以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態における定着装置を備えた画像形成装置を示す概略側面図である。
図において、10は本実施の形態における画像形成装置であり、例えば、電子写真方式によって記録媒体15上に画像を形成するプリンタ、複写機、ファクシミリ機、複合機等、いかなる種類の画像形成装置であってもよい。なお、本実施の形態において、前記画像形成装置10は、定着装置30を用いることのできるものであれば、いかなる種類のものであってもよい。
また、媒体としての記録媒体15は、例えば、普通紙であるが、普通紙のほかにも、OHP(Over Head Projector)シート、カード、葉書、秤(ひょう)量が約200〔g/m2 〕相当以上の厚紙、封筒、熱容量の大きいコート紙等の特殊紙であってもよい。なお、前記画像形成装置10は、モノクロ画像を形成するものであってもよく、カラー画像を形成するものであってもよいが、ここでは、前記画像形成装置10がタンデム方式によってカラー画像を形成するプリンタである場合について説明する。
そして、画像形成装置10は記録媒体15の搬送方向に沿って配列され、記録媒体15上にブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの4色のトナー像を形成する画像形成部11Bk、11Y、11M及び11Cを有する。前記画像形成部11Bk、11Y、11M及び11Cは、各々、表面にブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のトナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12C、並びに、図示されない帯電装置、現像装置及び感光体クリーニング装置を備える。そして、前記画像形成部11Bk、11Y、11M及び11Cは、一体的に構成されており、画像形成装置10から脱着可能となっている。さらに、前記画像形成部11Bk、11Y、11M及び11Cを脱着可能とするために、画像形成装置10の上部カバー17は開閉可能に設けられている。
また、LEDヘッド等から成る露光装置16Bk、16Y、16M及び16Cは、感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12Cの各々に対向して配設され、上部カバー17によって支持されている。そして、前記露光装置16Bk、16Y、16M及び16Cの各々は、感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12Cの各々の表面を露光して静電潜像を形成する。
さらに、転写ローラ13Bk、13Y、13M及び13Cが、搬送ベルト14を挟んで、感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12Cの各々と対向するように配設されている。前記感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12Cの表面に形成された各色のトナー像は、転写ローラ13Bk、13Y、13M及び13Cによって、搬送ベルト14上を搬送される記録媒体15に転写される。
また、該記録媒体15を収容する給紙カセット18は、画像形成装置10の下部に配設されている。そして、前記給紙カセット18の前端(図における右端)に隣接して給紙機構が配設される。該給紙機構は、給紙ローラ21a及び21b並びに分離ローラ22を備え、給紙カセット18内に堆(たい)積された記録媒体15を1枚ずつ分離して給紙する。そして、給紙機構の上部には、搬送ローラ23a及び23bが配設されている。
さらに、搬送ベルト14の下流側には、定着装置30が脱着可能に配設されている。そして、該定着装置30から排出された記録媒体15は、排出ローラ24によって搬送された後、排出搬送ローラ25によって上部カバー17の上へ排出される。
次に、前記定着装置30の構成について詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における定着装置の要部断面図であり図3におけるZ−Z矢視断面図、図3は本発明の第1の実施の形態における定着装置の記録媒体排出方向から見た外観斜視図、図4は本発明の第1の実施の形態における定着装置の記録媒体排出方向から見た分解斜視図、図5は本発明の第1の実施の形態における除電ブラシの断面図、図6は本発明の第1の実施の形態における除電ブラシの支持部取付開口の拡大図、図7は本発明の第1の実施の形態における除電ブラシの支持部取付開口の他の例を示す拡大図である。
図1に示されるように、定着装置30は、定着部材としての定着ローラ44及び加圧部材としての加圧ローラ45を備え、未定着トナー像Tを記録媒体15に定着させるためのニップ部Nが、前記定着ローラ44に対して、図示されない加圧手段によって加圧ローラ45を圧接させることにより形成される。
そして、前記定着ローラ44は、例えば、外径25〔mm〕程度の中空ローラで、アルミニウム製の芯(しん)金の外周面にシリコーンゴムから成る厚さ1.2〔mm〕程度の耐熱弾性層を形成し、さらに、その外周面に離型層としての厚さ30〔μm〕程度のフッ素樹脂層を形成して構成されている。なお、芯金は、必ずしもアルミニウム製である必要はなく、鉄等の他の金属から成るものであってもよい。
また、前記加圧ローラ45は、例えば、外径24〔mm〕程度の中実ローラで、鉄製の芯金の外周面に発泡シリコーンゴムから成る厚さ5〔mm〕程度の耐熱弾性層を形成し、さらに、その外周面に離型層としての厚さ30〔μm〕程度のフッ素樹脂層を形成して構成されている。
なお、前記定着ローラ44の表面付近には、図示されない温度検知素子としてのサーミスタが配設されており、定着ローラ44の内部には、熱源としてのハロゲンヒータ51が配設されている。なお、定着ローラ44の熱源は、ハロゲンヒータ51に限らず、誘導加熱等を使用することができる。
図4に示されるように、定着ローラ44の左右には、フレーム部材としての側板34a及び34bが配設される。前記定着ローラ44は、左右の軸受46a及び46bを介して、側板34a及び34bによって回転可能に支持される。なお、前記側板34a及び34bは、金属製であり、軸受46a及び46bを支持する支持用穴53a及び53bと、定着装置30の外側へ向かって形成された曲げ部36a及び36bと、内側へ向かって形成された曲げ部35a及び35bとを備える。そして、前記曲げ部35及び36は、ケース部材32との位置決め部を有し、ねじ41a及び41bによって、前記ケース部材32に固定される。
また、該ケース部材32は、耐熱性樹脂で形成されており、定着ローラ44、加圧ローラ45等の定着装置30の主要部を収容している。図1及び3に示されるように、ケース部材32は、前記定着装置30の主要部を収容した状態で、カバー部材65によって覆われている。
