JP5002913B2 - 燃料電池システムおよび燃料電池における未反応水素の透過量の推定方法 - Google Patents

燃料電池システムおよび燃料電池における未反応水素の透過量の推定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5002913B2
JP5002913B2 JP2005168193A JP2005168193A JP5002913B2 JP 5002913 B2 JP5002913 B2 JP 5002913B2 JP 2005168193 A JP2005168193 A JP 2005168193A JP 2005168193 A JP2005168193 A JP 2005168193A JP 5002913 B2 JP5002913 B2 JP 5002913B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hydrogen
fuel cell
amount
permeation amount
anode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005168193A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006344465A (ja
Inventor
啓吾 末松
健司 馬屋原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2005168193A priority Critical patent/JP5002913B2/ja
Publication of JP2006344465A publication Critical patent/JP2006344465A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5002913B2 publication Critical patent/JP5002913B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、燃料電池システムに関するものである。
近年、水素を含む燃料ガス(「アノードガス」とも呼ぶ)を用いて発電を行う燃料電池が注目されつつある。ここで、燃料電池に供給される燃料ガスの一部が発電に用いられない場合があった。例えば、燃料電池において、水素の一部が、発電に寄与することなく、アノード側から電解質層を介してカソード側へ透過する場合がある。特許文献1には、このような水素透過量を考慮して燃料ガスの漏洩を判断する方法が提案されている。
特開2004−281132号公報 特開2003−45466号公報 特開2003−272675号公報 特開2004−265667号公報 特開2004−199918号公報
ところで、燃料電池に発電をさせると、電解質層が劣化する場合がある。その結果、水素透過量が変化し、水素透過量の推定の精度が低下するおそれがあった。なお、このような問題は、燃料ガスの漏洩を判断する処理に限らず、水素透過量の推定値を用いた処理に共通する問題であった。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池における水素透過量の推定の精度を向上させることのできる技術を提供することを目的とする。
上記課題の少なくとも一部を解決するために、この発明における燃料電池システムは、電解質層と、前記電解質層を挟むように配置されたアノード反応ガス流路とカソード反応ガス流路と、を有する燃料電池と、前記電解質層の温度を反映する温度である動作温度を測定する温度センサと、前記燃料電池の開放端電圧を測定可能な電圧センサと、前記動作温度と前記開放端電圧とを用いて、前記アノード反応ガス流路から前記電解質層を介して前記カソード反応ガス流路へ透過する未反応水素の透過量を推定する透過量推定処理を実行するための透過量推定部と、を備え、前記透過量推定部は、前記動作温度が同じ場合の前記水素透過量の推定値が、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように、前記透過量推定処理を実行する。
この燃料電池システムによれば、開放端電圧が低いほど水素透過量が多くなるように水素透過量が推定されるので、燃料電池における水素透過量の推定の精度を向上させることが可能となる。
上記燃料電池システムにおいて、前記透過量推定部は、前記水素透過量の推定値の対数を、前記動作温度の逆数の一次関数で表す透過量対応関係を決定し、さらに、前記一次関数の切片を、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように決定するとともに、前記透過量対応関係に従って前記透過量推定処理を実行することとしてもよい。
この構成によれば、一次関数で表された透過量対応関係を用いることによって、水素透過量の推定を容易に行うことが可能となる。
上記各燃料電池システムにおいて、さらに、前記アノード反応ガス流路内の圧力を反映する圧力であるアノード圧力を測定する圧力センサと、前記アノード反応ガス流路と外部とに連通するとともに前記外部との連通を遮断可能な閉流路システムと、を備え、前記閉流路システムは、前記外部と遮断した状態における前記閉流路システム内のガスの減少量に相関のある物理量を測定する物理量センサを有し、前記透過量推定部は、前記透過量推定処理に先立って、前記遮断状態における前記アノード圧力と前記動作温度と前記物理量とを測定する透過量測定処理を、互いに異なる複数の動作温度設定で実行し、前記透過量推定部は、前記透過量推定処理において、現行の動作温度と現行のアノード圧力との測定を実行するとともに、前記複数の透過量測定処理の測定結果と、前記現行動作温度と、前記現行アノード圧力と、を用いて現行の水素透過量の推定を行うこととしてもよい。
この構成によれば、閉流路システムの遮断状態におけるガスの減少量に相関のある物理量と、動作温度と、アノード圧力とが、複数の動作温度設定で測定され、さらに、これらの測定結果を用いて現行の水素透過量の推定が行われるので、水素透過量の推定の精度を、さらに向上させることが可能となる。
上記燃料電池システムにおいて、前記透過量推定部は、前記水素透過量の推定値を、前記アノード圧力と前記アノード圧力に応じて決定された水素分圧とのいずれかで割った値の対数を、前記動作温度の逆数の一次関数で表す近似直線を用いて、前記複数の透過量測定処理の測定結果を近似し、さらに、前記近似直線と、前記現行動作温度と、前記現行アノード圧力と、を用いて前記現行水素透過量の推定を行うこととしてもよい。
この構成によれば、水素透過量の推定を近似直線を用いて容易に行うことが可能となる。
上記各燃料電池システムにおいて、前記透過量推定部は、前記透過量測定処理で測定したアノード圧力から水素分圧を推定し、さらに、前記透過量推定処理において、現行の動作温度と現行のアノード圧力との測定を実行するとともに、前記水素分圧を含む前記複数の透過量測定処理の測定結果と、前記現行動作温度と、前記現行アノード圧力と、を用いて現行の水素透過量の推定を行うことが好ましい。
この構成によれば、水素分圧に応じて水素透過量の推定が行われるので、水素透過量の推定の精度を、さらに向上させることが可能となる。
上記各燃料電池システムにおいて、前記透過量推定部は、前記透過量推定処理において、現行の動作温度と現行のアノード圧力との測定を実行するとともに、前記現行アノード圧力から現行の水素分圧を推定し、さらに、前記複数の透過量測定処理の測定結果と、前記現行動作温度と、前記現行水素分圧と、を用いて現行の水素透過量の推定を行うことが好ましい。
この構成によれば、水素分圧に応じて水素透過量の推定が行われるので、水素透過量の推定の精度を、さらに向上させることが可能となる。
なお、この発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池システム、燃料電池システムの制御方法または装置、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、燃料電池システムを駆動用電源として搭載する車両、等の形態で実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.第5実施例:
F.変形例:
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての燃料電池システム900の構成を示すブロック図である。この燃料電池システム900は、燃料電池スタック100と、イジェクタ200と、水素流量計300と、水素タンク400と、制御部500と、を備えている。なお、図1では、カソード側のガスの流路については、図示が省略されている。
燃料電池スタック100(以下、単に「スタック100」とも呼ぶ)は、図示しない燃料電池セル(「単セル」とも呼ぶ)を複数積層したスタック構造を有する固体高分子電解質型の燃料電池である。燃料電池セル(図示せず)の各々は、電解質層106と、アノード側に設けられたアノードガス流路102と、カソード側に設けられたカソードガス流路104とを、内部に備えている。各流路102、104は、電解質層106を挟むように配置されている。
アノードガス流路102には、水素を含む燃料ガスとしての水素ガスが供給される。カソードガス流路104には、酸素を含む酸化ガスとしての空気が供給される。燃料電池スタック100は、これらの水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う。発電によって生じた電力は、燃料電池スタック100に接続される負荷(図示せず)に供給される。
燃料電池スタック100と負荷(図示せず)とは電力ライン600によって接続されている。電力ライン600には、電圧センサ610と、電流センサ620と、スイッチ630とが、設けられている。電圧センサ610は、電力ライン600に印可される電圧、すなわち、燃料電池スタック100の電圧を測定する。電流センサ620は、電力ライン600を流れる電流を測定する。スイッチ630は、スタック100と負荷(図示せず)との間の電気的な接続を遮断することができる。
また、燃料電池スタック100には、温度センサ150が設けられている。この温度センサ150は、燃料電池スタック100内部の温度を測定する。
