JP5004076B2 - 蛍光検出型ケミカルバイオセンサー及びそれを用いた検体中の特定物質の検出方法 - Google Patents
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しかしながら、従来のこれらの方法は、蛍光誘導体化物質と検体中の特定物質との反応を行った後、液体クロマトグラフィーや電気泳動を用いるため、検出に時間が掛かるばかりでなく、一度に測定できる数に限りがあるという課題がある。
しかしながら、これらの方法では、検体を蛍光物質で標識するという工程を必要とするものであり、センサーを用いて検体を直ちに検出することはできないという問題がある。
"Analysis ofSingle Cells by Capillary Electrophoresis with On-Column Derivatization andLaser-Induced Fluorescence Detection", S. Douglass Gilman et al., Anal. Chem.1995, 67, 58-64. "Determinationof Femtomole Concentrations of Catecholamines by High-performance LiquidChromatography with Peroxyoxalate", S. Higashidate et al., Analyst 1992, 117,1863-1868."An Invitation toBio-Analytical Chemistry", K. Imai, Anal. Sci., 1998, 14, 257-264. "CatecholaminesDerivatized with 4-fluoro-7-nitro-2,1,3-benzoxadiazole: characterization ofchemical structure and fluorescence properties", X. Zhu et al., Anal. Chim.Acta 2003, 478, 259-269.
1)ガラス、石英又は珪素を主成分とする基板の表面に、検出波長では蛍光を発しない蛍光誘導体化物質を固定化したセンサーであって、前記蛍光誘導体化物質は、検体中の特定物質と前記ガラス基板表面上で縮合反応して検出波長の蛍光を有する物質を形成するもの(但し、他の重合性単量体を共重合してなるものを除く)であり、
前記蛍光誘導体化物質は、シランカップリング剤を介して、又は、さらに別の接続分子を介して化学結合により固定化されていることを特徴とする蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
2)前記シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする前記1)の蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
3)前記別の接続分子が、1,4−フェニレン−ジイソチオシアネートであることを特徴とする前記2)の蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
4)前記蛍光誘導体化物質が、p−キシリレンジアミン又はベンジルアミンであることを特徴とする前記1)〜3)のいずれかの蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
5)前記特定物質は、体内で分泌される物質であり、その構造中に芳香環又は環状炭化水素又は複素環と1級又は2級アミンを有することを特徴とする前記1)〜4)のいずれかの蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
6)請求項1〜5のいずれか1項に記載された蛍光検出型ケミカルバイオセンサーを用いて検体中の特定物質を検出する方法であって、ガラス、石英又は珪素を主成分とする基板上に検体液を流し、該検体中の特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応により検出波長の蛍光を有する物質を形成させ、その蛍光を検出することを特徴とする検出方法。
7)前記特定物質は、体内で分泌される物質であり、その構造中に芳香環又は環状炭化水素又は複素環と1級又は2級アミンを有することを特徴とする前記6)の検出方法。
8)蛍光検出を行うために用いられる入射光は、前記基板上の前記蛍光誘導体化物質が固定化又は塗布された面、あるいはその反対側の面、あるいは前記基板の側面から照射されることを特徴とする前記6)又は7)の検出方法。
9)検体中の前記特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応により形成される物質の蛍光強度から、前記特定物質の量あるいは表面濃度を測定することを特徴とする前記6)〜8)のいずれかの検出方法。
10)検体中の前記特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応により形成される物質の蛍光スペクトルから、前記特定物質の種類を特定することを特徴とする前記6)〜8)のいずれかの検出方法。
基板の形状は、とくに限定されるものではないが、カード状又はディスク状に形成されているのが好ましい。
