JP5000896B2 - 改質プロピレン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、メタロセン系触媒を用いて得られる低規則性ポリプロピレンは、マグネシウム−チタン系触媒により得られるポリプロピレンとブレンドすることにより、ポリプロピレンの弾性率を制御したり、多層フィルムにおけるヒートシール層等としての用途が期待されているが、さらなる高強度、高接着性が求められている。
従来のポリプロピレンをベースとしたプロピレン系重合体を変性する場合、融点である160℃を超える変性温度が必要であった。一方、変性剤として用いられている多くのオレフィン含有化合物は、融点を超える温度で自己重合を起こすなどの不都合が生じることがあり、一般的に不安定である。そのため、上記オレフィン系重合体に変性剤を添加して反応させた場合、ホモ単独重合体が生成しやすくなり、効率的な変性が困難な場合が多い。また、最近のポリオレフィン系素材の高い要求から従来以上の高い変性量が要望されている。
これを解決するために、比較的穏やかな条件でポリプロピレンを変性する溶液法が提案されているが、この場合、系内に多量の溶剤を用いるため、プロセスの負荷が大きくなり、エネルギー原単位も上昇するという問題がある。
すなわち本発明は、以下の改質プロピレン系重合体(改質プロピレン単独重合体又は改質プロピレン系共重合体)の製造方法を提供するものである。
1. (a)[mmmm]=20〜60モル%、(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1、(c)[rmrm]>2.5モル%、(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0、及び(e)昇温クロマトグラフィーにおける25℃以下で溶出する成分量(W25)が20〜100質量%であるプロピレン系重合体を、ラジカル開始剤と極性基含有オレフィン系化合物により、無溶媒下で、温度50〜140℃において改質処理することを特徴とする、以下の(1)及び(2)を満足する改質プロピレン系重合体の製造方法。
(1)テトラリン溶媒中135℃にて測定した、改質後のプロピレン系重合体の極限粘度[η]1と改質前のプロピレン系重合体の極限粘度[η]2とが、[η]1/[η]2≧0.95の関係にある。
(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から求めた分子量分布(Mw/Mn)が2.5以上である。
2. 極性基含有オレフィン系化合物が、不飽和カルボン酸の酸無水物である上記1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
(a)メソペンタッド分率[mmmm]が20〜60モル%である。
(b)ラセミペンタッド分率[rrrr]と1−[mmmm]が次の関係を満たす。
[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)ラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.5モル%を超える値である。
(d)メソトリアッド分率[mm]、ラセミトリアッド分率[rr]及びトリアッド分率[mr]が次の関係式を満たす。
[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0、
(e)昇温クロマトグラフィーにおける25℃以下で溶出する成分量(W25)が20〜100質量%である。
本発明に使用するプロピレン系重合体が、上記の関係を満たすと、得られるフィルムやシートのべたつき成分の量と弾性率の低さと透明性のバランスが優れる。すなわち、弾性率が低く軟質性(柔軟性とも言う)に優れ、べたつき成分が少なく表面特性(例えば、ブリードや他の製品へのべたつき成分の移行が少ない等に代表される)にも優れ、かつ透明性にも優れるという利点がある。
上記(a)に示すように、本発明に使用するプロピレン系重合体のメソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、べたつきが抑制される。60モル%以下であると、弾性率が高くなり過ぎず適度のものとなる。
また、[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、プロピレン系重合体の規則性分布の均一さを表す指標である。この値が大きくなると規則性分布が広がり、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつきが増し、透明性が低下することを意味する。上記(b)に示すように、本発明に使用するプロピレン系重合体の[rrrr]/(1−[mmmm])が0.1以下であると、べたつきが抑制される。
また、上記(d)の関係式は重合体のランダム性の指標を表し、1に近いほどランダム性が高くなり、透明で、柔軟性と弾性回復率のバランスに優れる。上記(d)に示すように、[mm]×[rr]/[mr]2の値が2.0以下であると、透明性の低下が抑制され、柔軟性と弾性回復率のバランスが良好となる。[mm]×[rr]/[mr]2は、好ましくは1.8〜0.5、より好ましくは1.5〜0.5の範囲である。
なお、13C−NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
M=(m/S)×100
R=(γ/S)×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖 :21.7〜22.5ppm
W25は、プロピレン系重合体が軟質であるか否かを表す指標であり、この値が小さくなると、弾性率の高い成分が多くなったり、立体規則性分布の不均一さが広がる。本発明においては、W25が20質量%以上であると、柔軟性が保たれる。
