JP5013447B2 - 研磨パッド及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことが可能な研磨パッドに関するものである。本発明の研磨パッドは、特にシリコンウエハ並びにその上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを、さらにこれらの酸化物層や金属層を積層・形成する前に平坦化する工程に好適に使用される。
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC、LSI)を製造するシリコンウエハと呼ばれる単結晶シリコンの円盤があげられる。シリコンウエハは、IC、LSI等の製造工程において、回路形成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、酸化物層や金属層を積層・形成する各工程において、表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。このような研磨仕上げ工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、半導体ウエハ等の加工物は研磨ヘッドに固着される。そして双方の運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、さらに砥粒を含む研磨スラリーを研磨パッド上に連続供給することにより、研磨操作が実行される。
研磨パッドの研磨特性としては、研磨対象物の平坦性(プラナリティー)及び面内均一性に優れ、研磨速度が大きいことが要求される。研磨対象物の平坦性、面内均一性については研磨層を高弾性率化することによりある程度は改善できる。しかし、研磨層を高弾性率化するためにポリマー材料の剛性を高めると、研磨層が脆くなり、耐摩耗性が低下して寿命が短くなる傾向にある。
次世代素子への展開を考慮すると、平坦化特性により優れる研磨パッドが必要となる。平坦化特性を向上させるためには、無発泡系の硬い研磨パッドを用いることも可能である。しかし、このような硬いパッドを用いた場合、研磨対象物の表面にスクラッチ(傷)が生じるという問題がある。また、無発泡系の研磨パッドは、研磨操作時にパッド表面にスラリー中の砥粒を十分に保持することができないため、研磨速度の観点からも望ましくない。
また、非水溶性の熱可塑性重合体に水溶性物質を分散させた研磨パッドが提案されている(特許文献1)。この研磨パッドは、無発泡体であるが、研磨パッド中に分散させた水溶性物質が研磨時に溶解して研磨パッド表面に発泡体のような孔ができ、また研磨パッドが膨潤して研磨パッド表面の硬度が低下するため、スクラッチの低減と研磨速度の向上には有効である。しかしながら、該研磨パッドはパッド表面が膨潤して硬度が低下するため平坦化特性に関しては不十分である。
また、プラナリティー向上とスクラッチ低減を両立することを目的として、有機ポリイソシアネート、水溶性高分子ポリオールを含有する高分子量ポリオール、及び低分子量ポリオールを反応させてなるイソシアネート末端プレポリマーと鎖延長剤との重合体からなる研磨パッドが開示されている(特許文献2)。しかしながら、該研磨パッドもパッド表面が膨潤して硬度が低下するため、今後要求される平坦化特性を十分満足できるものではない。
また、研磨工程において発生する摩擦熱による温度上昇が起こった場合でも平坦化特性の低下を抑制することを目的として、イソシアネート成分として芳香族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネート、ポリオール成分として数平均分子量500〜5000のポリエーテルポリオール、及び低分子量多価アルコールを含有してなるイソシアネート末端プレポリマーと、鎖延長剤とを反応して得られるポリウレタン発泡体を用いた研磨パッドが開示されている(特許文献3)。しかしながら、該研磨パッドも今後要求される平坦化特性を十分満足できるものではない。
また、特許文献4及び5では、研磨レート、平坦化特性、及び面内均一性を向上させるために、反応射出成形法により製造され、セルの平均径が1〜50μmである研磨用パッドが提案されている。セルの気泡径を小さくして研磨用パッドを高弾性率化することにより、ある程度平坦化特性を改善できるが、該研磨パッドも今後要求される平坦化特性を十分満足できるものではない。
特開2001−47355号公報 特許第3571334号明細書 特許第3494640号明細書 特開2003−62748号公報 特開2004−42189号公報
本発明は、研磨速度及び耐磨耗性を低下させることなく平坦化特性を向上させた研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。また、該研磨パッドを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す研磨パッドにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の研磨パッドは、凹形状の高弾性層の凹内に、ポリウレタン発泡体からなる研磨層が密着状態で設けられており、前記高弾性層は無発泡体であり、かつ前記高弾性層の弾性率は研磨層の弾性率よりも10MPa以上大きいことを特徴とする。
本発明の研磨パッドは、研磨層の側面及び裏面が高弾性層によって囲まれた構造をしている。そして、前記高弾性層は無発泡体からなり、研磨層より高弾性であるため、研磨パッド全体の剛性を高めることができる。それにより、研磨時の研磨層の変形を抑制することができ、平坦化特性及び研磨安定性が向上する。しかも、研磨層の材料や構造は、研磨速度及び耐磨耗性を考慮して最適に調整することができるため、研磨速度及び耐磨耗性を低下させることなく平坦化特性を向上させることができる。
高弾性層の弾性率は研磨層の弾性率よりも10MPa以上大きいことが必要である。10MPa未満の場合には、研磨パッド全体の剛性を高めることができず、研磨時の研磨層の変形を抑制することができないため、平坦化特性及び研磨安定性が低下する。
高弾性層の底部と研磨層の厚さの比は、5:95〜60:40(前者:後者)であることが好ましい。研磨層の厚さが95(%)を超える場合には、研磨時の研磨層の変形を抑制し難くなるため、平坦化特性及び研磨安定性が低下する傾向にある。一方、研磨層の厚さが40(%)未満の場合には、研磨パッドの寿命が短くなるため好ましくない。