固体基板1を形成するための材料は、蛍光検出型ケミカルバイオセンサーの支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではなく、例えば、ガラス、石英、セラミックス、プラスチックス、金属、金属酸化物又は珪素を主成分とするものなどによって形成することができる。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリイソブチルメタクリレート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
前記吸着により固定化する方法としては、前記固体基板表面のうち疎水性表面を有するものの表面に、疎水性の前記蛍光誘導体化物質を疎水性相互作用により物理吸着させるか、あるいは、前記蛍光誘導体化物質にイオン性官能基を導入し、帯電させた前記固体基板表面に静電吸着させることもできる。
また、前記共有結合等の化学結合により固定化する方法としては、例えば、前記固体基板上に、シランカップリング剤を介して、又は、さらに別の接続分子を介して化学結合させることができる。または、前記固体基板上に金・銀などの金属薄膜を蒸着し、チオール基を導入した前記蛍光誘導体化物質を金属薄膜上に化学結合させることができる。さらに、プラズマ処理やオゾン処理により、前記固体基板表面にヒドロキシル基を暴露させ、末端がアミノ基やカルボキシル基のポリアルキル鎖やポリエチレングリコール鎖などの高分子鎖を縮合することにより、前記固体基板表面に高分子を固定化し、その高分子中に前記蛍光誘導体化物質を染み込ませることもできる。
また塗布方法も特に限定されないが、蛍光誘導体化物質を含んだ高分子溶液を薄膜状に均一に塗布できる点で、スピンコート法が好ましい。
本発明においては、前述の検出波長では蛍光を発しない蛍光誘導体化物質を固定化又は塗布した固体基板上に、検体液を流し、該検体中の特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応により検出波長の蛍光を有する物質を形成させ、その蛍光を検出することにより、検体中の特定物質の有無を検出することができる。
こうして調製された検体液を前記固体基板上に流した後、しばらく静置して該検体中の特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応を充分に行わせ、その後蒸留水でセンサー表面をリンスし、乾燥させる。
例えば、蛍光誘導体化物質として前記(化1)で表される4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(NBD−F))を用いてドーパミンを検出する場合には、励起光として442nmの青色光を照射し、500〜520nmにピークを有する蛍光の有無を検出する。
また、本発明における蛍光の検出は、透過光、反射光、迷光などの影響がもっとも少ないことから、該入射光に対して直角方向から行われることが好ましい。
この場合には、あらかじめ検出すべき特定物質の標準溶液の蛍光を異なった濃度で測定し、濃度と蛍光強度の関係(検量線)を作成しておくことが必要である。
(参考例1)
ポリメチルメタクリレート(PMMA:分子量〜15,000)及び蛍光誘導体化物質である4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(NBD−F)を、それぞれが5wt%及び0.5wt%となるように、ジクロロエタン及びトルエン(1:4)の混合溶媒に溶解し、合成石英基板上にスピンコート法によって塗布することにより、センサー表面を作製した。
ドーパミンを10μMの濃度で50mMのほう酸塩バッファー(pH8)200μLに溶解し、これに200μLのアセトニトリルを添加することにより、検体サンプルを調製した。
センサー表面に検体サンプル400μLを垂らし、5分間静置した後、蒸留水でセンサー表面をリンスし、窒素ガスでセンサー表面を乾燥した。
一方、比較例として、ドーパミンを含まないほう酸塩バッファー(pH8)を用いた以外は実施例1と同様にして、センサー表面に垂らし、乾燥した。
センサー表面に442nmの青色光を照射することによって蛍光スペクトル測定(日立蛍光分光光度計F−7000)を行ったところ、ドーパミンを含まないほう酸塩バッファーとアセトニトリルの混合液を垂らした比較例では、蛍光は検出されなかったのに対し、ドーパミンを含む検体サンプルを垂らした場合、520nm付近にピークを有するスペクトルを得ることができた。
参考例1における検体サンプル中のドーパミンの濃度を、1μM、10μM、100μM、1000μMに変化させ、実施例1と同様にして蛍光スペクトル測定を行った。
その結果を図2に示す。図2において、横軸は波長、縦軸は強度を示している。図2に示す結果から、蛍光スペクトル強度から、ドーパミンの質量あるいは表面濃度を測定することができることがわかる。
メチルメタクリレート−スチレン共重合体(P(MMA−co−St))及び蛍光誘導体化物質であるNBD−Fを、それぞれが10wt%及び0.4wt%となるように、ジクロロエタン及びトルエン(1:4)の混合溶媒に溶解し、合成石英基板上にスピンコート法によって塗布することにより、センサー表面を作製した。
ドーパミン及びヒスタミンを1000μMの濃度で50mMのほう酸塩バッファー(pH8)200μLにそれぞれ溶解し、これらに200μLのアセトニトリルを添加することにより、ドーパミン及びヒスタミンの検体サンプルを調製した。
センサー表面に検体サンプル400μLをそれぞれ垂らし、5分間静置した後、蒸留水でセンサー表面をリンスし、窒素ガスでセンサー表面を乾燥した。