水素タンク400は、水素ガスを貯蔵するタンクである。この水素ガスは、第1流路410を介して水素流量計300に供給される。この第1流路410には、第1遮断弁420と、第1圧力センサ430と、第1調圧弁440とが、下流側に向かってこの順番に設けられている。第1調圧弁440は、水素タンク400からの水素ガスの圧力を所定の第1圧力まで減圧し、第1圧力で水素ガスを水素流量計300へ供給する。
水素流量計300を通過した水素ガスは、第2流路310を介してイジェクタ200に供給される。第2流路310には、第2圧力センサ320と、第2遮断弁330と、第2調圧弁340と、第3圧力センサ350とが、下流側に向かってこの順番に設けられている。第2調圧弁340は、水素流量計300からの水素ガスの圧力を、さらに、所定の第2圧力まで減圧し、第2圧力で水素ガスをイジェクタ200に供給する。
イジェクタ200を通過した水素ガスは、供給路210を介してアノードガス流路102に供給される。アノードガス流路102からの排ガス(以下「アノード排ガス」とも呼ぶ)は、循環流路220を介して、再び、イジェクタ200に導入される。
イジェクタ200は、イジェクタを通過するガス(第2流路310から供給路210へ流れるガス)の流れを利用することによって、循環流路220のガスを吸引することが可能である。その結果、アノードガス流路102から排出された水素ガスは、循環流路220と、供給路210と、アノードガス流路102とを循環する。
なお、イジェクタ200の構成としては、周知の種々の構成を採用可能である。例えば、ノズルとディフューザとを有する構成を採用可能である。また、水素ガスを循環させる方法としては、周知の任意の方法を採用可能である。例えば、イジェクタ200の代わりに、循環用のポンプを循環流路220に設けても良い。
また、循環流路220には、アノード圧力センサ230が設けられている。アノード圧力センサ230の測定結果は、アノードガス流路102内の圧力を反映する圧力(以下「アノード圧力」とも呼ぶ)として、制御部500に利用される(後述)。
ところで、アノードガス流路102を流れる水素は、発電によって消費される。すると、第2調圧弁340の下流側の圧力が下がろうとする。ここで、第2調圧弁340は、下流側の圧力が第2圧力となるまで水素を供給する。このようにして、アノードガス流路102には、消費量に応じた量の水素が供給される。第1調圧弁440による水素の供給に関しても同様である。
また、循環流路220の途中には、パージ流路240が接続されている。パージ流路240にはパージバルブ250が設けられている。ところで、アノード排ガスには、水素以外の不純物が含まれる場合がある。不純物としては、例えば、電気化学反応によって生成された水分や、カソードガス流路104から電解質層106を透過してアノードガス流路102へ到達した窒素、水分等がある。本明細書において、供給路210と循環流路220とにおける「不純物」とは、電気化学反応に利用される燃料成分(例えば、水素)以外の成分を意味する。これらの不純物は消費されずに残留する。従って、アノード排ガス中の不純物の濃度は徐々に増加する。そこで、パージバルブ250を開くと、不純物を含むガスが、循環流路220からパージ流路240を介して外部に排出される。その結果、アノードガス流路102を循環するガス中の不純物の量を少なくすることが可能となる。燃料電池システム900では、運転部540が発電中にパージバルブ250を、適宜、開閉させることによって、不純物量が過剰に多くなることを防止している。以下、パージバルブ250を開閉させる処理のことを「パージ処理」とも呼ぶ。
制御部500は、燃料電池システム900を構成する各構成要素からデータ信号を受信するとともに、各構成要素に駆動信号を出力することによって、燃料電池システム900の全体の運転状態を制御する。また、制御部500は、パラメータ値記憶部510としての機能と、対応関係修正部520としての機能と、推定実行部530としての機能と、運転部540としての機能とを、有している(詳細は後述)。制御部500はCPUとメモリとを有しており、コンピュータプログラムを実行することによって種々の機能を実現する。また、パラメータ値記憶部510としての機能は、メモリを用いることによって実現されている。なお、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給され得る。また、制御部500の機能の一部、または、全部をハードウェアによって実現してもよい。
図2は、温度Tと水素透過度Trとの関係(以下「透過度対応関係」とも呼ぶ)を示すグラフである。ここで「温度T」は、電解質層106(図1)の絶対温度を意味しており、第1実施例では、温度センサ150の測定結果を用いることとしている。また、「水素透過度Tr」は、電解質層106における未反応水素の透過のし易さを意味している。具体的には、「水素透過度Tr」は、アノードガス流路102から電解質層106を透過してカソードガス流路104へ到達する未反応水素の量(「水素透過量」とも呼ぶ)を、アノードガス流路102の圧力と、電解質層106の面積と、透過量を測定した時間の長さ(測定時間)とで割った値を意味している。換言すれば、「水素透過度Tr」は、単位圧力、単位面積、単位時間当たりの水素透過量を意味している。ここで、アノードガス流路102における不純物濃度は、十分に小さいこととしている。また、カソードガス流路104には、水素が無いこととしている。さらに、アノードガス流路102の圧力としては、アノード圧力センサ230の測定結果を用いることとしている。
図2のグラフにおいて、縦軸は水素透過度Trの対数を示し、横軸は温度Tの逆数を示している。また、図中の第1グラフTP1は、使用開始前の燃料電池スタック100の透過度対応関係を示している。水素透過度Trは、温度Tが高いほど高くなる傾向にある。電解質層106の温度が高いほど、電解質層106の分子運動が活発になり、その結果、水素が透過し易くなる(水素透過度Trが高くなる)と推定される。また、水素透過度Trの対数は、温度Tの逆数に比例する傾向にある(傾き(比例定数)は負値である)。水素透過度Trの温度依存性は、化学反応の速度と同様の傾向を示すと推定される。なお、このような、比例関係を表すグラフは「アレニウスプロット」とも呼ばれる。以下、透過度対応関係を示すグラフを「透過度プロット」とも呼ぶ。
また、図中の第2グラフTP2は、電解質層106の厚さ(以下「層厚」とも呼ぶ)を、第1グラフTP1における厚さよりも薄くした場合の対応関係を示している。透過度プロットの切片は、電解質層106の厚さ(以下「層厚」とも呼ぶ)が薄いほど大きくなる傾向にある。すなわち、水素は、層厚が薄いほど透過し易い傾向にある。また、透過度プロットの傾き(水素透過度Trの温度依存性)は、層厚が異なる場合でもほぼ同じとなる傾向にある。透過度プロットの傾きは、電解質層の材質の影響を強く受けるとともに、その厚さから受ける影響は小さいと推定される。
ところで、燃料電池では、発電によって電解質層が劣化する。この劣化によって、電解質層の厚さが薄くなる場合が多い。このような厚さの減少は、例えば、電解質層を透過してカソードに到達した水素の燃焼で生じる熱によって電解質が分解されることによって引き起こされると推定される。このように、燃料電池スタック100が劣化すると、膜厚が薄くなり、水素透過度Tr、すなわち、透過度プロットの切片が大きくなる。その結果、使用によって劣化した燃料電池の透過度プロットは、電解質層の厚さを薄くした場合の透過度プロットと、ほぼ同じとなる。ここで、使用開始前の透過度プロットTP1の切片を基準とする切片の上昇量(切片の差分)を切片差分Diと呼ぶ。
なお、パラメータ値記憶部510(図1)には、予め、使用開始前の透過度プロットTP1の切片(以下「切片初期値IlogTr」と呼ぶ)と傾き(以下「傾き初期値」と呼ぶ)とが格納されている。切片初期値IlogTrと傾き初期値とは、予め、実験に基づいて設定されている。
図3は、燃料電池スタック100の電流密度/電圧特性を示すグラフである。第1グラフIV1は、燃料電池スタック100の使用開始前の特性を示し、第2グラフIV2は、使用による劣化後の特性を示している。上述したように、燃料電池スタック100が劣化すると、電解質層106の層厚が薄くなる。すると、発電に寄与することなく、アノードガス流路102から電解質層106を透過してカソードガス流路104に到達する未反応水素量が増加する。カソードガス流路104に到達した水素は、発電に寄与するはずであった酸素と反応してしまう。すると、発電に寄与する酸素の量が減少して、カソードの電極電位が低下する。その結果、発電電圧が低下する。特に、電流Iがゼロでの電圧V(以下「開放端電圧」と呼ぶ)は、電解質層106が薄くなると低くなる。ここで、使用開始前の第1グラフIV1の開放端電圧(以下「開放端電圧初期値IOCV」と呼ぶ)を基準とする開放端電圧の低下量(開放端電圧の差分)を開放端電圧差分DOCVと呼ぶ。また、パラメータ値記憶部510には、予め、開放端電圧初期値IOCVが格納されている。開放端電圧初期値IOCVは、予め、実験に基づいて設定されている。
図4は、切片差分Diと開放端電圧差分DOCVとの関係の一例を示すグラフである。上述したように、電解質層106が劣化によって薄くなると、開放端電圧が低下するとともに、さらに、透過度プロットの切片が大きくなる。すなわち、開放端電圧差分DOCVが大きいほど切片差分Diも大きくなる傾向にある。パラメータ値記憶部510(図1)には、予め、このような開放端電圧差分DOCVと切片差分Diとの対応関係(以下「差分対応関係」とも呼ぶ)が格納されている。差分対応関係は、予め、実験に基づいて設定されている。
図5は、燃料電池システム900の起動処理において制御部500が実行する透過度対応関係修正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS100では、対応関係修正部520は、燃料電池スタック100の開放端電圧を取得する。具体的には、燃料電池スタック100に発電を実行させるとともに、スイッチ630に電力ライン600を遮断させ、さらに、電圧センサ610から電圧(開放端電圧)を取得する。
次のステップS110では、対応関係修正部520は、パラメータ値記憶部510に格納されている切片を、開放端電圧に応じて修正する。まず、対応関係修正部520は、ステップS100で取得した開放端電圧に応じて開放端電圧差分DOCVを算出する。次に、開放端電圧差分DOCVに対応付けられた切片差分Diを取得する。この際、パラメータ値記憶部510に格納されている開放端電圧初期値IOCVと差分対応関係(図4)とを用いる。次に、対応関係修正部520は、パラメータ値記憶部510に格納された切片初期値IlogTrを切片差分Diに従って修正し、修正後の切片をパラメータ値記憶部510に格納する。
