本発明は、多数の滑止め孔が形成された床板材を備えた車両運搬車において、前記滑止め孔を固縛孔として利用することにより、被運搬車両の幅方向の配置位置が多少変動しても、締付ベルトの使用により前記床板材に対してタイヤをしっかりと固縛できる装置の提供を課題としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、前後方向及び幅方向の双方に沿って所定間隔をおいて多数の固縛孔を備え、被運搬車両のタイヤを載置する床板材が、荷台の幅方向の両端部に当該荷台の前後方向に沿って固定された車両運搬車において、締付ベルトを介して被運搬車両のタイヤを前記床板材に固縛するための固縛装置であって、複数の係合体を介して前記床板材の幅方向に沿った複数の固縛孔に対して解除可能に係合され、固定具本体に対する前記締付ベルトの一端部の荷台の幅方向に沿った連結位置が変更可能になっていて、前記床板材に載せられたタイヤに近接した状態で当該タイヤの前方又は後方に配置されるベルト端部固定具と、複数の係合体を介して前記床板材の幅方向に沿った複数の固縛孔に対して解除可能に係合され、支持具本体に対する前記締付ベルトの中間部を巻き掛けるベルト中間部巻掛部材の荷台の幅方向に沿った連結位置が変更可能になっていて、前記床板材に載せられたタイヤに近接した状態で、当該タイヤを挟んで前記ベルト端部固定具と反対の側に配置されるベルト中間部支持具と、前記固縛孔に対して解除可能に係合される係合専用具を介して荷締機本体又は締付ベルトの一端部が床板材に連結されて、前記締付ベルトに張力を付与するために、当該係合専用具と前記ベルト中間部支持具との間に配置されるベルト締付機とを備え、前記ベルト端部固定具の固定具本体に対する締付ベルトの一端部の連結位置、及び前記ベルト中間部支持具の支持具本体に対するベルト中間部巻掛部材の連結位置の変更により、床板材の幅方向に対するタイヤの載置位置とは無関係に、常にタイヤの幅方向の中央部において締付ベルトを巻付け可能にしたことを特徴としている。
車両運搬車に載せられた被運搬車両は、左右の各タイヤがそれぞれ荷台に設けられた床板材に載った状態となっている。被運搬車両の全タイヤ又は対角線方向に配置された前後各1個ずつの2本のタイヤの前方及び後方に、ベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具をそれぞれ配置する。即ち、ベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具をそれぞれ複数の係合体によって、床板材の固縛孔における反タイヤ側の周縁部を係合させる。ベルト締付機から引き出された締付ベルトの一端部は、ベルト端部固定具の固定具本体に連結されると共に、当該締付ベルトの中間部は、ベルト中間部支持具の支持具本体に連結されたベルト中間部巻掛部材に巻き掛けられる。更に、ベルト締付機の反巻取り側は、床板材の固縛孔に係合された係合専用具、及び当該係合専用具とベルト締付機とを連結する連結部材を介して当該床板材に連結される。
ベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具において、締付ベルトの一端部、及びベルト中間部巻掛部材の床板材の幅方向に沿った位置を最適位置に選択して、タイヤに巻き付けられる締付ベルトを当該タイヤの幅方向の中央部に配置させる。この状態で、ベルト締付機により締付ベルトに張力を付与すると、床板材に対してタイヤが固定される。タイヤを締め付けている締付ベルトは、平面視においてタイヤの幅方向の中央部に配置されるため、当該締付ベルトに作用する張力は、床板材に対してタイヤを垂直下方に押し付ける押付け力として作用し、しかもベルト中間部支持具にシーブ取付体を介して取付けられたシーブによって、タイヤに対する締付ベルトの巻付け角度が大きくなるように確保されているので、床板材に対してタイヤが強固に固定される。
車両運搬車の荷台の幅方向の両端部に前後方向に沿って固定された各床板材の幅方向に対する被運搬車両のタイヤの位置は、多少ずれることがある。この場合には、ベルト端部固定具の固定具本体に対する締付ベルトの一端部の床板材の幅方向に沿った連結位置、及びベルト中間部支持具の支持具本体に対するベルト中間部巻掛部材の床板材の幅方向に沿った位置を、それぞれ最適位置に選択することにより、平面視において締付ベルトを常にタイヤの幅方向の中央部に配置できるので、荷台に対する被運搬車両の幅方向の配置位置が多少変動しても、床板材に対してタイヤをしっかりと固縛できる。なお、ベルト締付機は、平面視において被運搬車両の外側に配置しないと、車体と干渉して操作できないので、ベルト中間部支持具の支持具本体に連結されたベルト中間部巻掛部材の部分において当該ベルト中間部支持具とベルト締付機との間の締付ベルトの配置位置が被運搬車両の外側となるように、荷台の前後方向に対して僅かに傾斜配置させることにより、ベルト締付機を操作可能な位置に配置できる。
