JP4996398B2 - 物質検出装置及び物質検出方法 - Google Patents
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Description
具体的には、例えば、安全・安心で快適な社会の実現という観点から、ホルムアルデヒドやトルエンなどの住環境汚染物質、TNT火薬などの爆発物類、コカインやヘロインなどの麻薬類を、高速・高感度に検出する物質検出装置の研究・開発が行われている。
また、近年、燃料電池の開発が盛んに行われているが、燃料電池は水素を用いるため、燃料電池を使用する装置(車両や機器など)やその装置に水素を供給する水素ステーションにおいて水素漏れを監視するのが好ましく、この監視を行う物質検出装置の研究・開発も行われている。
さらに、例えば、食物の鮮度や成分の分析、快適空間を提供・維持するための環境制御、人体を含めた生体の状態検知など、環境分野や医療分野に適用可能な物質検出装置の研究・開発も行われている。
マイクロチップとは、平板状の基板に微細加工によってマイクロチャネル(微小流路)を集積化して形成したものである。例えば、気体中に含まれるホルムアルデヒドをマイクロチップのマイクロチャネルを使って検出試薬(シッフ試薬)に抽出させることによって、ホルムアルデヒドを抽出・濃縮が可能となっている。
このようなマイクロチップを用いることにより、試料量の大幅な低減や化学処理時間の短縮化を図ることができるという利点がある。しかしながら、その一方で、試料中の微量な分析対象物質の存在やその濃度を検出する必要があり、超高感度・超高分解能の検出法が必須となる。
光検出法としては、吸光法が汎用的であるため望ましいが、感度の問題からレーザ誘起蛍光(LIF)法が多く用いられている。レーザ誘起蛍光法を用いれば、極限的分析である「液相中の単一分子分光」も可能である。しかしながら、レーザ誘起蛍光法では、レーザスポットを単一の蛍光分子が通過する間に、励起・発光を繰り返して放出する104個程度の多数の光子を検出するため、原理的に蛍光量子収率の高い限られた数の蛍光物質しか検出できず、汎用性に欠けるという問題がある。これに対し、ほとんどの物質では蛍光量子収率は0(ゼロ)に近く、吸収した光エネルギーは熱エネルギーとして媒質へと放出される。この過程を光熱変換過程(無輻射緩和過程)と呼ぶ。光熱変換過程を利用した分光法は、光熱変換分光法と呼ばれ、原理的に吸光法と同等の広い適用範囲を持つとともに、高感度な分光法として知られている。
熱レンズ分光法では、微小領域をレーザ光で照射すると、レーザ光に吸収を持つ物質が存在した場合、その微小領域が温められて屈折率の変化が生じ、微小凹レンズを形成され、焦点距離が変化することを利用している。すなわち、熱レンズ分光法は、一定面積のディレクターに入射する光量が変化することを利用していることから、超微量検出が可能になる。
試料中の物質を検出する物質検出装置において、
所定位置に固定された試料台と、
励起光を、対物レンズを介して、前記試料台上の試料中に入射する励起光源と、
検出光を、前記対物レンズを介して、前記励起光が前記試料中に照射されることにより形成される熱レンズに入射する検出光源と、
前記熱レンズによる前記検出光の拡散を測定することにより前記物質を検出する検出手段と、
前記対物レンズを水平方向及び鉛直方向に移動させる駆動手段と、
を備え、
前記対物レンズは、光ピックアップ用対物レンズであり、前記試料中における前記励起光及び前記検出光の焦点位置が一致しないように構成された2焦点レンズであり、
前記駆動手段は、前記対物レンズを、水平方向に移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に移動させ、
前記検出手段は、前記駆動手段による前記対物レンズの移動の間、前記検出光の拡散を測定し、当該測定結果のうちの最大値に基づいて前記試料中における物質の濃度を検出することを特徴とする。
請求項1に記載の物質検出装置において、
前記駆動手段は、電磁コイルを用いて前記対物レンズを移動させることを特徴とする。
請求項1又は2に記載の物質検出装置において、