そして、該カバー部材65は、ケース部材32と同様に、耐熱性樹脂で形成されている。また、図4に示されるように、カバー部材65は、除電部材としての除電ブラシ61が備える支持部としての薄板62の左右端部を押圧する押圧部31a及び31bと、前記押圧部31a及び31bへと除電ブラシ61を導く支持部取付開口66a及び66bと、除電ブラシ61の貼(てん)付部材38とを有する。なお、前記押圧部31a及び31bは、カバー部材65と一体的に形成されたものであってもよいし、該カバー部材65とは別個に形成されたものであってもよい。
また、前記貼付部材38は、図1に示されるように、ニップ部Nから排出される記録媒体15の下面側において、記録媒体15の搬送方向に対して所定の角度を有するように配設される。これにより、除電ブラシ61の線状体63の先端部が記録媒体15に対して所定の角度で接触するので、線状体63が弾性的に変形して記録媒体15に接触している時間が長くなり、該記録媒体15の除電を確実に行うことができる。
なお、支持部取付開口66a及び66bは、貼付部材38の両側に配設される。そして、押圧部31a及び31bは、図6に示されるように、支持部取付開口66a及び66bを跨(また)ぐように形成され、かつ、側板34a及び34bに形成された曲げ部35a及び35bに対向する位置に配設される。なお、前記押圧部31a及び31bの幅d1 は、支持部取付開口66a及び66bの幅d2 よりも狭くなるように形成されている。
また、前記押圧部31a及び31bは、図7に示されるような形態を有するものであってもよい。すなわち、前記押圧部31a及び31bは、必ずしも支持部取付開口66a及び66bを跨ぐように形成される必要はなく、少なくとも薄板62を押圧することができる範囲に存在すればよい。
ここで、除電ブラシ61は、図5に示されるように、アルミ製の薄板62、ステンレスの繊維製の線状体63及び導電性両面粘着テープ64を備え、薄板62に複数の線状体63が導電性両面粘着テープ64によって固定されている。そして、図4に示されるように、前記薄板62は、導電性両面粘着テープ64によって、カバー部材65の貼付部材38に固定される。さらに、薄板62の両端は、カバー部材65の支持部取付開口66a及び66bから内側へ入り込むように配設される。また、カバー部材65は、図1、図3及び図4に示されるように、ねじ42a及び42bによって、側板34a及び34bに設けられた曲げ部36a及び36bに固定される。このとき、前記薄板62の両端部は、側板34a及び34bに設けられた曲げ部35a及び35bとカバー部材65の押圧部31a及び31bとの間に挟まれ、押圧保持されている。ここで薄板62の両端部とは、図4に示されるように、線状体63が設けられていない薄板62の両端より内側に所定長さの領域を称し、その長さは前記曲げ部35a及び35bと前記押圧部31a及び31bとの間で挟まれるのに充分な長さであれば良い。
以上のように構成された定着装置30は、画像形成装置10の所定の位置に、ロックレバー43a及び43bによって固定される。このとき、定着装置30の側板34a及び34bは、画像形成装置10に配設された導通ばね52と弾性的に接触している。該導通ばね52は、画像形成装置10が備える図示されない金属製のフレームに電気的に接続されている。これにより、除電ブラシ61は、側板34a及び34b、導通ばね52等を介して、接地部材である画像形成装置10の金属製のフレームと導通して接地される。
次に、前記構成の画像形成装置10の動作について説明する。
まず、給紙カセット18内に堆積されて収容された記録媒体15は、給紙ローラ21a及び21b並びに分離ローラ22によって1枚ずつ分離されて繰り出され、搬送ローラ23a及び23bによって搬送され、搬送ベルト14に送られる。
一方、図示されない帯電装置によって帯電させられた感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12Cの各々の表面は、露光装置16Bk、16Y、16M及び16Cにより露光され、静電潜像が形成される。該静電潜像は、図示されない現像装置によって現像され、感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12Cの各々の表面上に、現像剤像として、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの4色のトナー像が形成される。
続いて、記録媒体15が、搬送ベルト14の走行に伴って、感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12Cと転写ローラ13Bk、13Y、13M及び13Cとの間を通過する際に、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のトナー像が順次転写され、記録媒体15上にカラーのトナー像が形成される。なお、転写後の感光体ドラム12Bk、12Y、12M及び12C上に残留したトナーは、図示されない感光体クリーニング装置によって除去される。
トナー像が転写された記録媒体15は、その後定着装置30に搬送される。そして、該定着装置30において未定着トナー像Tが定着させられて、カラー画像が形成される。
トナー像が定着された記録媒体15は、排出ローラ24によって搬送された後、排出搬送ローラ25により上部カバー17の上へ排出され、スタックされる。
次に、前記構成の定着装置30の動作について説明する。
まず、該定着装置30においては、画像形成装置10における印刷の開始に伴って、定着ローラ44の回転が開始される。この場合、該定着ローラ44の一端に取り付けられた定着ローラギア67は、画像形成装置10の本体に配設された図示されない定着装置駆動用ギアからの駆動力を受けて、記録媒体15を搬送する方向に回転させられる。そして、加圧ローラ45は、定着ローラ44の回転に伴って従動回転させられる。
また、ハロゲンヒータ51は、図示されない給電回路からの電流が供給されて発熱し、定着ローラ44を内部から加熱する。そして、加熱された定着ローラ44の表面温度が図示されないサーミスタによって検出され、図示されない制御部の温調回路に入力される。該温調回路は、検出された定着ローラ44の表面温度に基づいて、給電回路からハロゲンヒータ51への電流の供給を制御し、定着ローラ44の表面温度を定着温度に維持する。そして、定着ローラ44の表面温度が定着温度に維持された状態においてニップ部Nで記録媒体15を挟み込むことによって、未定着トナー像Tを加熱し、加圧ローラ45によって所定圧力で加圧することにより、記録媒体15上にトナー像が定着させられる。
