JP5002876B2 - 異方導電フィルム、接続体及び半導体装置 - Google Patents

異方導電フィルム、接続体及び半導体装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路接続用接着剤組成物、接続体及び半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。接着剤に対する要求は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐に渡る特性が要求されている。また、接着に使用される被着体は、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、SiN、SiO等の多種多様な表面状態を有する基材が用いられ、各被着体にあわせた分子設計が必要である。
従来から、前記半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた。樹脂の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられてきた。実際の工程での硬化条件は、170〜250℃の温度で1〜3時間硬化することにより、所望の接着を得ていた。しかしながら、最近の半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化し、硬化時の加熱によって、周辺部材に悪影響を及ぼす恐れが出てきた。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要性があり、低温(100〜170℃)、短時間(1時間以内)、換言すれば低温速硬化での接着が要求されている。この低温速硬化を達成するためには、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒を使用する必要があるが、室温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しい。
最近、(メタ)アクリレート誘導体とラジカル開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが非常に反応性に富むため、短時間硬化が可能であり、かつラジカル開始剤の分解温度以下では、安定に存在することから、低温速硬化と室温付近での貯蔵安定性を両立した硬化系である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ラジカル硬化系の接着剤は、硬化時の硬化収縮が大きいために、エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、接着強度に劣り、特に無機材質や金属材質の基材に対する接着強度が低下する。このため、半導体素子や液晶表示素子の接着剤に使用した場合、85℃、85%RH等の高温多湿条件に放置する信頼性試験では、十分な性能(接着強度等)が得られない。
【0004】
本発明は、ラジカル硬化系でありながら、金属及び無機材質で構成される基材への高い接着強度を示し、室温〜50℃での貯蔵安定性に優れ、かつ信頼性試験後も十分な性能を有する異方導電フィルム、接続体及び半導体装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明は、[]相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続するための異方導電フィルムであって、(a)ラジカル重合性化合物、(b)80〜200℃の加熱、または150〜750nmの光照射と前記加熱を併用することでラジカルを発生する硬化剤、及び(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物を含有してなり、(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物は、(a)ラジカル重合性化合物とは異なるものであって、N−ビニルイミダゾールを含み、(a)ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を分子内に一つ以上有する化合物を含み、(b)80〜200℃の加熱、または150〜750nmの光照射と前記加熱とを併用することでラジカルを発生する硬化剤は、過酸化物を含む、異方導電フィルムである。また、本発明は、[](a)ラジカル重合性化合物100重量部に対して、(b)80〜200℃の加熱、または150〜750nmの光照射と前記加熱を併用することでラジカルを発生する硬化剤0.5〜30重量部、(c)分子内に窒素原子と炭素−炭素二重結合を含有する化合物0.5〜30重量部を含有してなる上記[1]に記載の異方導電フィルムである。また、本発明は、[]導電粒子を含有してなる異方導電フィルムである。また、本発明は、[](a)ラジカル重合性化合物100体積%に対して、さらに、導電粒子0.1〜30体積%を含有してなる上記[1]または上記[2]に記載の異方導電フィルムである。また、本発明は、[]相対向する回路電極を有する基板間に上記[1]から上記[]のいずれかに記載の異方導電フィルムを介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した接続体である。さらに、本発明は、[]相対向する半導体素子の回路電極と半導体搭載用基板の回路電極間に上記[1]から上記[]のいずれかに記載の異方導電フィルムを介在させ、相対向する回路電極を加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した半導体装置である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において用いる(a)ラジカル重合性化合物としては、活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物であれば、特に制限無く公知のものを使用することができる。このような官能基としては例えば、分子内にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、マレイミド基、ビニル基等が挙げられるが、選択の容易さからアクリロイル基およびメタクリロイル基(以下、両者を総称して(メタ)アクリロイルと呼ぶ)を分子内に一つ以上有する化合物が好ましく、さらに、分子内に(メタ)アクリロイル基を二つ以上有する化合物が、硬化によって高硬化密度が得られるため、より好ましい。
【0007】
具体的には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、2,2’-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート等の単官能および多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独あるいは混合して用いてもよい。
【0008】
マレイミド樹脂としては、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているもので、例えば、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、N,N'−p−フェニレンビスマレイミド、N,N'−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s-ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4'−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが有り、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。また、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂などを用いても良い。
【0009】
