JP5003386B2 - コイルスプリング - Google Patents

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Description

本発明は、コイルスプリングに関し、特に、その長さ方向に加えられた圧縮力に対して安定するコイルスプリングの構造に関するものである。
従来のコイルスプリングとしては、特許文献1が公知である。
図7乃至図9は従来のコイルスプリングの正面図、軸方向断面図、側面図である。
図7に示すように、コイルスプリング10の全長はLで、中央の線間隙間aである有効巻き部Aと両端の線間隙間bの添え巻き部Bから構成される。有効巻き部Aの線間隙間aは、一定とし、添え巻き部Bの線間隙間bは巻き端から中央に行くにつれて次第に増加させている。コイルスプリング10の材質はバネ用オイルテンパー線で、右巻きのコイルばねである。両端の座面16A,16Bは研削加工により平面加工されている。
図8はコイルスプリング10の軸方向の断面図で、有効巻き部Aでは、素線自体の断面積であるが、添え巻き部Bにおいては巻端11が平坦に切削加工されているため素線の断面13は、素線の断面積より小さくなっている。
図9のコイルスプリング10を右方から見ると、添え巻き部Bの座面16Aには巻回の開始点15があり、コイルスプリング10は時計周りに構成されている。なお、非接触範囲17Aは、素線の巻き始めの1ターンで平面に接触しない箇所である。
このような構成によって、コイルスプリング10の添え巻き部Bから中央の有効巻き部Aに比較して、コイルスプリング10の断面積の変化が有効巻き部Aでは比較的小さいので、圧縮時に比較的断面積の小さい添え巻き部Bでは線間隙間が小さく、撓みが発生すると、破断撓みに達する前に隣の素線に接触し、それ以上の撓みが防止されて破断が回避されるから、コイルスプリングの機械的信頼性を向上させている。
特開2005−106134
ところが、特許文献1の技術は、コイルスプリング10の断面積の変化が大きい添え巻き部Bの破断が防止できても、所定数巻回したコイルスプリング10を圧縮すると座屈が大きくなり、コイルスプリング10を所定の限られた空間に収納すると、壁面にコイルスプリング10の一部が接触し、弾性係数が変化する可能性がある。
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、座屈を少なくし垂直方向の弾性係数を正確に発揮できるコイルスプリングの提供を目的とするものである。
請求項1にかかる複数回巻回してなるコイルスプリングは、コイルスプリングの素線を1回(360度)巻いたときの有効巻き数を1ターンとしたとき、前記コイルスプリングを同一平面上の環状位置として表現するとき、巻き始め端部と巻き終わり端部の位置が0.25±0.25ターンの範囲内とし、かつ、巻き始め端部面と巻き終わり端部面の各面が平面と接触したときの非接触範囲が各略0.1〜0.3ターン以下としたものである。
ここで、1ターンは、コイルスプリングの長さ方向に直角な面として表現するとき、即ち、平面的に見て360度の環状であり、同一平面で巻き始め端部と巻き終わり端部の位置が0.25±0.25ターンの範囲内としたものである。
ここで、非接触範囲が各略0.1〜0.3ターンは、巻き始め端部の前に非接触範囲があり、また、巻き終わり端部の後に非接触範囲があるが、巻き始め端部の非接触範囲と巻き終わり端部の非接触範囲とが重なり合わないから、コイルスプリングの環状位置の角度変化によって極端な弾性係数の差異が生じないものである。
請求項1にかかるコイルスプリングは、複数回巻回してなるコイルスプリングの素線を巻回したとき、前記コイルスプリングを同一平面上の環状位置として表現すると、巻き始め端部と巻き終わり端部の位置が0.25±0.25ターンの範囲内とし、かつ、巻き始め端部面と巻き終わり端部面の各面が平面と接触したとき、その各非接触範囲が略0.1〜0.3ターンの範囲としたものである。
したがって、巻き始め端部の非接触範囲と巻き終わり端部の非接触範囲とは重なり合わない位置とするものであるから、コイルスプリングの長さ方向から圧縮力を加えた場合、巻き始め端部と巻き終わり端部の面に加えられたコイルスプリングの長さ方向に加える外力を両端部がバランスよく受け止め、座屈を生じ難くすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図中、同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここでは重複する説明を省略する。
[実施の形態]
