JP5000236B2 - 最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料およびその製造方法 - Google Patents

最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料およびその製造方法に関する。より詳しくは、特定のニッケル合金めっき皮膜上に形成されたフッ化ニッケル膜からなる最表面層を有する金属材料およびニッケル合金めっき皮膜をフッ化ガスと反応させてフッ化ニッケル膜からなる最表面層を形成する前記金属材料の製造方法に関する。
半導体分野での製造プロセスには、フッ素(F2)、塩化水素(HCl)、三塩化ホウ
素(BCl3)、三フッ化窒素(NF3)、三フッ化塩素(ClF3)、臭化水素(HBr
)等のハロゲン系の反応性および腐食性の強い特殊ガスが使用されている。これらのガスは、雰囲気中に水分が存在すると容易に加水分解し、フッ酸、臭酸等が発生する。このフッ酸等は、上記ガスを取り扱う、バルブ、継ぎ手、配管、反応チャンバー等の構成部材の金属表面を容易に腐食するため、問題となっている。
また、ICの主流はシリコン(Si)を半導体とするものであるが、Siよりも高速で動作し、消費電力も約3分の1と少なく、小型化も容易という特徴を生かした化合物半導体であるガリウム砒素(GaAs)を用いたものが、最近、半導体分野で多く使用されるようになってきている。しかし、ガリウム砒素(GaAs)を用いた場合、塩素や塩化水素ガスによる化学的エッチングで生じた固形物が、半導体製造プロセスの下流にある真空ポンプに付着し易く、その付着物に腐食性の強いガスである塩素や塩化水素が吸着するため、真空ポンプを腐食させたり、真空特性を低下させたりする。その対応として、一般には温度を上げて付着防止を行っているが、この方法では腐食環境が厳しく、排気系の真空ポンプの寿命が短くなり、腐食対策が急務となっている。
このような問題を解決する方法として、半導体分野では、電解研磨したステンレス鋼であるSUS316Lや、ハステロイC(登録商標)、モネル等の各種ニッケル系合金が使用されているが、ハロゲン系ガスであるフッ素ガスやフッ素ラジカルに対しては、ハステロイC(登録商標)、モネル等がCrを含有しているため、防食効果が低下し、使用に耐えられないことが指摘されている。
また、フッ素ガス以外のハロゲン系ガスには、ハステロイC(登録商標)、モネル等は、防食効果が期待されるが、価格が高額であるという問題がある。
一方、真空ポンプは高速回転機器であるため、軽量化を図る必要があり、素材としてアルミニウムを用いるのが一般的である。この場合、無電解ニッケルめっき等を施して腐食対策を行っているが、ガリウム砒素対策は十分ではない。
フッ素ガスを用いた不働態化処理については、これまでにも数多くの研究が行われている。特開平2−263972号公報には、金属表面の少なくとも一部にフッ化不働態膜が形成された金属材料およびその金属材料を用いた装置が開示されている。この発明では、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属表面にフッ化不働態膜を形成し、耐食性の優良性を示しているが、形成されるフッ化不働態膜は極薄膜である。また、特開平5−302177号公報には、ニッケル合金薄膜の少なくとも表面にニッケルのフッ化不働態膜が形成された工業材料およびその製造方法が開示されている。このフッ化不働態膜も耐食性の点で優位であることは記載されているが、形成されるフッ化不働態膜は極薄膜である。このため、これらのフッ化不働態膜は、簡単なこすれ傷等で除去されるため、耐久性がなく現実的な部材には適応しにくい。さらに、特開平5−302177号公報に記載方法では、耐食性に優れた十分な膜厚の被膜を得るためには200℃以
上のフッ素化処理温度が必要である。
特開平11−92912号公報には、金属材料もしくは金属皮膜の表面を強制酸化した後、この表面に膜厚が1μm以上のフッ化層を形成する金属材料等のフッ素化方法が開示されている。しかしながら、300℃以下のフッ素化処理温度では、この方法を適用しても厚膜のフッ化層が得られず、熱の影響を受けやすい素材には適用できない。
このように、従来のフッ化不働態膜の形成方法では、極薄の皮膜しか得られないか、あるいは、厚膜のフッ化不働態膜を得るためには高温でのフッ素化処理が必要であった。ところが、金属データブック(平成5年3月25日発行、発行所:丸善株式会社、編者:社団法人 日本金属学会)に記載されているように、たとえば、アルミニウム合金素材の場合、機械的特性を得るためにT6処理(溶体化処理後、人工時効処理)やHX処理(加工硬化後、安定化処理)等を行うが、このときの時効温度は120℃〜150℃が一般的であり、それ以上高い温度で処理すると耐力が極端に低下し、熱変形や歪みが発生するため、適用素材の選択範囲が狭かった。
特開平2−263972号公報 特開平5−302177号公報 特開平11−92912号公報、
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、耐食性に優れ、かつ厚膜で安定なフッ化ニッケル膜からなる最表面層を有する金属材料を提供すること、および前記フッ化ニッケル膜をより低温で形成できる金属材料の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、フッ素とのガス化反応により高熱量を発生するタングステンまたはモリブデンを含むニッケル合金皮膜をフッ素化処理することにより、最表面層のみを高温にし、基材には熱の影響を与えずにフッ素化反応を行うことができるため、基材には負荷を掛けずに厚膜で安定かつ耐久性に優れるフッ化不動態膜であるフッ化ニッケル膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]により構成される。