なお、W25とは、以下のような操作法、装置構成及び測定条件の昇温クロマトグラフィにより測定して求めた溶出曲線におけるTREF(昇温溶出分別)のカラム温度25℃において充填剤に吸着されないで溶出する成分の量(質量%)である。
試料溶液を温度135℃に調節したTREFカラムに導入し、次いで降温速度5℃/時間にて徐々に0℃まで降温し、30分間ホールドし、試料を充填剤表面に結晶化させる。その後、昇温速度40℃/時間にてカラムを135℃まで昇温し、溶出曲線を得る。
(2)装置構成
TREFカラム :GLサイエンス社製 シリカゲルカラム(4.6φ×150mm)
フローセル :GLサイエンス社製 光路長1mm KBrセル
送液ポンプ :センシュウ科学社製 SSC−3100ポンプ
バルブオーブン :GLサイエンス社製 MODEL554オーブン(高温型)
TREFオーブン:GLサイエンス社製
二系列温調器 :理学工業社製 REX−C100温調器
検出器 :液体クロマトグラフィー用赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A CVF
10方バルブ :バルコ社製 電動バルブ
ループ :バルコ社製 500μlループ
(3)測定条件
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
試料濃度 :7.5g/L
注入量 :500μl
ポンプ流量 :2.0ml/分
検出波数 :3.41μm
カラム充填剤 :クロモソルブP(30〜60メッシュ)
カラム温度分布 :±0.2℃以内
(a')メソペンタッド分率[mmmm]が30〜50モル%である。
(b')ラセミペンタッド分率[rrrr]と1−[mmmm]が次の関係を満たす。
[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.08
(c')ラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.7モル%を超える値である。
(d')メソトリアッド分率[mm]、ラセミトリアッド分率[rr]及びメソラセミ分率[mr]が次の関係式を満たす。
[mm]×[rr]/[mr]2≦1.8
(e')昇温クロマトグラフィーにおける25℃以下で溶出する成分量(W25)が30〜100質量%である。
(a")メソペンタッド分率[mmmm]が30〜50モル%である。
(b")ラセミペンタッド分率[rrrr]と1−[mmmm]が下記の関係を満たす。
[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.06
(c")ラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.8モル%を超える値である。
(d")メソトリアッド分率[mm]、ラセミトリアッド分率[rr]及びメソラセミ分率[mr]が次の関係式を満たす。
[mm]×[rr]/[mr]2≦1.5
(e")昇温クロマトグラフィーにおける25℃以下で溶出する成分量(W25)が50〜100質量%である。
なお、上記の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したポリエチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
[(m−2,1)+(r−2,1)+(1,3)]≦5.0(%)・・・(1)
[式中、(m−2,1)は13C−NMRで測定したメソ−2,1挿入含有率(%)、(r−2,1)は13C−NMRで測定したラセミ−2,1挿入含有率(%)、(1,3)は13C−NMRで測定した1,3挿入含有率(%)を示す。]
を満足するものが好ましく、関係式(2)
[(m−2,1)+(r−2,1)+(1,3)]≦1.0(%)・・・(2)
を満足するものがより好ましい。特に、関係式(3)
[(m−2,1)+(r−2,1)+(1,3)]≦0.1(%)・・・(3)
を満足するものが最も好ましい。上記関係式(1)が満たされると、結晶性の低下が抑制されるので、べたつきが抑えられる。
(r−2,1)は、全メチル炭素領域における積分強度に対する15.0ppm付近に現れるPα,γ threoに帰属するピークの積分強度の比から算出されるラセミ−2,1挿入含有率(%)である。(1,3)は、全メチン炭素領域における積分強度に対する31.0ppm付近に現れるTβ,γ+に帰属するピークの積分強度の比から算出される1,3挿入含有率(%)である。
なお、アイソタクチックポリプロピレンでは、18.9ppm付近に現れるピークがn−ブチル基の未端メチル基炭素に帰属される。また、異常挿入又は分子鎖末端測定に関する13C−NMRの測定は、上記の装置及び条件で行えばよい。
また、本発明に使用するプロピレン系重合体は、上記の要件に加えて更に、弾性率の指標である沸騰ジエチルエーテル抽出量が5質量%以上であることが好ましい。沸騰ジエチルエーテル抽出量の測定は、ソックスレー抽出器を用い、以下の条件で測定することができる。
抽出試料 :1〜2g
試料形状 :パウダー状(ペレット化したものは粉砕し、パウダー化して用いる)
抽出溶媒 :ジエチルエーテル
抽出時間 :10時間
抽出回数 :180回以上
抽出量の算出方法:以下の式により算出する。
[ジエチルエーテルへの抽出量(g)/仕込みパウダー重量(g)]×100
本発明におけるプロピレン系重合体としては、上記の要件の他に、DSC測定による融解吸熱量ΔHが20J/g以下であると柔軟性が優れ好ましい。ΔHは、軟質であるか否かを表す指標であり、この値が大きくなると弾性率が高く、軟質性が低下していることを意味する。