ところで、定着ローラ44及び加圧ローラ45の外周面には、離型層としてのフッ素樹脂層が形成されているため、記録媒体15がニップ部Nを通過する際の搬送摩擦等によって、記録媒体15が帯電しやすくなっている。しかし、前記定着装置30は除電ブラシ61を有し、該除電ブラシ61の線状体63は、ニップ部Nから排出される記録媒体15の下面側において、記録媒体15の搬送方向に対して所定の角度を有するように配設されている。そのため、ニップ部Nを通過することによってトナー像が定着された記録媒体15は、除電ブラシ61の線状体63の先端部に接触しながら排出される。そして、除電ブラシ61が側板34a及び34b、導通ばね52等を介して接地されているので、記録媒体15上に帯電した電荷は、線状体63の先端部が接触することによって除去される。
このように、本実施の形態において、除電ブラシ61の薄板62の両端部がフレーム部材としての側板34a及び34bに粘着した状態で、カバー部材65によって押圧保持されるので、定着動作により側板34a及び34bが高温状態になっても、除電ブラシ61は、接地された側板34a及び34bから剥がれることがなく、導通不良が発生することがない。したがって、記録媒体15の除電を安定して行うことができ、スタック不良等の搬送不具合が発生するのを防止することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
図8は本発明の第2の実施の形態における定着装置の要部断面図であり図9におけるZ−Z矢視断面図、図9は本発明の第2の実施の形態における定着装置の記録媒体排出方向から見た外観斜視図、図10は本発明の第2の実施の形態における定着装置の記録媒体排出方向から見た分解斜視図、図11は本発明の第2の実施の形態における除電ブラシの断面図である。
図8及び図10に示されるように、定着ローラ44及び加圧ローラ45は、フレーム部材71に配設される。該フレーム部材71は、側板34a及び34b、並びに、左右の側板34a及び34bの間を接続するように形成された曲げ底面部39を有する。さらに、該曲げ底面部39の端部には略垂直上方に向かって延在する壁部54が接続され、また、該壁部54の上端には壁部54と所定の角度を有する曲げ部37が形成されている。なお、前記フレーム部材71は金属製である。
また、カバー部材65は、フレーム部材71の曲げ部37に対向する位置に形成された除電ブラシ61を押圧する押圧部69を備える。そして、除電ブラシ61のブラシ支持部としての薄板62は、前記曲げ部37と押圧部69とによって挟まれて保持される。そして、前記曲げ部37及び押圧部69は、図8に示されるように、ニップ部Nから排出される記録媒体15の下面側において、記録媒体15の搬送方向に対して所定の角度を有するように配設される。これにより、除電ブラシ61の線状体63の先端部が記録媒体15に対して所定の角度で接触するので、線状体63が弾性的に変形して記録媒体15に接触している時間が長くなり、記録媒体15の除電を確実に行うことができる。
ここで、除電ブラシ61は、図11に示されるように、アルミ製の薄板62及びステンレスの繊維製の線状体63を備え、複数の線状体63が薄板62によって挟持されることにより、固定されている。この場合、線状体63は、図示されない粘着剤(熱硬化接着剤、両面粘着テープ等)によって薄板62に固定されている。
図8〜図10に示されるように、カバー部材65は、前記第1の実施の形態と同様に、ねじ42a及び42bによって、フレーム部材71の側板34a及び34bに設けられた曲げ部36a及び36bに固定される。このとき、前記薄板62は、フレーム部材71の曲げ部37とカバー部材65の押圧部69との間に挟まれ、押圧保持される。
このように、除電ブラシ61の支持部としての薄板62をフレーム部材71の曲げ部37とカバー部材65の押圧部69との間に挟持して押圧保持するので、両面粘着テープを使用する必要がない。そのため、定着装置30が高温状態であっても、除電ブラシ61の導通をより確実に行うことが可能となる。
なお、その他の点の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
このように、本実施の形態において、除電ブラシ61の薄板62が、両面粘着テープを使用することなく、フレーム部材71とカバー部材65とによって押圧保持される。そのため、定着動作によってフレーム部材71が高温の状態になっても、導通不良が発生することがない。したがって、前記第1の実施の形態よりも、更に記録媒体15の除電を安定して行うことができ、スタック不良等の搬送不具合が発生するのを防止することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
前記第1及び第2の実施の形態においては、除電ブラシの長さの観点からの除電作用及び除電効果については、特に言及されていない。ところが、従来、除電ブラシが長い場合に、印刷枚数が増大するに連れて線状体の撓(たわ)みや倒れ(以下、「曲がり」と称する。)といった損傷が生じやすかった。また、除電ブラシが短い場合には、線状体の先端が記録媒体に接触することができなくなる場合があった。いずれの場合にも除電ブラシと記録媒体との接触が不安定になり、充分な除電効果が得られないという問題が生じていた。本実施の形態は、この従来の定着装置における問題点を解消して、記録媒体と線状体とを安定して当接させて除電効果を奏する定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供することを更なる目的とする。
なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
図12は本発明の第3の実施の形態における定着装置の斜視図、図13は本発明の第3の実施の形態における定着装置の分解斜視図、図14は本発明の第3の実施の形態における定着装置の要部断面図であり図12におけるZ−Z矢視断面図、図15は本発明の第3の実施の形態における定着装置の要部断面図である。
図12及び図13に示されるように、本実施の形態における定着装置700のカバー部材701は、後述される除電部材としての除電ブラシ702の薄板702aの左右端部を押圧する押圧部31a及び31bと、前記押圧部31a及び31bへと除電ブラシ702を導く支持部取付開口66a及び66bと、除電ブラシ702を傾斜状態に貼付するための傾斜部としての貼付部材701aとを有する。そして、該貼付部材701aの上端には加圧ローラ45へと水平に延在する水平部701bが形成されている。カバー部材701は、耐熱性樹脂によって形成されている。
図15に示されるように、定着ローラ44と加圧ローラ45とが互いに圧接してなるニップ部Nと排出ローラ24のニップ部とを結んでできる面領域を、理想媒体搬送面Iと称する。該理想媒体搬送面Iは、記録媒体15が除電ブラシ702による抵抗を受けず、かつ、弛(ゆる)みのない状態で搬送される場合の理想的な搬送面である。実際には、記録媒体15は、前記理想媒体搬送面Iを含む一定の広がりを持った空間内を搬送される。