前記励起光源及び前記検出光源は、半導体レーザ光源であり、
少なくとも前記試料台、前記励起光源、前記検出光源、前記対物レンズ、及び前記駆動手段は、単一器体に装着一体化されていることを特徴とする。
請求項1〜3の何れか一項に記載の物質検出装置において、
前記試料台に載置されたマイクロチップが有するマイクロチャネル内における試料中の物質を検出することを特徴とする。
請求項1に記載の物質検出装置による物質検出方法において、
前記駆動手段によって、前記対物レンズを、水平方向に往復移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に往復移動させる移動ステップと、
前記移動ステップの間、前記検出手段によって、前記検出光の拡散を測定する測定ステップと、
前記移動ステップの後、前記検出手段によって、前記測定結果のうちの最大値に基づいて前記試料中における物質の濃度を測定する検出ステップと、
を備えることを特徴とする。
そして、当該物質検出装置による検出方法において、駆動手段によって、対物レンズを、水平方向に往復移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に往復移動させる移動ステップと、移動ステップの間、検出手段によって、検出光の拡散を測定する測定ステップと、移動ステップの後、検出手段によって、測定結果のうちの最大値に基づいて試料中における物質の濃度を測定する検出ステップと、を備えている。
そして、対物レンズを、水平方向に往復移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に往復移動させながら、試料中における物質の濃度を検出することができる、すなわち焦点や測定点を変化させながら物質を検出することができるため、予め焦点や測定点を調整することなく検出を行うことができることとなって、単純な操作で高速検出を行うことができる。
まず、第1の実施の形態における物質検出装置100について説明する。
物質検出装置100は、CDやDVDなどの光ディスクに対応した光ピックアップの構成を応用したセンサであり、熱レンズ分光法を適用してマイクロチップ200が有するマイクロチャネル200a内における試料S中の物質の存在や濃度を検出するためのセンサである。
具体的には、物質検出装置100は、例えば、図1に示すように、励起光源1と、検出光源2と、チョッパ3と、ダイクロックミラー4と、対物レンズアクチュエータ5と、試料台6と、ピンホール部7と、フィルタ8と、光検出器9と、プリアンプ10と、ロックインアンプ11と、制御部12と、などを備えて構成される。
なお、試料Sは、液体に限ることはなく、固体や気体であっても良く、ゾルやゲルなどであっても良い。また、試料Sは、マイクロチップ200のマイクロチャネル200a内に導入されたものに限ることはなく、試料台6に載置されたセル等の所定の容器内に収容されたものであっても良い。
励起光源1には、例えば、所定波長の励起光を出力する固定レーザ光源等を用いることができ、具体的には、例えば、532nmの励起光を出力するSHG−YAGレーザ光源などを用いることができる。
検出光源2は、例えば、励起光とは異なる波長を有する検出光を出力するガスレーザ光源等を用いることができ、具体的には、例えば、633nmの検出光を出力するヘリウムネオンレーザ光源などを用いることができる。
励起光が試料S中に集光照射されると、励起光の強度分布と熱拡散によって、励起光の光軸周りには高い温度勾配が形成される。多くの媒体では、温度上昇に伴って屈折率が小さくなるため、励起光の光軸中心に近づくほど屈折率が小さくなり、励起光の光軸中心から遠ざかるほど屈折率が大きくなる。この屈折率分布は光学的には凹レンズと同等の効果を持つため、このような光学的効果は熱レンズ効果と呼ばれている。この効果の大きさ(熱レンズLの度数)は、発生した熱量、すなわち励起光を吸収する物質の量や濃度によって決まるため、熱レンズLの度数を測定することによって、試料S中における物質の定量を行うことができる。
