JP2007279027A - バイオセンサー表面の検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バイオセンサー表面の検査方法において、非破壊検査が可能であり、また検査のロット差による影響が小さく、かつ安定な評価結果が得られる方法を提供すること。
【解決手段】表面に生理活性物質を固定し、該生理活性物質と被験物質との相互作用を測定するために使用されるバイオセンサーの表面の検査方法において、イオン性化合物をバイオセンサーの表面に接触させて該表面の荷電状態を調べることを特徴とするバイオセンサー表面の検査方法。
【選択図】なし
【解決手段】表面に生理活性物質を固定し、該生理活性物質と被験物質との相互作用を測定するために使用されるバイオセンサーの表面の検査方法において、イオン性化合物をバイオセンサーの表面に接触させて該表面の荷電状態を調べることを特徴とするバイオセンサー表面の検査方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、バイオセンサー表面の検査方法に関する。特に本発明は、表面プラズモン共鳴分析に用いるためのバイオセンサーの表面の検査方法に関する。
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。SPR測定技術はチップの金属膜に接する有機機能膜近傍の屈折率変化を反射光波長のピークシフト又は一定波長における反射光量の変化を測定して求めることにより、表面近傍に起こる吸着及び脱着を検知する方法である。QCM測定技術は水晶発振子の金電極(デバイス)上の物質の吸脱着による発振子の振動数変化から、ngレベルで吸脱着質量を検出できる技術である。また、金の超微粒子(nmレベル)表面を機能化させて、その上に生理活性物質を固定して、生理活性物質間の特異認識反応を行わせることによって、金微粒子の沈降、配列から生体関連物質の検出ができる。
上記した技術においては、いずれの場合も、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、当技術分野で最も使われている表面プラズモン共鳴(SPR)を例として、説明する。一般に使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)、蒸着された金属膜、及びその上に生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜からなり、その官能基を介し、金属表面に生理活性物質を固定化する。該生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
例えば、生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜としては、金属と結合する官能基、鎖長の原子数が10以上のリンカー、及び生理活性物質と結合できる官能基を有する化合物を用いて、生理活性物質を固定化した測定チップが報告されている(特許文献1を参照)。
SPRに使用される生理活性物質を固定するための基板表面としては、例えば、カルボキシル基で修飾されている表面を使用することができる。この場合、カルボキシル基と生理活性物質の共有結合(カルボキシル基を活性化して生理活性物質のアミノ基と反応させる)、及びカルボキシル基の表面荷電を利用して生理活性物質を基板表面に固定している。カルボキシル基の数が多いほど固定できる生理活性物質の量も多くなり、カルボキシル基の数を数値化することは、生理活性物質固定用の表面の開発において重要である。
基板の表面に存在するカルボキシル基の相対数を知るためには、中性〜塩基性の蛋白質をpH4〜6程度のバッファに溶解したものを表面に流し、そのカルボキシル基のマイナスチャージと蛋白のプラスチャージの静電的な相互作用により、表面近傍に濃縮化されていく現象をSPR信号変化として検出する方法がある。しかし、上記の方法では、蛋白質の表面への非特異的な吸着現象が起こり、非破壊検査ができず、また蛋白質のロット差による影響が大きく、安定な評価結果が得られない、という問題がある。
本発明は上記した従来技術の問題を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、バイオセンサー表面の検査方法において、非破壊検査が可能であり、また検査のロット差による影響が小さく、かつ安定な評価結果が得られる方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イオン性化合物を使用してバイオセンサー表面の荷電状態を調べることによって、非破壊検査で、検査のロット差による影響が小さく、かつ安定な評価結果が得られるようなバイオセンサー表面の検査を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、表面に生理活性物質を固定し、該生理活性物質と被験物質との相互作用を測定するために使用されるバイオセンサーの表面の検査方法において、イオン性化合物をバイオセンサーの表面に接触させて該表面の荷電状態を調べることを特徴とするバイオセンサー表面の検査方法が提供される。
好ましくは、イオン性化合物は、非タンパク性化合物である。
好ましくは、イオン性化合物は、イオン性色素又はイオン性界面活性剤である。
好ましくは、イオン性化合物は、カチオン性化合物である。
好ましくは、カチオン性化合物のカチオン中心原子は窒素、リン、酸素、又は硫黄のいずれかである。
好ましくは、カチオン性化合物は、分子内に四級窒素カチオンを部分構造として有する化合物である。
好ましくは、イオン性化合物は、イオン性色素又はイオン性界面活性剤である。
好ましくは、イオン性化合物は、カチオン性化合物である。
好ましくは、カチオン性化合物のカチオン中心原子は窒素、リン、酸素、又は硫黄のいずれかである。
好ましくは、カチオン性化合物は、分子内に四級窒素カチオンを部分構造として有する化合物である。
好ましくは、光学的検出手段により荷電状態を検出する。さらに好ましくは、分光的測定法により荷電状態を検出する。特に好ましくは、表面プラズモン測定により荷電状態を検出する。
