JP5000119B2 - 色素増感型太陽電池素子 - Google Patents

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Description

本発明は色素増感太陽電池素子に関する。
1991年にグレッツェルらが発表した色素増感型太陽電池素子は、ルテニウム錯体によって分光増感された酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池であり、シリコン太陽電池並みの性能が得られることが報告されている(非特許文献1参照)。この方法は、酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度に精製することなく用いることができるため、安価な色素増感型太陽電池素子を提供でき、しかも色素の吸収がブロードであるため、可視光線のほぼ全波長領域の光を電気に変換できるという利点があり、注目を集めている。
こうした中で、色素増感型太陽電池素子の作製方法として各種の提案がなされている。 例えば、対向する基板を重ね合わせ、その隙間に電解液を染込ませた後、シール用樹脂としてエポキシ樹脂、シリコン樹脂等を用いて、基板周縁部をシールする方法が報告されている(特許文献1参照)。
しかしながら、この方法ではセル間隔を制御せず、単に基板を重ね合わせて電解液をその中に注入しており、常に一定のセル間隔を得ることは困難であり、セル間の電解液中の電子の拡散速度を一定にできず、太陽電池性能が変動するおそれがある。
また、対向する基板の一方に、電解液を注入するための丸穴注入口を設けて、基板周縁部をシールする目的でシール材として熱硬化型ポリイソブチレン系樹脂を用いてセルを作製し、注入口を電解液に浸漬した状態で、電解液が沸騰しない程度の真空引き操作により、セル内部の脱気を行い、その後大気圧に戻すことにより、セル内に電解液を注入した後、注入口を紫外線硬化型ポリイソブチレン系樹脂で封止する方法が報告されている(特許文献2参照)。
しかし、この方法ではシール材中にセル間隔調整材料を添加し、セル間隔を保持することが示されているものの、セル面内に前記材料が含まれていないため、セルサイズが大型化した場合にはセル面内の間隔を一定に保持することが困難であり、したがってセル間の電解液中の電子の拡散速度を一定にできず、太陽電池性能はセル間で変動をきたすおそれがある。
またセルサイズが大型化した場合には導電基板の抵抗を下げる必要があるが、導電基板の抵抗を下げる方法として、導電基板を低抵抗化する方法が報告されている(特許文献3参照)。この特許文献3によれば、導電基板抵抗を下げる目的で、ガラス基板表面に金属薄膜からなるグリッドをメッキ法により設置し、またグリッドを含めたガラス表面を保護導電膜で被覆し、その厚みはグリッドが20μm以下、保護導電膜が1μm以下と記載されている。しかし、この方法では基板抵抗を下げることが目的であり、セル間隔を一定に保持することは目的ではなく、セルサイズが大型化した場合には、基板の自重により変形しセル間隔が一定に制御できないため、セル間での電解液中の電子の拡散速度が変動し、太陽電池性能がセル間で変動するおそれがある。
さらに保護導電膜が1μm程度であるため、グリッドの厚みに対して薄いため、グリッド部が完全に覆われない虞があり、結果としてグリッド部が電解液と接触し、太陽電池性能が損なわれる虞がある。
上記のように従来の方法による色素増感型太陽電池素子の製造方法においては、セル面内の間隔を制御していないので、電解液中の電子の拡散が一定にできず、セルサイズが大きくなると、セル間の太陽電池性能に変動をきたすおそれがある。また電解質又はその前駆体の真空注入時に対向する基板の接触により基板表面の損傷をきたし色素増感型太陽電池素子の特性を損ねるおそれがあることなどの問題がある。
特開2000−173680号公報 特開2002−313443号公報 特開2003−203682号公報 オレガン(B. O’Regan)、グレツェル(M.Gratzel),「ネイチャー(Nature)」,(英国),1991年,353巻,p.737
本発明は、このような実状に鑑みなされたものであり、その目的は、大型セルの作製にあたり、半導体層を有する透明導電性基板の電子輸送抵抗を下げるとともに、セル間隔を一定に保持することにより、セル間の太陽電池性能の変動を抑止し、常に一定の性能が得られるとともに性能低下を抑止した色素増感型太陽電池素子を提供することにある。
すなわち、本発明は、光透過性を有する導電性基板上に色素で修飾された半導体層を有する半導体電極基板と、導電性基板上に触媒層を有する触媒電極基板とを所定の間隔を隔てて対向させ、これらの基板間の周縁部をシール材によりシールしてセルを形成し、そのセル内に電解質を配置してなる色素増感型太陽電池素子であって、該光透過性を有する導電性基板上の一部にバスバー層を配置し、かつバスバー層上部に保護層を少なくとも2層配置してなることを特徴とする色素増感型太陽電池素子に関する。
以下、本発明を詳述する。
本発明にかかる色素増感型太陽電池素子の概略図を図1に示した。また図2に透明導電性基板上にバスバー部(バスバー層および保護層)を設置した平面図の一例を示した。図3に従来の色素増感型太陽電池素子の概略図を示した。
本発明の色素増感型太陽電池素子の半導体電極基板(光極)は、光透過性を有する導電性基板と、該基板上に配置された半導体層およびバスバー層から構成される。半導体層は増感色素で修飾されており、またバスバー層はその表面を保護層により被覆されている。