また、床板材に対する被運搬車両の幅方向の配置位置が大きく変更されて、ベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具の配置位置では対応不能となった場合には、複数の係合体を介して床板材の複数の固縛孔に係合されているベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具の係合を解除して、タイヤの配置位置に対応する別の複数の固縛孔を選択して、当該複数の固縛孔に対してベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具を係合し直すことにより、タイヤの幅方向の中央部に締付ベルトを巻き付けることが可能となる。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ベルト端部固定具は、複数の係合体を介して床板材の幅方向に沿った複数の固縛孔に対して解除可能に係合される第1レール体と、前記締付ベルトの一端部が連結されて、前記第1レール体に案内されてスライドする第1スライド体とから成り、前記第1レール体の側板部の内側面には、前記第1スライド体と係合してスライドを阻止する多数の係合突起体が所定ピッチで形成され、前記ベルト中間部支持具は、複数の係合体を介して床板材の幅方向に沿った複数の固縛孔に対して解除可能に係合される第2レール体と、前記ベルト中間部巻掛部材が係合されて、前記第2レール体に案内されてスライドする第2スライド体とから成り、前記第2レール体の側板部の内側面には、前記第2スライド体と係合してスライドを阻止する多数の係合突起体が所定ピッチで形成されていることを特徴としている。
請求項2の発明によれば、ベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具のいずれもが、複数の係合体を介して床板材に解除可能に係合されるレール体と、当該レール体に案内されてスライドするスライド体で構成されていて、スライド体は、レール体の側板部の内側面に形成された多数の係合突起体に係合されてスライドを阻止される構成であるので、レール体に案内されてスライド体を床板材の幅方向にスライドさせて、タイヤの配置位置との関係において、締付ベルトがタイヤの幅方向の中央部に巻き付けられるような最適位置となるように、レール体の係合突起体に対してスライド体を係合固定させて、スライド体がレール体の長手方向にスライドしないようにするのみで、床板材の幅方向に対するタイヤの配置位置の変更に対処できる。
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記ベルト端部固定具の第1スライド体が第1レール体に対して係合固定された状態、及び前記ベルト中間部支持具の第2スライド体が第2レール体に対して係合固定された状態において、第1及び第2の各レール体の係合突起体が突設された側板部と対向する側板部との間に、前記第1及び第2の各スライド体を挿入可能にするための所定の隙間が形成され、当該隙間には、前記第1及び第2の各スライド体に回動可能に連結された抜出防止板が挿入される構成であることを特徴としている。
請求項3の発明によれば、第1及び第2の各レール体に対してそれぞれ第1及び第2の各スライド体が係合した状態において、第1及び第2の各スライド体は、ストッパー体によってスライド不能になるのに加えて、抜出防止板により後退もしなくなるので、第1及び第2の各レール体に対してそれぞれ第1及び第2の各スライド体がスライド方向(荷台の幅方向)及び荷台の前後方向の2方向に対して移動するのが阻止される。このため、締付ベルトによる荷台に対するタイヤの固縛が一層しっかりして、緩まなくなる。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記ベルト端部固定具の第1レール体、及び前記ベルト中間部支持具の第2レール体におけるタイヤと対向する各側面には、固縛孔に挿入された係合体と、当該固縛孔におけるタイヤ側の端縁との間に形成される隙間を閉塞するための隙間閉塞板が回動可能にそれぞれ取付けられていることを特徴としている。
請求項4の発明によれば、床板材の固縛孔に対して第1及び第2の各レール体の裏面側に固着された係合体を係合・解除可能にするために、係合体における荷台の前後方向に沿った寸法を小さくせざるを得ない場合があり、床板材の固縛孔に第1及び第2の各レール体を係合体を介して係合させた状態において、係合体のタイヤ側の端面と固縛孔のタイヤ側の内端面との間に隙間が形成されることがある。しかし、請求項4の発明によれば、第1及び第2の各レール体におけるタイヤと対向する側面に回動可能に取付けられた隙間閉塞体により前記隙間が閉塞されて、締付ベルトに張力が作用しない状態においても、床板材の固縛孔に対して第1及び第2の各レール体の係合体が床板材の前後方向に沿ってがたつかなくなる。また、ベルト締付機により締付ベルトに徐々に張力を付与して、床板材にタイヤを固縛する場合に、第1及び第2の各レール体が荷台の前後方向に殆ど移動しないので、床板材に対するタイヤの固縛作業を安定して行えると共に、固縛状態自体も安定化する。更に、車両運搬車が被運搬車両を運搬することなく空荷で走行する場合においても、第1及び第2の各レール体が床板材に対してがたつかなくなる。
また、請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明において、前記ベルト端部固定具の第1レール体、及び前記ベルト中間部支持具の第2レール体の各裏面側には、床板材の固縛孔に解除可能に係合される複数の係合体がそれぞれ一体に固着され、当該各係合体には、固縛孔における反タイヤ側の周縁部を入り込ませて係合可能な係合溝が形成され、前記固縛孔の反タイヤ側の周縁部と係合体の係合溝を仮係合させた状態で、当該仮係合部を支点にして断面視においてレール体を回動させることにより、固縛孔に対して係合体の係合、及びその解除が可能であって、締付ベルトに作用する斜上方の張力により、固縛孔におけるタイヤ側の内端面に前記係合体が圧接した状態で、固縛孔の反タイヤ側の周縁部下面に対して前記係合溝の下面が圧接して前記係合が維持される構成であることを特徴としている。
