JP5600838B2 - レーザ溶接方法 - Google Patents

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本発明はレーザ溶接とホットワイヤ溶接とを組合せた溶接方法に係わり、特に鋼板あるいは鋼管の突合せ溶接を高品質、高能率に行うのに好適なレーザ溶接方法に関する。
レーザ溶接は高いエネルギーのレーザ光を用い、レーザ光をレンズにより集光してより高いエネルギー密度として、被溶接部である鋼板等の母材に当てることにより母材を溶融するため、通常のアークを熱源とするアーク溶接に比べて前記母材の肉厚方向において深い溶込みが得られること、母材の溶融速度が早いことから高速溶接が可能であること、母材の溶融部の外側に生じる溶接熱影響部の範囲が狭くて溶接変形が少なく低歪みの溶接施工が行えること、などの特徴を有する溶接方法である。また、高能率溶接方法である電子ビーム溶接のように被溶接部を真空環境にする必要がないので、高能率溶接法として各方面で使用されるようになってきている。
一般的なレーザ溶接方法について説明する。説明を簡略化するため板上にビード置きを行うビードオンプレート溶接の例で説明する。一般的に知られているのは次の2種類である。まず1つは深溶け込み型レーザ溶接方法(キーホール溶接方法とも称することがある)であり、図6、図9に示す。図6において図示しないレーザ光源と被溶接部である母材3との間に置かれた集光レンズ15により前記レーザ光源からのレーザ光1は集光されて焦点14を形成する。さらにこの溶接方法では図9に示すように前記焦点14の位置が母材3の表面に来るように設定することで、該母材3の表面に非常に高いエネルギー密度のレーザ光が供給されるため、母材3の表面は急速に溶融、蒸発して金属蒸気となる。この金属蒸発の反力により母材3の肉厚方向にはキーホール16と呼ばれる空隙が形成され、母材3に対してレーザ光1を溶接方向に移動させることにより前記キーホール16が連続的に形成される。前記キーホール16の後方には溶融池5が連続的に形成されることから幅が狭く深い溶込みの溶接ビード4が得られる。得られたビード4の断面形状を図10に示す。図10において溶接ビード4の断面は母材3の肉厚方向に細く縦長の形状になる。なお、本明細書では説明の都合により、母材3または母材3および図示しない溶加材(ワイヤなど)とが溶融している状態を溶融池5とし、冷却により凝固した状態のものを溶接ビード4または溶接金属と呼称することにする。
次に、もう一つは熱伝導型レーザ溶接方法であり、図6、図7に示す。図6において図示しないレーザ光源と被溶接部である母材3との間に置かれた集光レンズ15により前記レーザ光源からのレーザ光1は集光されて焦点14を形成する。さらにこの溶接方法では、図6に示すようにレーザ光1の焦点14の位置が母材3の表面よりレーザ光1の光源側に来るように設定すること(これを「焦点外し距離をプラスにする」ということがある)で、母材3の表面に前記焦点14を合わせる場合よりも低いエネルギー密度のレーザ光1を照射して熱伝導により母材3を溶融する方法であり、前記図9に示すキーホール16を形成する溶接方法に比べて母材3の肉厚方向に浅く幅の広い溶融池5が形成される。図7に示すように母材3に対してレーザ光1を溶接方向に移動させることにより溶接方向の後方には前記溶融池5が連続的に形成され、冷却して溶接ビード4が得られる。得られた溶接ビード4の断面形状を図8に示す。図8に示すように溶接ビード4の断面形状において、母材の溶け込みは母材3の肉厚方向に凸の半円形状になる。
前記深溶け込み型レーザ溶接方法と熱伝導型レーザ溶接方法とは、前記したようにそれぞれ異なる溶接方法であり、適用箇所により選択されている。前記深溶け込み型レーザ溶接方法では、1パスで得られる溶け込み深さが概ね出力1kW当たり約1mmと熱伝導型レーザ溶接方法よりも大きな溶け込みが得られることから、5mm以下程度の薄板材同士を端面で溶接接合する場合などへの適用では、5kWクラスのレーザ加工機を使用して、1パスでの溶接が可能であり広く普及している。