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の検査方法により複数のバイオセンサーの表面を検査して、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーを選択することを特徴とする、バイオセンサーの品質管理方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の検査方法により複数のバイオセンサーの表面を検査して、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーを選択することを特徴とする、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーの製造方法が提供される。
本発明のバイオセンサー表面の検査方法によれば、安定した高い信号でバイオセンサーの表面荷電の相対数を知ることができる。また、本発明によれば、非破壊検査が可能であり、また検査のロット差による影響が小さく、かつ安定な評価結果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明によるバイオセンサー表面の検査方法は、表面に生理活性物質を固定し、該生理活性物質と被験物質との相互作用を測定するために使用されるバイオセンサーの表面の検査方法であって、イオン性化合物をバイオセンサーの表面に接触させて該表面の荷電状態を調べることを特徴とする方法である。
本発明によるバイオセンサー表面の検査方法は、表面に生理活性物質を固定し、該生理活性物質と被験物質との相互作用を測定するために使用されるバイオセンサーの表面の検査方法であって、イオン性化合物をバイオセンサーの表面に接触させて該表面の荷電状態を調べることを特徴とする方法である。
本発明におけるイオン性化合物とは、正電荷もしくは負電荷を帯びた分子(好ましくは有機分子)のことである。正電荷を帯びたイオン性化合物をカチオン性化合物、負電荷を帯びたイオン性化合物をアニオン性化合物と呼ぶ。
本発明は、表面に固定された生理活性物質と検体物質の相互作用を測定するバイオセンサーにおいて、前記表面の荷電状態をイオン性化合物を用いて検出することを特徴とする。表面が負電荷を帯びている場合はカチオン性化合物を、正電荷を帯びている場合はアニオン性化合物を用い、静電相互作用により表面に引き寄せられたイオン性化合物の量を測定することで荷電状態を知ることができる。
本発明で用いるイオン性化合物は、タンパク質でも非タンパク性化合物でもよいが、非タンパク性化合物の方が好ましく、イオン性の有機化合物がさらに好ましく、分子量50以上1000以下のイオン性の低分子有機化合物が特に好ましい。なお、イオン性化合物としてタンパク質を使用する場合には、検査のロット間の差の影響を小さくするためにも、遺伝子組み換えタンパク質を使用するなど、均一で性質にバラツキの少ないタンパク質を使用することが好ましい。
イオン性化合物の具体例としては、イオン性色素、イオン性蛍光物質、又はイオン性界面活性剤などを挙げることができる。
イオン性色素のうちカチオン色素(塩基性色素)としては、オーラミン(Auramine)、メチルバイオレット、メチレンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、及び塩基性フクシンなどを挙げることができる。イオン性色素のうちアニオン性色素(酸性色素)としては、1〜3個のスルホン酸基又はカルボキシル基の陰イオン性の水溶性基を持ち、発色団としてモノアゾ、ジスアゾ、アントラキノン、トリフェニルメタンなどを持つ色素を挙げることができ、具体的には、C.I.Acid Orange 7、C.I.Acid Red 114、C.I.Acid Blue 40、C.I.Acid Violet 49などを挙げることができる。
イオン性界面活性剤のうちカチオン性(陽イオン系)界面活性剤としては、(1)アルキルトリメチルアンモニウム塩、(2)ジアルキルジメチルアンモニウム塩、(3)トリエタノールアミン・ジ脂肪酸エステル四級塩、(4)N−ヒドロキシエチル−N−メチル−プロパンジアミンの脂肪酸モノエステルモノアミドの塩、(5)アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、(6)アルキルアンモニウム塩、及び(7)アルキルピリジニウム塩などを挙げることができ、具体的には、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどを挙げることができる。
また、イオン性界面活性剤のうちアニオン性(陰イオン系)界面活性剤としては、(1)石鹸(脂肪酸ナトリウム)、(2)硫酸アルキル塩、(3)硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、(4)アルキルベンゼンスルホン酸塩、(5)α−オレフィンスルホン酸塩、(6)モノアルキルリン酸塩、(7)N−アシル−N−メチルタウレート、(8)アシルイセチオン酸塩、(9)N−アシルグルタメート、(10)N−アシルザルコシネート、及び(11)アルケニルコハク酸塩などを挙げることができる。
本発明で用いるイオン性化合物としてカチオン性化合物を使用する場合、そのカチオン中心原子は、窒素、リン、酸素、硫黄原子のいずれかであることが好ましい。さらに、中心原子が窒素原子である場合、本発明で用いるイオン性化合物は、分子内に四級窒素カチオンを部分構造として有することが好ましい。四級窒素カチオンを部分構造として有する化合物としては、例えば、上記した陽イオン系界面活性剤、カチオン色素などが挙げられる。
これらのイオン性化合物の使用濃度範囲としては、0.001〜1mg/mlが好ましい。
更に好ましくは、0.005〜0.5mg/mlの範囲であり、最も好ましい範囲は、0.01〜0.5mg/mlである。
これらのイオン性化合物の使用濃度範囲としては、0.001〜1mg/mlが好ましい。
更に好ましくは、0.005〜0.5mg/mlの範囲であり、最も好ましい範囲は、0.01〜0.5mg/mlである。
本発明で言うバイオセンサーとは最も広義に解釈され、生体分子間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出するセンサーを意味する。通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
本発明の方法において検査されるバイオセンサーでは、金属表面又は金属膜を基板として用いることができる。金属表面あるいは金属膜を構成する金属としては、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。それらの金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、0.1nm以上500nm以下であるのが好ましく、特に1nm以上200nm以下であるのが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上10nm以下であるのが好ましい。