請求項5の発明によれば、ベルト端部固定具、及びベルト中間部支持具の双方において、固縛孔の反タイヤ側の周縁部と第1及び第2の各レール体に設けられた係合体の係合溝を仮係合させた状態で、当該仮係合部を支点にして断面視においてレール体を回動させることにより、固縛孔に対して係合体の係合、及びその解除を行える。そして、タイヤ側に傾斜した斜上方への締付ベルトの張力により、固縛孔におけるタイヤ側の内端面に前記係合体が圧接した状態で、固縛孔の反タイヤ側の周縁部下面に対して前記係合溝の下面が圧接することにより前記係合が維持される。このため、被運搬車両の搬送中において、締付ベルトの張力が作用している限り、第1及び第2の各レール体が床板材の固縛孔から外れることはなく、ひいては床板材に対するタイヤの固縛が緩んだり、解除されたりすることはない。
また、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、前記ベルト締付機を床板材に連結するための係合専用具は、当該ベルト締付機の反巻取り側に連結された連結部材の一端部を連結するための係合具本体と、当該係合具本体の裏面側に一体に設けられて、固縛孔に対して係合される係合体とで構成され、当該係合体は、固縛孔における反タイヤ側の周縁部に係合される係合溝が形成されていると共に、固縛孔の反タイヤ側の周縁部と前記係合溝とが仮係合した状態で、当該仮係合部を支点にして断面視において前記係合具本体を回動させることにより、固縛孔に対して係合体の係合、及びその解除が可能であることを特徴としている。
ベルト中間部支持具にシーブ取付体を介して取付けされたシーブと締付機との間に配置されるベルトは、床板材に対してほぼ平行となっているため、係合体を介して床板材の固縛孔に係合された係合専用具には、床板材とほぼ平行な張力が作用するのみである。このため、請求項6の発明のように、係合具本体の裏面側に一体に設けられた係合具における反係合溝の側の部分が、部分的に固縛孔におけるタイヤ側の内端面に圧接しているのみであっても、固縛孔と係合体の係合溝との係合が解除されない。
本発明によれば、車両運搬車の荷台の幅方向の両端部に前後方向に沿って固定された各床板材の幅方向に対する被運搬車両の幅方向の位置がずれた場合には、ベルト端部固定具に対する締付ベルトの一端部に連結したフックの床板材の幅方向に沿った位置、及びベルト中間部支持具に対するシーブを取付けたシーブ取付体の床板材の幅方向に沿った位置を、それぞれ最適位置に選択することにより、平面視において締付ベルトを常にタイヤの幅方向の中央部に配置できるので、荷台に対する被運搬車両の幅方向の配置位置が多少変動しても、常に床板材に対してタイヤをしっかりと固縛できる。
最初に、実施例1のタイヤ固縛装置について説明する。図1は、本発明に係るタイヤ固縛装置により荷台の左右両端部の床板材Pに載せられたタイヤTが固縛された状態の斜視図であり、図2は、同じく平面図であり、図3は、同じく側面図であり、図4は、床板材Pの部分斜視図である。
車両運搬車の荷台の幅方向の両端部には、多数の固縛孔Hが形成された床板材Pが当該荷台の前後方向に沿って配置されて、被運搬車両の左右の各タイヤTは、荷台の左右両端部に配置された各床板材Pに載せられて、本発明に係るタイヤ固縛装置により締付ベルトVを用いて床板材Pに対して固縛される。床板材Pは、図1ないし図4に示されるように、板厚3mm程度のアルミニウム系の金属であって、車両運搬車の荷台に固定配置した状態において、幅方向及び前後方向に沿った多数の固縛孔Hが形成されている。固縛孔Hは、幅方向に沿って小判形状であって、固縛孔Hの間の板体部91における当該固縛孔Hに臨む全周部分は、僅かに上面側に向けて膨出されていて、固縛孔Hの周縁部にはのこ刃状をした凹凸部92が形成されている(図4参照)。固縛孔Hの長さと幅は、ほぼ(70×30mm)である。床板材Pに固縛孔Hを形成する本来的な目的は、タイヤTに対する滑り抵抗の付与と、当該床板材P自体の軽量化であるが、本発明においては、既に車両運搬車に取付けられている床板材Pに設けられた孔を、締付ベルトを介してタイヤを固縛する際の固縛孔として使用するものである。なお、床板材Pは、一定幅の一定長さの床板材の単板を多数成形して、車両運搬車の荷台に前後方向に連続するように、溶接等により荷台のフレームに固定される。
実施例1のタイヤ固縛装置は、床板材Pに載せられたタイヤTの位置に対応して当該床板材P(又は車両運搬車の荷台)の幅方向に沿った締付ベルトVの一端部の固定位置を変更可能にして、当該締付ベルトVを床板材Pに固定するために床板材Pに載せられたタイヤTに近接させてその前方又は後方に配置されるベルト端部固定具A1 と、同様に床板材Pに載せられたタイヤTの位置に対応して当該床板材Pの幅方向に沿ったシーブGの配置位置を変更可能にして、当該シーブGを前記タイヤTにおけるベルト端部固定具A1 の配置位置と反対の側に当該タイヤTに近接した状態で配置されるベルト中間部支持具B1 と、係合専用具Eを介して床板材Pに連結されて、一端部がフックを介して前記ベルト端部固定具A1 に連結されると共に、中間部が前記ベルト中間部支持具B1 にシーブ取付体Mを介して取付けられたシーブGに掛装されることにより、タイヤTに巻き掛けられた締付ベルトVに張力を付与するためのベルト締付機Dとで構成される。