板厚が5mmより厚くなると、より出力の大きな10kW出力クラスのレーザ加工機を使用することになるが、10kW出力クラスのレーザ加工機で溶接できる板厚は10mm程度が限界であり、さらに厚い板厚を溶接する方法として特開平7−323386号公報(特許文献1)に記載のレーザ溶接方法が提案されている。この方法は被溶接部に設ける開先として、深溶け込み溶接の限界溶け込み深さをルートフェイスとするY型狭開先とし、ルートフェイス部の1層目を深溶け込みで1パス完全溶込み溶接し、2層目以降は、集光光学系の焦点の位置を、焦点距離の1/20以上の距離だけ前層ビード上から離すことによって、エネルギー密度が低下したレーザ光を開先部に照射し、溶加材のワイヤを加えることにより熱伝導型ビードを形成する溶接方法が用いられる。
また、溶接電源とは別にワイヤ加熱電源よりワイヤに通電するホットワイヤ溶接法を用いることにより効率を向上させたレーザ溶接方法として、特開昭61−232080号公報(特許文献2)には、ワイヤを溶接方向前方から供給して被溶接部前方の母材である未溶接部に接触させて通電による抵抗発熱した後にレーザ光に直接照射させるようにホットワイヤを供給し、溶接する方法が開示され、また特開昭61−232081号公報(特許文献3)には、ワイヤを溶接方向後方から供給して溶融池または溶接金属部に接触して電気抵抗発熱した後にレーザ光に直接照射させるようにホットワイヤを供給し、溶接する方法が開示されている。
特開平7−323386号公報 特開昭61−232080号公報 特開昭61−232081号公報
特開平7−323386号公報に記載された従来技術では、被溶接部に設ける開先として、深溶け込み溶接の限界溶け込み深さをルートフェイスとするY型狭開先とし、ルートフェイス部の1層目を深溶け込みで1パス完全溶込み溶接し、2層目以上は、集光光学系の焦点の位置を、焦点距離の1/20以上の距離だけ前層ビード上から離すことによって、エネルギー密度を低下したレーザビームを開先部に照射し、溶加材のワイヤを加えることにより熱伝導型ビードを形成する溶接方法が提案されている。2層目以降ではエネルギー密度を低下したレーザ光により被溶融母材と溶加材のワイヤの両方を溶融する必要があること、熱伝導型ビードの溶接ではキーホール溶接に比較してレーザ光の反射が大きく、レーザエネルギーの損出が大きいことより、効率的に溶接を行うためにレーザ加工機は10kWクラスが用いられる。通常レーザ加工機の値段は1kW約1千万円する。この方法で用いられるレーザ加工機は10kWクラスであり、通常用いられる5kW出力クラスのレーザ加工機比べて、非常に高価である。
また、特開昭61−232080号公報及び特開昭61−232081号公報記載の発明はワイヤに通電するホットワイヤとレーザ溶接を併用することで、レーザ光の有する高密度エネルギーをフィラーワイヤの溶融に使用しなくて済むようにして溶接速度と効率を高めることができるというものであるが、前記公報に開示されているものは、I型開先の1パス溶接が対象である。これに対して本発明では溶接開先の形状は特に限定せず、これを1パスで溶接するものであり、前記公報に開示された方法は、特に溶接部の成形や溶接品質維持面での困難性については全く対応できない。
本発明の課題は、溶接母材の肉厚が20mm程度の溶接であっても5kW出力以下のレーザ加工機により高効率、高品質なレーザ溶接方法を提供することである。
上記本発明の課題は次の構成によって解決される。