センサー表面に442nmの青色光を照射することによって蛍光スペクトル測定(日立蛍光分光光度計F−7000)を行ったところ、図3に示すように、ドーパミンを含む検体サンプルでは509nmにピークが得られ、一方、ヒスタミンを含む検体サンプルでは、518nm付近にピークを有するスペクトルを得ることができた。
メチルメタクリレート−スチレン共重合体(P(MMA−co−St))及び蛍光誘導体化物質である2,3−ナフタレンジアルデヒド(NDA)を、それぞれが10wt%及び1.0wt%となるように、ジクロロエタン及びトルエン(1:4)の混合溶媒に溶解し、無蛍光ガラス基板上にスピンコート法によって塗布することにより、センサー表面を作製した。
センサー表面に検体サンプル500μLを垂らし、10分間静置した後、蒸留水でセンサー表面をリンスし、窒素ガスでセンサー表面を乾燥した。
センサー表面に442nmの青色光を照射することによって蛍光スペクトル測定(日立蛍光分光光度計F−7000)を行ったところ、図4に示すように、470nm付近にピークを有するスペクトルを得ることができた。
以下の手順により、センサ表面を作成した。図5ないし図7は、その手順を模式的に示すものである。
(1)シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)を親水処理された合成石英ガラス基板表面に結合させることにより、表面をアミノ基で反応活性にする。(図5)
(2)次に表面がアミノ基で活性になった基板を、1,4−フェニレン−ジイソチオシアネート(PDIC)を含むほう酸バッファー(pH8)に浸漬し、チオ尿素結合を介してアミノ基にPDICを結合させる。(図6)
(3)その後、p−キシリレンジアミン(pXDA)を含むほう酸バッファー(pH8)に浸漬し、チオ尿素結合を介してPDICとpXDAを結合させることにより、末端にベンジルアミンが存在するセンサー表面を作製した。(図7)
実施例4と同様にして、蛍光スペクトル測定を375nmの励起により行った。図9は、蛍光スペクトルを示す図であり、実線はエピネフェリン反応前を、点線はエピネフェリン反応後を、それぞれ示している。
図9に示すように、470nm付近に、センサー表面のベンジルアミンとエピネフェリンとの反応により生成された蛍光体に起因する蛍光ピークが確認された。
2 蛍光誘導体化物質、又は蛍光誘導体化物質を含む層
Claims (10)
- ガラス、石英又は珪素を主成分とする基板の表面に、検出波長では蛍光を発しない蛍光誘導体化物質を固定化したセンサーであって、前記蛍光誘導体化物質は、検体中の特定物質と前記ガラス基板表面上で縮合反応して検出波長の蛍光を有する物質を形成するもの(但し、他の重合性単量体を共重合してなるものを除く)であり、
前記蛍光誘導体化物質は、シランカップリング剤を介して、又は、さらに別の接続分子を介して化学結合により固定化されていることを特徴とする蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。 - 前記シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
- 前記別の接続分子が、1,4−フェニレン−ジイソチオシアネートであることを特徴とする請求項2に記載の蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
- 前記蛍光誘導体化物質が、p−キシリレンジアミン又はベンジルアミンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
- 前記特定物質は、体内で分泌される物質であり、その構造中に芳香環又は環状炭化水素又は複素環と1級又は2級アミンを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光検出型ケミカルバイオセンサー。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載された蛍光検出型ケミカルバイオセンサーを用いて検体中の特定物質を検出する方法であって、ガラス、石英又は珪素を主成分とする基板上に検体液を流し、該検体中の特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応により検出波長の蛍光を有する物質を形成させ、その蛍光を検出することを特徴とする検出方法。
- 前記特定物質は、体内で分泌される物質であり、その構造中に芳香環又は環状炭化水素又は複素環と1級又は2級アミンを有することを特徴とする請求項6に記載の検出方法。
- 蛍光検出を行うために用いられる入射光は、前記基板上の前記蛍光誘導体化物質が固定化又は塗布された面、あるいはその反対側の面、あるいは前記基板の側面から照射されることを特徴とする請求項6又は7に記載の検出方法。
- 検体中の前記特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応により形成される物質の蛍光強度から、前記特定物質の量あるいは濃度を測定することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の検出方法。
- 検体中の前記特定物質と前記蛍光誘導体化物質との縮合反応により形成される物質の蛍光スペクトルから、前記特定物質の種類を特定することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の検出方法。
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