光透過性を有する導電性基板は、通常、透明基板上に透明電極層を有するものである。
透明基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率、好ましくは50%以上の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
また、電極として作用する透明電極層としては特に限定されないが、例えば金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、錫や亜鉛などの金属酸化物に、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。
導電膜の膜厚は、通常10〜5000nm、好ましくは100〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は適宜選択されるところであるが、通常0.5〜500Ω/sq、好ましくは1〜50Ω/sqである。
透明電極層の形成法は特に限定されるものではなく、電極層として用いる前述の金属や金属酸化物の種類により適宜公知の方法が選択使用されるが、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、あるいはスパッタリング法などが用いられる。いずれの場合も基板温度20〜700℃の範囲内で形成されるのが望ましい。
本発明においては、半導体電極基板は透明導電性基板上にバスバー層および少なくとも2層の保護層と、半導体層とが配置されたものであり、これらの形成方法としては、例えば、透明導電性基板上の一部にバスバー層および保護層を形成した後に、バスバー層および保護層が形成されていない部分の透明導電性基板上に半導体層を形成する方法、バスバー層および保護層を形成する予定の部分を除いて半導体層を透明導電性基板上に形成し、その後バスバー層および保護層を該予定部分に形成する方法のいずれの方法も使用可能である。さらには、透明導電性基板上の一部にバスバー層および保護層を形成した後に、バスバー層および保護層が形成された部分を含めて全面に半導体層を形成しても良い。
本発明においてバスバーに用いられる材料としては、目的の一つが基板抵抗を下げることであるから、その目的達成のために、比抵抗が20μΩ・cm以下、好ましくは5μΩ・cm以下になる材料を用いるのが好ましい。そのような材料として、銀、金、銅、ニッケル、チタンなどの金属、前記金属粉と結着材を含むペースト等が使用可能である。またそれらを設置する方法としては、前記金属類を用いる場合には、公知のスパッタ法、蒸着法、メッキ法などが使用可能である。また前記ペースト状の材料を用いる場合には、スクリーン印刷法、ディスペンサー法などを用いて設置可能である。
前記ペーストの配合材としては、各種結着材、分散材、溶媒等を添加し、前記設置方法に合わせて適宜粘度を調整して使用することが好ましい。結着材としてはエポキシ樹脂等の各種ポリマー、半導体産業で使用されている公知のセラミックス、ガラス成分などが使用可能である。これらを含むペーストとして、例えば銀ガラス導電結着ペースト(米国DIEMAT社製DM3554、ノリタケ社製NP−4731A、NP−4028A、NP−4734、NP−4736H、NP−4735等)、熱硬化型銀ペースト(米国DIEMAT社製DM6030HK、東洋紡績社製DM−351H−30など)などが使用可能であるが、これら例示したもの以外であっても、比抵抗が20μΩ・cm以下の材料であればどのような材料でも使用可能である。
また本発明において、バスバーの設置形状に関しては、基板抵抗を下げることと、セル間隔を保持できる形状であればどのような形状でも採用可能であるが、発生した電子の拡散速度を速めるためには、連続したバスバー形状が好ましく、例えばグリッド形状、ストライプ形状などが好ましく、特にストライプ形状が好ましい。
バスバー幅は、光の入射領域を制限することからできるだけ狭い方が良く、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
バスバーの高さは、比抵抗が20μΩ・cm以下にできれば特に制限はないが、セル間隙が広がりすぎると電解液中の電子の拡散速度が低下するため、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
バスバー部はセル間隔を保持することも重要な役目であり、ストライプ状であれば少なくとも1本以上必要であるが、セルサイズが大きくなれば、基板自重による変形も大きくなるため、変形を保持するためには1〜100本、好ましくは5〜50本のバスバーを設置する。
またバスバー設置に際しては、所定の性能を得るために、複数回に分けて設置しても良いし、前記材料を2種類以上使用して設置しても良い。
本発明において、バスバー層の上部(外層部表面)は少なくとも2層以上の保護層で被覆することが重要である。バスバー層を2層以上の保護層で被覆する目的は電解液中の成分とバスバー中の金属成分が接触し反応することを防止することにある。
この第1層目の保護層に用いられる材料としては電解液と接触しても反応しないものであれば良いが、バスバー層と電解液との接触を防止する目的があり、電解液に対して膨潤するなど膜の緻密性が保持できないものは使用できない。
