JP4998633B1 - レーザ溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】異なる光ファイバーを用いて伝送されたジャストフォーカスでのスポット径が直径0.3mm以上の2本のレーザビームを溶接線に沿って被溶接材の上面側から照射し、被溶接材の上面側で溶接進行方向に先行する先行レーザビームおよび後行する後行レーザビームを被溶接材の上面に垂直な方向から入射角を設けて溶接進行方向に傾斜させて照射するとともに、先行レーザビームの入射角を後行レーザビームの入射角よりも大きくしてレーザ溶接を行なう。
【選択図】図1
Description
これに対して、例えば特許文献1では、二重管状のノズル構造を有するレーザ加工ヘッドを用い、外側ノズルから噴出させたアシストガスによって遮蔽カーテンを形成して、レーザ加工ヘッド内部へのスパッタ飛散を防止する技術が開示されている。
特許文献3では、レーザ加工ノズルと被溶接材との間に横方向から流体を噴射して、レーザ加工ヘッドおよび被溶接材へのスパッタ付着を防止する技術が開示されている。
特許文献4では、レーザビームの照射により形成される溶融池から飛散するスパッタに向けて、横方向から被溶接材に近い位置で気体を吹き付けることで、光学部品や被溶接材へのスパッタ付着を防止する技術が開示されている。
特許文献2に開示された技術では、使用するフィラーワイヤの成分によって溶接金属の組成が変化し、その結果、溶接金属の特性が変動するので、被溶接材の成分に応じて好適なフィラーワイヤを選択する必要がある。そのため、フィラーワイヤの在庫管理やフィラーワイヤを選択する作業管理の負荷が増大する。
特許文献4に開示された技術では、被溶接材の上面側(すなわちレーザビームを照射する側)に発生したスパッタの付着防止には有効であるが、飛散するスパッタを吹き飛ばして除去するので、溶融池の溶融メタルが減少してアンダーカットやアンダーフィルなどの溶接欠陥が被溶接材の裏面側に発生しやすい。
すなわち本発明は、異なる光ファイバーを用いて伝送されたジャストフォーカスでのスポット径が直径0.3mm以上の2本のレーザビームを溶接線に沿って被溶接材の上面側から照射し、被溶接材の上面側で溶接進行方向に先行する先行レーザビームおよび後行する後行レーザビームを被溶接材の上面に垂直な方向から入射角を設けて溶接進行方向に傾斜させて照射するとともに、先行レーザビームの入射角を後行レーザビームの入射角よりも大きくしてレーザ溶接を行なうレーザ溶接方法である。
図1に示すように、レーザビーム3a,3bは溶接線2に沿って前後に配置する。鋼板1の上面側で溶接進行方向に先行するレーザビームを先行レーザビーム3aとし、後行するレーザビームを後行レーザビーム3bとする。鋼板1上面における先行レーザビーム3aの照射領域7a,後行レーザビーム3bの照射領域7bおよび溶接線2の配置の例を模式的に平面図として図2に示す。
先行レーザビーム3a,後行レーザビーム3bのジャストフォーカスでのスポット径は、いずれも直径0.3mm以上とする必要がある。ここで、ジャストフォーカスでのスポット径とは、レーザビーム3a,3bを光学的に集光させた時のレーザビームの焦点平行部のビーム径を指す。従って、ジャストフォーカスの位置ではレーザビームのエネルギー密度は最も高くなっている。レーザビーム3a,3bのジャストフォーカスでのスポット径が0.3mmよりも小さいと、溶接時の溶接ビード6の幅が狭くなり、開先の溶け残りが発生する。一方、スポット径が1.2mmを超えると、キーホール4が不安定となる。そのため、レーザビーム3a,3bのジャストフォーカスでのスポット径は1.2mm以下が好ましい。
鋼板1の上面からレーザビーム3a,3bのフォーカスまでの距離をt(mm)とし、鋼板1の板厚をT(mm)として、鋼板1の上面からフォーカスまでの距離tが−3×T(すなわち上面から上方へ3T)を超えると、フォーカスの位置が高すぎるので、キーホール4を安定して維持することが難しい。一方、3×T(すなわち上面から下方へ3T)を超えると、フォーカスの位置が深すぎるので、鋼板1の裏面側からスパッタが発生し易くなる。したがって、鋼板1の上面からフォーカスまでの距離tは−3×T〜3×Tの範囲内に設定するのが好ましい。