図6は、透過度プロットを示すグラフである。グラフTP1は、使用開始前の透過度プロットを示している。また、グラフTP3は、修正後の透過度プロットを示している。図中には、切片差分Diが示されている。この切片差分Diは、開放端電圧差分DOCVが大きいほど大きくなる傾向にある(図4)。従って、透過度プロットは、温度Tとアノード圧力とが同じ場合の水素透過度Trが、開放端電圧が低いほど大きくなるように、修正される。パラメータ値記憶部510は、このような修正後の透過度プロットTP3を示す切片(修正後切片)と傾き(傾き初期値)とを格納している。
以上のように、切片を修正したら、対応関係修正部520は、透過度対応関係修正処理を終了する。その後、制御部500は、所定の起動処理に戻り、運転部540は、燃料電池システム900を起動させる。
図7は、運転部540が実行する水素漏れ検知処理の手順を示すフローチャートである。この水素漏れ検知処理は、燃料ガスの流れる流路からのガス漏れを検知するための処理である。漏れ検知の対象となる流路は、水素流量計300(図1)からイジェクタ200を介してアノードガス流路102へ至るとともに、再び、イジェクタ200へ循環する流路の全体(以下「対象流路システムSS」と呼ぶ)である。具体的には、対象流路システムSSは、第2流路310と、供給路210と、アノードガス流路102と、循環流路220と、パージ流路240のパージバルブ250よりも上流側と、を含む。運転部540は、対象流路システムSSに流入する水素量から、スタック100で消費される水素量と、対象流路システムSSから外部へ移動する既知の水素量とを、差し引いた残りを漏れ量として用いる。運転部540は、このような漏れ量の検知を、所定の一定時間(以下、「検知時間」と呼ぶ)内における水素の移動量と消費量とを用いることによって行う。また、運転部540は、燃料電池システム900の起動後の発電運転中に、適宜、水素漏れ検知処理を実行する。
ステップS200では、運転部540は、水素の供給量を取得する。具体的には、運転部540は、検知時間内における水素流量計300の測定結果(単位時間当たりの流量)を積算することによって、水素の供給量を取得する。
次のステップS210では、運転部540は、スタック100で消費される水素量を推定する。運転部540は、燃料電池スタック100の発電電力の検知時間内における積算値から理論的に得られる水素消費量を、燃料電池スタック100で消費された水素量として用いる。発電電力は、電圧センサ610と電流センサ620との測定結果を用いて算出される。
次のステップS220では、運転部540は、水素透過量の推定値を推定実行部530から取得する。推定実行部530は、水素透過量推定処理を実行する(詳細は後述)。
次のステップS230では、運転部540は、水素のパージ量を取得する。このパージ量は、パージバルブ250を開けることによってパージ流路240から外部へ排出される水素量を意味している。運転部540は、検知時間内におけるパージバルブ250の開時間(以下「パージ時間」と呼ぶ)と、アノード圧力センサ230の測定結果(アノード圧力)と、を用いてパージ量を推定する。なお、パラメータ値記憶部510には、パージ時間と、アノード圧力と、水素パージ量との対応関係が、予め格納されている。運転部540は、この対応関係を参照することによって、水素パージ量を推定する。このような対応関係は、予め実験に基づいて設定可能である。また、検知時間内において、パージバルブ250の閉状態が維持された場合には、パージ量はゼロになる。
次のステップS240では、運転部540は、水素の漏れ量を推定する。第1実施例では、以下の式F1に従って漏れ量を推定する。
水素漏れ量 = 水素供給量 - {水素消費量 + 水素透過量 + 水素パージ量}...(F1)
次のステップS250では、運転部540は、水素漏れの可能性の有無を判定する。具体的には、ステップS240で推定した推定漏れ量が、所定の漏れ量しきい値よりも大きい場合に、水素漏れの可能性が有ると判定する。
運転部540は、水素漏れの可能性が有ると判定した場合には、次のステップS260で、所定の不具合対応処理を実行する。不具合対応処理としては、任意の処理を採用可能である。例えば、燃料電池システム900の発電を停止させる処理や、発電電力を不具合が無い場合と比べて小さい値に制限する処理等を採用可能である。また、制御部500に通知部を接続するとともに、運転部540が通知部を制御することによって、ユーザに水素漏れの可能性が有る旨を通知することとしてもよい。例えば、表示パネル(図示せず)に水素漏れの可能性の有る旨を表示させる処理や、音を発するスピーカ(図示せず)に警告音を鳴らさせる処理を採用可能である。通知部としては、表示パネルやスピーカに限らず、ユーザに情報を通知可能な任意の装置を採用可能である。
一方、推定漏れ量が、所定の漏れ量しきい値以下である場合には、運転部540は、水素漏れの可能性が無いと判定して、水素漏れ検知処理を終了する。
図8は、推定実行部530が実行する水素透過量推定処理の手順を示すフローチャートである。この水素透過量推定処理は、図7のステップS220で実行される。最初のステップS300では、推定実行部530は、温度センサ150の測定結果と、アノード圧力センサ230の測定結果と、を取得する。
次のステップS310では、推定実行部530は、透過度対応関係に従って水素透過量を推定する。推定実行部530は、この水素透過量推定処理に先立って修正された透過度プロットTP3(図6)に従って、水素透過量を推定する。この際、電解質層106の面積(各単セルの面積の合計値)と、ステップS300で取得した圧力と温度とを用いる。電解質層106の面積は、パラメータ値記憶部510に予め格納されている。
推定実行部530が水素透過量を推定すると、運転部540が、その水素透過量を取得する(図7:ステップS220)。
以上のように、第1実施例では、推定実行部530は、開放端電圧に応じて修正された透過度プロットに従って水素透過量を推定するので、燃料電池における水素透過量の推定の精度を向上させることが可能となる。
また、第1実施例では、対応関係修正部520は、燃料電池システム900の起動時に、透過度対応関係修正処理に用いるデータ(開放端電圧)を取得(測定)するので、起動後の発電を妨害せずに、透過度プロットの修正を行うことができる。また、推定実行部530は、温度と圧力とを取得(測定)すれば、修正された透過度プロットに従った水素透過量の推定を実行可能であるので、発電を妨害せずに、精度のよい推定を実行可能である。
さらに、第1実施例では、運転部540は、推定実行部530によって精度よく推定された水素透過量を用いて水素漏れ検知処理を実行するので、水素漏れ検知の精度を向上させることが可能となる。このように、運転部540は、アノードガス流路102に連通する所定の対象流路システムSSにおける水素漏れを、水素透過量の推定値を用いて検知する水素漏れ検知部として機能する。
なお、水素漏れ量の推定に用いる式としては、上述の式F1に限らず、他の種々の演算式を採用可能である。ただし、開放端電圧に応じて修正された透過度プロットに従って推定された水素透過量を含む演算式を採用することが好ましい。
また、水素透過量の推定値の用途としては、水素漏れの検知に限らず、他の種々の用途を採用可能である。例えば、電解質層の劣化による不具合の可能性の有無の判定に用いても良い。具体的には、水素透過量の推定値が所定のしきい値を超えた場合に、電解質層の劣化による不具合の可能性が有ると判定することができる。
なお、第1実施例では、パラメータ値記憶部510と、対応関係修正部520と、推定実行部530との全体が、本発明における「透過量推定部」に相当する。
ところで、第1実施例において、発電運転中のアノード圧力が所定の一定値(以下、「第1目標圧力」と呼ぶ)となるように制御される場合がある(例えば、アノード圧力が第2調圧弁340によって制御される場合)。このような場合には、推定実行部530は、アノード圧力センサ230の測定結果を用いずに、アノード圧力が第1目標圧力であることとして、水素透過量を推定することができる。ただし、温度Tに加えてアノード圧力(アノード圧力センサ230の測定結果)を用いることによって水素透過量を推定することが好ましい。こうすれば、アノード圧力が変動する場合でも、水素透過量の推定の精度を向上させることができる。
B.第2実施例:
図9は、透過度対応関係修正処理の別の例の手順を示すフローチャートである。この透過度対応関係修正処理は、燃料電池システム900の起動処理において実行される。また、この透過度対応関係修正処理では、対応関係修正部520が、水素透過度Trを測定することによって、透過度プロットを修正する。
ステップS400では、対応関係修正部520(図1)は、水素透過度Trを測定する。まず、対応関係修正部520は、パージバルブ250を閉じる。すると、水素タンク400から水素流量計300へ至るガス流路と、対象流路システムSSとを含む流路の全体(以下、「アノード流路システムAS」と呼ぶ)は、外部との連通が遮断される。その結果、水素パージ量がゼロになる。さらに、対応関係修正部520は、スイッチ630に電力ライン600を遮断させる。その結果、電流がゼロになるので、水素消費量もゼロになる。ここで、アノード流路システムASに水素漏れの不具合がなければ、アノード流路システムAS内の水素量は、電解質層106を透過する水素量だけ減少する。
また、対応関係修正部520は、第1遮断弁420と第2遮断弁330との開状態を維持する。すると、電解質層106を透過して減少した水素量(水素透過量)と同じ量の新たな水素が水素タンク400から供給される。従って、水素流量計300の測定結果は、そのまま水素透過量を表すこととなる。具体的には、対応関係修正部520は、所定の一定時間(以下、「実測時間」と呼ぶ)内における水素流量計300の測定結果を積算することによって、水素供給量、すなわち、水素透過量を取得する。さらに、対応関係修正部520は、アノード圧力センサ230の測定値と、温度センサ150の測定値とを、取得する。
図10は、透過度プロットを示すグラフである。測定点M1は、ステップS400で取得された測定結果(水素透過量、温度、圧力)から算出された水素透過度Trを示している。このように、ステップS400での測定結果に応じて、透過度対応関係における1つの測定点を取得することができる。