膜の緻密性が保持できるものとしては、半導体産業で用いられる公知の材料であるシロキサン成分からなるSOG材料、例えば有機SOG材(触媒化成社製CERAMATE、ハネウェル社製有機SOG材T−11、T−12、T−13シリーズ、日立化成社製SOG材HSG−7000、HSG−8000、HSG−R7等)、無機SOG材(ハネウェル社製P−TTYシリーズ等)、ガラス成分を含む材料、例えばガラスペースト(ノリタケ社製NP7900シリーズ等)などが使用可能であり、これら例示したもの以外であっても電解液に対して膨潤などせずに膜の緻密性が保たれるものであれば使用可能である。
本発明において、第1層目の保護層材料としては、ガラス成分を含むガラスペーストが最も好ましい。ガラスペースト材料の焼成温度が高すぎると基板の変形や導電膜の変質のおそれがあるため、熱処理温度は580℃以下のものが好ましく、より好ましくは550℃以下である。
またこのような材料では、ガラス成分中に酸化鉛、酸化ホウ素、アルミナ、チタニアなど各種金属酸化物が含まれているが、焼成温度が前記条件を満たすものであれば、前記各種金属酸化物の成分組成はどのようなものでもよい。
またこれらの保護層材料は膜の緻密性は良く保護材料部に衝撃を与えない限り問題ないが、素子中に通常行われている真空注入法により電解液を注入する際に、対向する基板が接触する可能性があり、膜が硬いため接触時に損傷し、結果的にバスバー層が露出し電解液と接触し太陽電池性能を損ねる場合があった。
第1層目の保護材料への電解液注入時の衝撃を緩和させるために、第2層目の保護層は硬化性樹脂材料を用いて設置することが特に好ましい。硬化性樹脂材料を用いることにより、第1層目の保護層が損傷を受けずに太陽電池性能を保持することができる。
第2層目の保護層材料である硬化性樹脂材料は、電解液と接触しても反応しないもので、電解液注入時の衝撃を緩和できるものであれば良く、特に限定されるものではなく、その硬化方法についても熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などの種々の硬化型のものが利用可能である。例えば硬化性樹脂としては、具体的には、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、アクリルおよびメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
またこれら例示したもの以外であっても同等のものであればどのような材料でも使用できる。これらは単独で用いても、また、2種あるいはそれ以上を用いてもよい。また、これらを変成したり、フィラーを加えるなどして、種々の改良を加えたものであっても良い。
熱硬化の場合では、室温で硬化可能なものも用いることができるが、加熱が必要な場合は各種オーブン、赤外線ヒーター、電熱ヒーター、面状発熱体などを用いて加熱することができる。通常は室温から150℃の間で、好ましくは室温から100℃の間で硬化できればよい。
光硬化の場合では、開始剤の吸収波長に適合したランプであれば、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光などが利用できる。硬化の際には素子全面を均一露光し、全面同時硬化しても良いし、ランプや光源を移動させたり、光ファイバーなどの導光性材料で導いたり、ミラー等を利用することによって集光したスポット光を走査して逐次硬化しても良い。
第1保護層および第2保護層の設置方法としては、前記材料のペーストを用いてスクリーン印刷法、ディスペンサー法、インクジェット法等が使用可能であるが、所定の保護層が設置できれば、どのような方法でも使用可能である。
また第1保護層および第2保護層の設置形状として、バスバー層全体が覆われれば良く、設置幅は前記バスバー幅+1mm以下、好ましくは+0.5mm以下である。また保護層の厚さはバスバーが完全に電解液と遮断され保護されれば良く制限はないが、セル間隙が広がりすぎると電解液中の電子の拡散速度が低下するため、第1保護層および第2保護層の層膜厚は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
また第2層目の保護層に関しては第1層目の保護層が電解液注入時に損傷を受けない程度の厚みがあればよく、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。また第2層目の保護層はバスバー層の保護を目的としていないため、第1保護層全面を覆わずに第1保護層上部の対向基板と接触する部分のみに設置しても良いが、第1保護層の全面を覆っても良い。
また第2保護層設置に際して所定の保護性能を得るために、複数回に分けて設置しても良いし、前記材料を2種類以上使用して設置しても良い。
このように作製したバスバー部は比較的安価な導電性基板を使用して、高価な真空成膜法を使用せずに作製できるために、低コストでの低抵抗基板を供与できる有用な方法である。
本発明において、バスバー層を形成する際の熱処理温度(Tc)と、第1層目の保護層を形成する際の熱処理温度(Ta)とは、Tc≧Ta、かつ、500℃≦Tc≦580℃の関係を具備していることが好ましい。
第1層目の保護層を形成する際の熱処理温度(Ta)がバスバー層を形成する際の熱処理温度(Tc)よりも高いと、保護層を熱処理する間に、バスバー層が変形するおそれがあり、欠陥を発生する要因となることから、Tc≧Taであることが好ましい。
