JP5007562B2 - 時計用文字板の製造方法、時計用文字板および時計 - Google Patents
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Description
このような指標の形成方法としては、広く、印刷が用いられている。
ところで、時計用文字板は、実用品としての機能(例えば、使用者等に、時刻を容易かつ正確に認識させる機能等)が求められるとともに、装飾品としての美的外観も求められる。
このため、開口部を設けた基板(文字板本体)に、植字と称される植設材を取り付け固定することにより、印刷に比べて、より立体感のある指標を形成する方法が、特に、高級時計等で採用されている(例えば、特許文献1参照)。
また、植設材を作製する際に、固定用の足部を作る必要があるために、高さに制限がある。すなわち、植設材においては、一般に、鍛造加工または塑性加工により足を作るため、アスペクト比に限界があり、植設材(指標)の高さに制限が生じる。
また、上記のように植設材を取り付け固定した時計用文字板では、植設材の基板への固定力が十分ではないため、植設材の幅や高さ、重量に制限があり、高さのある植設材(指標)を用いることができず、高級感の表出や立体的な表現ができない等、デザインの面で制約があり、装飾性(美的外観)に優れたものとするのが困難であった。
しかしながら、基板がプラスチックで構成されたものである場合、金属製の基板を用いた場合等に比べて、上記のような植設材(指標)との密着性はさらに低くなり、上記のような問題がより顕著になる。
本発明の時計用文字板の製造方法は、光透過性を有するプラスチック製の基材に、指標部材の一部が埋設されてなる時計用文字板の製造方法であって、
成形型の所定の部位に前記指標部材を設置する指標部材設置工程と、
前記指標部材が設置された前記成形型に、流動性を有する樹脂材料を付与する樹脂材料付与工程と、
前記樹脂材料を固化させ、前記指標部材が埋設された前記基材を得る固化工程と、
前記基材についての、前記指標部材の一部が突出している側の面である第1の面とは反対の面である第2の面側に、金属材料で構成された被膜を形成する被膜形成工程とを有し、
前記指標部材は、前記基材中に埋設される部分に凹部を有するものであることを特徴とする。
これにより、プラスチック製の基材に指標部材が強固に固定され、立体感のある美的外観に優れた時計用文字板を容易かつ確実に製造することができる製造方法を提供することができる。
前記成形型は、前記樹脂材料と接触する部分の少なくとも一部に、リン酸エステルによる離型処理が施されたものであることが好ましい。
本発明の時計用文字板の製造方法では、前記指標部材は、前記凹部として、前記基材の前記第1の面から前記第2の面側に向かって、その幅が漸減する部分を有するものであることが好ましい。
本発明の時計用文字板の製造方法では、前記時計用文字板は、太陽電池を備えたソーラー時計用の文字板であり、
前記被膜を、開口部を有するものとして形成することが好ましい。
これにより、被膜による外観上の効果を発揮させつつ、外部から入射した光(基材の第1の面側から入射した光)を、十分に透過させることができ、ソーラー時計(太陽電池を備えた時計)に好適に適用することができる。
本発明の時計用文字板の製造方法では、前記被膜形成工程は、前記被膜が有すべき前記開口部に対応するパターンで開口部が設けられたマスクを、前記基材の前記第2の面に密着させた状態で気相成膜を行うものであることが好ましい。
これにより、光定数を削減することができ、時計用文字板の生産性を向上させることができ、また、用いるマスクの開口部に対応する形状、パターン(反転したパターン)の開口部を容易かつ確実に形成することができ、また、マスクを複数個の時計用文字板の製造に繰り返し用いることにより、製造される時計用文字板の個体間での品質のばらつきを抑制することができ、時計用文字板の品質の安定性を向上させることができ、また、化学的方法(化学的処理)、物理的方法(物理的処理)により開口部を形成する必要がないため、不本意な凹凸のない被膜を好適に形成することができ、また、形成すべき開口部に対応するパターン(反転したパターン)の開口部を有するマスクを用意することにより、被膜の形成条件を大きく変更することなく、多様なパターンの開口部を有する被膜を形成することができるため、時計用文字板の多品種生産にも好適に対応することができる。
本発明の時計用文字板の製造方法では、前記被膜形成工程は、前記マスクとして、磁性材料を含む材料で構成されたものを用い、前記基材の前記マスクに対向する面とは反対の面である前記第1の面側に磁石を配した状態で行うものであることが好ましい。
これにより、マスクと、被膜が形成されるべきワークとしての基材(基材と指標部材との一体成形品)とを、確実に密着させることができ、基材上において、目的以外の部位に被膜が形成されるのをより確実に防止することができ、最終的に得られる時計用文字板の美的外観を確実に優れたものとすることができ、製造される時計用文字板の信頼性を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板の製造方法では、前記被膜形成工程は、前記基材と気相成膜源とを相対的に移動(変位)させつつ気相成膜を行うものであることが好ましい。
これにより、好適な形状の被膜を、容易かつ確実に形成することができ、得られる時計用文字板についての美的外観を特に優れたものとすることができ、また、時計用文字板を、様々な方向から見た際における質感のばらつき等がより効果的に抑制されたものとして得ることができる。
これにより、プラスチック製の基材に指標部材が強固に固定され、立体感のある美的外観に優れた時計用文字板を提供することができる。
本発明の時計は、本発明の時計用文字板を備えたことを特徴とする。