貼付部材701aは、理想媒体搬送面Iより下側に配置され、定着ローラ44に向けて傾斜している。ここで、貼付部材701aの傾き方向と理想媒体搬送面Iとがなす角度をθと定義する。本実施の形態において、貼付部材701aは、耐熱性樹脂によって、カバー部材701と一体的に形成されるが、該カバー部材701と別個に形成されてもよい。貼付部材701aは、カバー部材701と別個に形成される場合、カバー部材701と同等の熱膨張係数を有する樹脂材料によって形成されることが望ましい。
図12、図13及び図15に示されるように、貼付部材701a及び水平部701bには、記録媒体15の搬送方向に対して横断する方向Cに、所定間隔を開けて複数のガイドリブ部材701cが一体に形成されている。該ガイドリブ部材701cは、図15に示されるように、理想媒体搬送面Iよりも低い位置において、加圧ローラ45に向けて突出するように配設されている。具体的には、本実施の形態において、ガイドリブ部材701cは、前記横断する方向Cに所定間隔を開けて12箇所に形成され、ガイドリブ部材701cの先端と加圧ローラ45との間隙(げき)距離が2〔mm〕となるように形成されている。これにより、ガイドリブ部材701cは、記録媒体15が加圧ローラ45に巻き付くことを防止しつつ、記録媒体15の搬送を安定して案内する機能を果たしている。
なお、ガイドリブ部材701cは、別体で構成することも可能である。その場合、ガイドリブ部材701cは、カバー部材701と同等の熱膨張係数を有する樹脂材料によって形成されることが望ましい。ガイドリブ部材701cをカバー部材701と別材料によって形成する場合、トナー離型性で優れるフッ素系樹脂を使用することが望ましい。
さらに、ガイドリブ部材701cの配置間隔は、例えば、A4判用紙、B5判用紙、A6判用紙、葉書等の規定サイズの記録媒体15を搬送する際に、該記録媒体15の幅方向(横断する方向Cと同一方向)の端部がガイドリブ部材701cに引っ掛からないように調整されたものである。例えば、図12及び図13には、所定間隔に並べられた4個のガイドリブ部材701cを1組として3つの組が設けられ、それら3つの組の間隔は前記所定間隔よりも広めに開けられている。このようにガイドリブ部材701cを配設することによって、記録媒体15の排出の際に、ジャムが生じることを防止することができる。ただし、図に示された配置間隔及び配置数は一例に過ぎず、定着装置700に応じて記録媒体15の排出の際にジャムが生じない構成であれば変更が可能である。
次に、本実施の形態における除電ブラシ702の構成について詳細に説明する。
図16は本発明の第3の実施の形態における除電ブラシの断面図、図17は本発明の第3の実施の形態における除電ブラシの正面図である。
図16に示されるように、除電部材としての除電ブラシ702は、アルミ製の支持部としての薄板702a、ステンレス繊維製の線状体702b及び導電性両面粘着テープ702cを備え、線状体702bは薄板702aから長さL1だけ露出している。導電性両面粘着テープ702cの一方の粘着面は、線状体702bの基部の所定領域を薄板702aに固定する作用をなし、導電性両面粘着テープ702cの他方の粘着面は、除電ブラシ702を貼付部材701aに貼付する作用をなす。線状体702bは、図17に示されるように、記録媒体15の搬送方向下流側から見た場合に、所定のピッチ間隔Sを開けて配設されている。線状体702bが所定のピッチ間隔Sよりも広く開けられている箇所は、ガイドリブ部材701cが配置されるために用意された領域であって、これにより、除電ブラシ702を貼付部材701aに貼付した場合に、線状体702bがガイドリブ部材701cと干渉することを防止することができる。ただし、これは一例に過ぎず、本実施の形態の効果を適切に奏し得る限り、定着装置700に合わせて、線状体702bの本数及びピッチ間隔Sを変更することは可能である。
本実施の形態における除電ブラシ702の線状体702bは、例えば、ステンレス繊維から成る1本あたり直径12〔μm〕の金属製極細線を80本束ねて1本の線状体としたものであって、理想媒体搬送面Iの横断方向寸法224〔mm〕の幅に、6.4〔mm〕のピッチ間隔で合計31本配置したものを用いている。
なお、線状体702bは、金属製極細線の他に、耐熱性を付与した樹脂繊維(例えば、アクリル樹脂繊維、ナイロン樹脂繊維等)に銅イオン、カーボンブラック、炭素繊維等を添加及び混練することによって導電性を付与したものを用いてもよい。
図13及び図14に示されるように、除電ブラシ702の線状体702bは、前記除電ブラシ702の基端部領域が導電性両面粘着テープ702cによって貼付部材701aに貼付されていることにより、貼付部材701aの傾斜角度θに沿って定着ローラ44に向けて延在し、線状体702bが理想媒体搬送面Iとなす角度は、傾斜角度θに略等しくなっている。
また、図12に示されるように、前記除電ブラシ702の薄板702aは、前記ガイドリブ部材701cより低い位置で貼付部材701aに固定されている。これにより、除電ブラシ702の基端部領域は、ガイドリブ部材701cと干渉することなく、適切に貼付部材701aに固定することが可能となっている。
さらに、薄板702aの両端部は、第1の実施の形態と同様に、カバー部材701の支持部取付開口66a及び66bから内側へ入り込むように配設され、側板34a及び34bに設けられた曲げ部35a及び35bと、カバー部材701の押圧部31a及び31bとの間に挟まれ、押圧保持されている。ここで、薄板702aの両端部とは、線状体702bが設けられていない薄板702aの両端より所定長さの領域を称し、その長さは前記曲げ部35a及び35bと前記押圧部31a及び31bとの間で挟まれるのに充分な長さであればよい。
以上のように構成された定着装置700は、画像形成装置10の所定の位置にロックレバー43a及び43bによって固定され、側板34a及び34bは、画像形成装置10に配設された導通ばね52と弾性的に接触し、該導通ばね52は画像形成装置10の金属製のフレームに電気的に接続されている。これにより、除電ブラシ702は、側板34a及び34b、導通ばね52等を介して、接地部材である画像形成装置10の金属製のフレームと導通して接地される。
本実施の形態においては、図15に示されるように、薄板702aから露出した線状体702bのうち、貼付部材701aに対向している部分の長さL3を4〔mm〕とし、貼付部材701aが加圧ローラ45に対して水平に延在している水平部701bの長さL4を6〔mm〕とし、ニップ部Nから線状体702bまでの距離L5を12〔mm〕とし、貼付部材701aと水平部701bとがなす角度θ2を135度とした。
次に、本実施の形態における定着装置700の動作について説明する。
図18は本発明の第3の実施の形態における定着装置の評価試験において使用された画像パターンを示す図、図19は本発明の第3の実施の形態における定着装置の静電オフセットの発生を評価した結果を示す表、図20は本発明の第3の実施の形態における定着装置の線状体損傷本数と線状体長さとの関係を示す散布図である。