チョッパ3は、熱レンズLの形状が悪化するのを防ぐために備えられているとともに、ロックインアンプ11により信号処理を行うために備えられている。試料Sへの励起光の照射を続けていると、試料Sの温度分布の飽和によって熱レンズLの形状が悪くなってくる。そこで、励起光の照射を規則的に止めて、試料Sの温度分布の飽和を防止するために、チョッパ3によって、周期的に励起光の照射をON/OFF(すなわち、周期的に励起光を変調)している。
なお、チョッパ3は、周期的に励起光を変調することができる素子であれば任意であり、例えば、音響光学素子などであっても良い。
ここで、励起光の変調周波数が小さいほど検出光の強度(検出光信号の強度)は大きくなるが、測定条件や測定対象に依存して雑音特性は変化するため、励起光の変調周波数は、検出光信号対雑音比(S/N比)が最適となるよう設定される。
なお、2焦点レンズは、波長により開口数が異なるレンズに限ることはなく、波長が異なる2種類の光の焦点位置を一致させないレンズであれば任意である。
また、対物レンズ5aは、2焦点レンズに限ることはなく、試料S中における励起光及び検出光の焦点位置を一致させないようにすることができるのであれば、3焦点以上の焦点を有する多焦点レンズであっても良い。
なお、駆動部5bの駆動源としては、電磁コイルに限ることはなく、駆動部5bが対物レンズ5aを水平方向及び鉛直方向に移動させることができるのであれば任意であり、例えば、モータなども用いることはできるが、物質検出装置100のコンパクト化の観点から、電磁コイルが好ましい。
物質検出装置100では対物レンズ5aを移動させることによって、焦点や測定点の調整を行うため、物質検出装置100には、従来のような試料台6を水平方向及び鉛直方向に移動するための位置決めコントローラなどの大型で高価な装置を備える必要がない。
この電気信号は、プリアンプ10によって増幅されてロックインアンプ11に入力され、チョッパ3を制御(PLL制御)する制御部12からのリファレンス信号と併せて同期検波されて計測される。そして、制御部12は、ロックインアンプ11による計測結果をデータ処理することによって、試料Sの分析を行い、試料S中における物質の存在や濃度を検出する。なお、ロックインアンプ11による処理は、制御部12からのリファレンス信号を、サンプリングエッジとしたサンプル&ホールド回路を使った処理に置き換えることができる。
ここで、熱レンズLによる検出光の拡散を測定することにより試料S中の物質を検出する検出手段は、光検出器9と、プリアンプ10と、ロックインアンプ11と、制御部12と、などにより構成される。
物質検出装置100による、試料S中の物質の検出に関する処理について説明する。
まず、制御部12は、例えば、励起光源1及び検出光源2に制御信号を入力して、励起光及び検出光を出力させるとともに、チョッパ3に制御信号を入力して、励起光を変調させる。そして、制御部12は、駆動部5bに制御信号を入力して、例えば、ユーザによる物質検出装置100に備えられた操作部(図示省略)の操作等に従って、対物レンズ5aを水平方向及び鉛直方向に移動させる。これにより、焦点や測定点の調整が行われる。
すなわち、対物レンズ5aは、光ディスクの分野で用いられる光ピックアップ用の2焦点レンズであるため、小型であり、さらに、従来のように、光学調整装置や焦点位置調整装置などの大型な装置を備えなくても、試料S中における励起光及び検出光の焦点位置が一致しないようにすることができる。加えて、試料台6は所定位置に固定されているとともに、対物レンズ5aを移動させるための駆動部5bを備えているため、小型の対物レンズ5aを移動させて焦点や測定点の調整を行うことができることとなって、従来のように、試料台を動かす位置決めコントローラなどの大型な装置を備える必要がないため、熱レンズ分光法を適用した物質検出装置のコンパクト化を図ることができることとなって、操作性に欠ける、可搬性に欠ける、高価であるなどの従来の問題を解消することができる。
次に、第2の実施の形態における物質検出装置100Aについて説明する。
