JP2020015053A - 溶接方法、溶接装置、および溶接鋼板 - Google Patents

溶接方法、溶接装置、および溶接鋼板 Download PDF

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俊介 久保山
鈴木 康之
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Abstract

【課題】亜鉛メッキ鋼板を重ねてレーザ光を照射して溶接する場合にスパッタの発生を抑制する溶接方法を提供する。【解決手段】第1の鋼板と第2の鋼板を重ね、エネルギービームを走査方向に移動させながら前記第1の鋼板に照射し、第1の鋼板と第2の鋼板を溶接する。エネルギービームが第1の鋼板を貫通して第2の鋼板を照射し、第1の鋼板と第2の鋼板をまたぐ第1の溶融池を形成する。第1の溶融池の少なくとも一部が溶融状態を維持している間に、第1の溶融池を照射しないように前回の照射位置から距離Bだけ離れた位置をエネルギービームで照射し、第2の溶融池を形成するとともに、第1の溶融池と第2の溶融池とを接続する拡大された溶融部を形成する。第1の溶融池の第1の鋼板の表面における半幅をAとしたとき、B>2Aである。【選択図】図3

Description

本発明は、溶接方法、溶接装置、および溶接鋼板に関する。特に、重ね合わせた鋼板をレーザにより加熱して重ね合わせ溶接をする場合に、溶融金属の飛散によるスパッタの発生を低減するとともに溶接強度とエネルギー利用効率を向上する技術に関する。
近年、複写機やプリンターをはじめとする多くの分野において、耐食性に優れためっき鋼板を重ね合わせて溶接した部品が用いられている。例えば、複写機やプリンターの枠体は、安価な亜鉛めっき鋼板等の被溶接材を重ね、又は突合せて、溶接で接合して形成する場合が多い。かかる場合には、他の溶接法と比べて入熱量が低く抑えられ、低歪みかつ高精度の高速溶接が可能なレーザ溶接が適用される場合が多い。
レーザ溶接では、被溶接材の表面にレーザビームを照射するが、照射されるパワー密度(単位面積あたりのレーザ出力)が一定以上になると、金属表面の温度が金属の沸点以上になり、金属蒸気がレーザ照射点から激しく蒸発し、一部はプラズマ化する。照射点ではその蒸発の反動力で溶融した金属の表面が凹み、凹みの中をレーザビームが反射を繰り返しながら伝播してゆく。すると、さらに凹みが深化してキーホールが形成され、深い溶融領域を短時間で形成できる。
レーザ光の照射点に形成されるキーホールからは高速の金属蒸気が噴き出しており、キーホールの周囲には溶融池と呼ばれる金属が溶融した領域が形成される。尚、溶融池は、自然界に存在するいわゆる池のような形状に限らず、レーザの照射条件によりさまざまな形状を取りえる。照射されたレーザ光の多くは、キーホール内を伝播して底面にまで到達してこの部分を加熱するため、被溶接材の内部において溶融金属の温度が最も高くなる。キーホール内部からの金属の蒸発量は多く、溶融金属には高い圧力がかかるため、溶融金属には対流が生じるが、対流は安定するとは限らず変動する場合がある。対流が変動すると、溶融金属の一部が高速蒸気の吹き出しに巻き込まれ、周囲に飛散する現象、すなわちスパッタが発生する場合がある。
また、溶接の強度を確保するために、固定点にレーザ光を照射して点溶接するのではなく、ラインに沿ってレーザ光を走査しながら照射して線状の溶接ビードを形成する場合が多いが、これによりさらにスパッタが発生しやすくなる場合がある。レーザ光照射位置の移動に伴って、キーホールの生成やキーホール周囲の溶融池の流動が不安定になるからである。特に、レーザ光走査方向の先端部分で溶けた溶融金属は、走査に追随して急速に生成されるキーホールからの高速蒸気の吹き出しに巻き込まれやすいため、スパッタが発生しやすくなる。また、キーホールが膨張と収縮を繰り返す等して溶融池の流動が不安定になると、酸化防止のためのシールドガスや空気が溶融金属に取り込まれて気泡が発生し、気泡がトラップされたまま凝固してポロシティを生じる場合もある。