本発明において半導体層を形成するのに用いられる半導体としては、特に限定されないが、例えば、Bi、CdS、CdSe、CdTe、CuInS、CuInSe、Fe、GaP、GaAs、InP、Nb、PbS、Si、SnO、TiO、WO、ZnO、ZnS 等が挙げられ、好ましくはCdS、CdSe、CuInS、CuInSe、Fe、GaAs、InP、 Nb、PbS、SnO、TiO、WO、ZnOであり、複数の組み合わせであってもよい。特に好ましくはTiO、ZnO、SnO、Nbであり、最も好ましくはTiO、ZnOである。
本発明に用いる半導体は単結晶でも多結晶でも良い。結晶系としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが主に用いられるが、好ましくはアナターゼ型である。半導体層の形成には公知の方法を用いることができる。
半導体層の形成方法としては、上記半導体のナノ粒子分散液、ゾル溶液等を、公知の方法により基板上に塗布することで得ることが出来る。この場合の塗布方法としては特に限定されるものではなく、キャスト法による薄膜状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法のほか、スクリーン印刷法を初めとした各種の印刷方法を挙げることができる。
半導体層の厚みは任意であるが、通常、0.1μm〜300μmであり、好ましくは1μm〜100μmであり、さらに好ましくは5μm〜50μmである。。
本発明における色素増感型太陽電池素子においては、半導体層の光吸収効率を向上すること等を目的として、半導体層を色素で修飾(吸着、含有など)させたものが用いられる。
本発明において用いることができる色素としては、半導体層の光吸収効率を向上させる色素であれば、特に制限されるものではなく、通常、各種の金属錯体色素や有機色素の一種または二種以上を用いることができる。また、半導体層への吸着性を付与するために、色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基などの官能基を有するものが好適に用いられる。
金属錯体色素としては、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛の錯体や、金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。
また、有機色素としては、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素を用いることができる。
色素を半導体層に吸着させる方法としては、溶媒に色素を溶解させた溶液を、半導体層上にスプレーコートやスピンコートなどにより塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。または半導体層を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることも出来る。浸漬する時間は色素が十分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは1〜30時間、特に好ましくは5〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。好ましくは溶液にする場合の色素の濃度としては、1〜1000mM/L、好ましくは10〜500mM/L程度である。
用いる溶媒としては、色素を溶解しかつ半導体層を溶解しなければ特に制限されることはなく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリルなどのニトリル系溶媒、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が使用可能である。
本発明の色素増感型太陽電池素子において対極は、導電性基板上に触媒層を有する触媒電極基板から構成される。
導電性基板は、基板自身が導電性あるいは少なくとも一方の面が導電性であればよく、透明な導電性基板でも、また不透明な導電性基板でも良い。不透明な導電性基板としては、種々の金属製電極のほか、例えばガラス基板上に成膜されたAu、Pt、Crなどを挙げることができる。
触媒層は電解質のレドックス対の還元反応を進行させるためのものであり、触媒機能を有する材料であれば使用可能である。このような触媒層を形成するための材料としては、例えば、白金などの貴金属、ポリジオキシチオフェン、ポリピロールのような導電性有機化合物、若しくはカーボンなどを挙げることができる。
触媒層の形成方法は特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、白金などの場合には、通常公知の真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、あるいはスパッタリング法などにより製造することができる。また、前記の触媒形成材料とバインダーを混合してペースト状とし、導電性基板表面にスクリーン印刷、平板印刷、グラビア印刷、凹版印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、特殊印刷する方法、ドクターブレード法等によっても製造することができる。
本発明において用いられる電解質としては特に限定されるものではなく、液体系でも固体系でもいずれでもよく、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すものが望ましい。