本発明において用いる(b)150〜750nmの光照射、または80〜200℃の加熱、または前記光照射と前記加熱を併用することでラジカルを発生する硬化剤としては、α−アセトアミノフェノン誘導体や過酸化物、アゾ化合物等、特に制限無く公知のものを使用することができる。これらの化合物としては、特に硬化温度の設計の容易さ等の点から、過酸化物がより好ましい。使用可能な過酸化物としては、過酸化物の分解の尺度を示す1分間半減期温度の参照が簡便であり、1分間半減期温度が、40℃以上かつ200℃以下が好ましく、その中でも1分間の半減期温度が60℃以上かつ170℃以下がより好ましい。具体的には、ジアシルパーオキサイド誘導体、パーオキシジカーボネート誘導体、パーオキシエステル誘導体、パーオキシケタール誘導体、ジアルキルパーオキサイド誘導体、ハイドロパーオキサイド誘導体が挙げられる。
【0010】
ジアシルパーオキサイド誘導体としては、2,4―ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0011】
パーオキシジカーボネート誘導体としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0012】
パーオキシエステル誘導体としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0013】
パーオキシケタール誘導体としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0014】
ジアルキルパーオキサイド誘導体としては、α,α'ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0015】
ハイドロパーオキサイド類としては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0016】
(b)硬化剤の添加量は、(a)ラジカル重合性化合物100重量部に対して、0.5〜30重量部であり、好ましくは1〜20重量部である。添加量が0.5重量部未満の場合、硬化不足が懸念され、また、30重量部を超えた場合には、接着力が低下する恐れがある。
【0017】
本発明に用いる(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物としては、特に制限無く公知の化合物を使用できる。このような、化合物としては、分子内にアミノ基を有するビニル化合物が特に好ましい。具体的には、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、4,4'‐ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N-ビニルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N、N-ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種類のビニル化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0018】
(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物の添加量は、(a)ラジカル重合性化合物100部に対して、0.5〜30重量部であり、好ましくは1〜20重量部である。添加量が0.5重量部未満の場合、高接着強度が得られにくく、また、30重量部を超える場合には、硬化後の接着剤の吸水率が上昇して、信頼性が低下する恐れがある。
【0019】
本発明に用いる導電粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。導電粒子が、プラスチックを核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものや熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極の高さばらつきを解消し、また、電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。またこれらの導電粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できることから、適宜これを単独あるいは導電粒子と混合して用いてもよい。
【0020】
この導電粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。導電粒子の使用量は、特に制限は受けないが、回路接続用接着剤組成物の合計100体積に対して0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。この値が、0.1体積%未満であると導電性に劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、体積%は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等にその成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその体積として求めることもできる。
【0021】
本発明の接回路接続用着剤組成物には、カップリング剤等の密着向上剤、レベリング剤、着色剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
【0022】
本発明の回路接続用接着剤組成物は、増粘化、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和性を付与するため、種々の樹脂を適宜添加してもよい。使用する樹脂は特に制限を受けないが、(a)ラジカル重合性化合物、(b)硬化剤、(c)分子内に窒素原子と炭素−炭素二重結合を含有する化合物及び導電粒子に悪影響を及ぼさないことが必須である。このような樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、SBS及びそのエポキシ変性体、SEBS及びその変性体、尿素樹脂等の高分子成分が使用される。これら高分子成分は、分子量が10000〜10,000,000のものが好ましい。分子量は、大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。さらに、これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば接着剤組成物としては好適に用いることができる。また、これら樹脂は、ラジカル重合性の官能基で変成されていても良く、この場合耐熱性が向上する。また、これら樹脂は、シロキサン結合やフッ素置換基が含まれていても良い。さらに、ラジカル重合性の官能基やエポキシ基,カルボキシル基などで変成されていても良く、この場合耐熱性が向上する。高分子成分の配合量は、2〜80重量%であり、5〜70重量%が好ましく、10〜60重量%が特に好ましい。2重量%未満では、応力緩和や接着力が十分でなく、80重量%を超えると流動性が低下する。
【0023】
本発明の回路接続用接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温(25℃程度)で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃以下の場合、室温で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃以上だと、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0024】
本発明の回路接続用接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルム形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
【0025】
本発明の回路接続用接着剤組成物は光照射、加熱、または光照射と同時に加熱及び加圧を併用して接着させることができる。これらを併用することにより、より低温短時間での接着が可能となる。光照射は、150〜750nmの波長域の照射光が好ましく、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプを使用して0.1〜10J/cmの照射量で硬化することができる。加熱温度は、80〜200℃の温度であるが、80以下の50℃〜170℃程度でも良い。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜3時間、好ましくは、0.5秒〜10分、より好ましくは、0.5秒〜1分の範囲で行うことがより好ましい。