なお、通常は、水素透過量が小さいが、第2実施例では、スタック100が有する単セルの枚数が多いので(例えば、百枚以上)、水素透過量は水素流量計300によって測定可能である。
対応関係修正部520は、1つ目の測定点M1を測定した後、スイッチ630の動作状態を接続状態に変更し、燃料電池スタック100に発電を再開させる。なお、対応関係修正部520は、燃料電池スタック100の昇温が完了する前に1つ目の測定点M1を取得する。従って、スタック100の温度Tは、1つ目の測定点M1を取得した際の温度T1から、さらに、上昇する。
次のステップS410では、対応関係修正部520は、互いに異なる複数(第2実施例では、2つ)の動作温度設定における水素透過度Trを取得したか否かを判断する。複数の動作温度設定での水素透過度Trの取得が完了していない場合には、再び、ステップS400に戻って、水素透過度Trを測定する。第2実施例では、対応関係修正部520は、温度Tが、第1温度T1よりも高い所定の第2の温度T2まで上昇した後に、ステップS400に移行して、2つ目の測定点M2を取得する。取得の方法は、1つ目の測定点M1を取得した方法と同じである。
2つ目の測定点M2を取得したら、次のステップS420で、対応関係修正部520は、切片と傾きとを、取得した測定点M1、M2に応じて修正する。第2実施例では、2つの測定点M1、M2を通る直線を修正後の透過度プロットTP4として採用する。対応関係修正部520は、この修正された透過度プロットTP4を示す修正後切片と修正後傾きとを、パラメータ値記憶部510に格納する。
以上のように、透過度プロットを修正したら、対応関係修正部520は、透過度対応関係修正処理を終了する。その後、制御部500は、所定の起動処理に戻り、運転部540は、燃料電池システム900を起動させる。
その後、運転部540は、上述した第1実施例と同様に、水素漏れ検知処理(図7)を実行する。ステップS220(図8:ステップS310)では、推定実行部530は、修正された透過度プロットTP4に従って、水素透過量を推定する。
以上のように、第2実施例では、対応関係修正部520は、水素透過度Trの測定結果に応じて透過度プロットを修正するので、燃料電池における水素透過量の推定の精度をさらに向上させることが可能となる。
また、第2実施例では、対応関係修正部520は、燃料電池システム900の起動時に、透過度対応関係修正処理に用いるデータ(水素透過度Tr)を取得(測定)するので、起動後の発電を妨害せずに、透過度プロットの修正を行うことができる。
なお、対応関係修正部520が水素透過度Trを測定する温度としては、任意の温度を採用可能である。例えば、予め設定された温度を採用可能である。また、測定点の数は、3以上であってもよい。また、水素透過度Trを測定する際のアノード圧力としても、任意の圧力を採用可能である。例えば、発電運転を行う場合の圧力よりも小さな圧力を採用してもよい。いずれの場合も、対応関係修正部520は、各測定点に応じて、修正された透過度プロットの切片と傾きとを推定すればよい。推定方法としては、周知の任意の方法(例えば、最小2乗法)を採用可能である。
なお、水素透過度Trの測定中のアノード圧力が所定の一定値(以下、「第2目標圧力」と呼ぶ)となるように制御される場合がある。この場合には、対応関係修正部520は、アノード圧力センサ230の測定結果を用いずに、アノード圧力が第2目標圧力であることとして、水素透過度Trを算出することができる。ただし、アノード圧力センサ230の測定結果を用いて水素透過度Trを算出することが好ましい。
なお、測定した水素透過度Trが過剰に大きい場合には、アノード流路システムASに水素漏れの不具合が発生している可能性がある。そこで、対応関係修正部520は、水素透過度Trが透過度しきい値よりも大きい場合には、水素漏れの可能性があると判定し、所定の不具合対応処理を実行することが好ましい。不具合対応処理としては、図7のステップS260と同様の処理を採用可能である。また、透過度しきい値としては、実験に基づいて予め設定された値を採用可能である。例えば、所定の一定値を採用してもよい。
ところで、対応関係修正部520は、図9に示す細かい対応関係修正処理(以下「細修正処理」と呼ぶ)と、図5に示す粗い対応関係修正処理(以下「粗修正処理」と呼ぶ)とを併用することが好ましい。上述したように、細修正処理では、粗修正処理と比べて、より精度の高い修正が可能である。ただし、細修正処理は、粗修正処理と比べて、より長い時間を要する。そこで、細修正処理を実行した後の起動時には、粗修正処理を実行することが好ましい。こうすれば、水素透過量の推定値の精度を向上させるとともに、透過度プロットの修正に過剰な時間がかかることを抑制できる。具体的には、対応関係修正部520は、細修正処理において、さらに、開放端電圧(以下、「基準開放端電圧」と呼ぶ)を測定してパラメータ値記憶部510に格納する。その後の粗修正処理では、細修正処理で設定された基準開放端電圧と修正後切片と修正後傾きとを基準として用いて、切片を修正すればよい。
なお、対応関係修正部520は、細修正処理を実行した後、特定の期間が経過したら、再び、起動時に細修正処理を実行することが好ましい。特定の期間としては、任意の期間を採用可能である。例えば、細修正処理を実行した後の起動回数が所定回数を超えるまでの期間や、細修正処理を実行した後の発電電力の積算値が所定の値を超えるまでの期間や、細修正処理を実行した後の経過時間が所定の値を超えるまでの期間を採用可能である。
また、対応関係修正部520が、細修正処理と粗修正処理とのいずれか一方のみを実行することとしてもよい。ただし、燃料電池システム900の初めての起動時には、細修正処理を実行することが好ましい。こうすれば、パラメータ値記憶部510(図1)に、切片初期値と傾き初期値とを予め格納せずに済む。
なお、第2実施例においては、アノード流路システムASが、本発明における「閉流路システム」に相当し、水素流量計300が「物理量センサ」に相当する。
C.第3実施例:
図11は、水素透過量を用いた膜劣化判定処理の手順を示すフローチャートである。この膜劣化判定処理は、電解質層106の劣化による不具合の可能性の有無を判定する処理である。運転部540(図1)は、図9に示す透過度対応関係修正処理の後に、この膜劣化判定処理を実行する。
最初のステップS500では、運転部540は、透過度プロットの傾きの正負を逆転させた値(以下「正傾き」と呼ぶ)が所定の傾きしきい値よりも小さいか否かを判定する。通常は、傾きは負値であるので、正傾きは正値となる。正傾きが傾きしきい値よりも小さい場合、すなわち、透過度プロットの傾きが水平に近い所定の範囲内に有る場合には、劣化による不具合の可能性が有ると判定する。
図12は、透過度対応関係を示すグラフである。図中の第1グラフTP11は、劣化の程度が小さい場合の透過度プロットを示し、第2グラフTP12は、劣化の程度が大きい場合の透過度プロットを示している。上述したように、水素透過度Trの対数は、温度Tの逆数に比例する傾向にある。ところで、電解質層の劣化が進むと、電解質層に穴が生じる場合が多い。電解質層に穴が生じると、水素が、アノードから電解質層の穴を介してカソードへ移動する。この際、水素は、電解質層の温度Tとは無関係に穴を通り抜けることが可能である。その結果、水素透過度Trの温度依存性は、電解質層の劣化の程度が小さい場合と比べて、劣化の程度が大きい場合の方が、小さくなる。すなわち、透過度プロットの正傾きは、劣化の程度が大きいほど小さくなる。従って、運転部540は、透過度プロットの正傾きが所定の傾きしきい値よりも小さい場合に、電解質層106の劣化による不具合の可能性が有ると判定できる。ここで、傾きしきい値としては、実験に基づいて予め設定された値を採用可能である。例えば、所定の一定値を採用してもよい。
運転部540は、不具合の可能性が有ると判定した場合には、次のステップS510で、所定の不具合対応処理を実行する。不具合対応処理としては、図7のステップS260と同様の処理を採用可能である。一方、正傾きが傾きしきい値以上である場合には、運転部540は、劣化による不具合の可能性が無いと判定して、膜劣化判定処理を終了する。
以上のように、第3実施例では、運転部540は、水素透過度Trの測定結果に基づいて修正された透過度プロットに従って、電解質層の劣化による不具合の可能性の有無を判定する。その結果、電解質層の劣化による不具合の可能性の有無の判定の精度を向上させることが可能となる。
D.第4実施例:
上述の各実施例では、アノードガス流路102における不純物濃度が十分に小さい、すなわち、アノード圧力と水素分圧とがほぼ等しいこととしていたが、アノードガス流路102内の不純物濃度が高い場合がある。例えば、燃料電池システム900の起動直後には、アノードガス流路102内の空気量が多い場合がある。このような状態で、図9に示す透過度対応関係修正処理を実行する場合には、アノード圧力をそのまま用いる代わりに、水素分圧を用いることが好ましい。第4実施例では、対応関係修正部520は、上述の第2実施例と同様に、図9に示す手順に従って、透過度対応関係修正処理を実行する。第2実施例との差違は、対応関係修正部520が、アノード圧力から水素分圧を推定することによって、透過度プロットを修正する点である。
図13は、対応関係修正部520が水素分圧を推定する様子を示す説明図である。図13は、燃料電池システム900の起動直後に1つ目の測定点(水素透過度Tr)を測定する場合を示している(図9:ステップS400)。ところで、図13の例では、燃料電池システム900(図1)を停止させる際に、第1遮断弁420と第2遮断弁330が閉じられることとしている。また、最後の停止後、十分な時間が経過していることとしている。その結果、アノードガス流路102には、水素は無く、カソードガス流路104から電解質層106を透過して移動してきた空気が満ちている。
最初のステップS400(図9)では、対応関係修正部520は、アノードガス流路102に水素を供給する前、すなわち、第1遮断弁420と第2遮断弁330との動作状態を閉状態から開状態に変更する前に、アノード圧力(以下「第1アノード圧力AP1」と呼ぶ)を取得する。アノードガス流路102には空気が満たされているので、この第1アノード圧力AP1は、空気の分圧を示すこととなる。
次に、対応関係修正部520は、アノードガス流路102に水素を供給する。その後、対応関係修正部520は、アノード圧力(以下「第2アノード圧力AP2」と呼ぶ)を取得する。アノードガス流路102には、水素が供給されているので、この第2アノード圧力AP2は、空気分圧AP1と水素分圧とを加えた値を示すこととなる。従って、対応関係修正部520は、第2アノード圧力AP2から第1アノード圧力AP1を差し引いた残りの圧力Phを水素分圧として採用することができる。