これにより美的外観、耐久性に優れた時計を提供することができる。
まず、本発明の時計用文字板の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の時計用文字板の好適な実施形態を示す平面図、図2は、図1に示す時計用文字板の断面図、図3は、図1に示す時計用文字板において用いられる指標部材の一例を示す斜視図、図4は、被膜が有する開口部の形状(パターン)の一例を説明するための模式的な平面図、図5は、被膜が有する開口部の形状(パターン)の他の一例を説明するための模式的な平面図である。
時計用文字板1は、例えば、太陽電池を備えたソーラー時計に用いられるものである。
図1および図2に示すように、本実施形態の時計用文字板1は、基材2と、基材2の一方の主面である第1の面21上に配された指標部材3と、基材2の第1の面21とは反対側の主面である第2の面22上に形成された被膜4とを備えている。
基材2は、主としてプラスチック材料で構成されたものである。
プラスチック材料は、一般に、軽量で、優れた成形性、加工性を有している。このため、比較的軽量で携帯しやすい時計用文字板1を提供することができる。また、複雑な形状の時計用文字板1であっても容易かつ確実に提供することができる。また、プラスチック材料は、一般に、優れた電磁波透過性(光透過性、電波透過性等)を有しているため、プラスチック材料で構成された基材2を備えた時計用文字板1は、太陽電池を備えたソーラー時計や電波時計、ソーラー電波時計等に好適に適用することができる。
なお、基材2は、プラスチック材料以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、着色剤(各種発色剤、蛍光物質、りん光物質等を含む)、光沢剤、フィラー等が挙げられる。
また、基材2の形状、大きさは、特に限定されず、通常、時計用文字板1の形状、大きさに基づいて決定される。なお、図示の構成では、基材(基板)2は、平板状をなすものであるが、例えば、湾曲板状等をなすものであってもよい。
基材2の色は、特に限定されず、いかなるものであってもよいが、基材2が白色のものまたは実質的に透明のもの(例えば、可視光領域の光の透過率が90%以上のもの)である場合、時計用文字板1の美的外観(特に、時計100に適用した際の美的外観)を特に優れたものとすることができ、時計用文字板1、時計100をより優れた高級感を備えたものとすることができる。また、基材2が実質的に透明のもの(より具体的には、可視光領域の光の透過率が90%以上のもの)である場合、時計用文字板1としての光の透過率をより高くすることができ、後述するようなソーラー時計(ソーラー電波時計)に好適に適用することができ、また、ソーラー時計が備える太陽電池の小型化等にも寄与することができる。
指標部材3は、基材2中に埋設される埋設部31と、基材2の第1の面21側(外表面側、図2中上側)に露出した表示部32とを備えている。表示部32は、外部から視認可能になっており、指標として機能する部位である。
指標部材3としては、例えば、時刻を示す等の機能を有する文字・数字(いわゆる時字等)、目盛、記号や、各種マーク等が挙げられる。
この指標部材3は、その一部が、基材2中に埋設されることにより、基材2に固定されるが、本発明では、後述するように、基材を成形する際に、当該基材に指標部材を埋設させる。これにより、簡単かつ強固に基材に指標部材を固定することができる。その結果、時計用文字板は、耐久性に優れたものとなり、比較的大きな外力(衝撃力)が加わった場合であっても、指標部材(指標)が基材から脱落するのを効果的に防止することができる。また、指標部材の基材中への固定力が優れたものとなるため、指標部材の重さや高さの制限も緩和される。すなわち、指標部材の高さ(表示部の高さ)が比較的高い場合であっても、指標部材(指標)が基材から脱落するのを確実に防止することができる。これにより、より立体感(高さ)のある表現が可能となり、デザインの幅が広がり装飾性(美的外観)に優れた時計用文字板を提供することができる。
指標部材3を構成する金属材料としては、各種金属(合金を含む)を用いることができ、好ましくは、Fe、Cu、Zn、Ni、Mg、Cr、Mn、Mo、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、Ag、Co、In、W、Ti、Rh、Ir、Os、Re、Hfや、これらのうち少なくとも1種を含む合金が挙げられる。指標部材3は、上記のような材料の中でも特に、Ag、Cr、Au、Al、Ti、Sn、In、Zn、Cu、Pt、W、Ir、Os、Reから選択される少なくとも1種を含む材料(合金を含む)で構成されたものであるのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、Au、Pt、W、Ir、Os、Re等のように比重の高い材料は、従来の植設材では、その重量が大きくなりすぎ、基板との密着性を保持するのが困難となり、比較的高さの高い指標に適用するのが困難であったが、本発明によれば、このような材料で構成された指標部材を用いても、時計用文字板の耐久性を十分に優れたものとすることができる。
また、指標部材3の表面(少なくとも表示部32の表面)には、例えば、めっき等の表面処理が施されていてもよい。これにより、より装飾性に優れ、高級感のある時計用文字板1とすることができる。
すなわち、指標部材3の幅(表示部32の幅)wは、例えば、0.1〜3.0mmであるのが好ましく、0.2〜2.5mmであるのがより好ましい。指標部材3の幅(表示部32の幅)wが前記範囲内の値であると、時計用文字板1の耐久性(基材2と指標部材3との密着性)を十分に優れたものとしつつ、一般に、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、本発明によれば、従来の植設材を用いた方法では、実現が困難であった、上記のような幅の比較的小さい指標であっても、時計用文字板の耐久性を十分に優れたものとして、好適に形成することができる。したがって、指標部材3の幅(表示部32の幅)wが前記範囲内の値であると、本発明の効果がより顕著に発揮される。