プロピレン系重合体において、融点(Tm)及び結晶化温度(Tc)があってもなくてもよいが、軟質性の点からないことあるいは低い値、特にTmについては100℃以下であることが好ましい。Tm、Tc及びΔHは、DSC測定により求める。すなわち、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下230℃で3分間溶融した後、10℃/分で0℃まで降温する。このときに得られる結晶化発熱カーブの最大ピークのピークトップが結晶化温度:Tcである。更に、0℃で3分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られる融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップが融点:Tmであり、この場合の融解吸熱量がΔHである。
また、プロピレンから得られる構造単位は90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。
本発明においては、メタロセン系触媒のなかでも、配位子が架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物を用いたものが好ましく、なかでも、2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られるメタロセン系触媒を用いてプロピレンを単独重合又は共重合させる方法が更に好ましい。
具体的に例示すれば、
(A)一般式(I)
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属等が挙げられるが、これらの中ではオレフィン重合活性等の点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適である。
E1及びE2はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基〔>CR−,>C<〕及び珪素含有基〔>SiR−,>Si<〕(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれる配位子を示し、A1及びA2を介して架橋構造を形成している。また、E1及びE2は互いに同一でも異なっていてもよい。このE1及びE2としては、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましい。
一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1、E2又はXと架橋していてもよい。該Yのルイス塩基の具体例としては、アミン類、エーテル類、ホスフィン類、チオエーテル類等を挙げることができる。
次に、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で[(Mの原子価)−2]を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような架橋基のうち、少なくとも一つは炭素数1以上の炭化水素基からなる架橋基であることが好ましい。このような架橋基としては、例えば、一般式
で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH2=C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基等を挙げることができる。これらの中では、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。
上記一般式(I)で表される遷移金属化合物において、E1及びE2が置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又は置換インデニル基である場合、A1及びA2の架橋基の結合は、(1,2')(2,1')二重架橋型が好ましい。一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、一般式(II)
上記一般式(II)において、M、A1、A2、q及びrは、一般式(I)と同じである。X1はσ結合性の配位子を示し、X1が複数ある場合、複数のX1は同じでも異なっていてもよく、他のX1又はY1と架橋していてもよい。このX1の具体例としては、一般式(I)のXの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。Y1はルイス塩基を示し、Y1が複数ある場合、複数のY1は同じでも異なっていてもよく、他のY1又はX1と架橋していてもよい。このY1の具体例としては、一般式(I)のYの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。
R4〜R9はそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基,珪素含有基又はヘテロ原子含有基を示すが、その少なくとも一つは水素原子でないことが必要である。また、R4〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、隣接する基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−イソプロピリデン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4,7−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
([L1−R10]k+)a([Z]-)b ・・・(III)
([L2]k+)a([Z]-)b ・・・(IV)
(但し、L2はM2、R11R12M3、R13 3C又はR14M3である。)