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。
金属膜は好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。本発明で使用することができる基板としては例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、一般的にはBK7等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
上記の基板は、測定ユニットの誘電ブロックに固定され、一体化されて測定チップを構成しており、この測定チップが交換可能に形成されていてもよい。以下にその例を示す。
図1は、SPRを利用した測定に用いられるセンサユニット10の分解斜視図である。センサユニット10は、透明な誘電体である全反射プリズム(光学ブロック)20と、この全反射プリズム20の上に取り付けられる流路部材30とで構成される。流路部材30は、図中奥側に位置する第1流路31と、図中手前側に位置する第2流路32との2種類の流路を有している。詳細は後述するが、センサユニット10を用いて測定を行う際には、これら2つの流路31、32を1組として、1つの試料の測定が行われる。流路部材30には、各流路31、32が、それぞれ長手方向に6つずつ設けられており、1つのセンサユニット10で6つの試料を測定できるようにしている。なお、各流路31、32の数は、6つに限ることなく、5つ以下でもよいし7つ以上でもよい。
全反射プリズム20は、長尺な台形柱状に形成されたプリズム本体21と、このプリズム本体21の一端に設けられた把持部22と、プリズム本体21の他端に設けられた突出部23とからなる。この全反射プリズム20は、例えば、押し出し法などによって型成形されるものであり、プリズム本体21、把持部22、突出部23の各部は、一体に成形されている。
プリズム本体21は、下底よりも上底の方が長い略台形の縦断面を有しており、底面側面から照射された光を上面21aに集光する。プリズム本体21の上面21aには、SPRを励起するための金属膜(薄膜層)25が設けられている。金属膜25は、流路部材30の各流路31、32と対面するように、長方形状をなしており、例えば、蒸着法などによって成形される。この金属膜25としては、例えば、金や銀などが使用され、その膜厚は、例えば、50nmである。なお、金属膜25の膜厚は、金属膜25の素材や測定時に照射される光の波長などに応じて適宜選択される。
金属膜25の上には、生理活性物質を固定化するための層26が設けられている。疎水性高分子化合物又はポリヒドロキシ高分子化合物を含む層26は、生理活性物質を固定させるための結合基を有するものであり、この疎水性高分子化合物又はポリヒドロキシ高分子化合物を含む層26を介して金属膜25上に生理活性物質が固定される。
好ましくは、基板は、疎水性高分子化合物又はポリヒドロキシ高分子化合物でコーティングした金属表面又は金属膜であるか、あるいは自己組織化膜を有する金属表面又は金属膜である。なお、疎水性高分子化合物又はポリヒドロキシ高分子化合物は、基板上に形成した自己組織化膜に結合・固定化されていてもよい。
疎水性高分子化合物としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられる。
ポリヒドロキシ高分子化合物としては、例えば多糖類(例えばアガロース、デキストラン、カラギーナン、アルギン酸、デンプン、セルロース)、または合成高分子化合物(例えばポリビニルアルコール)などを挙げることができる。本発明においては、多糖類が好ましく用いられ、デキストランが最も好ましい。
本発明においては、好ましくは、平均分子量1万以上200万以下のポリヒドロキシ高分子化合物が用いられる。好ましくは2万以上200万以下、さらに好ましくは3万以上100万以下、最も好ましくは20万以上80万以下のポリヒドロキシ高分子化合物を用いることができる。
本発明に使用するポリヒドロキシ高分子化合物は、基板上に固定化した際、水溶液中の膜厚が1nm以上300nm以下であることが好ましい。膜厚が薄いと生理活性物質固定量が減少したり、センサー表面の水和層が薄くなるため、被検体物質との相互作用が検出しにくくなる。膜厚が厚いと被検体物質が膜内に拡散する障害となり、また特にセンサー基板のポリヒドロキシ高分子化合物固定面の反対側から相互作用を検出する場合は検出表面から相互作用形成部までの距離が長くなり、検出感度が低くなる。水溶液中のポリヒドロキシ高分子化合物膜厚はAFM、エリプソメトリーなどで評価することができる。
ポリヒドロキシ高分子化合物は、例えば塩基性条件下でブロモ酢酸と反応させることでカルボキシ化できる。反応条件の制御により、ポリヒドロキシ化合物が初期状態で含有するヒドロキシ基の一定の割合をカルボキシ化できる。本発明においては例えば、1〜90%のヒドロキシ基をカルボキシ化することができる。なお、任意のポリヒドロキシ高分子化合物で表面被覆された表面について、例えば、以下の方法でカルボキシ化率を算出することができる。膜表面をジ−tert−ブチルカルボジイミド/ピリジン触媒を用いてトリフルオロエタノールで50℃、16時間、気相修飾し、ESCA(electron spectroscopy for chemical analysis)でトリフルオロエタノール由来のフッ素量を測定し、膜表面の酸素量との比率(以下、F/O値と呼ぶ)を算出する。全てのヒドロキシ基がカルボキシ化された場合の理論的なF/O値をカルボキシ化率100%とし、任意の条件でカルボキシ化した時のF/O値を測定することで、その時のカルボキシ化率を算出することができる。
次に、自己組織化膜を形成することができる有機分子X1−R1−Y1について説明する。 X1は金属膜に対する結合性を有する基である。具体的には、非対称又は対称スルフィド(−SSR11Y11、−SSR1Y1)、スルフィド(−SR11Y11、−SR1Y1)、ジセレニド(−SeSeR11Y11、−SeSeR1Y1)、セレニド(SeR11Y11、−SeR1Y1)、チオール(−SH)、ニトリル(−CN)、イソニトリル、ニトロ(−NO2)、セレノール(−SeH)、3価リン化合物、イソチオシアネート、キサンテート、チオカルバメート、ホスフィン、チオ酸またはジチオ酸(−COSH、−CSSH)が好ましく用いられる。