請求項1記載の発明は、溶加材として溶接ワイヤ(2)を用いて開先加工した被溶接母材(3)を溶接するレーザ溶接方法において、レーザ光(1)を該レーザ光(1)の焦点を外して前記開先加工した被溶接母材(3)に照射して該被溶接母材(3)を溶融すると共に、前記溶接ワイヤ(2)を該溶接ワイヤ(2)と前記被溶接母材(3)間に通電して該ワイヤ(2)の抵抗発熱により加熱するホットワイヤとし、前記レーザ光(1)を被溶接母材(3)表面に対して照射角度θ 80〜100度で照射し、前記レーザ光(1)の後方に前記レーザ光(1)の照射角度と近似した被溶接母材(3)表面に対する傾斜角度で溶接ワイヤ(2)を前記被溶接母材(3)の溶融により形成した溶融池(5)に挿入し、前記被溶接母材(3)の溶融および前記溶接ワイヤ(2)の挿入により形成された溶融池(5)にできる急傾斜面からのレーザ光(1)の反射光(1’)を前記溶融池(5)の溶接方向前方照射して溶融しながら溶接することを特徴とするレーザ溶接方法である。
請求項2記載の発明は、前記被溶接母材(3)の溶融および前記溶接ワイヤ(2)の挿入により形成した溶融池(5)に対して照射したレーザ光(1)の反射光(1’)を前記溶融池(5)の溶接方向前方に照射することにより、該溶融池(5)に先行する先行溶融池(5a)を連続的に形成しながら溶接することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接方法である。
請求項3記載の発明は、被溶接母材(3)の表面に対してレーザ光(1)の照射角度θ が80〜100で、溶接ワイヤ(2)の溶融池(5)への挿入角度θ が被溶接母材(3)の表面に対して90〜120で、溶接ワイヤ(2)の中心線と被溶接母材(3)表面の交点とレーザ光(1)の中心線と被溶接母材(3)表面の交点との間隔が1〜3mmであることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接方法である。
(作用)
本発明の請求項1、2記載の発明では、まず、レーザ光1をプラス側またはマイナス側に焦点を外した距離で溶融池5の表面に照射させることで、ビード4の断面形状が図10に示すように深くなることを避けることができる。
焦点を外した距離でレーザ光1を溶融池5に照射させる場合に、図4に示すように母材3の表面に対して傾斜角度αの傾斜面を有する溶融池5に向けてレーザ光1を照射する。このように焦点を外した距離でレーザ光1を溶融池5の表面に照射させることで、図8に示すような断面半円形状のビード4が得られる。レーザエネルギーの一部が溶融池5に吸収され、レーザ光1の一部が反射光1’として溶融池5の表面で母材3の表面側に向けて反射し、溶融池5の前方を溶融して先行溶融池5aを連続的に形成することができる。
次に、レーザ光1により溶加材として添加するワイヤ2を直接照射して溶融するのではなく、ワイヤ2に通電して抵抗発熱により加熱するホットワイヤとすることで、ワイヤ2が溶融池5内に挿入される前に融点近くまで加熱するようにする。これにより、レーザ光1のエネルギーは基本的に被溶接母材3のみの溶融に当てることができることから、必要なレーザ光1のエネルギーを半減することが可能になる。具体的には、通常の鋼板溶接では8〜10kWのレーザ加工機が使われるが、本溶接法を用いれば3〜5kWのレーザ加工機で溶接を行うことができるようになる。通常レーザ加工機の値段は1kW約1千万円するので、初期設備費を大幅に低減できる。
また、レーザ光1を溶接進行方向前方から被溶接母材3の被溶接部に形成される溶融池5に照射し、その後方よりホットワイヤ2を溶融池5にレーザ光1の照射角度と近似した角度で立てて挿入することで溶融池5に急傾斜面(図4の傾斜角度αの傾斜面)を形成し、同時にレーザ光1を溶融池5の溶接方向前方の表面に照射し、溶融池5の表面でのレーザ光1の反射光1’が溶融池5近傍であり、溶融池5の斜め前方の母材3の表面に向かう入射角度で溶融池5の表面を照射することで溶融池5の溶接方向前方を溶融して先行溶融池5aを連続的に形成する。前記先行溶融池5aを連続的に形成することが本発明の一つの特徴があり、これにより開先溶接で一番問題になる開先内の溶融能力が向上し融合不良の発生しない安定した溶接を高能率で行うことが可能になる。