また、表示部32の高さh2は、例えば、100〜700μmであるのが好ましく、150〜600μmであるのがより好ましい。表示部32の高さh2が前記範囲内の値であると、時計用文字板1の耐久性(基材2と指標部材3との密着性)を十分に優れたものとしつつ、一般に、時計用文字板1を、立体感があり特に優れた美的外観を有するものとすることができる。また、本発明によれば、従来の植設材を用いた方法では、実現が困難であった、上記のような高さの比較的高い指標であっても、時計用文字板の耐久性を十分に優れたものとして、好適に形成することができる。したがって、表示部32の高さh2が前記範囲内の値であると、本発明の効果がより顕著に発揮される。
基材2の第2の面22側(内表面側、図2中下側)には、被膜4が設けられている。
このような被膜4を有することにより、例えば、時計用文字板1全体として、被膜4の色調に応じた外観を呈することができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
このような酸化物層を有する場合、酸化物層を構成する金属酸化物は、被膜4を構成する金属材料と、共通の金属元素を含む組成を有するものであるのが好ましい。これにより、被膜4との密着性をさらに優れたものとすることができる。
次に、上述した時計用文字板の製造方法について説明する。
本発明では、基材を成形する際に、指標部材を成形型内に設置した状態とすることにより、指標部材の一部を基材に埋設することを特徴とする。言い換えると、本発明では、基材を指標部材と一体的に形成することを特徴とする。これにより、簡単かつ強固に指標部材を基材に固定することができる。その結果、時計用文字板は、耐久性に優れたものとなり、比較的大きな外力(衝撃力)が加わった場合であっても、指標部材(指標)が基材から脱落するのを効果的に防止することができる。また、指標部材の基材中への固定力が優れたものとなるため、指標部材の重さや高さの制限も緩和される。すなわち、指標部材の高さ(表示部の高さ)が比較的高い場合であっても、指標部材(指標)が基材から脱落するのを確実に防止することができる。これにより、より立体感(高さ)のある表現が可能となり、デザインの幅が広がり装飾性(美的外観)に優れた時計用文字板を提供することができる。また、本発明によれば、時計用文字板の生産性も向上する。
その結果、本発明では、指標部材において立体的な表現等、多様なデザイン表現が可能となり、高級感のある模様、質感、色調のバリエーション創出と選択自由度の幅が広がる。
図6は、本発明の時計用文字板の製造において用いられる、成形装置の一例を示す断面図であり、成形型を開いた状態を示す図、図7は、図6に示す成形装置において、成形型を閉じた状態を示す断面図である。また、図8は、成形型内に注入された樹脂材料の流れを模式的に示す平面図であり、図9は、図6、図7に示す成形装置を用いて製造された成形品(指標部材と一体成形された基材)を示す断面図、図10は、被膜を形成する際の気相成膜粒子の進行方向を説明するための図である。
成形装置6は、成形型7と、成形型7に溶融した樹脂材料23を供給するための樹脂供給手段9から構成される。
成形型7は、枠体82と蓋体81とからなるボックス8内に配設されている。詳しくは、枠体82には成形型7の下型72が固定され、蓋体81には成形型7の上型71が固定されている。また、蓋体81における枠体82との接合部にはシール部材811が配設されている。
ゲート92は、指標部材3よりも高い位置である、上型71の型部711の中央に設けられる。
さらに、上型71には、排出孔712が設けられており、該排出孔712により型部711、721がボックス8内の中空部83に連通される。
そして、図7に示すように、成形型7を閉じた状態で、予め定められた成形条件で、ランナ91を介してゲート92から周知の方法で溶融した樹脂材料23を型部711、721内に注入して充填させ、充填した樹脂材料23を固化させた後、これを取り出すことで成形品(指標部材3と一体成形された基材2)が得られる。
[離型剤付与工程(離型処理工程)]
まず、成形型7の表面に離型剤を付与する。
成形型7内に樹脂材料23を付与するに先立ち、成形型7(型部711、721)の、樹脂材料23と接触する部分の少なくとも一部に、離型剤を付与する(離型処理)。これにより、樹脂の硬化後において、成形品(指標部材3と一体成形された基材2)の型離れおよび取り出しを容易に行うことができる。
リン酸エステルとしては、例えば、下記一般式で表されるモノエステル、ジエステル、トリエステルから選ばれる1種以上のリン酸エステルを用いることができる。
シリコン系離型剤としては、疎水基がメチルポリシロキサン、親水基がポリアルキレンオキサイドから構成されるノニオンタイプが好ましい。具体例としては、日本ユニカー(株)製のLシリーズ、Yシリーズ、FZシリーズ等が挙げられる。
また、成形型7に離型剤供給口を設け、この離型剤供給口から成形型7内に離型剤を注入してもよい。この場合、成形型7に離型剤を供給する前に、もしくは、離型剤を供給すると同時に、排気口(排出孔712)を介して排気することにより、成形型7内を減圧するのが好ましい。これにより、排気することによって排気流が生じた場合には離型剤を排気口側へ引き込むことができるとともに、成形型7の内部が減圧されることによって離型剤が供給口から離れた場所まで到達しやすくなり、離型剤を成形型7の内壁のより広い範囲に付与することができる。