また、特に亜鉛めっき鋼板を重ね合わせてレーザ溶接する場合には、重ねあわせ部の亜鉛めっきがレーザ加熱により気化して溶融金属を吹き飛ばすために、スパッタが発生する場合があった。
そこで、スパッタを抑制する試みとして、例えば特許文献1には、スキャナーを用いてレーザビームを高速で回転させながらビード形成方向に沿って螺旋状に走査する溶接方法が開示されている。
国際公開第2015/107664号
特許文献1によれば、レーザビームを螺旋状に走査することにより、表面側の幅が広い溶融池を形成することができる。溶融池は、レーザビームの進行方向に対して回転しながら流動し、キーホールの開口部後方には凹みが生じる。これにより、キーホールの開口部を後方から塞ぐような溶融金属の流動が抑制され、開口部付近でレーザビームが溶融金属を直接照射することが起こらないため、スパッタを低減できることが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、レーザビームを螺旋状に走査するため、走査軌道が交差する部分では、一旦形成された溶融池をレーザビームが再度照射することになり、局部的に急激な蒸発が発生して溶融金属を飛散させる場合があり得る。
また、レーザビームの螺旋状の走査にともない、被溶接材の各部は間欠的に加熱されるため、時間的に見ると各部の温度変動が複雑になり、溶融金属は不安定に流動する。螺旋走査に同期して振動する波動が溶融池に発生する可能性もあり、キーホールの周囲では、むしろ噴出する高速蒸気の吹き出しに巻き込まれ易くなる場合がある。
したがって、特許文献1に記載された方法では、スパッタの発生を、必ずしも十分に抑制できるわけではなかった。また、レーザビームが再度照射された部分は過度に加熱されることになり、エネルギーの利用効率が必ずしも良くはなかった。
本発明は、第1の鋼板と第2の鋼板を重ね、エネルギービームを走査しながら前記第1の鋼板に照射し、前記エネルギービームの照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第1の溶融池を形成する第1工程と、前記第1の溶融池の少なくとも一部が溶融状態を維持している間に、前記第1の溶融池を照射しないように前記第1工程における照射位置から距離Bだけ離れた位置をエネルギービームを走査しながら照射し、照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第2の溶融池を形成するとともに、前記第1の溶融池と前記第2の溶融池とを接続する拡大された溶融部を形成する第2工程と、を有し、前記第1の溶融池の前記第1の鋼板の表面における半幅をAとしたとき、B>2Aである、ことを特徴とする溶接方法である。
また、本発明は、第1の鋼板と第2の鋼板をラインに沿って溶接した溶接鋼板であって、溶接部を前記ラインと直交する方向で切った断面において、前記第2の鋼板には前記第1の鋼板と反対方向に伸びる複数のビード先端部が、互いに距離Bを隔てて形成されており、前記第1の鋼板の表面のビード端部と、前記ビード端部にもっとも近い前記ビード先端部の、鋼板主面方向の距離をAとしたとき、B>2Aの関係を満たすことを特徴とする溶接鋼板である。
また、本発明は、第1の鋼板と第2の鋼板を重ねて溶接する溶接装置であって、エネルギービームを走査しながら前記第1の鋼板に照射し、前記エネルギービームの照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第1の溶融池を形成し、前記第1の溶融池の少なくとも一部が溶融状態を維持している間に、前記第1の溶融池を照射しないように前回の走査における照射位置から距離Bだけ離れた位置をエネルギービームを走査しながら照射し、照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第2の溶融池を形成するとともに、前記第1の溶融池と前記第2の溶融池とを接続する拡大された溶融部を形成し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板を溶接するが、前記第1の溶融池の前記第1の鋼板の表面における半幅をAとしたとき、B>2Aであるように前記エネルギービームを照射する、ことを特徴とする溶接装置である。