なお、第2の実施の形態の物質検出装置100Aは、フォトダイオード14Aを追加した点と、検出中に対物レンズ5aが水平方向に移動可能である点と、励起光の光路と、が第1の実施の形態の物質検出装置100と異なる。具体的には、励起光源1、制御部12及び光学系の構成の一部が第1の実施の形態の物質検出装置100と異なる。したがって、異なる箇所のみ説明し、その他の共通する部分は同一符号を付して説明する。
物質検出装置100Aは、例えば、図4に示すように、励起光源1と、検出光源2と、チョッパ3と、ダイクロックミラー4と、対物レンズアクチュエータ5と、試料台6と、ピンホール部7と、フィルタ8と、光検出器9と、プリアンプ10と、ロックインアンプ11と、制御部12Aと、ミラー13Aと、フォトダイオード14Aと、などを備えて構成される。
そして、制御部12Aは、フォトダイオード14Aから入力される検出信号に基づいて、焦点位置を判別し、フォトダイオード14Aから入力される検出信号又は光検出器9からプリアンプ10及びロックインアンプ11を介して入力される電気信号に基づいて、マイクロチャネル200aの幅を判別するようになっている。
具体的には、制御部12Aは、例えば、フォトダイオード14Aを用いて反射光のSカーブから(例えば、シリンドリカルレンズを挟んで非点収差法を用いても良い)焦点位置を判別する。また、制御部12Aは、例えば、フォトダイオード14Aを用いてマイクロチャネル200aの端点で生じたSカーブのごとき曲線からマイクロチャネル200aの幅を判別したり、光検出器9を用いて励起光の透過光からマイクロチャネル200aの幅を判別したりする。
物質検出装置100Aによる、試料S中の物質の検出に関する処理について説明する。
まず、ユーザによる物質検出装置100Aに備えられた操作部(図示省略)の操作等によって、検出を開始するよう指示されると、制御部12Aは、焦点の調整を行うとともに、対物レンズ5aの水平方向移動範囲を決定する。
ここで、対物レンズ5aの水平方向に移動範囲としては、マイクロチャネル200aの幅よりも大きい範囲が設定される。
次に、第3の実施の形態における物質検出装置100Bについて説明する。
なお、第3の実施の形態の物質検出装置100Bは、検出中に対物レンズ5aが水平方向に移動可能であるとともに当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に移動可能である点が、第2の実施の形態の物質検出装置100Aと異なる。具体的には、制御部12Aの構成の一部が第2の実施の形態の物質検出装置100Aと異なる。したがって、異なる箇所のみ説明し、その他の共通する部分は同一符号を付して説明する。
物質検出装置100Bは、例えば、図5に示すように、励起光源1と、検出光源2と、チョッパ3と、ダイクロックミラー4と、対物レンズアクチュエータ5と、試料台6と、ピンホール部7と、フィルタ8と、光検出器9と、プリアンプ10と、ロックインアンプ11と、制御部12Bと、ミラー13Aと、フォトダイオード14Aと、などを備えて構成される。
具体的には、制御部12Bは、例えば、対物レンズ5aが、水平方向に移動するとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に移動するよう、駆動部5bを制御する。そして、制御部12Bは、駆動部5bによる対物レンズ5aの移動の間、ロックインアンプ11から随時入力される計測結果に基づいて、測定結果としての分析用測定データ(後述)を作成し、分析用測定データのうちの最大値に基づいて試料S中における物質の濃度を検出する。
物質検出装置100Bによる試料S中の物質の検出に関する処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
また、対物レンズ5aの鉛直方向の移動範囲は、励起光の焦点位置に依存し、通常時の励起光の焦点の位置を含む範囲が設定される。具体的には、鉛直方向の移動範囲としては、例えば、通常時の励起光の焦点の位置に対して±10μmの範囲が設定される。
ここで、通常の励起光の焦点の位置とは、励起光の波長と、対物レンズ5aの屈折率及び曲率と、で決まる焦点位置(焦点距離)のことである。