また、例えば、成形型7としては、樹脂材料23と接触する部分の少なくとも一部に、ダイヤモンド状炭素で構成された被膜を有するものを用いてもよい。これにより、成形品の離型性を向上させることができるとともに、成形型7の耐久性を特に優れたものとすることができる。
後述する樹脂材料付与工程に先立ち、指標部材3の基材2に埋設されるべき部分(樹脂材料23と接触する部分)の少なくとも一部に接着剤を付与する。これにより、指標部材3の基材2への固定力をさらに優れたものとすることができる。
本工程は、例えば、鋳造、鍛造、プレス、電鋳、切削等の方法によって所定形状に成形した指標部材3の表面に、接着剤を付与することにより行うことができる。
接着剤の付与方法としては、例えば、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗り等が挙げられる。
次に、成形型7の所定の部位に指標部材3を設置する。
成形型7において、下型72の型部721には、指標部材3が対応する所定の位置に固定用の凹部722が形成されており、当該凹部722に指標部材3を嵌め込むことにより設置する。
また、本工程で成形型7に設置される指標部材3は、基材2に埋設されるべきでない部分(表示部32)の少なくとも一部に離型処理が施されたものであるのが好ましい。これにより、指標部材3において、不本意な部位(表示部32)に樹脂材料23が付着するのを効果的に防止することができる。その結果、得られる時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。指標部材3に対する離型処理としては、上記離型剤付与工程で例示したような離型剤の付与や、フッ素系樹脂等で構成された被膜の形成、ダイヤモンド状炭素で構成された被膜の形成等が挙げられる。
次に、成形型7に流動性を有する樹脂材料23を付与する(樹脂材料付与工程)。
具体的には、図7に示すように成形型7を閉じた状態で、予め定められた成形条件で、ランナ91を介してゲート92から溶融した樹脂材料23を成形型7(型部711、721)内に注入して充填させる。
また、本工程における成形型7の温度は、特に限定されないが、例えば、樹脂材料23の融点をTm[℃]としたとき、Tm+〜(Tm+200)[℃]であるのが好ましく、(Tm+50)〜(Tm+150)[℃]であるのがより好ましい。成形型7の温度を前記範囲内の値とすることにより、樹脂材料23の不本意な変性等を防止しつつ、基材2の成形性を特に優れたものとし、時計用文字板1の生産性を特に優れたものとすることができる。また、成形時におけるエネルギー効率も良好なものとすることができる。
減圧時における成形型7内の圧力(型部711および型部721により形成された空間の圧力)は、特に限定されないが、1×101〜1×104Paであるのが好ましい。成形型7内の圧力を前記範囲内の値とするにより、より確実に、成形型7内に樹脂材料23を行き渡らせることができ、所望の形状の基材2をより確実に成形することが可能となる。これに対し、真空度が前記下限値未満であると、樹脂材料23が、減圧用配管(排出孔712)の空間内へ入り込んでしまう可能性がある。一方、真空度が前記上限値を超えると、成形型7内に樹脂材料23を十分に行き渡らせることが困難となり、所望の形状の基材2を確実に成形することが困難になる。
その後、樹脂材料23を固化(ただし、硬化(重合)を含む)させる。
樹脂材料23が熱可塑性樹脂で構成されたものである場合には、通常、成形型7内に付与された樹脂材料23を冷却(放熱)することにより、樹脂材料23を固化させる。
また、樹脂材料23が熱可塑性樹脂で構成されたものである場合には、通常、冷却前に、加熱等の処理を施す。
その後、必要に応じて洗浄や研磨等の処理を施してもよい。
次に、上記のようにして得られた成形品(指標部材3と一体成形された基材2)の第2の面22に、被膜4を形成する。これにより、時計用文字板1が得られる。
被膜4の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法(気相成膜法)が好ましい。被膜4の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた被膜4を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる時計用文字板1の審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、被膜4の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、形成すべき被膜4が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、例えば、得られる時計用文字板1の耐久性を十分に高いものとしつつ、時計用文字板1の電磁波の透過性を向上させることができる。したがって、得られる時計用文字板1をソーラー時計に、より好適に適用することができる。
開口部41は、上記のような方法により、一旦形成された被膜に対して設けるものであってもよいが、被膜4の形成(成膜)とともに設けられるものであってもよい。
すなわち、形成すべき開口部41に対応するパターン(反転したパターン)で開口部が設けられたマスクを、基材2の第2の面22に密着させた状態で、気相成膜を行うことにより、被膜4の形成(成膜)とともに開口部41を形成することができる。このようにして、開口部41を有する被膜4を形成することにより、光定数を削減することができ、時計用文字板1の生産性を向上させることができる。また、用いるマスクの開口部に対応する形状、パターン(反転したパターン)の開口部41を容易かつ確実に形成することができる。また、マスクを複数個の時計用文字板1の製造に繰り返し用いることにより、製造される時計用文字板1の個体間での品質のばらつきを抑制することができる。このようなことから、時計用文字板1の品質の安定性を向上させることができる。また、化学的方法(化学的処理)、物理的方法(物理的処理)により開口部を形成する必要がないため、不本意な凹凸のない被膜4を好適に形成することができる。また、形成すべき開口部41に対応するパターン(反転したパターン)の開口部を有するマスクを用意することにより、被膜の形成条件を大きく変更することなく、多様なパターンの開口部41を有する被膜4を形成することができる。これにより、時計用文字板の多品種生産にも好適に対応することができる。