表1にレーザ照射角度θ1、ワイヤ挿入角度θ2、ワイヤ送給位置を変化させた場合に正常な溶接ビード4が得られる範囲を示す。ワイヤ挿入角度θ2とワイヤ送給位置をそれぞれ105°、2mmとした場合に、被溶接母材3の表面に対してレーザ光1の照射角度θ1を80〜100°で照射すると溶接ビード4が凹形状となり多層盛溶接に適した形状とすることができた。この範囲から外れる角度で照射すると融合不良が生じた。これは溶融池5の前方から斜め前方にかけてレーザ光1の反射光1’を向けることができないためである。
Figure 0005600838
同じく表1において、レーザ照射角度θ1とワイヤ送給位置をそれぞれ90°、2mmとした場合に、被溶接母材3の表面に対してワイヤ挿入角度θ2を90〜120°で挿入すると溶接ビード4が凹形状となり多層盛溶接に適した形状とすることができた。この範囲から外れる角度でワイヤ2を挿入すると開先の上方に設定するレーザヘッドとワイヤトーチが干渉するか、溶接ビード4が凸状になった。前者は現在の装置の大きさから物理的な制限があるためであり、後者はワイヤ2が溶融池5の温度が低い後方から挿入され、ワイヤ挿入位置で凝固し、中央が盛り上ったビードになる。
同じく表1において、レーザ照射角度θ1とワイヤ挿入角度θ2をそれぞれ90°、105°とした場合に、図5で示すワイヤ送給位置を1〜3mmで照射すると溶接ビード4が凹形状となり多層盛溶接に適した形状とすることができた。この範囲から外れる位置にすると溶接ビード4の形状が凹形状に形成できず、凸凹や凸形状となった。
請求項3記載の発明によれば、さらにホットワイヤ2はレーザ光1より溶接方向に対して後行させることで溶融池5の表面でのレーザ光1の反射の障害にならないようにし、ホットワイヤ2の溶融池5の表面に対する挿入角度θ2を母材3の表面に対して溶接進行方向の後方向側に90度から120度の挿入角度θ2、望ましくは100〜110度の挿入角度θ2で溶融池5の上方から挿入する。前記挿入角度θ2が90度未満であるとレーザ光1とワイヤ2が干渉し、また前記挿入角度θ2が120度を超えるとワイヤ2が溶融池5後方に挿入されることになり溶接ビード4が凸形状になり次層溶接時に開先壁7の溶融が難しくなり融合不良発生の原因になる。
また、図5に示すワイヤ2の溶融池5への挿入位置も重要なパラメータになり、ワイヤ挿入位置とレーザ光1の中心軸の溶融池5への照射位置との間隔が大き過ぎると溶融池5の端にワイヤ2が挿入されることになりビード4の表面形状が凸形状になり次層溶接時に開先壁7の溶融が難しくなり融合不良発生の原因になる。逆にワイヤ2の溶融池5への挿入位置とレーザ光1の中心軸の溶融池5への照射位置との間隔が小さいとワイヤ2にレーザ光1が当たるようになりワイヤ2がレーザ光1により溶融され、溶断する現象が発生し、溶融池5の表面が波打ち溶接現象が乱れてビード4の形状に凹凸が発生する。ワイヤ2の溶融池5への挿入位置とレーザ光1の中心軸の溶融池5への照射位置との間隔は1〜3mmが最良であった。
請求項1記載の発明によれば、ホットワイヤ溶接によりワイヤ2を融点近くまで加熱するため、レーザ光1のエネルギーは基本的に被溶接母材3のみの溶融に当てることができることから、必要なレーザ光1のエネルギーを半減することが可能になる。具体的には、通常の鋼板溶接では8〜10kWのレーザ加工機が使われるが、本溶接法を用いれば3〜5kWのレーザ加工機で溶接を行うことができるようになる。通常レーザ加工機の値段は1kW約1千万円するので、初期設備費を大幅に低減できる。
また、レーザ光1を被溶接母材3の表面に対して照射角度θ 80〜100度で照射し、レーザ光1の後方の前記被溶接母材3の溶融により形成した溶融池5にレーザ光1の照射角度と近似した被溶接母材3の表面に対する傾斜角度で溶接ワイヤ2を挿入するので、レーザ光1の一部が反射光1'として溶融池5の表面で母材3の表面側に向けて反射し、溶融池5の前方を溶融しながら溶接することができる。