[1]表面が金属からなる基材と、
該表面上に形成された、タングステンを10〜48質量%含むニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはモリブデンを10〜48質量%含むニッケル−モリブデン合金めっき皮膜と、
該皮膜上に形成されたフッ化ニッケル膜からなる最表面層と
を有する金属材料。
[2]前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属からなり、該金属が前記基材の表面を構成していることを特徴とする上記[1]に記載の金属材料。
[3]前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属と、該金属表面上に形成された無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜とを有することを特徴とする上記[1]に記載の金属材料。
[4]表面が金属からなる基材の表面に、めっきにより、タングステンを10〜48質量%含むニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはモリブデンを10〜48質量%含むニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成し、次いで、該皮膜とフッ化ガスとを反応させることを特徴とする、最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料の製造方法。
[5]前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属からなり、該金属が前記基材の表面を構成していることを特徴とする上記[4]に記載の金属材料の製造方法。
[6]前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属と、該金属表面上に形成された無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜とを有することを特徴とする上記[4]に記載の金属材料の製造方法。
[7]前記フッ化ガスが、F2、ClF3およびNF3からなる群から選択される少なく
とも1種のガス、または該ガスを不活性ガスで希釈したガスであることを特徴とする上記[4]〜[6]のいずれかに記載の金属材料の製造方法。
本発明によると、耐食性に優れ、かつ厚膜で安定なフッ化ニッケル膜からなる最表面層を有する金属材料を得ることができる。特に、上記フッ化ニッケル膜は、より低温(たとえば200℃以下)のフッ素化反応温度でも形成させることができ、基材には負荷を掛けずフッ化不動態膜を形成できる。
半導体分野、真空ポンプ分野等において、このような金属材料からなる部材を使用することによって、腐食性の高いガス等から部材を保護することができる。
以下、本発明に係る最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料およびその製造方法について詳細に説明する。
〔基材〕
本発明に用いられる基材は、少なくとも表面が金属からなる基材である。前記金属としては、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金が好ましい。後述するように、本発明は、より低温でのフッ素化処理が可能であるため、熱の影響を受けやすいアルミニウム、アルミニウム合金、銅および銅合金に対してより好適である。
また、本発明では、上記金属からなる素材の表面に、付き回り性や均一性のよい無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜が形成された素材を基材として使用することもできる。無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜は、ベースとなる金属素材の表面粗度、すなわち凹凸の影響によりフッ化ニッケル膜で発生する、ピンホールや欠陥等の不具合を抑制することができる。上記無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜は、2層以上に積層されていることが好ましく、濃度の異なるめっき浴を用いてめっき皮膜を積層することによって、2層以上の無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜を形成することができる。めっき方法は従来公知の方法を適用することができる。無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜の膜厚は、通常10〜50μmであり、10〜20μmが好ましい。
〔ニッケル合金めっき皮膜〕
本発明の金属材料は、上記基材表面上にニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有する。タングステンまたはモリブデンを含有するニッケル合金めっき皮膜を形成することによって、このめっき皮膜をフッ素と反応させる際に高熱量を得ることができ、フッ素化反応部分、すなわち最表面層のみを高温にすることができ、他の部分、すなわち基材に、熱の影響を与えずに最表面層をフッ素化処理することができる。