液体系の電解質としては特に限定されるものではなく、通常、溶媒、可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質(溶媒に可溶なもの)およびさらに必要に応じて支持電解質を基本的成分として構成される。
溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられる溶媒であればいずれも使用することができる。具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが好ましい。
また、溶媒として常温溶融塩類も用いることができる。ここで、常温溶融塩とは、常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示すものである。
また、可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質は、通常、いわゆるレドックス材と称されるものが挙げられるが、特にその種類を制限するものではない。かかる物質としては、例えば、フェロセン、p−ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、テトラチアフルバレン、チアントラセン、p−トルイルアミン等を挙げることができる。また、LiI、NaI、KI、CsI、CaI、4級イミダゾリウムのヨウ素塩、テトラアルキルアンモニウムのヨウ素塩、BrとLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBrなどの金属臭化物などが挙げられ、また、Brとテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ビピリジニウムブロマイド、臭素塩、フェロシアン酸―フェリシアン酸塩などの錯塩、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ヒドロキノン−キノン、ビオロゲン色素などを挙げることができる。
レドックス材は、酸化体、還元体のどちらか一方のみを用いてもよいし、酸化体と還元体を適当なモル比で混合し、添加することもできる。また、電気化学的応答性を示すように、これら酸化還元対を添加するなどしても良い。そのような性質を示す材料としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO 、BF 、CFSO 、(CFSO、(CSO、PF 、AsF 、CHCOO、CH(C)SO 、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するフェロセニウムなどのメタロセニウム塩などのほか、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン類を用いることもできる。
また、可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質として、レドックス性常温溶融塩類も用いることができる。ここで、レドックス性常温溶融塩とは、常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示すものであって、かつ可逆的な電気化学的酸化還元反応を行うことができるものである。
レドックス性常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質の使用量は、溶媒に溶解する限りにおいては、特に限定されるものではないが、通常溶媒に対して、1質量%〜50質量%、好ましくは3質量%〜30質量%であることが望ましい。
また、必要に応じて加えられる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類、常温溶融塩類が使用できる。
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩などが使用でき、特にLi塩が好ましい。
また、電解質としては、前記のような液体系でもよいが、高分子固体電解質(イオン伝導性フィルム)を使用してもよい。高分子固体電解質としては、特に好ましいものとして、高分子マトリックスに、少なくとも可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有し、所望により可塑剤をさらに含有するものが挙げられる。また、これらに加え、所望によりさらに前記した支持電解質や常温溶融塩などの他の任意成分を含有させてもよい。
高分子マトリックスとして使用できる材料としては、高分子マトリックス単体で、あるいは可塑剤の添加や、支持電解質の添加、または可塑剤と支持電解質の添加によって固体状態またはゲル状態が形成されれば特に制限は無く、一般的に用いられるいわゆる高分子化合物を用いることができる。
上記高分子マトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、フッ化ビニリデンなどのモノマーを重合または共重合して得られる高分子化合物を挙げることができる。またこれらの高分子化合物は単独で用いても良く、また混合して用いても良い。これらの中でも、特にポリフッ化ビニリデン系高分子化合物が好ましい。
電解質層の厚さは、特に限定されないが、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、また3mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