高弾性層の壁部の幅は、研磨パッドの半径の0.2〜5%であることが好ましい。高弾性層の壁部の幅が0.2%未満の場合には、研磨時の研磨層の変形を抑制し難くなるため、平坦化特性及び研磨安定性が低下する傾向にある。一方、高弾性層の壁部の幅が5%を超える場合には、実質的に研磨に関与する研磨層の面積が小さくなるため、研磨効率の面で好ましくない。
研磨層の弾性率は200〜400MPaであることが好ましい。弾性率が200MPa未満の場合には、研磨層表面の強度が低下し、ウエハの平坦性が低下する傾向にある。一方、弾性率が400MPaを超える場合には、研磨層が脆くなりすぎ、耐摩耗性が低下して寿命が短くなる傾向にある。
本発明の研磨パッドの製造方法は、凹形状の高弾性層を形成するための空間部を設けた状態で金型内に研磨層を配置する工程、及び反応射出成形法により高弾性層形成材料を前記金型内の空間部に射出し硬化させて、前記研磨層の側面及び裏面に密着する凹形状の高弾性層を一体形成する工程を含む。
別の本発明の研磨パッドの製造方法は、反応射出成形法により高弾性層形成材料を金型内に射出し硬化させて、凹形状の高弾性層を形成する工程、イソシアネート成分を含む第1成分及び/又は活性水素基含有化合物を含む第2成分に非反応性気体を加圧下で溶解させる工程、前記第1成分及び第2成分を混合したポリウレタン組成物を、反応射出成形法により金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出し発泡硬化させて研磨層を一体形成する工程を含む。
別の本発明の研磨パッドの製造方法は、凹形状の高弾性層を金型内に配置する工程、イソシアネート成分を含む第1成分及び/又は活性水素基含有化合物を含む第2成分に非反応性気体を加圧下で溶解させる工程、前記第1成分及び第2成分を混合したポリウレタン組成物を、反応射出成形法により金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出し発泡硬化させて研磨層を一体形成する工程を含む。
該製造方法によると、研磨層の側面及び裏面が高弾性層によって囲まれており、研磨層と高弾性層とが自己接着により一体化した研磨パッドを容易に製造することができる。
前記ポリウレタン組成物には、非反応性気体を0.01〜1重量%含有させることが好ましい。非反応性気体が0.01重量%未満の場合には気泡数が少なくなりすぎて研磨速度が低下し、1重量%を超える場合には気泡数が多くなりすぎて目的とする硬度及び弾性率が得られにくくなり平坦化特性や面内均一特性等の研磨特性に悪影響を及ぼす傾向にある。
また、前記非反応性気体は、ポリウレタン原料への溶解度が高く、取り扱いが容易である窒素及び/又は二酸化炭素であることが好ましい。
また、前記非反応性気体は、超臨界状態にして第1成分及び/又は第2成分中に溶解させることが好ましい。超臨界状態にすることにより、大量の非反応性気体を速やかに均一に第1成分及び/又は第2成分中に溶解させることができる。それにより、極微細で大量の気泡を均一にポリウレタン樹脂中に分散させることができる。
前記ポリウレタン組成物は、シリコン系界面活性剤を0.05〜10重量%含有することが好ましい。シリコン系界面活性剤の含有量が0.05重量%未満の場合には、極微細気泡のポリウレタン発泡体が得られ難い傾向にある。一方、10重量%を超える場合には、該界面活性剤の可塑効果により、目的とする硬度及び弾性率のポリウレタン発泡体が得られ難い傾向にある。
また、本発明は、前記の方法によって製造される研磨パッド、に関する。
前記研磨層は、平均気泡径が5〜60μmであり、平均気泡数が100〜2000個/mmであることが好ましい。上記構造の研磨層を有する研磨パッドは、研磨速度や平坦化特性等の研磨特性が特に優れている。
さらに本発明は、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法、に関する。
本発明の研磨パッドは、凹形状の高弾性層の凹内に、ポリウレタン発泡体からなる研磨層が密着状態で設けられた構造を有する。本発明の研磨パッドは、研磨層と高弾性層のみから構成されていてもよく、高弾性層の裏面に他の層(例えばクッション層など)が積層されていてもよい。
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができるため研磨層の形成材料として好適に用いられる。
前記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート成分及び活性水素基含有化合物を主原料とする。活性水素基含有化合物とは、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する化合物であり、例えば、ポリオール成分(高分子量ポリオール、低分子量ポリオール等)、ポリアミン成分、鎖延長剤などが挙げられる。
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。イソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類等が挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
イソシアネート成分としては、上記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物も使用可能である。多官能のイソシアネート化合物としては、デスモジュール−N(バイエル社製)や商品名デュラネート(旭化成工業社製)として一連のジイソシアネートアダクト体化合物が市販されている。
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
高分子量ポリオールの数平均分子量は特に限定されるものではないが、得られるポリウレタン樹脂の弾性特性等の観点から500〜2000であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると、これを用いたポリウレタン樹脂は十分な弾性特性を有さず、脆いポリマーとなる。そのためこのポリウレタン樹脂から製造される研磨パッドは硬くなりすぎ、ウエハ表面のスクラッチの原因となる。また、摩耗しやすくなるため、パッド寿命の観点からも好ましくない。一方、数平均分子量が2000を超えると、これを用いたポリウレタン樹脂は軟らかくなりすぎるため、このポリウレタン樹脂から製造される研磨パッドは平坦化特性に劣る傾向にある。
また、高分子量ポリオールの他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールを併用することができる。また、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。低分子量ポリオールや低分子量ポリアミン等の配合量は特に限定されず、研磨層に要求される特性により適宜決定される。