図1は本発明の実施の形態におけるコイルスプリングをリニアソレノイドバルブに領した場合の断面図である。図2は本発明にかかるコイルスプリングの巻き始め端部と巻き終わり端部を異にした実施の形態の説明概念図であり、また、図3は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの巻き始め端部と巻き終わり端部とを示す両端部面の説明図である。図4は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの0.25ターンの座屈の状態を示す説明図、図5は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの0.5ターンの座屈の状態を示す説明図、図6は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの0.75ターンの座屈の状態を示す説明図である。
図1において、本実施の形態のコイルスプリングを使用するリニアソレノイドバルブ100は、例えば、自動変速機の油圧回路に配設される。図示されない油圧回路のオイルポンプから吐出された油圧は、図示されないプライマリレギュレータバルブによって調圧されてライン圧になり、そのライン圧がリニアソレノイドバルブ100に供給される。
このリニアソレノイドバルブ100は、電流に基づいて作動し、電流に対応する油圧を図示されない摩擦係合要素のアクチュエータとして配設されている油圧サーボ機構に供給する。また、ソレノイド部120はソレノイド駆動部を構成し、調圧バルブ部140はソレノイド部120を駆動することによって作動させられるバルブ部を構成する。
ソレノイド部120は、コイルアッセンブリ121、コイルアッセンブリ121に対して進退自在に配設されたプランジャ122、コイルアッセンブリ121を包囲して配設された外側ヨーク123及び前記コイルアッセンブリ121のコイル124に電流を供給するためのターミナルを有している。また、コイルアッセンブリ121は、ボビン125に巻線126を巻装することによって形成されたコイル124の径方向の内方において、コイル124に隣接させて、コイル124の所定の箇所、本実施の形態においては前端(図において左端)の近傍より後方(図において右方)に延在させて配設された第2のヨーク筒状のエンド部127、コイル124の所定の箇所、本実施の形態においては前端の近傍より前方(図において左方)に配設された第1のヨークとしての環状のエンド部126、及びそれらのエンド部126、127間に配設された磁気抵抗部として形成された筒状の磁気遮蔽部128を備え、ボビン125とエンド部126、127及び磁気遮蔽部128とは、溶接、ロー付け、焼結接合、接着等によって一体的に組み付けられる。
コイルアッセンブリ121は、ターミナルの部分を除いて円筒状に形成され、コイルアッセンブリ121内(エンド部126、127及び磁気遮蔽部128の径方向の内方)には、軸方向において同じ径を有する中空部129が形成され、中空部129にプランジャ122が進退自在に、かつ、摺動自在に嵌入されている。したがって、プランジャ122は、中空部129に嵌入された状態でコイルアッセンブリ121によって支持されている。また、外側ヨーク123は、有底の筒状体からなり、筒状部及び円形の形状を有する底部を備え、深絞り、冷間鍛造等の塑性金属加工によって一体に形成されている。筒状部の前端にかしめ部が形成され、外側ヨーク123内にコイルアッセンブリ121を嵌入し、調圧バルブ部140をセットした後、かしめ部とスリーブ150の後端に形成されたフランジ部130とをかしめて、ソレノイド部120及び調圧バルブ部140が一体的に組み付けられている。
プランジャ122は、外周面が軸方向において同じ径を有し、軸方向においてコイル124より長く形成されている。そして、プランジャ122において、前端面(図において左端面)の中央に、調圧バルブ部140のスプール160の後端に形成されたプランジャ当接部161が当接させられ、後端面(図において右端面)には、前記底部から突出させて形成された当接部130が当接させられる。このように、底部に当接部130が形成され、かつ、当接部130の表面に非磁性体から成る外層が形成されるので、プランジャ122が外側ヨーク123に当接した状態において、プランジャ122と当接部130との間に磁界が生じるのを抑制できる。
調圧バルブ部140は、スリーブ150、そのスリーブ150に対して進退自在に嵌入されたスプール160、スリーブ150の前端にねじ止めされ、スプール160がスリーブ150から抜け出すのを防止する抜止め用のエンドプレート151、エンドプレート151とスプール160の前端との間に配設され、スプール160をソレノイド部120側に向けて所定のスプリング荷重で付勢する付勢部材としてのコイルスプリング1を有している。