[(III),(IV)式中、L1はルイス塩基、[Z]-は、非配位性アニオン[Z1]-及び[Z2]-、ここで[Z1]-は複数の基が元素に結合したアニオン、すなわち、〔M1G1G2・・・Gf〕-(ここで、M1は周期律表第5〜15族元素、好ましくは周期律表第13〜15族元素を示す。G1〜Gfはそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜40のジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数7〜40のアルキルアリール基,炭素数7〜40のアリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基、又は炭素数2〜20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G1〜Gfのうち2つ以上が環を形成していてもよい。fは〔(中心金属M1の原子価)+1〕の整数を示す。)、[Z2]-は、酸解離定数の逆数の対数(pKa)が−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組み合わせの共役塩基、あるいは一般的に超強酸と定義される酸の共役塩基を示す。また、ルイス塩基が配位していてもよい。また、R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R11及びR12はそれぞれシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基又はフルオレニル基、R13は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R14はテトラフェニルポルフィリン、フタロシアニン等の大環状配位子を示す。kは[L1−R10]、[L2]のイオン価数で1〜3の整数、aは1以上の整数、b=(k×a)である。M2は、周期律表第1〜3、11〜13、17族元素を含むものであり、M3は、周期律表第7〜12族元素を示す。]
R10の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、ベンジル基、トリチル基等を挙げることができ、R11、R12の具体例としては、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基等を挙げることができる。
R13の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基等を挙げることができ、R14の具体例としてはテトラフェニルポルフィン、フタロシアニン、アリル、メタリル等を挙げることができる。
また、M2の具体例としては、Li、Na、K、Ag、Cu、Br、I、I3等を挙げることができ、M3の具体例としては、Mn、Fe、Co、Ni、Zn等を挙げることができる。
一方、(B−2)成分のアルミノキサンとしては、一般式(V)
で示される鎖状アルミノキサン、及び一般式(VI)
で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
上記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水等の縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、(1) 有機アルミニウム化合物を有機溶媒に溶解しておき、これを水と接触させる方法、(2) 重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、(3) 金属塩等に含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、(4) テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、更に水を反応させる方法等がある。
なお、アルミノキサンとしては、トルエン等の炭化水素系溶媒に不溶性のものであってもよい。これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(B−2)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。この範囲にあれば、単位質量ポリマー当りの触媒コストがあまり高くならず、実用的である。触媒成分(B)としては(B−1)及び(B−2)は、それぞれ単独で又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
R16 vAlJ3-v ・・・(VII)
[式中、R16は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である。]
で表される化合物が用いられる。
上記一般式(VII)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド及びエチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
予備接触温度は、通常−20℃〜200℃程度、好ましくは−10℃〜150℃、より好ましくは、0℃〜80℃である。予備接触においては、溶媒の不活性炭化水素として、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等を用いることができる。これらの中で特に好ましいものは、脂肪族炭化水素である。
上記(A)触媒成分と(C)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、より好ましくは1:5〜1:2000、更に好ましくは1:10〜1:1000の範囲が望ましい。上記(C)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になるとともに、重合体中に多量に残存するおそれがある。