ポリウレタン樹脂をプレポリマー法により製造する場合において、プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用することが好ましい。鎖延長剤は、少なくとも2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン、あるいは、上述した低分子量ポリオール、及び低分子量ポリアミンなどを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
イソシアネート成分、ポリオール成分、及び鎖延長剤等の比は、各々の分子量や研磨パッドの所望物性などにより種々変え得る。所望する研磨特性を有する研磨パッドを得るためには、活性水素基含有化合物の合計活性水素基(水酸基+アミノ基)数に対するイソシアネート成分のイソシアネート基数は、0.80〜1.20であることが好ましく、さらに好ましくは0.99〜1.15である。イソシアネート基数が前記範囲外の場合には、硬化不良が生じて要求される比重及び硬度が得られず、研磨特性が低下する傾向にある。
ポリウレタン樹脂の製造は、プレポリマー法、ワンショット法のどちらでも可能であるが、事前にイソシアネート成分とポリオール成分からイソシアネート末端プレポリマーを合成しておき、これに鎖延長剤を反応させるプレポリマー法が、得られるポリウレタン樹脂の物理的特性が優れており好適である。
なお、イソシアネート末端プレポリマーは、分子量が800〜5000程度のものが加工性、物理的特性等が優れており好適である。
前記ポリウレタン樹脂の製造は、イソシアネート成分を含む第1成分、及び活性水素基含有化合物を含む第2成分を混合して硬化させるものである。プレポリマー法では、イソシアネート末端プレポリマーがイソシアネート成分となり、鎖延長剤が活性水素基含有化合物となる。ワンショット法では、鎖延長剤及びポリオール成分が活性水素基含有化合物となる。
研磨層の形成材料であるポリウレタン発泡体の製造方法としては、中空ビーズを添加させる方法、機械的発泡法、反応射出成形法(RIM:Reaction Injection Molding)、化学的発泡法などが挙げられる。
機械的発泡法の場合には、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルの共重合体であるシリコン系界面活性剤を使用することが好ましい。かかるシリコン系界面活性剤としては、SH−192、SH−193、SF2938F、及びL−5340(東レダウコーニングシリコーン社製)等が好適な化合物として例示される。シリコン系界面活性剤は、ポリウレタン発泡体中に0.05〜10重量%添加しておくことが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
研磨層を構成する微細気泡タイプのポリウレタン発泡体を製造する方法の例について以下に説明する。かかるポリウレタン発泡体の製造方法は、以下の工程を有する。
1)イソシアネート末端プレポリマーの気泡分散液を作製する発泡工程
イソシアネート末端プレポリマー(第1成分)にシリコン系界面活性剤を添加し、非反応性気体の存在下で撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。前記プレポリマーが常温で固体の場合には適宜の温度に予熱し、溶融して使用する。
2)硬化剤(鎖延長剤)混合工程
上記の気泡分散液に鎖延長剤(第2成分)を添加、混合、撹拌して発泡反応液とする。3)注型工程
上記の発泡反応液を金型に流し込む。
4)硬化工程
金型に流し込まれた発泡反応液を加熱し、反応硬化させる。
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、常温・常圧で気体であり、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
非反応性気体を微細気泡状にしてシリコン系界面活性剤を含む第1成分に分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置は特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)等が例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。
なお、発泡工程において気泡分散液を作成する撹拌と、混合工程における鎖延長剤を添加して混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。特に混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。発泡工程と混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
ポリウレタン発泡体の製造方法においては、発泡反応液を型に流し込んで流動しなくなるまで反応した発泡体を、加熱、ポストキュアすることは、発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。金型に発泡反応液を流し込んで直ちに加熱オーブン中に入れてポストキュアを行う条件としてもよく、そのような条件下でもすぐに反応成分に熱が伝達されないので、気泡径が大きくなることはない。硬化反応は、常圧で行うと気泡形状が安定するために好ましい。
ポリウレタン発泡体において、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を使用してもかまわない。触媒の種類、添加量は、混合工程後、所定形状の型に流し込む流動時間を考慮して選択する。
ポリウレタン発泡体の製造は、各成分を計量して容器に投入し、撹拌するバッチ方式であってもよく、また撹拌装置に各成分と非反応性気体を連続して供給して撹拌し、発泡反応液を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
また、ポリウレタン発泡体の原料となるプレポリマーを反応容器に入れ、その後鎖延長剤を投入、撹拌後、所定の大きさの注型に流し込みブロックを作製し、そのブロックを鉋状、あるいはバンドソー状のスライサーを用いてスライスする方法、又は前述の注型の段階で、薄いシート状にしても良い。また、原料となる樹脂を溶解し、Tダイから押し出し成形して直接シート状のポリウレタン発泡体を得ても良い。