上記ニッケル合金めっき皮膜の形成方法としては、タングステンまたはモリブデンを含有するニッケル合金を用いた電解めっき法が好ましい。好ましい電解めっき条件は、タングステンを含有するニッケル合金を用いた場合は、めっき温度が80℃、電流密度が5A/dm2、pH9.5であり、モリブデンを含有するニッケル合金を用いた場合は、めっ
き温度が25℃、電流密度が2A/dm2、pH10である。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜中に含まれるタングステンの量は、通常10〜48質量%であり、15〜38質量%が好ましい。タングステン含有量が上記範囲にあると安定的な熱量を確保することができる。一方、タングステン含有量が10質量%未満になると十分な熱量を得られないことがあり、48質量%より多くなるとニッケル−タングステン合金めっき液のタングステン源であるタングステン酸ナトリウムの使用量が多くなり、経済的に好ましくない。
ニッケル−モリブデン合金めっき皮膜中に含まれるモリブデンの量は、通常10〜48質量%であり、18〜38質量%が好ましい。モリブデン含有量が上記範囲にあると安定的な熱量を確保することができる。一方、モリブデン含有量が10質量%未満になると十分な熱量を得られないことがあり、48質量%より多くなるとニッケル−モリブデン合金めっき液のモリブデン源であるモリブデン酸ナトリウムの使用量が多くなり、経済的に好ましくない。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜の厚みは通常0.1〜100μmであるが、後述するように、フッ素化反応により生成するWF6およびMoF6の標準生成エンタルピーが大きいため、フッ素化反応の際に発生する熱量が多くなり、下地金属皮膜および基材への熱移動を抑制して熱の影響を低減する必要性から、膜厚は1〜5μmが好ましい。
〔フッ化ニッケル膜〕
表面がニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜からなる金属材料の表面をフッ素化処理することにより、最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料が得られる。
金属材料表面、すなわち、上記ニッケル合金めっき皮膜表面をフッ素化させると、皮膜中に含まれるタングステン(W)またはモリブデン(Mo)がフッ素(F)と反応してWF6またはMoF6が生成する。WF6の沸点は17.5℃、MoF6の沸点は35℃であるため容易に皮膜中から除去することができ、また、その標準生成エンタルピーは、WF6
が1721KJ/mol、MoF6が1585KJ/mol(文献値:化学便覧、平成5
年9月30日発行、発行所:丸善株式会社、編者:社団法人 日本化学会)であるため常温でも容易に熱量を得ることができ、その熱量を利用してニッケル−タングステン合金めっき皮膜中またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜中のニッケルをフッ素化することができる。
上記フッ素化反応に使用するフッ化ガスは、フッ素(F2)、三フッ化塩素(ClF3)およびフッ化窒素(NF3)からなる群から選択される少なくとも1種のガス、あるいは
このガスを不活性ガスで希釈したガスが挙げられる。
三フッ化塩素は60〜100℃で熱分解してフッ素ラジカルを発生させ、このラジカルをフッ素化反応に利用することができる。また、三フッ化窒素はプラズマエネルギーによって分解してフッ素ラジカルを発生させ、このラジカルをフッ素化反応に利用することができる。希釈ガスとしては、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができ、窒素が好ましい。上記フッ化ガスを希釈して使用する場合、その濃度は反応条件によって適宜設
定することができる。たとえば、フッ素の場合には、コスト等を考慮して10%程度の濃度で使用することが望ましい。
上記ニッケル−タングステン合金めっき皮膜のフッ素化反応温度は、通常50〜500℃であり、120〜360℃が好ましく、上記ニッケル−モリブデン合金めっき皮膜のフッ素化反応温度は、通常50〜500℃であり、120〜360℃が好ましい。また、上記ニッケル−タングステン合金めっき皮膜のフッ素化反応時間は、反応温度が、たとえば300℃の場合には25〜30分程度であり、上記ニッケル−モリブデン合金めっき皮膜のフッ素化反応時間は、反応温度が、たとえば300℃の場合には70〜80分である。本発明では、上記反応条件により厚膜のフッ化ニッケルからなるフッ化不働態膜が得られるが、部材の使用目的によって、ニッケル合金めっき皮膜の厚み、反応温度、反応時間を調節することにより、フッ化ニッケル膜の膜厚を任意に調整できる。なお、上記反応温度は反応炉内のガス雰囲気を熱伝対で測定した温度を意味する。
上記ニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜をフッ素化して得られるフッ化ニッケル膜は、実質的にフッ化ニッケルからなる第1の層と、この下層にフッ素が拡散した第2の層とからなる。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
[製造例1]