R1(とR11)は場合によりヘテロ原子により中断されており、好ましくは適当に密な詰め込みのため直鎖(枝分かれしていない)であり、場合により二重及び/又は三重結合を含む炭化水素鎖である。鎖の長さは10原子を越えることが好ましい。炭素鎖は場合により過弗素化されることができる。
Y1とY11はポリヒドロキシ高分子化合物を結合させるための基である。Y1とY11は好ましくは同一であり、ポリヒドロキシ高分子化合物に直接又は活性化後結合できるような性質を持つ。具体的にはヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、アルデヒド、ヒドラジド、カルボニル、エポキシ、又はビニル基などを用いることができる。
有機分子X1−R1−Y1の具体例としては、10-カルボキシ-1-デカンチオール、4,4'-ジチオジブチリックアシッド、11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオール、11-アミノ-1-ウンデカンチオールなどが挙げられる。
また、本発明においては、自己組織化膜を形成することができる分子として一般式A−1(一般式A−1において、nは3から20の整数を示し、Xは官能基を示す)に示すアルカンチオール誘導体を使用することができ、この分子により、Au-S結合とアルキル鎖同士のvan der Waals力に基づき、配向性を持つ単分子膜が自己組織的に形成される。自己組織化膜は、アルカンチオール誘導体の溶液中に金基板を浸漬するという極めて簡便な手法で作成される。一般式A−1においてXにポリヒドロキシ高分子化合物を結合可能な官能基を有する化合物を用いて自己組織化膜を形成させることで、ポリヒドロキシ高分子化合物と基板を結合させることが可能となる。
また、本発明において、ポリヒドロキシ高分子化合物と結合させるための基として、アミノ基を使用する場合、末端にアミノ基を有するアルカンチオールは、アルキル鎖を介してチオール基とアミノ基が連結している化合物(一般式A−2)(一般式A−2において、nは3から20の整数を示す)でもよく、末端にカルボキシル基を有するアルカンチオール(一般式A−3、A−4)(一般式A−3においてnは3から20の整数を示し、一般式4においてnはそれぞれ独立に1から20の整数を示す)と大過剰のヒドラジドまたはジアミンを反応させた化合物でもよい。末端にカルボキシル基を有するアルカンチオールと大過剰のヒドラジドまたはジアミンとの反応は、溶液状態で行ってもよく、また、末端にカルボキシル基を有するアルカンチオールを基板表面に結合した後、大過剰のヒドラジドまたはジアミンを反応させてもよい。
A-2〜A-4のアルキル基の繰返し数は、3以上20以下が好ましく、さらに3以上16以下が好ましく、4以上8以下が最も好ましい。アルキル鎖が短いと自己組織化膜を形成しにくく、アルキル鎖が長いと水溶性が低下し、ハンドリングが困難になる。
本発明に用いるジアミンとしては、任意の化合物を用いることが可能であるが、バイオセンサー表面に用いる場合、水溶性ジアミンが好ましい。水溶性ジアミンとしては具体的に、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ピペラジン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジヘキサメチレントリアミン、1.4−ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4‘−ジアモノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4‘−ジアミノジフェニルケトン、4,4‘−ジアミノジフェニルスルホン酸等の芳香族ジアミンが挙げられる。バイオセンサー表面の親水性を向上させるという観点から、2つのアミノ基をエチレングリコールユニットで連結した化合物(一般式5)を用いることも可能である。本発明に用いるジアミンとしては、好ましくはエチレンジアミンまたは一般式A−5(一般式A−5において、n及びmは、それぞれ独立に1から20の整数を示す)で表される化合物であり、より好ましくは、エチレンジアミンまたは1,2-ビス(アミノエトキシ)エタン(一般式A−5において、n=2,m=1)である。
これらのアルカンチオールは、単独で自己組織化膜を形成することも可能であり、また、他のアルカンチオールと混合して自己組織化膜を形成することも可能である。バイオセンサー表面に用いる場合、他のアルカンチオールとしては、生理活性物質の非特異吸着を抑制可能な化合物を用いることが好ましい。生理活性物質の非特異吸着を抑制可能な自己組織化膜に関しては、前述のWhitesides教授らにより詳細に検討されており、親水性基を有するアルカンチオールから形成された自己組織化膜が非特異吸着抑制に有効であることが報告されている(Langmuir,17,2841-2850, 5605-5620, 6336-6343 (2001))。本発明において、混合単分子膜を形成するアルカンチオールは、前記論文に記載された化合物を好ましく用いることが可能である。非特異吸着抑制能に優れ、入手が容易であることから、水酸基を有するアルカンチオール(一般式A−6)あるいはエチレングルコールユニットを有するアルカンチオール(一般式A−7)(一般式A−6において、nは3から20の整数を示し、一般式A−7において、n及びmは、それぞれ独立に1から20の整数を示す)を用いることが好ましい。
数種類のアルカンチオールを混合して自己組織化膜を形成する場合、A-2〜A-4のアルキル基の繰返し数は、4以上20以下が好ましく、さらに4以上16以下が好ましく、4以上10以下が最も好ましい。また、A-6,A-7のアルキル基の繰返し数は、3以上16以下が好ましく、さらに5以上12以下が好ましく、5以上10以下が最も好ましい。
本発明の方法で検査されるバイオセンサーにおいては、基板の最表面に生理活性物質を固定化することができる官能基を有することが好ましい。ここで言う「基板の最表面」とは、「基板から最も遠い側」という意味であり、さらに具体的には、「基板上にコーティングした化合物中の基板から最も遠い側」という意味である。