上記のように機械的発泡法でポリウレタン発泡体を作製した場合、平均気泡径30〜60μm、平均気泡数100〜500個/mm、比重0.65〜0.88、アスカーD硬度35〜60度、及び弾性率200〜400MPa(40℃)の発泡体を形成することができる。
また、反応射出成形法は、以下で説明するように、極微細気泡をポリウレタン樹脂中に大量に均一に形成することができるため研磨層の作製方法として非常に好適である。
高弾性層の形成材料は、高弾性層の弾性率が研磨層の弾性率よりも10MPa以上大きくなる材料であれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、ポリスチレン、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、エポキシ樹脂、及び感光性樹脂などが挙げられる。また、公知の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いてもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、研磨層との密着性、耐磨耗性等の観点からポリウレタン樹脂を用いることが好ましく、特に研磨層と同種の原料からなるポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
前記高弾性層は、例えば、注型成形法又は反応射出成形法により作製することができる。
以下、本発明の研磨パッドの製造方法について詳しく説明する。図1は本発明の研磨パッド1の構造を示す概略図である。
本発明の研磨パッド1の製造方法は特に制限されないが、研磨層2及び/又は高弾性層3を反応射出成形法(RIM:Reaction Injection Molding)で製造することが好ましい。以下、研磨層及び高弾性層の原料としてポリウレタン樹脂を用いた場合の製造例を示す。
例えば、凹形状の高弾性層3を形成するための空間部を設けた状態でRIM用金型内に研磨層を配置する。その後、反応射出成形法により高弾性層形成材料(ポリウレタン原料)を前記RIM用金型内の空間部に射出し硬化させて、前記研磨層の側面及び裏面に密着する凹形状の高弾性層を一体形成することにより研磨パッドを製造することができる。なお、研磨層は、例えば、機械的発泡法、反応射出成形法などにより作製することができる。
また、反応射出成形法により高弾性層形成材料(ポリウレタン原料)をRIM用金型内に射出し硬化させて、凹形状の高弾性層を形成する。そして、イソシアネート成分を含む第1成分及び/又は活性水素基含有化合物を含む第2成分に非反応性気体を加圧下で溶解させ、前記第1成分及び第2成分を混合したポリウレタン組成物を、反応射出成形法によりRIM用金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出し発泡硬化させて研磨層を一体形成することにより研磨パッドを製造してもよい。
また、凹形状の高弾性層を金型内に配置する。そして、イソシアネート成分を含む第1成分及び/又は活性水素基含有化合物を含む第2成分に非反応性気体を加圧下で溶解させ、前記第1成分及び第2成分を混合したポリウレタン組成物を、反応射出成形法によりRIM用金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出し発泡硬化させて研磨層を一体形成することにより研磨パッドを製造してもよい。なお、高弾性層は、例えば、注型成形法、反応射出成形法などにより作製することができる。
本発明で使用するRIM成形機は、イソシアネート成分(イソシアネート末端プレポリマー)を含む第1成分を貯蔵する原料タンクA、活性水素基含有化合物(ポリオール成分、ポリアミン成分、鎖延長剤等)を含む第2成分を貯蔵する原料タンクB、気体定量供給装置、液体−気体混合ユニット、油圧ユニット、温調ユニット、調圧ユニット、ミキシングヘッド、及びRIM用金型から基本的に構成される。前記気体定量供給装置として超臨界流体定量供給装置を用いることもできる。
前記原料タンクA及び原料タンクB内の温度は適宜調整することができるが、通常0〜150℃である。
反応射出成形法で研磨層を作製する場合には、非反応性気体を超臨界状態にして第1成分及び/又は第2成分中に溶解させることが好ましい。超臨界状態とは、臨界温度及び臨界圧力以上の状態であり、例えば、窒素の場合は−147℃以上、3.4MPa以上であり、二酸化炭素の場合は31℃以上、7.38MPa以上である。
前記第1成分及び/又は第2成分と非反応性気体とを液体−気体混合ユニットで混合した後、それらをミキシングヘッド内で混合してポリウレタン組成物を調製し、直ちに該ポリウレタン組成物を所定形状のRIM用金型内に射出する。そして、所定の金型内圧に設定されたRIM用金型内で、ポリウレタン組成物の反応硬化が進行すると共に、該組成物中に溶解している非反応性気体をガス化させることにより、ポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体からなる研磨層を形成する。
飽和圧力下の非反応性気体はポリウレタン組成物中に均一に溶解しているため、低い圧力状態にあるRIM用金型内では、ほぼ同一の膨張速度及び膨張率でガス化することになる。その結果、ポリウレタン樹脂中にほぼ同一の気泡径を有する極微細気泡が大量かつ均一に形成される。また、RIM用金型内では非反応性気体に均一に圧力が加わるため、極めて球形に近い気泡が形成される。気泡径や気泡数は、RIM用金型内の圧力、非反応性気体の溶解量、硬化時間、原料注入量等により適宜調整することができる。気泡径は、RIM用金型内の圧力が高ければ小さくなる。また、非反応性気体の溶解量が多ければ気泡数が多くなる。硬化時間は、触媒やキュア温度等により調整することができる。
反応射出成形法で研磨層を作製する場合、機械的発泡法と同様にシリコン系界面活性剤を使用することが好ましい。シリコン系界面活性剤は、ポリウレタン組成物(第1成分+第2成分)中に0.05〜10重量%添加しておくことが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。なお、必要に応じて、触媒、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
反応射出成形法で作製される研磨層は、平均気泡径が5〜60μm、平均気泡数が100〜2000個/mm程度であり、好ましくは平均気泡径が20〜55μm、平均気泡数が150〜500個/mmである。
一方、反応射出成形法で高弾性層を作製する場合、高弾性層を無発泡体にするために、原料タンクA及び原料タンクB内の原料に気体をできるだけ溶解させないことが必要である。