【0026】
本発明の回路接続用接着剤組成物は、回路接続用ばかりでなく、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することもできる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0027】
以下に、本発明の回路接続用接着剤組成物及び導電粒子を使用して作製した異方導電フィルムと電極の接続の一例について説明する。異方導電フィルムを、基板上の相対向する回路電極間に存在させ、加熱加圧することにより両電極の接触と基板間の接着を得、電極との接続を行える。回路電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質材料、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物材料、ガラス/エポキシ等の複合材料の各組み合わせが適用できる。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1,参考例2、比較例1〜2)フェノキシ樹脂(PKHC、ユニオンカーバイド社製商品名、平均分子量45,000)40gを、メチルエチルケトン60gに溶解して、固形分40重量%の溶液とした。ラジカル重合性化合物として、イソシアヌル酸EO(エチレンオキサイド)変性(M-315、東亜合成株式会社製商品名)及び2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(ライトエステルP-2M、共栄社化学株式会社製商品名)、硬化剤として、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH、日本油脂株式会社製商品名)、分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物としてN-ビニルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)及びアクリロイルモルホリン(ACMO、株式会社興人社製商品名)を用いた。またポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径5μm、比重2.5の導電粒子を作製した。固形重量比で表1に示すように配合し、さらに導電粒子を1.5体積%配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤を得た。
【0030】
【表1】
Figure 0005002876
【0031】
〔接着強度、接続抵抗の測定〕 上記製法によって得たフィルム状接着剤を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて170℃、3MPaで20秒間の加熱加圧を行って幅2mmにわたり接続し、接続体を作製した。この接続体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗150点の平均で示した。
【0032】
また、この接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。以上のようにして行った接続体の接着強度、接続抵抗の測定の結果を表2に示した。
【0033】
【表2】
Figure 0005002876
【0034】
実施例1及び参考例2で得られた回路接続用接着剤組成物は、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後で、良好な接続抵抗及び接着強度を示し、高い耐久性を合わせ持つことが分かる。これに対し、本発明の(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物(塩基性のビニル化合物)を使用しない比較例1〜2では、接着直後では良好な値を示したが、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後では、接続抵抗が上昇し、かつ接着強度が大幅に低下したため、満足な接続体は得られなかった。
【0035】
(実施例3)
実施例1で得られたフィルム状接着剤を、真空包装を施して、40℃で5日間放置した後、FPCとITOとの加熱圧着を同様に行ったところ、接着直後の接続抵抗2.3Ω、接着強度1050N/m、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後の接続抵抗2.8Ω、接着強度900N/mであり、接着直後、信頼性試験後とも放置前と同様の良好な値を示し、放置安定性(貯蔵安定性)に優れる。
【0036】
(比較例3)
比較例1で得られたフィルム状接着剤を用いて、実施例3と同様に放置安定性試験を行ったところ、接着直後の接続抵抗4.8Ω、接着強度600N/m、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後の接続抵抗8.7Ω、接着強度200N/mであり、接着直後、信頼性試験後とも放置前よりも低下しており、放置安定性に劣る。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、低温短時間硬化が可能で、高温高湿条件での信頼性試験後も良好な性能を示し、かつ貯蔵安定性(放置安定性)に優れる回路接続用接着剤組成物、接続体及び半導体装置を提供することができる。

Claims (6)

  1. 相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続するための異方導電フィルムであって、
    (a)ラジカル重合性化合物、(b)80〜200℃の加熱、または150〜750nmの光照射と前記加熱とを併用することでラジカルを発生する硬化剤、及び(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物を含有してなり、
    前記(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物は、前記(a)ラジカル重合性化合物とは異なるものであって、N−ビニルイミダゾールを含み、
    前記(a)ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を分子内に一つ以上有する化合物を含み、
    前記(b)80〜200℃の加熱、または150〜750nmの光照射と前記加熱とを併用することでラジカルを発生する硬化剤は、過酸化物を含む、異方導電フィルム。
  2. (a)ラジカル重合性化合物100重量部に対して、(b)80〜200℃の加熱、または150〜750nmの光照射と前記加熱を併用することでラジカルを発生す硬化剤0.5〜30重量部、(c)分子内に窒素原子と炭素―炭素二重結合を含有する化合物0.5〜30重量部を含有してなる請求項1に記載の異方導電フィルム。
  3. 導電粒子を含有してなる請求項1又は2に記載の異方導電フィルム。
  4. (a)ラジカル重合性化合物100体積%に対して、さらに、導電粒子0.1〜30体積%を含有してなる請求項1又は2に記載の異方導電フィルム。
  5. 相対向する回路電極を有する基板間に請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電フィルムを介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した接続体。
  6. 相対向する半導体素子の回路電極と半導体搭載用基板の回路電極間に請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電フィルムを介在させ、相対向する回路電極を加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した半導体装置。
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