スプール160は、前端に形成され、コイルスプリング1の後端を収容する収容部162aを備えた中径のランド162、ランド162の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ部163、グルーブ部163の後方に隣接させて形成された大径のランド164、ランド164の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ部165、グルーブ部165の後方に隣接させて形成された大径のランド166、ランド166の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ部167、及びグルーブ部167の後方に隣接させて形成されたプランジャ当接部161を有している。
グルーブ部167とプランジャ当接部161との間に環状の溝が形成され、その溝には弾性体からなる環状の薄板としてのダイヤフラム168の内周縁が取り付けられ、ダイヤフラム168の外周縁はフランジ部131とエンド部126との間に挟持されている。ダイヤフラム168は、スリーブ150内の空間と中空部129とを区画し、スリーブ150内に発生した鉄粉等が中空部129に進入するのを防止する。
スリーブ150は、図示しないプライマリレギュレータバルブによって調整されたライン圧が入力圧として供給される入力ポートP1、油圧サーボと接続され、出力圧を油圧サーボに対して出力するための出力ポートP2、密閉されたフィードバックポートP3、入力圧をドレーンとするドレーンポートP4、スリーブ150とランド162との間隙を抜けて流れた油をドレーンとするドレーンポートP5、及びスリーブ150とランド166との間隙を抜けて流れた油をドレーンとするドレーンポートP6を備え、フィードバックポートP3は、図示されないバルブボディとスリーブ150との間に形成されたフィードバック油路を介して出力ポートP2と連通させられ、出力圧がフィードバック圧として供給され、ランド74、76の面積差に対応するフィードバック力を発生させ、そのフィードバック力でスプール160を後方に付勢している。
したがって、スプール160は、コイル124に電流を供給したときにプランジャ122に発生させられる推力、コイルスプリング1のスプリング荷重及びフィードバック力を受け、プランジャ当接部161をプランジャ122に当接させた状態で、プランジャ122と一体的に進退する。なお、本実施の形態においては、プランジャ当接部161がプランジャ122に当接させられるようになっているが、プランジャ122とスプール160との間に、所定の長さを有するシャフトを配設することもできる。
次に、本実施の形態で説明したリニアソレノイドバルブ100の全体動作について説明する。
コイル124が非通電状態にされるプランジャ122の初期位置において、後端面が当接部130と当接させられ、入力ポートP1と出力ポートP2とは遮断されている。そして、ターミナルを介してコイル124に電流が供給されると、磁界が生じるが、ボビン125及び磁気遮蔽部128が非磁性体で形成されているので、ボビン125及び磁気遮蔽部128を迂回し、外側ヨーク123からエンド部127、プランジャ122及びエンド部126を通って外側ヨーク123に戻る磁路が形成され、これに伴って、その磁路におけるエンド部126とプランジャ122のとの間に吸引力が発生する。
そして、コイル124がプランジャ122を所定の吸引力で吸引し、プランジャ122に推力を発生させる結果、推力はスプール160に伝達され、調圧バルブ部140が作動させられ、スプール160を前進(図において左方向に移動)させる。この場合、プランジャ122のストロークに対応させて、スプール160がコイルスプリング1によるスプリング荷重及びフィードバック力に抗してプランジャ122と一体に前進させられ、入力ポートP1と出力ポートP2との間に隙間が形成され、入力ポートP1を介して供給された油が、その隙間を介してスリーブ150とグルーブ部165との間の空間に進入し、その後、出力ポートP2から出力される。
このようにして、コイル124に流れる電流によって、プランジャ122がスプリング200によって付勢されているスプール160が移動し、入力ポートP1乃至入力ポートP6を開閉する。
本発明者らは、図1のリニアソレノイドバルブで使用されるコイルスプリング1の座屈の発生要因として、巻き始め端部と巻き終わり端部との関係に着目した。
図2において、コイルスプリング1は、1回(360度)巻いたとき、即ち、有効巻き数を1ターンとしたとき、素線をn=3回(ターン)巻回し、更に、0.25ターン付加したものである。コイルスプリング1は、全体でn=3.25ターンとなる。
なお、本発明を実施する場合、素線の有効巻回回数nには影響ないが、図2では説明の都合上3回としたものである。また、本実施の形態では、素線の材質はバネ用オイルテンパー線を使用したが、本発明を実施する場合には、線材の材質に作用されるものではない。