さらに、レーザ光1の溶融池5に対する照射部より後方で、ホットワイヤ2を溶融池5にレーザ光1の照射角度と近似した傾斜角度で立てて挿入することで溶融池5に急傾斜面(図4の傾斜角度αの傾斜面)を形成し、同時にレーザ光1を溶融池5の溶接方向前方の表面を照射し、溶融池5の表面でのレーザ光1の反射光1'が溶融池5の表面を照射して溶融しながら溶接することで、開先内の溶融能力が向上して融合不良の発生しない安定した溶接を高能率で行うことが可能になる。
また、被溶接母材3の表面に対してレーザ光1の照射角度とワイヤ2の挿入角度が近似しているので溶接ビード4が凹形状となり多層盛溶接に適した形状とすることができ、さらにレーザヘッドとワイヤトーチが干渉することが無くなる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の効果に加えて先行溶融池5aが形成させるために母材3の前記溶融池5の前方部分を常に先行して溶融されるために溶融池5の通過で完全に被溶接母材3を溶融することができ、溶接がスムーズに進行し、良好な溶接ができる。
また、請求項記載の発明によれば、前記請求項1記載の発明の効果に加えて、ホットワイヤ2の溶融池5の表面に対する挿入角度θ を母材3の表面に対して溶接進行方向の後方向側に挿入角度θ =90度〜120度、望ましくは100〜110度で溶融池5の上方中央部における溶接進行方向に挿入し(図5参照)、さらに被溶接母材3の表面に対してレーザ光1の照射角度θ を80〜100とすることで、レーザ光1とワイヤ2が干渉することがなく、また溶融池5表面の傾斜角度α(図4参照)が小さくならないのでレーザ光1の反射光1’が母材3の表面に向かうことができ、溶接の安定性、溶接欠陥の防止に好結果をもたらす。
本発明のレーザ溶接方法の第一の実施形態を説明するための模式図である。 本発明のレーザ溶接方法の第二の実施形態を説明するための模式図である。 本発明のレーザ溶接方法の第三の実施形態を説明するための模式図である。 溶融池表面でレーザ光1が反射する現象を説明する模式図である。 レーザ光1照射角度θ1、ワイヤ挿入角度θ2、ワイヤ送給位置を説明するための模式図である。 焦点外し距離を説明する模式図である。 熱伝導型レーザ溶接方法を説明するための模式図である。 熱伝導型レーザ溶接のビード断面形状の模写図である。 深溶け込み型レーザ溶接方法を説明するための模式図である。 深溶け込み型レーザ溶接のビード断面形状の模写図である。
以下、本発明の具体的実施例を図面により説明する。
図1は本実施例のレーザ溶接方法を説明するための模式図であり、図4は溶融池5表面でレーザ光1が反射する現象を説明する模式図であり、図5はレーザ光1の照射角度θ1、ワイヤ挿入角度θ2及びワイヤ挿入位置を説明するための模式図である。
被溶接物の母材3に開先壁7が対向する空間部にY型開先6を設けて、2層目のV型開先で溶接部を形成させる。レーザ光1は図示していないレーザ加工機の集光レンズにより集光され、焦点からプラスしてずれた距離(「焦点ずらし距離プラス」という)で溶融池5の表面に照射する。
ワイヤ2はホットワイヤ電源11、給電部12及びセラミックガイド13を用いて、ホットワイヤ電源11より給電部12、ワイヤ2、溶融池5、母材3及びホットワイヤ電源11を順次経由する回路に電流を流し、ワイヤ2を抵抗加熱する。
そして、ワイヤ2を溶融池5内に挿入する前に融点近くまで加熱する。ホットワイヤ溶接によりワイヤ2は融点近くまで加熱するため、レーザ光1のエネルギーは基本的に被溶接母材3のみの溶融に当てることができることから、必要なレーザ光のエネルギーを半減することが可能になる。これにより、厚板溶接では5〜8kWのレーザ加工機が通常使われるが、本溶接法を用いれば3〜5kWのレーザ加工機で厚板溶接を行うことができるようになる。
レーザ光1を溶接進行方向の前方から被溶接母材3に照射し、被溶接母材3の溶接進行方向の後方よりホットワイヤ2を溶融池5にレーザ光1の照射角度と近似した角度で立てて挿入することで溶融池5に母材3に対する急傾斜面(図4の傾斜角度αの傾斜面)を形成し、同時にレーザ光1を溶融池5の溶接方向前方の表面に照射し、溶融池5の表面でのレーザ光1の反射光1’が溶融池5の前方(溶融池5の溶接方向の前半部、図4に示す溶融池5のワイヤ2が挿入している右側の傾斜面側で溶融池5の表面に照射する。