上記予備接触においては、オレフィン系化合物を共存させてもよい。共存させるオレフィン系化合物としては、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィン化合物が挙げられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンなどが挙げられる。オレフィン系化合物の添加量は、予備接触において使用する溶媒の0.5〜20質量%程度、好ましくは1〜15質量%である。
無機酸化物担体としては、具体的には、SiO2,Al2O3,MgO,ZrO2,TiO2,Fe2O3,B2O3,CaO,ZnO,BaO,ThO2やこれらの混合物、例えば、シリカアルミナ,ゼオライト,フェライト,グラスファイバー等が挙げられる。これらの中では、特に、SiO2,Al2O3が好ましい。なお、上記無機酸化物担体は、少量の炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩等を含有してもよい。
一方、上記以外の担体として、MgCl2,Mg(OC2H5)2等のマグネシウム化合物等で代表される一般式MgR17 xX1 yで表されるマグネシウム化合物やその錯塩等を挙げることができる。ここで、R17は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基、X1はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、xは0〜2、yは0〜2であり、かつx+y=2である。各R17及び各X1はそれぞれ同一でもよく、又異なってもいてもよい。
また、有機担体としては、ポリスチレン,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,ポリエチレン,ポリプロピレン,置換ポリスチレン,ポリアリレート等の重合体やスターチ,カーボン等を挙げることができる。
また、担体の比表面積は、通常1〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/g、細孔容積は通常0.1〜5cm3/g、好ましくは0.3〜3cm3/gである。比表面積又は細孔容積のいずれかが上記範囲を逸脱すると、触媒活性が低下することがある。
担体の比表面積及び細孔容積は、例えば、BET法に従って吸着された窒素ガスの体積から求めることができる(ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ,第60巻,第309ページ(1983年)参照)。
更に、上記担体が無機酸化物担体である場合には、通常150〜1000℃、好ましくは200〜800℃で焼成して用いることが望ましい。
触媒成分の少なくとも一種を上記担体に担持させる場合、(A)触媒成分及び(B)触媒成分の少なくとも一方を、好ましくは(A)触媒成分及び(B)触媒成分の両方を担持させるのが望ましい。
具体的には、周波数が1〜1000kHzの超音波、好ましくは10〜500kHzの超音波が挙げられる。
このようにして得られた触媒は、一旦溶媒留去を行って固体として取り出してから重合に用いてもよいし、そのまま重合に用いてもよい。また、本発明においては、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方の担体への担持操作を重合系内で行うことにより触媒を生成させることができる。
例えば、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方と担体と更に必要により上記(C)成分の有機アルミニウム化合物を加え、エチレン等のオレフィンを常圧〜2MPa加えて、−20〜200℃で1分〜2時間程度予備重合を行って触媒粒子を生成させる方法を用いることができる。
また、(A)成分と担体との使用割合は、質量比で、好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましい。(B)成分〔(B−1)成分又は(B−2)成分〕と担体との使用割合、又は(A)成分と担体との使用割合が上記範囲を逸脱すると、活性が低下することがある。
このようにして調製された本発明の重合用触媒の平均粒径は、通常2〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜100μmであり、比表面積は、通常20〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/gである。平均粒径が2μm以上であると重合体中の微粉の増大が抑制され、200μm以上であると重合体中の粗大粒子の増大が抑制される。また、比表面積が20m2/g以下であると活性の低下が抑制され、1000m2/g以下であると重合体の嵩密度の低下が抑制される。
また、本発明で用いる触媒において、担体100g中の遷移金属量は、通常0.05〜10g、特に0.1〜2gであることが好ましい。遷移金属量が上記範囲内であると、活性の低下が抑制される。
このように担体に担持することによって工業的に有利な高い嵩密度と優れた粒径分布を有する重合体を得ることができる。
重合条件については、重合温度は通常−100〜250℃、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜130℃である。また、反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(A)成分(モル比)が好ましくは1〜108、特に100〜105となることが好ましい。更に、重合時間は通常5分〜10時間、反応圧力は好ましくは常圧〜20MPa(G)、特に好ましくは常圧〜10MPa(G)である。
重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類、使用量、重合温度の選択、更には水素存在下での重合等がある。重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。また、α−オレフィン等のモノマーを溶媒として用いてもよい。なお、重合方法によっては無溶媒下で行うことができる。