第1成分及び第2成分をミキシングヘッド内で高圧衝突により混合して高弾性層形成材料(ポリウレタン原料)を調製し、反応射出成形法により高弾性層形成材料を直ちに所定形状のRIM用金型内に射出する。そして、RIM用金型内で、高弾性層形成材料を硬化させて無発泡ポリウレタン樹脂からなる高弾性層を形成する。
また、予めRIM用金型内にクッション層を設けておくことにより、高弾性層の裏面にクッション層が一体成形された研磨パッドを製造することができる。該製造方法によると、高弾性層とクッション層とを貼り合わせる工程を省略することができるため製造効率の観点で好ましい。また、高弾性層とクッション層とを両面テープや接着剤等で貼り合わせた場合には剥離し易いという問題があるが、上記製造方法によると高弾性層をクッション層に自己接着させることができ、両層が極めて剥離し難くなるため好ましい。ただし、高弾性層とクッション層とを両面テープ等で貼り合わせて研磨パッドを作製してもよい。
前記クッション層は、研磨層の特性を補うものである。クッション層は、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある被研磨材を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、被研磨材全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッション層の特性によってユニフォーミティを改善する。本発明の研磨パッドにおいては、クッション層は研磨層より柔らかいものを用いることが好ましい。
前記クッション層としては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布などの繊維不織布やポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。
また、予めRIM用金型内の所定位置に光透過領域を設けておくことにより、研磨層、高弾性層及び光透過領域が一体成形された研磨パッドを製造することができる。該製造方法によると、別途、研磨層及び高弾性層内に貫通孔を形成し、該貫通孔内に光透過領域を貼り合わせ等により設ける工程を省略することができるため製造効率の観点で好ましい。また、貫通孔内に光透過領域を貼り合わせ等により設けた場合には、隙間から研磨スラリーが裏面側に漏れ出すという問題があるが、上記製造方法によると研磨層を光透過領域に自己接着させることができ、両領域の隙間を完全に塞ぐことができる。それにより、上記スラリー漏れの問題を容易に解決することができる。ただし、従来の方法と同様に、研磨層及び高弾性層内に貫通孔を形成し、該貫通孔内に光透過領域を貼り合わせ等により設けてもよい。
研磨層の比重は、0.2〜1.0であることが好ましい。比重が0.2未満の場合、研磨層の表面強度が低下し、被研磨材のプラナリティが低下する傾向にある。また、1.0より大きい場合は、研磨層表面の気泡数が少なくなり、プラナリティは良好であるが、研磨速度が低下する傾向にある。
研磨層の硬度は、アスカーD硬度計にて、30〜80度であることが好ましい。アスカーD硬度が30度未満の場合には、被研磨材のプラナリティが低下し、また、80度より大きい場合は、プラナリティは良好であるが、被研磨材のユニフォーミティ(均一性)が低下する傾向にある。
研磨層の弾性率は、200〜400MPaであることが好ましく、より好ましくは250〜350MPaである。また、高弾性層の弾性率は、研磨層の弾性率よりも10MPa以上大きいことが必要であり、100MPa以上大きいことが好ましく、200MPa以上大きいことがより好ましい。
反応射出成形法で研磨層を作製する場合、研磨層の比重、硬度及び弾性率は、原料の選択、非反応性気体の溶解量、RIM用金型内へのポリウレタン組成物の注入速度、RIM用金型内の圧力等を調整することにより目的の範囲に調整することができる。また、高弾性層の弾性率は、原料の選択等より目的の範囲に調整することができる。
研磨層と高弾性層の合計厚みは特に限定されるものではないが、通常0.8〜4mm程度であり、1〜2.5mmであることが好ましい。
また、高弾性層の底部と研磨層の厚さの比は、5:95〜60:40(前者:後者)であることが好ましく、より好ましくは30:70〜45:55である。
研磨層の大きさは使用する研磨装置に応じて適宜調整することができるが、通常直径50〜200cm程度である。
また、高弾性層の壁部4の幅は、研磨パッドの半径の0.2〜5%であることが好ましく、より好ましくは1〜4%である。
研磨層の被研磨材と接触する研磨表面には、スラリーを保持・更新する表面形状を有することが好ましい。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、更なるスラリーの保持性とスラリーの更新を効率よく行うため、また被研磨材との吸着による被研磨材の破壊を防ぐためにも、研磨表面に凹凸構造を有することが好ましい。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
前記凹凸構造の作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、所定サイズのバイトのような治具を用い機械切削する方法、所定の表面形状を有したプレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー光による作製方法などが挙げられる。また、凹凸構造を有するRIM用金型を用いて、研磨層の作製と同時にその表面に凹凸構造を形成してもよい。
本発明の研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。該両面テープとしては、基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものを用いることができる。基材としては、例えば不織布やフィルム等が挙げられる。研磨パッドの使用後のプラテンからの剥離を考慮すれば、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。