生理活性物質を固定化することができる官能基の具体例としては−COOH、−SO3H、アンモニウム基、ホスホニウム基、−NR1R2(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−CHO、−NR3NR1R2(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−OH、−SH、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基などが挙げられる(ここで、低級アルキル基における炭素数は特に限定されないが、一般的にはC1〜C10程度であり、好ましくはC1〜C6である)。本発明では、荷電を有する官能基であることが好ましく、例えば、−COOH、−SO3H、アンモニウム基、ホスホニウム基などが好ましい。特に好ましい官能基は、−COOHである。
最表面に官能基を導入する方法としては、それらの官能基の前駆体を含有する高分子を金属表面あるいは金属膜上にコーティングした後、化学処理により最表面に位置する前駆体からそれらの官能基を生成させる方法が挙げられる。例えば−COOCH3基を含有する高分子化合物であるポリメチルメタクリレートを金属膜上にコーティングした後、その表面をNaOH水溶液(1N)に40℃16時間接触させると、最表面に−COOH基が生成する。
上記のようにして得られたバイオセンサー用表面において、上記の官能基を介して生理活性物質を共有結合させることによって、金属表面又は金属膜に生理活性物質を固定化することができる。上記のようにして生理活性物質を固定化したバイオセンサーは、当該生理活性物質と相互作用する物質の検出及び/又は測定のために使用することができる。
本発明の検査方法では、イオン性化合物をバイオセンサーの表面に接触させて該表面の荷電状態を調べる際に、バイオセンサー表面に存在する官能基とイオン性化合物との相互作用を、好ましくは光学的検出手段、より好ましくは分光的測定法、特に好ましくは、下記に説明するような表面プラズモン測定により測定する。
さらに本発明によれば、上記した本発明の検査方法により複数のバイオセンサーの表面を検査して、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーを選択することを特徴とする、バイオセンサーの品質管理方法、並びに上記した本発明の検査方法により複数のバイオセンサーの表面を検査して、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーを選択することを特徴とする、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーの製造方法が提供される。
本発明の検査方法により選別されたバイオセンサーは、例えば、透明基板上に配置される金属膜を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとして用いることができる。
表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるバイオセンサーであって、該センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。
表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置としては、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6−167443号公報参照)。上記の系を用いる表面プラズモン測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料液などの被測定物質に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角(θSP)より表面プラズモンの波数が分かると、被測定物質の誘電率が求められる。この種の表面プラズモン測定装置においては、全反射減衰角(θSP)を精度良く、しかも大きなダイナミックレンジで測定することを目的として、特開平11−326194号公報に示されるように、アレイ状の光検出手段を用いることが考えられている。この光検出手段は、複数の受光素子が所定方向に配設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設されたものである。
そしてその場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の配設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて全反射減衰角(θSP)を特定し、被測定物質の屈折率に関連する特性を求めることが多い。
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
なおこの漏洩モード測定装置においても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段を用いることができ、またそれと併せて前述の微分手段が適用されることも多い。
また、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置は、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモン測定装置の場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置の場合はクラッド層および光導波層)上に上記被測定物質としてセンシング物質を固定し、該センシング物質上に種々の被検体が溶媒に溶かされた試料液を添加し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角(θSP)の角度を測定している。
試料液中の被検体が、センシング物質と結合するものであれば、この結合によりセンシング物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角(θSP)を測定し、該全反射減衰角(θSP)の角度に変化が生じているか否か測定することにより、被検体とセンシング物質の結合状態を測定し、その結果に基づいて被検体がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体、あるいは抗体と抗体が挙げられる。具体的には、ウサギ抗ヒトIgG抗体をセンシング物質として薄膜層の表面に固定し、ヒトIgG抗体を特定物質として用いることができる。