転写されたトナー像Tを有する記録媒体15は、定着ローラ44及び加圧ローラ45のニップ部Nを通過することによって、トナー像Tが定着される。このとき、記録媒体15には、ニップ部Nを通過する際に定着ローラ44及び加圧ローラ45から受ける搬送摩擦等によって、電荷が蓄積される。
続いて、記録媒体15は、理想媒体搬送面Iの近傍を進行し、除電ブラシ702の先端に接触しながら、定着装置700から排出される。このとき、除電ブラシ702は側板34a及び34b、導通ばね52を介して接地されていることから、定着ローラ44及び加圧ローラ45によって記録媒体15上に帯電した電荷が除去される。
ここでは、線状体702bが理想媒体搬送面Iとなす角度をθ、線状体702bにおける薄板702aから突出している部分の長さをL1、前記薄板702aから突出している部分における理想媒体搬送面Iと交差する部位までの長さをL2、及び、記録媒体15の搬送速度をVと定める。そして、以下のように、角度θ、長さL1及びL2、並びに、搬送速度Vをパラメータとして、記録媒体15が当接することによる線状体702bの損傷についての評価試験を行った。なぜなら、線状体702bが損傷しないことが、記録媒体15に対する除電作用を安定して行うための条件であるからである。なお、線状体702bが理想媒体搬送面Iより突出している長さという意味で、以降、(L1−L2)を線状体突出長さと称する。
本評価試験では、記録媒体15の搬送速度Vを93〔mm/sec〕とし、記録媒体15としてのA4判用紙を縦方向にして16〔ppm〕の速度で通紙する画像形成装置10を使用した。本評価試験に使用した記録媒体15は、富士ゼロックス株式会社製P紙A4サイズ、秤量75〔g/m2 〕である。記録媒体15を帯電しやすくさせて除電の効果を観るために、温度10〔℃〕、相対湿度20〔%〕の低温低湿環境に24時間放置した記録媒体15を使用した。
また、本評価試験では、図18に示される画像パターンを使用した。静電オフセットが特にハーフトーン画像で目立つ現象であることを考慮して、本評価試験では、縦横2ドット(計4ドット)分を単位として、トナーあり及びトナーなしの領域を規定したパターン(以下、2×2パターンと称する)を画像パターンとして使用した。
図19に示される表は、通紙履歴枚数及び線状体突出長さ(L1−L2)を異ならせて2×2パターン画像を出力させたときの、静電オフセットの発生を評価した結果である。ここで、静電オフセットとは、記録媒体15に不完全に定着されたトナーの一部が、定着ローラ44と記録媒体15との摩擦帯電によって生じた電界に引き寄せられて定着ローラ44上に移り、該定着ローラ44が1回転した後、再び、記録媒体15上に転写定着されて、画像品質を劣化させる現象を言う。
線状体702bの除電性の評価は、記録媒体15に印刷した2×2パターン印刷画像上に生じたスジの有無を目視にて判断したものであって、三段階のレベルに分類した。すなわち、印刷画像にスジが見られず静電オフセットを抑制することができたと考えられる良好なレベル(表中では○で表す)と、印刷画像にわずかにスジが見られるが全体的に見た場合に許容し得るレベル(表中では△で表す)と、はっきりと濃度差が見えるレベル(表中では×で表す)との三段階である。
図19に示される表によれば、線状体突出長さ(L1−L2)が2〔mm〕以上の場合、いずれも、印刷枚数に係わらず印刷画像にスジが見られず静電オフセットを抑制することができたと考えられる良好なレベル(表中では○)であった。他方、500枚通紙したときの除電ブラシ702であっても、線状体突出長さ(L1−L2)が0〔mm〕の場合、わずかにスジが見られた。また、印刷枚数が60000枚と通紙履歴が長いものでは、線状体突出長さ(L1−L2)が2〔mm〕より短い場合には、はっきりと濃度差が見え(表中では×)、除電の効果が低いことが確認された。線状体突出長さ(L1−L2)が2〔mm〕より短い場合には、記録媒体15との繰り返しの接触によって、除電ブラシ702の先端がほつれて拡がり、さらには摩耗することで、除電ブラシ702の記録媒体15との接触量が小さくなるためであると考えられる。以上の評価結果から、線状体突出長さ(L1−L2)が2〔mm〕以上であれば、静電オフセットの発生を効果的に抑制することができることが導出された。
図20には、線状体702bが理想媒体搬送面Iから突出する長さと除電ブラシ702の損傷本数との関係が示されている。図20は、線状体突出長さ(L1−L2)を3〔mm〕に固定し、線状体702bにおいて薄板702aから突出している部分における理想媒体搬送面Iと交差する部位までの長さL2を可変にして、1000枚まで通紙したときの、曲がりといった損傷を受けた線状体702bの本数を計測した結果を示している。
図に示されるように、(L1−L2)−L2<0〔mm〕のとき、線状体702bの損傷本数が0本に等しくなっている。これは、(L1−L2)−L2の値が小さくなるに従って、線状体702bが穏やかに曲がる傾向があり、線状体702bに生ずる曲げ応力が小さくなるからである。他方、(L1−L2)−L2の値が0〔mm〕以上では、線状体702bが急に曲がることとなり、線状体702bに生ずる曲げ応力が大きくなり、線状体702bが曲がりやすくなると考えられる。
なお、図20に示される結果は、線状体突出長さ(L1−L2)を3〔mm〕に固定した場合のものであるが、2〔mm〕≦(L1−L2)≦5〔mm〕の範囲では、同様の結果を得ることができた。
以上の考察から、線状体702bが曲がりといった損傷を受けることなく、静電オフセットの発生を抑制することができる範囲を、以下の式(1)及び式(2)のように規定した。
2〔mm〕≦(L1−L2)≦5〔mm〕 ・・・式(1)
(L1−L2)−L2<0 ・・・式(2)
次に、線状体702bの角度θが除電作用に寄与する範囲を検討する。
図21は本発明の第3の実施の形態における定着装置の除電ブラシの傾斜角毎に線状体損傷本数と印刷枚数との関係を示す散布図である。
ここでは、線状体突出長さ(L1−L2)を3〔mm〕とし、線状体702bにおいて薄板702aから突出している部分における理想媒体搬送面Iと交差する部位までの長さL2を7〔mm〕として、すなわち、(L1−L2)−L2=−4〔mm〕<0〔mm〕として、評価試験を行った。図21には、除電ブラシ702と理想媒体搬送面Iとがなす角度θ毎に、印刷枚数と線状体損傷本数との関係を測定した結果が示されている。
除電ブラシ702の角度θが30度の場合、印刷枚数が少ない(例えば、20000枚)ときには、線状体702bはその弾性力によって元の位置に復帰しやすく、加圧ローラ45の方向に曲がる線状体702bの本数が5本と少なく、除電作用に対する影響は比較的少ない。しかし、印刷枚数が80000枚に達すると、加圧ローラ45の方向へ曲がる線状体702bの本数が20本を超え、除電ブラシ702のすべての線状体702b、すなわち、31本の線状体702bが曲がらずに正常に当接した場合と比べ、記録媒体15に当接する線状体702bの本数が減少するので、除電効果が極端に小さくなってしまう。