さらに、対応関係修正部520は、上述した第2実施例(図9:ステップS400)と同様に、水素流量計300の測定結果と、温度センサ150の測定結果とを、取得する。そして、取得した水素透過量(水素供給量)と、推定した水素分圧Phと、を用いることによって、1つ目の測定点の水素透過度Trを算出する。
その後、対応関係修正部520は、燃料電池スタック100に発電を開始させ、温度Tが、2つ目の測定点のための所定の第2温度T2まで上昇するのを待つ。この際、対応関係修正部520は、アノードガス流路102内の不純物濃度が過剰に高くならないように、パージバルブ250を所定のタイミングで開閉する。
温度Tが所定の第2温度T2まで高くなったら、対応関係修正部520は2つ目の測定点の水素透過度Trを測定する。図14は、この時点でのアノードガス流路102内のガスの成分と分圧とを示す説明図である。アノードガス流路102内には、水素と、窒素と、水蒸気と、が存在している。
水蒸気の分圧Pwは、アノードガス流路102内における飽和水蒸気圧(相対湿度100%の状態における水蒸気の分圧)と同じとなる。これは、カソードガス流路104で生じた水分が電解質層106を透過してアノードガス流路102へ移動するからである。従って、対応関係修正部520は、温度Tを用いることによって、水蒸気の分圧Pwを推定することができる。
一方、窒素の分圧Pnに関しては、対応関係修正部520は、実験に基づく推定値を採用する。上述したように、対応関係修正部520は、パージバルブ250を開閉することによって、アノードガス流路102内の不純物濃度、具体的には窒素量の上昇を抑えている。ここで、開閉を実行する時期と、開状態を継続する期間とは、アノードガス流路102内の窒素量が所定の目標値となるように予め実験に基づいて設定されている。従って、対応関係修正部520は、この目標となる窒素量で決まる分圧を、窒素の分圧Pnとして採用する。なお、この窒素分圧Pnは、パラメータ値記憶部510に予め格納されている。
さらに、対応関係修正部520は、アノード圧力(以下「第3アノード圧力AP3」と呼ぶ)を取得する。この第3アノード圧力AP3は、水素分圧と、窒素分圧Pnと、水蒸気分圧Pwと、の合計値を示すこととなる。従って、対応関係修正部520は、この第3アノード圧力AP3から、窒素分圧Pnと水蒸気分圧Pwとを差し引いた残りの圧力Phを水素分圧として採用することができる。
さらに、対応関係修正部520は、上述した第2実施例(図9:ステップS400)と同様に、水素流量計300の測定結果と、温度センサ150の測定結果とを、取得する。そして、取得した水素透過量(水素供給量)と、推定した水素分圧Phと、を用いることによって、2つ目の測定点の水素透過度Trを算出する。
このようにして、2つの測定点を取得したら、対応関係修正部520は、次のステップS420で、切片と傾きとを、取得した2つの測定点に応じて修正する。この処理は、上述の第2実施例での処理と同じである。
以上のように、第4実施例では、各測定点における水素透過度Trは、水素透過量を、アノード圧力の代わりに水素分圧Phで割ることによって算出される。従って、水素透過度Trは、水素分圧Phが小さいほど大きくなる。その結果、アノード圧力をそのまま用いる場合と比べて、水素透過量の推定の精度を向上させることが可能となる。また、アノードガス流路102内の窒素量が多いと推定される起動直後においても、水素透過度Trを精度良く算出できるので、透過度対応関係修正処理を実行するために起動時間が長くなることを抑制できる。
なお、第4実施例では、対応関係修正部520は、2つ目の水素透過度Trを測定する際に用いる窒素分圧Pnとして、所定の値を用いることとしているが、さらに詳細に窒素分圧Pnを推定することとしてもよい。例えば、アノードガス流路102内の窒素分圧Pnは、パージ処理の直後には小さくなり、その後、時間の経過とともに徐々に上昇する傾向にある。そこで、パージ処理からの経過時間と窒素分圧Pnとの対応関係を予めパラメータ値記憶部510に格納しておくこととしてもよい。こうすれば、対応関係修正部520は、パージ処理からの経過時間に応じて、より精度の高い窒素分圧Pnの推定を行うことができる。その結果、水素分圧Phの推定の精度を高めることが可能となる。なお、経過時間と窒素分圧Pnとの対応関係としては、実験に基づいて予め設定された対応関係を採用可能である。
また、起動直後のアノードガス流路102内におけるガスの成分と分圧とは、最後に発電運転を停止してからの経過時間に応じて大きく変化する場合がある。例えば、発電運転を停止すると、アノードガス流路102内の水素が電解質層106を透過してカソードガス流路104へ移動し、アノードガス流路102の水素分圧が時間の経過とともに低くなる場合がある。また、発電運転を停止すると、カソードガス流路104内の窒素が電解質層106を透過してアノードガス流路102へ移動し、アノードガス流路102の窒素分圧が時間の経過とともに高くなる場合がある。このような場合には、経過時間と、ガス成分と、ガス分圧と、の対応関係を予めパラメータ値記憶部510に格納しておくことが好ましい。ここで、対応関係修正部520が、最後の運転停止からの経過時間に応じて、各ガス成分の分圧を推定することとすれば、水素分圧Phの推定の精度を高めることが可能となる。例えば、最後に発電運転を停止してからの経過時間と窒素分圧Pnとの対応関係を予めパラメータ値記憶部510に格納しておくこととしてもよい。こうすれば、対応関係修正部520は、最後の運転停止から起動処理を開始するまでの経過時間に応じて、起動直後(起動処理の開始時点)での窒素分圧Pnの推定を行うことができる。その結果、1つ目の測定点のための水素分圧Phの推定の精度を高めることが可能となる。なお、このような対応関係は、起動処理の開始時点での推定に限らず、最後の運転停止から最初のパージ処理までの期間における水素分圧Ph(窒素分圧Pn)の推定に利用可能である。また、このような対応関係としては、実験に基づいて予め設定された対応関係を採用可能である。
このように、予めパラメータ値記憶部510に水素分圧に関連する情報である分圧情報を格納しておけば、対応関係修正部520は、この分圧情報を用いて容易に水素分圧Phを推定することができる。分圧情報としては、水素と水素以外の成分との少なくとも一方の分圧と、燃料電池スタック100の運転履歴情報とを、対応付ける情報を用いることができる。運転履歴情報としては、最後の停止時からの経過時間や、最後のパージ処理からの経過時間に限らず、アノード圧力の経時変化や、発電電力の経時変化等の種々の情報を採用可能である。いずれの場合も、分圧情報としては、対応関係修正部520が、アノード圧力と実際の運転履歴と分圧情報とを用いて水素分圧を推定可能となるような任意の情報を採用可能である。なお、このような分圧情報は、予め、実験に基づいて設定すればよい。
なお、水素分圧Phの推定方法としては、上述した方法に限らず、他の種々の方法を採用可能である。例えば、燃料電池システム900に、アノードガス流路102における水素濃度を測定する水素濃度センサを設けることができる。対応関係修正部520は、水素濃度センサの測定値と、アノード圧力センサ230の測定値(全圧)とから、水素分圧を推定することができる。なお、水素濃度センサが測定する水素濃度は、アノードガス流路102における水素濃度を反映した濃度であればよい。例えば、水素濃度センサが、アノードガス流路102内のガスの水素濃度を直接測定してもよく、また、循環流路220内のガスの水素濃度を測定してもよく、供給路210内のガスの水素濃度を測定してもよい。すなわち、水素濃度センサを、アノードガス流路102に限らず、循環流路220や供給路210に設けることができる。
E.第5実施例:
上述の第4実施例では、対応関係修正部520が、透過度対応関係修正処理において水素分圧の推定値を用いていたが、推定実行部530が、水素透過量推定処理において水素分圧の推定値を用いてもよい。具体的には、推定実行部530は、図8のステップS310において、ステップS300で取得したアノード圧力(現行アノード圧力)から水素分圧(現行水素分圧)を推定することによって、水素透過量(現行水素透過量)を推定する。具体的には、透過度プロットから得られる水素透過度Trに、現行水素分圧を乗じることによって、現行水素透過量を推定する。従って、現行水素透過量の推定値は、現行水素分圧が小さいほど小さくなる。その結果、アノード圧力をそのまま用いる場合と比べて、現行の水素透過量の推定の精度を向上させることが可能となる。なお、第5実施例では、透過度プロットが、水素分圧に基づいて設定されていることが好ましい。すなわち、対応関係修正部520が、水素分圧を用いて透過度対応関係を修正していることが好ましい。
なお、現行の水素分圧を推定する方法としては、第4実施例における水素分圧を推定する方法と同様の方法を採用可能である。例えば、推定実行部530が、水素濃度センサの現行の測定値とアノード圧力センサ230の現行の測定値とから現行の水素分圧を推定することとしてもよい。また、発電運転中には、運転部540が、アノードガス流路102内の窒素量が所定の目標値となるように、適宜、パージバルブ250を開閉する場合がある。この場合には、推定実行部530は、この目標となる窒素量で決まる分圧を窒素分圧として推定可能である。さらに、推定実行部530は、アノード圧力センサ230の現行の測定値(全圧)から、窒素分圧の推定値と、水蒸気の分圧(飽和水蒸気圧)と、を差し引いた残りを、現行の水素分圧として推定できる。また、パージ処理からの経過時間と窒素分圧との対応関係を予めパラメータ値記憶部510に格納しておいてもよい。こうすれば、推定実行部530は、パージ処理からの経過時間に応じて、より精度の高い窒素分圧の推定を行うことができる。その結果、現行の水素分圧の推定の精度を高めることが可能となる。
また、透過度対応関係を修正する時点では(図9)水素分圧が低いが、起動処理が完了した後の発電運転中には、水素分圧がアノード圧力センサ230の測定値(全圧)と同程度まで高められる場合がある。このような場合には、対応関係修正部520は、水素分圧を用いて透過度対応関係(図9、図10)を修正し、推定実行部530は、水素分圧を用いずにアノード圧力をそのまま用いて現行の水素透過量を推定することとしてもよい。
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