本発明の色素増感型太陽電池素子は、半導体電極基板と触媒電極基板を所定の間隔を隔てて対向させ、これら基板間の周縁部をシールしてセルを形成した構造を有する。
セルの基板間の間隔は、通常5〜300μm、好ましくは10〜100μmが望ましい。また基板間の間隔は少なくともバスバー層上の保護層を含めた厚さより広くないと、セル周縁部に設置したシール部に負荷がかかるおそれがあり、またバスバー部が対向する基板と完全に接触している場合には、電解液注入時にセル内に完全に注入できないおそれがある。また前記目的で基板間隔を広げすぎると、本発明にかかる目的すなわちセル間での太陽電池性能の変動を抑止できなくなるため、基板間隔はバスバー部の厚みより少なくとも1〜50μm、好ましくは10〜30μm以内に制御する必要がある。
シールの方法としては、特に限定されないが、各種シール材により種々の周知の方法を用いることができる。
シール材としては特に限定されるものではなく、素子内部を密封し外部と隔絶して、素子の性能に影響を与える成分、例えば、水分や酸素、一酸化炭素などの活性ガスなどの透過を阻止することが可能な材料であれば良く、例えば、樹脂やゴムなどの高分子材料が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸セルロース、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリアミドなどが例示できる。またゴムとしては、天然ゴムや合成ゴムが挙げられ、具体的には、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴムなどが例示できる。
また、シール材として硬化性樹脂を用いることもできる。かかる硬化性樹脂は特に限定されるものではなく、熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などの種々の硬化型のものが利用可能である。利用できる硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても、また、2種あるいはそれ以上を混合して用いてもよい。また、これらを変成したり、フィラーを加えるなどして種々の改良を加えたものであっても良い。これらの中でも特にエポキシ樹脂、アクリル変成したエポキシ樹脂(この場合は、含有するエポキシ基1モルに対してアクリル基が0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モル含むようにアクリル変成したエポキシ樹脂)等が望ましい。
前記樹脂やゴム中には、基板間の間隔を調節するなどの目的でスペーサー材料を含んでも良い。この目的のために利用するスペーサー材料は、少なくとも非導電性の材料であって、その形状は特に限定されるものではなく、シート状、球状、繊維状、棒状などいずれでも良い。
次に、これらのシール材を用いて基板間をシールする方法を下記に例示するが、シール方法としてはこれらに限定されるものではなく、各種の周知の方法が適用可能である。(1)予め、シールする形状に加工、成形したシール材を作製した後、基板間に挟み込む
方法
(2)硬化性樹脂のペーストを基板表面に公知の印刷方法を用いて所望の形状に形成する
方法
(3)基板表面にシール材を随時塗布していく方法
(4)シール材をノズルから吐出させながら掃引し、基板上に任意のパターンを形成する
方法
これらのうちでは、特に(4)による方法が好ましい。
なお、シール材は半導体電極基板と触媒電極基板の両方に塗布しても良いし、どちらか一方のみに塗布しても良い。
硬化性樹脂を塗布した場合には、基板を貼り合わせたのち硬化させるが、硬化方法は用いる硬化性樹脂により異なることは言うまでもない。
熱硬化の場合では、室温で硬化可能なものも用いることができるが、通常加熱が必要な場合は、室温から150℃の間で、好ましくは室温から100℃の間で硬化できればよい。また、硬化に要する時間は、色素増感型太陽電池特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは24時間以内、より好ましくは1時間以内である。
光硬化の場合では、開始剤の吸収波長に適合したランプであれば、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光などが利用できる。硬化の際には素子全面を均一露光することで、全面同時硬化させても良いし、ランプや光源を移動させたり、光ファイバーなどの導光性材料を利用することによって集光したスポット光を走査して逐次硬化させても良い。
また、2回以上繰り返すことによって硬化させても良い。
前記方法により作製されるシール部には、1カ所以上の注入口あるいは排気口を設けることもできる。注入口は、例えば、意図的にシール材を塗布しないなどによって容易に作ることができるが、その形状は単にシール材により仕切られた二つの空間を導通していればどのようなものでも良いし、例えば、中空材料などを使って、導通させることもできる。
電解質又はその前駆体の注入方法については、一般的な方法である真空注入法が使用可能であるが、目的が達成できればどのような方法でも使用可能である。
また注入口は、通常電解質又はその前駆体を注入した後、封止材などにより封止する。