また、マスクは、表面層を有するものであってもよい。これにより、例えば、マスクの耐久性を特に優れたものとすることができたり、気相成膜時に、マスク上に被膜4の構成材料が強固に付着するのを効果的に防止することができる。このような表面層を構成する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ダイヤモンド様炭素(DLC)等が挙げられる。
また、気相成膜粒子は一方向からだけではなく、基材2に対し複数の方向から入射させるのが好ましい。これにより、好適な形状の被膜4を、容易かつ確実に形成することができ、得られる時計用文字板1についての美的外観を特に優れたものとすることができる。また、時計用文字板1を、様々な方向から見た際における質感のばらつき等がより効果的に抑制されたものとして得ることができる。
図10に示す構成では、基材2の主面の法線と軸50の長手方向とのなす角が、所定の角度θを維持するように、基材2を、軸50上でこまのように回転させる構成になっている。言い換えると、図10に示す構成では、軸50の延長線が基材2の表面(入射面)に接触する部位における基材2の主面の法線が、軸50を中心とした円錐の周面を形成するように、基材2が回転する。このような構成であることにより、例えば、気相成膜粒子の入射方向に対して、基材2の主面の法線が角度θだけ傾斜した状態を維持しつつ、気相成膜粒子の入射方向を経時的に変化させることができる。これにより、好適な形状の被膜4を、容易かつ確実に形成することができ、得られる時計用文字板1についての美的外観を特に優れたものとすることができる。また、時計用文字板1を、様々な方向から見た際における質感のばらつき等がより効果的に抑制されたものとして得ることができる。
なお、角度θとしては、気相成膜源と被膜を形成すべき基材とを結ぶ直線と、基材の法線とのなす角を採用することができる。
上記のようなマスクを用いた気相成膜により被膜4を形成する場合、成膜後、マスクを除去することにより、目的とする時計用文字板1が得られる。
次に、上述したような本発明の時計用文字板1を備えた本発明の時計について説明する。
本発明の時計は、上述したような本発明の時計用文字板1を有するものである。なお、本発明の時計を構成する前記時計用文字板1(本発明の時計用文字板1)以外の部品としては、公知のものを用いることができるが、以下に、本発明の時計の構成の一例について説明する。
図11に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)100は、胴(ケース)102と、裏蓋103と、ベゼル(縁)104と、ガラス板(カバーガラス)105とを備えている。また、ケース102内には、前述したような本発明の時計用文字板1と、太陽電池11と、ムーブメント101とが収納されており、さらに、図示しない針(指針)等が収納されている。
ガラス板105は、通常、透明性の高い透明ガラスやサファイア等で構成されている。これにより、本発明の時計用文字板1の美的外観を十分に発揮させることができるとともに、太陽電池11に十分な光量の光を入射させることができる。
ムーブメント101は、太陽電池11の起電力を利用して、指針を駆動する。
また、ムーブメント101は、図示しない電波受信用のアンテナを備えている。そして、受信した電波を用いて時刻調整等を行う機能を有している。
太陽電池11は、例えば、非単結晶シリコン薄膜にp型の不純物とn型の不純物とが選択的に導入され、さらにp型の非単結晶シリコン薄膜とn型の非単結晶シリコン薄膜との間に不純物濃度の低いi型の非単結晶シリコン薄膜を備えたpin構造を有している。
胴102とベゼル104とは、プラスチックパッキン108により固定され、ベゼル104とガラス板105とはプラスチックパッキン109により固定されている。
また、胴102に対し裏蓋103が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)115には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)114が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部115が液密に封止され、防水機能が得られる。
また、上記の説明では、時計の一例として、ソーラー時計(特に、ソーラー電波時計)を挙げて説明したが、本発明は、ソーラー時計以外の時計にも同様に適用することができる。
例えば、本発明の時計用文字板の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。例えば、被膜の形成後に、研磨(ラッピング)等の後処理を施してもよい。また、基材上の指標部材が露出した面側や、被膜上にコート層を設けてもよい。これにより、例えば、光沢性、色調等を調整し、時計用文字板の美的外観をさらに優れたものにしたり、時計用文字板全体としての、耐食性、耐候性、耐水性、耐油性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐変色性等の各種特性を向上させたりすることができる。なお、このようなコート層は、例えば、時計用文字板の使用時等において除去されるものであってもよい。