図2(a)はコイルスプリング1を同一平面上の環状位置で表現するとき、巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの位置が略0.25ターンとし、かつ、巻き始め端部面SFが平面と接触したときの非接触範囲SN、巻き終わり端部面EFが平面と接触したときの非接触範囲ENが各々略0.25ターンとしたものである。コイルスプリング1は、全体で3.25ターンとしたものである。
図3(a)はコイルスプリング1を分解して図示したもので、図示の巻き始め端部Sの中心Oは、巻き終わり端部Eの中心O´に一致するものである。即ち、図示では巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eがずれているが、それは説明のための処理であり、実際は同軸の螺旋となる。したがって、縦軸であるY軸は、両者共通するY軸となる。−X軸方向(正確には負の所定の値であるが、単に軸方向で表現する)から+Y軸方向、+Y軸方向から+X軸方向の90度は、各1/4=0.25ターンを示すもので、−X軸方向から+X軸方向、+Y軸方向から−Y軸方向の180度は、各1/2=0.5ターンを示すものである。
図2(a)及び図3(a)において、+X軸及び+Y軸方向のうち、−X軸方向にコイルスプリング1の巻き始め端部Sが存在し、+Y軸に巻き終わり端部Eがある。−X軸に巻き始め端部Sがあるということは、巻き始め端部面SFを切削加工し、平面としたとき、通常、巻き始め端部Sの厚みによって相違するが、略0.1〜0.3ターンが非接触範囲SNとなる。なお、図示は、理解のし易さから、非接触範囲SNを1/4=0.25ターンとし、−Y軸から−X軸の間の領域が非接触となるものである。
また、+Y軸に巻き終わり端部Eがあるということは、巻き終わり端部面EFを切削加工し、平面としたとき、巻き始め端部Sと同様、略1/4=0.25ターンが非接触範囲ENとなり、+Y軸から+X軸の間の領域が非接触となる。
即ち、図2(a)及び図3(a)に示すように、巻き始め端部面SFにおいては、−Y軸から−X軸の間の0.25ターンが非接触範囲SNとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。巻き終わり端部面EFにおいては、+Y軸から+X軸の間の0.25ターンが非接触範囲ENとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。このとき、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENは、コイルスプリング1の直径方向の位置関係になる。即ち、コイルスプリング1の中心O(O´)に対して対称の位置にある。
このように巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENを形成したコイルスプリング1を、図4(a)に示すように、透明円筒管20に収容して圧縮をすると、殆ど座屈が生じなかった。
本実施の形態の巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと、巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENは、略0.25ターンで実施したが、略0.25ターンを略0.1まで減少させても、また、0.35ターンの範囲内であっても、図2(a)及び図3(a)に示すように、非接触範囲SNと非接触範囲ENが、コイルスプリング1の直径方向の位置関係になる。即ち、コイルスプリング1の中心O(O´)に対して対称の位置を維持する。
このように巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENを形成したコイルスプリング1は、図4に示すように、透明円筒管20に収容して圧縮しても、殆ど座屈が生じなかった。なお、図4(a)はコイルスプリング1及び透明円筒管20の正面図、図4(b)はコイルスプリング1の側面図である。
次に、図2(c)及び図3(c)に示すコイルスプリング3は、−X軸に巻き始め端部Sがあり、−Y軸に巻き終わり端部Eがある。−X軸に巻き始め端部Sがあるということは、巻き始め端部面SFを切削加工し、平面としたとき、巻き始め端部Sから巻き終わり端部Eまでは略0.75ターンとなる。また、−Y軸に巻き終わり端部Eがあるということは、巻き終わり端部面EFを切削加工し、平面としたとき、巻き始め端部Sと同様、略0.25ターンが非接触範囲ENとなり、−Y軸から−X軸の間の領域が非接触となる。