封止操作は、特に限定されないが、できるだけ不活性ガス雰囲気下か湿度の極めて低い状態で行うことが望ましい。
封止材としては、特に限定されないが、例えば注入口部分に注入、充填あるいは塗布することにより素子内部を密封し外部とを隔絶して、素子の性能に影響を与える成分、例えば、水分や酸素、一酸化炭素などの活性ガスなどの透過を阻止することが可能な材料であれば特に制限されることはない。
かかる封止材としてはガラスやセラミックなどの無機材料、樹脂やゴムなどの高分子材料が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸セルロース、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリアミドなどが例示できる。またゴムとしては、天然ゴムや合成ゴムが挙げられ、具体的には、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴムなどが例示できる。
また、封止材として硬化性樹脂などを用い、それらを封止口に注入、充填あるいは塗布したのち硬化せしめて塞いでもよい。かかる硬化性樹脂としては特に限定されるものではなく、熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などの種々の硬化型材料が利用可能である。利用できる硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリアミドなどが挙げられる。これらは単独で用いても、また、2種あるいはそれ以上を混合して用いてもよい。また、これらを変成したり、フィラーを加えるなどして、種々の改良を加えたものであっても良い。これらの中では耐溶剤性の点から特にエポキシ樹脂が好ましい。また、アクリル変成したエポキシ樹脂で光硬化型のものも好ましく用いられる。この場合は、含有するエポキシ基1モルに対してアクリル基が0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モル含むようにアクリル変成したエポキシ樹脂が良い。
熱硬化の場合では、室温で硬化可能なものも用いることができるが、加熱が必要な場合は各種オーブン、赤外線ヒーター、電熱ヒーター、面状発熱体などを用いて加熱することができる。通常は室温から150℃の間で、好ましくは室温から100℃の間で硬化できればよい。また、硬化に要する時間は、色素増感型太陽電池特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは24時間以内、より好ましくは1時間以内である。
光硬化の場合では、開始剤の吸収波長に適合したランプであれば、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光などが利用できる。硬化の際には素子全面を均一露光し、全面同時硬化しても良いし、ランプや光源を移動させたり、光ファイバーなどの導光性材料で導いたり、ミラー等を利用することによって集光したスポット光を走査して逐次硬化しても良い。
上記の封止材は単独で用いるほか、適当に選択した2種以上を併用してもよい。
なお、電解質又はその前駆体として電解質前駆体を用いた場合、その前駆体を電解質とするための操作、例えば光重合、光架橋、熱重合、熱架橋などを行う必要があるが、当該操作は、注入直後に行ってもよく、封止操作後に行なってもよい。
以上説明した通り、本発明の構成の色素増感型太陽電池素子とすることにより、セルの基板間隔を一定に保持することができ、セル間での太陽電池性能の変動を抑止することができる。また前記保護層の第1層目にガラス成分を含む材料、第2保護層に硬化性樹脂材料により作製すると、電解液を真空注入する際に対向する基板の変形に伴う接触による基板損傷を防止でき、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子が得られる。さらに導電性基板の低抵抗化が安価な方法で作製することができ、コスト的にも有利である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に記載されたものに限定されるものではない。
(実施例1)
表面抵抗値12Ω/sqの20cm角SnO:Fガラス(ガラス基板上にSnO:F膜を形成した透明導電性ガラスで、ガラスの辺から約15mmの距離に1mmφの開口部があるもの)上に、チタニアペーストを基板上にスクリーン印刷するために、ポリエステル27メッシュ上に長さ180mm、幅9mmのパターンを1mmの間隔を設けて18パターン作製した印刷版を用いてSOLARONIXS社製のチタニアペーストTi−Nanoxide T/SPをスクリーン印刷法により塗布し100℃で乾燥させた。塗布した基板を、500℃で30分焼成した。焼成後のチタニア半導体層の膜厚を触針式膜厚計で計測したところ12μmであることが分かった。次にチタニアを印刷していない1mm幅の部分に0.5mm幅で銀ペーストをスクリーン印刷して120℃で乾燥後、熱処理温度550℃で10分間焼成しバスバー層を作製した。得られたバスバー層の膜厚は8μmで比抵抗を測定した結果、5μΩ・cmであった。
このバスバー層上に第1保護層としてガラスペースト材料を0.7mm幅でスクリーン印刷して120℃で乾燥後、550℃で10分焼成した。この操作を2回繰り返して第1保護層を作製した。得られた膜厚は17μmであった。