また、時計用文字板の製造においては、上述した各工程の順序を入れ替えて行ってもよい。例えば、上述した実施形態では、接着剤付与工程の後に指標部材設置工程を行うものとして説明したが、指標部材設置工程の後に接着剤付与工程を行ってもよい。
また、前述した実施形態では、時計用文字板が、基材と、指標部材と、被膜とを有するものとして説明したが、本発明の時計用文字板は、このような構成のものに限定されず、例えば、被膜を備えていないものであってもよい。また、被膜は、開口部を有していないものであってもよい。
1.時計用文字板の製造
以下に示すような方法により、時計用文字板を製造した。
(実施例1)
まず、Osで構成された板材をプレス成形することにより、図3に示すような、略棒状をなし、断面が三角形状の凹部を有する、2種類の指標部材(第1の指標部材、第2の指標部材)を得た。第1の指標部材の寸法は、幅wが0.3mm、長さlが5.0mm、高さhが900μmであった。また、第2の指標部材の寸法は、幅wが0.5mm、長さlが7.0mm、高さhが900μmであった。
次に、図6、図7に示すような成形装置を用いて、ポリカーボネートからなる基材と指標部材との一体成形品を成形した。
まず、離型剤としてトリメチルホスフェートを成形型の内側に付与した。この際、予め、排気口(排出孔)を介して排気することにより成形型内を減圧しておき、その上で、離型剤供給口から成形型内に離型剤を注入した。これにより、成形型内の全面に均一に離型剤を付与することができた。
次に、下型の型部に設けられた凹部に、指標部材を設置した。
次に、成形型に流動性を有する樹脂材料(ポリカーボネート)を付与した。具体的には、溶融したポリカーボネート(融点Tm:220℃)をゲートから成形型内に注入して充填させた。このときの樹脂材料の注入圧(射出圧)は90〜100MPaであり、樹脂材料の温度は270℃、成形型の温度は300℃であった。
その後、成形型を40℃まで冷却し、成形型内に充填した樹脂材料を固化させた。樹脂の硬化後、これを取り出すことで基材と指標部材との一体成形品が得られた。このとき、成形型の表面に離型剤が付与されていたため、基材の型離れおよび取り出しを容易に行うことができた。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行い、その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
まず、洗浄済みの基材をスパッタリング装置内に取付け、その後、装置内を予熱しながら、スパッタリング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。
被膜は、所定のパターン(形成すべき被膜の開口部の反転パターン)で開口部が設けられたマスクを、酸化物層の表面に配した状態で、スパッタリングを行うことにより形成した。
マスクは、ステンレス鋼(SUS444)で構成されたものであり、その厚さは150μmであった。
また、本工程は、基材のマスクに対向する面とは反対の面側に磁石を配し、この磁石により、酸化物層が設けられた基材と、マスクとを密着させた状態で行った。
まず、装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)し、その後、アルゴンガス流量:35ml/分でアルゴンガスを導入した。このような状態で、ターゲットとしてAgを用い、投入電力:1400W、処理時間:2.0分間という条件で放電を行うことにより、Agで構成される被膜を形成した。このとき、図10に示すように、基材の主面の法線と軸の長手方向とのなす角が、15°を維持するように、基材を軸上でこまのように回転させることにより、基材の主面(被膜で被覆すべき主面)の法線方向に対して15°(角度θ)だけ傾斜した方向から、被膜の構成材料で構成された気相成膜粒子(スパッタ粒子)を基材上に入射させるようにした。このようにして形成された被膜の平均厚さは、0.20μmであった。また、このようにして形成された被膜は、図2に示すような形状、パターンの開口部を有するものであった。また、被膜が有する開口部の幅Wは47μm、開口部のピッチPは150μmであった。また、被膜を平面視したときにおける開口部の占める面積の割合(開口部の占有面積の割合)は30%であった。
なお、酸化物層、被膜およびマスクの厚さは、JIS H 5821で規定される顕微鏡断面試験方法に従い測定した。
時計用文字板の製造に用いる指標部材の構成、マスクの構成を表に示すようにするとともに、基材、酸化物層、および、被膜の構成が表に示したようになるように各工程の処理条件(用いる材料の変更を含む)を調整した以外は、前記実施例1と同様にして時計用文字板を製造した。
被膜形成工程において、基材の主面の垂線方向と、スパッタ粒子の進行方向がほぼ平行となるように、基材を固定した以外は、前記実施例7と同様にして時計用文字板を製造した。
(実施例9)
被膜形成工程においてマスクを用いなかった以外は、前記実施例8と同様にして時計用文字板を製造した。
まず、Osで構成された板材をプレス成形することにより、基材上に配されるべき表示部と、取り付け用の足部とを有する、2種類の植設材(第1の植設材、第2の植設材)を作製した。第1の植設材についての、表示部の幅(図3中のwに対応する長さ)は1.5mm、長さ(図3中のlに対応する長さ)は5.0mm、高さは570μmであった。また、第1の植設材についての、足部の長さは500μm、足部の直径(太さ)は500μmであった。また、第2の植設材についての、表示部の幅(図3中のwに対応する長さ)は2.0mm、長さ(図3中のlに対応する長さ)は7.0mm、高さは570μmであった。また、第2の植設材についての、足部の長さは500μm、足部の直径(太さ)は700μmであった。