即ち、図2(c)及び図3(c)に示すように、巻き始め端部面SFにおいては、−Y軸から−X軸の間の0.25ターンが非接触範囲SNとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。巻き終わり端部面EFにおいても、−Y軸から−X軸の間の0.25ターンが非接触範囲ENとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。
このとき、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENは、コイルスプリング3の同一方向の位置になる。即ち、コイルスプリング3の中心から特定方向に0.25ターン、即ち、90度の範囲が非接触範囲EN及び非接触範囲SNとな利、両者が重なる。
このように巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENを形成したコイルスプリング3を、透明円筒管20に収容して圧縮すると、図6に示すように座屈が生じた。これは、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENが、同一方向の−Y軸から−X軸の間の0.25ターンで重なり合い、そこには圧縮力が加わらない。それに対して、微視的にコイルスプリング3を同一平面上の環状位置としてみると、非接触範囲SNと非接触範囲ENに隣接する箇所の弾性係数は小さいが、徐々にX軸方向、Y軸方向に行くに従って弾性係数が大きくなり、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENの中央位置、即ち、巻き始め端部Sから0.375ターンの位置が最も弾性係数が強くなる。巻き始め端部Sから0.375ターンの位置の弾性係数に対して、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENは弾性係数が最も弱くなる。
ここで、巻き始め端部面SFと巻き終わり端部面EFに均一に圧縮力を加えて圧縮すると、弾性係数が弱い箇所の変位が大きくなり、弾性係数の強い箇所の変位が小さくなり、結果、図6に示すような変位の少ない方側に膨らむという座屈が生じる。
当然ながら、このように巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENを同一場所に形成したコイルスプリング3は、図6に示すように、透明円筒管20に収容して圧縮をすると、大きな座屈の発生が確認された。
図2(b)及び図3(b)に示すコイルスプリング2は、巻き始め端部面SFにおいては、−Y軸から−X軸の間の0.25ターンが非接触範囲SNとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。巻き終わり端部面EFにおいては、+X軸から−Y軸の間の0.25ターンが非接触範囲ENとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。−Y軸側の−X軸方向から+X軸方向の1/2=0.5ターンは、微視的にコイルスプリング2を同一平面上の環状位置で表現するとき、+Y軸側の−X軸方向から+X軸方向の0.5ターンに比較して弾性係数は小さいが、−Yから中心O側に近づくに従って徐々に弾性係数が大きくなる。また、Y軸側の−X軸方向からX軸方向の0.5ターンに比較して弾性係数が小さいものの、図2(c)及び図3(c)のように、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENが重なり合い、最も弾性係数が小さくなるものでないから、座屈が生じ難い。
したがって、このように巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eを0.5ターンだけ離した場合には、コイルスプリング2は透明円筒管20に収容して圧縮しても大きな座屈の発生は確認されなかった。
図2(d)及び図3(d)に示すコイルスプリング4は、巻き始め端部面SFにおいては、−Y軸から−X軸の間の0.25ターンが非接触範囲SNとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。巻き終わり端部面EFにおいては、−X軸からY軸の間の0.25ターンが非接触範囲ENとなり、他の0.75ターンの略C字状の面が接触範囲となる。X軸側の−Y軸方向からY軸方向の1/2=0.5ターンは、微視的にコイルスプリング4を同一平面上の環状位置としてみると、X軸側の−Y軸方向からY軸方向の0.5ターンに比較して弾性係数は小さいが、+軸から中心O側に近づくに従って−Y軸方向から+Y軸方向に徐々に弾性係数が大きくなる。また、+X軸側の−Y軸方向から+Y軸方向の0.5ターンに比較して弾性係数が小さいものの、図2(c)及び図3(c)のように、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENが重なり合い、最も弾性係数が小さくなるものでないから、座屈が生じ難い。