次に、図5〜図13を参照してベルト端部固定具A1 について説明する。図5は、ベルト端部固定具A1 により締付ベルトVの一端部を床板材Pに固定(連結)した状態の斜視図であり、図6は、ベルト端部固定具A1 を構成する第1レール体R1 の分解斜視図であり、図7(a),(b)は、それぞれベルト端部固定具A1 を構成する第1スライド体S1 を異なる方向から見た斜視図であり、図8は、第1レール体R1 の平面断面図であり、図9(a),(b),(c)は、床板材Pの固縛孔Hに第1レール体R1 の係合体6を係合させる順序を示す断面図であり、図10は、床板材Pの固縛孔Hに係合体6を介して第1レール体R1 を係合させた後に、固縛孔Hとの隙間に隙間閉塞板8を挿入する状態を示す図であり、図11は、図9(c)のX−X線拡大断面図であり、図12(a),(b),(c)は、第1レール体R1 の挿入空間10に第1スライド体S1 の挿入係合板部21を挿入する順序を示す断面図であり、図13は、第1レール体R1 の長手方向に沿って第1スライド体S1 の係合固定位置が変更される状態を示す図である。
図5〜図9において、ベルト端部固定具A1 は、左右一対の係合体6を介して床板材Pの2つの固縛孔Hに解除可能に係合される第1レール体R1 と、当該第1レール体R1 にスライド可能に挿入されて、長手方向に沿った異なる位置で係合固定される第1スライド体S1 とで構成される。第1レール体R1 は、四角筒体の天板部の幅方向に沿ってほぼ半分を欠落させて挿入開口1が形成され、天板部の残った部分が第1スライド体S1 の挿入係合板部21と係合する係合板部2となっていて、使用状態においてタイヤTと対向する側に配置される第1側板部3の内側面に一定ピッチQをおいて多数の係合突起体4が突設されている。第1レール体R1 の内部空間は、第1スライド体S1 の挿入係合板部21が挿入される挿入空間10となっている。第1レール体R1 の裏面から前記第1側板部3の側面に亘って断面L字形の当金5が当てがわれて、溶接により一体に固着されている。当金5の裏面には、床板材Pに形成された多数の固縛孔Hの幅方向のピッチJの2倍の中心間距離(2J)をおいて左右一対の係合体6が溶接により固着されている。係合体6は、床板材Pの固縛孔Hに全体が挿入される大きさを有していて、第1レール体R1 を床板材Pの2つの固縛孔Hに解除可能に係合させるための部材であって、底板部6aの両端部に側板部6bが一体に起立されて、左右の各側板部6bを第1レール体R1 の幅方向にほぼ二分した場合に、第1レール体R1 の係合突起体4と反対側の部分は所定高さ分だけ欠落されて、当金5の水平板部5aとで係合溝7が形成されている。また、後述のように、左右一対の係合体6を介して第1レール体R1 を床板材Pの固縛孔Hに解除可能に係合させた場合に、当該係合体6を構成する一対の側板部6bの係合溝7と反対側の端面と、固縛孔HにおけるタイヤTの側の端面との間に形成される隙間を解消するための隙間閉塞板8が、当金5の起立板部5bに回動可能に連結されている。隙間閉塞板8は、固縛孔Hに挿入される本体部8aと、当金5の起立板部5bに連結支点ボルト9を介して回動可能に連結される連結部8bと、固縛孔Hに本体部8aが挿入された状態において当該本体部8aを固縛孔Hから脱出させる際に使用される操作部8cとの3の部分から成って、連結部8bと操作部8cとの間に本体部8aが配置され、しかも連結部8bと操作部8cとは、本体部8aの上端部に形成されている。連結支点ボルト9の頭部9aは、当金5の起立板部5bの内側面に形成された円錐状のざくり孔11に全体が挿入される。また、図10に示されるように、隙間閉塞板8は、隙間閉塞時において閉塞姿勢を保持するために、操作部8cの下面に凹部8dが形成されて、隙間閉塞時において、前記凹部8dは、当金5の起立板部5bに設けられたストッパーピン12に引っ掛けられるようになっていると共に、非使用時において連結支点ボルト9を中心に上方に向けて回動させて、固縛孔Hから脱出させた隙間閉塞板8を支持するためのストッパーピン13が当金5の起立板部5bに形成されている。なお、図6及び図8において、14は、連結支点ボルト9に螺合されるナットを示し、15は、隙間閉塞板8の連結部8bに設けられたボルト挿通孔を示す。
また、ベルト端部固定具A1 を構成する第1スライド体S1 は、図5、図7及び図8に示されるように、第1レール体R1 の挿入空間10に挿入されて、第1側板部3の内側面に設けられた多数の係合突起体4のいずれかに係合される挿入係合板部21と、当該挿入係合部21の幅方向の一端部から起立した起立板部22とから成る。挿入係合板部21の長手方向に沿った端面には、第1レール体R1 の第1側板部3の内側面に形成された係合突起体4と係合可能な複数個(実施例では3個)の係合凹部23が、前記係合突起体4の形成ピッチQの半分のピッチ(Q/2)で形成されている。第1スライド体S1 の挿入係合板部21の外側には、第1レール体R1 の挿入空間10に第1スライド体S1 の挿入係合板部21を挿入して、第1レール体R1 の係合突起体4と第1スライド体S1 の係合凹部23とを係合させた状態において、第1スライド体S1 の起立板部22と第1レール体R1 の第2側板部16との間に形成される隙間に挿入されて、第1スライド体S1 が第1レール体R1 から抜け出るのを防止する抜出防止板24が回動可能に連結されている。即ち、起立板部22の下半部であって、長手方向の一端部には、抜出防止板24が連結支点ピン25を介して回動可能に連結されており、起立板部22の下半部であって、しかも長手方向の両端部には、抜出防止板24の使用時(水平配置時)及び非使用時(起立時)において過回動を防止するためのストッパーピンがそれぞれ設けられている。また、抜出防止板24の使用時(水平配置時)において、運搬時の振動等により抜出防止板24が前記隙間から脱出するのを防止すべく、起立板部22におけるストッパーピン26の内側には球面状の係合突起体28が設けられていると共に、抜出防止板24の内側面には前記係合突起体28と係合可能な係合孔29が形成されている。また、起立板部22の上半部であって、しかも長手方向の中央部には、締付ベルトVの一端部に連結されたフックF1 の引掛け部F1aを引っ掛けるための引掛け孔31が形成されている。また、第1スライド体S1 の起立板部22の引掛け孔31にはフックF1 の引掛け部F1aが引っ掛けられた状態で、タイヤTに巻き付けられた締付ベルトVに作用する張力は、図2に示されるように、第1スライド体S1 に対してタイヤT側に僅かに傾斜した斜上方に向いた方向に作用するのに対応させて、第1スライド体S1 の起立板部22の上半部は、僅かに傾斜させてある。