この改質処理に用いられる極性基含有オレフィン系化合物としては、不飽和カルボン酸やその誘導体等の有機酸などを用いることができ、本発明においては、グリシジル基を含有するオレフィン系化合物、ヒドロキシル基を含有するオレフィン系化合物及び不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましい。不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,クロトン酸,シトラコン酸,ソルビン酸,メサコン酸,アンゲリカ酸等が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物,エステル,アミド,イミド,金属塩等があり、例えば、無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸,アクリル酸メチル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル、マレイン酸モノエチルエステル,アクリルアミド,マレイン酸モノアミド,マレイミド,N−ブチルマレイミド,アクリル酸ナトリウム,メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸グリシジルエチル、アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等を挙げることができる。これらの中で、特に無水マレイン酸、アクリル酸グリシジルエチル及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの極性基含有オレフィン系化合物は、溶媒で希釈して用いることもできる。溶媒で希釈することにより、極性基含有オレフィン系化合物のプロピレン系重合体中での偏在を抑えることができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンなどを用いることができる。
この有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド,ジ−8,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド,ジラウロイルパーオキシド,ジデカノイルパーオキシド,ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキシド等のジアシルパーオキシド類、t−ブチルヒドロパーオキシド,キュメンヒドロパーオキシド,ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド,2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキシド,ジクミルパーオキシド,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン,2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシオクトエート,t−ブチルパーオキシピバレート,t−ブチルパーオキシネオデカノエート,t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート,ジイソプロピルパーオキシジカーボネート,ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート,t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類などが挙げられる。これらの中では、ジアルキルパーオキシド類が好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の極性基含有オレフィン系化合物及びラジカル開始剤の使用量としては特に制限はなく、目的とする改質プロピレン系重合体の所望物性に応じて適宜選定される。極性基含有オレフィン系化合物の使用量は、プロピレン系重合体100質量部に対して、通常0.1〜70質量部程度、好ましくは0.1〜30質量部の範囲である。この使用量が0.1質量部以上であると、改質プロピレン系重合体に求められる接着強度やフィラー等の添加物の分散性、及び塗装性の改良などが十分となる。また、この使用量が70質量部以下であると、プロピレン系重合体の性質が損なわれることがない。
一方、ラジカル開始剤の使用量は、プロピレン系重合体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部程度、好ましくは0.01〜5質量部の範囲である。
ここで、無溶媒下とは、上述したように極性基含有オレフィン化合物を少量の溶媒に希釈して使用する場合や、ラジカル開始剤を、水、不活性溶媒又は無機化合物のエマルジョン溶液などで希釈して使用する場合をも含むものである。これらの溶媒や無機化合物の使用量は、プロピレン系重合体の0〜10質量%程度である。
また、通常の高温条件で改質反応を行った場合、改質プロピレン系重合体の分子量や粘度は改質前のプロピレン系重合体と同等かそれ以下であり、また、分子量分布は変化しない傾向にある。しかし、本発明においては、50〜140℃という比較的低温で改質反応を行っているため、分子量や粘度は低下しない。このような効果は、添加した極性基含有オレフィン系化合物が比較的高分子量になりながらプロピレン系重合体に分岐していること、あるいはプロピレン系重合体の末端オレフィンが極性基含有オレフィン系化合物と共重合をして架橋構造が生じることなどに起因すると予想される。