したがって、このように巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eを0.5ターンだけ離した場合には、コイルスプリング4は透明円筒管20に収容して圧縮しても大きな座屈の発生は確認されなかった。
このように、図2(b),(d)及び図3(b),(d)に示すコイルスプリング2,4は、巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの位置が、0.5ターンの位置にある。微視的にコイルスプリング2,4を同一平面上の環状位置としてみると、巻き始め端部Sから右回り方向に弾性係数が大きくなり、巻き終わり端部Eから左回り方向に弾性係数が大きくなる。ところが、巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの位置が殆ど同一箇所になっているからコイルスプリング2,4を同一平面上の環状位置としてみると、最も弾性係数が小さいところでも、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENが重なり合い、最も弾性係数が小さくなるものでないから、座屈が生じ難い。
本実施の形態の巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENは、略0.25ターンで実施したが、略0.25ターンを構造及び切削加工の限界である略0.1まで減少させた場合、即ち、図2(b),(d)及び図3(b),(d)に示すように、巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eを0.1ターンだけ離した場合には、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENが小さくなり、重なり合い範囲が増加するものであるから、弾性係数が大きくなり、座屈が生じ難くなる。したがって、このようにコイルスプリング2は透明円筒管20に収容して圧縮しても殆ど座屈の発生は確認されなかった。
しかし、略0.25ターンを略0.35を超えてまで大きくすると、図2(b),(d)及び図3(b),(d)に示すように、巻き始め端部面SFの非接触範囲SNと巻き終わり端部面EFの非接触範囲ENの非接触として重なり合う範囲が略0.15ターンとなり、弾性係数の変化が大きくなり、若干の座屈が生じる可能性が出てきた。切削加工によっては、座屈の発生するものと、座屈が発生しないものが生じた。
このように、上記実施の形態のコイルスプリングは、複数回巻回してなるコイルスプリング1,2,3において、コイルスプリング1,2,3の素線の巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの位置が、コイルスプリング1,2,3を同一平面上の環状位置としてみるとき、0.25±0.1ターンの範囲内とし、巻き始め端部面SFと巻き終わり端部面EFの各面が平面と接触したとき、その各非接触範囲SNと非接触範囲ENとの非接触の範囲が略0.1〜0.3ターンの範囲内とした構造とすることができる。
したがって、巻き始め端部Sの非接触範囲SNと巻き終わり端部Eの非接触範囲ENとは対向する直径方向位置とするものであるから、コイルスプリング1,2,3の長さ方向から圧縮力を加えても、巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの面に加えられたコイルスプリング1,2,3の長さ方向に対する垂直方向のベクトル力が相殺され、座屈を生じ難くすることができる。
また、上記実施の形態のコイルスプリングは、複数回巻回してなるコイルスプリング1,2,3において、コイルスプリング1,2,3の素線の巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの位置が、コイルスプリング1,2,3を同一平面上の環状位置としてみると、0.25±0.25ターンの範囲内とし、巻き始め端部面と巻き終わり端部面の各面が平面と接触したとき、その各非接触範囲SNと非接触範囲ENからなる非接触の範囲が略0.1〜0.3ターンの範囲内の構造とすることができる。
したがって、巻き始め端部Sの巻き始め端部面SFと巻き終わり端部Eの非接触範囲ENとは対向する直径方向位置とするものであるから、コイルスプリング1,2,3の長さ方向から圧縮力を加えても、巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの面に加えられたコイルスプリング1,2,3の長さ方向に対する垂直方向のベクトル力が相殺され、座屈を生じ難くすることができる。
巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの各々が平面と接触したときの各非接触範囲SNと非接触範囲ENからなる非接触の範囲の位置は、コイルスプリング1,2,3,4を同一平面上の環状位置としてみると、コイルスプリング1,2,3,4の中心を通る略直線位置に設定したものである。
したがって、コイルスプリング1,2,3,4の長さ方向から圧縮力を加えた場合、巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの面に加えられたコイルスプリング1,2,3の長さ方向に加える外力を両端部がバランスよく受け止めるから、座屈を生じ難くすることができる。
このように、上記実施の形態の複数回巻回してなるコイルスプリング1,2,3は、複数回巻回したものであればよい。また、従来例で説明したコイルスプリング1,2,3の添え巻き部Bが中央の有効巻き部Aに比較して、ピッチが小さいものにも適用できる。そして、コイルスプリング1,2,3を巻回する素線の断面は、略円形、略楕円形、略長方形、略正方形とすることもできる。
以上の実施の形態では、リニアソレノイドバルブ100の例で説明したが、本発明を実施する場合には、リニアソレノイドバルブ100に限定されるものではなく、図10に示すように構成すればよい。
図10は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの発明対応概念図である。
図示では、ランド162とエンドプレート151で挟持されているが、部材を特定することなく、2部材間で挟持され、複数回巻回してなるコイルスプリング1,2,3において、コイルスプリング1,2,3の素線の巻き始め端部Sと巻き終わり端部Eの位置が、コイルスプリング1,2,3を同一平面上の環状位置としてみるとき、0.25±0.1ターンの範囲内とし、巻き始め端部面SFと巻き終わり端部面EFの各面が平面と接触したとき、その各非接触範囲SNと非接触範囲ENとの非接触の範囲が略0.1〜0.3ターンの範囲内とした構造とするものであり、特性が経年変化しないことからバルブに使用することが望ましいが、他の構成部品としても使用できる。
図1は図1は本発明の実施の形態におけるコイルスプリングをリニアソレノイドバルブに用いた断面図である。 図2は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの巻き始め端部と巻き終わり端部を異にした実施の形態の説明概念図である。 図3は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの巻き始め端部と巻き終わり端部とを示す両端部面の説明図である。 図4は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの0.25ターンの座屈の状態を示す説明図である。 図5は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの0.5ターンの座屈の状態を示す説明図である。 図6は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの0.75ターンの座屈の状態を示す説明図である。 図7は従来のコイルスプリングの正面図である。 図8は従来のコイルスプリングの軸方向断面図である。 図9は従来のコイルスプリングの側面図である。 図10は本発明の実施の形態にかかるコイルスプリングの発明対応概念図である。
符号の説明
1,2,3,4 コイルスプリング
S 巻き始め端部
E 巻き終わり端部
SF 巻き始め端部面
EF 巻き終わり端部面
SN 非接触範囲(巻き始め端部面)
EN 非接触範囲(巻き終わり端部面)

Claims (1)

  1. 複数回巻回してなるコイルスプリングにおいて、
    前記コイルスプリングの素線を1回(360度)巻いたときの有効巻き数を1ターンとするとき、
    前記コイルスプリングの素線の巻き始め端部と巻き終わり端部の位置が、前記コイルスプリングを同一平面上の環状位置で表現するとき、0.25±0.25ターンの範囲内とし、かつ、前記巻き始め端部面と前記巻き終わり端部面の各面が平面と接触したとき、前記各巻き始め端部面と巻き終わり端部面の非接触範囲が略0.1〜0.3ターンの範囲内としたことを特徴とするコイルスプリング。
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