なお、被検体とセンシング物質の結合状態を測定するためには、全反射減衰(θSP)の角度そのものを必ずしも検出する必要はない。例えばセンシング物質に試料液を添加し、その後の全反射減衰角(θSP)の角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。前述したアレイ状の光検出手段と微分手段を全反射減衰を利用した測定装置に適用する場合であれば、微分値の変化量は、全反射減衰角(θSP)の角度変化量を反映しているため、微分値の変化量に基づいて、センシング物質と被検体との結合状態を測定することができる(本出願人による特開2003−106926参照)。このような全反射減衰を利用した測定方法および装置においては、底面に予め成された薄膜層上にセンシング物質が固定されたカップ状あるいはシャーレ状の測定チップに、溶媒と被検体からなる試料液を滴下供給して、上述した全反射減衰角(θSP)の角度変化量の測定を行っている。
さらに、ターンテーブル等に搭載された複数個の測定チップの測定を順次行うことにより、多数の試料についての測定を短時間で行うことができる全反射減衰を利用した測定装置が、特開2001−330560号公報に記載されている。
また、本発明のバイオセンサーは、例えば基板表面に導波路構造を保持した、屈折率変化を導波路を用いて検出するバイオセンサーとして用いることができる。この場合、基板表面の導波構造物は、回折格子と場合によっては付加層とを有している、この導波構造物は、薄い誘電層からなる平面的な導波体から成る。導波体に集光された光線は全反射によりこの薄い層内に導かれる。この導かれる光波(以降モードと呼ぶ)の伝播速度は、C/Nの値をとる。ここでCは、真空中での光速であり、Nは導波体内を導かれるモードの有効屈折率である。有効屈折率Nは、一面では導波体の構成により、他面では薄い導波層に隣接する媒体の屈折率により決まる。光波の伝導は、薄い平面層内のみでなく、別の導波構造物、特にストリップ状の導波体によっても行われる。その場合は、導波構造物はストリップ状のフィルムの形状にされる。有効屈折率Nの変化は、導波層に隣接する媒体の変化と導波層自身もしくは導波層に隣接する付加層の屈折率および厚さの変化とにより生じることがバイオセンサーにとって重要な要素である。
この方式のバイオセンサーの構成については、例えば特公平6−27703号公報4ページ48行目から14ページ15行目および第1図から第8図、米国特許第 6,829,073号のcolumn6の31行目からcolumn7の47行目および第9図A,Bに記載されている。
例えば、一つの実施形態として、薄層が平面状の導波路層が基材(たとえばパイレックス(登録商標)・ガラス)上に設けられている構造がある。導波路層と基材とは、一緒にいわゆる導波体を形成する。導波路層は、たとえば酸化物層(SiO2,SnO2、Ta2O5,TiO2,TiO2-SiO2,HfO2,ZrO2,Al2O3,Si3N4,HfON,SiON,酸化スカンジウムまたはこれらの混合物)、プラスチック層(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなど)、など多層の積層体が可能である。光線が全反射により導波路層内を伝播するには、導波路層の屈折率が隣接媒体(たとえば基材や後述の付加層)の屈折率より大でなければならない。基材もしくは測定物質に向いた導波路層表面もしくは導波路層体積内には、回折格子が配置されている。回折格子は、型押し、ホログラフィまたはその他の方法によって基板内に形成することができる。次いでより高い屈折率を有する薄い導波路膜を回折格子の上表面に被覆する。回折格子は導波路層への入射光線を集束したり、既に導波路層内を導かれているモードを放出したり、そのモードの一部を進行方向へ透過させ、一部を反射させたりする機能を持つ。導波路層は、格子域を付加層でカバーしておく。付加層は必要に応じて多層膜とすることができる。この付加層は、測定物質に含まれている物質の選択的検知を可能にする機能を持たせることができる。好ましい態様として付加層の最表面に、検知機能を持つ層を設けることができる。このような検知機能を持つ層として、生理活性物質を固定化し得る層を用いることができる。
別の実施形態として、回折格子導波路のアレイがマイクロプレートのウェル内に組み込まれる形態も可能である(特表2007-501432)。すなわち回折格子導波路がマイクロプレートのウェル底面にアレイ状に配列されていれば、スループットの高い薬物または化学物質のスクリーニングを可能にすることができる。
回折格子導波路は、回折格子導波路の上層(検知領域)上の生理活性物質検出を可能にするために、入射光線、および反射光を検出して屈折特性の変化を検出する。この目的のため、1つまたはそれより多くの光源(例えば、レーザ、ダイオード)及び1つまたはそれより多くの検出器(例えば、分光計、CCDカメラまたはその他の光検出器)を用いることができる。屈折率変化を測定するための方法として、2つの異なる動作モード−分光法、及び角度法がある。分光法においては、入射光として広帯域ビームが回折格子導波路に送られ、反射光が集められて、例えば分光計で測定される。共鳴波長(ピーク)のスペクトル位置を観測することにより、回折格子導波路の表面またはその近傍での屈折率変化すなわち結合を測定することができる。また、角度法においては、公称上単一波長の光がある範囲の照射角を生じるように集束されて、回折格子導波路内に向けられる。反射光がCCDカメラまたはその他の光検出器によって測定される。回折格子導波路によって反射された共鳴角の位置を測定することにより、回折格子導波路の表面またはその近傍での屈折率変化すなわち結合を測定することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
以下の実験は、特開2001−330560号公報の図22に記載の装置(以下、本発明の表面プラズモン共鳴測定装置と呼ぶ)(本明細書において図2として示す)、及び同公報の図23に記載の誘電体ブロック(以下、本発明の誘電体ブロックと呼ぶ)(本明細書において図3として示す)を用いて行った。
以下の実験は、特開2001−330560号公報の図22に記載の装置(以下、本発明の表面プラズモン共鳴測定装置と呼ぶ)(本明細書において図2として示す)、及び同公報の図23に記載の誘電体ブロック(以下、本発明の誘電体ブロックと呼ぶ)(本明細書において図3として示す)を用いて行った。