同様に、除電ブラシ702の角度θが105度の場合でも、印刷枚数が多くなるに従って、線状体702bが記録媒体15の搬送方向下流側へ曲がる本数が多くなり、記録媒体15に当接する線状体702bの本数が減少するので、除電効果が極端に小さくなってしまう。
他方、除電ブラシ702の角度θが45〜90度の範囲にあれば、線状体702bの曲がりがたかだか4本以下であって、ほとんどすべての線状体702bが記録媒体15に当接して除電作用に寄与することから、除電効果の低下がほとんど見られない。実際、記録媒体15に高品位な印刷画像を得ることができた。
また、除電ブラシ702の角度θは、記録媒体15の搬送速度Vに影響するものである。図21に示される結果は、搬送速度Vを93〔mm/sec〕(A4判用紙を縦方向にした紙送りで16〔ppm〕)とした場合のものであるが、V≦174〔mm/sec〕(A4判用紙を縦方向にした紙送りで30〔ppm〕以下)の範囲でも、同様の結果を得ることができた。
以上の考察から、除電ブラシ702が除電作用に寄与する角度θの範囲は、V≦174〔mm/sec〕の条件下で、45度≦θ≦90度であることが導出された。
このように、本実施の形態においては、前記第1の実施の形態における効果に加えて、以下の式(1)〜式(4)を満たすときには、線状体702bが曲がりといった損傷をほとんど受けることなく、静電オフセットの発生を抑制することができるとともに、線状体702bの曲がりといった損傷も抑制して除電効果を高めることができ、記録媒体15に高品位な印刷画像を得ることができる。
2〔mm〕≦(L1−L2)≦5〔mm〕 ・・・式(1)
(L1−L2)−L2<0 ・・・式(2)
45度≦θ≦90度 ・・・式(3)
V≦174〔mm/sec〕 ・・・式(4)
ただし、線状体突出長さが(L1−L2)、線状体702bにおいて薄板702aから突出している部分における理想媒体搬送面Iと交差する部位までの長さがL2、除電ブラシ702の角度がθ、記録媒体15の搬送速度がVである。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、主として定着ローラ及び加圧ローラを大径化した点、両面印刷に対応して加圧ローラを中空ローラとして内部に熱源としてのハロゲンヒータを備えた点、及び、除電ブラシを記録媒体の分離部材に設けた点で、前記第3の実施の形態と異なっている。したがって、ケース部材はサイズが異なる点、及び、分離部材をケース部材に取り付ける取付部材を必要とする点を除いて、前記第3の実施の形態と同様の構成となっている。
よって、第1〜第3の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
なお、前記第1の実施の形態において説明した図2には、両面印刷用に対応させた構成部材は特に記載されていないが、記録媒体の片面を印刷後に記録媒体を反転させ、再度、画像形成部に搬送して裏面にトナー画像を転写及び定着する、という両面印刷に伴う記録媒体の搬送についての構成は公知の技術であるので、その説明を省略する。
図22は本発明の第4の実施の形態における定着装置の要部斜視図、図23は本発明の第4の実施の形態における定着装置の要部側面図である。
図に示されるように、本実施の形態における定着装置800は、定着ローラ811及び加圧ローラ812を備え、未定着トナー像を記録媒体15に定着させるためのニップ部Nが、前記定着ローラ811に対して、図示されない加圧手段によって加圧ローラ812を圧接させることにより形成される。
前記定着ローラ811は、例えば、外径36〔mm〕の中空ローラで、厚さ1.5〔mm〕のアルミニウム製芯金の外周面にシリコーンゴムから成る厚さ1.5〔mm〕程度の耐熱弾性層を形成し、さらに、その外周面に離型層としての厚さ30〔μm〕程度のフッ素樹脂層を形成して構成されている。なお、本実施の形態においては、芯金がアルミニウム製であるものとして説明するが、必ずしもアルミニウム製である必要はなく、鉄等の他の金属を使用してもよい。また、前記定着ローラ811の内部には、図示されない熱源としてのハロゲンヒータが配設されている。
前記加圧ローラ812は、例えば、外径36〔mm〕の中空ローラで、厚さ1.5〔mm〕のアルミニウム製芯金の外周面にシリコーンゴムから成る厚さ1.5〔mm〕程度の耐熱弾性層を形成し、さらに、その外周面に離型層としての厚さ30〔μm〕程度のフッ素樹脂層を形成して構成されている。また、加圧ローラ812の内部にも、図示されない熱源としてのハロゲンヒータが配設されている。
本実施の形態においては、定着ローラ811及び加圧ローラ812が前記第1〜第3の実施の形態における定着ローラ44及び加圧ローラ45に比べて大径化されているので、より高速の定着動作が可能となっている。
さらに、定着ローラ811及び加圧ローラ812は、図示されないケース部材へ取り付けるための取付部材813に配設される。該取付部材813は、導電材料から成る側壁部814a及び814b、並びに、該側壁部814a及び814b間に固定された導電材料から成る分離手段としての分離板820を有する。該分離板820は、後述されるように、曲率が小さい加圧ローラ812に貼(は)り付いて分離しにくくなった記録媒体15を分離するために設けられたものである。
図23に示されるように、本実施の形態における分離板820は、厚さ1〔mm〕の鋼板をL字状に曲げ加工したもの(以下、「L字曲げ板」と称する。)である。分離板820は、記録媒体15と対向する位置に配置された分離部820aと、理想媒体搬送面Iに対して所定角度θをなして定着ローラ811側に向けて傾斜した傾斜部820bとを備えている。前記分離部820aの理想媒体搬送面I側の表面には、厚さ0.3〔mm〕のステンレス板としてのステンレス製板部820cがスポット溶接によって接合され、該ステンレス製板部820cの表面には、トナー離型のために厚さ20〔μm〕のフッ素樹脂層が形成されている。ステンレス製板部820cは、その先端と加圧ローラ812との間隙距離が1〔mm〕になるように配設されている。
分離板820の理想媒体搬送面Iに対向する側には、除電ブラシ702が導電性両面粘着テープ702cによって取り付けられており、線状体702bは、分離板820の傾斜部820bの傾斜に沿って延在し、記録媒体15の理想媒体搬送面Iに突出している。
除電ブラシ702は、分離板820と側壁部814a及び814bとを介して、他の実施の形態と同様に、接地部材である画像形成装置10の金属製のフレームと導通して接地される。
図に示されるように、本実施の形態においては、薄板702aから突出した線状体702bが傾斜部820bと接触している部分の長さL3を6〔mm〕とし、線状体702bからステンレス製板部820cの先端までの長さL4を15〔mm〕とし、ニップ部Nの下流側端部から線状体702bまでの距離L5を26〔mm〕とし、分離部820aと傾斜部820bとがなす角度θ2を90度とした。