上記したベルト端部固定具A1 は、車両運搬車の荷台の幅方向の両端部の床板材Pに載せられる被運搬車両のタイヤTに近接した状態で、当該タイヤTの前方又は後方の床板材Pの2つの固縛孔Hに解除可能に係合される。まず、床板材Pの2つの固縛孔Hに第1レール体R1 を解除可能に係合させるには、隙間閉塞板8の側がタイヤTと対向するようにして第1レール体R1 を床板材Pの幅方向Kに配置して、タイヤTの載置予定位置を基準にして、その前方又は後方における床板材Pの幅方向Kに沿って1つおいた2つの固縛孔Hを選択して、左右の各係合体6の係合溝7の側が斜下方を向くように第1レール体R1 を幅方向に傾斜させて、各係合体6の係合溝7の最奥部まで、床板材Pの板体部91における固縛孔Hの反タイヤT側の周縁部に臨む部分を挿入して仮係合させた状態にして〔図9(a)〕、当該仮係合部を中心に横断面視において第1レール体R1 を回動させて、係合体6の全体を固縛孔H内に挿入させる〔図9(b)〕。この状態では、図9(b)に示されるように、係合体6における係合溝7と反対側の端面と、固縛孔HにおけるタイヤTと対向する側の端縁(端面)との間に所定の隙間32が形成される。最後に、図10に示されるように、連結支点ボルト9を中心にして、固縛孔Hの斜上側方に配置されている隙間閉塞板8を回動させると、当該隙間閉塞板8の操作部8cの凹部8dがストッパーピン12に引っ掛かって、隙間閉塞板8の本体部8aが前記隙間32に挿入されて、当該隙間32が閉塞される〔図9(c)〕。
図11に、床板材Pの幅方向に沿った2つの固縛孔Hに第1レール体R1 が左右一対の係合体6を介して係合された状態の平面断面図〔図9(c)のX−X線拡大断面図〕が示されている。第1レール体R1 は、係合体6の側板部6bにおける係合溝7が設けられることにより寸法が短くなった短寸法部分6b1 と、係合体6の端面に当接された隙間閉塞板8とによって、床板材Pの前後方向Nに対して移動不能になっていると共に、係合体6の各側板部6bの短寸法部分6b1 が小判形をした固縛孔Hの周縁部に当接することによって、床板材Pの幅方向Kに対して移動不能になっている。この結果、第1レール体R1 は、床板材Pに対して前後方向N及び幅方向Kの互いに直交する両方向に対して移動不能となって、運搬時の振動、加減速等によっても、当該床板材Pにがたつくことなく係合固定される。
上記により、床板材Pの幅方向に沿って1つおいた2つの固縛孔Hに第1レール体R1 が左右一対の係合体6を介して係合される。また、床板材Pに対する被運搬車両の前後方向Nに沿った配置位置の変更により、床板材Pに対してベルト端部固定具A1 の位置を変更させる必要が生じた場合には、上記と逆の操作を行って、2つの固縛孔Hに対する第1レール体R1 の係合を解除して、別の位置において2つの固縛孔Hに対して左右一対の係合体6を介して第1レール体R1 を係合させればよい。
また、第1レール体R1 に対して第1スライド体S1 を、当該第1レール体R1 の長手方向である床板材Pの幅方向Kに沿った係合固定位置を変更可能にして係合させるには、以下のようにして行う。即ち、第1スライド体S1 を傾斜姿勢にして、第1レール体R1 の挿入開口1に第1スライド体S1 の挿入係合板部21を挿入し〔図12(a)〕、その後に当該挿入係合板部21を起立方向に回動させて起立させる〔図12(b)〕。この状態において、床板材Pに載せられるタイヤTの幅方向の位置に対応させて、第1スライド体S1 にフックF1 を介して連結される締付ベルトVが前記タイヤTの幅方向の中央部に巻き付けられるような床板材Pの幅方向Kに沿った最適位置において、第1レール体R1 の係合突起体4に対して第1スライド体S1 の係合凹部23を係合させる。上記した最適位置に第1スライド体S1 が配置されるように、第1レール体R1 に対して第1スライド体S1 を当該第1レール体R1 の長手方向(床板材Pの幅方向K)にスライドさせ、当該最適位置において、第1レール体R1 に対して第1スライド体S1 を奥側(第1側壁部3の側)に押し込んで、第1レール体R1 の1ないし複数の係合突起体4と、第1スライド体S1 の同数の係合凹部23とを係合させた後に、第1スライド体S1 の起立板部22の外側に連結支点ピン25を支点にして回動可能に連結されて、斜後上方に起立している抜出防止板24を倒して、第1スライド体S1 の起立板部22と第1レール体R1 の第2側板部16との間に形成される隙間34に前記抜出防止板24を挿入させる〔図12(c)〕。これにより、第1レール体R1 に対して第1スライド体S1 は、床板材Pの前後方向N及び幅方向Kの双方に対して移動することなく、即ち、第1レール体R1 の挿入空間10から第1スライド体S1 の挿入係合板部21が抜け出ることなく、第1レール体R1 に対する第1スライド体S1 の起立姿勢を保持して、当該第1レール体R1 に第1スライド体S1 が係合固定される。