本発明によれば、レーザビームを複数回走査してビードを形成する際、レーザビームから投入する熱を有効に活用して幅広の溶融部を生成するため接合強度が高まり、溶接時のエネルギーの利用効率に優れる。また、キーホールの生成やキーホール周囲の溶融池の流動が安定になり、スパッタの発生を抑制することができ、特徴的な形状の溶接ビードを形成する。
実施形態の2枚の亜鉛メッキ鋼板の溶融状態を示す模式的な断面図。 (a)実施形態の第1工程を示す模式的な断面図。(b)実施形態の第2工程を示す模式的な断面図。(c)実施形態の拡大された溶融部を示す模式的な断面図。 実施形態の溶接ビードの断面形状を示す模式的な断面図。 実施例と比較例の評価結果をまとめた表。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態である溶接方法と溶接装置、および溶接鋼板について説明する。実施形態では、一例として複写機やプリンター製品等に用いられる枠体を、耐食性に優れためっき鋼板を重ね合わせて溶接して形成する。例えば、板厚1.0mmの亜鉛メッキ鋼板を2枚用いて製造する重ね合わせ溶接枠である。
図1は、実施形態におけるレーザビームの照射方法と、被溶接物である2枚の亜鉛メッキ鋼板の溶融状態を示す模式的な断面図である。図1は、レーザ光の走査方向と直交する方向に沿って被照射部位を切った断面図であり、レーザ光は紙面の手前から奥の方向に走査される。図中の、1は第1の鋼板である前側鋼板、2は第2の鋼板である後側鋼板、3はレーザ光、4はキーホール、5は溶融池、6はスペーサであるシム、7は隙間、8は金属蒸気流である。前側鋼板1と後側鋼板2は、例えば亜鉛メッキ鋼板を用いる。
実施形態では、不図示のレーザ光源からエネルギービームとしてレーザ光3を照射するが、レーザ光源としては例えば、波長が1070〜1080[nm]のファイバーレーザを用いることができる。これ以外の、他の波長のレーザ光を使用してもよい。不図示のレーザ発振器からレーザ光を発生させ、ビームスキャナー及び集光レンズにより集光し、上記の亜鉛メッキ鋼板の重ね合わせ枠体表面にレーザ光3を照射する。ビームスキャナーではなく、ファイバーレーザを接続した光強度分布変換光学系を内蔵した集光光学系をロボットに取り付けて駆動し、枠体表面にレーザ光を照射しても良い。
レーザ光3の照射点では、温度の上昇に伴って表面の亜鉛が溶融・蒸発し、次いで基材である鋼板が溶融し蒸発する。レーザ光3の照射点の中心付近では、金属が蒸発し、蒸発の反力で溶融池が凹形状になって、キーホール4と呼ばれる孔が形成され、その周囲に溶融池5が広がる。レーザ光の照射に伴って、キーホール4が次第に深くなり前側の亜鉛メッキ鋼板を貫通し、重ね合わせ部の亜鉛も溶融・蒸発する。本実施形態では、2枚の亜鉛メッキ鋼板の間に、シム6などを用いて隙間7を設けることで、亜鉛蒸気をこの隙間7から逃がし、溶融した鋼板が吹き飛ばされてスパッタが発生することが無いようにしている。このようにして、キーホール4は前側鋼板1を貫通し、後側鋼板2に至る。この際には、前側鋼板1と後側鋼板2の間にも溶融池5が形成され、2枚の鋼板は溶接される。
線状のビードを形成して溶接強度を高めるために、レーザ光3は鋼板の表面を紙面の手前から奥の方向に線状の軌跡を描いて走査され、前側鋼板1と後側鋼板2には線状の溶接ビードが形成され溶接される。
この時、レーザ光のフルエンス(単位面積当たりの光強度)が高いほど短時間に深いキーホールが形成でき、レーザ光を高速に走査しても溶接が可能となるが、走査速度を高くするとキーホールの周囲に形成される溶融金属の量が減少する。このため、原理的には、キーホール4から噴出する高速の金属蒸気に溶融金属が巻き込まれて飛散することが起こりにくくなり、スパッタの発生量は減少すると考えられる。