半導体デバイスは、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を経て製造される。半導体ウエハとは、一般にシリコンウエハ上に配線金属及び酸化膜を積層したものである。半導体ウエハの研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図2に示すように研磨パッド1を支持する研磨定盤6と、半導体ウエハ7を支持する支持台(ポリシングヘッド)8とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤9の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤6に装着される。研磨定盤6と支持台8とは、それぞれに支持された研磨パッド1と半導体ウエハ7が対向するように配置され、それぞれに回転軸10、11を備えている。また、支持台8側には、半導体ウエハ7を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤6と支持台8とを回転させつつ半導体ウエハ7を研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。
これにより半導体ウエハ7の表面の突出した部分が除去されて平坦状に研磨される。その後、ダイシング、ボンディング、パッケージング等することにより半導体デバイスが製造される。半導体デバイスは、演算処理装置やメモリー等に用いられる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[測定、評価方法]
(平均気泡径及び平均気泡数の測定)
作製した研磨層を厚み1mm以下になるべく薄くミクロトームカッターで平行に切り出したものを測定用試料とした。試料表面を走査型電子顕微鏡(日立サイエンスシステムズ社製、S−3500N)で100倍にて撮影した。そして、画像解析ソフト(MITANIコーポレーション社製、WIN−ROOF)を用いて、任意範囲の全気泡の円相当径を測定し、その測定値から平均気泡径を算出した。また、任意範囲の平均気泡数(個/mm)も測定した。
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製した研磨層及び高弾性層を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものを比重測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
(硬度の測定)
JIS K6253−1997に準拠して行った。作製した研磨層を2cm×2cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものを硬度測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、試料を重ね合わせ、厚み6mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーD型硬度計)を用い、硬度を測定した。
(弾性率の測定)
作製した研磨層及び高弾性層を3mm×40mmの短冊状(厚み;1mm)に切り出したものを弾性率測定用試料とした。切り出した後の各試料の正確な幅および厚みの計測は、マイクロメータにて行った。弾性率測定装置(UBM社製、レオゲルE4000)を用いて40℃での弾性率を測定した。その際の測定条件を下記に示す。
<測定条件>
引張モード
開始温度:26℃
昇温速度:2℃/min
終了温度:46℃
歪制御:75μm
周波数:1Hz
(研磨特性の評価)
研磨装置としてSPP600S(岡本工作機械社製)を用い、作製した研磨パッドを用いて、研磨速度の評価を行った。初期研磨速度は、8インチのシリコンウエハに熱酸化膜を1μm製膜したものを、1枚だけ約0.5μm研磨して、このときの時間から算出した。また、同様の方法で研磨を繰り返し、100枚目の研磨速度を測定した。酸化膜の膜厚測定には、干渉式膜厚測定装置(大塚電子社製)を用いた。研磨条件としては、スラリーとして、シリカスラリー(SS12 キャボット社製)を研磨中に流量150ml/min添加した。研磨荷重としては350g/cm、研磨定盤回転数35rpm、ウエハ回転数30rpmとした。
また、平坦性の評価は、8インチシリコンウエハに熱酸化膜を0.5μm堆積させた後、L/S(ライン・アンド・スペース)=25μm/5μm及び、L/S=5μm/25μmのパターンニングを行い、さらに酸化膜(TEOS)を1μm堆積させて、初期段差0.5μmのパターン付きウエハを製作した。このウエハを上述研磨条件にて研磨を行って、グローバル段差が2000Å以下になる時の、25μmスペースの底部分の削れ量を測定することで評価した。平坦性は値が小さいほど優れていると言える。
(ドレス速度の測定)
作製した研磨パッドの表面をダイヤモンドドレッサー(旭ダイヤモンド社製、Mタイプ#100、20cmψ円形)を用いて回転させながら均一にドレッシングした。この時のドレッサー荷重は450g/cm、研磨定盤回転数は30rpm、ドレッサー回転数は15rpm、ドレス時間は100minとした。そして、ドレス前後の研磨パッドの厚さからドレス速度を算出した。
(研磨パッドの伸び率の測定)
作製した研磨パッドの研磨操作前の直径をデジタルノギスで正確に測定した。上記条件で100枚目のウエハを研磨した後の研磨パッドの直径をデジタルノギスで正確に測定した。なお、研磨操作前後において同じ箇所の直径を測定した。そして、測定値を下記式に代入して伸び率を算出した。
伸び率(%)=〔(研磨操作後の直径−研磨操作前の直径)/研磨操作前の直径〕×100
実施例1
反応容器にポリエーテル系イソシアネート末端プレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL−325、NCO濃度:2.22meq/g)100重量部及びシリコン系界面活性剤(東レダウコーニングシリコーン社製、SF2938F)3重量部を加えて混合し、80℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(イハラケミカル社製、イハラキュアミンMT)26.2重量部を添加した。該混合液を約1分間撹拌した後、パン型のオープンモールド(注型容器)へ流し込んだ。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、110℃で6時間ポストキュアを行い、ポリウレタン発泡体ブロックを得た。
バンドソータイプのスライサー(フェッケン社製)を使用して該ポリウレタン発泡体ブロックをスライスし、ポリウレタン発泡体シートを得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、厚さ1mmになるまで該シートの表面バフ処理をし、厚み精度を整えたシートとした。このバフ処理をしたシートを直径58cmの大きさで打ち抜いて研磨層を得た。