2種類の無電解ニッケル−リンめっき薬剤(商品名:ニムデンNSXおよびニムデンHDX、いずれも上村工業(株)製)を使用し、予め酸洗浄と活性化処理を施したステンレス鋼(SUS316L)の表面に無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜(膜厚:20μm)を、所定の方法(条件:めっき温度90℃、pH=4.5〜4.8、時間70分)に従って形成させた。
[製造例2]
主成分としてNi源であるNiSO4・6H2O(硫酸ニッケル)30g/L、タングステン源であるNaWO4・2H2O(タングステン酸ナトリウム)80g/L、錯化剤CitH2O(クエン酸)90g/L、pH調整剤(アンモニア水)、安定剤、光沢剤で構成
されるニッケル−タングステン電解合金めっき液を調製した。
製造例1で作製した無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)をこのニッケル−タングステン電解合金めっき液に浸漬し、電流密度5A/dm2で電解めっきして、無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜上にニッケル−タングス
テン合金めっき皮膜(膜厚:3μm)を形成させた。
[製造例3]
主成分としてNi源であるNi(NH2SO32・4H2O(スルファミン酸ニッケル(II)水和物65g/L、モリブデン源であるNa2MoO4・2H2O(モリブデン酸ナト
リウム二水和物)24g/L、錯化剤C611NaO(グルコン酸ナトリウム)65g/
L、K427・3H2O(ピロリン酸カリウム)15g/L、pH調整剤(アンモニア水)、光沢剤で構成されるニッケル−モリブデン電解合金めっき液を調製した。
製造例1で作製した無電解ニッケル−リンめっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)をこのニッケル−モリブデン電解合金めっき液に浸漬し、電流密度2A/dm2
で電解めっきして、無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜上にニッケル−モリブデン合金
めっき皮膜を形成させた。
[製造例4]
2種類の無電解ニッケル−リンめっき薬剤(商品名:ニムデンNSXおよびニムデンHDX、いずれも上村工業(株)製)を使用し、所定の方法(条件:めっき温度90℃、pH=4.5〜4.8、時間70分)に従って、予め脱脂、活性化処理、酸洗浄および亜鉛置換を施したアルミニウム(A5052)の表面に無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜(膜厚:20μm)を形成させた。
[製造例5]
ステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例4で作製した無電解ニッケル−リンめっき皮膜を有するアルミニウム(A5052)を使用した以外は、製造例3と同様にして無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜上にニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成させた。
常圧気相流通式反応炉の内部に、製造例2で製造したニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)を装着し、360℃まで昇温させた。その後、窒素ガスで大気を置換した後、10%F2ガス(窒素希釈)を導入して窒素ガスを
置換した。完全置換後、その状態を12時間保持し、上記ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の表面をフッ化した。次いで、窒素ガスでF2ガスを置換し、その状態を12時
間保持した後、降温してフッ化ニッケル膜を形成させた。
得られた最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料について、XPS(X−ray Photoelectron Spectoscopy)により解析した結果を図1に示す。FおよびNi−FはSputtering Timeが700分まで検出された。予め、膜厚が既知のSiO2薄膜の酸素検出深さを同様に測定したところ、スパッタレート
が2.4nm/min(SiO2)であった。これらの結果からフッ化ニッケル膜の膜厚
は1.7μmあることが判明した。なお、フッ化ニッケル膜の膜厚は、Sputtering Time×スパッタレートにより算出した。
温度を360℃から300℃に変更した以外は実施例1と同様にして、フッ化ニッケル膜を最表面層として形成させた。
得られた最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料について、実施例1と同様にしてXPS解析したところ、FおよびNi−FはSputtering Timeが260分まで検出された。この結果から実施例1と同様にしてフッ化ニッケル膜の膜厚を求めたところ、0.6μmであった。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例3で作製したニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)を使用した以外は実施例2と同様にして、フッ化ニッケル膜を最表面層として形成させた。
得られた最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料について、実施例1と同様にしてXPS解析したところ、FおよびNi−FはSputteringTimeが720分まで検出された。この結果から実施例1と同様にしてフッ化ニッケル膜の膜厚を求めたところ、1.73μmであった。