次に、本実施の形態における定着装置800の動作について説明する。
図24は本発明の第4の実施の形態における除電ブラシの傾斜角毎に記録媒体の印刷枚数と線状体の損傷本数との関係を示した図である。
本実施の形態においては、定着ローラ811及び加圧ローラ812が前記第1〜第3の実施の形態における定着ローラ44及び加圧ローラ45に比べて大径化されている。これにより、記録媒体15の加圧ローラ812に対するニップ量が増えている。両面印刷の場合には、記録媒体15の加圧ローラ812に接触する側の面にもトナー像が形成されているので、ニップ部Nを通過した記録媒体15は加圧ローラ812に貼り付く傾向があり、加圧ローラ812の径が大きいほどその周面の曲率が小さくなるので、記録媒体15が自ら加圧ローラ812から分離することが難しくなる。そこで、分離板820のステンレス製板部820cは、前述したように加圧ローラ812との間隙距離が1〔mm〕と接近しているので、記録媒体15の先端と加圧ローラ812との間に差し挟まれ、記録媒体15を加圧ローラ812から分離することができる。加圧ローラ812から分離された記録媒体15は、順次下流側に押し出される。その後、記録媒体15が除電ブラシ702に当接して除電される点については、前記第3の実施の形態における説明と同様である。
本実施の形態における評価試験では、記録媒体15の搬送速度Vを231〔mm/sec〕とし、記録媒体15としてのA4判用紙を縦方向にして40〔ppm〕の速度で通紙する画像形成装置10を使用した。本実施の形態における評価試験に使用した記録媒体15及び画像パターン(2×2パターン画像)は、前記第3の実施の形態と同様である。
そして、本実施の形態における評価試験では、線状体突出長さ(L1−L2)及び(L1−L2)−L2について、記録媒体15の搬送速度Vを除いて、前記第3の実施の形態と同様の条件で通紙評価を行ったところ、以下の式(5)及び式(6)を満たす場合に、良好な評価結果を得ることができた。
2〔mm〕≦(L1−L2)≦5〔mm〕 ・・・式(5)
(L1−L2)−L2<0 ・・・式(6)
次に、線状体702bの角度θが除電作用に寄与する範囲を検討する。
図に示されるように、除電ブラシ702の角度θが30度の場合、ステンレス製板部820cの方向への曲がりが発生し、角度θが90度及び105度の場合、排出方向への曲がりが発生している。これは、前記第3の実施の形態と比較して高速で記録媒体15が排出されるため、除電ブラシ702への負荷が増えたことが主な要因と推察することができる。
したがって、この評価試験の結果より、除電ブラシ702の角度θが45度≦θ≦75度の範囲であれば、除電ブラシ702の加圧ローラ812の方向への曲がり、及び、記録媒体15の搬送方向下流側への曲がりの発生を抑制して、除電作用に寄与することができると言える。
また、除電ブラシ702の角度θは、記録媒体15の搬送速度Vに影響するものである。本実施の形態における評価試験では、搬送速度Vを231〔mm/sec〕(A4判用紙を縦方向にした紙送りで40〔ppm〕)として行ったが、174〔mm/sec〕<V≦347〔mm/sec〕の範囲でも、同様の結果を得ることができた。なお、搬送速度V=347〔mm/sec〕は、A4判用紙を縦方向にした紙送りで60〔ppm〕の速度である。
以上の考察から、除電ブラシ702が除電作用に寄与する角度θの範囲は、174〔mm/sec〕<V≦347〔mm/sec〕の条件下で、45度≦θ≦75度であることが導出された。
このように、本実施の形態においては、以下の式(5)〜式(8)を満たすときには、線状体702bの曲がりといった損傷が抑制され、静電オフセットの発生を防いで高品位な印刷画像を得ることができるとともに、線状体702bの加圧ローラ812方向への曲がり及び記録媒体15の搬送方向下流側への曲がりを抑制して、除電作用に寄与する線状体702bを維持し、優れた除電効果を奏するので、記録媒体15のスタック不良といった搬送不具合の発生を効果的に防止することができる。
2〔mm〕≦(L1−L2)≦5〔mm〕 ・・・式(5)
(L1−L2)−L2<0 ・・・式(6)
45度≦θ≦75度 ・・・式(7)
174〔mm/sec〕<V≦347〔mm/sec〕 ・・・式(8)
ただし、線状体突出長さが(L1−L2)、線状体702bにおいて薄板702aから突出している部分における理想媒体搬送面Iと交差する部位までの長さがL2、除電ブラシ702の角度がθ、記録媒体15搬送速度がVである。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1〜第4の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
図25は本発明の第5の実施の形態における定着装置の要部側面図である。
本実施の形態は、主として分離手段が定着ローラ側に配設されている点において、前記第4の実施の形態と相違する。
図に示されるように、分離手段としての分離部材830は、厚さ1〔mm〕のL字曲げ板831と、該L字曲げ板831の理想媒体搬送面Iに対向する側にスポット溶接して接合された厚さ0.3〔mm〕のステンレス板としてのステンレス製板部材833とを備える。該ステンレス製板部材833は、記録媒体15の搬送方向と略平行に定着ローラ811へ向けて延出した水平部833aと、該水平部833aの搬送方向下流側において所定の角度θ2だけ折曲されて理想媒体搬送面Iから遠ざかる向きに延出する傾斜部833bとを備える。水平部833aの表面には、トナー離型のために厚さ20〔μm〕のフッ素樹脂層が形成されている。傾斜部833bの理想媒体搬送面Iに対向する側には、除電ブラシ702が取り付けられており、その線状体702bは傾斜部833bの傾斜に沿って延在し、理想媒体搬送面Iに突出している。
除電ブラシ702は、分離部材830を介して、他の実施の形態と同様に、接地部材である画像形成装置10の金属製のフレームと導通して接地される。
本実施の形態における評価試験では、記録媒体15の搬送速度Vを174〔mm/sec〕<V≦347〔mm/sec〕の範囲とし、記録媒体15としてのA4判用紙を縦方向にして30〔ppm〕〜60〔ppm〕の速度で通紙する画像形成装置を使用した。本実施の形態における評価試験に使用した記録媒体15及び画像パターン(2×2パターン画像)は、前記第4の実施の形態と同様である。
なお、本実施の形態では、ステンレス製板部材833の先端と定着ローラ811との間隙距離を0.5〔mm〕とし、薄板702aから突出した線状体702bが傾斜部833bと接触している部分の長さL3を7〔mm〕とし、水平部833aの長さL4を13〔mm〕とし、ニップ部Nの下流側端部から線状体702bまでの距離L5を20〔mm〕とし、水平部833aと傾斜部833bとがなす角度θ2を115度とした。