図3は、図1の先行レーザビーム3a,後行レーザビーム3bおよび鋼板1上面に垂直な線の配置の例を模式的に示す側面図である。図3に示すように、先行レーザビーム3aと後行レーザビーム3bは、いずれも矢印Aで示す溶接進行方向に傾斜させて鋼板1上面に照射する。その先行レーザビーム3aと鋼板1上面に垂直な線とのなす角θaを先行レーザビーム3aの入射角とし、後行レーザビーム3bと鋼板1表面に垂直な線とのなす角θbを後行レーザビーム3bの入射角として、それぞれの入射角がθa>θbを満足するように設定する。
したがって、先行レーザビーム3aと後行レーザビーム3bの入射角をθa>θbと設定する必要がある。つまり、先行レーザビーム3aは突合せ部を予熱するにあたってスパッタを抑制するために傾斜角θaを大きくする。後行レーザビーム3bは突合せ部を溶融するにあたって加熱効率を高めるために傾斜角θbを小さくする。
先行レーザビーム3aの入射角θaが5°未満では、入射角θaが小さすぎるので、先行レーザビーム3aを垂直に照射する場合と同様の挙動を示し、スパッタの発生を抑制する効果が得られない。一方、入射角θaが50°を超えると、先行レーザビーム3aが通過する鋼板1の上面から裏面までの距離が長くなるので、先行レーザビーム3aのエネルギーが減衰して十分な予熱効果が得られなくなる。したがって、先行レーザビーム3aの入射角θaは5〜50°の範囲内が好ましい。
また本発明は、被溶接材(たとえば薄鋼板,厚鋼板,ステンレス鋼板等)の突合せ溶接のみならず、それらの被溶接材を円筒状に成形して溶接管を製造する際の溶接にも適用できる。
表1中の比較例のうち、継手No.1は後行レーザビーム3bの入射角θbを0°とした例(すなわち垂直に照射した例)、継手No.3は先行レーザビーム3aのジャストフォーカスでのスポット径が本発明の範囲を外れる例、継手No.7は後行レーザビーム3bを溶接進行方向の逆方向に傾斜させて照射した例、継手No.8は先行レーザビーム3aと後行レーザビーム3bを溶接進行方向の逆方向に傾斜させて照射した例である。
表2中の比較例のうち、継手No.1は後行レーザビーム3bの入射角θaを0°としたので、ステンレス鋼板1にスパッタが多量に付着しかつ溶接ビードにアンダーフィルが発生した。継手No.3は先行レーザビーム3aのジャストフォーカスでのスポット径が小さいので、スパッタの発生を抑えられず、溶接ビードにアンダーフィルが発生した。継手No.7は後行レーザビーム3bを溶接進行方向Aの逆方向に傾斜させたので、ステンレス鋼板1にスパッタが多量に付着しかつ溶接ビードにアンダーフィルが発生した。継手No.8は先行レーザビーム3aと後行レーザビーム3bを溶接進行方向の逆方向に傾斜させたので、ステンレス鋼板1にスパッタが多量に付着しかつ溶接ビードにアンダーフィルが発生した。
2 溶接線
3a 先行レーザビーム
3b 後行レーザビーム
4 キーホール
5 溶融メタル
6 溶接ビード
7a 先行レーザビームの照射領域
7b 後行レーザビームの照射領域
Claims (2)
- 異なる光ファイバーを用いて伝送されたジャストフォーカスでのスポット径が直径0.3mm以上の2本のレーザビームを溶接線に沿って被溶接材の上面側から照射し、該被溶接材の上面側で溶接進行方向に先行する先行レーザビームおよび後行する後行レーザビームを前記被溶接材の上面に垂直な方向から入射角を設けて前記溶接進行方向に傾斜させて照射するとともに、前記先行レーザビームの入射角を前記後行レーザビームの入射角よりも大きくしてレーザ溶接を行なうことを特徴とするレーザ溶接方法。
- 前記先行レーザビームと前記後行レーザビームの入射角が5〜50°であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接方法。
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