[比較例1]
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例1で作製した表面が無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜のステンレス鋼(SUS316L)を使用した以外は実施例2と同様にして、フッ化ニッケル膜を最表面層として形成させた。
得られた最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料について、実施例1と同様にしてXPS解析したところ、FおよびNi−FはSputteringTimeが18分まで検出された。この結果から実施例1と同様にしてフッ化ニッケル膜の膜厚を求めたところ、0.043μmであった。
常圧気相流通式反応炉内のガス雰囲気の温度を熱電対で測定し、炉内温度が300℃となるヒータ設定温度を設定し、昇温時間を確認した。
常圧気相流通式反応炉に、製造例2で製造したニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)を装着し、このステンレス鋼の表面にNi熱電対を密着させ、炉内を300℃まで昇温した。炉内温度が安定した後、窒素ガスで大気を置換した。その後、20%F2ガス(窒素希釈)を導入し、窒素ガスを置換した。完全置
換後、上記ステンレス鋼の表面温度変化をNi熱電対で2時間測定した。
図2に、ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼の表面温度の経時変化を示す。F2ガス導入後、1分以内で温度が上昇し始め、5分後にピークに達し、
25分経過時まで発熱が認められた。
[比較例2]
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例1で作製した表面が無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜のステンレス鋼(SUS316L)を使用した以外は実施例4と同様にして、無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼の表面温度変化を測定したが、温度変化はほとんど見られなかった。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例3で作製したニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)を使用した以外は実施例4と同様にして、ニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼の表面温度変化を測定した。
図3に、ニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼の表面温度の経時変化を示す。F2ガス導入後、1分以内で温度が上昇し始め、5分後にピークに達し、7
0分経過時まで発熱が認められた。
温度を360℃から200℃に変更した以外は実施例1と同様にして、フッ化ニッケル膜を最表面層として形成させた。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例3で作製したニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)を使用した以外は実施例6と同様にして、フッ化ニッケル膜を最表面層として形成させた。
[比較例3]
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例1で作製した表面が無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜のステンレス鋼(SUS316L)を使用した以外は実施例6と同様にして、フッ化ニッケル膜を最表面層として形成させた。
温度を360℃から120℃に変更し、ニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼(SUS316L)の代わりに、製造例5で作製したニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有するアルミニウム(A5052)を使用した以外は実施例1と同様にして、フッ化ニッケル膜を最表面層として形成させた。
得られた最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料について、実施例1と同様にしてXPS解析したところ、FおよびNi−FはSputteringTimeが2.7分まで検出された。予め、膜厚が既知のSiO2薄膜の酸素検出深さを同様に測定したところ
、スパッタレートが4nm/min(SiO2)であった。これらの結果からフッ化ニッ
ケル膜の膜厚は0.01μmあることが判明した。なお、フッ化ニッケル膜の膜厚は、Sputtering Time×スパッタレートにより算出した。
[効果例1]
表1に実施例2、3および比較例1で得た最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料ならびに製造例1で得た表面が無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜であるステンレス鋼(SUS316L)の表面固有抵抗値を測定した結果を示す。表面抵抗率の測定はJIS−K6911に準じて行った。測定条件は、電圧500V、charge時間5秒とし、55秒間通電後、測定した。