本発明においては、この改質処理を、スチレン系化合物の存在下で行うことができる。このスチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン,ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのスチレン系化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、プロピレン系重合体100質量部に対し、通常0.1〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部の範囲である。スチレン系化合物を使用することにより、より効率的に改質処理を行うことができる。
(1)テトラリン溶媒中135℃にて測定した、改質後のプロピレン系重合体の極限粘度[η]1と改質前のプロピレン系重合体の極限粘度[η]2とが、[η]1/[η]2≧0.95の関係にある。
(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から求めた分子量分布(Mw/Mn)が2.5以上である。
上記(1)において、[η]1/[η]2は、好ましくは0.95〜7.0、より好ましくは0.95〜5.0である。[η]1/[η]2が0.95以上であることは、プロピレン系重合体の分解反応が抑制され、本発明において望まない反応が抑制されていること示している。また、[η]1/[η]2が7.0以下であることは、プロピレン系重合体の架橋反応の進行が適度のものであることを示し、溶解性が向上した改質プロピケン系重合体が得られたことを示す。
上記(2)において、改質プロピレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.5〜10.0、より好ましくは2.5〜8.0である。この分子量分布(Mw/Mn)が2.5以上であることは、改質反応が効果的に進行し、適当な量の改質プロピレン系重合体及び架橋重合体が生成していることを示し、また、改質プロピレン系重合体において、高接着性、高強度及び軟質性が発現される。分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であることは、架橋反応が適度に進行したことを示し、改質プロピレン系重合体において溶解性、流動性、及び複合化したときの相溶性が発現されることを示す。
なお、上記の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、上述と同様の装置及び条件で測定したポリエチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
このようにして改質処理されてなる改質プロピレン系重合体は、ポリオレフィン等の樹脂に高接着性、高強度、軟質性等を付与することができ、高接着性を有するシーラントとして、あるいは無機フィラー等との相溶特性を向上させたポリオレフィンを与える改質剤等として有用である。
製造例1(プロピレン単独重合体の製造)
(1)金属錯体化合物の合成
以下のようにして(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを合成した。
シュレンク瓶に(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)のリチウム塩の3.0g(6.97mmol)をTHF(テトラヒドロフラン)50mlに溶解し−78℃に冷却した。ヨードメチルトリメチルシラン2.1ml(14.2mmol)をゆっくりと滴下し室温で12時間撹拌した。
溶媒を留去し、エーテル50mLを加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。分液後、有機相を乾燥し溶媒を除去して、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88mmol)を得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に上記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.88mmol)とエーテル50mLを入れた。−78℃に冷却し、n−BuLiヘキサン溶液(1.54mol/L)7.6mL(11.7mmol)を加えた。室温で12時間攪拌した後、エーテルを留去した。得られた固体をヘキサン40mLで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06g(5.07mmol)得た(収率73%)。
1H−NMR(90MHz,THF−d8)による測定の結果は、以下のとおりである。
δ:0.04(s,18H,トリメチルシリル);0.48(s,12H,ジメチルシリレン);1.10(t,6H,メチル);2.59(s,4H,メチレン);3.38(q,4H,メチレン);6.2-7.7(m,8H,Ar-H)
1H−NMR(90MHz、CDCl3)による測定の結果は、以下のとおりである。
δ:0.0(s,18H,トリメチルシリル);1.02,1.12(s,12H,ジメチルシリレン);2.51(dd,4H,メチレン);7.1-7.6(m,8H,Ar-H)
加熱乾燥した内容積10Lのステンレス鋼製オートクレーブに、ヘプタン5L、トリイソブチルアルミニウム5mmol、メチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート15μmol及び上記(1)で合成した(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド3μmolを投入した。
次に、水素を0.03MPa導入し、攪拌しながら温度を70℃に昇温し、全圧で0.8MPaまでプロピレンガスを導入した。重合反応中、圧力が一定になるように調圧器によりプロピレンガスを供給して90分間重合し、20分経過後に内容物を取り出し、減圧下で乾燥することによってポリプロピレン2000gを得た。得られたポリプロピレンについて、下記の方法により物性を測定した。結果を表1に示す。