変形例1:
上述の第1実施例において、電解質層106の温度変化に伴って開放端電圧が変化する場合がある。このような場合には、対応関係修正部520は、開放端電圧差分DOCVを算出する際に(図5:ステップS110)、測定した開放端電圧と基準となる開放端電圧(例えば、開放端電圧初期値IOCV)との少なくとも一方を修正することによって、各開放端電圧に対応付けられた温度を一致させることが好ましい。ここで、「ある開放端電圧に対応付けられた温度」とは、その温度で電圧を測定すればその開放端電圧が得られると推定される温度を意味している。ここで、パラメータ値記憶部510が、温度の変化量と開放端電圧の変化量との関係を表すTOCV対応関係を、予め格納しておくことが好ましい。こうすれば、対応関係修正部520は、容易に開放端電圧を修正できる。なお、このようなTOCV対応関係は、予め実験に基づいて設定可能である。この代わりに、対応関係修正部520が、開放端電圧を取得する際に(図5:ステップS100)、発電量や冷却水量(図示せず)を調整することによって、スタック100の温度を所定の基準温度に調整することとしてもよい。
変形例2:
上述の第2実施例では、対応関係修正部520は、水素流量計300を用いて水素透過量を測定していたが、水素透過量が小さいと、発電で消費される水素量を測定する水素流量計300では精度よく水素透過量を測定できない場合がある。このような場合には、燃料電池システム900に、別途、測定レンジの小さい水素透過量測定用の流量計を設けることとしてもよい。
また、水素透過量の推定に先立って測定される物理量としては、水素流量に限らず、遮断状態にある閉流路システム(例えば、対象流路システムSS(図1))におけるガスの減少量に相関のある種々の物理量を採用可能である。例えば、対応関係修正部520が、水素流量の代わりに圧力変動から水素透過量を推定することとしてもよい。例えば、対応関係修正部520が、パージバルブ250と第2遮断弁330とを閉じ、さらに、スイッチ630に電力ライン600を遮断させる。そして、対応関係修正部520は、一定時間内におけるアノード圧力(アノード圧力センサ230の測定結果)の低下量を用いることによって、ガスの減少量、すなわち、水素透過量を算出することができる。なお、この場合には、アノード流路システムASから第2遮断弁330の上流側を除いた残りの流路の全体が、本発明における「閉流路システム」に相当する。また、アノード圧力センサ230が「物理量センサ」に相当する。
なお、ガス減少量に相関のある物理量の測定は、閉流路システムに水素を含む燃料ガスを供給した状態で実行することが好ましい。こうすれば、電解質層106を透過するガスにおける水素以外の他の成分(例えば、窒素)の割合を小さくすることができるので、物理量からの水素透過量の算出の精度が低下することを抑制できる。例えば、圧力変動から水素透過量を算出する場合には、燃料ガスの供給の後に、圧力変動を測定すればよい。なお、閉流路システムに水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給部としては、図1に示すような水素タンク400と遮断弁(例えば、第1遮断弁420や第2遮断弁330)とを用いたものに限らず、種々の装置を採用可能である。例えば、改質器を用いた供給装置を採用してもよい。
変形例3:
上述の第3実施例では、運転部540は、透過度プロットの傾きを用いて膜劣化判定処理を実行しているが、膜劣化判定処理としては、他の種々の処理を採用可能である。一般には、互いに異なる複数の動作温度のそれぞれにおける水素透過量の推定値を用いることによって、動作温度の上昇量に対する、推定された水素透過量の増加量の割合を算出し、この割合が所定のしきい値以下である場合に、電解質層の劣化による不具合の可能性が有ると判定することができる。ここで、運転部540は、電解質層106の劣化による不具合の可能性の有無を、水素透過量の推定値を用いて判定する膜劣化判定部として機能することとなる。この際、図9に示す第2実施例のように、互いに異なる複数の動作温度のそれぞれにおける水素透過度Trの測定結果に応じて水素透過量を推定することが好ましい。
変形例4:
上述の各実施例において、温度センサ150が測定する温度は、電解質層106の温度を反映した温度であればよい。例えば、スタック100の内部の温度を直接測定する代わりに、スタック100から排出されるガスの温度を測定してもよく、燃料電池スタック100から排出される冷却水(図示せず)の温度を測定してもよい。また、対応関係修正部520と推定実行部530とが、温度センサ150の測定値に応じて電解質層106の温度を推定し、この推定値を上述の各処理で利用することとしてもよい。測定値と推定値との関係は、予め実験に基づいて定めておけばよい。
同様に、アノード圧力センサ230が測定する圧力は、アノードガス流路102内の圧力を反映した圧力であればよい。例えば、循環流路220の圧力を測定する代わりに、アノードガス流路102内の圧力を直接測定してもよく、供給路210の圧力を測定してもよい。また、対応関係修正部520と推定実行部530が、アノード圧力センサ230の測定値に応じてアノードガス流路102内の圧力を推定し、この推定値を上述の各処理で利用することとしてもよい。測定値と推定値との関係は、予め実験に基づいて定めておけばよい。
変形例5:
図13、図14に示す第4実施例において、対応関係修正部520は、水素分圧を推定する際に、窒素や水蒸気に限らず、不純物の他の種々の成分(例えば、酸素)の分圧を用いることが可能である。ただし、不純物の成分の中の最も量の多い成分(通常は窒素)を少なくとも含む不純物の分圧を用いることが好ましい。以上、対応関係修正部520が水素分圧を推定する場合について説明したが、推定実行部530が現行の水素分圧を推定する場合についても同様である。
変形例6:
複数の動作温度でのガス減少量(水素透過量)に関する測定値(図9、ステップS400)を用いて、現行の水素透過量を推定する方法としては、これらの複数の測定値(測定点)を近似する近似直線(透過度プロット)を用いる方法に限らず、種々の方法を採用可能である。例えば、複数の測定点を補間することによって、現行の水素透過量を推定する方法を採用可能である。また、複数の測定点を近似する近似曲線(例えば、3次関数)を用いる方法を採用してもよい。ただし、図9、図10に示す第2実施例のように、互いに異なる2つの動作温度で、ガス減少量に関する測定を実行し、これら2つの測定点を直線で近似することが好ましい。こうすれば、ガス減少量に関する測定に過剰な時間を要することを防止しつつ、現行水素透過量の推定精度の向上を図ることができる。
変形例7:
上述の各実施例では、現行の動作温度と現行のアノード圧力と現行の水素透過量とを関連付ける方法として、透過度プロットを用いる方法を採用しているが、他の種々の方法を採用可能である。例えば、現行の動作温度と現行のアノード圧力と現行の水素透過量との対応関係を表すマップ(テーブル)を用いる方法を採用してもよい。この場合も、第1実施例と同様に、対応関係修正部520が、開放端電圧が低いほど現行の水素透過量の推定値が大きくなるようにマップを修正することが好ましい。また、第2実施例と同様に、対応関係修正部520が、ガス減少量(水素透過量)に関する測定結果に基づいて、ガス減少量が多いほど現行の水素透過量の推定値が大きくなるようにマップを修正することが好ましい。いずれの場合も、マップを修正する方法としては、上述した近似直線や近似曲線、補間値を用いてマップを修正する方法を採用可能である。また、第3実施例と同様に、対応関係修正部520は、マップに基づいて、動作温度の上昇量に対する水素透過量の増加量の割合を算出し、この割合が所定のしきい値以下である場合に、電解質層の劣化による不具合の可能性が有ると判定することが好ましい。また、第4、第5実施例と同様に、水素分圧を用いることによってマップを利用することが好ましい。
変形例8:
上記各実施例において、アノード側のガスの流路の構成としては、図1に示す構成に限らず、任意の構成を採用可能である。同様に、閉流路システムとしても、図1に示すアノード流路システムASの構成に限らず、アノードガス流路102と外部とに連通するとともに外部との連通を遮断可能な任意の構成を採用可能である。例えば、アノードガス流路102からの排ガスが、循環せずに外部に排出される構成を採用してもよい。
変形例9:
上記各実施例において、燃料電池スタック100としては、固体高分子電解質型燃料電池に限らず、固体酸化物電解質型や、リン酸電解質型や、アルカリ水溶液電解質型や、溶融炭酸塩電解質型等、種々のタイプの燃料電池を採用可能である。ただし、固体高分子電解質型燃料電池を採用すれば、適切に、水素透過量の推定の精度を向上させることが可能となる。
本発明の一実施例としての燃料電池システム900の構成を示すブロック図。 温度Tと水素透過度Trとの関係を示すグラフ。 燃料電池スタック100の電流密度/電圧特性を示すグラフ。 切片差分Diと開放端電圧差分DOCVとの関係の一例を示すグラフ。 透過度対応関係修正処理の手順の一例を示すフローチャート。 透過度プロットを示すグラフ。 運転部540が実行する水素漏れ検知処理の手順を示すフローチャート。 水素透過量推定処理の手順を示すフローチャート。 透過度対応関係修正処理の別の例の手順を示すフローチャート。 透過度プロットを示すグラフ。 水素透過量を用いた膜劣化判定処理の手順を示すフローチャート。 透過度対応関係を示すグラフ。 対応関係修正部520が水素分圧を推定する様子を示す説明図。 アノードガス流路102内のガスの成分と分圧とを示す説明図。
符号の説明
100...燃料電池スタック
102...アノードガス流路
104...カソードガス流路
106...電解質層
150...温度センサ
200...イジェクタ
210...供給路
220...循環流路
230...アノード圧力センサ
240...パージ流路
250...パージバルブ
300...水素流量計
310...第2流路
320...第2圧力センサ
330...第2遮断弁
340...第2調圧弁
350...第3圧力センサ
400...水素タンク
410...第1流路
420...第1遮断弁
430...第1圧力センサ
440...第1調圧弁
500...制御部
510...パラメータ値記憶部
520...対応関係修正部
530...推定実行部
540...運転部
600...電力ライン
610...電圧センサ
620...電流センサ
630...スイッチ
900...燃料電池システム