そして、床板材Pの幅方向Kに対するタイヤTの位置が変動した場合には、図8に示されるように、第1レール体R1 に対して第1スライド体S1 を当該第1レール体R1 の長手方向(床板材Pの幅方向K)にスライドさせて、床板材Pの幅方向Kに沿ったタイヤTの配置位置に対応させて最適位置(一端部がフックF1 を介して第1スライド体S1 に連結されて、タイヤTの外周面に巻き掛けられる締付ベルトVが当該タイヤTの幅方向の中央部に配置される位置)において、第1レール体R1 に対して第1スライド体S1 を係合し直す。第1スライド体S1 の挿入係合板部21の先端面に設けられた複数の係合凹部23のピッチは(Q/2)であるので、第1レール体R1 に対する第1スライド体S1 の係合固定位置の最少変更長は(Q/2)である。このため、第1スライド体S1 及び第1レール体R1 を介して床板材Pに一端部が連結固定される締付ベルトVの床板材Pの幅方向Kに沿った配置位置の変更は、長さ(Q/2)の単位で行うことが可能となる。
次に、図1〜図3、及び図14を参照して、タイヤTを締め付けている締付ベルトVの中間部を支持するためのベルト中間部支持具B1 について説明する。ベルト中間部支持具B1 は、ベルト締付機Dから引き出されて、タイヤTの外周面に巻き付け(巻き掛け)られる締付ベルトVの巻付角度(巻掛角度)を大きくして、当該タイヤTの締付けを確実にすること、並びに被運搬車両の車体と干渉することなく、ベルト締付機Dによる締付ベルトVの締付け、及びその解除の各操作を行えるようにすることの2点であって、締付ベルトVの中間部を部分的に巻き掛けるシーブGの床板材Pの幅方向Kに沿った位置を、ベルト端部固定具A1 の第1スライド体S1 の同方向に沿った配置位置と同一にするものてある。
従って、ベルト中間部支持具B1 は、前記ベルト端部固定具A1 において、締付ベルトVの端部をフックF1 を介して連結する第1スライド体S1 に替えて、シーブGを回転可能に支持するシーブ取付体Mが連結された第2スライド体S2 を使用するのみで、他の構成は、全てベルト端部固定具A1 のままでよい。よって、ベルト中間部支持具B1 は、前記第1レール体R1 と同一構成の第2レール体R2 と、当該第2レール体R2 に案内されて床板材Pの幅方向Kにスライド可能であって、当該第2レール体R2 の長手方向(床板材Pの幅方向K)に沿った多数の異なる位置において係合固定可能な第2スライド体S2 とで構成されて、当該第2スライド体S2 に、シーブGを回転可能に取付けたシーブ取付体Mが連結された構成であればよい。
このため、第2レール体R2 の長手方向(床板材Pの幅方向K)に沿った多数の異なる係合固定位置において係合固定可能なように、当該第2レール体R2 にスライド可能に係合された第2スライド体S2 の引掛け孔31には、シーブ取付体Mの本体板部41に対して回転可能に連結されたフックF2 を介して当該シーブ取付体Mが連結されている。シーブ取付体Mは、本体板部41の両端部に左右一対の支持板部42が対向するように折り曲げられた形状であって、対向する一対の支持板部42の間にシーブGが配置されて支持軸43を介して前記一対の支持板部42に回転可能に支持されている。上記したように、第2レール体R2 は第1レール体R1 と、第2スライド体S2 は第1スライド体S1 と、それぞれ同一構成であるので、図1〜図3、及び図14においては、第2レール体R2 及び第2スライド体S2 は、第1レール体R1 及び第1スライド体S1 に付した符号と同一符号を付してある。
また、本発明におけるベルト締付機Dは、タイヤTの外周面に巻き掛けられる締付ベルトVに張力を付与できればいかなる構造であっても構わない。図1〜図3及び図15に示されるベルト締付機Dは、ラチェット機構をした形式のものであって、軸方向の両端部に一対のラチェット61を一体に取付けた巻取軸62が先端部に回転可能に支持された締付機本体63と、前記一対のラチェット61に対して係合・離脱するラチェット係合板64を備え、前記巻取軸62に対して回動可能に支持されて当該巻取軸62に対して締付ベルトVを巻き取るための巻取レバー65とから成り、巻取軸62を中心にして巻取レバー65を往復回動させると、往回転時には圧縮バネ66により各ラチェット61に付勢状態で係合しているラチェット係合板64により巻取軸62が回動されて締付ベルトVを所定長さだけ巻き取ると共に、復回動時には、前記ラチェット係合板64が各ラチェット61の爪部の上端面を滑って元の位置に戻ることにより、締付ベルトVを徐々に巻き取って当該締付ベルトVに所定の張力を付与する構成である。また、締付ベルトVの巻取時には、圧縮バネ(図示せず)の付勢力により、逆転防止用係合板67が各ラチェット61に係合していて、締付ベルトVの巻取時における巻取軸62の逆回転を防止している。なお、締付ベルトVを巻き戻すには、巻取レバー65を通常の巻取回動端を超えて回動させることにより、締付機本体63の先端のカム板68のカム作用によって、ラチェット係合板64及び逆転防止用係合板67とラチェット61との係合が解除されて、締付ベルトVが巻き戻される。
そして、ベルト締付機Dとの関係における本発明の意義は、ベルト締付機Dの構造ではなくて、当該ベルト締付機Dを床板材Pに固定する構造に存在する。ベルト締付機Dの締付機本体63の後端部に幅方向に配置された連結ロッド69には、当該ベルト締付機Dを床板材Pに連結するための係合専用具Eが数個のチェーン子71を介して連結されている。