具体的には、鉛直方向の移動速度は、水平方向の移動速度よりも高速であれば任意であるが、鉛直方向の移動速度をより高速にすることによって、水平方向に一往復する間に、焦点位置をより多く変化させることができるため、検出精度を向上させることができる。
なお、最大値に基づく検出結果のみをユーザに提示するのではなく、当該検出結果とともに、図7に示すような分析用測定データ(例えば、縦軸を濃度に変換した分析用測定データであっても良い)等もユーザに提示するようにしても良い。
さらに、試料S中の物質の濃度が励起光や検出光の影響によって変化してしまう場合を除き、水平方向の往復移動回数を多くすると、検出精度を向上させることができる。
したがって、対物レンズ5aを、水平方向に往復移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に往復移動させながら、試料S中における物質の濃度を検出することができる、すなわち、焦点や測定点を変化させながら物質を検出することができるため、予めユーザが手動で焦点や測定点を調整することなく検出を行うことができることとなって、単純な操作で高速検出を行うことができる。
次に、第4の実施の形態における物質検出装置100Cについて説明する。
なお、第4の実施の形態の物質検出装置100Cは、CD/DVD互換光ピックアップの構成を応用したセンサである点が第1の実施の形態の物質検出装置100と異なる。具体的には、励起光源1、検出光源2、対物レンズアクチュエータ5及び光学系の構成の一部が第1の実施の形態の物質検出装置100と異なる。したがって、異なる箇所のみ説明し、その他の共通する部分は同一符号を付して説明する。
物質検出装置100Cは、例えば、図8に示すように、励起光源1Cと、検出光源2Cと、対物レンズアクチュエータ5Cと、試料台6と、ピンホール部7と、フィルタ8と、光検出器9と、プリアンプ10と、ロックインアンプ11と、制御部12と、フォトダイオード14Cと、ミラー15Cと、ダイクロックプリズム16Cと、コリメータレンズ17Cと、立ち上げミラー18Cと、などを備えて構成される。
なお、光学系は、例えば、光検出器9を含んでも良い。
励起光源1C及び検出光源2Cには、例えば、半導体レーザ光源等を用いることができる。具体的には、例えば、励起光源1Cとして波長658nmの半導体レーザ光源を用いることができるとともに、検出光源2Cとして波長785nmの半導体レーザ光源を用いることができる。励起光源1C及び検出光源2Cのレーザ出力は、例えば、ともに5mWとする。
なお、励起光源1C、検出光源2Cには、半導体レーザ光源等に加えて、例えば、回折格子やホログラム、収束用のコリメートレンズなどを含んでいても良い。
また、熱レンズ分光法においては、原理的に測定するもともとの光量が大きいため、励起光源1C及び検出光源2Cは、半導体レーザ光源の代わりに、LED、励起フィルタ及びコリメータで構成することも可能である。
ここで、励起光の変調周波数が小さいほど検出光の強度(検出光信号の強度)は大きくなるが、測定条件や測定対象に依存して雑音特性は変化するため、励起光の変調周波数は、検出光信号対雑音比(S/N比)が最適となるよう設定される。
具体的には、例えば、対物レンズ5aCは、光検出器9側に配置されたレンズ51aCと、励起光源1C及び検出光源2C側に配置された互換素子52aCと、により構成されており、単焦点レンズであるレンズ51aCと、波長選択機能を有する互換素子52aCと、が組になって、2焦点レンズを構成している。互換素子52aCは、レンズ51aCと共に駆動部5bによって水平方向及び鉛直方向に移動する。
なお、図8〜図10では、レンズ51aCを凸レンズで表しているが、レンズ51aCは、凸レンズに限ることはなく、球面収差の補正を行うレンズであれば任意であり、例えば、球面ガラス組み合わせレンズ、非球面プラスチック単レンズ、非球面ガラス単レンズ、非球面複合レンズ、屈折率分布型単レンズ、非球面プラスチック単レンズ、その他特殊レンズなどが挙げられる。
また、互換素子52aCは、例えば、波長選択機能を有する素子であれば任意であり、例えば、レンズ51aCの開口数の制御を行う素子などが挙げられる。