凹形状の高弾性層を形成するための空間部を設けた状態で、直径60cmのRIM用金型内に前記研磨層を配置した。そして、第1成分であるアジプレンL−325(100重量部)、及び第2成分であるイハラキュアミンMT(27.6重量部)をミキシングヘッド内で混合して高弾性層形成材料を調製した。そして、直ちに該高弾性層形成材料を前記金型内の空間部に射出し、100℃で硬化させて、前記研磨層の側面及び裏面に密着する凹形状の高弾性層(無発泡体、底部の厚さ1mm、壁部の幅1cm)を一体成形した。脱型後、研磨層の表面に直径1.6mmの貫通孔をパンチングにより均一に形成した。その後、高弾性層の片面にラミ機を使用して、両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ)を貼りつけた。更に、コロナ処理をしたクッション層(東レ社製、ポリエチレンフォーム、トーレペフ、厚み0.8mm)の表面をバフ処理し、それを前記両面テープに貼り合わせた。さらに、クッション層の他面に両面テープを貼り合わせて研磨パッドを作製した。
実施例2
アジプレンL−325(100重量部)及びSF2938F(3重量部)を含む第1成分に空気を40℃及び0.6MPaの条件で溶解させた。該第1成分100重量部と第2成分である予め120℃で溶融したイハラキュアミンMT(26.2重量部)とをミキシングヘッド内で高圧衝突により混合してポリウレタン組成物(空気含有量20重量%)を調製した。そして、直ちに該ポリウレタン組成物をRIM用金型(直径58cm、厚さ1mm)内に射出した。そして、金型内圧0.3MPa、温度100℃でポリウレタン組成物を反応硬化させ、該組成物中に溶解している空気をガス化させることにより、ポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体からなる研磨層(直径58cm、厚さ1mm)を作製した。その後、該研磨層を用いた以外は実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
実施例3
実施例1と同様の方法で研磨層を作製した。凹形状の高弾性層を形成するための空間部を設けた状態で、直径60cmのRIM用金型内に前記研磨層を配置した。イソシアネート末端プレポリマー(バイエル社製、Mondur PF)77重量部からなる第1成分、末端アミン変性ポリオール(三井化学ファイン社製、ジェファーミン T−5000)65重量部、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンと3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンの混合物(アルべマール社製、エタキュア100)17.5重量部、及び3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンと3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミンの混合物(アルベマール社製、エタキュア300)17.5重量部からなる第2成分をミキシングヘッド内で混合して高弾性層形成材料を調製した。そして、直ちに該高弾性層形成材料を前記金型内の空間部に射出し、70℃で硬化させて、前記研磨層の側面及び裏面に密着する凹形状の高弾性層(無発泡体、底部の厚さ1mm、壁部の幅1cm)を一体成形した。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
実施例4
第1成分であるアジプレンL−325(100重量部)、及び第2成分であるイハラキュアミンMT(27.6重量部)をミキシングヘッド内で混合して高弾性層形成材料を調製した。そして、直ちに該高弾性層形成材料を直径60cm、厚さ2mmの凹形状のRIM用金型内に射出し、100℃で硬化させて高弾性層(無発泡体、底部の厚さ1mm、壁部の幅1cm)を作製した。
アジプレンL−325(100重量部)及びSF2938F(3重量部)を含む第1成分に空気を40℃及び0.6MPaの条件で溶解させた。該第1成分100重量部と第2成分である予め120℃で溶融したイハラキュアミンMT(26.2重量部)とをミキシングヘッド内で高圧衝突により混合してポリウレタン組成物(空気含有量20重量%)を調製した。そして、直ちに該ポリウレタン組成物をRIM用金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出した。そして、金型内圧0.3MPa、温度100℃でポリウレタン組成物を反応硬化させ、該組成物中に溶解している空気をガス化させることによりポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体からなる研磨層(直径58cm、厚さ1mm)を一体成形した。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
実施例5
実施例3と同様の材料をミキシングヘッド内で混合して高弾性層形成材料を調製した。そして、直ちに該高弾性層形成材料を直径60cm、厚さ2mmの凹形状のRIM用金型内に射出し、70℃で硬化させて高弾性層(無発泡体、底部の厚さ1mm、壁部の幅1cm)を作製した。
原料タンクAに第1成分としてイソシアネート末端プレポリマー(バイエル社製、Mondur PF)を入れて60℃に温度調節した。また、原料タンクBに第2成分として末端アミン変性ポリオール(三井化学ファイン社製、ジェファーミン T−5000)80重量部、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンと3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンの混合物(アルべマール社製、エタキュア100)20重量部、及びシリコン系界面活性剤(東レダウコーニングシリコーン社製、SF−2938F)3重量部を入れて60℃に温度調節した。液体−気体混合ユニットで前記第1成分54重量部と超臨界状態の窒素0.1重量部とを混合し、また前記第2成分103重量部と超臨界状態の窒素0.15重量部とを混合し、その後両成分をミキシングヘッド内で高圧衝突により混合してポリウレタン組成物を調製した。そして、直ちに該ポリウレタン組成物をRIM用金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出した。そして、金型内圧0.3MPa、温度100℃でポリウレタン組成物を反応硬化させ、該組成物中に溶解している窒素をガス化させることによりポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体からなる研磨層(直径58cm、厚さ1mm)を一体成形した。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