次に、図15及び図16を参照して、係合専用具Eについて説明する。図16(a),(b)は、それぞれ床板材Pの固縛孔Hに対して係合専用具Eが係合される前後を示す断面図である。係合専用具Eは、床板材Pの固縛孔Hに解除可能に係合されて、ベルト締付機Dを床板材Pの任意の位置に連結可能にするための部材であって、固縛孔Hを覆うように配置される覆板72の裏面に係合体73が溶接により一体に固着され、係合体73の底板部73aから前記覆板72を貫通してチェーン子固定軸74が当該覆板72の上面に突出され、当該チェーン子固定軸74における覆板72の上面からの突出部72aに、環状のチェーン子を半分に切断したU字状のチェーン子連結具75が溶接により固着されている。覆板72の裏面に固着された係合体73は、前記第1及び第2の各レール体R1 ,R2 の裏面に固着された係合体6とほぼ同一構造であって、底板部73aの両端部に側板部73bが上方に向けて折り曲げられて、平面視において両側板部73bにおける覆板72の端縁から配置状態で床板材Pの前後方向Nに突出した部分には、覆板72との間で係合溝76が形成されるように切り欠かれている。床板材Pの固縛孔Hに係合専用具Eを配置した状態において、係合体73における床板材Pの前後方向Nに沿って係合溝76が設けられている部分は、覆板72の一方の端縁から大きく突出しているが、固縛孔Hに対して係合体73を係合可能にするために、当該係合体73における反対側の部分は、覆板72の他方の端縁から内方に入り込んで配置されていると共に、その下半部には切欠き77が形成されている。
そして、係合専用具Eを床板材Pの固縛孔Hに解除可能に係合させるには、以下のようにして行う。まず、覆板72の裏面に一体に固着された係合体73の係合溝76の側をタイヤTと反対側を向けて、当該係合溝76に床板材Pの板体部91の周縁部を挿入して仮係合させ〔図16(a)〕、当該仮係合部を中心にして係合専用具Eを回動させて、係合体73の全体を固縛孔H内に挿入すると、前記板体部91における固縛孔Hに臨む部分の全周に亘って載置された状態となって〔図16(b)〕、締付ベルトVは、複数のチェーン子71及び係合専用具Eを介して床板材Pに連結される。なお、床板材Pにおけるベルト締付機Dの配置位置の変更のために、固縛孔Hと係合専用具Eの係合体73との係合を解除するには、上記と逆の順序で各操作を行えばよい。
上記の状態で、ベルト締付機Dによって、タイヤTに巻き掛けられた締付ベルトVに張力を付与すると、当該ベルト締付機D及び複数のチェーン子71を介して締付ベルトVに連結された係合専用具Eは、タイヤTの側であって、しかも床板材Pとほぼ平行な方向に引っ張られて、係合体73のタイヤT側の端面が固縛孔HのタイヤT側の内端面に圧接すると共に、係合溝76の下面が床板材Pの板体部91の下面に圧接することにより、固縛孔Hに対する係合体73の係合状態が維持される。
そして、上記したベルト端部固定具A1 、ベルト中間部支持具B1 、ベルト締付機D、及び係合専用具Eを用いて、車両運搬車の荷台の左右両端部に前後方向に配置した床板材Pに載せられた被運搬車両のタイヤTを固縛するには、以下のようにして行う。まず、ベルト端部固定具A1 の構成、及び床板材Pに対する係合構造について詳述したように、タイヤTの前方及び後方の固縛孔Hにベルト端部固定具A1 の第1レール体R1 及びベルト中間部支持具B1 の第2レール体R2 を、第1及び第2の各レール体R1 ,R2 の裏面に固着された左右一対の係合体6並びに第1及び第2の各レール体R1 ,R2 に連結されている隙間閉塞板8を介して係合固定する。第1及び第2の各レール体R1 ,R2 の裏面の各係合体6は、係合溝7の側が反タイヤT側を向くように配置する。一方、図2に示されるように、ベルト中間部支持具B1 に対してタイヤTと反対の側であって、しかも平面視において被運搬車両Cの車体93との干渉を回避してベルト締付機Dを係合専用具Eを介して床板材Pに連結する。床板材Pの固縛孔Hに対してベルト締付機Dを連結する構造は、上記した通りであって、固縛孔Hに係合体73を介して係合された係合専用具Eと複数のチェーン子71を介して床板材Pの固縛孔Hにベルト締付機Dを連結する。
次に、締付ベルトVがタイヤTの幅方向の中央部に巻き掛けられるように、ベルト端部固定具A1 の第1レール体R1 に対する第1スライド体S1 の床板材Pの幅方向Kに沿った係合固定位置、及び中間部支持具B1 の第2レール体R2 に対する第2スライド体S2 の同様の方向の係合固定位置をそれぞれ定める。具体的には、上記したように、第1レール体R1 (第2レール体R2 )の第1側板部3の内側面にピッチQで設けられた多数の係合突起体4のうち、上記した係合固定位置になるものを選択して、選択された1ないし複数の第1レール体R1 (第2レール体R2 )の係合突起体4と、第1スライド体S1 (第2スライド体S2 )の係合凹部23とを係合させ、第1スライド体S1 (第2スライド体S2 )の起立板部22と第1レール体R1 (第2レール体R2 )の第2側板部16との間に形成された隙間34に、第1スライド体S1 (第2スライド体S2 )の起立板部22の外側面に回動可能に連結された抜出防止板24を挿入して行う。
これにより、ベルト締付機Dから引き出されてタイヤTに巻き掛けられる締付ベルトVは、当該タイヤTの幅方向の中央部に配置可能となる。締付ベルトVの一端部は、フックF1 を介してベルト端部固定具A1 の第1スライド体S1 の引掛け孔31に引っ掛けられると共に、当該締付ベルトVの中間部は、ベルト中間部支持具B1 の第2スライド体S2 に連結されたシーブGに巻き掛けられ、この状態でベルト締付機Dにより締付ベルトVに張力を付与すると、図1〜図3に示されるように、締付ベルトVの張力によりタイヤTは、タイヤTに対する締付ベルトVの巻掛け角度を大きく確保した状態で、床板材Pに対して垂直下方に押し付けられるため、床板材Pに対してタイヤTが安定した状態でしっかりと固縛される。なお、図1〜図3においては、被運搬車両の左前側のタイヤTを固縛している状態を図示している。