図2に示す表面プラズモン共鳴測定装置は、測定ユニットを支持する支持体として、互いに平行に配された2本のガイドロッド400,400に摺動自在に係合し、それらに沿って図中の矢印Y方向に直線移動自在とされたスライドブロック401が用いられている。そしてこのスライドブロック401には、上記ガイドロッド400,400と平行に配された精密ねじ402が螺合され、この精密ねじ402はそれとともに支持体駆動手段を構成するパルスモータ403によって正逆回転されるようになっている。
なおこのパルスモータ403の駆動は、モータコントローラ404によって制御される。すなわちモータコントローラ404には、スライドブロック401内に組み込まれてガイドロッド400,400の長手方向における該スライドブロック401の位置を検出するリニアエンコーダ(図示せず)の出力信号S40が入力され、モータコントローラ404はこの信号S40に基づいてパルスモータ403の駆動を制御する。
またガイドロッド400,400の側下方には、それに沿って移動するスライドブロック401をそれぞれ左右から挟む形で、レーザ光源31および集光レンズ32と、光検出器40とが配設されている。集光レンズ32は光ビーム30を集光する。また、光検出器40が設置されている。
ここで本実施形態においては、一例として8個の測定ユニット10を連結固定してなるスティック状のユニット連結体410が用いられ、測定ユニット10は8個一列に並べた状態でスライドブロック401にセットされるようになっている。
図3は、このユニット連結体410の構造を詳しく示すものである。ここに示される通りユニット連結体410は、測定ユニット10が8個、連結部材411により連結されてなるものである。
この測定ユニット10は、誘電体ブロック11と試料保持枠13とを例えば透明樹脂等から一体成形してなるものであり、ターンテーブルに対して交換可能な測定チップを構成している。交換可能とするためには、例えばターンテーブルに形成された貫通孔に、測定ユニット10を嵌合保持させる等すればよい。なお本例では、金属膜12の上にセンシング物質14が固定されている。
また、この表面プラズモン共鳴測定装置は、測定ユニット、およびブドウ糖溶液を使用して屈折率の変化に対応する信号変化を予め測定し、屈折率10-6の変化が1RVになるよう補正を行っている。ブドウ糖溶液は予め旋光度を測定することで、正確な濃度を得た。
(1)測定チップ1〜4の作製
金属膜として50nmの金が蒸着された本発明の誘電体ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分間処理した後、エタノール/水(80/20)中11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールの5.0mM溶液を金属膜に接触するように添加し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄を行った。
金属膜として50nmの金が蒸着された本発明の誘電体ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分間処理した後、エタノール/水(80/20)中11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールの5.0mM溶液を金属膜に接触するように添加し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄を行った。
次に、11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールで被覆した表面を10質量%のエピクロロヒドリン溶液(溶媒:0.4M水酸化ナトリウム及びジエチレングリコールジメチルエーテルの1:1混合溶液)に接触させ、25℃の振盪インキュベーター中で4時間反応を進行させた。表面をエタノールで2回、水で5回洗浄した。
次に、25質量%のデキストラン(T500,Pharmacia)水溶液40.5mlに4.5mlの1M水酸化ナトリウムを添加し、その溶液をエピクロロヒドリン処理表面上に接触させた。次に振盪インキュベーター中で25℃で20時間インキュベートした。表面を50℃の水で10回洗浄した。
続いて、ブロモ酢酸3.5gを27gの2M水酸化ナトリウム溶液に溶解した混合物を上記デキストラン処理表面に接触させて、35℃の振盪インキュベーターで3時間インキュベートした。表面を水で洗浄した。この手順を1回行ったものを測定チップ1、以下手順を行った回数に合わせて測定チップ2〜4を作成した。
(2)流路系の作成
各測定チップに対し、誘電体ブロックをシリコンゴムでふたをすることで、内容積15μlのセルを作成した。また、ふたのシリコンゴムに2箇所、1mmφの穴をあけ、内径0.5mm、外径1mmのテフロン(登録商標)チューブを通し、流路系を作成した。この流路系のチップをそれぞれ、本発明の表面プラズモン共鳴測定装置に設置した。
各測定チップに対し、誘電体ブロックをシリコンゴムでふたをすることで、内容積15μlのセルを作成した。また、ふたのシリコンゴムに2箇所、1mmφの穴をあけ、内径0.5mm、外径1mmのテフロン(登録商標)チューブを通し、流路系を作成した。この流路系のチップをそれぞれ、本発明の表面プラズモン共鳴測定装置に設置した。
(3)濃縮値の測定
流路系内をAcetate5.0バッファー(BIACORE社製)で満たした。続いて0.1mg/mlの濃度の表1に記載の化合物の溶液(Acetate5.0に溶解)で満たして2分間放置し、その信号変化(濃縮値)を測定した。その後、Acetate5.0バッファーで信号が戻るまで洗浄した。信号が戻らない場合は、10mM NaOH水溶液を1分間満たした後、Acetate5.0バッファーで洗浄する手順を信号が0に戻るまで繰り返した。
流路系内をAcetate5.0バッファー(BIACORE社製)で満たした。続いて0.1mg/mlの濃度の表1に記載の化合物の溶液(Acetate5.0に溶解)で満たして2分間放置し、その信号変化(濃縮値)を測定した。その後、Acetate5.0バッファーで信号が戻るまで洗浄した。信号が戻らない場合は、10mM NaOH水溶液を1分間満たした後、Acetate5.0バッファーで洗浄する手順を信号が0に戻るまで繰り返した。
各測定チップに対して、上記の手順を繰り返し、表1の化合物の濃縮値を測定した。
正確な相対関係を評価するには、濃縮値は最大5000RV以上が好ましく、ロット差による影響が10%以下であることが好ましい。
正確な相対関係を評価するには、濃縮値は最大5000RV以上が好ましく、ロット差による影響が10%以下であることが好ましい。
(4)Carbonic Anhydrase固定チップの作成