本実施の形態における定着装置800の動作は、前記第4の実施の形態とほぼ同様であって、定着ローラ811に貼り付く記録媒体15を分離するために、ステンレス製板部材833が記録媒体15の先端と定着ローラ811との間に差し挟まれて、記録媒体15を定着ローラ811から分離する。定着ローラ811から分離された記録媒体15は、順次下流側に押し出され、除電ブラシ702に当接して除電される点については、前記第4の実施の形態における説明と同様である。
本実施の形態においても、前記第4の実施の形態と同様に、以下の式(5)〜式(8)を満たすときには、線状体702bの曲がりといった損傷が抑制され、静電オフセットの発生を防いで高品位な印刷画像を得ることができる。特に、本実施の形態においては、記録媒体15の印刷面に直接接触して除電することから、片面印刷時の静電オフセットの発生を効果的に抑制することができる。さらに、線状体702bの定着ローラ811の方向への曲がり、及び、記録媒体15の搬送方向下流側への曲がりを抑制して除電作用に寄与する線状体702bを維持し、優れた除電効果を奏するので、記録媒体15のスタック不良といった搬送不具合の発生を効果的に防止することができる。
2〔mm〕≦(L1−L2)≦5〔mm〕 ・・・式(5)
(L1−L2)−L2<0 ・・・式(6)
45度≦θ≦75度 ・・・式(7)
174〔mm/sec〕<V≦347〔mm/sec〕 ・・・式(8)
ただし、線状体突出長さが(L1−L2)、線状体702bにおいて薄板702aから突出している部分における理想媒体搬送面Iと交差する部位までの長さがL2、除電ブラシ702の角度がθ、記録媒体15の搬送速度がVである。
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、第1〜第5の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1〜第5の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
図26は本発明の第6の実施の形態における定着装置の要部側面図、図27は本発明の第6の実施の形態における定着装置の要部正面図である。
本実施の形態は、主として、分離部材が定着ローラ側及び加圧ローラ側に各々配設されている点において、前記第5の実施の形態と相違する。
図に示されるように、除電ブラシ702は、上側に配設された上側除電ブラシ702−uppと下側に配設された下側除電ブラシ702−lowとを含む。そして、上側除電ブラシ702−uppと下側除電ブラシ702−lowとが互いに干渉することを防ぐために、上側除電ブラシ702−uppの上側線状体702b−uppと下側除電ブラシ702−lowの下側線状体702b−lowとは、理想媒体搬送面Iにおいて交互に配列される。なお、ここで符号に「upp」と記載したものは定着ローラ811側の構成を示し、「low」と記載したものは加圧ローラ812側の構成を示している。
本実施の形態においては、下側薄板702a−lowから突出した下側線状体702b−lowが下側ステンレス製板部材の傾斜部833b−lowと接触している部分の長さL3−lowを6〔mm〕とし、下側水平部833a−lowの長さL4−lowを10〔mm〕とし、ニップ部Nの下流側端部から上側線状体702b−upp及び下側線状体702b−lowまでの距離L5−upp、L5−lowを20〔mm〕とした。その他の点の構成については、前記第5の実施の形態と同様である。
本実施の形態における定着装置900の動作は、前記第5の実施の形態における定着装置800の動作とほぼ同様であって、定着ローラ811及び加圧ローラ812に貼り付く記録媒体15を分離するために、ステンレス製板部材833が記録媒体15の先端に設けられた印刷余白内に差し挟まれて、記録媒体15を定着ローラ811及び加圧ローラ812から分離する。定着ローラ811及び加圧ローラ812から分離された記録媒体15は、順次下流側に押し出され、上側除電ブラシ702−upp及び下側除電ブラシ702−lowに当接して除電される点については、前記第5の実施の形態における説明と同様である。
本実施の形態においても、前記第4の実施の形態と同様に、前記式(5)〜式(8)を満たすときには、上側線状体702b−upp及び下側線状体702b−lowの曲がりといった損傷が抑制され、静電オフセットの発生を防いで高品位な印刷画像を得ることができる。特に、本実施の形態においては、記録媒体15に上側除電ブラシ702−upp及び下側除電ブラシ702−lowが直接接触して除電することから、片面印刷時のみならず、両面印刷時においても、静電オフセットの発生を効果的に抑制することができる。さらに、上側線状体702b−upp及び下側線状体702b−lowの定着ローラ811及び加圧ローラ812の方向への曲がり、及び、記録媒体15の搬送方向下流側への曲がりを抑制して、除電作用に寄与する上側線状体702b−upp及び下側線状体702b−lowを維持し、優れた除電効果を奏するので、記録媒体15のスタック不良といった搬送不具合の発生を効果的に防止することができる。
なお、前記第5及び第6の実施の形態においては、定着ローラ及び加圧ローラの下流側に分離手段を配設した例について説明したが、これは一例に過ぎず、片面印刷の場合には分離手段を加圧ローラの上流側に配設してもよい。ただし、分離手段を加圧ローラの上流側に配設する場合には、除電ブラシとケース部材との間に抵抗を介在させて除電量を調整する必要がある。これは、記録媒体上でまだ定着していないトナーは、帯電状態で記録媒体に保持されているので、除電ブラシによって電荷を完全に失ってしまうと、形成したトナー像も失われてしまうからである。
また、前記第3の実施の形態においては、除電ブラシを貼付部材に貼付した例について説明し、前記第4〜第6の実施の形態においては、除電ブラシを分離手段に貼付した例について説明した。しかし、除電ブラシの適正角度は、除電ブラシが貼付される対象に依ることなく、すなわち、貼付手段に貼付されたか分離手段に貼付されたかに係わらず、V≦174〔mm/sec〕であれば、除電ブラシの理想媒体搬送面Iに対する角度θを45度≦θ≦90度とし、また、174〔mm/sec〕<V≦347〔mm/sec〕であれば、前記角度θを45度≦θ≦75度とすることによって、いずれの実施の形態にも適用することができる。このことは、前記第1及び第2の実施の形態においても、他の実施の形態における線状体の長さの規定とともに用いることによって、同様に適用することができる。
さらに、前記第1〜第6の実施の形態においては、画像形成装置10がプリンタである場合について説明したが、本発明は、画像形成装置10が複写機、ファクシミリ機、複合機等であっても、適用することができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。