しかし、現実には、限られた出力のレーザ発振器から高フルエンスのレーザ光を得るにはビーム径を小さく絞る必要があり、キーホール4および周辺の溶融金属で形成される溶接ビードの幅も通常は狭くなる。このため、鋼板の接合面積が小さくなり、接合強度が低下してしまう。接合強度を向上するためには、レーザ光の走査距離を伸ばして溶接ビードの長さを大きくすれば良いが、長さに応じて結局はスパッタの発生量も増加してしまう。
そこで、本実施形態では、まず図2(a)に示すように、紙面手前から奥に向かってレーザ光3をライン状に走査する第1工程を行う。レーザ光のフルエンスを高くして、例えば6[mm]の長さの溶接ビードを、数十[msec]以下の走査時間で形成する。形成した溶融池の大きさにもよるが、レーザ光の照射後に溶融池が冷却されて固まるまでには、数百[msec]以上の時間がある。
そこで、第1工程の後に、溶融部9の少なくとも一部がまだ溶融状態を維持している間に、図2(b)に示すように、第1工程で形成した溶融部9には接しないが近接した位置を、紙面手前から奥に向かってレーザ光3でライン状に走査する。すなわち、第2工程として、第1工程における照射位置から距離B(図3参照)だけ離れた位置をレーザ光で照射する。溶融部9を照射してしまうと、溶融金属の温度が急上昇してスパッタが発生する原因になるので、溶融部9から所定の距離Bだけ離れた位置にレーザ光3を照射してゆく。
本実施形態では、適宜の距離Bだけ離れた位置をレーザ光3で照射することにより、溶融部9を形成するために第1工程で入射した熱を有効活用し、第2工程でキーホールの周囲に形成された溶融部10を拡大することができる。
すなわち、図2(c)に示すように、第1工程で形成した第1の溶融池である溶融池11と、第2工程で形成した第2の溶融池である溶融池12の間に、これらと一体化した拡大された溶融部13を形成することができる。拡大された溶融部13は、前側鋼板1と後側鋼板2にまたがって形成され、冷却されて固化した後は、接合部として機能する。高速加熱プロセスであるレーザ溶接の特質を利用し、離間した位置に独立した2ラインの溶接ビードを形成する場合と比較して、同じ投入熱量でも拡大された溶融部13の分だけ大きな溶接ビードを形成するのである。尚、第2工程で照射する位置が第1工程の照射位置から離れすぎると、溶融池11および溶融池12と一体化した拡大された溶融部13を形成することができず、2つの溶接ビードが互いに孤立してしまうので、適宜の距離だけ離すようにする。
すなわち、レーザ光の照射位置を離す距離は、0.3[mm]以上、かつ3[mm]以下が望ましい。0.3[mm]未満になると、後走査のレーザ光が前走査で形成された溶融池を照射したり挙動をしたりしてスパッタの発生が増加し、3[mm]を超えると拡大された溶融部がうまく形成されないからである。
ここで、比較のために特許文献1に記載されたレーザ溶接法を検討すると、特許文献1ではレーザを高速に螺旋状に走査して接合面積を広げ、溶接強度を増加していた。溶接時間を短くするためには溶融池が固まる前にレーザ光を重ねて照射する必要があるが、この場合、溶融池にレーザ光を直接照射することになり、溶融池にキーホールを作ることになってスパッタの発生量が増加する可能性があった。更に、レーザ光の照射が重なった箇所は溶接に必要な熱量を大幅に上回ることになり、エネルギー効率の低下や金属蒸発量やスパッタの増加やブローホールが拡大するなどの問題が生じる。上記の課題を改善する目的で、仮に溶融池が固まってからレーザ光を照射する場合には、溶融池が固まるまでに数百msec以上かかるため、溶接に要する時間が大幅に増加する。また、エネルギー効率も大幅に低下する。
これに対して、図2(a)〜図2(c)に示す本実施形態の溶接方法では、第1工程で形成した溶融池にレーザ光を照射しないように所定距離だけ離間させ、第1工程で形成した溶融池が固まる前にレーザ光を照射することを特徴としている。この結果、溶融池をレーザ光で照射することによってスパッタの増大を招くことはない一方で、レーザ光による入熱を効率よく利用して溶融池を拡大させて接合面積を増やし、接合強度を増加することができる。この時レーザ光は高速に走査しているため、キーホール4から吹き出す蒸発ガスの量は小さく、スパッタの発生量を少なく抑えることが可能となる。
図3に、本実施形態の溶接法に基づいてレーザ溶接を行った亜鉛めっき鋼板の、冷却固化した後の溶接部の断面形状を示す。図2(a)〜図2(c)では、レーザ光を2ライン走査した例を示したが、図3の例は3ライン走査して溶接ビード17を形成して前側鋼板1と後側鋼板2を溶接したものである。
3つのラインに沿ってレーザ光を走査したことにより、後側鋼板2側に形成された溶接ビード中には、前側鋼板1と反対方向に伸びる3つの先端部が、ビード先端部14、ビード先端部15、ビード先端部16として形成されている。ビード先端部14とビード先端部15の間、およびビード先端部15とビード先端部16の間には、図2(c)で説明した拡大された溶融部13が形成され、これらは溶接ビード17として一体化している。
図示のように、溶接ビード17の前側鋼板1における端部と後側鋼板2におけるビード先端部14との鋼板主面方向の距離をAとし、後側鋼板2におけるビード先端部14とビード先端部15の距離をBとしたとき、B>2Aの関係を満たすことを特徴とする。また、図では表示していないが、反対側のビード端部からビード先端部16までの距離をAとし、ビード先端部15とビード先端部16の距離をBとしたときにも、B>2Aの関係を満たしている。尚、Aは溶接時の第1工程で形成した溶融池の前側鋼板1の表面における溶融部の半幅ということもでき、Bは第1工程におけるレーザ光の照射位置と第2工程における照射位置の距離だと言い換えることもできる。
ビード先端部を隔てる距離Bは、0.3[mm]以上、かつ3[mm]以下が望ましい。0.3[mm]未満になるとスパッタが増加し、3[mm]を超えると接合部のビード断面積が大きくならないからである。
本実施形態では亜鉛メッキ鋼板を例示したが、その他の金属や金属と樹脂の重ね合わせ溶接にも適用可能である。また、重ね合わせ溶接だけではなく、突き当て溶接にも適用可能である。
本実施形態では、時間を空けずに所定距離をおいてレーザ光を複数回走査して溶接するため、ビード端部からビード先端部14までの距離をA、ビード先端部14とビード先端部15の距離をBとしたとき、B>2Aの関係を満たすという特徴を有する。そして、スパッタの付着が少なく、投入する熱量のわりに大きな断面積の溶接ビードが形成され、接合強度が強く、溶接時間が短いという特徴を有する。
以下に、本実施形態の具体的な実施例と、比較例を、図を参照しながら説明する。
[実施例1]
本実施例のレーザ溶接では、板厚1[mm]の亜鉛めっき鋼板を0.3[mm]厚のシムを挟んでギャップを管理して2枚重ね合わせ、波長が1070[nm]のファイバーレーザを用いた。また、溶融金属の酸化を防止するために、シールドガスとして窒素を用いる。なお、シールドガスとしては、窒素に限定されるものでなく、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)などの不活性ガス、またはこれら混合ガスを使用してもよい。
溶接条件として、レーザ発振器のレーザ出力を3000[W]、ビーム径をφ0.1[mm]とし、パワー密度(単位面積当たりのレーザ出力)を1.0×10[W/cm]とする。溶接速度すなわちレーザ光の走査速度を12[m/min]、溶接ビードの長さは3[mm]とし、シールドガスの流量は、5.0[l/min]〜30.0[l/min]の範囲で適宜設定することができる。
上記条件で、レーザ光を1.0[mm]の距離を離して平行に走査して重ね合わせた鋼板に照射し、接合体を得た。この接合体の溶接前後の質量変化からスパッタ量の測定を行った結果、実施例1におけるスパッタ量は約3.4[mg]であった。次に、得られた2つの鋼板からなる接合体について、溶接強度を評価するために引張せん断試験を実施した。引張せん断試験において、接合体の引張せん断強度は約402[kgf]であった。
上記の溶接条件で実施した溶接ビード形状は、図3におけるAが0.4[mm]、Bが1.0[mm]であり、B>2Aの関係を満たした。
[実施例2]
実施例2では、レーザ光を走査する際に離す距離を1.0[mm]から2.0[mm]に変更した以外は、実施例1と同様の条件で2枚の鋼板を接合した。このようにして形成された接合体についても、実施例1と同様にスパッタ量測定と引張せん断試験を実施した。スパッタ量は約3.7[mg]、引張せん断強度は約373[kgf]であった。
上記の溶接条件による実施例2の溶接ビード形状は、図3におけるAが0.4[mm]、Bが2.0[mm]であり、B>2Aの関係を満たした。
[比較例1]
比較例1では、レーザ光を走査する際に離す距離を6.0[mm]にした以外は、実施例1と同様の条件で2枚の鋼板を接合した。このようにして形成された接合体についても、実施例と同様にスパッタ量測定と引張せん断試験を実施した。スパッタ量は約3.6[mg]、接合体の引張せん断強度は約297[kgf]であり、実施例と比較してスパッタ量は同等であるが、接合強度が弱いことがわかる。
比較例1のレーザ溶接では、レーザ光を2回走査する際に離す距離が大きいため、図2(c)で説明した拡大された溶融部13を形成することができず、2つの溶接ビードは一体化せず、溶接ビードの断面積の合計が実施例よりも小さかった。このため、接合強度が弱かった。
[実施例と比較例のまとめ]
図4に、実施例1、2と比較例1の、レーザ光の走査ピッチ、スパッタ量、接合強度、距離A、距離Bをまとめて表に示す。
実施例1、2は、いずれも比較例1とスパッタ発生量は同程度だが、同じ出力のレーザを用いたにもかかわらず比較例1よりも接合強度が大きい。
すなわち、同じ投入エネルギーであれば比較例1よりも接合強度を大きくすることができ、同じ接合強度を実現するのであればスパッタ量および投入エネルギーを比較例1よりも小さくすることができる。
以上のように、本発明によれば、レーザ光を離間させて複数回走査して照射するが、前回の走査で形成された溶融池から所定距離をおいた位置を後の走査で照射することにより、前回の走査の余熱を用いて拡大された溶融部を形成する。これにより接合部の溶接ビードの断面積を大きくすることができ、投入エネルギーに対する溶接強度が強く、スパッタの発生量が少ない溶接を実現することができた。
[他の実施形態]
本発明の実施形態は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形や組み合わせが可能である。
例えば溶接する対象は亜鉛メッキ鋼板に限られるわけではなく、その他の金属や金属と樹脂の重ね合わせ溶接にも適用可能である。また、重ね合わせ溶接だけではなく、突き当て溶接にも適用可能である。
本実施形態の溶接装置では、ビーム径を小さく絞って照射する場合、シングルモードレーザを使用することが望ましいが、短時間で深いキーホールが形成できるフルエンスが得られれば良く、マルチモードレーザを使用することも可能である。
1・・・前側鋼板/2・・・後側鋼板/3・・・レーザ光/4・・・キーホール/5・・・溶融池/6・・・シム/7・・・隙間/8・・・金属蒸気流/9・・・第1工程で形成した溶融部/10・・・第2工程で形成した溶融部/11・・・第1工程で形成した溶融池/12・・・第2工程で形成した溶融池/13・・・拡大された溶融部/14、15、16・・・ビード先端部/17・・・溶接ビード

Claims (9)

  1. 第1の鋼板と第2の鋼板を重ね、
    エネルギービームを走査しながら前記第1の鋼板に照射し、前記エネルギービームの照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第1の溶融池を形成する第1工程と、
    前記第1の溶融池の少なくとも一部が溶融状態を維持している間に、前記第1の溶融池を照射しないように前記第1工程における照射位置から距離Bだけ離れた位置をエネルギービームを走査しながら照射し、照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第2の溶融池を形成するとともに、前記第1の溶融池と前記第2の溶融池とを接続する拡大された溶融部を形成する第2工程と、を有し、
    前記第1の溶融池の前記第1の鋼板の表面における半幅をAとしたとき、
    B>2Aである、
    ことを特徴とする溶接方法。
  2. 前記距離Bは、0.3mm以上、かつ3mm以下である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
  3. 前記第1の鋼板と前記第2の鋼板は亜鉛メッキ鋼板で、
    前記第1の鋼板と前記第2の鋼板はシムを挟んで重ねられる、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の溶接方法。
  4. 第1の鋼板と第2の鋼板をラインに沿って溶接した溶接鋼板であって、
    溶接部を前記ラインと直交する方向で切った断面において、
    前記第2の鋼板には前記第1の鋼板と反対方向に伸びる複数のビード先端部が、互いに距離Bを隔てて形成されており、
    前記第1の鋼板の表面のビード端部と、前記ビード端部にもっとも近い前記ビード先端部の、鋼板主面方向の距離をAとしたとき、
    B>2Aの関係を満たす、
    ことを特徴とする溶接鋼板。
  5. 前記距離Bは、0.3mm以上、かつ3mm以下である、
    ことを特徴とする請求項4に記載の溶接鋼板。
  6. 前記第1の鋼板と前記第2の鋼板は亜鉛メッキ鋼板であり、
    前記第1の鋼板と前記第2の鋼板はシムを挟んで重ねられている、
    ことを特徴とする請求項4または5に記載の溶接鋼板。
  7. 第1の鋼板と第2の鋼板を重ねて溶接する溶接装置であって、
    エネルギービームを走査しながら前記第1の鋼板に照射し、前記エネルギービームの照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第1の溶融池を形成し、
    前記第1の溶融池の少なくとも一部が溶融状態を維持している間に、前記第1の溶融池を照射しないように前回の走査における照射位置から距離Bだけ離れた位置をエネルギービームを走査しながら照射し、照射部を溶融させてキーホールを形成し、前記キーホールを照射する前記エネルギービームが前記第1の鋼板を貫通して前記第2の鋼板を照射し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板をまたぐ第2の溶融池を形成するとともに、前記第1の溶融池と前記第2の溶融池とを接続する拡大された溶融部を形成し、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板を溶接するが、
    前記第1の溶融池の前記第1の鋼板の表面における半幅をAとしたとき、
    B>2Aであるように前記エネルギービームを照射する、
    ことを特徴とする溶接装置。
  8. 前記距離Bは、0.3mm以上、かつ3mm以下である、
    ことを特徴とする請求項7に記載の溶接装置。
  9. 前記第1の鋼板と前記第2の鋼板は亜鉛メッキ鋼板で、
    前記第1の鋼板と前記第2の鋼板はシムを挟んで重ねられる、
    ことを特徴とする請求項7または8に記載の溶接装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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