上記の各流路内を1×PBS(pH7.4)バッファーで満たした。その後、200mM EDC(N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロライド)と50mM NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)の混合溶液で満たし、7分間放置した。Acetate5.0バッファーを満たした後、0.25mg/mlのCarbonic Anhydrase(SIGMA製)のAcetate5.0バッファー溶液に入れ替え15分放置し、蛋白を固定した。流路内を1M エタノールアミン溶液に置き換え、7分間放置した。流路内を1×PBSに置き換え、蛋白固定チップを作成し、蛋白固定前後の信号変化で蛋白の固定量を求めた。
上記の各流路内を1×PBS(pH7.4)バッファーで満たした。その後、200mM EDC(N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロライド)と50mM NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)の混合溶液で満たし、7分間放置した。Acetate5.0バッファーを満たした後、0.25mg/mlのCarbonic Anhydrase(SIGMA製)のAcetate5.0バッファー溶液に入れ替え15分放置し、蛋白を固定した。流路内を1M エタノールアミン溶液に置き換え、7分間放置した。流路内を1×PBSに置き換え、蛋白固定チップを作成し、蛋白固定前後の信号変化で蛋白の固定量を求めた。
各測定チップのCarbonic Anhydrase固定量は、
測定チップ1:3000RV
測定チップ2:4500RV
測定チップ3:5300RV
測定チップ4:5600RV
であった。同じ条件で蛋白を固定した場合、蛋白の固定量はカルボキシル基の数と相関することが分かっており、測定チップ1〜4は、ブロモ酢酸処理回数に応じて蛋白固定量、すなわちカルボキシル基の相対数が増加していることが分かる。
測定チップ1:3000RV
測定チップ2:4500RV
測定チップ3:5300RV
測定チップ4:5600RV
であった。同じ条件で蛋白を固定した場合、蛋白の固定量はカルボキシル基の数と相関することが分かっており、測定チップ1〜4は、ブロモ酢酸処理回数に応じて蛋白固定量、すなわちカルボキシル基の相対数が増加していることが分かる。
また、表1の結果から、カチオン性化合物の濃縮値は、蛋白固定量(カルボキシル基の数)と良く相関しており、かつロット間のバラツキも小さいことが分かる。
図1について
10 センサユニット
20 全反射プリズム(光学ブロック)
21 プリズム本体
21a 上面
22 把持部
22a 溝
23 突出部
25 金属膜(薄膜層)
26 疎水性高分子化合物又はポリヒドロキシ高分子化合物を含む層
27 系合爪
28 係合部
28a 系合面
29a 基準平面
30 流路部材
31 第1流路
32 第2流路
33 本体部
34 取付部
35 系合孔
36 開口
SS1 センサ面
SS2 センサ面
図2と図3について
10 測定ユニット
11 誘電体ブロック
12 金属膜
13 試料保持枠
14 センシング物質
30 光ビーム
31 レーザ光源
32 集光レンズ
40 光検出器
S40 出力信号
400 ガイドロッド
401 スライドブロック
402 精密ねじ
403 パルスモータ
404 モータコントローラ
410 ユニット連結体
411 連結部材
10 センサユニット
20 全反射プリズム(光学ブロック)
21 プリズム本体
21a 上面
22 把持部
22a 溝
23 突出部
25 金属膜(薄膜層)
26 疎水性高分子化合物又はポリヒドロキシ高分子化合物を含む層
27 系合爪
28 係合部
28a 系合面
29a 基準平面
30 流路部材
31 第1流路
32 第2流路
33 本体部
34 取付部
35 系合孔
36 開口
SS1 センサ面
SS2 センサ面
図2と図3について
10 測定ユニット
11 誘電体ブロック
12 金属膜
13 試料保持枠
14 センシング物質
30 光ビーム
31 レーザ光源
32 集光レンズ
40 光検出器
S40 出力信号
400 ガイドロッド
401 スライドブロック
402 精密ねじ
403 パルスモータ
404 モータコントローラ
410 ユニット連結体
411 連結部材
Claims (11)
- 表面に生理活性物質を固定し、該生理活性物質と被験物質との相互作用を測定するために使用されるバイオセンサーの表面の検査方法において、イオン性化合物をバイオセンサーの表面に接触させて該表面の荷電状態を調べることを特徴とするバイオセンサー表面の検査方法。
- 前記イオン性化合物が、非タンパク性化合物である、請求項1に記載の検査方法。
- 前記イオン性化合物が、イオン性色素又はイオン性界面活性剤である、請求項1又は2に記載の検査方法。
- 前記イオン性化合物が、カチオン性化合物である、請求項1から3の何れかに記載の検査方法。
- 前記カチオン性化合物のカチオン中心原子が窒素、リン、酸素、又は硫黄のいずれかである、請求項4に記載の検査方法。
- 前記カチオン性化合物が、分子内に四級窒素カチオンを部分構造として有する化合物である、請求項4又は5に記載の検査方法。
- 光学的検出手段により荷電状態を検出する、請求項1から6の何れかに記載の検査方法。
- 分光的測定法により荷電状態を検出する、請求項1から7の何れかに記載の検査方法。
- 表面プラズモン測定により荷電状態を検出する、請求項1から8の何れかに記載の検査方法。
- 請求項1から9の何れかに記載の検査方法により複数のバイオセンサーの表面を検査して、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーを選択することを特徴とする、バイオセンサーの品質管理方法。
- 請求項1から9の何れかに記載の検査方法により複数のバイオセンサーの表面を検査して、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーを選択することを特徴とする、一定範囲の荷電状態を有するバイオセンサーの製造方法。
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2007
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