例では、電気デバイスとして参考の形態2と同じ液晶素子を以下のように作製した。
透明ガラスからなる基板(コーニング社製、♯7059、厚さ:500μm)20a上に、窒化珪素の保護層を有するTFT(薄膜トランジスタ)のアレイと、マトリックス配置されたITO薄膜とからなる画素電極23、ならびに信号線および走査線などの信号配線を形成した。
このようにして、基板20a上に、陽極層28、酸化皮膜層29、電子伝導性固体電解質層30、陰極層31、陽極端子35、および陰極端子36からなる水消費機構部39を形成した。
500時間放置後の電気デバイスについて、測定温度80℃および保持時間500msの条件で液晶の電圧保持率を測定したところ、98%と極めて高い電圧保持率が得られ、優れた信頼性を有することがわかった。なお、液晶の電圧保持率とは、初期に印加した電圧を100とし、その後印加を止めて所定時間放置後の電圧を測定し、その初期の電圧に対する放置後の電圧の比を百分率で表したものである。
保護層の代わりに、シール幅が1.5mmのシール剤(三井化学(株)製、XN−256A)からなる層を形成した以外は、参考例2と同様の方法により電気デバイスを作製し、耐候性試験を実施した。その結果、電圧保持率は68%であった。
1a シリコン酸化膜
2 正極集電体
3 正極活物質膜
4 イオン伝導性固体電解質膜
5 負極活物質膜
6 負極集電体
7、27 絶縁層
8、28 陽極層
9、29 酸化皮膜層
10、30 電子伝導性固体電解質層
11、31 陰極層
12、32 外部絶縁層
13 正極端子
14 負極端子
15、35 陽極端子
16、36 陰極端子
17、37 電気化学素子
18、38 保護層
19、39 水消費機構部
20a、20b 基板
21 液晶層
22 電極
23 画素電極
24 アルミニウム層
Claims (4)
- 基板と、前記基板上に形成された電気化学素子と、前記基板上の電気化学素子の少なくとも一部を覆う保護層と、を具備する電気デバイスであって、
前記保護層は、
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に形成された、弁金属を含む陽極層と、
前記陽極層上に形成された第1の酸化皮膜層と、
前記第1の酸化皮膜層上に形成された固体電解質層と、
前記固体電解質層上に形成された第2の酸化皮膜層と、
前記第2の酸化皮膜層上に形成された陰極層と、
前記陰極層上に形成された第2の絶縁層と、
前記陽極層と電気的に接続された第1の電圧印加端子と、
前記陰極層と電気的に接続された第2の電圧印加端子とを備え、
前記陰極層が弁金属を含むことを特徴とする電気デバイス。 - 前記陽極層の弁金属および前記陰極層の弁金属のうちの少なくとも一方は、アルミニウム、ニオブおよびタンタルからなる群より選択された少なくとも1種の金属である請求項1記載の電気デバイス。
- 前記電気化学素子が、電池または表示素子である請求項1または2に記載の電気デバイス。
- 前記電気化学素子が正極端子および負極端子を備え、
前記正極端子と前記第1の電圧印加端子とが電気的に接続され、前記負極端子と前記第2の電圧印加端子とが電気的に接続された請求項1記載の電気デバイス。
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