比較例1
実施例1と同様の方法で研磨層(直径60cm、厚さ2mm)を作製した。研磨層の表面に直径1.6mmの貫通孔をパンチングにより均一に形成した。その後、研磨層の裏面にラミ機を使用して、両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ)を貼りつけた。更に、コロナ処理をしたクッション層(東レ社製、ポリエチレンフォーム、トーレペフ、厚み0.8mm)の表面をバフ処理し、それを前記両面テープに貼り合わせた。さらに、クッション層の他面に両面テープを貼り合わせて研磨パッドを作製した。
比較例2
反応容器にアジプレンL−325(100重量部)、トルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)20重量部、及びSF2938F(3重量部)を加えて混合し、80℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融したイハラキュアミンMT(47重量部)を添加した。該混合液を約1分間撹拌した後、パン型のオープンモールドへ流し込んだ。撹拌時に反応の進行により混合物が増粘し、空気の巻き込みが多かった。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、110℃で6時間ポストキュアを行い、ポリウレタン発泡体ブロックを得た。その後、実施例1と同様の方法で研磨層を作製した。そして、該研磨層を用いた以外は比較例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
Figure 0005013447
本発明の研磨パッドは、研磨層の周囲を高弾性層が囲んだ特殊な構造をしている。該特殊構造により、研磨速度及び耐磨耗性を低下させることなくパッド全体の剛性を高くすることができ、平坦化特性を向上させることができる。また、本発明の研磨パッドは使用後の伸びが非常に小さく、研磨時の研磨層の変形を抑制することができるため平坦化特性及び研磨安定性に優れている。
本発明の研磨パッドの構造を示す概略図 CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略構成図
符号の説明
1:研磨パッド
2:研磨層
3:高弾性層
4:壁部
5:底部
6:研磨定盤
7:被研磨材(半導体ウエハ)
8:支持台(ポリシングヘッド)
9:研磨剤(スラリー)
10、11:回転軸

Claims (17)

  1. 凹形状の高弾性層の凹内に、ポリウレタン発泡体からなる研磨層が密着状態で設けられ、
    前記研磨層の側面全面及び裏面全面が前記高弾性層によって囲まれており、
    前記高弾性層は無発泡体であり、かつ前記高弾性層の弾性率は研磨層の弾性率よりも10MPa以上大きいことを特徴とする研磨パッド。
  2. 前記凹形状の高弾性層は、研磨に使用しないことを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 前記凹形状の高弾性層は、ポリウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨パッド。
  4. 前記凹形状の高弾性層のポリウレタン樹脂は、研磨層のポリウレタン発泡体に用いられるポリウレタン樹脂と同種の原料からなることを特徴とする請求項3に記載の研磨パッド。
  5. 高弾性層の底部と研磨層の厚さの比が、5:95〜60:40(前者:後者)である請求項1〜4のいずれかに記載の研磨パッド。
  6. 高弾性層の壁部の幅が、研磨パッドの半径の0.2〜5%である請求項1〜5のいずれかに記載の研磨パッド。
  7. 研磨層の弾性率が200〜400MPaである請求項1〜6のいずれかに記載の研磨パッド。
  8. 凹形状の高弾性層を形成するための空間部を設けた状態で金型内に研磨層を配置する工程、及び反応射出成形法により高弾性層形成材料を前記金型内の空間部に射出し硬化させて、前記研磨層の側面全面及び裏面全面に密着する凹形状の高弾性層を一体形成する工程を含む研磨パッドの製造方法。
  9. 反応射出成形法により高弾性層形成材料を金型内に射出し硬化させて、凹形状の高弾性層を形成する工程、イソシアネート成分を含む第1成分及び/又は活性水素基含有化合物を含む第2成分に非反応性気体を加圧下で溶解させる工程、前記第1成分及び第2成分を混合したポリウレタン組成物を、反応射出成形法により金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出し発泡硬化させて研磨層の側面全面及び裏面全面を前記凹形状の高弾性層に密着させて一体形成する工程を含む研磨パッドの製造方法。
  10. 凹形状の高弾性層を金型内に配置する工程、イソシアネート成分を含む第1成分及び/又は活性水素基含有化合物を含む第2成分に非反応性気体を加圧下で溶解させる工程、前記第1成分及び第2成分を混合したポリウレタン組成物を、反応射出成形法により金型内に設けた前記高弾性層の凹内に射出し発泡硬化させて研磨層の側面全面及び裏面全面を前記凹形状の高弾性層に密着させて一体形成する工程を含む研磨パッドの製造方法。
  11. ポリウレタン組成物は、非反応性気体を0.01〜1重量%含有する請求項9又は10記載の研磨パッドの製造方法。
  12. 非反応性気体は、窒素及び/又は二酸化炭素である請求項9〜11のいずれかに記載の研磨パッドの製造方法。
  13. 非反応性気体を超臨界状態にして第1成分及び/又は第2成分中に溶解させる請求項9〜12のいずれかに記載の研磨パッドの製造方法。
  14. ポリウレタン組成物は、シリコン系界面活性剤を0.05〜10重量%含有する請求項9〜13のいずれかに記載の研磨パッドの製造方法。
  15. 請求項8〜14のいずれかに記載の方法によって製造される研磨パッド。
  16. 研磨層は、平均気泡径が5〜60μmであり、平均気泡数が100〜2000個/mmである請求項15記載の研磨パッド。
  17. 請求項1〜7、15及び16のいずれかに記載の研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法。
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