植設材の足部を、基材に形成された孔に挿入し、植設材を挿入した面とは反対の面側から、エポキシ系接着剤を付与することにより、植設材を基材に固定した。
その後、前記実施例9と同様にして、植設材が固定された側の面とは反対側の面に酸化物層、被膜を形成し、時計用文字板を得た。
植設材の幅、足部の直径(太さ)を表に示すようにした以外は、前記比較例1と同様にして時計用文字板を製造した。
(比較例3)
まず、ポリカーボネートを用いて、圧縮成形により、直径:27mm×厚さ:0.5mmの円盤状の基材を作製した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行い、その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
このようにして洗浄を行った基材の表面に、印刷(タコ印刷)を施すことにより、前記実施例1で指標(指標部材)を設けた部位に対応する部位に、指標を形成した。指標の形成には、Ag微粒子とアクリル系樹脂とメチルエチルケトンとを含むインク(分散液)を用いた。形成された指標の厚さ(高さ)は40μmであった。また、指標の形成は、平面視したときの形状が前記実施例1で形成した指標(表示部)と同様となるようにして行った。
その後、基材の指標(印刷部)が設けられた面とは反対側の面に、前記実施例9と同様にして酸化物層、被膜を形成することにより、時計用文字板を得た。
印刷を繰り返し行うことにより、指標の厚さ(高さ)を120μmとした以外は、前記比較例3と同様にして時計用文字板を製造した。
各実施例および各比較例の時計用文字板の製造条件、時計用文字板の構成等を表1、表2にまとめて示す。なお、表中、ポリカーボネートをPCで示し、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)をABS、ポリエチレンテレフタレートをPET、アクリル系樹脂をPMMAで示した。また、表中には、指標部材(比較例1、2については植設材、比較例3、4については印刷部)のうち、基材に埋設される部位(埋設部。各比較例については、足部)の高さをh1[μm]、表示部として機能する部位の高さをh2[μm]として示した。また、表中、比較例1、2については、指標部材の欄に、植設材の条件を示し、埋設部に関する欄に、足部の条件を示した。また、比較例1、2については、幅wの欄に、表示部の幅とともに、足部の幅をカッコ内に合わせて示した。また、表中、比較例3、4については、指標部材の欄に、印刷により形成された印刷部の条件を示した。
2−1.立体感評価
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板について、目視による観察を行い、これらの立体感を以下の5段階の基準に従い、評価した。
◎◎:極めて優良。
◎:優良。
○:良。
△:やや不良。
×:不良。
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板について、目視および顕微鏡による観察を行い、これらの外観を以下の5段階の基準に従い、評価した。
◎◎:極めて優良。
◎:優良。
○:良。
△:やや不良。
×:不良。
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板について、以下に示すような3種の試験を行い、時計用文字板の耐久性を評価した。
3−1.落下試験による評価
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板について、高さ3mから、ステンレス鋼製の厚さ10cmのブロック上に、50回繰り返し落下させた後の、時計用文字板の外観を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。
◎:指標の損傷(ゆがみ、浮き、割れ、剥離等)が全く認められない。
○:指標の損傷(ゆがみ、浮き、割れ、剥離等)がほとんど認められない。
△:指標の損傷(ゆがみ、浮き、割れ、剥離等)がわずかに認められる。
×:指標の損傷(ゆがみ、浮き、割れ、剥離等)が顕著に認められる。
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板について、直径4mmの鉄製の棒材を支点とし、時計用文字板の中心を基準に30°の折り曲げを行った後、時計用文字板の外観を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。折り曲げは、圧縮/引っ張りの両方向について行った。
◎:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜の浮き、剥がれ等が全く認められない。
○:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜の浮き、剥がれ等がほとんど認められな
い。
△:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜の浮き、剥がれ等がわずかに認められる
。
×:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜のひび割れ、剥離がはっきりと認められ
る。
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板を、以下のような熱サイクル試験に供した。
まず、時計用文字板を、20℃の環境下に1.5時間、次いで、60℃の環境下に2時間、次いで、20℃の環境下に1.5時間、次いで、−20℃の環境下に3時間静置した。その後、再び、環境温度を20℃に戻し、これを1サイクル(8時間)とし、このサイクルを合計3回繰り返した(合計24時間)。