株式会社離合社製のVMR−053型自動粘度計を用い、テトラリン溶媒中135℃において測定した。
(2)メソペンタット分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、ラセミメソラセミメソ分率[rmrm]、メソトリアッド分率[mm]、ラセミトリアッド分率[rr]、トリアッド分率[mr]、異常挿入分率及び溶出成分量(W25)
上述した方法により測定した。
(3)分子量分布(Mw/Mn)
上述したように、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(4)融解熱(ΔH)
示差走査型熱量計(株式会社パーキンエルマー製、DSC7)を用い、上述した方法により測定した。
製造例1にて製造したポリプロピレン38gに粉末状無水マレイン酸3.04g及びラジカル開始剤としてビス(4−(t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂社製、パーロイルTCP)1.52gを混合し、均質になるように充分に振り混ぜた。これを、バッチ式混練機(東洋精機社製、ラボプラストミル)を用いて、温度設定120℃、回転数100rpm、混練時間約3分間にて混練し、改質ポリプロピレンを得た。得られた改質ポリプロピレンについて、150℃で4時間真空乾燥を行い、残留マレイン酸を除去した後、下記の方法により物性を測定した。結果を表2に示す。
株式会社離合社製のVMR−053型自動粘度計を用い、テトラリン溶媒中135℃において、改質後のプロピレン系重合体の極限粘度[η]1と改質前のプロピレン系重合体の極限粘度[η]2を測定した。
(2)変性量の測定
変性量は、変性する前のプロピレン系重合体と有機酸のブレンド物を0.1mmのスペーサーを用いてプレスし、IR測定機器(日本分光株式会社製 FT/IR−5300でIRを測定し、特徴的なカルボニル(1600〜1900cm-1)の吸収量と有機酸の仕込み量から検量線を作成し、酸変性体のプレス板のIR測定を行うことにより決定した。
(3)ぬれ張力の測定
プラスチックフィルム表面の、インク、コーティング、又は接着剤などを保持する能力の尺度となるぬれ張力を評価した。プラスチックフィルム表面のぬれ張力が増加すると、インク、コーティング、あるいは接着剤などの保持能力が向上することが経験的に知られている。
評価は、JIS K6768に規定されている「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」に準拠した。改質プロピレン系重合体をテフロン(登録商標)シートで挟み、0.3mmのスペーサーを用いて180℃でプレスして、評価用フィルムを作製し、このフィルムをデシケーター内に、室温で8時間以上放置した。
試験用混合液として、和光純薬工業(株)製のぬれ張力試験用混合液を用い、綿棒に混合液を含ませてフィルムに塗布し、2秒経過した時点で液膜が破れを生じないで、元の状態を維持しているときを「ぬれている」と判定した。表面張力が小さい試験用混合液から順次試験を行ない、「ぬれている」と判定された最大の混合液の表面張力をフィルムのぬれ張力とした。
製造例1にて製造したポリプロピレン1kgに粉末状無水マレイン酸80g及びラジカル開始剤としてジベンゾイルパーオキシド(化薬アクゾ製、カドックスB−40ES)40gを混合し、均質になるように充分に振り混ぜた。これを、二軸押出し機(日本製鋼製、ラボテックッス30)を用いて、温度設定120℃、滞留時間約2分間にて混練し、改質ポリプロピレンを得た。得られた改質ポリプロピレンについて、150℃で4時間真空乾燥を行い、残留マレイン酸を除去した後、上記の方法により物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1において、ビス(4−(t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂社製、パーロイルTCP)の替わりに、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ製、パーカドックス14−40C)1.52gを用い、混練温度を180℃に設定した以外は、実施例1と同様にして改質ポリプロピレンを得た。得られた改質ポリプロピレンについて、上記の方法により物性を測定した。結果を表2に示す。
Claims (2)
- (a)[mmmm]=20〜60モル%、(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1、(c)[rmrm]>2.5モル%、(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0、及び(e)昇温クロマトグラフィーにおける25℃以下で溶出する成分量(W25)が20〜100質量%であるプロピレン系重合体を、ラジカル開始剤と極性基含有オレフィン系化合物により、無溶媒下で、温度50〜140℃において改質処理することを特徴とする、以下の(1)及び(2)を満足する改質プロピレン系重合体の製造方法。
(1)テトラリン溶媒中135℃にて測定した、改質後のプロピレン系重合体の極限粘度[η]1と改質前のプロピレン系重合体の極限粘度[η]2とが、[η]1/[η]2≧0.95の関係にある。
(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から求めた分子量分布(Mw/Mn)が2.5以上である。 - 極性基含有オレフィン系化合物が、不飽和カルボン酸の酸無水物である請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
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