第1波長選択フィルタ52aC1及び第2波長選択フィルタ52aC2は、例えば、波長選択性の干渉フィルタパターンであっても良いし、回折格子であっても良い。
なお、対物レンズ5aCは、レンズ51aCと互換素子52aCとから構成されて、波長により開口数が異なる2焦点レンズとして機能する限りではなく、波長が異なる2種類の光の焦点位置を一致させない2焦点レンズとして機能するのであれば、その構成は任意である。
また、対物レンズ5aCは、2焦点レンズとして機能することに限ることはなく、試料S中における励起光及び検出光の焦点位置を一致させないようにすることができるのであれば、3焦点以上の焦点を有する多焦点レンズとして機能しても良い。
物質検出装置100Cによる、試料S中の物質の検出に関する処理については、第1の実施の形態の物質検出装置100と同様であっても良いし、第2の実施の形態の物質検出装置100Aと同様であっても良いし、第3の実施の形態の物質検出装置100Bと同様であっても良いため、詳細な説明は省略する。
すなわち、物質検出装置100Cは、物質検出装置100と同様、ユーザの指示に従って対物レンズ5aCを水平方向及び鉛直方向に移動させることによって、焦点や測定点を調整した後、対物レンズ5aCの位置を固定して検出を行って良いし、物質検出装置100Aと同様、焦点位置を判別しながら対物レンズ5aを鉛直方向に移動させることによって、焦点を調整した後、対物レンズ5aCを水平方向に往復移動させることによって、マイクロチャネル200aの幅方向を高速に走査して、検出を行っても良いし、物質検出装置100Bと同様、焦点や測定点の調整を行わず、対物レンズ5aCを水平方向に往復移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に往復移動させることによって、マイクロチャネル200aの幅方向を高速に走査しながら焦点位置を走査速度よりも高速に変化させて、検出を行っても良い。
次に、第1の実施の形態の物質検出装置100、第2の実施の形態の物質検出装置100A、第3の実施の形態の物質検出装置100B又は第4の実施の形態の物質検出装置100Cによる、マイクロチップ200が有するマイクロチャネル200a内における試料S中の物質の検出について、ニッケル錯体の定量を例示して説明する。
例えば、シリンジポンプによって、試料導入側におけるY字型のマイクロチャネル200aの一方(P1)に設けられたキャピラリからニッケル錯体水溶液を導入するとともに、他方(P2)に設けられたキャピラリからトルエンを導入する。ニッケル錯体(Nickel(II) phtalocyanine tetrasulfonic acid, tetrasoldium salt)は、波長658nmに吸収を持ち、且つ、波長785nmに吸収を持たないことが知られている。具体的には、ニッケル錯体は波長658nmで大きなモル吸光係数(約50000)を持つことが知られている。したがって、励起光の波長として658nmを選択し、検出光の波長として785nmを選択することとする。
一方、送液を停止すると、ニッケル錯体水溶液の溶媒とトルエンとは混合せず、ニッケル錯体はトルエン相へ抽出される。したがって、送液停止中に、マイクロチャネル200aの下流においてマイクロチャネル200aの幅方向を走査すると、例えば、図12(b)に示すような分析用測定データが得られる。図12(b)によれば、ニッケル錯体水溶液相とトルエン相との境界はもはや認識できず、抽出平衡に達したことを示している。
なお、図12は、マイクロチャネル200aの幅方向を往復走査した際の往路にかかる分析用測定データであり、物質検出装置100A〜100Cにより得ることができるデータである。また、図12の分析用測定データの縦軸は測定値となっているが、当該データをユーザに提示する場合は、縦軸を濃度に変換して提示しても良い。この場合、検量線を作成する等して、物質(トルエン錯体)の濃度と測定値とを予め対応付けておく必要がある。