◎:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜の浮き、剥がれ等が全く認められない。
○:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜の浮き、剥がれ等がほとんど認められな
い。
△:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜の浮き、剥がれ等がわずかに認められる
。
×:指標(指標部材、植設材、塗料)、被膜のひび割れ、剥離がはっきりと認められ
る。
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板について、以下のような方法により、光透過性を評価した。
まず、太陽電池と各文字板とを暗室にいれた。その後、太陽電池単体でその受光面に対し、所定距離離間した蛍光灯(光源)からの光を入射させた。この際、太陽電池の発電電流をA[mA]とした。次に、前記太陽電池の受光面の上面に文字板を重ね合わせた状態で、前記と同様に所定距離離間した蛍光灯(光源)からの光を入射させた。この状態での、太陽電池の発電電流をB[mA]とした。そして、(B/A)×100で表される時計用文字板の光透過率を算出し、以下の4段階の基準に従い、評価した。時計用文字板の光透過率が大きいほど、時計用文字板の光透過性は優れたものであるといえる。
◎:32%以上。
○:25%以上32%未満。
△:17%以上25%未満。
×:17%未満。
前記各実施例および各比較例で製造した各時計用文字板について、以下に示すような方法で電波透過性を評価した。
まず、時計ケースと、電波受信用のアンテナを備えた腕時計用内部モジュール(ムーブメント)とを用意した。
次に、時計ケース内に、腕時計用内部モジュール(ムーブメント)および、時計用文字板を組み込み、この状態での電波の受信感度を測定した。
◎:感度の低下が認められない(検出限界以下)。
○:感度の低下が0.7dB未満で認められる。
△:感度の低下が0.7dB以上1.0dB未満。
×:感度の低下が1.0dB以上。
これらの結果を表3に示す。
これに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。すなわち、植設材を用いて指標の形成を行った比較例1、2では、指標の密着性が劣っており、十分な耐久性を有していなかった。また、立体感を向上させる目的で、植設材の高さを高くした比較例2の時計用文字板は、耐久性が特に低いものであった。また、耐久性を向上させる目的で、指標の表示部の幅を細くした比較例2では、足部がはっきりと視認されてしまい、その美的外観はきわめて劣ったものであった。また、印刷により指標を形成した比較例3、4では立体感を十分にはっきさせることができなかった。また、立体感を向上させる目的で、印刷を繰り返し行った比較例4では、印刷層に重ねたインクの一部が基材の表面に流れ落ちてしまい、いわゆるダレを生じた状態となり、形成された指標は不鮮明なものとなっていた。
また、各実施例および各比較例で得られた時計用文字板を用いて、図11に示すような時計を組み立てた。このようにして得られた各時計について、上記と同様の試験、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
Claims (9)
- 光透過性を有するプラスチック製の基材に、指標部材の一部が埋設されてなる時計用文字板の製造方法であって、
成形型の所定の部位に前記指標部材を設置する指標部材設置工程と、
前記指標部材が設置された前記成形型に、流動性を有する樹脂材料を付与する樹脂材料付与工程と、
前記樹脂材料を固化させ、前記指標部材が埋設された前記基材を得る固化工程と、
前記基材についての、前記指標部材の一部が突出している側の面である第1の面とは反対の面である第2の面側に、金属材料で構成された被膜を形成する被膜形成工程とを有し、
前記指標部材は、前記基材中に埋設される部分に凹部を有するものであることを特徴とする時計用文字板の製造方法。 - 前記指標部材は、前記基材に埋設されるべきでない部分の少なくとも一部に、フッ素系離型剤またはシリコーン系離型剤による離型処理が施されたものであり、
前記成形型は、前記樹脂材料と接触する部分の少なくとも一部に、リン酸エステルによる離型処理が施されたものである請求項1に記載の時計用文字板の製造方法。 - 前記指標部材は、前記凹部として、前記基材の前記第1の面から前記第2の面側に向かって、その幅が漸減する部分を有するものである請求項1または2に記載の時計用文字板の製造方法。
- 前記時計用文字板は、太陽電池を備えたソーラー時計用の文字板であり、
前記被膜を、開口部を有するものとして形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の時計用文字板の製造方法。 - 前記被膜形成工程は、前記被膜が有すべき前記開口部に対応するパターンで開口部が設けられたマスクを、前記基材の前記第2の面に密着させた状態で気相成膜を行うものである請求項4に記載の時計用文字板の製造方法。
- 前記被膜形成工程は、前記マスクとして、磁性材料を含む材料で構成されたものを用い、前記基材の前記マスクに対向する面とは反対の面である前記第1の面側に磁石を配した状態で行うものである請求項5に記載の時計用文字板の製造方法。
- 前記被膜形成工程は、前記基材と気相成膜源とを相対的に移動(変位)させつつ気相成膜を行うものである請求項4ないし6のいずれかに記載の時計用文字板の製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする時計用文字板。
- 請求項8に記載の時計用文字板を備えたことを特徴とする時計。
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