次に第2保護層としてポリイミド樹脂材料を0.7mm幅でスクリーン印刷して100℃で乾燥後、窒素雰囲気下400℃で60分焼成した。バスバー層と第1および第2保護層を合わせた膜厚は35μmであった。
得られた基板に下記式(1)で示されるルテニウム色素/エタノール溶液(3.0×10−4mol/L)を15時間浸し、色素を吸着させた。
また触媒電極基板として、20cm角チタン板上に膜厚30nmでPtを成膜した。
これらのように作製したチタニア電極基板および触媒電極基板を50μmの間隔を隔てて対向させ、これら基板間の周縁部を全てシール剤を用いて接着し、セル断面ではなくセル表面に電解液注入口を備える20×20cmサイズのセルを組み立てた。
次に電解質として0.5mol/Lのヨウ化リチウ.05mol/Lのヨウ素と0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジンを含むメトキシプロピオニトリル電解液を真空注入法によりセル内に注入し、注入口を封止した。
上記操作を繰返すことにより20cm角セルを5セル作製した。
このようにして得られたセルにAM1.5Gの疑似太陽光を照射し、電流電圧特性を測定し、その結果を表1に示した。
作製した5セルの太陽電池性能(変換効率)の変動幅は0.3%であった。
Figure 0005000119
(比較例1)
実施例1において半導体用導電基板として表面抵抗値2Ω/sqの20cm角ITOガラスを用い、バスバー層および保護層を設置しないで用いた以外は、すべて同様にして20cm角セルを5セル作製した。
実施例1と同様な評価を行い、その結果を表1に示した。
作製した5セルの太陽電池性能(変換効率)の変動幅は1.0%であった。
Figure 0005000119
(実施例2)
実施例1に従って20cm角セルを作製した。
このようにして得られたセルにAM1.5Gの疑似太陽光を照射し、電流電圧特性を測定した結果、太陽電池性能(変換効率)は3.9%であった。
このセルを100時間放置後に再度電流電圧特性を測定した結果、太陽電池性能(変換効率)は3.8%であった。
(比較例2)
実施例1において第2保護層を設置しない以外、同様の方法を用いて20cm角のセルを作製した。
このようにして得られたセルにAM1.5Gの疑似太陽光を照射し、電流電圧特性を測定した結果、太陽電池性能(変換効率)は3.6%であった。
このセルを100時間放置後に再度電流電圧特性を測定した結果、太陽電池性能(変換効率)は2.5%であった。
またセルを観察した結果、バスバー部に黒点が多数発生していることが確認された。これは真空注入時に保護層が触媒電極基板と接触し損傷し、結果的にバスバー層中の銀成分と電解液中のヨウ素成分が反応し、ヨウ化銀が生成したものと考えられる。
(比較例3)
実施例1においてこのバスバー層上に第1保護層としてガラスペースト材料を0.7mm幅でスクリーン印刷して120℃で乾燥後、575℃で10分焼成した以外は、すべて実施例1と同様にして20cm角セルを作製した。
このようにして得られたセルにAM1.5Gの疑似太陽光を照射し、電流電圧特性を測定した結果、太陽電池性能(変換効率)は3.5%であった。
このセルを100時間放置後に再度電流電圧特性を測定した結果、太陽電池性能(変換効率)は2.1%であった。
またセルを観察した結果、バスバー部に黒点が多数発生していることが確認された。これは真空注入時に保護層が触媒電極基板と接触し損傷し、結果的にバスバー層中の銀成分と電解液中のヨウ素成分が反応し、ヨウ化銀が生成したものと考えられる。
本発明の色素増感型太陽電池素子の一構造例を示す概略図である。 透明導電性基板上にバスバー部を設置した平面図の一例である。 従来の色素増感型太陽電池素子の構造例を示す図である。
符号の説明
1 透明導電性基板
2 導電性基板
3 触媒層
4 シール材
5 色素で修飾された半導体層
6 バスバー層
7 第1保護層および第2保護層
8 電解質層

Claims (3)

  1. 光透過性を有する導電性基板上に色素で修飾された半導体層を有する半導体電極基板と、導電性基板上に触媒層を有する触媒電極基板とを所定の間隔を隔てて対向させ、これらの基板間の周縁部をシール材によりシールしてセルを形成し、そのセル内に電解質を配置してなる色素増感型太陽電池素子であって、該光透過性を有する導電性基板上の一部にバスバー層を配置し、かつバスバー層上部に第1層目がガラス成分を含む材料からなり、第2層目が硬化性樹脂材料からなる保護層を配置してなることを特徴とする色素増感型太陽電池素子。
  2. 光透過性を有する導電性基板上に色素で修飾された半導体層を有する半導体電極基板と、導電性基板上に触媒層を有する触媒電極基板とを所定の間隔を隔てて対向させ、これらの基板間の周縁部をシール材によりシールしてセルを形成し、そのセル内に電解質を配置してなる色素増感型太陽電池素子を製造するにあたり、該光透過性を有する導電性基板上の一部にバスバー層を配置し、次いでバスバー層上部に第1層目がガラス成分を含む材料からなり、第2層目が硬化性樹脂材料からなる保護層を配置してなることを特徴とする色素増感型太陽電池素子の製造方法。
  3. バスバー層を形成する際の熱処理温度(Tc)と、第1層目の保護層を形成する際の熱処理温度(Ta)が、Tc≧Ta、かつ、500℃≦Tc≦580℃の関係を満たすことを特徴とする請求項に記載の色素増感型太陽電池素子の製造方法
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