タイヤTが締付ベルトVにより固縛された状態では、ベルト端部固定具A1 を構成する第1スライド体S1 には、タイヤTの側に向いた斜方向の張力が作用して、第1スライド体S1 に作用する張力は、第1レール体R1 の係合板部2で支持されて、係合体6は、隙間閉塞板8を介して固縛孔HのタイヤT側の端縁部に圧接されると共に、係合溝7の下端面は、床板材Pの板体部91の裏面に圧接される。これにより、締付ベルトVの一端部がベルト端部固定具A1 を介して床板材Pに固定(連結)される。また、締付ベルトVに作用する張力は、固縛孔Hに対する係合体6の係合を確実にするように作用するので、締付ベルトVに張力が作用している限り、固縛孔Hと係合体6との係合が緩んだり、甚だしい場合には解除されたりすることはない。ベルト中間部支持具B1 の第2レール体R1 の裏面に固着された係合体6と固縛孔Hとの係合関係も、上記した係合関係と同一である。更に、ベルト締付機Dを床板材Pに連結している係合専用具Eには、床板材Pに対してほぼ平行な張力が作用して、係合体73の係合溝76と反対側の端面が固縛孔Hの内周面に圧接すると共に、係合溝76の下面76aが床板材Pの板体部91の下面に圧接して、締付ベルトVに作用する張力により係合状態が維持される。
そして、床板材Pの幅方向に対する被運搬車両CのタイヤTの位置が変動して、締付ベルトVがタイヤTの幅方向の中央部から大きくずれる場合には、ベルト端部固定具A1 を構成する第1スライド体S1 が第1レール体R1 の挿入空間10から抜け出るのを防止するために当該第1スライド体S1 の背面と第1レール体R1 の第2側板部16との間の隙間に挿入されている抜出防止板24を脱出させて、第1レール体R1 に長手方向(床板材Pの幅方向K)に対する係合固定位置の変更を行う。即ち、タイヤTの幅方向の中央部に締付ベルトVが配置されるように、第1スライド体S1 を第1レール体R1 に案内させて必要な方向に必要の長さだけスライドさせて、第1スライド体S1 の係合凹部23を第1レール体R1 の別の係合突起体4に係合させることにより、第1レール体R1 の長手方向に対する第1スライド体S1 の係合固定位置の変更を行う。なお、ベルト中間部支持具B1 の第2スライド体S2 に関しても、床板材Pの幅方向Kに沿ってベルト端部固定具A1 の第1スライド体S1 と同一位置となるように、第2レール体R2 に対する係合固定位置を変更させる。
普通乗用車のタイヤ幅は、ほぼ150mmであって、締付ベルトVの幅が50mmで、第1及び第2の各レール体R1 ,R2 に設けられた多数の係合突起体4のピッチQが50mmの場合には、25mmを最少単位として、床板材Pの幅方向Kに対する締付ベルトVの配置位置を変更できるので、床板材Pに載せられたタイヤTの幅方向のほぼ中央部に締付ベルトVを配置できる。また、普通乗用車及び軽自動車のタイヤ間距離(トレッド寸法)は、それぞれ1500mm,1300mm前後のものが大半であって、第1及び第2の各レール体R1 ,R2 は、それぞれ片側で200mmの調整が可能であるので、床板材Pの幅方向Kの中央部に各レール体R1 ,R2 を配置しておけば、ほぼ全ての車種に対して対応できる。
ここで、床板材Pに対するタイヤTの位置が幅方向Kに大きくずれて、第1及び第2の各レール体R1 ,R2 の最端部に第1及び第2の各スライド体S1 ,S2 を配置しても、タイヤTの幅方向の中央部に締付ベルトVを配置できない場合には、床板材Pの幅方向Kに対する第1及び第2の各レール体R1 ,R2 の係合固定位置を変更すればよい。この操作は、固縛孔Hから隙間閉塞板8を脱出させた状態で、固縛孔Hに対して係合体6を係合させる場合と逆の順序で各操作を行うことにより、固縛孔Hに対する係合体6の係合を簡単に解除できる。
また、特定の車種の被運搬車両を繰り返して運搬する場合には、車両運搬車の床板材Pに対する前後方向Nの位置はほぼ一定しているので、ベルト端部固定具A1 の第1レール体R1 及びベルト中間部支持具B1 の第2レール体R2 をそのまま固縛孔Hに係合させたままで、第1及び第2の各スライド体S1 ,S2 を取り外しておいても、第1及び第2の各レール体R1 ,R2 の高さはそれ程高くないので、車両運搬車の荷台に対する被運搬車両の搬入・搬出には殆ど支障がない。このため、床板材Pに係合されたままの第1及び第2の各レール体R1 ,R2 は、被運搬車両の搬入時における荷台(又は床板材P)の前後方向Nの位置決め部材として機能して、被運搬車両の搬入がし易くなる。また、車両運搬車が空荷で走行する際においても、第1及び第2の各レール体R1 ,R2 と固縛孔Hとの間に形成される隙間32は隙間閉塞板8により閉塞されているため、各レール体R1 ,R2 ががたつかなくなる。
また、実施例1では、タイヤTに対する締付ベルトVの巻掛角度を保持し、しかも平面視における締付ベルトVの配置位置を車体93の外側に配置すべく、締付ベルトVの配置位置を変更させるために締付ベルトVの中間部を巻き掛けるためのベルト中間部巻掛部材としてシーブGが使用されており、締付ベルトVの損傷が少ない等の利点がある。しかし、本発明におけるベルト中間部巻掛部材は、上記機能を奏すれば足りるので、非回転の棒材等であっても機能を発揮し得る。
なお、実施例1において、締付ベルトVの一端部はフックF1 を介して第1スライド体S1 に連結されているが、締付ベルトVの一端部は第1スライド体S1 に直接に連結してもよい。全く同様に、シーブGは、シーブ取付体Mを介して第2スライド体S2 に連結されているが、当該第2スライド体S2 にシーブGを直接に支持してもよい。
次に、別の実施例のベルト端部固定具A2 〜A6 (ベルト中間部支持具B2 〜B6 )について簡単に説明する。なお、各ベルト端部固定具A2 〜A6 に関しては、上記したベルト端部固定具A1 と異なる部分についてのみ説明する。