なお、図12の分析用測定データの縦軸は測定値となっているが、当該データをユーザに提示する場合、縦軸を濃度に変換して提示しても良い。この場合、検量線を作成する等して、物質(トルエン錯体)の濃度と測定値とを予め対応付けておく必要がある。
また、物質検出装置100により得られる分析用測定データ(例えば、図13)は、物質検出装置100Cの検出処理を物質検出装置100の検出処理と同様にした場合には、物質検出装置100Cでも得ることができる。
次に、第1の実施の形態の物質検出装置100、第2の実施の形態の物質検出装置100A、第3の実施の形態の物質検出装置100B又は第4の実施の形態の物質検出装置100Cによる、マイクロチップ200が有するマイクロチャネル200a内における試料S中の物質の検出について、シックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドの定量を例示して説明する。
実施例2で用いるマイクロチップ300には、試料導入側及び試料排出側がY字型に分岐されたマイクロチャネル300aが形成されており、試料排出側におけるY字型のマイクロチャネル300aの一方の流路長が他方の流路長よりも長くなっている。
例えば、シリンジポンプによって、試料導入側におけるY字型のマイクロチャネル300aの一方(P1)に設けられたキャピラリから大気中ホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド含有気体)を導入するとともに、他方(P2)に設けられたキャピラリから検出試薬(4−アミノ−4−フェニル−3−ブテン−2−オン試薬)水溶液を導入する。ここで、検出試薬水溶液は、試料排出側における流路長が長い方のマイクロチャネル300aから排出されるよう導入する。4−アミノ−4−フェニル−3−ブテン−2−オン試薬は、ホルムアルデヒド吸収後に波長405nm付近に吸収ピークを持ち、且つ、波長658nmに吸収を持たないことが知られている。したがって、励起光の波長として405nmを選択し、検出光の波長として658nmを選択することとする。
そして、導入中に、マイクロチャネル300aの下流においてマイクロチャネル300aの幅方向を走査して、分析用測定データを得ると、又は、検出試薬水溶液相側に測定点を合わせて固定して、分析用測定データを得ると、ホルムアルデヒド含有気体におけるホルムアルデヒドの濃度が増加するにつれて、測定値、すなわち熱レンズLの度数が、線形的に増加することが分かった。これにより、検出装置100,100A,100B,100Cによって、ホルムアルデヒドの存在や濃度を検出できることが分かった。また、抽出操作によってホルムアルデヒドが効率よく濃縮されるため、大気中の極低濃度のホルムアルデヒドを検出できることも分かった。さらに、流速を変えて同様の測定を行うと、ホルムアルデヒドの検出試薬水溶液相への抽出効率を変えることができることも分かった。
また、検出装置100,100A,100B,100Cは、液体や気体中の物質だけでなく、固体表面に存在する物質(分子)を定量することもできるため、例えば、細胞表面における極微量物質の定量分析やマイクロチャネル200a,300a上でのイムノアッセイにおけるタンパク質の定量解析などにも使用することができる。
また、第2の実施の形態の物質検出装置100Aの構成、第3の実施の形態の物質検出装置100Bの構成で、第1の実施の形態の物質検出装置100と同様、駆動部5bにより対物レンズ5aを水平方向及び鉛直方向に移動させて焦点や測定点を調整した後、検出を行っても良い。この場合、物質検出装置100A,100Bでも、物質検出装置100により得られる分析用測定データ(例えば、図13)を得ることができる。
したがって、例えば、第4の実施の形態の物質検出装置100Cにおいて、励起光源1C及び検出光源2Cの代わりに2波長半導体レーザ光源や2波長レーザカプラ(2波長半導体レーザ光源に加えて受光素子も内蔵したIC)を用いて部品点数を減らしても良い。この場合、物質検出装置100Cをさらにコンパクトな構成にすることができる。また、例えば、第4の実施の形態の物質検出装置100Cにおいては、チョッパ3等を設置する必要がなく、励起光の光路の一部を空間光とする必要がないため、励起光及び検出光の伝送経路全体を光ファイバで構成して対物レンズ5aCまで届く構成としても良い。