Claims (7)

  1. 燃料電池システムであって、
    電解質層と、前記電解質層を挟むように配置されたアノード反応ガス流路とカソード反応ガス流路と、を有する燃料電池と、
    前記電解質層の温度を反映する温度である動作温度を測定する温度センサと、
    前記燃料電池の開放端電圧を測定可能な電圧センサと、
    前記動作温度と前記開放端電圧とを用いて、前記アノード反応ガス流路から前記電解質層を介して前記カソード反応ガス流路へ透過する未反応水素の透過量を推定する透過量推定処理を実行するための透過量推定部と、
    を備え、
    前記透過量推定部は、前記動作温度が同じ場合の水素透過量の推定値が、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように、前記水素透過量の推定値の対数を、前記動作温度の逆数の一次関数で表す透過量対応関係を決定し、さらに、前記一次関数の切片を、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように決定するとともに、前記透過量対応関係に従って前記透過量推定処理を実行する、
    燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の燃料電池システムであって、さらに、
    前記アノード反応ガス流路内の圧力を反映する圧力であるアノード圧力を測定する圧力センサと、
    前記アノード反応ガス流路と外部とに連通するとともに前記外部との連通を遮断可能な閉流路システムと、を備え、
    前記閉流路システムは、
    前記外部と遮断した状態における前記閉流路システム内のガスの減少量に相関のある物理量を測定する物理量センサを有し、
    前記透過量推定部は、前記透過量推定処理に先立って、前記遮断状態における前記アノード圧力と前記動作温度と前記物理量とを測定する透過量測定処理を、互いに異なる複数の動作温度設定で実行するとともに前記透過量測定処理により得られた前記アノード圧力と前記動作温度と前記物理量とを用いて前記透過量対応関係を修正し、
    前記透過量推定部は、前記透過量推定処理において、現行の動作温度と現行のアノード圧力との測定を実行するとともに、修正後の前記透過量対応関係と、測定された前記現行動作温度と、前記現行アノード圧力と、を用いて前記水素透過量の推定を行う、
    燃料電池システム。
  3. 請求項2に記載の燃料電池システムであって、
    前記透過量推定部は、前記水素透過量の推定値を、前記アノード圧力と前記アノード圧力に応じて決定された水素分圧とのいずれかで割った値の対数を、前記動作温度の逆数の一次関数で表す近似直線を用いて、前記複数の透過量測定処理の測定結果を近似し、さらに、前記近似直線と、前記現行動作温度と、前記現行アノード圧力と、を用いて前記水素透過量の推定を行う、
    燃料電池システム。
  4. 請求項2または請求項3に記載の燃料電池システムであって、
    前記透過量推定部は、
    前記透過量測定処理を、互いに異なる複数の動作温度設定で実行するとともに、前記透過量測定処理で測定した前記アノード圧力から水素分圧を推定し、推定された前記水素分圧と、前記透過量測定処理により得られた前記動作温度と前記物理量とを用いて前記透過量対応関係を修正し、
    前記透過量推定処理において、現行の動作温度と現行のアノード圧力との測定を実行するとともに、修正後の前記透過量対応関係と、測定された前記現行動作温度と、前記現行アノード圧力と、を用いて前記水素透過量の推定を行う、
    燃料電池システム。
  5. 請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
    前記透過量推定部は、
    前記透過量推定処理において、現行の動作温度と現行のアノード圧力との測定を実行するとともに、前記現行アノード圧力から現行の水素分圧を推定し、さらに、修正後の前記透過量対応関係と、測定された前記現行動作温度と、推定された前記現行水素分圧と、を用いて前記水素透過量の推定を行う、
    燃料電池システム。
  6. 電解質層と、前記電解質層を挟むように配置されたアノード反応ガス流路とカソード反応ガス流路と、を有する燃料電池における、前記アノード反応ガス流路から前記電解質層を介して前記カソード反応ガス流路へ透過する未反応水素の透過量を推定する方法であって、
    (A)前記電解質層の温度を反映する温度である動作温度を測定する工程と、
    (B)前記燃料電池の開放端電圧を測定する工程と、
    (C)前記動作温度が同じ場合の水素透過量の推定値が、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように、前記水素透過量の推定値の対数を、前記動作温度の逆数の一次関数で表す透過量対応関係を決定し、さらに、前記一次関数の切片を、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように決定するとともに、前記透過量対応関係に従って前記未反応水素の透過量を推定する透過量推定処理を実行する工程と、
    を備える、推定方法。
  7. 電解質層と、前記電解質層を挟むように配置されたアノード反応ガス流路とカソード反応ガス流路と、を有する燃料電池システムにおける、前記アノード反応ガス流路から前記電解質層を介して前記カソード反応ガス流路へ透過する未反応水素の透過量を推定する処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
    前記燃料電池システムは、さらに、
    前記電解質層の温度を反映する温度である動作温度を測定する温度センサと、
    前記燃料電池の開放端電圧を測定可能な電圧センサと、
    を備え、
    前記コンピュータプログラムは、
    (A)コンピュータに、前記動作温度を取得させる機能と、
    (B)コンピュータに、前記開放端電圧を取得させる機能と、
    (C)コンピュータに、前記動作温度が同じ場合の水素透過量の推定値が、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように、前記水素透過量の推定値の対数を、前記動作温度の逆数の一次関数で表す透過量対応関係を決定し、さらに、前記一次関数の切片を、前記開放端電圧が低いほど大きくなるように決定するとともに、前記透過量対応関係に従って前記未反応水素の透過量を推定する透過量推定処理を実行させる機能と、
    を実現させる、コンピュータプログラム。
JP2005168193A 2005-06-08 2005-06-08 燃料電池システムおよび燃料電池における未反応水素の透過量の推定方法 Expired - Fee Related JP5002913B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005168193A JP5002913B2 (ja) 2005-06-08 2005-06-08 燃料電池システムおよび燃料電池における未反応水素の透過量の推定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005168193A JP5002913B2 (ja) 2005-06-08 2005-06-08 燃料電池システムおよび燃料電池における未反応水素の透過量の推定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006344465A JP2006344465A (ja) 2006-12-21
JP5002913B2 true JP5002913B2 (ja) 2012-08-15