レーザ光1の焦点を外した距離で溶融池5にレーザ光1を照射させる場合に、レーザ光1を母材3の表面に対して傾斜角度α(図4)の傾斜面を有する溶融池5に向けてレーザ光1を照射する。このようにレーザ光1を、その焦点を外した距離で溶融池5に照射させることで、レーザエネルギーの一部が溶融池5に吸収され、レーザ光1の一部が溶融池5の表面で母材3の表面側に向けて反射し、母材3の前記溶融池5の前方部分を常に先行して溶融されるために溶融池5の通過で完全に被溶接母材3を溶融することができる。こうして溶接がスムーズに進行し、溶接の安定性、溶接欠陥の防止に好結果をもたらす。
また、本発明ではレーザ光1をプラス側又はマイナス側に焦点を外した距離で溶融池5の表面に照射する必要がある。これは、溶融池5の表面にレーザ光1の焦点を当てると、ビード4の断面形状が図10に示すように深くなるので、この現象を避けるためである。このようにレーザ光1を焦点を外した距離で溶融池5に照射させることで図8に示すような断面半円形状のビード4が得られる。
ホットワイヤ2は溶融池5にレーザ光1の母材表面に対する照射角度と同じかまたは近似した角度で立てて挿入することで、母材3の表面に対して溶融池5の表面が急傾斜(図4に示す傾斜角度α)を形成する。ワイヤ2にレーザ光1を当てなくても加熱しているため溶融できる。また、ホットワイヤ2の温度が融点近傍より低いと、溶融池5へのホットワイヤ2の挿入時に溶融池5より熱を奪うため、溶融池5による壁の溶融が不完全になりビード形状が凹形状にならず次層溶接時に融合不良を発生する。
図5に示すように母材3の表面に対して溶接進行方向前側に傾斜させたワイヤ挿入角度θ2を90度〜120度、望ましくは100〜110度で溶融池5の上方中央部に挿入することが必要である。前記ワイヤ挿入角度θ2が90度未満であるとレーザ光1とワイヤ2が干渉し、また前記ワイヤ挿入角度θ2が120度を超えると溶融池5の表面の前記傾斜角度αが小さくなり、レーザ光1の反射光1’を溶融池5の近傍に照射できなくなり、両開先壁7から開先底8の溶融が不完全になり融合不良が発生する。また、ワイヤが溶融池の後方に挿入されるため、挿入と同時に凝固してビードが凸状になる。
また、図5に示すように、溶融池5の表面におけるワイヤ2の挿入位置も重要なパラメータになり、前記ワイヤ2の溶融池5の表面での挿入位置(ワイヤ2の中心軸と母材表面との交点)はレーザ光1の中心軸と溶融池5の表面との交点より1〜3mmだけ溶接進行方向の後側とする。ワイヤ2の溶融池5の表面での挿入位置が3mmより大き過ぎると溶融池5の端にワイヤ2が挿入されることになり、ビード形状が凸形状になって次層の溶接時に開先壁7の溶融が難しくなり、融合不良発生の原因になる。逆にワイヤ2の溶融池5の表面への前記挿入位置が1mmより小さいとワイヤ2にレーザ光1が当たるようになり、ワイヤ2がレーザ光1により溶融されて溶断する現象が発生し、溶融池5の表面が波打ち溶接現象により乱れてビード4の表面に凹凸が発生する。ワイヤ2の前記挿入位置は2mm前後が最良であった。
レーザ光1を母材3の表面に対して急斜面を形成した溶融池5に照射すると、図4に示すようにレーザエネルギーの一部が溶融池5に吸収され、レーザ光1の一部が溶融池5の表面で反射し、溶融池5の前方又は両側の開先底8と開先壁7に照射されて一部溶融し、図1又は図2に示す先行溶融池5aを形成し、溶融池5の通過で開先底8と開先壁7を完全に溶融することができる。
レーザ光1の中心軸の母材3の表面に対して溶接進行方向前側に傾斜させた傾斜角度θ1は80度〜110度が最適で、溶融池5の前記傾斜角度α(パラメータは溶接速度、レーザパワー、ワイヤの送給量、ワイヤの挿入角度θ2)により変更する必要がある。
ステンレス鋼を用いた代表的溶接試験条件は、レーザパワー3kW、溶接速度0.5m/min、ワイヤ径1.2mm、ワイヤ送給速度6m/minで溶接ビードを施工することができた。
こうして、本実施例により、レーザパワー3kWのレーザ加工機でY型開先の2層目のV型開先の施工を安定して行うことができる。通常のレーザ溶接ではレーザ光1で母材3とワイヤ2の両方を溶融するエネルギーを供給する必要があるが、ホットワイヤ2の適用によりレーザエネルギーはほとんどが母材3の溶融に当てられるため、レーザパワーを抑えられ高価なレーザ加工装置の設備費を従来より低減できる。
また、本実施例のレーザ溶接方法では母材3の溶込みが小さく、入熱も小さいことから熱影響部が小さく、得られた溶接材の靭性などの継手品質が向上し、歪の小さい溶接が可能であり、溶接で発生しやすい凝固割れを抑制することができる。
図2には、本発明のレーザ溶接方法の他の実施例の模式図を示す。本実施例はレーザ光1の焦点外し距離をマイナス(レーザ光1の焦点が溶融池5の内部にある)にして照射する。この場合に図1に示すレーザ光1の焦点外し距離をプラスにした場合と同様の効果が得られる。レーザ光1の焦点外し距離をマイナスにすると溶融池5の表面で反射したレーザ光1の範囲が図1に示す焦点外し距離をプラスにした場合より小さく溶融池5に近い位置にレーザ光1が照射されることになる。溶融池5の表面の母材3の表面に対するレーザ光1の傾斜角度θ1、レーザ光1の照射パワーに応じて焦点外し距離をプラスにするかマイナスにするかを選択することができる。
肉厚が20mm程度の溶接であってもホットワイヤとレーザを組合せるレーザ溶接法により、5kW以下のレーザ加工機で、高品質で高能率な溶接が可能となる。
1 レーザ光 2 ワイヤ
3 母材 4 溶接ビード
5 溶融池 5a 先行溶融池
6 開先 7 開先壁
8 開先底 11 ホットワイヤ電源
12 給電部 13 セラミックガイド
14 焦点 15 集光レンズ
16 キーホール

Claims (3)

  1. 溶加材として溶接ワイヤ(2)を用いて開先加工した被溶接母材(3)を溶接するレーザ溶接方法において、
    レーザ光(1)を該レーザ光(1)の焦点を外して前記開先加工した被溶接母材(3)に照射して該被溶接母材(3)を溶融すると共に、
    前記溶接ワイヤ(2)を該溶接ワイヤ(2)と前記被溶接母材(3)間に通電して該ワイヤ(2)の抵抗発熱により加熱するホットワイヤとし、
    前記レーザ光(1)を被溶接母材(3)表面に対して照射角度θ 80〜100度で照射し、
    前記レーザ光(1)の後方に前記レーザ光(1)の照射角度と近似した被溶接母材(3)表面に対する傾斜角度で溶接ワイヤ(2)を前記被溶接母材(3)の溶融により形成した溶融池(5)に挿入し、
    前記被溶接母材(3)の溶融および前記溶接ワイヤ(2)の挿入により形成された溶融池(5)にできる急傾斜面からのレーザ光(1)の反射光(1’)を前記溶融池(5)の溶接方向前方照射して溶融しながら溶接する
    ことを特徴とするレーザ溶接方法。
  2. 前記被溶接母材(3)の溶融および前記溶接ワイヤ(2)の挿入により形成した溶融池(5)に対して照射したレーザ光(1)の反射光(1’)を前記溶融池(5)の溶接方向前方に照射することにより、該溶融池(5)に先行する先行溶融池(5a)を連続的に形成しながら溶接することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接方法。
  3. 被溶接母材(3)の表面に対してレーザ光(1)の照射角度θ が80〜100で、溶接ワイヤ(2)の溶融池(5)への挿入角度θ が被溶接母材(3)の表面に対して90〜120で、溶接ワイヤ(2)の中心線と被溶接母材(3)表面の交点とレーザ光(1)の中心線と被溶接母材(3)表面の交点との間隔が1〜3mmであることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接方法。
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