Figure 0005000236
実施例2と実施例3の金属材料の表面抵抗率が1016で最も大きく、フッ化不動態膜が厚くなっていることが推定された。一方、比較例1金属材料のおよび製造例1のステンレス鋼は表面抵抗率が小さく測定下限以下であった。
[効果例2]
表2に実施例6、7および比較例2で得た最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料ならびに製造例1で得た表面が無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜であるステンレス鋼(SUS316L)の耐食性試験を実施した結果を示す。耐食性評価試験は、金属材料またはステンレス鋼を35%塩化水素水溶液へ常温下(25℃)で24時間浸漬し、浸漬後の重量減少量で評価した。
Figure 0005000236
実施例6および実施例7の金属材料の重量減少が最も少なかった。このことから、フッ素ガスとの反応で高熱量を得られる金属を基材表面に形成し、その金属をフッ素化した金属材は、極めて耐食性に優れることがわかる。
[効果例3]
表3に実施例8で得た最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料ならびに製造例4で得た表面が無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜であるステンレス鋼(SUS316L)の耐食性試験を実施した結果を示す。耐食性評価試験は、金属材料またはステンレス鋼を35%塩化水素水溶液へ常温下(25℃)で1時間30分浸漬し、浸漬後の重量減少量で評価した。
Figure 0005000236
最表面層がフッ化ニッケル膜であるアルミニウムは、表面に無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜であるアルミニウムに比べて、重量減少が少なく、極めて耐食性に優れていることがわかる。
図1は、実施例1で得た最表面層がフッ化ニッケル膜であるステンレス鋼(SUS316L)をXPS(X−ray Photoelectron Spectoscopy)により解析した結果の一例を示すグラフである(F:上方のライン、Ni−F:下方のライン)。 図2は、実施例4におけるニッケル−タングステン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼の表面温度の経時変化を示すグラフである。 図3は、実施例5におけるニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有するステンレス鋼の表面温度の経時変化を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 表面が金属からなる基材と、
    該表面上に形成された、タングステンを10〜48質量%含むニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはモリブデンを10〜48質量%含むニッケル−モリブデン合金めっき皮膜と、
    該皮膜上に形成されたフッ化ニッケル膜からなる最表面層と
    を有する金属材料。
  2. 前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属からなり、該金属が前記基材の表面を構成していることを特徴とする請求項1に記載の金属材料。
  3. 前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属と、該金属表面上に形成された無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の金属材料。
  4. 表面が金属からなる基材の表面に、めっきにより、タングステンを10〜48質量%含むニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはモリブデンを10〜48質量%含むニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成し、次いで、該皮膜とフッ化ガスとを反応させることを特徴とする、最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料の製造方法。
  5. 前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属からなり、該金属が前記基材の表面を構成していることを特徴とする請求項4に記載の金属材料の製造方法。
  6. 前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金から選択される金属と、該金属表面上に形成された無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜とを有することを特徴とする請求項4に記載の金属材料の製造方法。
  7. 前記フッ化ガスが、F2、ClF3およびNF3からなる群から選択される少なくとも1種のガス、または該ガスを不活性ガスで希釈したガスであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の金属材料の製造方法。
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