対物レンズアクチュエータ5Dは、例えば、対物レンズ5aDと、駆動部5bと、などを備えて構成されている。対物レンズ5aDは、レンズ51aCと、互換素子52aDと、により構成されており、レンズ51aCと、互換素子52aDと、が組になって3焦点レンズを構成している。互換素子52aDは、レンズ51aCと共に駆動部5bによって水平方向及び鉛直方向に移動する。
互換素子52aDは、例えば、波長選択機能を有する素子であれば任意であり、例えば、レンズ51aCの開口数の制御を行う素子などが挙げられる。
第1波長選択フィルタ52aD1、第2波長選択フィルタ52aD2及び第3波長選択フィルタ52aD3は、例えば、波長選択性の干渉フィルタパターンであっても良いし、回折格子であっても良い。
同様に、第4の実施の形態における対物レンズ5aCの変形例である対物レンズ5aDとして、波長により開口数が異なる3焦点レンズを示したが、対物レンズ5aDは、特殊対物レンズ、回折対物レンズ、位相差レンズなどにより形成した3焦点レンズであっても良い。
2,2C 検出光源
5a,5aC,5aD 対物レンズ
5b 駆動部(駆動手段)
6 試料台
9 光検出器(検出手段)
10 プリアンプ(検出手段)
11 ロックインアンプ(検出手段)
12,12A,12B 制御部(検出手段)
100,100A,100B,100C 物質検出装置
200,300 マイクロチップ
200a,300a マイクロチャネル
L 熱レンズ
S 試料
Claims (5)
- 試料中の物質を検出する物質検出装置において、
所定位置に固定された試料台と、
励起光を、対物レンズを介して、前記試料台上の試料中に入射する励起光源と、
検出光を、前記対物レンズを介して、前記励起光が前記試料中に照射されることにより形成される熱レンズに入射する検出光源と、
前記熱レンズによる前記検出光の拡散を測定することにより前記物質を検出する検出手段と、
前記対物レンズを水平方向及び鉛直方向に移動させる駆動手段と、
を備え、
前記対物レンズは、光ピックアップ用対物レンズであり、前記試料中における前記励起光及び前記検出光の焦点位置が一致しないように構成された2焦点レンズであり、
前記駆動手段は、前記対物レンズを、水平方向に移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に移動させ、
前記検出手段は、前記駆動手段による前記対物レンズの移動の間、前記検出光の拡散を測定し、当該測定結果のうちの最大値に基づいて前記試料中における物質の濃度を検出することを特徴とする物質検出装置。 - 請求項1に記載の物質検出装置において、
前記駆動手段は、電磁コイルを用いて前記対物レンズを移動させることを特徴とする物質検出装置。 - 請求項1又は2に記載の物質検出装置において、
前記励起光源及び前記検出光源は、半導体レーザ光源であり、
少なくとも前記試料台、前記励起光源、前記検出光源、前記対物レンズ及び前記駆動手段は、単一器体に装着一体化されていることを特徴とする物質検出装置。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載の物質検出装置において、
前記試料台に載置されたマイクロチップが有するマイクロチャネル内における試料中の物質を検出することを特徴とする物質検出装置。 - 請求項1に記載の物質検出装置による物質検出方法において、
前記駆動手段によって、前記対物レンズを、水平方向に往復移動させるとともに、当該水平方向の移動速度よりも高速で鉛直方向に往復移動させる移動ステップと、
前記移動ステップの間、前記検出手段によって、前記検出光の拡散を測定する測定ステップと、
前記移動ステップの後、前記検出手段によって、前記測定結果のうちの最大値に基づいて前記試料中における物質の濃度を測定する検出ステップと、
を備えることを特徴とする物質検出方法。
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