Family

ID=37641273

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005168193A Expired - Fee Related JP5002913B2 (ja) 2005-06-08 2005-06-08 燃料電池システムおよび燃料電池における未反応水素の透過量の推定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5002913B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101575429B1 (ko) 2013-12-19 2015-12-07 현대자동차주식회사 연료전지 수소 투과도 측정 장치 및 방법
KR101646337B1 (ko) * 2014-08-19 2016-08-05 현대자동차주식회사 수소센서를 이용한 연료전지용 멤브레인 결함 검사 장치

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4162874B2 (ja) * 2001-07-26 2008-10-08 本田技研工業株式会社 燃料電池におけるガス漏れ検知方法
JP2005063909A (ja) * 2003-08-20 2005-03-10 Denso Corp 燃料電池システム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006344465A (ja) 2006-12-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5196209B2 (ja) 燃料電池システム、および燃料電池システムにおける燃料ガス漏れ判定方法
US8367257B2 (en) Fuel cell system and method for adjusting moisture content in a polymer electrolyte membrane
US7736814B2 (en) Fuel-cell system and method of estimating nitrogen concentration on fuel electrode of fuel cell
US20080008921A1 (en) Fuel Cell System and Fuel Gas Control Method
JP5549735B2 (ja) 燃料電池システム及びその運転方法
JP2007035445A (ja) 燃料電池システム
JP2008277044A (ja) 燃料電池システム
JP5186794B2 (ja) 燃料電池システムおよび燃料電池システムにおけるガス圧力調節方法
JP2007165103A (ja) 燃料電池システム及びその運転方法並びに移動体
JP2007157587A (ja) 燃料電池システム
JP5002913B2 (ja) 燃料電池システムおよび燃料電池における未反応水素の透過量の推定方法
JP5239201B2 (ja) 燃料電池システムおよび燃料電池システムにおける不純物排出方法
JP5304863B2 (ja) 燃料電池システム
JP4982977B2 (ja) 燃料電池システム
JP2007134205A (ja) 燃料電池システム、及び、そのシステムの掃気方法
JP4867207B2 (ja) 燃料電池システム
JP2008010196A (ja) 燃料電池システム
JP7038301B2 (ja) 燃料電池システムおよび燃料電池システムの運転方法
US9059438B2 (en) Fuel cell system
JP2005063712A (ja) 燃料電池システムおよびその運転方法
JP2006228528A (ja) 燃料電池システム
JP2006309948A (ja) 燃料電池システム
US10038208B2 (en) Fuel cell system
JP5034191B2 (ja) 燃料電池システム
CN112635800B (zh) 用于估计燃料电池的氢气浓度的系统和方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080529

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110222

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110418

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110517

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110713

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120424

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120507

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150601

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150601

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees