JP4997023B2 - 制御棒およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、制御棒およびその製造方法に係り、特に、沸騰水型原子炉に用いるのに好適なタイロッド、ハンドル、下部支持部材およびシースを有する制御棒およびその製造方法に関する。
沸騰水型原子炉に用いられる制御棒は、原子炉の運転中において燃料集合体が装荷された炉心に挿入されて原子炉出力を制御する。制御棒は、運転サイクルの末期には炉心から全て引抜かれる。その制御棒の一例が、特開平9−61576号公報に記載されている。この制御棒は、ブレードを構成するシース内に中性子吸収部材である扁平なハフニウム筒状体を配置している。2本のハフニウム筒状体が制御棒の軸方向に存在する。特開平9−61576号公報は、その制御棒の製造について以下のように説明している。
ハンドルがタイロッドの上端部に取り付けられる。ハンドルは、ハンドル本体およびハンドル本体から下方に向かって伸びる上部舌状部を有する。下部支持部材本体および下部支持部材本体から上方に向って伸びる下部舌状部を有する下部支持部材が、タイロッドの下端部に取り付けられる。ハンドル、タイロッドおよび下部支持部材の集合体をフレームと称する。
ハンドルの上部舌状部が上部ハフニウム筒状体の上端部に挿入され、上部ハフニウム筒状体が上部舌状部にピンで固定される。下部支持部材の下部舌状部が下部ハフニウム筒状体の課端部に挿入され、下部ハフニウム筒状体が下部下状部位にピンによって固定される。上部舌状部に取り付けられた複数の上部ハフニウム筒状体、および下部舌状部に取り付けられた複数の下部ハフニウム筒状体が、横断面がU字状であるステンレス鋼製のシース内に挿入される。その後、シースの上端、下端および側端が、ハンドル、下部指示部材およびタイロッドにそれぞれ溶接される。シースの側端部には制御棒の軸方向に複数のタブ(突起部)が形成されており、これらのタブがタイロッドに溶接される。
シースおよび複数のハフニウム筒状体で1つのブレードが形成される。制御棒は、タイロッドから四方に伸びる4枚のブレードを有する。沸騰水型原子炉で用いられる制御棒は、横断面が十字形をしている。
特開平9−61576号公報
一般に、溶接を行うと溶接部には圧縮の塑性ひずみが発生する。圧縮塑性ひずみは、変形が拘束されない部位では収縮変形を生じさせる。一方、変形が拘束される部位では引張り残留応力が発生する。
上記の制御棒においては、最初に、タイロッドとシースのタブとの溶接が行われる。この溶接部には引張残留応力、およびその溶接部の周囲には圧縮残留応力がそれぞれ発生する。次に、ハンドルとシースおよび下部支持部材とシースのそれぞれの溶接が行われる。これらの溶接によって生じる、制御棒軸方向におけるシースの変位が、上記タブとタイロッドの溶接部で拘束されるため、シースの広い領域に渡って引張残留応力が発生する。
沸騰水型原子炉では、制御棒は運転期間中に中性子照射を受ける。発生因子である環境、材料および引張応力が重畳すると応力腐食割れ(SCC)が発生することがある。さらに発生したき裂が進展することがある。SCCは、3つの発生因子のうち一つを取り除くことにより発生を抑制できることが知られている。引張残留応力を低く抑え、さらには圧縮応力化することは、SCCの発生を抑制するため、および万一発生した場合であってもその進展を止めるために重要である。
本発明の目的は、シースにおけるき裂の発生を防止できる制御棒およびその製造方法を提供する。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、シース部材のハンドル側の端部に軸方向の圧縮残留応力が付与されていることにある。この端部に軸方向の圧縮残留応力が付与されているので、シース部材におけるき裂の発生を防止することができる。
上記した目的は、シース部材の軸方向全長に亘って軸方向の圧縮残留応力が付与されていることによっても達成できる。シース部材の軸方向全長に亘って軸方向の圧縮残留応力が付与されているので、シース部材におけるき裂の発生を防止することができる。
上記した目的は、シース部材とタイロッドの溶接が終了した後、およびシース部材とタイロッド、ハンドルおよび下部支持部材の溶接が終了した後のいずれかにおいて、タイロッドに熱入射を行ってタイロッドの一部をタイロッドの軸方向に溶融させ、タイロッドの溶融した部分を凝固させてその軸方向に伸びる溶融部をタイロッドに形成することによっても達成できる。溶融部の形成によってタイロッドの軸方向の収縮変形が大きくなり、シース部材に軸方向における収縮変形をもたらす。この結果、シース部材に圧縮残留応力が付与され、シース部材にき裂が発生することを防止できる。
本発明によれば、シース部材にき裂が発生することを防止することができる。
本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例を、図1および図2を用いて説明する。本実施例の制御棒1は、沸騰水型原子炉に用いられる。なお、後述の実施例2〜5の制御棒も沸騰水型原子炉に適用される。制御棒1は、タイロッド2、ハンドル3、下部支持部材5および4枚のブレード7を有する。ハンドル3は、下方に伸びる複数の上部舌状部4を含んでいる。下部支持部材5は、上方に伸びる複数の下部舌状部6を含んでいる。ハンドル3および下部支持部材5は横断面が十字形をしている。制御棒1は、図2に示すように、横断面が十字形をしており、4枚のブレード7がタイロッド2から四方に伸びている。各ブレード7は、中性子吸収部材である複数の扁平な上部ハフニウム筒状体9Aおよび複数の扁平な下部ハフニウム筒状体9Bを、横断面がU字状をした、ステンレス鋼製のシース8内に配置している。各シース8は、側端部に、制御棒1の軸方向に配置された複数のタブ10を有する。各タブ10はタイロッド2に溶接されている。シース8の上端はハンドル3に、シース8の下端は下部支持部材5に溶接にて取り付けられている。それぞれの上部舌状部4が別々の上部ハフニウム筒状体9Aの上端部内に挿入され、各上部ハフニウム筒状体9Aがピン11によって上部舌状部4に取り付けられている。それぞれの下部舌状部6が別々の下部ハフニウム筒状体9Bの上端部内に挿入され、各下部ハフニウム筒状体9Bがピン11によって下部舌状部6に取り付けられている。
制御棒1の製造は以下に説明する製造方法によって行われる。タイロッド2の上端に十字形をしたハンドル3が、タイロッド2の下端に十字形をした下部支持部材5が溶接により取り付けられる。その後、上部ハフニウム筒状体9Aが上部舌状部4に取り付けられ、下部ハフニウム筒状体9Bが下部舌状部6に取り付けられる。上部ハフニウム筒状体9Aおよび下部ハフニウム筒状体9BがU字状のシース8の内面の間に配置された状態で、シース8の側端、すなわち、タブ10がタイロッド2に向かって移動される。各タブ10がタイロッド2の表面に重ねられる。
シース8をタイロッド2、ハンドル3および下部支持部材5に溶接する前に、タイロッド2、ハンドル3および下部支持部材5によって構成されるフレームを、加熱領域12(図1参照)で加熱する。加熱領域12は、少なくともシース8の上端とシース8の下端の間でタイロッド2に存在する。そのフレームの加熱は、フレームの温度がシース8の温度よりも高くなるように行われる。この加熱は、バーナーの火炎をフレーム全体にあてることにより行われる。フレームの加熱後に、シース8が、タイロッド2、ハンドル3および下部支持部材5に溶接される。まず、シース8とタイロッド2の溶接が行われる。シース8の両側端に位置し、タイロッド2を間に介在させて向かい合いタイロッド2の軸方向において中央に位置する2つのタブ10が、溶接トーチを用いてタイロッド2に溶接される。タイロッド2の両面において、溶接されたそれらのタブ10からハンドル3および下部支持部材5に向かって、順次、他のタブ10が溶接トーチを用いてタイロッド2に溶接される。
シース8とタイロッド2の溶接を、図2を用いて具体的に説明する。制御棒1は4枚のシース8を有しており、これらのシース8をタイロッド2に溶接する場合には、タイロッド2の軸方向において8箇所で溶接を行う必要がある。図2に示すように、ある横断面での8箇所の溶接位置に対してトーチ13がそれぞれ配置され、これらの溶接トーチ13を用いた、タブ10とタイロッド2の溶接が、それぞれ行われる。8個の溶接トーチ13を用いて8箇所の溶接を行うので、タイロッド2とシース8の溶接に要する時間を短縮することができる。もし、タイロッド2の周囲の8箇所に溶接トーチ13が配置できない場合には、シース8を1枚ずつ順番にタイロッド2に溶接してもよい。シース8を1枚ずつタイロッド2に溶接する場合には、フレームを加熱して1枚目のシース8とタイロッド2、シース8とハンドル3、およびシース8と下部支持部材5の溶接を終了させ、その後、順次、他のシース8の溶接を行う。
シース8とタイロッド2の溶接が終了した後、シース8の上端部とハンドル3、およびシース8の下端部と下部支持部材5の溶接が行われる。シース8とハンドル3及び下部支持部材5の溶接が完了した後、溶接にて接合された、制御棒1の中間製品は、低温状態になって全体が一様な温度になるまで長時間(例えば、12時間)放置される。この時間が経過した後、制御棒1の製造工程が終了する。製造された制御棒1は、制御棒1の軸方向において、シース8の全長に亘って圧縮残留応力が付与されている。制御棒1のシース8には、図3に示すように、制御棒1の軸方向において、実線14で示す残留応力の分布が形成される。実線14で示される、制御棒1の軸方向における残留応力分布は、圧縮残留応力である。このような圧縮残留応力がシース8の軸方向全長に亘って形成されるためシース8にき裂が生じる危険性を解消することができる。図3において、破線15で示される残留応力分布は、従来の制御棒(特開平9−61576号公報記載の制御棒)に対するものである。従来の制御棒では、破線15で示されるように、シース8の上端部および下端部に引張残留応力が形成される。シース8の軸方向全長をL0および引張残留応力が生じる領域のタイロッド2の軸方向における長さをL1としたとき、引張残留応力が生じる領域の、シース8の上端および下端からのそれぞれの長さL1は0.2L0となる。特に、従来の制御棒では、炉心に挿入されている期間が長いシース8の上端部にき裂が発生している。制御棒1は、シース8の上端部および下端部に圧縮残留応力が付与されるので、シース8の上端部でき裂が発生することが防止できる。
制御棒1において、シース8の上端部および下端部に圧縮残留応力が付与されるメカニズムを、図4を用いて説明する。タイロッド2の軸方向と直交してブレード7が伸びている方向におけるタイロッド2内部の応力評価ライン16、およびブレード7が伸びているその方向におけるシース8内部の応力評価ライン17を想定する。変形の拘束を行わずに自由に伸縮できる状態で置かれたフレームを、全体が一様な温度になるように加熱して、フレーム全体の温度を上昇させると、フレームは応力を生じることなく軸方向に一様に膨張する。この状態において、タイロッド2とシース8の溶接前での、応力評価ライン16に沿った制御棒の軸方向における応力分布18は0である。また、タイロッド2とシース8の溶接前での、応力評価ライン17に沿った制御棒の軸方向における応力分布19も0である。
フレームの加熱後にタブ10とタイロッド2を溶接により接合し、ハンドル3および下部支持部材5にシース4の上端部および下端部を開先合わせして溶接を行う。これらの溶接終了後に放置しておくと、シース8とフレームは溶接部でつながっているため、熱伝導によりフレームからシース8に熱が移動する。また、周囲の空気との熱伝達によりシース8とフレームの温度は十分に時間が経過した後には周囲の温度と等しくなる。シース8およびフレーム全体の温度が室温まで降下すると、タイロッド2とシース8の溶接後におけるタイロッド2の応力分布18は、図4に示すように、値Tの引張応力になる。その溶接後のシース8の応力分布19は、図4に示すように、値Sの圧縮応力になる。すなわち、タイロッド2には制御棒の軸方向におけるの引張残留応力が付与され、シース8の軸方向全長に亘ってその軸方向における圧縮残留応力が付与される。特に、本実施例は、シース8とフレームの溶接を開始するときに、シース8の温度がタイロッド2の温度よりも低くなっているので、フレームおよびシース8の温度が常温まで低下したときに、シース8の軸方向の全長に亘って、その軸方向の圧縮残留応力を付与できるのである。
フレームの加熱後にシース8の上端部よび下端部に圧縮残留応力が付与されるメカニズムについて説明する。図3において、シース端部で発生している引張残留応力は、モックアップ試験体を製作して測定したところ最大で180MPaであった。したがって、シースに絶対値が180MPaよりも大きくなる圧縮応力が生じるようなひずみを付与すれば良い。
加熱前のフレームのハンドル3と下部支持部材5との間隔をLt(mm)とする。フレームに溶接される前のシースの長さを(Lt+d)(mm)とする。また、図2に図示している、タイロッド2の横断面積をA(mm)、4枚分のシースの横断面積をB(mm)とする。タイロッド2及びシース8は、それぞれ同じ材料であるSUS316Lステンレス鋼で構成されている。SUS316Lステンレス鋼のヤング率をE(MPa)、線膨張係数をα(1/℃)とする。
図5の(A)から(C)はタイロッド2及びシース8を模式的に棒で表している。図5(A),(B)及び(C)において、タイロッド2は便宜的にタイロッド2Aで表し、シース8も便宜的にシース8Aで表している。
図5(A)は、タイロッド2、ハンドル3及び下部支持部材5とシース8の溶接前でフレームも加熱されていない状態を、模式的に表している。タイロッド2Aの長さはLt(mm)であり、シース8Aの長さは(Lt+d)(mm)である。それぞれの横断面には応力は発生していない。タイロッド2は横断面積がAである棒状のタイロッド2Aで模擬され、ブレード7に設けられた4枚のシース8は横断面積がそれぞれB/4である棒状の4本のシース8Aで模擬されている。
図5(B)は、タイロッド2、ハンドル3及び下部支持部材5とシース8の溶接前でフレームを加熱した状態を、模式的に表している。加熱温度を調節してフレームの軸方向の伸びをd(mm)にする。フレームの加熱が完了した段階でも、フレームに伸び変形は発生するが、応力は発生していない。この段階でタイロッド2とシース8の溶接、ハンドル3とシース8の溶接、及び下部支持部材5とシース8の溶接を行う。
図5(C)は、タイロッド2、ハンドル3及び下部支持部材5とシース8の各溶接が完了し、さらにフレーム全体の温度が初期温度まで降下した時点の状態を、模式的に表している。フレームとシース8は溶接部で接続されているため、軸方向の長さは等しくなる。シース8Aの初期状態からの収縮量をδLとする。タイロッド2Aの初期状態からの伸び量は(d−δL)である。
この状態において、タイロッド2Aの横断面には、E×(d−δL)/Lt(MPa)の引張応力が発生する。シース8Aの横断面には、E×δL/(Lt+d)(MPa)の圧縮応力が発生する。それぞれの横断面における内力は、それぞれの横断面積を乗じた値になり、タイロッド2Aでは、(E×(d−δL)/Lt)×Aの引張力、シース8Aでは、(E×δL/(Lt+d))×Bの圧縮力となる。内力のつりあいを考えると、タイロッド2Aの引張力とシース8Aの圧縮力は絶対値が等しくなる必要があり、(1)式が成り立つ。
(E×(d−δL)/Lt)×A=(E×δL/(Lt+d))×B …(1)
(1)式を整理することによって(2)式が得られる。
δL/(Lt+d)=d/(((A+B)/A)×Lt+d) …(2)
(2)式の左辺は、図5(C)の状態でシース8Aに発生している圧縮ひずみである。(2)式の右辺は収縮量δLを含んでいない。シース8Aに発生している歪みにヤング率を乗じることにより応力を求めることができる。フレームを加熱した後にフレームとシース8Aを溶接し、全体が初期温度になることによりシース8Aに発生する応力をσthとしたとき、応力σthは絶対値が(3)式で与えられる圧縮応力となる。
σth=E×d/(((A+B)/A)×Lt+d) …(3)
モックアップ試験体で測定されたシース部の引張残留応力の最大値である180MPaよりも、(3)式で与えられる圧縮応力の絶対値が大きい場合には、シース8Aの残留応力は圧縮応力になる。すなわち、シース8Aの伸び量dを含む(4)式の不等式が成り立つ場合には、シース8Aの残留応力を圧縮応力にすることができる。
σth<E×d/(((A+B)/A)×Lt+d) …(4)
ここで、加熱によるフレームの伸び量dは、初期温度と加熱完了時の温度差をΔT(℃)としたとき、(5)式で求めることができる。
d=α×ΔT×Lt …(5)
(5)式を(4)式に代入し、温度差ΔTについて整理すると、(6)式が得られる。
ΔT>(1/α)×((A+B)/A)/(E/σth−1) …(6)
ここで、SUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼では、ヤング率Eは195000(MPa)、線膨張係数αは1.52×10−5(1/℃)である。タイロッド2の横断面積をAは420(mm)、4枚分のシース8の横断面積をBは632(mm)である。また、σth=180(MPa)とする。これらの値を(6)式に代入することによって(7)式が得られる。
ΔT>152(℃) …(7)
したがって、シース8の初期温度が20℃の場合には、フレームの温度を温度差ΔTが152℃よりも大きくなるように、すなわち、フレームを172℃よりも高くなるように加熱して、その後にシース8とフレームの溶接を行うことにより、シース8の各端部の引張残留応力をそれぞれ圧縮にすることができる。
一例として、フレームの加熱を行わないで溶接したときに、シース8の端部に180MPaの引張応力が発生した構造に対して、シース8の初期温度が20℃で、フレームを200℃まで加熱し、その後にフレームとシース8の溶接を行った場合を想定する。その溶接を開始する時点におけるシース8とフレームの温度差ΔTは、180℃になる。ここで、加熱前のフレームのハンドル3と下部支持部材5の間隔Ltを、3600(mm)とする。このとき、(5)式から、フレームの伸び量dは9.85mmになる。シース8の軸方向の長さは、発生させる温度差を考慮して、シース部材の加工の段階で3609.85(mm)になるようにしておく。このとき、ハンドル3とシース8、または下部支持部材5とシース8の間に隙間は生じない。次に、タイロッド2とシース8、ハンドル3とシース8、及び下部支持部材5とシース8の溶接を行う。これらの溶接が完了した後に全体の温度が降下した時点での残留応力は、初期温度になった状態で、32MPaの圧縮応力になる。また、シース8上で、シース8の端部から離れたシース8の中央部付近では、端部よりも絶対値が大きい、すなわち、絶対値が32MPaよりも大きい圧縮残留応力になる。なお、シース8とハンドル3及び下部支持部材5の各溶接において、溶接入熱によりシース8の端部は溶融する。このため、シース8の長さは、3609.85mmよりも長く設定する。例に示したように0.01mmのオーダーの寸法精度は必要ない。例えば3615mmとしてもよい。このとき、シース8の両端部はハンドル3及び下部支持部材5のそれぞれと2.575mm(=(3615−3609.85)/2)の幅で重なるが、例えばTIG溶接の場合には、溶融幅が約6mmあるため、余分なシース部材は溶接時に溶かして溶着部とすることが可能である。
なお、シース8に形成されるタブ10の数が多い場合には、タイロッド2にタブ10を順次溶接するに伴って、加熱されたフレームの温度が低下する場合がある。このときには、タブ10の溶接が行われていないフレーム上の領域を再度加熱してタブ10、ハンドル3および下部支持部材5の溶接を行えばよい。
また、最初にフレーム全体を加熱するのではなく、シース8のタブ10とタイロッド2の溶接を行うとき、タイロッド2における、ある溶接が完了したタブ10と、溶接が進行する方向でこれと隣り合うタブとの間の1スパンの領域を加熱しながら、後者のタブを溶接する。このように順次、1スパンごとに加熱とタブの溶接を行っても良い。これによって、フレーム全体を加熱した場合において、ハンドル3または下部支持部材5に近いタブ10に到達したときにフレームの温度が低下することを避けることができる。
フレームの加熱は、バーナーの火炎の替りに、例えば高周波誘導加熱を利用することも可能である。高周波誘導加熱を用いることによって、フレームを短時間に高い温度に予熱することが可能である。この高周波誘導加熱において、例えば、フレーム全体を一度に加熱できる高周波誘導加熱用のコイルを用いる。また、タイロッド2の軸方向に隣り合うタブ間の長さを有する高周波誘導加熱用のコイルを用いてもよい。
タブ10のタイロッド2への溶接は、例えば、ハンドル3に最も近いタブ10から下部支持部材5側に向かって順次行うことによっても可能である。逆に、下部支持部材5側からハンドル3に向かってタブ10を溶接しても良い。
複数のタブ10のタイロッド3への溶接を、タイロッド4の軸方向における中央部に位置するタブからハンドル2および下部支持部材3付近に位置するタブに向かって順次行うことにより、タイロッド2の中央位置に対して、対称を保ちながら溶接を進めることができる。このため、タイロッド2の曲がり等の溶接変形を小さく抑えることができる。
溶接部の加熱は、例えば炭素鋼の溶接では予熱として一般的に行われている。このため、フレームを加熱する本実施例は、新たに設備を準備することなく残留応力の改善を行うことができる。したがって、割れを起こさない好ましい残留応力分布を持った制御棒をコストの増加を抑えて製作することが可能になる。
制御棒1においてハンドル3、下部支持部材5及びタイロッド2とシース8の溶接は入熱量が小さいため、溶接変形の発生はほとんど見られない。このため、シース8とハンドル3、及びシース8と下部支持部材5のそれぞれの溶接が終了した後にシース8とタイロッド2の溶接を行っても、本実施例と同等の圧縮残留応力をシースに付与することができる。
本発明の他の実施例である制御棒を、図6を用いて説明する。本実施例の制御棒1Aはタイロッド2の下部領域での加熱を省略して製造される。
従来の制御棒は、引張残留応力が発生している最も広い領域が引張残留応力になるのは、前述したように、シース8の上端部および下端部である(図3参照)。シースにき裂が生じる箇所は、前述したように、シース8の上端部である。このため、本実施例は、フレームのタイロッド2の上端部(例えば、シース8の上端から0.2L0の範囲)を加熱し、その後、実施例1と同様に、タブ10をタイロッド2に溶接し、シース8の上端および下端をハンドル3および下部支持部材5にそれぞれ溶接する。シース8の下端部には引張残留応力が形成されているが、1つの運転サイクルにおいてシース8の下端部が原子炉の炉心内に挿入されている期間は短いので、シース8の下端部にはき裂が発生しない。
制御棒1Aは、シース8でき裂が発生するシース8の上端からL1の長さの領域で、シース8に軸方向の圧縮残留応力を付与することができる。このため、実施例1の制御棒1に比べてタイロッド3の加熱領域が少なくなるので、制御棒1Aの製造に要する時間を短縮することができる。本実施例は、実施例1で生じる効果も得ることができる。
本発明の他の実施例である制御棒の製造方法を、図7を用いて説明する。実施例1と同様にして、タイロッド2にハンドル3および下部支持部材5を溶接して、制御棒のフレームを構成する。本実施例の制御棒1Bの製造方法においては、引張装置21を使用する。
引張装置21の構成を簡単に説明する。引張装置21は、剛性が高いフレーム部材22、荷重付加軸25および軸回転装置26を備えている。フレーム部材22は、平行に配置された梁部材23,24を有する。梁部材23,24にそれぞれ設けられる引張機構30は、荷重付加軸25、軸回転装置26、保持部材27およびU字状をした荷重付加冶具28を有する。荷重付加軸25が、梁部材23,24を貫通し、梁部材23,24に設けられた軸回転装置26に噛み合っている。U字状をした4個の荷重付加冶具28が、荷重付加軸25の一端部に設けられた保持部材27に取り付けられている。それぞれの荷重付加冶具28にはピン29が取り付けられる。荷重付加軸25は外面にネジを形成しており、このネジが軸回転装置26に設けられたウォームギアと噛み合っている。
制御棒1Bのフレームが、梁部材23と梁部材24の間に配置される。梁部材23に設けられた引張機構30の4個の荷重付加冶具28を、それぞれピン29を用いてハンドル3に取り付ける。梁部材24に設けられた引張機構30の4個の荷重付加冶具28が、それぞれピン29を用いて下部支持部材5に取り付けられる。少なくとも一方の軸回転装置26を回転させて該当する荷重付加軸25をタイロッド2の軸方向に移動させ、ハンドル3と下部支持部材5をその軸方向に引張る。これにより、軸方向の引張応力がフレームに付与される。フレーム、特に、タイロッド2に引張応力が付与されている状態を保持し、実施例1と同様に、シース8の複数のタブ10をタイロッド2に順次溶接する。その後、シース8の上端とハンドル3の溶接、およびシース8の下端と下部保持部材5の溶接が行われる。シース8のフレームへの全ての溶接が終了した後、軸回転装置26を逆方向に回転させ、フレームに加えていた引張力を解除する。それぞれの荷重付加冶具28がハンドル3および下部支持部材5から取り外される。
本実施例の製造方法によって製造された制御棒1Bにおいて、シース8に軸方向の圧縮残留応力が付与されるメカニズムを、図8を用いて説明する。引張装置21によって軸方向の引張応力を付与したフレームを構成するタイロッド2にシース8の開先を合せた状態では、シース8には軸方向の応力は発生していない。すなわち、応力評価ライン17に沿った制御棒の軸方向における応力分布19は0である。これに対し、タイロッド2には、引張装置21の引張力によって値T1の軸方向の引張応力が生じている。すなわち、応力評価ライン16に沿った制御棒の軸方向における応力分布18は値T1の引張応力である。前述したシース8とフレームの溶接が終了した後、引張装置21によってタイロッド2に作用していた引張力を除去することによって、シース8には軸方向の圧縮の変位が付加される。この結果、タイロッド2には値T1よりも減少した値T2の軸方向の引張残留応力が生じ、シース8に生じる応力分布19は、値Sの軸方向の圧縮残留応力となる。
本実施例で製造された制御棒1Bも、シース8の軸方向全長に亘って圧縮残留応力が付与されている。このため、シース8におけるき裂の発生を防止できる。さらに、本実施例は、引張装置21を用いているので、タイロッド2の伸びがタイロッド2の中心軸に沿って一様に発生する。フレームに曲げ変形のように製品の寸法精度に悪影響を与える変形を発生させずに、フレームへ引張力を付与することが容易に可能となる。その結果、完成した制御棒の寸法精度を確保することができる。
引張装置21によってフレームに付与された引張荷重は、シース8とフレームの溶接が完了する前、例えばシース8の複数のタブ10のうち一部のタブ10の溶接が終わった時点で解除しても良い。この場合には、引張荷重を付加した状態でタブ10の溶接が行われた軸方向の範囲では、その溶接によってシース8に生じる軸方向の引張応力を低減することができる。また、引張残留応力の低減を必要とする領域でタブ10の溶接を行うときにのみ、タイロッド2に引張荷重を付加しても、シース8の上端部に軸方向の圧縮残留応力が付与される。
軸方向においてタイロッド2の途中に荷重付加治具28を取り付けてタイロッド2に局所的に引張荷重を付加しても良い。例えば、タイロッド2に引張荷重を付加する位置に荷重付加治具28を予め取り付けておく。タイロッド1の軸方向の中央部に位置するタブ10からタイロッド2と接合する溶接を開始して、ハンドル2の近くのタブ10が溶接される状態になったときに、その荷重付加治具28に引張荷重を付加してタイロッド2に引張荷重を与える。次に残りの位置でのタブ溶接およびシース8とハンドル3および下部支持部材5の溶接を行う。付加していた引張荷重を取り除くことによって、タブの溶接中に引張荷重を付加していたタイロッド2の領域における引張残留応力を低減することができる。
また、シース8とフレームのすべての溶接が完了した後にハンドル3と下部支持部材5をタイロッド1に軸方向の引張応力が発生するように引張荷重を付加した後にこの引張荷重を除去しても良い。この場合には、シース8とフレームのすべての溶接部に塑性変形が発生し、それにより引張残留応力が低減される。溶接部で引張応力が発生している領域に引張荷重が付加されると、引張残留応力が発生している領域では、他の領域よりも低い引張荷重で引張側の降伏が起きる。このため、引張荷重を除去した後で溶接部には引張の塑性ひずみが残留する。引張の塑性ひずみによる変形が周囲の領域で拘束された場合には、その塑性ひずみは残留圧縮応力になる。すなわち、シース8の上端部に圧縮残留応力を付与することができる。
本発明の他の実施例である制御棒の製造方法を、図9を用いて説明する。実施例1と同様にして、タイロッド2にハンドル3および下部支持部材5を溶接して、制御棒のフレームを構成する。このフレームに、実施例1と同様に、上部ハフニウム筒状体9Aおよび下部ハフニウム筒状体9Bが取り付けられる。本実施例の制御棒1Cの製造方法においては、圧縮装置31を使用する。
圧縮装置31の構成を、図9および図10を用いて簡単に説明する。圧縮装置31は、荷重付加軸32、軸回転装置33、梁部材34および爪部材35を備えている。軸回転装置33および梁部材34は2つずつ設けられる。荷重付加軸32は、外面にネジが切ってある。各軸回転装置33は、荷重付加軸32と噛み合うウォームギアが設けられ、荷重付加軸32に移動可能に取り付けられる。梁部材34は軸回転装置33に取り付けられる。一対の爪部材35が梁部材34に設けられる。
フレームに溶接するシース8に圧縮装置31を取り付け、この圧縮装置31によりシース8に軸方向において圧縮変形を与える。この圧縮変形によってシース8に軸方向の圧縮応力が付与される。圧縮装置31のシース8への取り付けを、説明する。荷重付加軸32の一端部に存在する梁部材34に設けられた一対の爪部材35が、シース8の一端部に形成された2つの冷却孔36内に挿入され、シース8に引っ掛けられる。荷重付加軸32の他端部に存在する他の梁部材34に設けられた一対の爪部材35が、シース8の他端部に形成された2つの冷却孔36内に挿入され、シース8に引っ掛けられる。軸回転装置33を駆動して荷重付加軸32を回転させ、一対の梁部材34間の距離を狭くする。これにより、シース8に軸方向の圧縮応力が付与される。
上記の圧縮応力が付与されたシース8が、実施例1と同様にして、タイロッド2、ハンドル3および下部支持部材5に溶接される。シース8とフレームとの全ての溶接が終了した時点で、軸回転装置33を逆方向に回転させ、シース8に付与している圧縮力を取り除く。
本実施例の製造方法によって製造された制御棒1Cにおいて、シース8の軸方向全長に亘って軸方向の圧縮残留応力が付与されるメカニズムを、図11を用いて説明する。フレームを構成するタイロッド2に軸方向に圧縮応力を付加したシース8の開先を合せた状態では、応力評価ライン16に沿った制御棒の軸方向における応力分布18は0である。シース8には、応力評価ライン17に沿った制御棒の軸方向における応力分布19は値Sの圧縮応力となる。この状態で、シース8とタイロッド2、ハンドル3および下部支持部材3のそれぞれの溶接を行う。シース8とフレームの全ての溶接が終了した後、圧縮装置31によってシース8に付加していた軸方向の圧縮荷重が取り除かれる。これによって、シース8に付加されていた軸方向変位が解消される。タイロッド2には軸方向の引張の変位が付加さる。この結果、タイロッド2の応力分布18は値Tの引張残留応力となる。また、シース8に生じる応力分布19は値Sの圧縮残留応力が付与される。本実施例によれば、シース8の軸方向全長に渡って軸方向の圧縮残留応力が付与される。シース8にき裂が生じることを防止できる。
シース8はタイロッド2と比較すると薄板である。そのため、実施例3においてタイロッド2に引張荷重を負荷する装置よりも小さい装置で、シース8に圧縮荷重を負荷することができる。
本発明の他の実施例である制御棒の製造方法を、図12を用いて説明する。本実施例の製造方法で製造された制御棒1Dは、タイロッド2の表面に溶融部37を形成している。溶融部37は、例えば、ノンフィラーの溶融部であり、固まっている。
制御棒1Dを製造する方法について説明する。実施例1と同様に、タイロッド2、ハンドル3および下部支持部材5が一体化されたフレームが形成される。その後、シース8の複数のタブ10がタイロッド2に順次溶接される。シース8の上端がハンドル3に、シース8の下端が下部支持部材5にそれぞれ溶接される。上部ハフニウム筒状体9Aおよび下部ハフニウム筒状体9Bが、シース8内に配置される。制御棒1Dの製造方法におけるここまでの工程は、従来の制御棒の製造工程と同じである。
本実施例では、シース8のフレームへの溶接が全て終了した後、タイロッド2の表面に溶融部37を形成する。この溶融部37は、ハンドル3から下部支持部材5に向ってタイロッド2の軸方向に延びている。溶融部37の形成は、以下のようにして行われる。溶接トーチの火炎をタイロッド2の表面に当てながらその溶接トーチをタイロッド2の軸方向に沿って移動させる。その火炎の照射によってタイロッド2の表面に入熱(熱入射)が行われ、タイロッド2の上端からその下端に向う一層一パスの溶融部37が形成される。タイロッド2の軸方向における同じ位置でタイロッド2の周囲に4つの溶接トーチを配置し、これらの溶接トーチを一緒にタイロッド2の軸方向に移動させることによって、4本の溶融部37を同時にタイロッド2の表面に形成することができる。溶融部37が固まるときにその溶融部37に沿ってタイロッド2の表面に収縮変形が生じる。溶融部37に沿ったタイロッド2の収縮変形は、シース8に、軸方向において収縮する変形を発生させる。このシース8の軸方向における収縮変形により、シース8に軸方向の圧縮残留応力がシース8の全長に亘って付与される。このため、シース8にき裂が発生することを防止できる。
溶融部37を形成するためのタイロッド2の溶融は、シース8とタイロッド2の溶接が終了した後でシース8とハンドル3および下部支持部材5の溶接前、およびシース8とタイロッド2、ハンドル3および下部支持部材5の各溶接が終了した後の、いずれかで行われる。
タイロッド2の表面に形成される溶融部37は、図13に示す制御棒1Eのように、タイロッド2の軸方向に不連続な溶融部37Aとしてタブ10とタイロッド2の各溶接部に沿ってその溶接部の近傍に形成しても良い。このような溶融部37Aの形成によっても、シース8の軸方向全長に亘って軸方向の圧縮残留応力を付与することができる。このため、シース8にき裂が生じることを防止することができる。
制御棒1Eのシース8において引張残留応力が低減でき、圧縮残留応力が付与できるメカニズムを、図14を用いて説明する。シース8のタブ10とタイロッド2の溶接部38では、溶接線方向において溶接部38で引張応力、およびこの溶接部38の周囲で圧縮応力となる残留応力分布39が形成される。溶融部37により発生する応力分布40における圧縮応力の領域が溶接部38によって発生した引張応力の領域に重なるように、溶融部37をタイロッド2の表面に形成することによって、応力分布39の引張応力と応力分布40の圧縮応力を重ね合せることができる。このため、応力分布39の引張応力が応力分布40の圧縮応力によって低減される。制御棒1Eは、タイロッドの軸方向全長にわたって溶融部37を形成する場合よりも短い溶融部37Aによって図3の実線14に示すようにシース8の上端部および下端部に圧縮残留応力を付与することができる。制御棒1Eは制御棒1Dに比べてタイロッド2の表面に溶融部を形成するために要する時間を短縮することができる。
制御棒1Eにおいて、溶融部37A相互間に存在するタイロッド2の領域の温度が低いほど、溶融部37Aの形成によるタイロッド2の軸方向における収縮変形が大きくなる。このため、制御棒1Eの製造においては、シース8とフレームの全ての溶接が終了した時点から十分な時間を置いて、シース8およびフレームの温度が室温まで下がった後に複数の溶融部37Aを形成する作業を開始することが望ましい。制御棒1Dにおいて、4本の溶融部37を1本ずつタイロッド2の表面に形成する場合には、1本の溶融部37を形成した後、シース8およびフレームの温度が室温まで低下した後に、次の溶融部37をタイロッド2の表面に形成することが望ましい。このような溶融部37の形成によって、制御棒1Dのタイロッド2の軸方向における収縮変形が大きくなる。それだけ、シース8に付与される圧縮残留応力が大きくなる。
ハンドル3に最も近い溶接部38とその次にハンドル3に近い溶接部38の間でタイロッド2の表面に溶融部を形成することによって、シース8の上端部における引張残留応力を圧縮残留応力に変えることができる。
タイロッド2の表面での溶融部の形成は、溶接金属(溶融する金属)の供給を行わないTIGトーチを用いた入熱により形成することができる。タイロッド2の表面で溶接金属の供給を行いながら溶融部を形成した場合には、溶接金属の収縮力を利用することができるため、タイロッド2の収縮変形が大きくなる。このため、シース8に付与される圧縮残留応力も大きくすることができる。
溶融部37および複数の溶融部37Aをタイロッド2の表面に形成することも可能である。これにより、シース8引張残留応力をより効果的に低減することができ、シース8の軸方向全長に亘って軸方向の圧縮残留応力を効果的に付与することができる。溶融部37および溶融部37Aをタイロッド2に形成する場合には、溶融部37を形成した後、溶融部37Aを形成すると良い。
タイロッド2に溶融部37または溶融部37Aを形成すると、タイロッド2ではデンドライド組織の間隔が広がる。このため、デンドライド組織が入熱を受けていない母材部よりも広くなるようにタイロッド2に溶融部37または溶融部37Aを形成することにより、シース8に圧縮残留応力を付与することができる。
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒を製造する過程において、タイロッドを加熱する工程を示す説明図である。 図1に示す制御棒の横断面において、シースとタイロッドの溶接時における溶接トーチの配置を示す説明図である。 図1に示す制御棒および従来例の制御棒のシースに発生する残留応力の分布を示す説明図である。 図1に示す制御棒の溶接前後の応力分布を示す説明図である。 図1に示す制御棒のタイロッド及びシースを模式的に示しており、(A)はタイロッド、ハンドル及び下部支持部材とシースの溶接前でフレームも加熱されていない状態を、模式的に示す説明図、(B)はタイロッド、ハンドル及び下部支持部材とシースの溶接前でフレームを加熱した状態を、模式的に示す説明図、(C)はタイロッド、ハンドル及び下部支持部材とシースの各溶接が完了し、さらにフレーム全体の温度が初期温度まで降下した時点の状態を模式的に示す説明図である。 本発明の他の実施例である実施例2の制御棒を製造する過程において、タイロッドを加熱する工程を示す説明図である。 本発明の他の実施例である制御棒の製造方法を示す説明図である。 図7の方法で製造された制御棒の溶接前後の応力分布を示す説明図である。 本発明の他の実施例である制御棒の製造方法を示す説明図である。 図9に示す圧縮装置のシースへの取り付け状態を示し、(A)は図9のIX部の拡大図、(B)は(A)のB−B断面図である。 図9の方法で製造された制御棒の溶接前後の応力分布を示す説明図である。 本発明の他の実施例である制御棒の製造方法を示す説明図である。 本発明の他の実施例である制御棒の製造方法を示す説明図である。 図9の方法で製造された制御棒のタブの溶接部付近における残留応力分布を示す説明図である。
符号の説明
1,1A〜1E…制御棒、2…タイロッド、3…ハンドル、5…下部支持部材、7…ブレード、8…シース、9A…上部ハフニウム筒状体、9B…下部ハフニウム筒状体、10…タブ、12,20…加熱領域、21…引張装置、31…圧縮装置、37,37A…溶融部。

Claims (24)

  1. タイロッドと、前記タイロッドの一端部に取り付けられたハンドルと、前記タイロッドの他端部に取り付けられた下部支持部材と、前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材に取り付けられ、前記タイロッドから四方に延びて横断面がU字状をしている4つのシース部材と、各前記シース部材内に配置された中性子吸収部材とを備え、
    前記シースの前記ハンドル側の端部に圧縮残留応力が付与されていることを特徴とする制御棒。
  2. タイロッドと、前記タイロッドの一端部に取り付けられたハンドルと、前記タイロッドの他端部に取り付けられた下部支持部材と、前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材に取り付けられ、前記タイロッドから四方に延びて横断面がU字状をしている4つのシース部材と、各前記シース部材内に配置された中性子吸収部材とを備え、
    前記シースの軸方向全長に亘って圧縮残留応力が付与されていることを特徴とする制御棒。
  3. 前記タイロッドに軸方向の引張残留応力が付与されている請求項1または請求項2に記載の制御棒。
  4. タイロッドと、前記タイロッドの一端部に取り付けられたハンドルと、前記タイロッドの他端部に取り付けられた下部支持部材と、前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材に取り付けられ、前記タイロッドから四方に延びて横断面がU字状をしている4つのシース部材と、各前記シース部材内に配置された中性子吸収部材とを備え、
    前記タイロッドの軸方向に伸びて前記タイロッドが溶融して固まった溶融部が、前記タイロッドの表面に形成されていることを特徴とする制御棒。
  5. 前記溶融部は前記シース部材の上端と前記シース部材の下端の間で連続して形成されている請求項4に記載の制御棒。
  6. 前記溶融部は前記タイロッドの軸方向に断続的に形成されており、この溶融部は前記タイロッドと前記シース部材の溶接部と並んで配置されている請求項4に記載の制御棒。
  7. 前記溶融部を形成するために前記タイロッドに入熱を行った入熱領域におけるデンドライド組織の間隔が、前記タイロッドにおける、前記入熱領域以外の領域における前記デンドライド組織のそれよりも広くなっている請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の制御棒。
  8. タイロッドの一端部にハンドルを取り付けて前記タイロッドの他端部に下部支持部材を取り付けることによってフレーム部材を製作し、前記フレーム部材に中性子吸収部材を取り付け、前記フレーム部材の前記タイロッドを加熱し、横断面がU字状をしているシース部材を、前記シース部材内に前記中性子吸収部材が存在する状態で、加熱された前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材に、前記シース部材を溶接することを特徴とする制御棒の製造方法。
  9. 前記加熱によって前記タイロッドの温度が前記シース部材の温度よりも高くなる請求項8に記載の制御棒の製造方法。
  10. 前記タイロッドの加熱が火炎バーナーにより行われる請求項8または請求項9に記載の制御棒の製造方法。
  11. 前記タイロッドの加熱が高周波誘導加熱により行われる請求項8または請求項9に記載の制御棒の製造方法。
  12. 前記タイロッドの加熱は、前記シースの前記ハンドル側の端部に対応する領域で行われる請求項8に記載の制御棒の製造方法。
  13. 前記タイロッドへの前記シース部材の溶接は、前記タイロッドの軸方向に配置され、前記シース部材の一部である複数の突起部を、前記タイロッドに溶接することである請求項8ないし請求項12のいずれか1項に記載の原子炉用制御棒の製造方法。
  14. 前記タイロッドの加熱の範囲は、前記タイロッドに溶接される前記突起部付近である請求項13に記載の制御棒の製造方法。
  15. タイロッドの一端部にハンドルを取り付けて前記タイロッドの他端部に下部支持部材を取り付けることによってフレーム部材を製作し、前記フレーム部材に中性子吸収部材を取り付け、前記タイロッドの軸方向の引張力を前記タイロッドに加え、横断面がU字状をしているシース部材を、前記シース部材内に前記中性子吸収部材が存在しかつ前記引張力が前記タイロッドに加わえられている状態で、前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材に溶接することを特徴とする制御棒の製造方法。
  16. 前記引張力は、引張装置を用いて前記ハンドルおよび前記下部支持部材を反対方向に引っ張ることによって、前記タイロッドに加えられる請求項15に記載の制御棒の製造方法。
  17. タイロッドの一端部にハンドルを取り付けて前記タイロッドの他端部に下部支持部材を取り付けることによってフレーム部材を製作し、前記フレーム部材に中性子吸収部材を取り付け、前記タイロッドの軸方向の圧縮力を横断面がU字状をしているシース部材に加え、その圧縮力が加えられている前記シース部材を、前記シース部材内に前記中性子吸収部材が存在する状態で、前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材に溶接することを特徴とする制御棒の製造方法。
  18. 前記圧縮力は、圧縮装置を用いて前記シース部材を前記軸方向に圧縮することによって、前記シース部材に加えられる請求項17に記載の制御棒の製造方法。
  19. タイロッドの一端部にハンドルを取り付けて前記タイロッドの他端部に下部支持部材を取り付けることによってフレーム部材を製作し、前記フレーム部材に中性子吸収部材を取り付け、横断面がU字状をしているシース部材を、前記シース部材内に前記中性子吸収部材が存在する状態で、前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材に溶接し、前記シース部材と前記タイロッドの溶接が終了した後、および前記シース部材と前記タイロッド、前記ハンドルおよび前記下部支持部材の溶接が終了した後のいずれかにおいて、前記タイロッドに熱入射を行って前記タイロッドの一部を前記タイロッドの軸方向に溶融させ、前記タイロッドの溶融した部分を凝固させて前記軸方向に伸びる溶融部を前記タイロッドに形成することを特徴とする制御棒の製造方法。
  20. 前記熱入射は前記シース部材の一端と前記シース部材の他端との間で前記タイロッドに対して連続して行われる請求項19に記載の制御棒の製造方法。
  21. 前記タイロッドへの前記シース部材の溶接は、前記タイロッドの軸方向に配置され、前記シース部材の一部である複数の突起部を、前記タイロッドに溶接することであり、
    前記熱入射は、前記軸方向において不連続で、前記突起部と前記タイロッドの溶接部に沿って行われる請求項19に記載の制御棒の製造方法。
  22. 前記熱入射はTIGトーチを用いて行われる請求項19ないし請求項21のいずれか1項に記載の制御棒の製造方法。
  23. 前記熱入射は溶融する金属を供給しながら行われる請求項19ないし請求項21のいずれか1項に記載の制御棒の製造方法。
  24. 前記タイロッドから四方に伸びる4枚の前記シース部材と前記タイロッドの溶接が、一緒に行われる請求項8ないし請求項23のいずれか1項に記載の制御棒の製造方法。
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